本発明の半導体素子は、半導体層とゲート電極とを有して構成され、その半導体層とゲート電極との間にゲート絶縁膜が配置された構造の半導体素子である。
そして、ゲート絶縁膜は、
[A]シロキサン化合物、および
[B]光重合開始剤
を含有する感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたものである。
以下で、本発明の半導体素子について説明し、次いで、その主要な構成要素であるゲート絶縁膜を形成するのに用いられる感放射線性樹脂組成物について詳細に説明する。そして、感放射線性樹脂組成物を用いた硬化膜、ゲート絶縁膜、ゲート絶縁膜の形成方法について説明する。
尚、本発明において、露光に際して照射される「放射線」には、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線および荷電粒子線等が含まれる。
実施形態1.
<半導体素子>
図1は、本発明の実施形態の半導体素子の構造を模式的に説明する断面図である。
図1に示す本発明の実施形態の半導体素子は、アクティブマトリクス型の表示装置の各画素に付設されたスイッチング素子として好適なTFT3とすることがきる。すなわち、マトリクス状に形成された複数の画素を有するアクティブマトリクス型の表示装置、例えば、有機EL表示装置や液晶表示装置の各画素に設けらたTFT3とすることができる。
TFT3は、基板2上に、走査信号線(図示されない)の一部をなすゲート電極4と、ゲート電極4を被覆する1層構造のゲート絶縁膜5と、ゲート電極4上にそのゲート絶縁膜5を介して配置された半導体層6とを有する。
すなわち、TFT3は、半導体層6と、ゲート電極4と、半導体層6とゲート電極4との間に配置された1層構造のゲート絶縁膜5とを有する構造の半導体素子である。また、TFT3は、基板2上に、ゲート電極4とゲート絶縁膜5と半導体層6とをこの順で積層して構成されたボトムゲート構造を有する。
そして、TFT3は、映像信号線(図示されない)の一部をなして半導体層6に接続する第1のソース−ドレイン電極7と、半導体層6に接続する第2のソース−ドレイン電極8とを有して構成されている。
ゲート電極4は、基板2上に、蒸着法やスパッタ法等により金属薄膜を形成し、エッチングプロセスを利用したパターニングを行って形成することができる。また、金属酸化物導電膜、または、有機導電膜をパターニングして用いることも可能である。
ゲート電極4を構成する金属薄膜の材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、金(Au)、タングステン(W)および銀(Ag)等の金属、それら金属の合金、およびAl−NdおよびAPC合金(銀、パラジウム、銅の合金)等の合金を挙げることができる。そして、金属薄膜としては、AlとMoとの積層膜等、異なる材料の層からなる積層膜を用いることも可能である。
ゲート電極4を構成する金属酸化物導電膜の材料としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、ITO(Indium Tin Oxide:インジウムドープ酸化錫)および酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物導電膜を挙げることができる。
また、有機導電膜の材料としては、ポリアニリン、ポリチオフェンおよびポリピロ−ル等の導電性の有機化合物、またはこれらの混合物を挙げることができる。
ゲート電極4の厚みは、10nm〜1000nmとすることが好ましい。
ゲート電極4を覆うように配置されたゲート絶縁膜5は、本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物を用い、パターニングをして形成された硬化膜からなる。この硬化膜は、本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いて形成されて絶縁性であり、透明性、耐熱透明性、基板およびゲート電極に対する密着性、低吸水性並びにクラック耐性等の諸特性に優れる。この硬化膜からなるゲート絶縁膜5の膜厚としては、50nm〜10μmが好ましい。TFT3のゲート絶縁膜5の形成に用いられる本発明の実施形態の硬化膜およびその形成に用いられる本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物については、後に詳細に説明する。
半導体層6と接続する第1のソース−ドレイン電極7および第2のソース−ドレイン電極8は、それらの電極を構成する導電膜を、印刷法やコーティング法の他、スパッタ法やCVD法、蒸着法等の方法を用いて形成した後、フォトリソグラフィ法等を利用したパターニングを施して形成することができる。第1のソース−ドレイン電極7および第2のソース−ドレイン電極8の構成材料としては、例えば、Al、Cu、Mo、Cr、Ta、Ti、Au、WおよびAg等の金属、それら金属の合金、並びにAl−NdおよびAPC等の合金を挙げることができる。また、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、ITO、酸化インジウム亜鉛(IZO)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)およびGZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)等の導電性の金属酸化物や、ポリアニリン、ポリチオフェンおよびポリピロ−ル等の導電性の有機化合物を挙げることができる。そして、それらの電極を構成する導電膜としては、TiとAlとの積層膜等の異なる材料の層からなる積層膜を用いることも可能である。
第1のソース−ドレイン電極7および第2のソース−ドレイン電極8の厚みは、10nm〜1000nmとすることが好ましい。
半導体層6は、例えば、非晶質状態のa−Si(アモルファス−シリコン)、またはa−Siをエキシマレーザまたは固相成長等により結晶化して得られるp−Si(ポリシリコン)等、シリコン(Si)材料を用いることによって形成することができる。
半導体層6にa−Siを用いる場合、半導体層6の厚みは、30nm〜500nmとすることが好ましい。また、半導体層6と、第1のソース−ドレイン電極7または第2のソース−ドレイン電極8との間には、オーミックコンタクトを取るための図示されないn+Si層が10nm〜150nmの厚さで形成されることが好ましい。
また、TFT3の半導体層6は、酸化物を用いて形成することができる。その半導体層6に適用可能な酸化物としては、単結晶酸化物、多結晶酸化物、およびアモルファス酸化物、並びにこれらの混合物が挙げられる。多結晶酸化物としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)等を挙げることができる。
半導体層6に適用可能なアモルファス酸化物としては、インジウム(In)、亜鉛(Zn)および錫(Sn)の少なくとも1種類の元素を含み構成されるアモルファス酸化物を挙げることができる。
半導体層6に適用可能なアモルファス酸化物の具体的例としては、Sn−In−Zn酸化物、In−Ga−Zn酸化物(IGZO:酸化インジウムガリウム亜鉛)、In−Zn−Ga−Mg酸化物、Zn−Sn酸化物(ZTO:酸化亜鉛錫)、In酸化物、Ga酸化物、In−Sn酸化物、In−Ga酸化物、In−Zn酸化物(IZO:酸化インジウム亜鉛)、Zn−Ga酸化物、Sn−In−Zn酸化物等を挙げることができる。尚、以上の場合、構成材料の組成比は必ずしも1:1である必要はなく、所望の特性を実現する組成比の選択が可能である。
アモルファス酸化物を用いた半導体層6は、例えば、それがIGZOやZTOを用いて形成される場合、IGZOターゲットやZTOターゲットを用いてスパッタ法や蒸着法により膜形成が行われ、フォトリソグラフィ法等を利用して、レジストプロセスとエッチングプロセスによるパターニングを行って形成される。アモルファス酸化物を用いた半導体層6の厚みは、1nm〜1000nmとすることが好ましい。
以上で例示した酸化物を用いることにより、移動度の高い半導体層6を低温で形成することができ、優れた性能のTFT3を提供することができる。
そして、TFT3の半導体層6を形成するのに特に好ましい酸化物としては、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)、酸化亜鉛錫(ZTO)および酸化インジウム亜鉛(ZIO)を挙げることができる。
これら酸化物を用いることによりTFT3は、移動度に優れた半導体層6をより低温で形成して有し、高ON/OFF比を示すことが可能となる。
尚、TFT3の半導体層6においては、半導体層6の上部面の第1のソース−ドレイン電極7および第2のソース−ドレイン電極8の形成されないチャネル領域に、例えば、5nm〜80nmの厚みのSiO2からなる保護層(図示されない)を設けることができる。この保護層はエッチング停止層、または、ストップ層等と称されることもある。こうした保護層は、半導体層6に上述の酸化物を用いる場合において、特に好ましい構成要素となる。
また、TFT3の上には、TFT3を被覆するように、無機絶縁膜19を設けることができる。無機絶縁膜19は、例えば、SiO2等の無機酸化物やSiN等の無機窒化物を用い、それらを単独でまたは積層して形成することができる。無機絶縁膜19は、半導体層6を保護し、例えば、湿度によって影響されるのを防ぐために設けられる。そして、本実施形態のTFT3では、無機絶縁膜19を設けない構造とすることも可能である。その場合、図示されない画素電極等とTFT3との間に設けられる有機材料からなる層間絶縁膜が、無機絶縁膜19の機能を兼備することができる。
さらに、図1に示したTFT3は、上述したように、ボトムゲート構造を有するが、本実施形態の半導体素子は、ボトムゲート構造のみに限られず、正スタガ構造(トップゲート構造)のTFTとすることも可能である。その場合、本実施形態の半導体素子であるTFTは、基板上に半導体層と、その半導体層にそれぞれ接続する一対の第1のソース−ドレイン電極および第2のソース−ドレイン電極とを設けた後、半導体層の上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を重畳して構成される。このとき、ゲート絶縁膜は、上述のTFT3のゲート絶縁膜5と同様のものとなる。また、半導体層としては、p−Siを用いたものを好適に適用できる。そして、p−Siを用いた半導体層には、リン(P)またはボロン(B)等の不純物をドープして半導体層のチャネル領域を挟んで、ソース領域およびドレイン領域を形成することが好ましい。また、半導体層のチャネル領域とソース領域およびドレイン領域との間には、LDD(Lightly Doped Drain)層を形成することが好ましい。
以上の構造を有する図1のTFT3は、本発明の実施形態の半導体素子の例であって、成膜の容易さおよびコスト面での優位さを有する塗布型のゲート絶縁膜5を有する。すなわち、TFT3は、塗布による形成が可能で高解像度のパターニングが可能であり、絶縁性で、さらに、透明性、耐熱透明性、基板およびゲート電極に対する密着性、低吸水性並びにクラック耐性等の諸特性が優れたゲート絶縁膜5を有する。その結果、TFT3は生産性が向上され、ひいてはそれを用いた表示装置の生産性を向上することができる。そして、TFT3は、優れた表示品位の表示素子を提供できる。
実施形態2.
