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JP6257897B2 - 光学物品およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光学物品およびその製造方法に関するものである。
特許文献1には、疎水性および/または撥油性の被膜を有する、エッジ研磨のための光学ガラスの作製方法に関する技術が記載されている。特許文献1は、ガラスに少なくとも15mJ/mの表面エネルギーを付与する仮の保護層を該ガラスの表面に被覆することを特徴とするものであり、ガラスの疎水性および/または撥油性の表面特性を復元させるために、仮の保護層を除去する工程を含む。
特表2005−505427号公報
眼鏡、サングラスなどの光学物品は、ガラスまたはプラスチックを主成分とする光学基材の表面に、直に、または、ハードコート層や反射防止層などの層を介して疎水性および/または撥油性の防汚層が積層されている。これらの防汚層を形成する組成(防汚層の構成、防汚仕様)の多くは、粘着性の油脂汚れを防ぎ、取り除きやすいようにするために、フッ化シラン系材料を含む。この種の表面被膜により生じる課題の1つは、疎水性および/または撥油性が強い被膜ほど、凸表面の界面における接着力を変える作用が強い(滑りやすい)ことであり、特許文献1においては、仮の保護層を、疎水性および/または撥油性の表面被膜を有するガラス上に被覆し、保持パッド/ガラス界面における十分な接着力を得て、その後、ガラスの疎水性および/または撥油性の表面特性を復元させるために、仮の保護層を除去する。しかしながら、仮の保護層を形成し、さらに除去する作業は、光学物品の製造作業を煩雑にする。
本発明の目的は、防汚性能が良好で、かつ、仮の保護層を設けるなどの追加の作業を行わなくても加工の際に適切に保持できることにより、加工作業を効率よく行うことができる光学物品を提供することである。
本発明の一態様は、凹面および前記凹面と向かい合う凸面を有する光学基材と、前記凹面に、直に、または他の層を介して形成された第1の防汚層と、前記凸面に、直に、または他の層を介して形成された第2の防汚層と、を有し、前記第1の防汚層は、平板状のガラス基板に、直に、または他の層を介して形成された場合における、当該第1の防汚層の表面の静摩擦係数μG1が以下の条件を満たし、前記第2の防汚層は、平板状のガラス基板に、直に、または他の層を介して形成された場合における、当該第2の防汚層の表面の静摩擦係数μG2が以下の条件を満たす、光学物品である。
μG1<μG2 (0)
0.01≦μG1≦0.1 (1)
0.1 ≦μG2 (2)
第1の防汚層の静摩擦係数μG1が条件(1)を満たすことにより、凹面は非常に優れた汚れ拭取り性(防汚性能)を示す。また、エッジ研磨などの作業においては、凸面を主に保持し、凹面を補助的に保持することが多い。第1の防汚層の静摩擦係数μG1と第2の防汚層の静摩擦係数μG2とが条件(0)を満たし、かつ、第2の防汚層の静摩擦係数μG2が条件(2)を満たすことにより、凹面の汚れ拭取り性が優れている場合でも、仮の保護層などを設けなくても光学物品を適切に保持して加工することができる。したがって、仮の保護層の形成および除去を省くことが可能となるので、防汚性能が良好で、かつ、作業効率の良い光学物品を提供できる。
本発明の別の態様は、曲率半径が350mm以上である凹面と、前記凹面と向かい合い、曲率半径が120mm以上である凸面と、を有する光学基材と、前記凹面に、直に、または他の層を介して形成された第1の防汚層と、前記凸面に、直に、または他の層を介して形成された第2の防汚層と、を有し、前記第1の防汚層の表面の静摩擦係数μL1と、前記第2の防汚層の表面の静摩擦係数μL2とが以下の条件を満たす、光学物品である。
0.01≦μL1≦0.12 (3)
0.1≦μL2 (4)
μL1<μL2 (5)
曲率半径が350mm以上である凹面において、第1の防汚層の静摩擦係数μL1が条件(3)を満たすことにより、凹面は非常に優れた汚れ拭取り性(防汚性能)を示す。また、エッジ研磨などの作業においては、凸面を主に保持し、凹面を補助的に保持することが多い。曲率半径が120mm以上である凸面において、第1の防汚層の静摩擦係数μL1と第2の防汚層の静摩擦係数μL2とが条件(5)を満たし、かつ、第2の防汚層の静摩擦係数μL2が条件(4)を満たすことにより、凹面の汚れ拭取り性が優れている場合でも、仮の保護層などを設けなくても光学物品を適切に保持して加工することができる。したがって、仮の保護層の形成および除去を省くことが可能となるので、防汚性能が良好で、かつ、作業効率の良い光学物品を提供できる。
