{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係るエアバッグ装置について説明する。図1は本実施形態に係るエアバッグ装置20の全体構成を示す断面図であり、図2及び図3は同エアバッグ装置20のディフューザ40を示す斜視図である。なお、図1及び図2は、インフレータからガスが供給されている状態を示しており、図3は、インフレータ22からガスが供給される前の初期状態を示している。
<エアバッグ装置の全体構成>
このエアバッグ装置20は、車両の乗員席前方に組込まれ、車両衝突時等に乗員前方で膨張展開して、乗員を受止めて衝撃を吸収する装置として構成されている。本エアバッグ装置20の適用箇所としては、例えば、運転席前方のステアリングホイールの中央部にあるカバー内、助手席前方のインストルメントパネル等が想定される。
本エアバッグ装置20がステアリングホイールの中央部にあるカバー内に組込まれた例を前提として、より具体的に説明する。カバーは樹脂等により形成されたパネル状の部材であり、このカバーの内面には、溝状のティアラインが形成されている。エアバッグ装置20は、エアバッグ30を畳んだ状態で本カバーの内側に組込まれている。そして、エアバッグ装置20の作動時には、エアバッグ30の膨張展開力によって、カバーがティアラインに沿って裂け、これにより、当該カバーに開口が形成されるようになっている。エアバッグ30は、カバーに形成された開口を通じてカバーの外方(乗員側)に向けて膨張展開し、乗員を受止め可能な状態となる。
エアバッグ装置20は、インフレータ22と、エアバッグ30と、ディフューザ40とを備える。
インフレータ22は、点火装置及びガス発生剤等を有しており、車両の衝撃検知部等からの点火命令信号等を受けて前記点火装置を発火させ、この発火によりガス発生剤を燃焼させてガスを発生させる。
より具体的には、インフレータ22は、インフレータ本体部23と、つば部24とを備える。
インフレータ本体部23は、短円柱状の外形状を有しており、その内部に点火装置及びガス発生剤等が収容されている。また、インフレータ本体部23のうちつば部24の一主面面側に突出する部分(エアバッグ30内に配設される部分)の外周には、複数のガス噴出孔23hが形成されている。
インフレータ本体部23の軸方向中間部の外周囲につば部24が形成されている。つば部24のうち後述するボルト35に対応する位置には、ボルト挿通孔24hが形成されている。なお、つば部24は、平面視円板状であっても、方形板状であってもよい。
エアバッグ30は、インフレータ取付孔32hが形成された袋状に形成されている。上記インフレータ取付孔32hには、インフレータ22がエアバッグ30内にガスを供給可能な状態で取付けられる。そして、インフレータ22より供給されるガスによって、エアバッグ30が袋状に膨張展開可能とされている。
より具体的には、エアバッグ30は、布、樹脂シート等の柔軟なシート状部材によって、インフレータ取付孔32hを有する袋状に形成されている。エアバッグ30の膨張展開形状は、円盤状の袋形状であってもよいし、回転楕円形状等所定方向に長い袋形状であってもよい。エアバッグ30の膨張展開形状は、本エアバッグ30が設置される箇所、当該設置箇所と乗員との位置関係等を考慮して、当該乗員の衝撃を効果的に受止めることができる形状に設定される。
上記インフレータ22は、エアバッグ30内にガスを供給可能な位置及び姿勢で、エアバッグ30のインフレータ取付孔32hに取付けられている。このエアバッグ30は、通常状態では、畳まれた状態で、カバーの内側に配設されている。エアバッグ30は、蛇腹状に畳まれていてもよいし、ロール状に畳まれていてもよい。そして、車両衝突時等には、エアバッグ30は、インフレータ22より供給されるガスによって、カバーを割開いてカバー外に突出膨張して、車室側である乗員側に向けて袋状に膨張展開するようになっている。
ディフューザ40は、布、樹脂シート等の柔軟なシート状部材によって、長尺形状に形成されている。ディフューザ40は、その両端部がエアバッグ30内でインフレータ取付孔32hの周縁部に固定されることで、エアバッグ30内に設けられている。ここでは、ディフューザ40の両端部は、インフレータ取付孔32hの周縁部のうちインフレータ取付孔32hの中心を挟む2箇所に固定されている。換言すれば、ディフューザ40がインフレータ取付孔32hをエアバッグ30内側から跨ぐような状態で、当該ディフューザ40の両端部がインフレータ取付孔32hの周縁部に固定されている。
上記ディフューザ40は、初期状態においては、畳まれたエアバッグ30内に収容可能な状態に畳まれている。図3では、ディフューザ40が偏平な状態に畳まれた状態を示しているが、蛇腹状又はロール状に畳まれていてもよい。
そして、インフレータ22でガスが発生すると、インフレータ22のうちエアバッグ30内に配設された部分の外周のガス噴出孔23hからガスが噴出され、このガスがエアバッグ30内に供給される。これにより、エアバッグ30が膨張展開する。この際、ディフューザ40は、エアバッグ30の内側からインフレータ取付孔32hを跨ぐように、即ち、エアバッグ30の内側からインフレータ22を跨ぐように設けられている。このため、インフレータ22から供給されるガスの一部は、ディフューザ40の内側にも流れ込む。これにより、ディフューザ40は、その両端部を結ぶ方向に対して直交する側方から視た状態において(図1参照)、C字状をなすように隆起する。この状態において、インフレータ22から供給されるガスの一部がディフューザ40内に流れ込み、ディフューザ40によってそのガスの流れが規制される。例えば、エアバッグ30の膨張展開方向(インフレータ22に対向する方向)にガスが勢いよく流れ込まないようにガスの流れが規制される。