<感放射線性樹脂組成物>
本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、[A]シロキサン化合物、および、[B]光重合開始剤を含有してなる感放射線性樹脂組成物である。そして、必要に応じて、[C]無機酸化物粒子、[D]溶剤およびその他の任意成分、を含有することができる。本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、上述した本発明の実施形態である、半導体素子のゲート絶縁膜の形成用に好適に用いることができる。以下、本実施形態の感放射線性樹脂組成物に含有される成分について説明する。
[A]シロキサン化合物
本実施形態の感放射線性樹脂組成物の[A]成分である[A]シロキサン化合物は、シロキサン結合を有する化合物のポリマーであって、そのようなポリマーである限りは特に限定されるものではない。この[A]シロキサン化合物は、硬化物を形成する過程で、加水分解縮合が進行することが多い。
[A]シロキサン化合物としては、下記式(1)で示される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物であることが好ましい。
(式(1)中、R
1は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基を示し、R
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基またはメルカプト基を示す。nは1〜3の整数を示し、pは0〜6の整数を示す。)
そして、本発明における加水分解性シラン化合物とは、通常、無触媒、過剰の水の共存下、室温(約25℃)〜約100℃の温度範囲内で加熱することにより、加水分解してシラノール基を生成することができ、さらに加熱すること等によって縮合し、加水分解縮合物であるシロキサン化合物を形成することができる「加水分解性の官能基」を有する化合物を指す。また、その場合の「非加水分解性の基」とは、上述のような加水分解条件下で、加水分解または縮合を起こさず、安定に存在する基を指す。上記式(1)で示される加水分解性シラン化合物において、加水分解性の基は−OR1となり、非加水分解性の基は、−(CH2)P−R2となる。
上記式(1)で示される加水分解性シラン化合物の加水分解反応においては、一部の加水分解性基が未加水分解の状態で残っていてもよい。また、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物は、一部の加水分解性基が未加水分解の状態で残っていてもよく、加水分解されたシラン化合物の一部のシラノール基が未縮合の状態で残っていてもよい。
上記式(1)で示される加水分解性シラン化合物について、より詳しく説明する。
上記式(1)のR1で表される基としては、加水分解の容易性の観点から、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。また、安定に取り扱えるのであれば、R1は水素、すなわちあらかじめ加水分解されたシラノール基の状態であってもよい。
上記式(1)のR2は、炭素数1〜20の無置換、もしくはビニル基、(メタ)アクリロイル基またはエポキシ基で1個以上置換されたアルキル基、炭素数6〜20の置換基を有していてもよいアリール基、炭素数7〜20の置換基を有していてもよいアラルキル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基またはメルカプト基等が挙げられる。これらは、直鎖状、分岐状、または環状であってよく、同一分子内に複数のR2が存在するときはこれらの組み合わせであってもよい。また、R2は、ヘテロ原子を有する構造単位を含んでいてもよい。そのような構造単位としては、例えば、エーテル、エステル、スルフィド、カルボニル、カルボキシル、ジカルボン酸無水物、アミド等が挙げられる。
また、上記式(1)中のnは1〜3の整数であるが、より好ましくは1〜2の整数であり、特に好ましくは1である。nが1〜2の整数である場合には、加水分解・縮合反応の進行がより容易となり、その結果、[A]シロキサン化合物の生成、および得られたシロキサン化合物の硬化反応の速度がさらに大きくなる。よって、本実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いた成膜における、現像後の加熱工程における耐メルトフロー性および成膜後の膜硬度、低吸水性を向上させることができる。
上記式(1)で表される加水分解性シラン化合物としては、1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物、2個の非加水分解性基と2個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物、3個の非加水分解性基と1個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物、またはそれらの混合物を挙げることができる。
このような上記式(1)で表される加水分解性シラン化合物の具体例としては、
1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物として、ヒドロトリメトキシシラン、ヒドロトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−i−プロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、へキシルトリメトキシシラン、へキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、トリルトリメトキシシラン、トリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、2−トリメトキシシリルエチルコハク酸無水物、2−トリエトキシシリルエチルコハク酸無水物等;
2個の非加水分解性基と2個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物として、ジヒドロジメトキシシラン、ジヒドロジエトキシシラン、ヒドロメチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン等;
3個の非加水分解性基と1個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物として、トリヒドロメトキシシラン、トリヒドロエトキシシラン、ジメチルフェニルメトキシシラン、ジメチルフェニルエトキシシラン、トリブチルメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリブチルエトキシシラン等をそれぞれ挙げることができる。
これらの上記式(1)で表される加水分解性シラン化合物のうち、1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物(n=1)が、加水分解反応性および縮合反応性の観点で特に好ましい。この好ましい加水分解性シラン化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。このような加水分解性シラン化合物は、1種単独で使用しても、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、加水分解縮合によってシロキサン化合物を得る際、上記式(1)で表される加水分解性シラン化合物以外の加水分解性シラン化合物を併用することもできる。上記式(1)以外の加水分解性シラン化合物の例としては、4個の加水分解性基で置換されたシラン化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラベンジロキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン等、一分子中に複数の加水分解性シラン部位を有する化合物;トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等、加水分解性基を有するシロキサン化合物;シロキサンオリゴマー、シロキサンポリマー、変性シリコーンオイル、シリカ粒子等、クロロシラン化合物;クロロトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン等、が挙げられる。
シラン化合物以外の、加水分解性および縮合反応性を有する化合物、加水分解性チタン化合物、加水分解性アルミニウム化合物、加水分解性亜鉛化合物等も併用することができる。
上記式(1)で表される加水分解性シラン化合物を加水分解・縮合させる条件は、上記式(1)で表される加水分解性シラン化合物の少なくとも一部を加水分解して、加水分解性基をシラノール基に変換し、縮合反応を起こさせるものである限り、特に限定されるものではないが、一例として以下のように実施することができる。
上記式(1)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解・縮合に用いられる水は、逆浸透膜処理、イオン交換処理、蒸留等の方法により精製された水を使用することが好ましい。このような精製水を用いることによって、副反応を抑制し、加水分解の反応性を向上させることができる。水の使用量は、上記式(1)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解性基(−OR1)の合計量1モルに対して、好ましくは0.1モル〜3モル、より好ましくは0.3モル〜2モル、さらに好ましくは0.5モル〜1.5モルの量である。このような量の水を用いることによって、加水分解・縮合の反応速度を最適化することができる。
上記式(1)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解・縮合に使用することができる溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭素数1〜15の直鎖、分岐鎖あるいは環状のアルキルアルコール、炭素数3〜20のケトン類、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピオン酸エステル類が挙げられる。これらの溶剤の中でも、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートまたは3−メトキシプロピオン酸メチルが、特に好ましい。
上記式(1)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解・縮合反応は、好ましくは酸触媒(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、蟻酸、シュウ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸、無水マレイン酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、酸性イオン交換樹脂、各種ルイス酸)、塩基触媒(例えば、アンモニア、1級アミン類、2級アミン類、3級アミン類、ピリジン、4級アンモニウムヒドロキシド等の含窒素化合物;塩基性イオン交換樹脂;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のカルボン酸塩;各種ルイス塩基)、または、金属アルコキシド(例えば、ジルコニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシド)等の触媒の存在下で行われる。例えば、アルミニウムアルコキシドとしては、テトラ−i−プロポキシアルミニウムを用いることができる。触媒の使用量としては、加水分解・縮合反応の促進の観点から、加水分解性シラン化合物のモノマー1モルに対して、好ましくは10−6モル〜0.2モルであり、より好ましくは0.00001モル〜0.1モルである。
上記式(1)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解・縮合における反応温度および反応時間は、適宜に設定される。例えば、下記の条件が採用できる。反応温度は、好ましくは40℃〜200℃、より好ましくは50℃〜150℃である。反応時間は、好ましくは30分〜24時間、より好ましくは1時間〜12時間である。このような反応温度および反応時間とすることによって、加水分解・縮合反応を最も効率的に行うことができる。この加水分解・縮合においては、反応系内に加水分解性シラン化合物、溶剤、水および触媒を一度に添加して反応を一段階で行ってもよく、あるいは、加水分解性シラン化合物、溶剤、水および触媒のいずれか1つ、あるいは任意に選択した混合物を、数回に分けて反応系内に添加することによって、加水分解および縮合反応を多段階で行ってもよい。尚、加水分解・縮合反応の後には、脱水剤を加え、次いでエバポレーションにかけることによって、水および生成したアルコールを反応系から除去することができる。溶剤や水を完全には除去せず、または、任意の溶剤を添加することにより、加水分解縮合によって得られたシロキサン化合物は溶液として取り扱うことができる。