典型的な光学基材は、眼鏡レンズ基材、たとえば眼科用レンズやサングラス用レンズであり、凹面は眼球側の面である。光学物品を眼鏡として装用者が装用した場合に、装用者の皮脂や汗等で汚れることが多い眼球側の面に対して、非常に優れた防汚性能を付与できるので、効果的に光学物品の汚れを抑制できる。一方、物体側の面に対しては、優れた防汚性能を付与するとともに加工時に光学物品を保持できる性能を付与できる。
眼鏡レンズの典型的な構成を示す図。 玉型加工方法を示す模式図。 評価結果を示す図。 静摩擦係数の総合評価における分布を示す図。 眼鏡レンズの静摩擦係数の測定結果を示す図。
図1に、光学物品の一例としてプラスチックレンズ基材を含む眼鏡レンズの典型的な構成を示している。この眼鏡レンズ1は、レンズ基材2と、このレンズ基材の両面(凹面2aおよび凸面2b)に形成されたプライマー層3と、このプライマー層3の表面に形成されたハードコート層4と、このハードコート層4の表面に形成された反射防止層5と、この反射防止層5の表面に形成された防汚層10とを有する。眼鏡レンズ1は、装用者の眼球9の前方に装着される都合などから物体側に凸(眼球9の側に凹)の屈折力が負または正のメニスカスレンズである。したがって、凹面2aおよび凸面2bのうち、凹面2aが装用者の眼球9の側に位置し、凸面2bが装用者によって視認される物体側に位置するように装着される。防汚層10が眼鏡レンズ1の最外層(レンズ基材2から最も遠い層)であるので、凹面2aの側に形成された防汚層10(第1の防汚層10a)の表面19aが眼鏡レンズ1の眼球側の面であり、凸面2bの側に形成された防汚層10(第2の防汚層10b)の表面19bが眼鏡レンズ1の物体側の面である。
本例のレンズ1のレンズ基材2はプラスチックであるが、ガラスであってもよい。レンズ基材2の屈折率は特に限定されない。プラスチック製のレンズ素材としては、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)やポリカーボネート、あるいは、イソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を反応させることによって製造されるポリチオウレタン系プラスチック等が挙げられる。
プライマー層3は、レンズ基材2の表面に形成され、表面処理膜全体の耐久性とハードコート層4との密着性を向上させる役割を担う。プライマー層3は省略することも可能であり、ガラス製レンズでは設けられないこともある。プライマー層3の典型的なものは、極性を有する有機樹脂ポリマーと、酸化チタンを含有する金属酸化物微粒子とを含むコーティング組成物を用いて形成される層である。有機樹脂ポリマーとしては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂等の各種樹脂を使用することが可能である。
ハードコート層4は、レンズ1の表面強度を向上させるなどの機能を含む。ガラス製レンズでは設けられないこともある。ハードコート層4の典型的なものは、酸化チタンを含有する金属酸化物微粒子と、以下の式(11)で示される有機ケイ素化合物とを含むコーティング組成物を用いて形成される層である。
SiX 3−n・・・(11)
(式中、Rは、重合可能な反応基を有する有機基であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、Xは加水分解基であり、nは0または1である。)
酸化チタンは、アナターゼ型およびルチル型のどちらであっても良いが、耐候性や耐光性の観点よりルチル型の結晶構造を有することが好ましい。有機ケイ素化合物としては、例えば、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
反射防止層5は、ハードコート層の屈折率よりも0.10以上低い屈折率を有し、かつ50nm以上500nm以下の層厚の、無機または有機の層で構成される。層は単層であっても複数層であってもよい。無機系の反射防止膜を構成する薄層の材質としてはSiOの他に、SiO、ZrO、TiO、TiO、Ti、Ti、Al、Ta、CeO、MgO、Y、SnO、MgF、WO等が挙げられる。
有機系の反射防止層の一例は、以下の式(12)で表される有機ケイ素化合物と、シリカ系微粒子とを含有する組成物から形成されるものである。
