以下、本発明を図面に基づいて詳しく説明する。
[実施例1]
(1)画像形成装置例
図11は本発明に係る像加熱装置を定着装置(定着器)として搭載した画像形成装置の一例の概略構成を表わす横断面図である。この画像形成装置は、転写式電子写真プロセス利用のレーザービームプリンタである。
本実施例に示す画像形成装置は、画像情報に基づいて記録材Pに未定着トナー画像を形成する画像形成部IFと、記録材Pに形成された未定着トナー画像を記録材に定着する定着部(以下、定着装置と記す)FUなどを有している。
画像形成部IFにおいて、1は像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)である。感光ドラム1は、OPC・アモルファスSe・アモルファスSi等の感光材料層を、アルミニウムやニッケル等の金属材料により形成されたシリンダ(ドラム)状の導電性基体の外周面に形成した構成から成る。
感光ドラム1は、ホストコンピュータやネットワーク上の端末機等の外部装置(不図示)から出力されるプリント指令に応じて矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)にて回転される。そしてこの回転過程で感光ドラム1の外周面(表面)が帯電ローラ(帯電手段)2により所定の極性・電位に一様に帯電処理される。感光ドラム1表面の一様帯電面は、レーザービームスキャナ(露光手段)3から出力される、外部装置から出力されるプリント対象の所定の画像情報に応じて変調制御(ON/OFF制御)されたレーザービームLによって走査露光がなされる。これにより感光ドラム1表面に目的の画像情報に応じた静電潜像が形成される。
この静電潜像に現像装置(現像手段)4に設けられた現像スリーブ4aによってトナーを付着させトナー画像として現像する。現像方法としては、ジャンピング現像法、2成分現像法、FEED現像法などが用いられ、イメージ露光と反転現像との組み合わせで用いられることが多い。
一方、給送ローラ8の回転により給送カセット7内に積載収納されている記録材Pが1枚ずつ繰り出されてレジストローラ9に搬送される。この記録材Pはレジストローラ9により感光ドラム1表面と転写ローラ5の外周面(表面)とで形成された転写ニップ部Tnに所定の制御タイミングにて送り出される。そしてこの記録材Pは転写ニップ部Tnで感光ドラム1表面と転写ローラ5表面とで挟持されその状態に搬送(挟持搬送)される。この搬送過程において転写ローラ5に所定の転写バイアスが印加されることによって感光ドラム1表面のトナー画像が記録材P上に静電的に転写され、そのトナー画像を記録材Pが未定着トナー画像として担持する。
未定着トナー画像T(図1参照)を担持した記録材Pは感光ドラム1表面から分離して転写ニップ部Tnから排出された後に定着装置FUの定着ニップ部(ニップ部)Nに導入される。そしてこの記録材Pが定着ニップ部Nを通過することによって未定着トナー画像は記録材Pに定着される。未定着トナー画像Tが定着された記録材Pは定着ニップ部Nから排出され排出ローラ10により排出トレイ11上にプリント(印刷物)として排出される。
トナー画像転写後の感光ドラム1表面はクリーニング装置(クリーニング手段)6によって転写残りトナー等が除去されて清浄面化され、これにより感光ドラム1は次の画像形成に供される。
図11において、S1はレジストローラ9と転写ニップ部Tnとの間で記録材Pの先端を検知するトップセンサである。このトップセンサS1の出力信号に基づいてレジストローラ9による記録材Pの制御タイミングが決定される。S2は定着装置FUの記録材排出側で記録材Pを検知する排紙センサである。この排紙センサS2は記録材PがトップセンサS1と排紙センサS2の間で紙詰まりなどを起こした際に、それを検知する為のセンサである。
(2)定着装置(像加熱装置)FU
以下の説明において、定着装置及び定着装置を構成する部材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向をいう。短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向をいう。長手幅とは長手方向の寸法である。短手幅とは短手方向の寸法である。
図1は本実施例に係る定着装置FUの概略構成を表わす横断面図である。図2は本実施例に係る定着装置FUの主たる構成部材の分解斜視図である。この定着装置FUはフィルム加熱方式の定着装置である。