上記インフレータ22は、エアバッグ30のうちインフレータ取付孔32hの周縁部に固定されており、この固定構造例について説明しておく。
すなわち、エアバッグ装置20は、エアバッグ30のうちインフレータ取付孔32hの周縁部にインフレータ22を固定するための固定部材として、クッションリング34を備える。
クッションリング34は、金属板をプレス加工等することにより形成された部材であり、上記インフレータ取付孔32hと同形状の開口を有する板形状に形成されている。ここでは、クッションリング34の外形状は、方形状をなしているが、円形状をなしていてもよい。また、クッションリング34の外周縁部は、エアバッグ30内を向くように曲げられている。
クッションリング34の一主面(外周縁部が突出する方向とは逆側の面)には、固定用棒状部材として、ボルト35が突設されている。ボルト35は、クッションリング34の4つのコーナー部分に対応する位置に設けられている。
また、エアバッグ30のうちインフレータ取付孔32hの周縁部には、上記各ボルト35に対応するボルト挿通孔32haが形成されている。
さらに、エアバッグ30のうちインフレータ取付孔32hの周縁部の外側位置に、固定パネル38が配設される(図1参照)。固定パネル38は、例えば、ステアリングホイールのスポーク部分等に固定される部材であり、エアバッグ装置20を車両に対して固定支持する部分である。この固定パネル38は、金属板をプレス加工等することにより、或は、樹脂板等で形成されている。この固定パネル38にも、上記インフレータ取付孔32hと同形状の開口が形成されると共に、上記各ボルト35に対応するボルト挿通孔38hが形成されている。
そして、クッションリング34が、インフレータ取付孔32hの周縁部に対してエアバッグ30内側から重ねるように配設される。また、固定パネル38及びインフレータ22のつば部24が、この順で、インフレータ取付孔32hの周縁部に対してエアバッグ30外側から重ねるように配設される。この重ね合せ状態で、クッションリング34のボルト35が、インフレータ取付孔32hの周縁部のボルト挿通孔32ha、固定パネル38のボルト挿通孔38h及びつば部24のボルト挿通孔24hを貫通するように配設される。そして、つば部24から突出するボルト35の頭部に、ナット36が螺合締付けされると、クッションリング34とつば部24との間で、インフレータ取付孔32hの周縁部が挟込まれた状態となる。つまり、エアバッグ30とインフレータ22とは、上記挟込み構造と、ボルト35がインフレータ取付孔32hの周縁部のボルト挿通孔32haに挿通される構造とによって、固定される。なお、ボルト35及びナット36に代えて、クッションリング34に固定用棒状部材が突設され、この固定用棒状部材に他の固定部材がカシメ固定又は係止固定される構成等であってもよい。
また、本実施形態においては、上記クッションリング34によって、ディフューザ40もインフレータ取付孔32hの周縁部に固定されている。この固定構造については、後に説明する。もっとも、ディフューザが、クッションリングによってインフレータ取付孔の周縁部に固定されることは必須ではない。例えば、ディフューザが、縫合等の他の固定構造によって、インフレータ取付孔の周縁部に固定されていてもよい。
<ディフューザについて>
ディフューザ40についてより詳細に説明する。図4〜図8はディフューザ40を形成する手順を示す説明図である。図1〜図8に示すように、ディフューザ40は、布、樹脂シート等の柔軟なシート状部材によって、長尺形状に形成された部材である。このディフューザ40の両端側部分に、インフレータ22よりエアバッグ30内に供給されるガスによってガス溜り部46Aを形成可能なガス溜り形成部46が設けられている。
上記ガス溜り部46Aは、インフレータ22より供給されディフューザ40の内側に沿って流れるガスを受止めることによって、当該ガスを一時的に溜めると共に、その一時的に溜められたガス圧によって自ら膨張して膨張状態を維持しようとする部分である。ガス溜り形成部46は、このようなガスを溜める空間を形成する器状の部分を形成可能な部分である。ここでは、ガス溜り形成部46は、インフレータ22より供給されるガスによって、ディフューザ40の両端側部分の延在方向に沿って延びる筒状又は半筒状のガス溜り部46Aを形成可能に構成されている。
より具体的には、ディフューザ40は、長尺なシート状部材40Bによって形成されている(図4参照)。ここでは、シート状部材40Bは、その長手方向に沿って均等幅な細帯状に形成されている。もっとも、後の実施形態で説明するように、シート状部材40Bが、その長手方向に沿って均等幅であることは必須ではない。
シート状部材40Bのそれぞれの両側部が、シート状部材40Bの幅方向中央部に向けて折られることによって、ガス溜り形成部46が形成されている。ここでは、シート状部材40Bをその幅方向に4等分する3つの等分線のうち外側の2つの等分線L1.L2に沿って、シート状部材40Bの両側部が折られている。
ここでは、シート状部材40Bの両側部が、その両端側部分及びその中間部分で幅方向中央に向けておられている。