SiX 4−i−j・・・(12)
(上記式中において、Rは重合可能な反応基を有する有機基を表す。Rは炭素数1〜6の炭化水素基を表す。Xは加水分解性基を表す。iおよびjは、少なくとも一方は1であり、他方は0または1である。)
防汚層10は、レンズ1の両面2aおよび2bに水滴や汚れが付着するのを防止することを主な目的とする層である。すなわち、レンズ1の両面2aおよび2bに反射防止層5が設けられていれば、両面2aおよび2bの反射防止層5に重ねて防汚層10を形成し、水滴や汚れの付着を抑制する。防汚層10を形成する典型的なコーティング剤の1つのタイプは、分子量500程度のフッ素有機ケイ素化合物を含むコーティング剤(第1タイプのコーティング剤)であり、主に水滴の付着を防止することを目的としている。第1タイプのコーティング剤は水を弾く観点で分子設計されており、汚れの拭取り性に重きは置かれていない。
防汚層10を形成する典型的なコーティング剤の他のタイプの1つは、フッ素含有有機ケイ素化合物にエーテル結合を導入するなどの処理を施し、分子量を2000〜10000程度に大きくしたコーティング剤(第2タイプのコーティング剤)である。第2タイプのコーティング剤により形成される防汚層10は、層を形成する分子に柔軟性があることが特徴であり、撥水機能に加えて汚れの拭取り性の高い防汚層10を形成できる。第2タイプのコーティング剤としては、特開2004−145283号に記載されているパーフルオロポリアルキレンエーテル変性シランの加水分解縮合物を含むもの、特開平09−263728号に記載されているケイ素含有有機含フッ素ポリマーを混合物として含むものなどが知られている。
第2タイプのコーティング剤を用いて形成された防汚層10の摩擦係数は小さい。そのため、玉型加工(エッジ研磨、トリミング)時に軸ずれ(レンズ1が加工開始時の保持位置または保持方向からずれること)が発生しやすい。そこで、軸ずれを抑制する方法が提案されている。たとえば、特許文献1に仮の保護層を形成することが記載されている。また、特開2007−152553号に軸ずれ防止テープを使用することが記載されている。
近年、さらに防汚機能の高いコーティング剤(第3タイプのコーティング剤)が開発されている。第3タイプのコーティング剤を使用すると、汚れの拭取り性がさらに良好な被膜が得られる。そこで、第3タイプのコーティング剤を眼鏡レンズ1の防汚層10を形成するために用いることが検討されている。レンズ1の両面2aおよび2bの滑り性をさらに向上できるので、汚れの拭取り性が第2タイプのコーディング材を用いた防汚層10より向上することが期待できる。
その一方、第3タイプのコーティング剤を用いた防汚層10をレンズ1の両面2aおよび2bに形成した場合、軸ずれ防止テープを貼り付ける方法では、テープの粘着力が不足し、レンズを十分に固定できず、玉型加工中に軸ずれが発生する可能性がある。特許文献1に記載されているように、仮の保護層を形成し保持パッド/ガラス界面における十分な接着力を得て、その後、仮の保護層を除去する方法は、光学物品の製造作業を煩雑にするため好ましくない。
このため、本願発明者は、鋭意検討を行い、凹面2aに形成された防汚層10の表面19aの静摩擦係数よりも凸面2bに形成された防汚層10の表面19bの静摩擦係数が大きい場合に、軸ずれを抑制できることを見出した。コーティング剤および膜厚を変えた幾つかのシステム(系、防汚仕様)で凹面2aおよび凸面2bに防汚層10を形成し、凹面2aの表面の物性と凸面2bの表面の物性とが異なるレンズサンプルを製造することにより、優れた防汚性能を有するとともに、軸ずれが少なく、精度のよい玉型加工が可能なレンズ1を提供できる。また、本願発明者の検討の結果、防汚層10の静摩擦係数を所定範囲とすることで、軸ずれを効果的に抑制できることが明らかとなった。このレンズ1は、従来の玉型加工方法によって加工をすることができる。すなわち、レンズ1に仮の保護層を設けたりしなくても、レンズ1を保持し、レンズ1の縁を研磨することで、例えば乱視軸の方向が処方に対してずれることなく、眼鏡フレームに枠入れ可能な形状に加工されたレンズ1を得ることができる。加工されたレンズ1は、保護層の除去等を行う必要がなく、従来の眼鏡レンズと同様の作業によって眼鏡フレームに枠入れすることができる。以下においては、確認実験の結果を説明する。なお、以下においては蒸着材料の量や補正板の開度が膜厚を変化させる要因である。
1. レンズサンプルの製造