本実施例に示す定着装置FUは、定着アセンブリ10と、加圧ローラ(加圧部材)20などを有している。定着アセンブリ10は、セラミックヒータ(加熱体)11と、ヒータホルダ(加熱体支持部材)12と、定着フィルム(加熱回転体)13と、金属ステー(剛性部材)14などを有している。セラミックヒータ(以下、ヒータと記す)11と、ヒータホルダ12と、定着フィルム13と、金属ステー14と、加圧ローラ20は、何れも長手方向に長い部材である。
a)定着フィルム(加熱回転体)13
定着フィルム13は、クイックスタートを可能にするために総厚200μm以下の厚みの耐熱性フィルムである。この定着フィルム13は、定着フィルム13の筒状の基層として、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK等の耐熱性樹脂ベルト、或いはステンレス、ニッケル等の金属ベルトを用いている。このうち、前者の耐熱性樹脂ベルトに関しては熱伝導性を向上させるために、BN、アルミナ、Al等の高熱伝導性粉末を混入してあっても良い。また、耐久寿命の長い定着装置を構成するために充分な強度を持ち、耐久性に優れた定着フィルム13として、総厚20μm以上の厚みが必要である。よって定着フィルム13の総厚としては20μm以上200μm以下が最適である。
更に、オフセット防止や記録材Pとの分離性を確保するために、基層の外周面上には離型性層が被覆して形成してある。離型性層として、PTFE、PFA、FEP、ETFE、CTFE、PVDF等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂等の離型性の良好な耐熱樹脂を混合ないし単独で用いている。ここで、PTFEはポリテトラフルオロエチレンであり、PFAはテトラフルオロエチレン パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体である。FEPはテトラフルオロエチレン ヘキサフルオロプロピレン共重合体であり、ETFEはエチレン テトラフルオロエチレン共重合体である。CTFEはポリクロロトリフルオロエチレンであり、PVDFはポリビニリデンフルオライドである。
離型性層の被覆方法としては、基層の外周面をエッチング処理した後に離型性層をディッピングするか、粉体スプレー等の塗布であってもよい。或いは、チューブ状に形成された樹脂を基層の外周面に被せる方式であっても良い。又は、基層の外周面をブラスト処理した後に、接着剤であるプライマー層を基層の外周面に塗布し、そのプライマー層の外周面に離型性層を被覆する方法であっても良いし、離型性に優れた材料から成型した単層構成であっても良い。
本実施例では、定着フィルム13の基層はポリイミド製で厚みが55μmである。そしてその基層の外周面上に接着層を設け、表層は導電材を付与したPFAを厚み10μmでコーティングした。定着フィルム13の総厚は70μm、直径は18mmとし、基層には高熱伝導性粉末を混入することにより高熱伝導化をはかっている。定着フィルム13はヒータ11を支持させたヒータホルダ12の外周にルーズに外嵌されている。
b)加圧ローラ(加圧部材)20
加圧ローラ20は、SUS、SUM、Al等の金属製の芯金21の長手方向両端部の軸部21a間の外周面上に弾性層22を形成した弾性ローラである。弾性層22として、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱ゴムで形成した弾性ソリッドゴム層を用いることができる。或いは、より断熱効果を持たせるためにシリコーンゴムを発泡して形成した弾性スポンジゴム層を用いることができる。或いは、シリコーンゴム層内に中空のフィラー(マイクロバルーン等)を分散させ、硬化物内に気体部分を持たせて断熱効果を高めた弾性気泡ゴム層を用いることができる。この弾性層22の外周面上に表層としてPFA、PTFE等の離型性層23を形成してあってもよい。
本実施例では、加圧ローラ20の弾性層22としてシリコーンバルーンゴム層を用いている。この弾性層22は、厚みが3.5mmであり、直径は18mmである。離型性層23は、PFA製であり、厚みは30μmである。加圧ローラ20の硬度はアスカーC硬度で45度となっている。この加圧ローラ20は、定着フィルム13の下方にヒータホルダ12が支持するヒータ11と対向するように配設され、芯金21の軸部21aを定着装置FUの装置フレーム(不図示)の側板対に軸受(不図示)を介して回転可能に支持されている。
c)セラミックヒータ(加熱体)11