上記式(1)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物、すなわちシロキサン化合物の分子量は、移動相にテトラヒドロフランを使用したGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、ポリスチレン換算の数平均分子量あるいは重量平均分子量として測定することができる。そして、加水分解縮合物の重量平均分子量は、500〜20000の範囲内の値とするのが好ましく、600〜10000の範囲内の値とするのがより好ましく、600〜5000の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
加水分解縮合物の重量平均分子量の値を500以上とすることによって、それらからなる[A]シロキサン化合物を含有する本実施形態の感放射線性樹脂組成物において、その塗膜の成膜性を改善することができる。一方、加水分解縮合物の重量平均分子量の値を20000以下とすることによって、本実施形態の感放射線性樹脂組成物の感放射線性の低下を防止することができる。
[B]光重合開始剤
本実施形態の感放射線性樹脂組成物の[B]成分である[B]光重合開始剤は、放射線を照射することにより、上述の[A]シロキサン化合物を縮合あるいは硬化反応させる際に作用する活性種を生成する化合物と定義される。尚、[B]光重合開始剤から上述の活性種を発生するために照射する放射線としては、上述したように、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線および荷電粒子線等を挙げることができる。これらの放射線の中でも、一定のエネルギーレベルを有し、大きな硬化速度を達成可能であり、しかも照射装置が比較的安価かつ小型であることから、紫外線を使用することが好ましい。
本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物は、[B]光重合開始剤を含有することで、ネガ型の高いパターニング性を発揮することができる。
そして、本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物は、[B]光重合開始剤として、オキシムエステル系光重合開始剤およびアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を用いることが好ましい。
より具体的には、下記式(2)および下記式(4)で示される光重合開始剤の群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。下記式(2)で示される化合物はオキシムエステル系光重合開始剤であり、下記式(4)で示される化合物はアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤である。
(式(2)中、R
11およびR
12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基または炭素数2〜20の複素環基を示す。Xは、酸素原子、硫黄原子またはセレン原子である。R
13およびR
14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、炭素数2〜20の複素環基、炭素数1〜12のフルオロアルキル基、ハロゲンまたは下記式(3)で示される基を示す。aは1〜5の整数を示し、bは1〜4の整数を示す。)
(式(3)中、R
15は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基またはトリル基を示す。kは1〜6の整数を示す。R
16は、水素原子またはアシル基を示す。R
17は単結合、−O−、−S−、−NR
18−、−NR
18CO−、−SO
2−、−CO−、−CS−、−OCO−または−COO−である。R
18は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す。*は結合位置を示す。)
(式(4)中、R
19およびR
20は、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、ハロゲンまたは水酸基を示す。mは1または2を示し、cおよびdはそれぞれ独立に0〜5の整数を示す。)
好ましいとして挙げられたこれらの[B]光重合開始剤は、フォトブリーチング性を有する光重合開始剤である。フォトブリーチング性とは、光により誘発される光感受性物質の光活性化能の消失であり、これらの光重合開始剤においては、光照射に伴い分解が進み、光活性化に有効な波長域での吸収能が低下する。すなわち、これらの光重合開始剤は、光照射によって分解して活性種を発生させるとともに、有効波長の透過性が向上する。また、分解によって有効波長の透過性が向上することは、加熱処理によって、塗膜中に残留する光重合開始剤が熱分解する際にも、有効波長の透過性が向上することにつながる。
本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物の[B]光重合開始剤の有効波長は、250nm〜400nmの波長領域である。本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物から形成されて、フォトブリーチング性を有する[B]光重合開始剤を含む塗膜は、光照射の後、および加熱処理の後、250nm〜400nmの透過率が向上する。そのため、本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、液晶表示素子や有機EL素子において、高い可視光透過性、すなわち透明性が求められるTFTのゲート絶縁膜の形成用のほか、層間絶縁膜等の形成用として好適に用いることができる。
すなわち、本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物は、高解像度のパターニング性を備え、透明性に優れた硬化膜の形成が可能である。そして、本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物は、TFT等の半導体素子のゲート絶縁膜の提供に好適で、例えば、優れた表示品位の表示素子を提供することができる。
以下で、上記式(2)および上記式(4)で示される光重合開始剤について、より詳しく説明する。
上記式(2)で示される光重合開始剤において、上述したように、R11およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基または炭素数2〜20の複素環基を示す。
そして、上記式(2)で示される光重合開始剤において、R11としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。また、R12としては、メチル基、エチル基、フェニル基、トリル基、トリフルオロメチル基が好ましい。
上記式(2)で示される光重合開始剤において、Xとしては、硫黄原子が特に好ましい。
上記式(2)で示される光重合開始剤において、R13およびR14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、炭素数2〜20の複素環基、炭素数1〜12のフルオロアルキル基、ハロゲンまたは上記式(3)で示される基を示す。aは1〜5の整数を示し、bは1〜4の整数を示す。
そして、上記式(3)のR15は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、トリル基を示す。kは1〜6の整数を示す。R16は、水素原子、アシル基を示す。R17は単結合、−O−、−S−、−NR18−、−NR18CO−、−SO2−、−CO−、−CS−、−OCO−または−COO−である。R18は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。*は結合位置を示す
上記式(3)のR16であるアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基、イソブチロイル基、バレロイル基、イソバレロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基、トルオイル基、シクロヘキサンカルボニル基、トリフルオロアセチル基等が好ましく、特に、アセチル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基が好ましい。
上記式(4)で示される光重合開始剤において、上述したように、R19およびR20は、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、ハロゲンまたは水酸基を示す。mは1または2を示し、cおよびdはそれぞれ独立に0〜5の整数を示す。
そして、上記式(4)で示される光重合開始剤において、R19およびR20としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、塩素原子、フッ素原子が挙げられ、これらのうちでメチル基、エチル基が好ましい。
上記式(2)で示される光重合開始剤の具体例としては、以下の化合物(2−1)〜化合物(2−13)を挙げることができる。
上記式(4)で示される光重合開始剤の具体例としては、以下の化合物(4−1)〜化合物(4−9)を挙げることができる。
[C]無機酸化物粒子
本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、[A]シロキサン化合物および[B]光重合開始剤に加え、任意の成分として、[C]無機酸化物粒子を含有することができる。
本実施形態の感放射線性樹脂組成物の[C]成分である[C]無機酸化物粒子は、感放射線性樹脂組成物中に含有されて、得られる硬化物の電気絶縁性は維持されるとともに、誘電特性である比誘電率を制御することができる。例えば、本実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いて形成される、本実施形態の硬化膜の比誘電率を、半導体素子のゲート絶縁膜としての所望の値、例えば従来用いられている窒化ケイ素の比誘電率とされる7〜8に近づけたり、寄生容量を減らす目的においてはより低い比誘電率に制御することができる。その結果、本発明の実施形態の半導体素子は、本実施形態の感放射線性樹脂組成物から硬化膜を形成してそれをゲート絶縁膜として用い、短絡防止能を確保しながら配線遅延が増大するのを防止することができる。また、無機酸化物粒子は、硬化膜の屈折率の制御、硬化膜の透明性の制御、硬化収縮を緩和することによるクラックの抑制、硬化膜の表面硬度向上という目的等でも使用することができる。
本実施形態の感放射線性樹脂組成物の[C]成分である[C]無機酸化物粒子は、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、亜鉛、インジウム、スズ、アンチモン、ストロンチウム、バリウム、セリウムおよびハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含む酸化物である無機酸化物粒子である。
そして、この群の中でもケイ素、ジルコニウム、チタンまたは亜鉛の酸化物粒子が好ましく、ケイ素の酸化物粒子であるシリカ粒子、ジルコニウムまたはチタンの酸化物粒子や後述のチタン酸バリウム(BaTiO3)が特に好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、[C]無機酸化物粒子としては、上述の元素の複合酸化物粒子であってもよい。この複合酸化物粒子としては例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等が挙げられる。また硬化物の電気絶縁性を損なわない範囲でATO(antimoy−tin oxide)、ITO(indium−tin oxide)、IZO(indium−zinc oxide)等を用いることもできる。これらの無機酸化物粒子としては、市販のもの、例えば、シーアイ化成(株)のナノテック(登録商標)等を使用することができる。
[C]無機酸化物粒子の形状は、特に限定されず、球状でも不定形のものでもよく、中空粒子、多孔質粒子、コア・シェル型粒子等であっても構わない。また、動的光散乱法で求めた[C]無機酸化物粒子の体積平均粒子径は5nm〜200nmが好ましく、5nm〜100nmがさらに好ましく、10nm〜80nmが特に好ましい。[C]無機酸化物粒子の体積平均粒子径が5nm未満であると、感放射線性樹脂組成物を用いて得られる硬化膜の硬度が低下するおそれや、意図した比誘電率を発現できないおそれがあり、200nmを超えると硬化膜のヘイズが高くなり透過率が低下するおそれや、硬化膜の平滑性が悪くなるおそれがある。
[C]無機酸化物粒子の配合量としては、特に限定されないが、上述の[A]シロキサン化合物100質量部に対して、1質量部〜500質量部が好ましく、5質量部〜300質量部がより好ましい。[C]無機酸化物粒子の配合量が1質量部未満であると、得られる硬化膜の比誘電率を所望とする範囲内に制御することができない。逆に、[C]無機酸化物粒子の配合量が500質量部を超えると塗布性や膜の硬化性が低下し、また、得られる硬化膜のヘイズが高くなるおそれがある。