上記シート状部材40Bの両側部の側縁部、即ち、一対のガス溜り形成部46のそれぞれの側縁部同士が、シート状部材40Bの幅方向中央部で重ならないで対向している。これにより、一対のガス溜り形成部46のそれぞれの側縁部間の隙間を通って、ガスがガス溜り形成部46内に容易に流れ込む。一対のガス溜り形成部46のそれぞれの側縁部間の隙間寸法は、大きいほどガス溜り形成部46内にガスが流れ込み易くなる一方、ガス溜り部46Aが小さくなり形状維持し難くなる。一対のガス溜り形成部46のそれぞれの側縁部間の隙間寸法は、ガスの流れ、勢い、ディフューザ40において必要とされる形状維持等を考慮して適宜設定される。
シート状部材40Bの両側部が折られた部分のうち、シート状部材40Bの長手方向両端側部分は、インフレータ22より供給されるガスによって筒状又は半筒状をなす。即ち、シート状部材40Bの両端側部分のいずれか一方の側部に着目すると、当該一方の側部は、インフレータ22より供給されるガスによって半筒状をなす。また、シート状部材40Bの両端側部分の両側部に着目すると、当該両側の側部は、全体として、インフレータ22より供給されるガスによって筒状をなす。いずれに着目しても、シート状部材40Bの長手方向両端側部分の少なくとも一方の側部は、インフレータ22より供給されるガスによって筒状又は半筒状をなし、当該筒状又は半筒状を維持しようとすることによって、ディフューザ40がインフレータ22からエアバッグ30内に向けて立体的に広がった一定形状を維持しようとする。このため、シート状部材40Bの両側部が折られた部分のうち、シート状部材40Bの長手方向両端側部分は、インフレータ22より供給されるガスによってガス溜り部46Aを形成可能なガス溜り形成部46である。
また、シート状部材40Bの両側部が折られた部分のうち、シート状部材40Bの長手方向中間部分は、インフレータ22より供給されるガスによって大きく広がり、ディフューザ40の長手方向中間部に流れ込むガスの流れを規制する補助整流部分48としての役割を果す。ここでは、補助整流部分48は、インフレータ22から供給されるガスを、インフレータ22の周りに向かうように、ガスの流れを規制する。
また、ディフューザ40の両端部には、インフレータ本体部23の外形状に対応する凹部44a、44b及びボルト35を挿通可能なボルト挿通孔45hが形成されている。
より具体的には、ディフューザ40の両端の縁部の中央部に、半円状の凹部44aが形成され、当該縁部の両端に1/4円状の凹部44bが形成されている(図4参照)。そして、ディフューザ40の両側部を上記のように折った状態で、凹部44aに凹部44bが重ね合せるように配設され、ディフューザ40の両端部に、半円状の凹部44が形成されるようになってる(図5〜図7参照)。
また、ディフューザ40の両端部のうち上記凹部44a、44bの周りにボルト挿通孔45hが形成されている。ボルト挿通孔45hは、ディフューザ40の両側部を上記のように折った状態で、クッションリング34のボルト35に対応する位置に形成されている。
そして、ディフューザ40の各端部の凹部44内にインフレータ本体部23を部分的に配設した状態で、ボルト挿通孔45hがつば部24のボルト挿通孔24hに重なる位置に配設される。
上記ディフューザ40を、エアバッグ30に取付ける手順について説明する。
まず、図4に示す長尺なシート状部材40Bを準備し、そのシート状部材40Bの両側部をその幅方向中央に向けて折る(図5参照)。
この後、ディフューザ40の一端部の凹部44をクッションリング34の開口縁部に沿って配設し、クッションリング34に立設された4つのボルト35のうち隣合う2つのボルト35を、ディフューザ40の一端部のボルト挿通孔45hに貫通させる(図6及び図7参照)。
そして、ディフューザ40の他端部を曲げ返すようにして、ディフューザ40の他端部の凹部44をクッションリング34の開口縁部に沿って配設し、クッションリング34に立設された4つのボルト35のうち上記隣合う2つのボルト35に対向して隣合う2つのボルト35を、ディフューザ40の他端部のボルト挿通孔45hに貫通させる(図8参照)。
なお、上記のように、ボルト35がボルト挿通孔45hに貫通された状態で、ディフューザ40のうち両側部が折られた側の面は、クッションリング34側(つまり、インフレータ22側)を向いている。
なお、図7及び図8では、ディフューザ40とインフレータ22との位置関係に関する理解を容易にするため、インフレータ22が描かれているが、実際の組付け作業では、この段階では、インフレータ22は組付けられていない。
上記の作業後、ディフューザ40及びクッションリング34がエアバッグ30内に配設され、ボルト35が、インフレータ取付孔32hの周縁部のボルト挿通孔32haに貫通される。また、この後、固定パネル38及びインフレータ22が上記のように、エアバッグ30のうちインフレータ取付孔32hの周縁部の外側に配設されて、ボルト35が、固定パネル38のボルト挿通孔38h、つば部24のボルト挿通孔24hに貫通されて、当該ボルト35にナット36が締結される。これにより、ディフューザ40の両端部がクッションリング34とつば部24との間で挟込まれた状態となる。つまり、ディフューザ40の両端部とエアバッグ30とは、上記挟込み構造と、ボルト35がディフューザ40の両端部のボルト挿通孔45hに挿通される構造とによって、固定される。