図1、図3を参照してヒータ11の構成を説明する。図3はヒータ11の概略構成を表わす模式図である。
ヒータ11は、低熱容量のプレート状であり、アルミナや窒化アルミ等の絶縁性セラミック製の細長い基板11aを有している。基板11aの後述する定着ニップ部N側の表面には、基板11aの長手方向に沿って、Ag/Pd(銀パラジウム)、RuO2、Ta2N等の発熱抵抗体層11bが、厚みが約10μm、短手幅が約1〜5mm程度でスクリーン印刷等により形成されている。この発熱抵抗体層11bは、基板11aの短手方向の記録材搬送方向上流側と記録材搬送方向下流側の2箇所に形成してある。
これらの発熱抵抗体層11bの長手方向一端部は、それぞれ、基板11aの長手方向一端部側で基板11a表面に設けられた導体部11d1を介して電極部11eと電気的に接続されている。一方、これらの発熱抵抗体層11bの長手方向他端部は、基板11aの長手方向他端部側で基板11a表面に設けられた繋ぎ導体部11d2により電気的に接続されている。それぞれの電極部11eには給電コネクタ(不図示)が接続され、その給電コネクタを介して電源回路PSより発熱抵抗体層11bに通電されるようになっている。
更に、基板11aの表面には、熱効率を損なわない範囲で発熱抵抗体層11bを覆うようにガラスやフッ素樹脂コート等を施した保護層11cが設けられている(図1参照)。保護層11cの厚みは十分薄く、定着フィルム13内面と接触する保護層11cの表面性を良好にする程度が望ましい。
本実施例では、ヒータ11の基板11aとして、厚み1mm、短手幅5.83mm、長手幅270mmのアルミナを採用した。銀パラジウムの発熱抵抗体層11bを短手幅1mm、長手幅218mmに渡り形成した上に、保護層11cとして厚み60μmのガラスをコートしている。基板11aの耐熱温度は約1500℃である。発熱抵抗体層11bの総抵抗値は16Ωであり、定格120V入力時において投入電力は900Wとなる。
d)ヒータホルダ12
ヒータホルダ12は、ヒータ11を支持すると共に定着フィルム13の回転をガイドするための部材であり、液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEK等の耐熱性樹脂により形成されている。ヒータホルダ12は、熱伝導率が低いほど加圧ローラ20への熱伝導が良くなるので、耐熱性樹脂層中にガラスバルーンやシリカバルーン等のフィラーを内包してあっても良い。ヒータホルダ12の耐熱温度は約300℃である。
ヒータホルダ12は、横断面略樋型形状の細長いホルダ部12d(図1参照)を有し、このホルダ部12dの短手方向両側には定着フィルム13の回転をガイドするための弧状ガイド12eが長手方向に所定の間隔をおいて複数配設してある。ホルダ部12dの定着ニップ部N側の表面にはホルダ部12dの長手方向に沿って溝12fが形成され、この溝12fでヒータ11を保護層11cが定着フィルム13内面と接触するように嵌合させその状態に支持している。
符号12aは溝12fの底面であって、ヒータ11の基板11aの定着ニップ部Nとは反対側の背面を受けるヒータ支持持面部(加熱体支持面部)となっている。ヒータ支持面部12aは、溝12fの長手方向に連続した一平面に形成してあり、厚みが均一である。ここで、背面とはヒータ支持持面部12aの厚み方向においてヒータ支持持面部12aの反対側の面である。
このヒータホルダ12は、ヒータホルダ12の長手方向両端部が定着装置FUの装置フレームの側板対(不図示)に上下動可能に支持されている。
e)金属ステー(剛性部材)14
金属ステー14は、剛性を有する所定の金属材料を用いて横断面略逆U字形状に形成されている。この金属ステー14の短手方向両側のステー足部14bは、ヒータ支持面部12aの定着ニップ部N側とは反対側の背面に設けられた一対の側壁部12gとホルダ部12dの内壁面12d1との間の底面19hに載置されている(図1参照)。この金属ステー14の長手方向両端部はヒータホルダ12から突き出ている(図2参照)。
そしてこの金属ステー14の長手方向両端部に設けられたバネ受け部14aがバネ受け部材15を介してコイルバネ16により加圧ローラ20の母線方向と直交する垂直方向に加圧される。コイルバネ16の加圧力は金属ステー14のステー足部14bを介してヒータホルダ12の長手方向に渡って均一に伝達される。このように金属ステー14をヒータホルダ12にヒータ11の反対側から接触加圧することにより、定着アセンブリ10全体の撓みや捩れを抑制することができる。
