JP6037607B2 - 有機結晶 - Google Patents
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Description
このような有機結晶は、誘電体、強誘電体、紫外線吸収体、赤外線吸収体、磁性体、導電体、発光体等の技術分野において有用である。これらの分野において、経時変化や劣化を抑制し、経時において安定した性能を発揮する製品を提供することが可能となる。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本明細書中において、「有機物を含む結晶体」(以下、単に結晶体ともいう)とは、有機物を必須に含み、結晶の形態となっているものであり、ポリマーで被覆されていないものをいう。本発明の有機結晶は、そのような結晶体がポリマーで被覆されたものである。該ポリマーを被覆ポリマーともいう。結晶体及び被覆ポリマーは、それぞれ1種であってもよく、2種以上であってもよい。
上記有機物としては、種々の技術分野において様々なものを適用することができるが、通常では、有機低分子化合物を用いることになる。また、上記結晶体は、有機物を必須とする限り、塩の形態であってもよく、また、有機無機複合体となっていたり、金属元素等の無機成分を含んでいたりしてもよい。
上記被覆ポリマーは、重合体であることが好ましいが、結晶体となる有機低分子化合物とは異なる高分子化合物であればよい。すなわち、結晶体を被覆できる限り、1種又は2種以上の単量体単位によって構成される重合体であっても、炭素数が多く、いわゆる炭化水素鎖等をもつ有機化合物であってもよい。このような被覆ポリマーは、結晶体に分子間力等によって付着した状態であってもよいし、結晶体を構成する有機化合物と共有結合した状態であってもよい。また、有機結晶を用いた製品調製時や経時により被覆ポリマーが結晶体から分離することがないようにすることが好ましい。
なお、被覆ポリマーとしては、後述のように、高い分子量を有する、高いガラス転移温度を有する、架橋している等の条件を満たすものが好ましい。
上記有機結晶を含む分散体及びそれを成膜させてなる塗膜の好ましい形態としては、下記実施形態1、3等が例示され、また、上記有機結晶とポリマーとを含んでなる分散体及びそれを成膜させてなる塗膜の好ましい形態としては、下記実施形態2等が例示される。
この実施形態1においては、結晶体を被覆ポリマーで覆い、さらにその上からマトリックスポリマーで覆った形態、つまり、結晶体、被覆ポリマー、マトリックスポリマーの順に積層された形態(3層構造形態)であることが好ましい。
ここで、マトリックスポリマーとは、塗膜にした場合にマトリックスとなるポリマーのことを意味する。
なお、上述のように、結晶体を被覆するポリマーのことを被覆ポリマーというものであるが、当該3層構造形態の有機結晶においては、当該有機結晶の分散体を塗膜にした場合、結晶体を被覆する最外層ポリマーはマトリックスポリマーとなるため、便宜上、マトリックスポリマーともいう。
このような形態においては、結晶体がポリマーで被覆されてなる有機結晶が、マトリックスポリマー中に、分散した形態の塗膜を得ることができる。この実施形態1の概念図を図1に示す。
この実施形態2においては、結晶体が被覆ポリマーで被覆されてなる有機結晶が、有機結晶とともに分散体中に含まれる必須成分のポリマーであるマトリックスポリマー中に分散した形態の塗膜を得ることができる。この実施形態2の概念図を図2に示す。
この実施形態3においては、結晶体が被覆ポリマーで被覆されてなる有機結晶が、マトリックスポリマーのエマルション中に存在していたマトリックスポリマー中に分散した形態の塗膜を得ることができる。この実施形態3の概念図を図3に示す。
上記被覆ポリマー、マトリックスポリマーは、それぞれ1種でもよく、2種以上であってもよい。
また、上記実施形態1〜3のいずれにおいても、被覆ポリマーと結晶体とが結合していることが好ましい。すなわち、被覆ポリマー/結晶体間結合が形成されていることが好ましい。
さらに、上記実施形態1〜3のいずれにおいても、被覆ポリマー及びマトリックスポリマーが結晶体を被覆する形態は、上述したのと同様に、実質的に結晶体の全部を覆っていることが好ましいが、一部だけを覆っていてもよい。
なお、有機結晶は、上記2層構造、3層構造以外に、4層以上の構造を有することも可能である。4層以上の構造を有する有機結晶の分散体を塗膜にする場合、結晶体に接しているポリマー層(最内層)が被覆ポリマーとなり、最外層のポリマー層がマトリックスポリマーとなるが、最内層と最外層に挟まれたポリマー層は、使用ポリマーの種類や性質等に応じて、被覆ポリマー又はマトリックスポリマーとなる。また、この場合、被覆ポリマー/結晶体間結合における被覆ポリマーとは、最内層の被覆ポリマーを意味する。
また、官能基Aと官能基Bとは、同種のものであっても異種のものであってもよい。
また必須成分以外の成分としても、各種用途において求められる性能に応じて適宜選択すればよい。