上記ディフューザ40の両端部の固定構造では、シート状部材40Bの両側部が折られることによって、シート状部材40Bの幅方向中央部と両側部とが重なり合った部分の端部は、クッションリング34とつば部24との間で挟込まれてインフレータ取付孔32hの周縁部に固定されている。このため、シート状部材40Bの両側部の折構造、即ち、ガス溜り形成部46は、当該固定構造によって形成されている。
以上のように構成されたエアバッグ装置20のディフューザ40の動作について、図2、図3,図9〜図11を参照して説明する。なお、図9〜図11は、図3のIX−IX線断面におけるエアバッグ装置20の動作を示している。
まず、初期状態では、図3及び図9に示すように、ディフューザ40の両側部は、ディフューザ40の幅方向中央部のうちインフレータ22側の面に折重ねられた状態となっている。また、ディフューザ40全体としても、インフレータ22上に折られた状態となっている。
この状態で、インフレータ22よりガスが供給されると、図10に示すように、エアバッグ30が膨張展開すると共に、ガスがディフューザ40の内周部に吹付けられる。このガスの力によって、ディフューザ40が、インフレータ22からエアバッグ30内に向けてC字状に隆起するように立上がろうとする。また、ディフューザ40の内周部に吹付けられたガスは、ディフューザ40の両側部の側縁部間の隙間を通って、ガス溜り形成部46内に流れ込む(図10の矢符F1参照)。これにより、ディフューザ40の両端側部分の両側部のガス溜り形成部46が筒状又は半筒状をなすように膨らもうとする。また、ディフューザ40の長手方向中間部の両側部の補助整流部分48も大きく開こうとする。
そして、図11に示すように、ディフューザ40の両端側部分の両側部のガス溜り形成部46は、ディフューザ40の端部から長手方向中間部に向けて徐々に大きく広がる筒状又は半筒状をなすガス溜り部46Aを形成する。このガス溜り部46Aによって、ディフューザ40の両側側部分が一定形状に維持され、エアバッグ30内に供給されたガスの流れを規制するディフューザ40の状態が安定する。
上記状態において、ディフューザ40の長手方向中間部は、インフレータ22からのガスがエアバッグ30の膨張方向に向けて勢いよく流れ込まないように規制する役割を果す。特に、ディフューザ40の長手方向中間部の両側部の補助整流部分48は大きく開き、インフレータ22より供給されたガスを、インフレータ22周りに戻すように当該ガスの流れを規制する(図11の矢符F2参照)。
なお、当初、ディフューザ40の両端側部分の一方のガス溜り形成部46のみにガスが流入し、他方のガス溜り形成部46にガスが流れ込まなかった場合でも、一方のガス溜り形成部46がガス流入によって隆起するように立上がると、他方のガス溜り形成部46も持上げられるように変形し、この変形を契機として、当該他方のガス溜り形成部46にもガスが流入しやすくなる。このため、初期状態において、ディフューザ40の両端側部分の一方のガス溜り形成部46のみにガスが流入した場合であっても、やがては、両方のガス溜り形成部46にガスが流れ込み、ディフューザ40は所望形状に隆起してガスの整流を行えるようになる。
以上のように構成されたエアバッグ装置20によると、ディフューザ40の両端側部分に、インフレータ22により供給されるガスによってガス溜り部46Aを形成可能なガス溜り形成部46が設けられている。このため、エアバッグ30内にガスが流入し、ディフューザ40によってガスの流れが規制されている状態において、ディフューザ40の両端側部分にガス溜り部46Aが形成され、ディフューザ40の両端側部分が一定の形状に維持され易くなる。このため、ディフューザ40が一定の形状を維持し易くなり、エアバッグ30内に供給されたガスの流れを規制するディフューザ40の状態を安定させることができる。これにより、エアバッグ30の膨張展開動作が安定する。
なお、上記作用効果を奏するためには、ディフューザ40の両端側部分にガス溜り形成部46(ガス溜り部46A)が設けられればよい。従って、本実施形態では、シート状部材40Bの長手方向全体に亘って、その両側部を折っているが、シート状部材40Bの中央部を除く両端側部分のみで、その両側部が折られて、ガス溜り形成部46(ガス溜り部46A)が設けられてもよい(第2実施形態参照)。
また、上記実施形態では、ガス溜り形成部46は、ディフューザ40の両端部をエアバッグ30に固定する構造によって形成されている。具体的には、ディフューザ40の両端側部分の側部をディフューザ40の幅方向中央に向けて折ることによってガス溜り形成部46が形成され、ディフューザ40の両端側部分の幅方向中央部及び側部との重なり合い部分が、エアバッグ30のインフレータ取付孔32hの周縁部に固定されている。この固定構造によって、ディフューザ40の両端側部分を折った状態が維持され、もって、ガス溜り形成部46が形成されている。
このため、ディフューザ自体にガス溜り形成部を形成するための特別な加工を施さなくても、ディフューザ40の固定構造を利用してガス溜り形成部46を設けることができ、その加工工程数等を減らすことができる。
なお、ガス溜り形成部は、ディフューザの一部をディフューザの他の部分に縫合すること等によって形成されてもよい。
もっとも、この場合には、当該縫合箇所にインフレータ22からのガスが当ることがあり得るので、そのようなガスに耐え得るように強度対策をとるように考慮する必要がある。
しかしながら、上記のように、ディフューザ40の固定構造として、ボルト35とナット36との螺合締結構造を利用し、クッションリング34とナット36との間にインフレータ取付孔32hの周縁部とディフューザ40とを挟み込む構造を採用した上で、当該固定構造を利用してガス溜り形成部46を形成しているため、上記のような強度対策を考慮しなくてもよい。