加圧ローラ20の外周面(表面)には定着フィルム13を介してヒータ11が加圧される。これにより加圧ローラ20の弾性層22が潰れて弾性変形し、加圧ローラ20表面と定着フィルム13表面とで所定の短手幅の定着ニップ部(ニップ部)Nが形成される。本実施例では、後述の定着ニップ部Nに総荷重約147N(15kgf)の加圧力を与えることで所定の短手幅の定着ニップ部Nを形成している。
f)定着装置の駆動及び温調制御
本実施例の定着装置FUは、プリント指令に応じて駆動制御部(不図示)がモータ(不図示)を回転駆動する。加圧ローラ20は芯金21の端部に設けられた駆動ギア(不図示)でモータの出力軸の回転駆動力を得て図1にて示す矢印方向に回転する。本実施例では、加圧ローラ3の周速度を168mm/secとし、画像形成装置の印刷能力としてはA4サイズ紙を毎分30枚印字可能なようにモータを駆動制御している。
加圧ローラ20の回転は定着ニップ部Nにおいて加圧ローラ20表面と定着フィリム13表面との摩擦力によって定着フィルム13に伝達される。これによって定着フィルム13は定着フィルム13内面がヒータ2の保護層11cの表面と接触しつつ加圧ローラ20の回転に追従して図1にて示す矢印方向へ回転する。定着フィルム13とヒータ11との間には、フッ素系やシリコーン系の耐熱性グリース等の潤滑材を介在させることにより、摩擦抵抗を低く抑え、滑らかに定着フィルム13が回転可能となる。また、図2に示すように、加圧ローラ20の長手端部に設けられた導電ゴム輪17を介し定着フィルム13の電位は不図示のバイアス印加回路により、適正値に制御される。
また、プリント指令に応じて電源回路PS(図3参照)の通電制御部21がトライアック22を立ち上げる。通電制御部21はCPUとROMやRAMなどのメモリからなり、メモリにはヒータ11の温度制御に必要な各種プログラムや温調テーブルなどが記憶してある。トライアック22の立ち上げによって商用電源23から給電コネクタ(不図示)を介して発熱抵抗体層11bに通電される。これにより発熱抵抗体層11bが発熱しヒータ11は急速に昇温して定着フィルム13を内周面側から加熱する。
上記の通電制御部21は、ヒータ11の基板9において定着ニップ部N側とは反対側の背面の長手方向中央に配設されたサーミスタなどの温度検知部材19からの出力信号を取り込む。そしてこの出力信号に基づいて発熱抵抗体層11bに印加する電圧のデューティー比や波数などを決定し適切にトライアック22を制御してヒータ11の温度を所定の定着温度(目標温度)に維持する。
ヒータ11の基板9背面には、電源回路の一次電流側に設けられる温度ヒューズやサーモスイッチなどの通電遮断部材を具備する通電遮断ユニット(図10参照)24を接触させる。電源回路は、電源回路の何らかの故障原因によりヒータ11への通電(一次電流)が無制御状態に陥ることで異常昇温が引き起こされた際には、通電遮断ユニット24の通電遮断部材を動作させて強制的にヒータ11への通電を遮断するように設計されている。
モータを回転し、かつヒータ11に対し通電している状態において、未定着トナー画像Tを担持した記録材Pがトナー画像担持面を定着フィルム13側にして定着ニップ部Nに導入される。この記録材Pは定着ニップ部Nで定着フィルム13表面と加圧ローラ20表面とで挟持され、その状態に搬送(挟持搬送)される。この搬送過程において、定着フィルム13は、定着フィルム13表面が記録材P上の未定着トナー画像Tと接触して記録材Pを搬送しつつヒータ11の発熱抵抗体層11bの発熱により未定着トナー画像Tを加熱する。これにより記録材上の未定着トナー画像Tは溶融し定着ニップ部Nでニップ圧を受けることによって記録材上に定着される。
未定着トナー画像Tが定着された記録材Pは定着フィルム13表面から分離し定着ニップ部Nから排出される。
(3)従来の定着装置におけるヒータホルダの構成
図5に従来の定着装置におけるヒータとヒータホルダの構成を示す。図5では、従来のヒータと本実施例のヒータ11を容易に対比できるように、本実施例のヒータ11と共通する部材、部分には同一符号を付している。同様に、従来のヒータホルダと本実施例のヒータホルダ12を容易に対比できるように、本実施例のヒータホルダと共通する部材、部分には同一符号を付している。