[C]無機酸化物粒子は、本実施形態の感放射線性樹脂組成物を調製する際に、粉体として、[A]シロキサン化合物、[B]光重合開始剤、および後述の[D]溶剤およびその他の任意成分と混合してもよく、あらかじめ[C]無機酸化物粒子を、後述の[D]成分としての溶剤と混合し、[C]無機酸化物粒子の分散液として扱ってもよい。さらに[C]無機酸化物粒子の分散液には、後述の[D]成分としての分散剤を添加して扱ってもよい。また、[C]無機酸化物粒子を他の成分と混合する場合、[C]無機酸化物粒子の凝集を防ぎ、均一な粒径に制御するために、分散処理を行うことが好ましい。
分散処理としては、ペイントシェーカ、SCミル、アニュラー型ミル、ピン型ミル等の各種ビーズミルを用いて、粒径の低下が観察されなくなるまで継続することによって行われるとよい。この継続時間としては、数時間とすることが好ましい。また、この分散の際に、ガラスビーズやジルコニアビーズ等の分散ビーズを用いることが好ましい。このビーズ径は特に限定されないが、好ましくは0.05mm〜0.5mm、より好ましくは0.08mm〜0.5mm、さらに好ましくは0.08mm〜0.2mmである。
また、[C]無機酸化物粒子は、凝集した粗大な粒子を上述のように分散処理することで均一な粒径に制御してもよいし、気相中あるいは液相中でのゾルゲル反応等により、粒径が制御された[C]無機酸化物粒子あるいは[C]無機酸化物粒子の分散液を直接作製してもよい。
[D]溶剤およびその他の任意成分
本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、[A]シロキサン化合物および[B]光重合開始剤に加え、任意の成分として、[C]無機酸化物粒子を含有することができ、さらに、[D]溶剤およびその他の任意成分を含有することができる。
本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、[C]無機酸化物粒子を含有する場合、[D]成分として分散剤をさらに含有することにより、感放射線性樹脂組成物内部に均一に[C]無機酸化物粒子を分散させることができ、塗布性を高めることができる。そして、本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、それを用いて得られる硬化膜の基板等への密着性を高め、比誘電率が一様に所望の値となるように制御することができる。
[D]分散剤としては、ノニオン系分散剤、カチオン系分散剤、アニオン系分散剤等を挙げることができる。
[D]分散剤に好適なノニオン系分散剤としては、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、高分子量ポリカルボン酸のアミドアミン塩、エチレンジアミンプロピレンオキサイド−エチレンオキサイド縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルまたは脂肪酸アルカノールアミドであることが好ましい。
上述のポリオキシエチレンアルキルリン酸エステルとしては、下記式(5)で表される化合物が好ましい。
(式(5)中、R
3は、各々独立に、C
qH
2q+1−CH
2O−(CH
2CH
2O)
q’−CH
2CH
2O−である。そのqは12〜16の整数である。そのq’は8〜10の整数である。そのLは1〜3の整数である。)
上記式(5)で表される分散剤の市販品としては、楠本化成(株)製PLAAD ED151等が挙げられる。以上のポリオキシエチレンアルキルリン酸エステルによれば、無機酸化物粒子の均一分散性をさらに向上させることができる。
上述の高分子量ポリカルボン酸のアミドアミン塩としては、下記式(6)で表されるものが好ましい。
(式(6)中、rおよびsは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求められたポリスチレン換算数平均分子量が、10000〜40000となるように選択される数である。)
上記式(6)で表される分散剤の市販品としては、楠本化成(株)製PLAAD ED211等が挙げられる。以上の高分子量ポリカルボン酸のアミドアミン塩によっても無機酸化物粒子の均一分散性をさらに向上させることができる。
上述のエチレンジアミンプロピレンオキサイド−エチレンオキサイド縮合物としては下記式(7)で表されるものが好ましい。
(式(7)中、tおよびuは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求められたポリスチレン換算数平均分子量が1000〜30000となるように選択される数である。)
上記式(7)で表される分散剤の市販品としては、(株)ADEKA製アデカプルロニックTR−701、TR−702、TR−704等が挙げられる。以上のエチレンジアミンプロピレンオキサイド−エチレンオキサイド縮合物によっても、無機酸化物粒子の均一分散性をさらに向上させることができる。
上述のポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、下記式(8)で表されるものが好ましい。
(式(8)中、R
4は炭素数1〜20のアルキル基である。vは10〜300の整数である。)
上記式(8)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルにおいて、R4としては、炭素数1〜12にアルキル基が特に好ましい。
上記式(8)で表される分散剤の市販品としては、(株)ADEKA製アデカトール(登録商標)TN/SO/UAシリーズ等が挙げられる。
上述のポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルとしては、下記式(9)で表される化合物が好ましい。
(式(9)中、R
5は炭素数1〜12のアルキル基である。wは10〜300の整数である。)
上記式(9)で表される分散剤の市販品としては、(株)ADEKA製アデカトール(登録商標)SP/PCシリーズ等が挙げられる。
上述のアルキルグルコシドとしては、下記式(10)で表されるものが好ましい。
(式(10)中、R
6、R
7、R
8、R
9およびR
10は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜12のアルキル基である。)
上述のポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては下記式(11)で表されるものが好ましい。
(式(11)中、R
21は、炭素数1〜20のアルキル基である。R
22は、水素または炭素数2〜13のアシル基である。yは10〜300の整数である。)
上記式(11)で表されるポリオキシエチレン脂肪酸エステルにおいて、R21としては、炭素数1〜12のアルキル基が特に好ましい。
上記式(11)で表される分散剤の市販品としては、(株)ADEKA製アデカエストール(登録商標)OEGシリーズ、アデカエストール(登録商標)TLシリーズ等が挙げられる。
上述のショ糖脂肪酸エステルとしては、下記式(12)で表されるものが好ましい。
(式(12)中、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29およびR
30はそれぞれ独立して、水素または炭素数2〜13のアシル基である。)
上述のソルビタン脂肪酸エステルとしては、下記式(13)で表されるものが好ましい。
(式(13)中、R
31は、−(CH
2CH
2O)
z1−Hで表される基である。z1は、10〜300の整数である。)
上記式(13)で表される分散剤の市販品としては、(株)ADEKA製アデカエストール(登録商標)Sシリーズ等が挙げられる。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、下記式(14)で表されるものが好ましい。
(式(14)中、R
32、R
33およびR
34は、それぞれ独立して、水素または−(CH
2CH
2O)
z2−Hで表される基である。z2は、10〜300の整数である。)
脂肪酸アルカノールアミドとしては、下記式(15)で表されるものが好ましい。
(式(15)中、R
35は、炭素数1〜20のアルキル基である。)
上記式(15)で表される脂肪酸アルカノールアミドにおいて、R35としては、炭素数1〜12のアルキル基が特に好ましい。
上記式(15)で表される分散剤の市販品としては、(株)ADEKA製アデカトール(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
本実施形態の感放射線性樹脂組成物において、[D]成分としての分散剤の配合量としては、特に限定されないが、[C]無機酸化物粒子が含有される場合、[C]無機酸化物粒子100質量部に対して、0.1質量部〜100質量部が好ましく、10質量部〜60質量部がより好ましい。[D]成分としての分散剤の配合量が0.1質量部より小さいと、[C]無機酸化物粒子の分散性が低下することによって、感放射線性樹脂組成物の塗布性や保存安定性の低下が生じるとともにパターニング性が低下するおそれがある。逆にこの配合量が100質量部を超えると、本実施形態の感放射線性樹脂組成物において、感放射線特性が低下するおそれがある。また、分散剤の配合が多すぎることによって、本実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いて得られる硬化物の基板等への密着性が低下するおそれや耐熱透明性が損なわれるおそれがある。
[D]成分としての分散剤は、感放射線性樹脂組成物を調製する際に添加してもよく、当該分散剤と[C]無機酸化物粒子とをあらかじめ[D]成分としての任意の溶剤中で混合して分散処理を行い、[C]無機酸化物粒子の分散液として取り扱ってもよい。
本実施形態の感放射線性樹脂組成物の[D]溶剤およびその他の任意成分としては、分散剤以外にも、溶剤や界面活性剤等を含有することができる。以下、本実施形態の感放射線性樹脂組成物の[D]溶剤およびその他の任意成分である、溶剤および界面活性剤について説明する。
[D]成分である溶剤は、本実施形態の感放射線性樹脂組成物を所望の固形分濃度に調整したり、[A]シロキサン化合物、[B]光重合開始剤、および[D]成分としてのその他任意成分を均一かつ安定に溶解させたり、[C]無機酸化物粒子を含有する場合、その[C]無機酸化物粒子を感放射線性樹脂組成物中に均一かつ安定に分散させることができる。また、本実施形態の感放射線性樹脂組成物を基板に塗布する際の、塗布性および成膜性を向上させることができる。すなわち、[D]成分である溶剤は、上述のような機能を有すれば特に限定されない。
[D]溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類を用いることができる。上述の加水分解性シラン化合物の加水分解・縮合により[A]シロキサン化合物を得る際の溶剤も[D]成分として用いることができる。[D]溶剤は、1種または2種以上を混合して用いることができる。
[D]成分としての界面活性剤は、本実施形態の感放射線性樹脂組成物の塗布性の改善、塗布ムラの低減、放射線照射部の現像性を改良するために添加することができる。好ましい界面活性剤の例としては、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
上述のフッ素系界面活性剤としては、例えば、1,1,2,2−テトラフルオロオクチル(1,1,2,2−テトラフルオロプロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフルオロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフルオロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフルオロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロペンチル)エーテル等のフルオロエーテル類;パーフルオロドデシルスルホン酸ナトリウム;1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフルオロドデカン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロデカン等のフルオロアルカン類;フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム類;フルオロアルキルオキシエチレンエーテル類;フルオロアルキルアンモニウムヨージド類;フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル類;パーフルオロアルキルポリオキシエタノール類;パーフルオロアルキルアルコキシレート類;フッ素系アルキルエステル類等を挙げることができる。
これらのフッ素系界面活性剤の市販品としては、エフトップ(登録商標)EF301、303、352(新秋田化成(株)製)、メガファック(登録商標)F171、172、173(DIC(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード(登録商標)AG710、サーフロン(登録商標)S−382、SC−101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、FTX−218((株)ネオス製)等を挙げることができる。