また、ディフューザ40の両端部のうち折られて重なり合った部分が、エアバッグ30のインフレータ取付孔32hの周縁部に固定されているため、ディフューザ40の両端部が補強されることになり、ディフューザ40が固定箇所で破断し難くなる。
より具体的には、エアバッグ30とディフューザ40とは、クッションリング34とナット36(又はナット36により支持されるつば部24)による挟込み構造と、ボルト35がディフューザ40のボルト挿通孔45hに挿通される構造とによって、固定される。このため、ディフューザ40にガスが吹付けられると、ボルト35がディフューザ40のボルト挿通孔45hに貫通された部分に引っ張り力が集中し易い。そこで、上記のように、ディフューザ40の両端部のうち折られて重なり合った部分にボルト挿通孔45hを形成し、これにボルト35を貫通させる構成とすることで、ディフューザ40の両端部の固定箇所が破断し難くなる。
また、本実施形態では、エアバッグ30のうちインフレータ取付孔32hの周縁部に、インフレータ22をエアバッグ30に対して固定するための固定部材としてのクッションリング34が設けられ、ディフューザ40の両端部は当該クッションリング34によってインフレータ取付孔32hの周縁部に固定されている。このため、インフレータ22及びディフューザ40をエアバッグ30に固定するための構成を共通化してその構成の簡易化を図ることができる。
もっとも、上記取付のための構成が共通化されていることは必須ではない。例えば、ディフューザ40の両端部が別途縫合等によってエアバッグ30のうちインフレータ取付孔32hの周縁部に固定されていてもよい。
また、ガス溜り形成部46は、インフレータ22より供給されるガスによってディフューザ40の両端側部分の延在方向に沿って延びる筒状又は半筒状のガス溜り部を形成可能に構成されているため、ディフューザ40の両端側部分がその延在方向に沿った筒状又は半筒状をなすように維持され、これにより、ディフューザ40の状態を安定させることができる。
また、ガス溜り形成部46は、ディフューザ40の両端側部分の少なくとも一方の側部をディフューザ40の幅方向中央に向けて折ることによって形成されているため、ガス溜り形成部46を容易に形成できる。
もっとも、ディフューザの主たる部分を構成するシート状部材に、他のシート状部材を縫合等することによって、ガス溜り形成部46を形成するようにしてもよい。
また、本実施形態では、ディフューザ40の両端側部分のそれぞれの側部がディフューザ40の幅方向中央部に向けて折られることにより、ディフューザ40の両端側部分の両側部に一対のガス溜り形成部46が形成されている。
このため、インフレータ22からのガスによって、ディフューザ40の両端側部分の両側部を立上げるように一対のガス溜り部46Aを形成することができる。これにより、一対のガス溜り部46Aに流入したガスが漏れ難くなり、また、ディフューザ40の両端側部分の両側部がそれぞれ細長い形状に維持される。このため、ディフューザ40によるガスの流れの規制状態がより確実に一定状態に維持される。
特に、一対のガス溜り形成部46の側縁部を重ねないようにすることで、一対の前記ガス溜り形成部のそれぞれの側縁部同士の間からガスが流入し易くなり、より簡易な構成で、より確実にガス溜り部を形成することができる。
特に、ほぼ隙間無く対向する構成とすることで、一対のガス溜り形成部46内に流入したガスが漏れ難くなる。
もっとも、ディフューザ40の両端側部分のそれぞれにおいて、一方の側部のみにガス溜り形成部が形成されていてもよい。この場合において、ディフューザ40の両端側部分のそれぞれにおいて、同じ側の側部にガス溜り形成部が形成されていてもよいし、異なる側の側部にガス溜り形成部が形成されていてもよい。
また、ディフューザ40の長手方向中間部の両側部に、ディフューザ40の長手方向中間部に流れ込むガスを規制する補助整流部分48が設けられている。このため、ディフューザ40の長手方向中間部に流れ込んだガスの流れを多様な態様で規制することができる。ここでは、補助整流部分48は、ガスがインフレータ22の周りに向けて流れ込むようにガスの流れを規制することができる。
特に、本実施形態では、ディフューザ40の長手方向中間部の両側部を、ディフューザ40の長手方向両端側部分の両側部であってガス溜り形成部46を形成する部分と共に折ることで、補助整流部分48を形成しているため、当該補助整流部分48を容易に形成することができる。
なお、ディフューザ40の長手方向中間部の両側部の一方のみに補助整流部分が設けられていてもよい。また、補助整流部分48が設けられていることは必須ではない(第2実施形態参照)。
{第2実施形態}
第2実施形態に係るエアバッグ装置について説明する。図12は本実施形態に係るエアバッグ装置120の全体構成を示す断面図であり、図13及び図14は同エアバッグ装置120のディフューザ140を示す斜視図である。なお、図12及び図13は、インフレータからガスが供給されている状態を示しており、図14は、インフレータ22からガスが供給される前の初期状態を示している。なお、本実施の形態の説明において、上記実施形態で説明したものと同様構成部分については同一符号を付してその説明を省略する。
このエアバッグ装置120は、インフレータ22と、エアバッグ30と、ディフューザ140とを備える。