図5において、(a)は従来のヒータ11の定着ニップ部N側からの表面図である。(b)は従来のヒータ11の記録材搬送方向上流側からの側面図である。(c)は従来のヒータホルダ12の定着ニップ部N側からのヒータ支持面部12aの表面図である。(d)は従来のヒータホルダ12を記録材搬送方向上流側から透視しヒータ支持面部12aを表わす模式図である。(e)は従来のヒータホルダ12を記録材搬送方向上流側から透視しヒータ支持面部12aに支持されているヒータ11を表わす模式図である。(f)はヒータホルダ12を記録材搬送方向上流側から透視しホルダ部12dに溶融埋没したヒータ11の破損状態を表わす模式図である。図5(d)において、符号hはホルダ部12dの高さである。
図5(a)、(b)に示すヒータ11において、発熱抵抗体層11bが形成されている発熱領域Aは、通電に伴い昇温し、かつ、加圧ローラ20からの加圧力を受けることから、異常昇温時においてはヒータホルダ12を溶かしながら埋没が進行する。一方、発熱抵抗体層11bが存在しない非発熱領域Bにおいては、昇温は鈍く、加圧力も受けていないことから、ヒータホルダ12への埋没は起こらない。
この結果として、ヒータ11の通常温調状態では、連続した一平面であったヒータホルダ12のヒータ支持面部12aが、異常昇温時には埋没した発熱領域部A1と埋没しない非発熱領域部B1に分かれる。これによりヒータ支持面部12aの埋没した発熱領域部A1と埋没しない非発熱領域部B1との間でヒータ11にせん断応力が作用し、その結果としてヒータ11は発熱領域部A1と非発熱領域部B1との間で破損に至る(図5(f)参照)。
従来の定着装置を搭載した画像形成装置はFPOT(First Print Out Time)が8秒であり、ヒータ11の抵抗は20Ω、定格120V入力時の投入電力は720Wであった。この条件であれば、従来の定着装置においても異常昇温時において通電遮断部材が動作し、適切に通電を遮断出来ていた。
しかしながら、画像形成装置のクイックスタート性向上のニーズに応えるべく、本実施例の定着装置FUを搭載する画像形成装置では、FPOTを6秒に設定し、ヒータ11の抵抗を16Ωとし、定格120V入力時の投入電力が900Wと高出力化した。これに伴い、ヒータ11の異常昇温時のヒータホルダ12への溶融埋没速度も上がり、従来の定着装置の構成では適切な通電遮断が困難になっている。
(4)本実施例のヒータホルダ12の構成
図4を参照して、本実施例のヒータホルダ12の構成を説明する。図4において、(a)は本実施例のヒータ11の定着ニップ部N側からの表面図である。(b)は本実施例のヒータホルダ12の定着ニップ部N側からのヒータ支持面部12aの説明図である。(c)は本実施例のヒータホルダ12の記録材搬送方向上流側からのヒータ支持面部12aの説明図である。(d)はヒータ11とヒータ11を支持しているヒータホルダ12の定着ニップ部N側からの表面図である。(e)はヒータホルダ12を記録材搬送方向上流側から透視しヒータ支持面部12aに支持されているヒータ11を表わす模式図である。(f)はヒータホルダ12を記録材搬送方向上流側から透視しホルダ部12dに溶融埋没したヒータ11を表わす模式図である。
図4(b)において、符号H1は温度検知部材19を具備する温度検知ユニット(不図示)を固定するための穴であり、符号H2は通電遮断部材を具備する通電遮断ユニット24を固定するための穴である。
図4(a)に示すヒータ11において、符号Aにて示される領域は発熱抵抗体層11bが形成された発熱領域であり、符号Bにて示される領域はそれ以外、つまり発熱抵抗体層11bの形成されていない非発熱領域である。発熱領域Aと非発熱領域Bはヒータ11の長手方向で連続している。
ヒータホルダ12にはヒータ11を支持するために溝12fを設け嵌合せしめるが、ヒータ11の発熱領域Aと非発熱領域Bに関してはヒータ支持面部12aでのみ連続である。つまり、ヒータ支持面部12aは、ヒータ11の発熱領域Aに相当する発熱領域部A1と、非発熱領域Bに相当する非発熱領域部B1と、を長手方向に連続して有している。
これに対し、ヒータ11の記録材搬送方向上流側と記録材搬送方向下流側の位置を規制する枠体部12bは不連続である。枠体部12bは、ヒータ11の短手方向における定着フィルム13との接触領域では定着フィルム13の回転軌道を保持する役目も担っており、その定着フィルム13の回転軌道を保持する部分を回転軌道保持部12cとする。
ヒータ11の短手方向でヒータ支持面部12aの両側に設けられた回転軌道保持部12cは、ヒータ11の発熱領域Aと対応させてヒータホルダ12の長手方向に連続して存在させているが、ヒータ11の非接触領域Bには存在させていない。つまり、枠体部12bにおいて、ヒータ支持面部12aの非発熱領域部B1の発熱領域部A1側の一部に間隙Sを設けることにより、回転軌道保持部12cをヒータ11の発熱領域Aのみに対応して存在させている。換言すれば、回転軌道保持部12cはヒータ支持面部12aの発熱領域部A1と非発熱領域部B1の間で連続である。