レンズサンプル(レンズ)1は次のように製造した。レンズ基材2として眼鏡用プラスチックレンズ(セイコーオプティカルプロダクツ株式会社製:セイコースーパーソブリン、「スーパーソブリン」は登録商標)を用いた。レンズ基材2の凹面2aおよび凸面2bに同一仕様(組成および成膜条件)のハードコート層4を成膜した。本例では、プライマー層を省略して、金属酸化物微粒子および有機ケイ素化合物を含むコーティング組成物を用いてハードコート層4を成膜した。
さらに、上記ハードコート層4の表面に反射防止層5を成膜した。レンズ基材2の凹面2aの側および凸面2bの側に同一仕様の反射防止層5を成膜した。本例では、所定の厚みのSiOおよびZrOを交互に積層し、最上層がSiO層となる無機系の反射防止層5を成膜した。反射防止層5の成膜には、複数の真空チェンバー、真空生成装置、複数の蒸着源、蒸着源を蒸着させる電子銃、および蒸着量を調整する開閉可能なシャッターなどを備えた蒸着装置を用いた。
さらに、反射防止層5の表面に防汚層10を成膜した。レンズ基材2の凹面2aの側および凸面2bの側に、蒸着装置を用いて異なる仕様(第1の防汚仕様および第2の防汚仕様)により第1の防汚層10aおよび第2の防汚層10bをそれぞれ成膜した。本例においては、反射防止層5を成膜する蒸着装置に連結された真空チェンバーを含む蒸着装置を用いた。チェンバーは内部に設置された、有機化合物が含浸された蒸着源と、加熱ヒータ(典型的にはハロゲンランプ)と、補正板とを含む。補正板は、固定式であり、開度を調整することにより、複数のレンズ1が支持された支持装置に向かって放出される蒸着量を調整できる。チェンバー内は、ロータリポンプ、ルーツポンプまたはターボ分子ポンプを備えた真空生成装置により適当な圧力に保持される。
2. 防汚仕様
第1の防汚層10aおよび第2の防汚層10bの仕様として以下の防汚仕様A−1〜Eを使用した。また、平板状のガラス基材の上にレンズサンプル1と同じ仕様で反射防止層5を形成したガラスサンプルの上に、それぞれの防汚仕様で層(サンプル防汚層)を形成し、その表面の静摩擦係数(ガラスサンプルの静摩擦係数μG)を測定した。測定には、ポータブル摩擦計(新東科学株式会社製HEIDONトライボギアミューズTYPE:94iII、「HEIDON」、「トライボギア」は登録商標)を用い、スライダには木綿布(三巾天竺布)を取り付けて静摩擦係数を測定した。測定は、蒸着後3日以上放置したサンプルに対し、測定環境は23℃、相対湿度(RH、Rerative Humidity)50%付近で行い、3回の測定の平均値を得た。また、測定前の表面をフッ素系溶剤で払拭することは行わず、表面が汚れた場合には、アセトンまたはエタノール等の非フッ素系溶剤で払拭した。
ここで、防汚層10の蒸着後の静摩擦係数の傾向を確認したところ、蒸着後は低めの値を示し、防汚層10と基板との反応が進行するにしたがい静摩擦係数は徐々に増加することが分かった。静摩擦係数の変化は1−2日でほぼ一定の値を示し、反応が終息したと考えられる。このため、防汚層10の静摩擦係数の測定は上記のように蒸着後3日以上放置し、反応が安定した状態で行った。また、汚れ除去等のためフッ素系溶剤を用いると、防汚層10の成分のうち、防汚性能に影響を与える成分が除去等される可能性がある。このため、汚れ除去等のためにフッ素系溶剤は使用しなかった。
2.1 防汚仕様A−1
防汚層10を形成することに用いる有機化合物(防汚剤)として、キャノンオプトロン株式会社製SURFCLEAR100(防汚剤A)(「SURFCLEAR」は登録商標)を用いた。防汚剤Aは、スチールウール#0000を充填した銅製の容器(直径18mm、高さ7mm)に、固形分40mgとなるように含浸させたものである。これを蒸着源としてチェンバーにセットした。ハロゲンランプを加熱ヒータとして蒸着源のペレットを600℃に加熱して防汚剤Aを蒸発させ、防汚層を形成した。蒸着時間は5分である。蒸着終了後、チェンバー内を徐々に大気圧に戻して、レンズサンプルを取り出し、60℃、RH60%に設定した恒温恒湿槽に投入し、2時間保持することによりアニーリングした。防汚仕様A−1のガラスサンプルの静摩擦係数μGは、0.054であった。
2.2 防汚仕様A−2
上記と同様用に防汚剤として、キャノンオプトロン株式会社製SURFCLEAR100(防汚剤A)を用い、同様に防汚層10を形成した。ただし、補正板の開度を若干絞る方向に調整した。アニーリングも同様に行った。防汚仕様A−2のガラスサンプルの静摩擦係数μGは、0.065であった。なお、以下では、防汚仕様A−1およびA−2の総称として、防汚仕様Aと称する場合がある。