上述のシリコーン系界面活性剤の例としては、市販されている商品名で、SH200−100cs、SH28PA、SH30PA、ST89PA、SH190、SH 8400 FLUID(東レダウコーニングシリコーン(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
界面活性剤を使用する場合の配合量は、[A]シロキサン化合物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜10質量部、より好ましくは0.05質量部〜5質量部である。界面活性剤の配合量を0.01質量部〜10質量部とすることによって、本実施形態の感放射線性樹脂組成物の塗布性を最適化することができる。
本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、[D]成分として、必要に応じてさらに種々の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、トリフェニルスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩等の感放射線性酸発生剤;2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、O−カルバモイルヒドロキシアミド等の感放射線性塩基発生剤;2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等の酸化防止剤;2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン類等の紫外線吸収剤;各種の単官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物;シランカップリング剤等に代表される各種の加水分解性シラン化合物;式(2)および式(4)で表される光重合開始剤以外の他の光重合開始剤、を挙げることができる。
これら添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜選択することができる。
<感放射線性樹脂組成物の調製>
本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、上述した[A]シロキサン化合物および[B]光重合開始剤を所定の割合で混合することで調製される。また、本実施形態の感放射線性樹脂組成物が、必要に応じて、[C]無機酸化物粒子、[D]溶剤およびその他の任意成分、を含有する場合、[C]無機酸化物粒子、[D]溶剤およびその他の任意成分を所定の割合で混合することで、調製される。[A]シロキサン化合物は、あらかじめ溶剤に溶解させて、[A]シロキサン化合物の溶液として扱ってもよく、[B]光重合開始剤は、あらかじめ溶剤に溶解させて、[B]光重合開始剤の溶液として扱ってもよく、[C]無機酸化物粒子は、前述の通り[C]無機酸化物粒子の分散液として扱ってもよく、[D]成分としてのその他の任意成分は、あらかじめ溶剤に溶解させて、[D]その他任意成分の溶液として扱ってもよい。これらの場合に用いる溶剤は、前述の[D]溶剤と同様のものを用いることができる。また、[C]無機酸化物粒子を含有する場合は、前述の通り、必要に応じて分散処理を行ってもよい。
実施形態3.
<硬化膜およびゲート絶縁膜>
本実施形態の硬化膜は、上述した本実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いて形成される。以下で、本実施形態の硬化膜およびそれを形成する方法について説明する。本実施形態の硬化膜は、例えば、上述した本発明の実施形態の半導体素子のゲート絶縁膜、すなわち、本発明の実施形態のゲート絶縁膜として好適に用いることができる。
本実施形態の硬化膜の形成方法は、次に示す工程を含む。
(1)本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物の塗膜を基板上に形成する工程、
(2)工程(1)で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)工程(2)で放射線を照射された塗膜を現像する工程(現像工程)、および
(4)工程(3)で現像された塗膜を加熱する工程(加熱工程)
本実施形態の硬化膜の形成方法は、工程(1)〜工程(4)をこの順で含むことが好ましく、工程(1)〜工程(4)の各工程の前後には、必要に応じて、他の工程が含まれていてもよい。
次に、上述の工程(1)〜工程(4)の各工程について、より詳しく説明する。
(1)感放射線性樹脂組成物の塗膜を基板上に形成する工程
上述の工程(1)において、基板上に、上述した本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物を塗布した後、好ましくは塗布面を加熱(プレベーク)することにより溶剤を除去して、塗膜を形成する。
使用できる基板の例としては、ガラス、石英、シリコン、樹脂等を挙げることができる。樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、環状オレフィンの開環重合体およびその水素添加物等を挙げることができる。
そして、本実施形態の硬化膜が、上述した本実施形態の半導体素子のゲート絶縁膜として用られる場合、基板としては、上述のガラスや樹脂等からなる基板上に、ゲート電極(走査信号線)の形成された基板とすることができる。その場合、上述の工程(1)は、本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物を用い、ゲート電極を有する基板上に塗膜を形成する工程となる。
感放射線性樹脂組成物の塗布方法としては、特に限定されず、例えば、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法等の適宜の方法を採用することができる。これらの塗布方法の中でも、特にスピンコート法またはスリットダイ塗布法が好ましい。プレベークの条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、好ましくは70℃〜120℃で1分間〜10分間程度とすることができる。
(2)塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程
上述の工程(2)では、工程(1)で形成された基板上の塗膜の少なくとも一部に放射線を照射、すなわち露光する。この場合、塗膜の一部に露光する際には、例えば、所定のパターンを有するフォトマスクを介して露光する。本実施形態の硬化膜が、上述した本実施形態の半導体素子のゲート絶縁膜として用られる場合、フォトマスクのパターンは、ゲート絶縁膜のパターンに対応するものとなる。
露光に使用される放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用できる。これらの放射線の中でも、波長が190nm〜450nmの範囲にある放射線が好ましく、特に365nmの紫外線を含む放射線が好ましい。
本工程における露光量は、放射線の波長365nmにおける強度を、照度計(OAI model356、OAI Optical Associates Inc.製)により測定した値として、好ましくは10mJ/cm2〜1000mJ/cm2、より好ましくは20mJ/cm2〜600mJ/cm2である。
露光により、ネガ型の場合は、[B]光重合開始剤等からラジカル、酸、塩基等の活性種が生成されることで、塗膜中に存在する不飽和結合同士が結合したり、シロキサン化合物等の縮合反応により、シロキサン結合が生成することで、露光部分が現像液に対して不溶化する。
(3)現像工程
上述の工程(3)では、工程(2)による露光後の塗膜を現像することにより、不要な部分(ネガ型の場合は、放射線の非照射部分。)を除去して、所定のパターンを形成する。現像工程に使用される現像液としては、アルカリ(塩基性化合物)の水溶液が好ましい。アルカリの例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア等の無機アルカリ;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩等を挙げることができる。
また、このようなアルカリ水溶液には、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。アルカリ水溶液におけるアルカリの濃度は、適当な現像性を得る観点から、好ましくは0.05質量%〜5質量%とすることができる。現像方法としては、例えば、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、シャワー法等の適宜の方法を利用することができる。現像時間は、感放射線性樹脂組成物の組成によって異なるが、好ましくは10秒間〜180秒間程度である。このような現像処理に続いて、例えば、流水洗浄を30秒間〜90秒間行った後、例えば、圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、所望のパターンを形成することができる。
(4)加熱工程
上述の工程(4)では、ホットプレート、オーブン等の加熱装置を用い、パターニングされた膜を比較的高温で加熱することによって、感放射線性樹脂組成物の[A]シロキサン化合物の縮合反応を促進し、硬化膜を得ることができる。そして、その所定形状にパターニングされた硬化膜は、本実施形態の半導体素子のゲート絶縁膜として用いることができる。
本工程における加熱温度は、例えば、150℃〜350℃である。加熱時間は、加熱機器の種類により異なるが、例えば、ホットプレート上で加熱工程を行う場合には5分間〜30分間、オーブン中で加熱工程を行う場合には30分間〜90分間とすることができる。また、2回以上の加熱工程を行うステップベーク法等を用いることもできる。このようにして、目的とするパターン状の硬化膜を基板の表面上に形成することができる。ゲート電極上に硬化膜を形成しゲート絶縁膜として用いる場合には、本工程においてゲート電極が劣化することを防ぐため、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で加熱を行ってもよい。
形成された本実施形態の硬化膜は、樹脂からなり、絶縁性である。そして、本実施形態の硬化膜は、本実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いて形成されてパターニングが可能であり、また、高い可視光透過性を有する。そして、本実施形態の硬化膜は、耐熱性に優れ、その結果、耐熱透明性に優れる。さらに、本実施形態の硬化膜は、誘電特性である比誘電率が所望の値に制御されている。
したがって、上述したように、本実施形態の硬化膜は、ゲート絶縁膜として使用され、半導体素子を提供することが可能である。すなわち、本発明の実施形態のゲート絶縁膜は、本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いて形成された本発明の実施形態の硬化膜を用いたものとすることができる。言い換えれば、本発明の実施形態の半導体素子のゲート絶縁膜は、本実施形態の硬化膜と同様、本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物を用い、上述した本実施形態の硬化膜の形成方法に従って、形成することができる。
そのため、本実施形態の半導体素子のゲート絶縁膜は、耐熱性および高い可視光透過性を有し、耐熱透明性に優れる。そしてさらに、本実施形態のゲート絶縁膜は、比誘電率が所望の値に制御されている。
本実施形態のゲート絶縁膜の形成方法については、上述したように、それが本発明の実施形態の硬化膜を用いてなるものであることから、上述した本発明の実施形態の硬化膜の形成方法と同様となる。
すなわち、上述したのと同様のガラスや樹脂等からなる基板上にゲート電極(走査信号線)の形成された基板上に本発明の実施形態の硬化膜が形成され、それらが本実施形態のゲート絶縁膜となって半導体素子を構成する。したがって、本発明の実施形態のゲート絶縁膜の形成方法は、上述したのと同様の下記工程(1)〜工程(4)をこの順で含むことが好ましい。
(1)本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物を用い、ゲート電極を有する基板上に塗膜を形成する工程、
(2)工程(1)で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)工程(2)で放射線を照射された塗膜を現像する工程(現像工程)、および
(4)工程(3)で現像された塗膜を加熱する工程(加熱工程)
そして、本実施形態のゲート絶縁膜を形成するための工程(1)〜工程(4)のそれぞれは、上述した本実施形態の硬化膜の形成方法の対応する工程(1)〜工程(4)のそれぞれと同様である。尚、ゲート絶縁膜を形成するための上記の工程(1)は、硬化膜の形成方法において、基板として、上述のガラスや樹脂等からなる基板上にゲート電極(走査信号線)の形成されたものを用いた場合に対応する。したがって、以上の工程(1)〜工程(4)のそれぞれについて重複する説明は省略する。
実施形態4.