本実施例の定着装置FUでは、ヒータホルダ12のヒータ支持面部12aにおける非発熱領域部B1にヒータ11の電極11eに繋がれる給電コネクタを取り付けるためのコネクタ取付け部(不図示)を設けている。また、加圧ローラの弾性層22の長手幅(即ち定着ニップ部Nの長手幅)と、ヒータの発熱抵抗体層11bの長手幅と、金属ステーによるヒータホルダ12の加圧領域の長手幅と、ヒータホルダの回転軌道保持部12cの長手幅は、略同じになっている。
図6は本実施例に係る定着装置のヒータホルダ12の背面のパターン形状と、従来の定着装置のヒータホルダの背面のパターン形状の説明図である。図6において、(a)は本実施例のヒータホルダ12の定着ニップ部N側とは反対側の背面におけるパターン形状を表わす模式図である。(b)は従来のヒータホルダ12の定着ニップ部N側とは反対側の背面におけるパターン形状を表わす模式図である。図6(b)は、本実施例のヒータホルダ12のパターン形状と比較説明のために併記したものである。
ヒータホルダ12において、ホルダ部12d背面の一対の側壁部12g間には、通電遮断部材や、温度検知素子19、金属ステー14などを配置するにあたり、位置決めや配線引き回しを目的として形状が決められ、凸壁部が設けられる。従来のヒータホルダ12においては、図6(b)に示すように、ホルダ部12d背面の右側端部には、配線引き回し目的の凸壁部12iがホルダ部12dの長手方向に沿って短手方向に2つ形成してある。
ヒータ11の異常昇温時のヒータ支持面部12aでの溶融埋没過程において、凸壁部12iはヒータ支持面部から離れた部分は軟化・溶融に至るまで時間がかかることから、ヒータ支持面部が後述のように埋没するに至った場合に抗力を発生させる要因となる。そのため、ヒータ支持面部12aの背面に形成された各種の凸壁部12iにおいても、図6(a)で示すように発熱領域Aと非発熱領域Bとの間に対応する部分に間隙S1を設けて、発熱領域Aと非発熱領域Bとの間を不連続とする。
本実施例のヒータホルダ12は、ヒータ11の異常昇温時において、ヒータ11の発熱領域Aが高温と加圧力によってヒータ支持面部12aの発熱領域部A1がホルダ部12dに埋没するに至る。その際、ヒータ支持面部12aの発熱領域部A1の埋没による変形に連動して非発熱領域部B1もホルダ部12dに埋没する。この作用により、ヒータ11の異常昇温時においてもヒータホルダ12のヒータ支持面部12aに段差は発生せず、ヒータ11にせん断力が加わらないことからヒータ11の早期破損を抑制することができる。図3(g)に、本実施例のヒータホルダ12においてヒータ11の異常昇温によりヒータ11がホルダ部12dに溶融埋没した状態を示す。
(5)本実施例の定着装置FUの効果
本実施例の定着装置の効果を確認するために、図4(b)に示す本実施例のヒータホルダ12と、比較のために図5(c)に示す従来タイプのヒータホルダ12を用い、ヒータ11の異常昇温時における双方のヒータホルダ12の比較検証実験を行った。本実施例のヒータホルダ12を用いた定着装置、及び従来タイプのヒータホルダ12を用いた定着装置を搭載する画像形成装置はFPOTを6秒に高速化した仕様であり、従来構成の画像形成装置では適切な通電遮断が困難な条件下における比較実験である。
比較検証実験として、異常昇温におけるヒータ11への負荷が最も急速かつ高負荷となる条件における通電遮断部材動作試験を実施した。ヒータ11へは電源回路より900Wの電力を投入させることで強制的に異常昇温させた。ここで、通電遮断部材は別回路により遮断動作に至るまでの時間を測定している。画像形成装置を設置した環境は室温25℃、湿度50%である。定着装置は回転状態ではなく、回転停止状態で実験した。回転停止状態で実験する理由はヒータ11に投入されたエネルギーが加圧ローラ20に奪われにくいことから回転状態よりも定着装置に対するダメージが大きいためである。以下、本実施例のヒータホルダ12を本提案手法によるヒータホルダ12と記す。
本提案手法によるヒータホルダ12と、従来タイプのヒータホルダ12を用い、通電遮断部材動作試験を各5回行った。ヒータ11が破損に至るまでの「ヒータ破損時間」、通電遮断部材が動作するまでの「遮断時間」に関して測定・観察を行った。更に、遮断時間からヒータ破損時間を減算した「遮断マージン時間」、通電遮断部材動作結果に関する「判定」、破損したヒータにおける「破損位置」に関して測定・観察を行った。実験結果を表1に示す。表1では、ヒータホルダを加熱体支持部材と記載し、ヒータ破損時間を加熱体破損時間と記載している。