本発明の有機結晶を制振材用有機結晶として用いる形態、該制振材用有機結晶を用いてなる制振材は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
従来の制振材としては、自動車の室内床下等には無機粉体を含んだアスファルトシートが用いられてきたが、熱融着させる必要性があることから、作業性等の改善が望まれており、塗布型制振材(塗料)が開発されている。例えば、該当箇所にスプレーにより吹き付けるか又は任意の方法により塗布することにより形成される塗膜により、振動吸収効果及び吸音効果を得ることが可能な制振塗料が種々提案されるに至っている。具体的には、例えば、アスファルト、ゴム、合成樹脂等の展色剤に合成樹脂粉末を配合して得られる塗膜硬度を改良した水系制振塗料の他、自動車の室内用に適するものとして、樹脂エマルションに充填剤として活性炭を分散させた制振塗料等が開発されている。しかしながら、これらの従来品をもってしても未だ、制振性能が充分に満足できるレベルにあるとはいえず、更に充分に制振性能を発揮できるようにする技術が求められている。
このような中で、本発明の有機結晶、該有機結晶を必須とする分散体、樹脂組成物を制振材用途において用いる技術は、制振性能の向上、経時における制振性能低下の抑制に効果的であり、制振材の性能向上に大いに寄与することになる。
以下では、有機結晶における結晶体、有機結晶、分散体、樹脂組成物、それらによって形成される塗膜等の好ましい形態を詳述するが、当該好ましい形態は、特に圧電材料、すなわち制振材用途において好適に適用されるものである。
また、有機結晶の平均粒子径としては、0.12〜120μmであることが好ましい。より好ましくは、上限値が60μmであり、下限値が0.14μmであり、更に好ましくは、上限値が24μmであり、下限値が0.16μmである。
なお、後述のアスペクト比が1より大きい粒子の場合、図4に示すように、粒子径には長径と短径があるが、ここで述べる平均粒子径としては、長径を用いるものとする。
当該平均粒子径は、上述のどのような形状の結晶体にも適用できる。
上記平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)、光学顕微鏡、デジタルマイクロスコープ等により測定することができるが、本発明においては、SEMで測定した値を用いる。
具体的には、SEM(日立ハイテク社製、FE−SEM、S−4800)を用い、測定画像を解析することで50個の粒子径を測定し、これらの平均値を算出することにより、結晶体、及び、有機結晶の平均粒子径を求める。なお、アスペクト比が1より大きい粒子の場合は、50個の粒子の長径を測定し、これらの平均値を算出して求める。
当該アスペクト比は、各形状の長径の平均値/短径の平均値として求めることができる。
当該アスペクト比についても、上述した平均粒子径を測定する手法に準拠して測定することができるが、本発明においては、SEMで測定した値を用いる。
具体的には、SEM(日立ハイテク社製、FE−SEM、S−4800)を用い、測定画像を解析することで50個の粒子の長径と短径を測定し、長径と短径のそれぞれの平均値を算出することにより、結晶体、及び、有機結晶のアスペクト比(長径の平均値/短径の平均値)を求める。
上記結晶体は、公知の方法により製造することができる。例えばN,N−ジシクロヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドは、アセトンに溶解した後、水へ再沈澱させることで結晶体を製造することができる。また、市販の結晶体を用いてもよい。
また、分散剤を用いず、結晶体を機械的に分散させた状態で重合性モノマーを懸濁重合することでも、有機結晶を水分散体の形態で製造することができる。
上記被覆ポリマーは、重量平均分子量が2万以上であることが好ましい。上記の分子量未満では、結晶体の経時劣化を抑制できない場合があるおそれがある。当該重量平均分子量は、より好ましくは5万以上であり、更に好ましくは10万以上である。
なお、重量平均分子量(Mw)は、未架橋ポリマーの場合は以下の測定条件下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、既に得られている知見に基づいて決定されてもよいし、後述する単量体成分の種類や使用割合によって制御されてもよいが、理論上は、以下の計算式(1)より算出することができる。
上記被覆ポリマーのSP値は、例えば、以下のSmallの式により求めることができる。
なお、単量体成分の蒸発エネルギー、及び、単量体成分の分子容は、通常用いられる計算値を用いることができる。
上記乳化剤の使用量としては、用いる乳化剤の種類や単量体成分の種類等に応じて適宜設定すればよいが、充分な重合安定性の点から、例えば、重合性モノマー成分の総量100質量部に対して、0.5〜10質量部であることが好ましい。より好ましくは1質量部以上、8質量部以下であり、更に好ましくは1.5質量部以上、7質量部以下である。