インフレータ22及びエアバッグ30は、上記実施形態で説明したものと同じである。インフレータ22及びディフューザ140は、上記実施形態と同様に、クッションリング34及びナット36を含む固定構造によって、エアバッグ30のインフレータ取付孔32hの周縁部に固定されている。
ディフューザ140は、エアバッグ30内でインフレータ22より供給されるガスの流れを規制するという点では、上記ディフューザ40と同じである。ディフューザ140が、上記ディフューザ40と異なる点は、次の通りである。
すなわち、ディフューザ140の両端側部分には、上記各ガス溜り形成部46に代えて、各ガス溜り形成部146が形成されている。
ガス溜り形成部146は、ガス溜り形成部46とは異なり、ディフューザ140の長手方向中央部に向けて開口している。
ここでは、ガス溜り形成部146の開口は、ディフューザ140の長手方向中間部及びディフューザ140の幅方向中央に向くように開口している。より具体的には、ガス溜り形成部146の開口は、その幅方向外側から中央に向けて、ディフューザ140の長手方向端部側に向かう形状(ここでは、弧状形状、その他、直線状に傾斜する形状等でもよい)に形成されている(図16参照)。このため、ディフューザ140の内側においてディフューザ140の長手方向中央から長手方向両端側に向うように流れるガス、及び、ディフューザ140の幅方向中央から幅方向外側に流れるガスのいずれもが、前記開口を通じてガス溜り形成部146内に流れ込み、ディフューザ140の長手方向中央に向けて開口するガス溜り部146Aを形成することができる。
なお、ガス溜り形成部の開口は、ディフューザ140の幅方向に沿って延在し、ディフューザ140の長手方向中間部のみに向けて開口する構成であってもよい。
また、本ディフューザ140では、第1実施形態における補助整流部分48が省略され、ディフューザ140の長手方向中央部がその他の部分よりも細幅に形成されている。なお、このように、ディフューザの長手方向中央部が細幅に形成されていることは必須ではない。
上記ディフューザ140の形成手順例について説明する。図15〜図17は、ディフューザ140を形成する手順を示す説明図である。
ディフューザ140は、細長帯状のシート状部材140Bによって形成されている(図15参照)。ここでは、シート状部材140Bは、細長帯状部材の両側部の長手方向中央部に凹部140Baを形成した形状に形成されている。ここでは、凹部140Baは、半円状を描く凹状に形成されているが、その他、方形状に凹む形状、台形状に凹む形状であってもよい。
凹部140Baが最も凹む部分は、ディフューザ140の長手方向中央部であり、シート状部材140Bをその幅方向に4等分する3つの等分線のうち外側の2つの等分線L3.L4よりも内側に達している。
上記シート状部材140Bの両側部は、上記等分線L3、L4に沿ってその幅方向中央部に向けて折られており、これにより、シート状部材140Bの両端側部分にガス溜り部146Aが形成されている(図16参照)。
本実施形態では、シート状部材140Bの両端側部分のそれぞれの両側部の側縁部、即ち、一対のガス溜り形成部146のそれぞれの側縁部同士が、シート状部材140Bの幅方向中央部で重ならないで対向している。もっとも、これらの側縁部同士は重なっていてもよい。
そして、シート状部材140Bの両端部は、上記第1実施形態と同様にして、クッションリング34を利用してエアバッグ30のインフレータ取付孔32hの周縁部に固定される(図17参照)。
上記シート状部材140Bの両端側部分のうち側部が折られた部分は、上記第1実施形態と同様に、インフレータ22より供給されるガスによって筒状又は半筒状をなす。このため、上記第1実施形態と同様に、ディフューザ140の両端側部分のそれぞれの両側部に、ガス溜り部146Aを形成可能なガス溜り形成部146が形成される。
また、ディフューザ140の長手方向中央部は、細幅に形成されている。この細幅に形成された部分は、インフレータ22からエアバッグ30の膨張方向に向けてガスが勢いよく流れないように当該ガスの流れを規制する。
上記エアバッグ装置120のディフューザ140の動作について、図13、図14,図18〜図20を参照して説明する。なお、図18〜図20は、図14のXVIII−XVIII線断面におけるエアバッグ装置120の動作を示している。
まず、初期状態では、図14及び図18に示すように、ディフューザ140の両端側部分の両側部は、ディフューザ140の幅方向中央部のうちインフレータ22側の面に折重ねられた状態となっている。また、ディフューザ140全体としても、インフレータ22上に折られた状態となっている。
この状態で、インフレータ22よりガスが供給されると、図19に示すように、エアバッグ30が膨張展開すると共に、ガスがディフューザ140の内周部に吹付けられる。ディフューザ140の内周部に吹付けられたガスのうち、ディフューザ140の長手方向中央部からディフューザ140の長手方向両端側に向うガス(図19の矢符F3参照)、及び、ディフューザ140の幅方向中央部から幅方向外側に向うガス(図19の矢符F4参照)は、ガス溜り形成部146の開口を通じて当該ガス溜り形成部146内に流れ込む。
そして、図20に示すように、ディフューザ140の両端側部分の両側部のガス溜り形成部146は、ガスによって膨らみ、ディフューザ40の端部から長手方向中間部に向けて徐々に大きく広がる筒状又は半筒状をなすガス溜り部146Aを形成する。このガス溜り部146Aによって、ディフューザ140の両側側部分が一定形状に維持され、エアバッグ30内に供給されたガスの流れを規制するディフューザ140の状態が安定する。