<表示装置>
本発明の実施形態の表示装置として、本実施形態の有機EL表示装置の例を用い、それについて図面を用いて説明する。
図2は、本実施形態の有機EL表示装置の主要部の構造を模式的に説明する断面図である。
本実施形態の有機EL表示装置1は、マトリクス状に形成された複数の画素を有するアクティブマトリクス型の有機EL表示装置である。有機EL表示装置1は、トップエミッション型、ボトムエミッション型のいずれでもよい。有機EL表示装置1は、基板2上の各画素部分において、上述した図1の、本発明の実施形態の半導体素子であるTFT3を配置して有する。したがって、図2に示す本実施形態の有機EL表示装置1において、図1のTFT3と共通する構成要素については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
有機EL表示装置1の基板2については、有機EL表示装置1がボトムエミッション型である場合、基板2は透明であることが求められるため、基板2の材料の例として、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)等の透明樹脂や無アルカリガラス等のガラス等が用いられる。一方、有機EL表示装置1がトップエミッション型の場合には、基板2は透明である必要はないので、基板2の材料として任意の絶縁体を用いることができる。ボトムエミッション型と同様、無アルカリガラス等、ガラス材料を用いることも可能である。
TFT3は、上述したように、基板2上に、走査信号線(図示されない)の一部をなすゲート電極4と、ゲート電極4を被覆するゲート絶縁膜5と、ゲート電極4上にゲート絶縁膜5を介して配置された半導体層6と、映像信号線(図示されない)の一部をなして半導体層6に接続する第1のソース−ドレイン電極7と、半導体層6に接続する第2のソース−ドレイン電極8とを有して構成されている。
そして、TFT3は、半導体層6とゲート電極4とが、ゲート絶縁膜5を介して重畳する構造を有する半導体素子である。また、TFT3は、基板2上、ゲート電極4とゲート絶縁膜5と半導体層6とをこの順で積層して構成されたボトムゲート構造を有する。
有機EL表示装置1においては、基板2上のTFT3の上方を被覆するよう、無機絶縁膜19の上に第1の絶縁膜10が配置されている。この第1の絶縁膜10は、基板2上に形成されたTFT3による凹凸を平坦化する機能を備える。第1の絶縁膜10は、感放射線性の樹脂組成物を用いて形成された絶縁性の膜とすることができる。すなわち、第1の絶縁膜10は、有機材料を用いて形成された有機膜とすることができる。第1の絶縁膜10は、平坦化膜としての優れた機能を有することが好ましく、この観点から厚く形成されることが好ましい。例えば、第1の絶縁膜10は、1μm〜6μmの膜厚で形成することができる。第1の絶縁膜10は、公知の方法に従い、塗布の後、露光と現像によるパターニングを行い、硬化を行って形成することができる。
第1の絶縁膜10上には、画素電極をなす陽極11が配置される。陽極11は、導電性の材料からなる。陽極11の材料は、有機EL表示装置1が、ボトムエミッション型かトップエミッション型かによって異なる特性のものを選択することが好ましい。ボトムエミッション型の場合には、陽極11が透明であることが求められるので、陽極11の材料としては、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)、酸化スズなどが選択される。一方、有機EL表示装置1がトップエミッション型の場合には、陽極11に光反射性が求められ、陽極11の材料としては、APC合金(銀、パラジウム、銅の合金)やARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)等が選択される。陽極11の厚さは、100nm〜500nmとすることが好ましい。
第1の絶縁膜10上に配置された陽極11が第2のソース−ドレイン電極8と接続するため、第1の絶縁膜10には、第1の絶縁膜10を貫通するスルーホール12が形成されている。スルーホール12は第1の絶縁膜10の下層にある無機絶縁膜19も貫通するように形成される。第1の絶縁膜10は、上述したように、感放射線性の樹脂組成物を用いて形成することができる。したがって、上述した形成方法に従い、感放射線性の樹脂組成物の塗膜に放射線を照射して所望形状の貫通孔を有する第1の絶縁膜10を形成した後、この第1の絶縁膜10をマスクとして無機絶縁膜19に対してドライエッチングを行うことにより、スルーホール12を完成することができる。尚、TFT3上に無機絶縁膜19が配置されていない構造の場合、第1の絶縁膜10に放射線を照射して形成される貫通孔がスルーホール12を構成する。その結果、陽極11は、第1の絶縁膜10の少なくとも一部を覆うとともに、第1の絶縁膜10を貫通するよう第1の絶縁膜10に設けられたスルーホール12を介して、TFT3に接続する第2のソース−ドレイン電極8と接続することができる。
有機EL表示装置1において、第1の絶縁膜10上の陽極11の上には、有機発光層14の配置領域を規定する隔壁となる第2の絶縁膜13が形成されている。第2の絶縁膜13は、上述した第1の絶縁膜10と同様、感放射線性の樹脂組成物を用いて形成することができる。すなわち、感放射線性の樹脂組成物を用い、上述したのと同様の形成方法に従って塗膜をパターニングし、硬化膜として形成することができる。第2の絶縁膜13は、例えば、平面視で格子状の形状を有することができる。この第2の絶縁膜13に規定される領域内には、電界発光する有機発光層14が配置されている。有機EL表示装置1において、第2の絶縁膜13は、有機発光層14の周囲を包囲する障壁となって、互いに隣接する複数画素のそれぞれを区画する。
有機EL表示装置1において、第2の絶縁膜13の高さ(第2の絶縁膜13の上面と有機発光層14の配置領域での陽極11の上面との距離)は、0.1μm〜2μmであることが好ましく、0.8μm〜1.2μmであることがより好ましい。第2の絶縁膜13の高さが2μm以上であった場合、第2の絶縁膜13の上方で封止基板20とぶつかる恐れがある。また、第2の絶縁膜13の高さが0.1μm以下であった場合、第2の絶縁膜13によって規定された領域内に、インクジェット法によってインク状の発光材料組成物を塗布しようとするときに、発光材料組成物が第2の絶縁膜13から漏れ出すおそれがある。
有機EL表示装置1の第2の絶縁膜13は、上述したように、感放射線性の樹脂組成物を用い、上述した形成方法に従って、その塗膜にパターニング等を施すことによって硬化膜として形成することができる。すなわち、第2の絶縁膜13は、樹脂を含んで構成することができる。第2の絶縁膜13は、インクジェット法によってインク状の発光材料組成物を塗布する場合には、有機発光材料を含むインク状の発光材料組成物が塗布される領域を規定することから、濡れ性が低いことが好ましい。第2の絶縁膜13の濡れ性を特に低く制御する場合には、第2の絶縁膜13をフッ素ガスでプラズマ処理することが可能であり、また、第2の絶縁膜13を形成する感放射線性の樹脂組成物に撥液剤を含有させてもよい。プラズマ処理は有機EL表示装置1の他の構成部材に悪影響を与えることがあるので、第2の絶縁膜13を形成する感放射線性の樹脂組成物に撥液剤を含有させるほうが好ましい場合がある。
尚、本発明の実施形態の有機EL表示装置1において、第1の絶縁膜10を形成する感放射線性の樹脂組成物には、上述した、本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いることができる。また、第2の絶縁膜13を形成する感放射線性の樹脂組成物には、上述した、本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いることができる。
第2の絶縁膜13に規定される領域内には、電界を印加されて発光する有機発光層14が配置されている。有機発光層14は、電界発光する有機発光材料を含む層である。
有機発光層14に含まれる有機発光材料は低分子有機発光材料であっても、高分子有機発光材料であってもよい。例えば、Alq3、BeBq3等の基材母体にキナクリドンやクマリンをドープした材料を用いることができる。また、インクジェット法による有機発光材料の塗布法を用いる場合には、それに好適な高分子有機発光材料であることが好ましい。高分子有機発光材料としては、例えば、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリアセチレン(Poly acetylene)およびその誘導体、ポリフェニレン(Poly phenylene)およびその誘導体、ポリパラフェニレンエチレン(Poly para phenylene ethylene)およびその誘導体、ポリ3−ヘキシルチオフェン(Poly 3−hexyl thiophene(P3HT))およびその誘導体、ポリフルオレン(Poly fluorene (PF))およびその誘導体等を選択して用いることができる。
有機発光層14は、第2の絶縁膜13によって規定された領域内で陽極11上に配置される。有機発光層14の厚さは50nm〜100nmであることが好ましい。ここで有機発光層14の厚さとは陽極11上の有機発光層14の底面から、陽極11上の有機発光層14の上面までの距離を意味する。
尚、陽極11と有機発光層14との間には、正孔注入層および/または中間層が配置されていてもよい。陽極11と有機発光層14との間に、正孔注入層および中間層が配置される場合、陽極11上に正孔注入層が配置され、正孔注入層上に中間層が配置され、そして中間層上に有機発光層14が配置される。また、陽極11から有機発光層14へ効率的に正孔を輸送できる限り、正孔注入層および中間層は省略されてもよい。