2.3 防汚仕様B−1
防汚剤として信越化学工業株式会社製KY−178(防汚剤B)を用いた。防汚剤Bをフッ素系溶剤(住友スリーエム株式会社製:ノベック7200)に希釈して固形分濃度3%溶液を調製し、これをスチールウール#0000を充填した銅製の容器(直径18mm、高さ7mm)に含浸後、80℃で20分間加熱して溶媒を蒸発させ、固形分30mgとしたものを蒸着源としてチェンバーにセットした。成膜中は、ハロゲンランプを加熱ヒータとして蒸着源のペレットを600℃に加熱して防汚剤Bを蒸発させ、防汚層10を形成した。蒸着時間は5分である。蒸着終了後、チェンバー内を徐々に大気圧に戻して、レンズサンプルを取り出し、60℃、RH60%に設定した恒温恒湿槽に投入し、2時間保持することによりアニーリングした。防汚仕様B−1のガラスサンプルの静摩擦係数μGは、0.078であった。
2.4 防汚仕様B−2
上記と同様に防汚剤として信越化学工業株式会社製KY−178(防汚剤B)を用い、同様に防汚層10を形成した。ただし、補正板の開度を若干絞る方向に調整した。蒸着終了後、チェンバー内を徐々に大気圧に戻して、レンズサンプルを取り出し、60℃、RH60%に設定した恒温恒湿槽に投入し、2時間保持することによりアニーリングした。防汚仕様B−2のガラスサンプルの静摩擦係数μGは、0.081であった。
2.5 防汚仕様B−3
上記と同様に防汚剤として信越化学工業株式会社製KY−178(防汚剤B)を用い、同様に防汚層10を形成した。ただし、蒸着源の固形分を25mgとした。蒸着終了後、チェンバー内を徐々に大気圧に戻して、レンズサンプルを取り出し、60℃、RH60%に設定した恒温恒湿槽に投入し、2時間保持することによりアニーリングした。防汚仕様B−3のガラスサンプルの静摩擦係数μGは、0.093であった。
2.6 防汚仕様B−4
上記と同様に防汚剤として信越化学工業株式会社製KY−178(防汚剤B)を用い、同様に防汚層10を形成した。ただし、蒸着源の固形分を20mgとした。蒸着終了後、チェンバー内を徐々に大気圧に戻して、レンズサンプルを取り出し、60℃、60%RHに設定した恒温恒湿槽に投入し、2時間保持することによりアニーリングした。防汚仕様B−4のガラスサンプルの静摩擦係数μGは、0.107であった。なお、以下では、防汚仕様B−1〜B−4の総称として、防汚仕様Bと称する場合がある。
2.7 防汚仕様C
防汚剤として信越化学工業株式会社製KY−130(防汚剤C)を用いた。成膜方法は防汚仕様Bと同様であり、蒸着時間は5分である。蒸着終了後のアニーリングも防汚仕様Bと同様に行った。防汚仕様Cのガラスサンプルの静摩擦係数μGは、0.125であった。
防汚剤Cはフッ素含有有機ケイ素化合物であり、分子量は2000〜3000の範囲、分子径は2nmと推定される。防汚剤Cは、下記の一般式(13)で表される組成物を含有している。
Figure 0006257897
一般式(13)において、式中、Rfは、式:−(CkF2k)O−(前記式中、kは1〜6の整数である)で表される単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造を有する2価の基を表す。Rは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、Xは加水分解性基またはハロゲン原子を表す。pは0、1、2のいずれかを表す。nは1〜5の整数を表す。m及びrは2または3を表す。
2.8 防汚仕様D
防汚剤として信越化学工業株式会社製KP−911(防汚剤D)を用いた。その他の仕様は防汚仕様Bと同様であり、蒸着時間は5分である。蒸着終了後のアニーリングも防汚仕様Bと同様に行った。防汚仕様Dのガラスサンプルの静摩擦係数μGは、0.378であった。
2.9 防汚仕様E
防汚剤としてダイキン工業株式会社製オプツールDSX(防汚剤E)(「オプツール」は登録商標)を用いた。その他の仕様は防汚仕様Bと同様であり、蒸着時間は5分である。蒸着終了後のアニーリングも防汚仕様Bと同様に行った。防汚仕様Eのガラスサンプルの静摩擦係数μGは、0.131であった。
防汚剤Eはフッ素含有有機ケイ素化合物であり、分子量は4000〜5000の範囲、分子径は2nmと推定される。防汚剤Eは、下記の一般式(14)で表される組成物を含有している。
Figure 0006257897