本提案手法においてはヒータ破損時間が従来タイプに比べ2秒以上長くなり、遮断時間に対してマージンが確保できるようになっていることが実験結果から見てとれる。ヒータの破損位置に関しても従来タイプでは電極側の発熱領域Aと非発熱領域Bの境界位置で破損が発生していたのに対し、本提案手法では発熱領域Aと非発熱領域Bの境界位置での破損は起こっていない。このことから、埋没に伴うせん断応力の発生が抑えられ、結果として早期破損を抑制するにあたり有意に機能していることが示されている。
本実施例の定着装置FUは、ヒータ11の異常昇温時においてヒータがヒータホルダ12に埋没する際にヒータに作用するせん断応力を抑えることができるため、ヒータが破損に至るまでの時間を従来よりも長くでき、ヒータの早期破損を抑制することができる。そのため、高速化やクイックスタート性の要求に応じるためにヒータ11に投入される電力を増加させた画像形成装置においてヒータに不測の異常昇温が起こった際においても、通電遮断部材が動作するまでの時間を確保できる。このことにより、ヒータ11の異常昇温時においても通電遮断部材によって適切にヒータへの通電を遮断することができ、ヒータの損傷を最小限に抑えることができる。
[実施例2]
他の定着装置を説明する。本実施例の定着装置FUは、実施例1の定着装置FUにおいけるヒータホルダ12のヒータ支持面部12a背面の構成が異なる点を除いて、実施例1の定着装置FUと同じ構成としてある。
図7は本実施例に係る定着装置のヒータホルダ12の背面のパターン形状と、従来の定着装置のヒータホルダの背面のパターン形状の説明図である。図7において、(a)は本実施例のヒータホルダ12の定着ニップ部N側とは反対側の背面におけるパターン形状を表わす模式図である。(b)は従来のヒータホルダ12の定着ニップ部N側とは反対側の背面におけるパターン形状を表わす模式図である。図7(b)は、本実施例のヒータホルダ12のパターン形状と比較説明のために併記したものである。
実施例1に示すヒータホルダ12を用いることによってヒータ11の早期破損は大幅に改善されたが、その結果、ヒータ11は発熱領域Aと非発熱領域Bの境界位置以外の部位で破損が起こる事が確認された。具体的には、通電遮断ユニット配置部と温度検知ユニット配置部である。これらの通電遮断ユニット配置部と温度検知ユニット配置部においても、ヒータ11の破損の要因として、ヒータ11の異常昇温時のヒータ支持面部12aでの溶融埋没過程におけるせん断応力が挙げられる。
温度検知ユニットは、ヒータホルダ12のヒータ支持面部12aの領域内に設けられた穴H1に固定され、バネによりヒータ11背面へと押し当てられている。通電遮断ユニット24は、ヒータホルダ12のヒータ支持面部12aの領域内に設けられた穴H2に固定され、バネによりヒータ11背面へと押し当てられている。ここで、温度検知ユニットと通電遮断ユニット24を対応する穴H1,H2に固定するに際し、ヒータ支持面部12a背面に設けられた一対の側壁部12gは温度検知ユニットと通電遮断ユニット24の位置決め及び固定土台などの目的で用いられる。
ところが、一対の側壁部12gは図7(b)に示されるようにパターン形状が不均一なことから、ヒータの異常昇温時のヒータ支持面部での溶融埋没過程において埋没むらが起き、ヒータにせん断応力が作用することで破損を引き起こしていると考えられる。
図7(b)に示すように、従来のヒータホルダ12では、通電遮断ユニットの位置を規定する目的で、通電遮断ユニット24を固定するための穴H2の近傍で一対の側壁部12g間の短手幅を局所的に狭くしていた。一対の側壁部12gは、ヒータホルダ12の短手方向においてヒータ11が配置される領域よりも外側に設けられているが、穴H2の近傍でヒータ11が配置される領域の内側に設けられ、かつ、連続して形成されていた。このため、ヒータ11の異常昇温時のヒータ支持面部12aでの溶融埋没過程において抗力に差が生じヒータ11にせん断応力が作用して破損を引き起こす。
これに対し、図7(a)に示す本実施例のヒータホルダ12では、一対の側壁部12gの配置に関し、通電遮断ユニットを固定するための穴H2の近傍において、ヒータ11の配置される領域の外側と内側を繋ぐ場合、その境界部分を不連続にするようにした。つまり、ヒータ11の配置領域よりも外側に設けられている一対の側壁部12gと、穴H2の近傍でヒータ11の配置領域の内側に設けられている一対の側壁部12gとの境界部分に間隙S2を設けることにより、その境界部分を不連続に形成している。