上記水混和性の有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコール等のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン等のケトン類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等のエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種で用いても2種以上を併用してもよい。これらの有機溶媒のうち、モノマー成分は溶解するが、モノマー成分から合成されるポリマーは溶解しない有機溶媒が好ましい。
官能基Aとしては、例えば水酸基、フェノール基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基等が挙げられる。また、官能基Bとしては、例えばグリシジル基、イソシアネート基、オキサゾリン基、アジリジン基、カルボジイミド基等が挙げられる。それぞれ1種であっても2種以上であってもよい。
なお、有機低分子化合物が上記官能基Bに例示の官能基を有し、かつ、被覆ポリマーが上記官能基Aに例示の官能基を有する場合も、本発明に含まれる。
なお、ポリマー被覆された有機結晶を乾燥させる方法としては、従来公知の乾燥方法から適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥等が挙げられる。得られたポリマー被覆された有機結晶は、粉体のままで用いてもよいし、適当な溶媒に再分散させた分散体の形態で用いてもよい。
当該有機結晶を用いて、上述の実施形態1〜3の分散体を得ることができる。
また、分散剤を用いず、被覆ポリマーで被覆された有機結晶を粉体にした後、これを機械的に分散させた状態で、マトリックス形成用モノマーを懸濁重合することによっても、3層構造の有機結晶を水分散体の形態で製造することができる。
また、被覆ポリマーとマトリックスポリマーとのSP値の差は、0.2以上であるものが好ましい。SP値差は、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上である。なお、SP値差は、両者のSP値のうちの大きい方のSP値から小さい方のSP値を引いた値を意味する。
当該マトリックスポリマーのSP値は特に限定されないが、被覆ポリマーで被覆されてなる有機結晶が、マトリックスポリマーに溶解することなく分散する等の点から、好ましくは7〜11である。より好ましくは7.2〜10.5であり、更に好ましくは7.4〜10である。
なお、SP値は、上記と同じ方法により求めることができる。
なお、重量平均分子量は、上記と同じ方法により求めることができる。
また、当該マトリックスポリマーは、塗膜の成膜性と強度の点から、ガラス転移温度が−20〜50℃であることが好ましい。より好ましくは−15〜45℃であり、更に好ましくは−10〜40℃である。
なお、ガラス転移温度は、上記と同じ方法により求めることができる。
また、上記有機結晶を含有してなる組成物も本発明の1つである。上記の各形態のうち、分散体(水分散体、他の分散媒等への分散体、及び、ポリマー分散体を含む)の形態のものは、当該有機結晶含有組成物に分類される。
当該有機結晶含有組成物としては、上記有機結晶、又は、上記有機結晶とポリマーを含有するものであるが、更に他の成分を含むことができる。
なお、ここでいう固形分とは、当該組成物を塗布した場合、加熱乾燥した後も塗膜中に残る不揮発分を意味する。
なお、上記他の成分は、例えば、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ニーダー、ディゾルバー等を用いて、上記有機結晶と混合され得る。
上記消泡剤としては、例えば、シリコン系消泡剤等が挙げられる。
上記有機結晶をポリマーマトリックスに分散させてなる塗膜としては、例えば、上述の被覆ポリマーで被覆した有機結晶を、マトリックスポリマー中に分散させた分散体を用いて得られた塗膜(実施形態2)等が挙げられる。
<平均粒子径>
SEM(日立ハイテク社製、FE−SEM、S−4800)を用い、測定画像を解析することで50個の粒子径を測定し、これらの平均値を算出することにより、結晶体の平均粒子径を求めた。なお、アスペクト比が1より大きい粒子の場合は、50個の粒子の長径を測定し、これらの平均値を算出して求めた。
<アスペクト比>
SEM(日立ハイテク社製、FE−SEM、S−4800)を用い、測定画像を解析することで50個の粒子の長径と短径を測定し、長径と短径のそれぞれの平均値を算出することにより、結晶体のアスペクト比(長径の平均値/短径の平均値)を求めた。
4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)をアセトンに溶解したものを、10倍量の水に添加することで再沈殿による結晶化を行った。ろ過後、80℃で3時間の減圧乾燥を行うことにより、粒子径20μm、アスペクト比10の結晶体(1)を得た。