ただし、一般式(14)において、式中、Rfはパーフルオロアルキル基、Xは水素、臭素、またはヨウ素、Yは水素または低級アルキル基、Zはフッ素またはトリフルオロメチル基、Rは水酸基または加水分解可能な基、Rは水素または1価の炭化水素基を表す。a、b、c、d、eは0以上の整数で、a+b+c+d+eは少なくとも1以上の整数であり、a、b、c、d、eでくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において限定されない。fは0、1、2のいずれかを表す。gは1、2、3のいずれかを表す。hは1以上の整数を表す。
3. 各防汚仕様の汚れ拭取り性の確認
各防汚仕様A−Eの汚れ拭取り性を確認した。具体的には、球面度数(S度数)が−3.00D(ディオプトリ)で乱視度数(C度数)が0Dのレンズ基材2の凸面2bに、「1.レンズサンプルの製造」で説明したハードコート層4および反射防止層5を成膜した。反射防止層5の表面に各防汚仕様で防汚層10を形成し、その凸面に人工皮脂を疑似指紋としてそれぞれ転写し、レンズサンプル1を一定の速度で回転させながら木綿布を繰り返し摺動させ、人工皮脂を木綿布で拭きとるまでに要する摺動回数を測定することにより拭取り性を確認した。
使用した人工皮脂の組成は、コレステロール20wt%(質量%)、スクワレン20wt%、パルミチン酸20wt%およびトリオレイン40wt%である。疑似指紋は、調合した人工皮脂をメタノールなどの溶媒で薄め、ディッピング法(スピンコート法でもよい)によりガラス基板表面に均一に塗布し、シリコン栓により転写して形成した。シリコン栓の転写に用いられる一方の端(直径12mm)は#240の研磨紙で一様に研磨されており、その端を人工皮脂が塗布されたガラス面に500gの荷重で押し付け、さらに、人工皮脂が付着したシリコン栓の端を500gの荷重でレンズサンプル1の表面19bの中央部に転写した。
払拭は、レンズサンプル1を一定速度(60rpm、rpm:rotation per minute)で回転させるとともに、木綿布を荷重200gで接触させ一定速度(20mm/sec)で摺動させることで行った。擦傷性試験装置にレンズサンプル1をセットすることで上記の条件を実現してもよい。凹面2aおよび凸面2bにそれぞれ形成された防汚層10aおよび10bの表面19aおよび19bの拭取り性の評価は拭取りに要する摺動回数に基づき以下の4段階で行った。
◎:50回以下
○:51回以上70回以下
△:71回以上90回以下
×:91回以上
なお、レンズの凸面および凹面ともに上記評価方法は適用可能である。擦傷性試験装置を用いた場合、取付け冶具の仕様と木綿布のフィット性のため凸面の方がより精度良い評価が可能である。このため今回は凸面で評価した。防汚仕様A−1、A−2、B−1、B−2およびB−3の拭取り性は◎であり、防汚仕様B−4、CおよびEの拭取り性は○であり、防汚仕様Dの拭取り性は×であった。(図3の各例においては、凹面、凸面ともに拭取り性の評価としてこの結果を参照している。)
4. 玉型加工時の軸ずれ発生率の確認
各防汚仕様A−Eの玉型加工時の軸ずれ発生率を確認した。具体的には、レンズサンプル1として球面度数(S度数)が−8.50Dで乱視度数(C度数)が−0.50Dのレンズ基材2に上記「1.レンズサンプルの製造」および「2. 防汚仕様」のように各層を形成した。各レンズサンプル1の凹面2aと凸面2bとにおける防汚仕様の組み合わせを図3に示した。図2に示すように、各防汚仕様により形成された防汚層10bの表面19bに軸ずれ防止テープ21を貼り付け、さらに、軸ずれ防止テープ21の上に両面テープ22を貼り付け凸面用のチャック(リープカップ)23を固定した。さらに、表面19aをチャック24で固定し、砥石25で玉型加工を行った。1種類のレンズサンプル1(実施例または比較例)につき、レンズ10枚について軸ずれが許容範囲を超えた割合を算出した。軸ずれが発生した場合は、軸ずれ角度の平均値も算出した。
軸ずれ防止テープ21には株式会社サンエー化研製EP−100を使用し、両面テープ22には住友スリーエム株式会社製LEAP3を使用し、玉型加工機としては株式会社ニデック製SE−9090を使用した。また、軸ずれ許容範囲は±1度以下とした。
軸ずれ発生率の評価結果を図3に示した。凸面の防汚仕様が防汚仕様Aの場合の軸ずれ発生率は70%、防汚仕様B−2の軸ずれ発生率は80%、防汚仕様B−3の軸ずれ発生率は20%であり、防汚仕様B−4、防汚仕様C、DおよびEの軸ずれ発生率は0%であった。