また、ディフューザ40の長手方向中央部は、なだらかな曲面を描くように展開した状態となり、インフレータ22より供給されたガスが、エアバッグ30の膨張方向に向けて勢いよく流れこまないように、そのガスの流れを規制する(図20の矢符F5参照)。
以上のように構成されたエアバッグ装置120によると、補助整流部分48による作用効果を除いて、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
加えて、ガス溜り形成部146は、ディフューザの長手方向中央部に向けて開口しているため、ディフューザの長手方向中央部に向けて供給されたガスがディフューザの長手方向両端側に流れ込むと、前記開口を通じてガス溜り形成部146内に流れ込み、ガス溜り部146Aをより確実に形成することができる。これにより、ディフューザ140をより確実に膨張状態に維持することができる。
また、ガス溜り形成部146は、ディフューザの長手方向中央部及びディフューザ140の幅方向中央部に向けて開口しているため、ディフューザの幅方向中央部から幅方向外方に向けて流れるガスも、前記開口を通じてガス溜り形成部146内に流れ込む。このため、ガス溜り部146Aをより確実に形成することができ、ディフューザ140をより確実に膨張状態に維持することができる。
また、ディフューザ140の幅方向中央部が細幅に形成されているため、ディフューザ140を形成する材料の削減を図ることができる。
{第3実施形態}
第3実施形態に係るエアバッグ装置について説明する。図21はエアバッグ装置に組込まれるディフューザ240の組込前の状態を示す図であり、図22はディフューザ240をクッションリング34に取付けた状態を示す図である。なお、本実施の形態の説明において、第1実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
このディフューザ240は、エアバッグ内でインフレータ22より供給されるガスの流れを規制するという点では、上記ディフューザ40と同じである。ディフューザ240が、上記ディフューザ40と異なる点は、次の通りである。
すなわち、ディフューザ240の両側部が、それぞれの側縁部同士を重ね合せるように折られることによって、ディフューザ240の長手方向両端側部分のそれぞれの両側部に一対のガス溜り形成部246が形成されている。
また、一対のガス溜り形成部246の側縁部のうち重ね合された部分に、その重ね合せ部分を内外に貫通する流入孔246hが形成されている。ここでは、ディフューザ240のうちエアバッグへの固定箇所である両端部よりも内側(若干内側)の各位置に、流入孔246hが形成されている。
本実施形態によると、一対のガス溜り形成部の側縁部同士が重なっていないという構成に基づく作用効果を除いて、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
加えて、本実施形態によると、一対のガス溜り形成部の側縁部同士が重なっているため、一対のガス溜り形成部246内に流れ込んだガスが逃げ難くなり、ディフューザ240の両端側部分がより膨張状態に維持され易くなる。
また、一対のガス溜り形成部246の側縁部のうち重ね合された部分に、その重ね合せ部分を内外に貫通する流入孔246hが形成されているため、図23に示すように、ガスが流入孔246hを通じて一対のガス溜り形成部246内に容易に流入する。このため、より確実にガス溜り部を形成することができる。
もっとも、本実施形態において、流入孔246hが形成されていることは必須ではない。例えば、ディフューザ240の内側に流れ込んだガスが、一対のガス溜り形成部246の側縁部を順次捲れ上がらせて、一対のガス溜り形成部246内に流れ込むようになってもよい。
{第4実施形態}
第4実施形態に係るエアバッグ装置について説明する。図24をエアバッグ装置320に組込まれるディフューザ340を形成するためシート状部材340Bを示す展開図であり、図25はディフューザ340をクッションリング34に取付けた状態を示す図であり、図26はインフレータ22よりガスが供給されている状態におけるディフューザ340の状態を示す図である。なお、本実施の形態の説明において、第1実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
このディフューザ340は、エアバッグ内でインフレータ22より供給されるガスの流れを規制するという点では、上記ディフューザ40と同じである。ディフューザ340が、上記ディフューザ40と異なる点は、次の通りである。
すなわち、ディフューザ340を形成するための長尺シート状部材340Bの両端側部分の幅方向中央部の両端部のうち、エアバッグ30のインフレータ取付孔32hの周縁部への固定箇所同士、つまり、シート状部材340Bの両端部において幅方向中央よりの位置にあるボルト挿通孔345ha同士を結ぶ距離をLbとする。
また、シート状部材340Bの両端側部分の両側部は、シート状部材の幅方向中央部に重ね合せるように折られている。より具体的には、ディフューザ340の両端側部分における両側部が、ディフューザ340の形成するためのシート状部材340Bの長手方向端部側から長手方向中央部に向けて、当該シート状部材340Bの幅方向中央側に傾斜する傾斜ラインL5、L6に沿って折られている。なお、シート状部材340Bの長手方向中間部の両側部も、シート状部材340Bの幅方向中央に向けて折られており、この部分の折目は、シート状部材340Bの長手方向に沿って真っ直ぐであってもよい。