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水80部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を80℃まで昇温した。滴下ロートにスチレン56.5部、2−エチルヘキシルアクリレート42部、アクリル酸1.5部、ラテムルPD−104(商品名、花王社製、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウムの20%水溶液)15部及び脱イオン水30部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの1部、5%過硫酸カリウム水溶液4部を添加し、初期重合を開始した。20分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を60分にわたって均一に滴下した。滴下終了後、60分間80℃を維持した。
得られた反応液を室温まで冷却後、25%アンモニア水1部を添加し、不揮発分44.2%のエマルション(1)を得た。
α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼンをアセトンに溶解したものを、10倍量の水に添加することで再沈殿による結晶化を行った。ろ過後、80℃で3時間の減圧乾燥を行うことにより、粒子径11μm、アスペクト比8の結晶体(3)を得た。
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水600部、ラテムルPD−104(商品名、花王社製、20%水溶液)45部、上記結晶体300部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を80℃まで昇還した。
滴下ロートにスチレン32.5部、2−エチルヘキシルアクリレート14.2部、アクリル酸0.8部、ジエチレングリコールジメタクリレート2.5部、ラテムルPD−104(商品名、花王社製、20%水溶液)7.5部及び脱イオン水15部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの1部、5%過硫酸カリウム水溶液4部を添加し、初期重合を開始した。20分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を60分間にわたって均一に滴下した。滴下終了後、60分間80℃を維持した。
得られた反応液を室温まで冷却後、25%アンモニア水0.5部を添加し、不揮発分35.2%の有機結晶のエマルション(2)を得た。
4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)をアセトンに溶解したものを、10倍量の水に添加することで再沈殿による結晶化を行った。ろ過後、80℃で3時間の減圧乾燥を行うことにより、粒子径20μm、アスペクト比10の結晶体(1)を得た。
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水400部、ラテムルPD−104(商品名、花王社製、20%水溶液)30部、上記結晶体200部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を80℃まで昇温した。
1段目の滴下:滴下ロートにメチルメタクリレート65部、2−エチルヘキシルアクリレート28.5部、アクリル酸1.5部、ジエチレングリコールジメタクリレート5部、ラテムルPD−104(商品名、花王社製、20%水溶液)15部及び脱イオン水30部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの1部、5%過硫酸カリウム水溶液4部を添加し、初期重合を開始した。20分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を60分にわたって均一に滴下した。1段目の滴下終了後、40分間80℃を維持した。
2段目の滴下:滴下ロートにメチルメタクリレート97部、n−ブチルアクリレート100部、アクリル酸3部、ラテムルPD−104(商品名、花王社製、20%水溶液)30部及び脱イオン水60部からなる単量体乳化物を仕込み、1段目の滴下終了から40分後に5%過硫酸カリウム水溶液4部を添加し、直ちに滴下ロートの単量体乳化物を120分にわたって均一に滴下した。2段目の滴下終了後、60分間80℃を維持した。
得られた反応液を室温まで冷却後、25%アンモニア水3部を添加し、不揮発分47.6%の有機結晶のエマルション(3)を得た。
当該エマルションを、表面が平滑なテフロン(登録商標)板上に乾燥後の膜厚が0.2mmとなるように塗布し、80℃で12時間乾燥させて、乾燥塗膜を得た。