なお、軸ずれ防止テープ21を用いない場合(図示せず)、防汚仕様Dの軸ずれ発生率は0%であるが、防汚仕様B−4、C、Eでは軸ずれ発生率が100%となった。したがって、防汚仕様B−4、CおよびEでは、玉型加工の際に軸ずれ防止テープ21が必要であることがわかった。
5. レンズサンプルの評価
図3に、防汚仕様A−Eの中の異なる防汚仕様により凹面の防汚層10aおよび凸面の防汚層10bを形成した12通りの組み合わせの評価を、凹面の表面19aおよび凸面の表面19bの拭取り性および軸ずれ発生率の評価により行った結果を示している。
眼球側の凹面2aの拭取り性が非常によく(◎)、凸面2bの拭取り性が良好であり(○以上)、かつ軸ずれ発生率が0%の組み合わせを実施例1−6として記載し、その他の組み合わせを比較例1−6として記載した。図4に、凹面2a側に形成した防汚層10aに相当する防汚仕様のガラスサンプルの静摩擦係数μG1をX軸とし、凸面2b側に形成した防汚層10bに相当する防汚仕様のガラスサンプルの静摩擦係数μG2をY軸にして総合評価の分布を確認した。
静摩擦係数μG1が0.1以下であれば、皮脂を含む汚れの拭取り性は非常によい。眼球側の面19aは、装用者の皮脂や汗等で汚れやすいので、凸面以上に汚れが付着しにくいことが好ましい。そのためμG1が0.1以下の防汚層10を用いることで、眼球側の面19aに適した防汚性能が得られることが分かった。したがって、凹面2a側の防汚層10aの仕様(防汚仕様)は、静摩擦係数μG1が0.1以下を実現できる防汚仕様(第1の防汚仕様)であることが好ましい。上記の例であれば、第1の防汚仕様は、防汚仕様A−1、A−2、B−1〜B−3を含む。
しかしながら、μG1が0.1以下であると、軸ずれが発生しやすい。軸ずれを抑制するためには物体側(凸面2b)に眼球側(凹面2a)と同じ仕様により防汚層を形成する代わりに、異なる仕様により、凸面2b側の表面(第2の防汚層10bの表面19b)の静摩擦係数μG2が、凹面2a側の表面(第1の防汚層10bの表面19a)の静摩擦係数μG1よりも大きい防汚層を形成することが望ましいことが分かった。
また、軸ずれ発生率を十分に抑制するためには、凸面2b側の防汚仕様(第2の防汚仕様)の静摩擦係数μG2が0.1以上であることが好ましく、凸面2b側の汚れの拭取り性を考慮すると、凸面2b側の第2の防汚仕様の静摩擦係数μG2は0.3以下であることが好ましいことが分かった。上記の例であれば、第2の防汚仕様は、防汚仕様B−4、CおよびEを含む。ただし、第2の防汚仕様の静摩擦係数μG2の上限は、光学物品に求められる汚れの拭き取り性に応じて適宜決定することができる。例えば、確実に軸ずれを抑制するために、静摩擦係数μG2が0.3を超える防汚仕様を採用しても良い。
以上の結果より、凹面2a側の拭取り性能が良好で、加工時の軸ずれが少ないレンズを形成するためには、凹面2a側の第1の防汚仕様の静摩擦係数μG1と、凸面2b側の第2の防汚仕様の静摩擦係数μG2とが以下の条件を満たすことが好ましいことが分かった。
μG1<μG2 (0)
0.01≦μG1≦0.1 (1)
0.1 ≦μG2≦0.3 (2)
6. レンズの表面の静摩擦係数
上記では平板のガラスサンプルを用意して、それらの表面で測定された静摩擦係数により防汚仕様を評価した。これは、現在市販されている摩擦計が平面の摩擦を測定することを前提としたものであり、また、静摩擦係数の測定に関する標準(JIS K7125)も平面の静摩擦係数を測定することを前提としているためである。
そこで、念のため、同じ摩擦計を用いて、曲率を持った眼鏡用レンズにおける静摩擦係数の測定をおこなった。測定結果の典型的なものを図5に示している。レンズサンプル1は、上記とレンズ基材2が共通し曲率の異なる2種類を用意し、その凹面2a側と凸面2b側の静摩擦係数を測定した。ハードコート層4および反射防止層5の仕様は上記において説明した通りであり、凹面2aおよび凸面2bに、防汚仕様Cにより防汚層10aおよび10bを形成した。なお、蒸着時間は5分とし、蒸着終了後のアニーリングも上記防汚仕様Cと同様に行った。この防汚仕様(防汚仕様C−1)のガラスサンプルの静摩擦係数μGは、0.110であった。
凹面2aおよび凸面2bのそれぞれについて3点を決めて、それらの点を中心に摩擦計の測定端子の中心部が当たるように静摩擦係数を測定した。測定の際は、摩擦計をできるかぎり水平に保ち、それぞれの点の静摩擦係数を3回測定して平均値を得た。上記以外は、上述したガラスサンプルの静摩擦係数の測定と同様に行った。