有機EL表示装置1では、有機発光層14を覆い、画素区画のための第2の絶縁膜13を覆って陰極15が形成されている。陰極15は、複数の画素を共通に覆って形成され、有機EL表示装置1の共通電極をなす。
本実施形態の有機EL表示装置1は、有機発光層14上に陰極15を有し、陰極15は、導電性部材からなる。陰極15の形成に用いる材料は、有機EL表示装置1がボトムエミッション型か、トップエミッション型かによって異なる。トップエミッション型の場合には、陰極15は、可視光透過性の電極を構成するITO電極やIZO電極等であることが好ましい。一方、有機EL表示装置1がボトムエミッション型の場合には陰極15が可視光透過性である必要はない。その場合、陰極15の構成材料は、導電性であれば特に限定されないが、例えば、バリウム(Ba)、酸化バリウム(BaO)、アルミニウム(Al)およびAlを含む合金等を選択することも可能である。
尚、陰極15と有機発光層14との間には、例えば、バリウム(Ba)、フッ化リチウム(LiF)等からなる電子注入層が配置されていてもよい。
陰極15の上には、パッシベーション膜16を設けることができる。パッシベーション膜16は、SiNや窒化アルミニウム(AlN)等の金属窒化物等を用い、それらを単独でまたは積層して形成することができる。パッシベーション膜16の作用により、有機EL表示装置1内への水分や酸素の浸入を抑制することができる。
このように構成された基板2の、有機発光層14が配置された主面は、外周端部付近に塗布されたシール剤(図示されない)を用い、封止層17を介して、封止基板20により封止することが好ましい。封止層17は、乾燥された窒素ガス等の不活性なガスの層とするか、または、接着剤等の充填材料の層とすることができる。また、封止基板20としては、無アルカリガラス等のガラス基板を用いることができる。
以上の構造を有する本実施形態の有機EL表示装置1は、構成要素であるTFT3のゲート絶縁膜5が、パターニング性を備えた本実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いて形成されている。TFT3のゲート絶縁膜5は、上述した本発明の実施形態のゲート絶縁膜となる。すなわち、ゲート絶縁膜5は、耐熱性と透明性、さらに耐熱透明性を備えるとともに、所望の誘電特性を有するように制御されている。
したがって、本実施形態の有機EL表示装置1は、そのTFT3において、本実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いた塗布型の本実施形態のゲート絶縁膜により、その誘電特性の制御と絶縁性を実現する。すなわち、本実施形態の有機EL表示装置1は、TFT3を形成する際のゲート絶縁膜5の形成において、大規模な装置が必要となる真空プロセスを用いない。そして、本実施形態の有機EL表示装置1は、優れた表示品位とともに高い生産性を実現する。
以下、実施例に基づき本発明の実施形態を詳述するが、この実施例によって本発明が限定的に解釈されるものではない。
以下の合成例から得られたシロキサン化合物の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、下記の仕様によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。
装置:GPC−101(昭和電工(株)製)
カラム:GPC−KF−801、GPC−KF−802、GPC−KF−803およびGPC−KF−804(昭和電工(株)製)を連結したもの
移動相:テトラヒドロフラン
また、以下の合成例から得られたシロキサン化合物を含む溶液の固形分濃度は、一定量のシロキサン化合物を含む溶液を計りとり、175℃のホットプレート上で60分加熱した後の残留物の質量を測定し、以下の式で求めた。
(固形分濃度(質量%))=(加熱後の残留物の質量)/(加熱前のシロキサン化合物を含む溶液の質量)×100
[A]シロキサン化合物の合成
[合成例1]シロキサン化合物(A−1)の合成
撹拌機付の容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル80質量部を仕込み、続いて、加水分解性シラン化合物を合計で100質量部(メチルトリメトキシシラン(MTMS)45モル%、ジメトキシジメチルシラン(DMDMS)30モル%、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)25モル%)を仕込み、溶液温度が60℃になるまで加熱した。溶液温度が60℃に到達後、ギ酸0.5質量部、イオン交換水25質量部を仕込み、75℃になるまで加熱し、3時間保持した。45℃に冷却後、脱水剤としてオルト蟻酸メチル28質量部を加え、1時間攪拌した。さらに溶液温度を40℃にし、温度を保ちながらエバポレーションして濃縮することで、イオン交換水及び加水分解縮合で発生したメタノールを除去した。その後、固形分濃度が35質量%になるようプロピレングリコールモノメチルエーテルを追加して希釈し、シロキサン化合物(A−1)を含む溶液を得た。得られたシロキサン化合物(A−1)の重量平均分子量(Mw)は1810であり、分子量分布分散度(Mw/Mn)は1.6であった。
[合成例2]シロキサン化合物(A−2)の合成
加水分解性シラン化合物として、MTMSを25モル%、DMDMSを30モル%、MPTMSを45モル%、合計で100質量部を用いたこと以外は、合成例1と同様にして、シロキサン化合物(A−2)を含む溶液を得た。得られたシロキサン化合物(A−2)の重量平均分子量(Mw)は1720であり、分子量分布分散度(Mw/Mn)は1.6であった。
[合成例3]シロキサン化合物(A−3)の合成
加水分解性シラン化合物として、MTMSを25モル%、フェニルトリメトキシシラン(PTMS)を50モル%、MPTMSを25モル%、合計で100質量部を用い、ギ酸0.75質量部を用いたこと以外は、合成例1と同様にして、シロキサン化合物(A−3)を含む溶液を得た。得られたシロキサン化合物(A−3)の重量平均分子量(Mw)は1360であり、分子量分布分散度(Mw/Mn)は1.5であった。
[合成例4]シロキサン化合物(A−4)の合成
加水分解性シラン化合物として、MTMSを35モル%、DMDMSを50モル%、MPTMSを15モル%、合計で100質量部を用いたこと以外は、合成例1と同様にして、シロキサン化合物(A−4)を含む溶液を得た。得られたシロキサン化合物(A−4)の重量平均分子量(Mw)は1420であり、分子量分布分散度(Mw/Mn)は1.5であった。
[合成例5]シロキサン化合物(A−5)の合成
加水分解性シラン化合物として、MTMSを45モル%、DMDMSを30モル%、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(APTMS)を25モル%、合計で100質量部を用いたこと以外は、合成例1と同様にして、シロキサン化合物(A−5)を含む溶液を得た。得られたシロキサン化合物(A−5)の重量平均分子量(Mw)は1780であり、分子量分布分散度(Mw/Mn)は1.6であった。
[合成例6]シロキサン化合物(A−6)の合成
加水分解性シラン化合物として、MTMSを45モル%、DMDMSを30モル%、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(MPTES)を25モル%、合計で100質量部を用いたこと以外は、合成例1と同様にして、シロキサン化合物(A−6)を含む溶液を得た。得られたシロキサン化合物(A−6)の重量平均分子量(Mw)は1540であり、分子量分布分散度(Mw/Mn)は1.6であった。
[合成例7]シロキサン化合物(A−7)の合成
加水分解性シラン化合物として、MTMSを45モル%、DMDMSを30モル%、スチリルトリメトキシシラン(StTMS)を25モル%、合計で100質量部を用いたこと以外は、合成例1と同様にして、シロキサン化合物(A−7)を含む溶液を得た。得られたシロキサン化合物(A−7)の重量平均分子量(Mw)は1610であり、分子量分布分散度(Mw/Mn)は1.6であった。
[合成例8]シロキサン化合物(A−8)の合成
加水分解性シラン化合物として、MTMSを45モル%、DMDMSを30モル%、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)を25モル%、合計で100質量部を用いたこと以外は、合成例1と同様にして、シロキサン化合物(A−8)を含む溶液を得た。得られたシロキサン化合物(A−8)の重量平均分子量(Mw)は1850であり、分子量分布分散度(Mw/Mn)は1.7であった。
[合成例9]シロキサン化合物(A−9)の合成
加水分解性シラン化合物として、テトラエトキシシラン(TEOS)を30モル%、DMDMSを45モル%、MPTMSを25モル%、合計で100質量部を用いたこと以外は、合成例1と同様にして、シロキサン化合物(A−9)を含む溶液を得た。得られたシロキサン化合物(A−9)の重量平均分子量(Mw)は2230であり、分子量分布分散度(Mw/Mn)は2.0であった。
[合成例10]シロキサン化合物(A−10)の合成
加水分解性シラン化合物として、MTMSを40モル%、DMDMSを30モル%、MPTMSを25モル%、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(SAPTMS)を5モル%、合計で100質量部を用いたこと以外は、合成例1と同様にして、シロキサン化合物(A−10)を含む溶液を得た。得られたシロキサン化合物(A−10)の重量平均分子量(Mw)は1700であり、分子量分布分散度(Mw/Mn)は1.6であった。