そして、この両側部のうちインフレータ取付孔32hの周縁部への固定箇所同士、つまり、シート状部材340Bの両端部において幅方向外側よりの位置にあるボルト挿通孔345hb同士を結ぶ距離をLaとする。
本実施形態では、上記距離Lbが、距離Laよりも大きく設定されている。
換言すれば、シート状部材340Bの両端部のうち幅方向中央部にある取付箇所よりも、シート状部材340Bの両端部のうち幅方向外側よりの位置にある取付箇所の方が、ディフューザ340の長手方向中央よりの位置に設定されている。
なお、シート状部材340Bの両端部には、インフレータ本体部23の外形状に対応する凹部344a、344bが形成されている。これらの凹部344a、344bは、シート状部材340Bの長手方向中間部の両側部を上記傾斜ラインL5、L6に沿って折った状態で、円弧状の凹部をなすように互いに重なり合う位置及び形状に形成されている。
この実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
加えて、ディフューザ340の内側にインフレータ22からのガスが吹付けられ、ディフューザ340が全体としてC字状をなすように膨らむと、図25及び図26に示すように、上記距離La、Lbの差に起因して、シート状部材340Bの両側部は、ディフューザ340の内周側に位置しつつ、比較的小さなC字状に膨らみ、シート状部材340Bの幅方向中央部は、ディフューザ340の外周側に位置しつつ、比較的大きなC字状に膨らむ。つまり、シート状部材340Bの両側部がその幅方向中央よりも内側に引寄せられる。このため、シート状部材340Bの幅方向中央部と両側部との間に隙間が形成され、ディフューザ340の両端側部分に形成されるガス溜り形成部346内にガスが流れ込みやすくなり、より確実にガス溜り部346Aを形成できる。
なお、本実施形態においても、長尺シート状部材340Bの両側部が折られていることは必須ではなく、その一方のみが折られていてもよい。
{第5実施形態}
第5実施形態に係るエアバッグ装置について説明する。図27は第5実施形態に係るエアバッグ装置に組込まれるディフューザ440を示す斜視図であり、図28はディフューザ440を形成するためのシート状部材440Bを示す展開図である。本実施の形態の説明において、第1実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
このディフューザ440は、エアバッグ内でインフレータ22より供給されるガスの流れを規制するという点では、上記ディフューザ40と同じである。ディフューザ440が、上記ディフューザ40と異なる点は、次の通りである。
すなわち、ディフューザ440を形成するための長尺シート状部材440Bの両端側部分が、その端部外方に向けて徐々に幅広になる形状に形成されている。
また、シート状部材440Bの両端側部分の両側部は、シート状部材の幅方向中央部に重ね合せるように折られている。この際、シート状部材440Bの両端側部分の両側部は、その端部外方に向けて徐々に外側に向う傾斜ラインL7、L8に沿って折られている。
なお、シート状部材440Bの両端部には、インフレータ本体部23の外形状に対応する凹部444a、444bが形成されている。これらの凹部444a、444bは、シート状部材440Bの長手方向中間部の両側部を上記傾斜ラインL7、L8に沿って折った状態で、円弧状の凹部をなすように互いに重なり合う位置及び形状に形成されている。
また、シート状部材440Bの両側部の長手方向中央部に凹部440Baが形成されている。ここでは、凹部440Baは、半円状を描く凹状に形成されているが、その他、方形状に凹む形状、台形状に凹む形状であってもよい。凹部440Baが最も凹む部分は、ディフューザ440の長手方向中央部である。この凹部440Baは、第2実施形態における凹部140Baと同様の役割を果す。
また、長尺であるシート状部材440Bの両端側部分に、少なくとも一方の側部(ここでは両側部)の折目である傾斜ラインL7、L8よりも内側の位置で開口する孔446hが形成されている。そして、ディフューザ440内に流れ込んだガスが、当該孔446hを通じてディフューザ440外に流れる。これにより、エアバッグ30を当該孔44hに対向する位置で有効に膨張させることができ、エアバッグ30をより多様な態様で膨張させることができる。
なお、孔446hは、円形状であるが、その他、楕円形状、多角形状等であってもよい。
また、ここでは、孔446hは、シート状部材440Bの両端側部分の幅方向中央部に形成されている。従って、当該孔446hの両側側にガス溜り部446Aが形成されることになる。もっとも、孔446hは、一方側のガス溜り部446Aに偏る位置に形成されていてよい。
なお、本実施形態では、シート状部材440Bの両端部の両側部のうち孔446hに重なる部分に凹部446haを形成している。つまり、孔446hに対して、ガス溜り部446Aを形成するためのシート状部材440Bの両端部の両側部が重なっていない。これにより、これにより、ディフューザ440内に流れ込んだガスを、当該凹部446ha及び孔446hを通じてより確実にディフューザ440外に流れ出させることができる。
{変形例}
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。