曲率の異なる眼鏡レンズに対して上記の測定方法により静摩擦係数の測定を行ったところ、凹面2a側においては曲率半径が350mm以上であれば平面とほぼ同様に静摩擦係数の測定が可能であり、凸面2b側においては曲率半径が120mm以上であれば平面とほぼ同様に静摩擦係数の測定が可能であることが分かった。上記の曲率半径を備えた眼鏡レンズは、たとえば、屈折率が1.67程度のプラスチックレンズ、典型的にはセイコーオプティカルプロダクツ株式会社製スーパーソブリンであれば、S度数が2.25D以上のレンズである。
また、上記の曲率半径の範囲内であれば、レンズ表面の静摩擦係数μLは曲率半径に大きく依存せず、凹面2a側で20%程度増加し、凸面2b側で5%程度低下することがわかった。したがって、曲率半径の比較的大きなレンズ表面の静摩擦係数μLを測定することが可能であり、その値から、防汚仕様を定義するために用いたガラスサンプルの静摩擦係数μGを推定することができることが分かった。
したがって、レンズ表面の静摩擦係数μLで凹面2a側の第1の防汚仕様と凸面2b側の第2の防汚仕様を評価する場合は、曲率半径が少なくとも350mmの凹面2aに、直に、または他の層を介し、第1の防汚仕様により形成された第1の防汚層10aの表面19aの木綿布に対する静摩擦係数μL1が以下の条件を満たし、第2の防汚仕様は、曲率半径が少なくとも120mmの凸面2bに、直に、または他の層を介し、第2の防汚仕様により形成された第2の防汚層10bの表面19bの木綿布に対する静摩擦係数μL2が以下の条件を満たすことが望ましい。なお、ここでは小数点以下第3位を四捨五入した値を示している。静摩擦係数μL1の上限については、静摩擦係数μG1と同様に適宜決定できる。また、静摩擦係数μL1と静摩擦係数μL2とではガラスサンプルでの静摩擦係数に対する値の変化量が異なるため、静摩擦係数μL2が静摩擦係数μL1よりも小さいこともあり得るが、この場合にも下記条件(3)および(4)の範囲において軸ずれの抑制効果を得ることができる。
0.01≦μL1≦0.12 (3)
0.1 ≦μL2≦0.3 (4)
μL1 <μL2 (5)
以上に説明したように、眼球側となる凹面2aと、物体側となる凸面2bとを備えた光学物品、たとえば、眼鏡レンズ、サングラス用レンズなどにおいて、それぞれの面に形成する防汚層の仕様を同一とせずに仕様を変えることにより、凹面側が優れた滑り性と防汚性能を有し、さらに、玉型加工も問題なく行うことができる光学物品を提供できることがわかった。さらに、凹面側の防汚層の仕様と、凸面側の防汚層の仕様とは、上述したような静摩擦係数を得ることができる防汚仕様で規定することが可能であり、防汚性能が高く、所定の形状に加工することができる眼鏡レンズなどの光学物品を製造し、提供することができる。
1 眼鏡レンズ、 2 レンズ基材、 2a 凹面、 2b 凸面
10 防汚層

Claims (3)

  1. 凹面および前記凹面と向かい合う凸面を有する光学基材と、
    前記凹面に、直に、または他の層を介して形成された第1の防汚層と、
    前記凸面に、直に、または他の層を介して形成された第2の防汚層と、を有し、
    前記第1の防汚層は、平板状のガラス基板に、直に、または他の層を介して形成された場合における、当該第1の防汚層の表面の静摩擦係数μG1が以下の条件を満たし、
    前記第2の防汚層は、平板状のガラス基板に、直に、または他の層を介して形成された場合における、当該第2の防汚層の表面の静摩擦係数μG2が以下の条件を満たす、光学物品。
    0.01≦μG1≦0.1
    0.1≦μG2≦0.3
    μG1<μG2
  2. 曲率半径が350mm以上である凹面と、前記凹面と向かい合い、曲率半径が120mm以上である凸面と、を有する光学基材と、
    前記凹面に、直に、または他の層を介して形成された第1の防汚層と、
    前記凸面に、直に、または他の層を介して形成された第2の防汚層と、を有し、
    前記第1の防汚層の表面の静摩擦係数μL1と、前記第2の防汚層の表面の静摩擦係数μL2とが以下の条件を満たす、光学物品。
    0.01≦μL1≦0.12
    0.1≦μL2≦0.3
    μL1<μL2
  3. 請求項1または2において、
    前記光学基材は、眼鏡レンズ基材であり、
    前記第1の防汚層の表面は、眼鏡レンズの眼球側の面である、光学物品。
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