[比較合成例1]シロキサン化合物(a−1)の合成
加水分解性シラン化合物を合計で100質量部(MTMSを45モル%、DMDMSを30モル%、MPTMSを25モル%)を混合し、加水分解縮合反応をせずにそのまま以降の評価に用いた。固形分濃度は、加水分解性シラン化合物が完全に加水分解縮合したと仮定したときの理論重量を固形分重量とし、固形分濃度が35質量%になるようプロピレングリコールモノメチルエーテルを追加した。この混合物をシロキサン化合物(a−1)を含む溶液とした。
[比較合成例2]シロキサン化合物(a−2)の合成
加水分解性シラン化合物として、TEOSを100質量部用い、ギ酸を0.3質量部用いたこと以外は、合成例1と同様にして、シロキサン化合物(a−2)を含む溶液を得た。得られたシロキサン化合物(a−2)の重量平均分子量(Mw)は2660であり、分子量分布分散度(Mw/Mn)は2.3であった。
[実施例1]
<感放射線性樹脂組成物の調製>
合成例1で得られたシロキサン化合物(A−1)を含む溶液(化合物(A−1)50質量部(固形分)に相当する量)に、[B]光重合開始剤として、B−1:上述した化合物(2−13)を4質量部加え、[C]無機酸化物粒子として、シリカ粒子(C−1)の分散液(商品名 IPA−ST、日産化学工業(株)社製)を50質量部(固形分)に相当する量加え、調製される感放射線性樹脂組成物の固形分濃度が25質量%になるように[D]成分としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加し、感放射線性樹脂組成物(PA−1)を調製した。
同様にして、表1の配合に従って、実施例2〜15に対応する感放射線性樹脂組成物(PA−2)〜(PA−15)および、比較例1〜4に対応する感放射線性樹脂組成物(Pa−1)〜(Pa−4)を調製した。
実施例および比較例で用いた各成分の詳細を以下に示す。
[B]光重合開始剤
B−1:上述の化合物(2−13)(商品名:IRGACURE(登録商標) OXE 01、BASF社製)
B−2:上述の化合物(2−1)
B−3:上述の化合物(4−6)(商品名:IRGACURE(登録商標) 819、BASF社製)
B−4:上述の化合物(4−1)(商品名:LUCIRIN(登録商標) TPO、BASF社製)
b−1:オキシムエステル系光重合開始剤(商品名:IRGACURE(登録商標) OXE 02、BASF社製)
b−2:アセトフェノン系光重合開始剤(商品名:IRGACURE(登録商標) 369、BASF社製)
[C]無機酸化物粒子として、
C−1:シリカ粒子の分散液
(商品名:IPA−ST、日産化学工業(株)社製)
C−2:ジルコニア粒子の分散液(商品名:ID191、テイカ(株)社製)
C−3:チタニア粒子の分散液(商品名:TS−103、テイカ(株)社製)
<硬化膜の形成>
上述した感放射線性樹脂組成物(PA−1)を用い、スピンナーを使用してガラス基板およびTi膜付きガラス基板に塗布した後、ホットプレート上で100℃、2分間プレベークして塗膜を形成した。次いで、(株)トプコン製露光機TME−400PRJを用い、10μm幅/30μm幅のライン/スペースパターン、30μm径のホールパターン、1cm角以上の面積の露光部分、および1cm角以上の面積の未露光部分、のレイアウトを有するネガ型フォトマスクを介し、露光ギャップ(塗膜付き基板とフォトマスクの間隔)を50μmとし、塗膜に100mJ/cm2の露光量で紫外線を露光した。続いて、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に塗膜付き基板を浸漬し、25℃で60秒現像した後、純水で1分間洗浄し、水滴を飛ばして風乾した。さらに230℃のオーブン中で30分間、次いで350℃のオーブン中で30分間、加熱することにより、膜厚1.5μmの硬化膜を形成した。
同様にして、実施例2〜15に対応する感放射線性樹脂組成物(PA−2)〜(PA−15)および、比較例1〜4に対応する感放射線性樹脂組成物(Pa−1)〜(Pa−4)についても、ガラス基板上およびTi膜付き基板上に、膜厚1.5μmの硬化膜を形成した。
尚、実施例12の感放射線性樹脂組成物(PA−12)、および比較例3の感放射線性樹脂組成物(Pa−3)はアルカリ現像液への溶解性が高いと予想されたため、硬化膜の形成にあたっては、パターンの剥離を抑制するため、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液による現像の代わりに、0.4質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像を行った。
<物性評価>
上記方法に従って形成された硬化膜を用い、以下で説明する方法に従い、その透明性、耐熱透明性、基板への密着性、クラック耐性およびパターン解像性を評価した。評価結果は、表1にまとめて示す。
(1)透明性の評価
ガラス基板上に1cm角以上の面積で形成した膜厚1.5μmの硬化膜について、紫外可視分光光度計(日本分光(株)製V−670)を用い、ガラス基板のみの測定値をリファレンスとして、波長400〜800nmの範囲で、波長別の光線透過率(%)を測定した。当該波長別の光線透過率(%)を元に、CIE表色系における、XYZの各値を、D65光源、2度視野の条件で算出した。算出したXYZの各値を元に、ASTM E313規格におけるYI値(Yellowness Index、黄色度)を算出した。透明性の判定基準は、次のようにした。
波長400nmにおける光線透過率(%)が95%以上、かつ、YI値が1.0以下であれば透明性は良好と判定した。いずれか一方でも基準を満たさない場合は、透明性は不良と判定した。
(2)耐熱透明性の評価
上記「(1)透明性の評価」で光線透過率およびYI値を測定した硬化膜付きガラス基板を、350℃のオーブン中で30分間、追加で加熱した。その後、上記「(1)透明性の評価」で光線透過率を測定した箇所と同一の箇所を、再度、上記「(1)透明性の評価」の方法で、波長別の光線透過率(%)を測定し、YI値を算出した。透明性の判定基準は、次のようにした。
波長400nmにおける光線透過率(%)が95%以上、かつ、YI値が1.0以下であれば耐熱透明性は良好と判定した。いずれか一方でも基準を満たさない場合は、耐熱透明性は不良と判定した。
(3)基板への密着性の評価
ガラス基板およびTi膜付きガラス基板のそれぞれに、1cm角以上の面積で形成した膜厚1.5μmの硬化膜について、「JIS K5400−1990の8.5.3付着性碁盤目テープ法」を行い、碁盤目100個中で残った碁盤目の数を求めた。尚、Ti膜付きガラス基板への密着性は、ゲート電極の金属に対する密着性に対応している。密着性の判定基準は、次のようにした。
ガラス基板とTi膜付きガラス基板の両方で、碁盤目100個中80個以上が残存していれば、密着性は良好と判定した。いずれか一方でも基準を満たさない場合は、密着性は不良と判定した。
(4)クラック耐性の評価
ガラス基板およびTi膜付きガラス基板のそれぞれに、膜厚1.5μmの硬化膜パターンを形成し、23℃で24時間放置した。その後、クラックが発生しているか否かを、光学顕微鏡にて確認した。尚、Ti膜付きガラス基板上でのクラック耐性は、ゲート電極の金属上でのクラック耐性に対応している。クラック耐性の判定基準は、光学顕微鏡で1mm角の範囲の硬化膜を観察した場合に基づき、次の評価を行った。
○:クラックが見当たらない。
×:クラックが見つかる、または膜全面に無数のクラックがある。
そして、ガラス基板とTi膜付きガラス基板の両方が「○」であれば、クラック耐性は良好と判定した。いずれか一方でも「×」であればクラック耐性は不良と判定した。
(5)パターン解像性の評価
ガラス基板およびTi膜付きガラス基板のそれぞれに、膜厚1.5μmの硬化膜パターンを形成した。尚、Ti膜付きガラス基板上でのパターン解像性は、ゲート電極の金属上でのパターン解像性に対応している。パターン解像性の判定基準は、10μm幅/30μm幅のライン/スペースパターン、および30μm径のホールパターンについて、次の評価を行った。
○:前述のパターンが解像可能であり、かつパターンの剥離がない。
×:前述のパターンが解像できていない箇所があるか、あるいはパターン剥離がある。
そして、ガラス基板とTi膜付きガラス基板の両方が「○」であれば、パターン解像性は良好と判定した。いずれか一方でも「×」であればパターン解像性は不良と判定した。
同様に形成された、実施例2〜15に対応する感放射線性樹脂組成物(PA−2)〜(PA−15)の硬化膜、および、比較例1〜4に対応する感放射線性樹脂組成物(Pa−1)〜(Pa−4)の硬化膜についても、上記方法に従い、その透明性、耐熱透明性、基板への密着性、クラック耐性およびパターン解像性を評価した。評価結果は、表1にまとめて示す。
表1に示すように、実施例1〜15の感放射線性樹脂組成物を用いて形成された硬化膜は、比較例と比べた場合、透明性、耐熱透明性、クラック耐性およびパターン解像性のいずれもが良好な評価結果を示した。一方、比較例1〜2は、耐熱透明性が不良であった。比較例3は、パターン剥離が多く、透明性、耐熱透明性、密着性、クラック耐性の評価に供することができる硬化膜を作製できなかった。比較例4は、クラック耐性が不良であり、硬化膜全面に微細なクラックが入ったため、透明性、耐熱透明性、密着性の評価に供することができる硬化膜を作製できなかった。
本結果から、実施例1〜15の感放射線性樹脂組成物を用いて形成された硬化膜は、アクティブマトリクス型の有機EL表示装置や液晶表示装置が有する、TFT等の半導体素子のゲート絶縁膜に利用するのに好適であることがわかった。