N,N−ジシクロへキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドをアセトンに溶解したものを、10倍量の水に添加することで再沈殿による結晶化を行った。ろ過後、80℃で3時間の減圧乾燥を行うことにより、粒子径18μm、アスペクト比11の結晶体(2)を得た。
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入菅及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水200部、ラテムルPD−104(商品名、花王社製、20%水溶液)15部、上記結晶体100部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を80℃まで昇温した。
1段目の滴下:滴下ロートにスチレン35部、2−エチルヘキシルアクリレート14.2部、アクリル酸0.8部、ラテムルPD−104(商品名、花王社製、20%水溶液)7.5部及び脱イオン水15部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの1部、5%過硫酸カリウム水溶液4部を添加し、初期重合を開始した。20分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を60分にわたって均一に滴下した。1段目の滴下終了後、40分間80℃を維持した。
2段目の滴下:実施例2の2段目の滴下と同様に行った。
得られた反応液を室温まで冷却後、25%アンモニア水2.5部を添加し、不揮発分52.3%の有機結晶のエマルション(4)を得た。
当該エマルションを、表面が平滑なテフロン(登録商標)板上に乾燥後の膜厚が0.2mmとなるように塗布し、80℃で12時間乾燥させて、乾燥塗膜を得た。
不揮発分の比率がエマルション(2):エマルション(1)=7:2となるように混合したエマルションを用い、表面が平滑なテフロン(登録商標)板上に乾燥後の膜厚が0.2mmとなるように塗布し、80℃で12時間乾燥させて、乾燥塗膜を得た。
不揮発分の比率が結晶体(1):エマルション(1)=1:1となるように混合したエマルションを用い、表面が平滑なテフロン(登録商標)板上に乾燥後の膜厚が0.2mmとなるように塗布し、80℃で12時間乾燥させて、乾燥塗膜を得た。
<結晶化度>
上記実施例2〜4及び比較例1で得られた塗膜において、X線回折により求めた塗膜作製直後の結晶化度を100とし、経時での変化を評価した。
X線回折は、RINT−TTRIII(リガク社製)を用い、CuKα線、電圧50kV、電流300mA、スキャンスピード10度/分、サンプリング幅0.02度、走査範囲5〜75度、走査軸2θ/θ、積算回数1回の条件で測定した。
また、評価の基準は以下の通りとする。
100〜90:○、50〜80:△、50以下:×。
電子顕微鏡により観察した結晶体の形状の変化を評価した。
また、評価の基準は以下の通りとする。
変化無し:○、形状が変化している:△、形状が大きく変化あるいは結晶が消失している:×。
このように、結晶体の表面をポリマーで被覆してなる有機結晶とすることによって、有機結晶の凝集、形のくずれ、ブリードアウト等による経時的な性能変化や劣化を防ぐことにより、有機結晶がもつ種々の特性を経時的に充分に発揮させる作用機序はすべて同様であるものと考えられる。
したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。
2:被覆ポリマー
3:マトリックスポリマー
4:分散媒
5:長径
6:短径
Claims (6)
- 有機物を含む結晶体からなる有機結晶であって、
該結晶体は、アスペクト比が2以上であり、
該結晶体の表面がポリマーで被覆されてなり、更にその上からマトリックスポリマーで覆われてなることを特徴とする有機結晶。 - 前記結晶体は、平均粒子径が0.1〜100μmであることを特徴とする請求項1に記載の有機結晶。
- 前記有機結晶は、ポリマーと結晶体との質量割合が1:9〜9:1であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機結晶。
- 前記有機結晶は、誘電体、強誘電体、紫外線吸収体、赤外線吸収体、磁性体、導電体又は発光体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機結晶。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の有機結晶からなる塗膜を製造する方法であって、
該製造方法は、有機結晶を成膜させる工程、及び/又は、該有機結晶をポリマーマトリックスに分散させる工程を含むことを特徴とする塗膜の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の有機結晶を分散媒中に分散させてなることを特徴とする分散体。
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