これにより、ヒータ11の異常昇温時のヒータ支持面部12aでの溶融埋没過程におけるヒータホルダ12の通電遮断ユニット配置部の局所的な抗力の差を解消できる。これにより、ヒータホルダ12の通電遮断ユニット配置部でヒータ11にせん断応力が作用することを抑制することができ、ヒータ11の早期破損を改善できる。
また、図7(b)に示すように、従来のヒータホルダ12では、温度検知ユニットを固定する固定土台12jが、ヒータホルダ12の短手方向で一対の側壁部12g間に配設され一対の側壁部12gのうち何れか一方に跨ぐ形で形成されていた。先に説明したように、ヒータの配置される領域の外側と内側を跨ぐ形で連続した側壁部12gが存在すると、その繋ぎ部分でヒータの異常昇温時のヒータ支持面部での溶融埋没過程において抗力に差が生じ、ヒータにせん断応力が作用して破損を引き起こす。
これに対し、図7(a)に示す本実施例のヒータホルダ12では、温度検知ユニットを固定する固定土台12jとこの固定土台12jを繋ぐ側壁部12gとの境界部分を不連続にするようにした。つまり、固定土台12jとこの固定土台12jを繋ぐ側壁部12gとの境界部分に間隙S3を設けることにより、その境界部分を不連続に形成している。
これにより、ヒータ11の異常昇温時のヒータ支持面部12aでの溶融埋没過程におけるヒータホルダ12の温度検知ユニット配置部の局所的な抗力の差を解消できる。これにより、ヒータホルダ12の通電遮断ユニット配置部でヒータ11にせん断応力が作用することを抑制することができ、ヒータ11の早期破損を改善できる。以下、本実施例のヒータホルダ12を本提案手法によるヒータホルダ12と記す。
本提案手法によるヒータホルダ12と、実施例1におけるヒータホルダ12を用い、実施例1と同様な方法で、通電遮断部材動作試験を各5回行った。実験結果を表2に示す。
本提案手法においては加熱体破損時間が実施例1に比べ1秒以上長くなっており、遮断時間に対して更にマージンが確保できるようになっていることが実験結果から見てとれる。破損位置に関しては様々であるが、温度ヒューズ位置は部材自体の体積もあり、ある程度までヒータ11が埋没すると、金属ステー14の上部に干渉することにより抗力の上昇が不可避的な為と考えられる。全体として、ヒータ11がヒータホルダ12に溶融埋没する深さは、実施例1よりも実施例2の方が深く、加熱体破損時間も実施例1に比べ実施例2は長くなっている。従って、本提案手法は実施例1以上に、埋没に伴うせん断応力の発生が抑えられ、結果として早期破損を抑制するにあたり有意に機能していることが示されている。
[実施例3]
他の定着装置を説明する。本実施例の定着装置FUは、ヒータホルダ12において、ヒータ支持面部12aの発熱領域部A1と非発熱領域部B1の境界位置をヒータ支持面部12aの発熱領域部A1の若干内側に修正したものである。更に、回転軌道保持部12cの非発熱領域部B2においてヒータ支持面部12aと回転軌道保持部12cを短手方向で不連続としたものである。この点を除いて、実施例1の定着装置FUと同じ構成としてある。
図8において、(a)は実施例1の定着装置FUにおけるヒータ11の定着ニップ部N側からの表面図、(b)はヒータ11の記録材搬送方向上流側からの側面図である。(c)は本実施例のヒータホルダ12の定着ニップ部N側からのヒータ支持面部12aの説明図である。(d)は本実施例のヒータホルダ12の記録材搬送方向上流側からのヒータ支持面部12aの説明図である。(e)は本実施例のヒータ11とヒータ11を支持しているヒータホルダ12の定着ニップ部N側からの表面図である。(f)は本実施例のヒータホルダ12を記録材搬送方向上流側から透視しホルダ部12dに溶融埋没したヒータ11を表わす模式図である。
実施例1の定着装置FUでは、ヒータ11の発熱抵抗体層11bが形成された発熱領域Aを金属ステー14によりヒータホルダ12の背面より支え、定着フィルム13を加圧ローラ20で圧接回転させていた。
これに対し、本実施例の定着装置FUは、ヒータ11の発熱領域Aよりも幅が広い領域C(図8(c)参照)に渡り定着フィルム13を加圧ローラ20で圧接回転させ、かつヒータの異常昇温時におけるヒータホルダ12のせん断応力の発生を抑制するものである。応用上は部品寸法公差や組み付け誤差などの都合上、ヒータ11の発熱領域Aよりも若干広い範囲を金属ステー14によりヒータホルダ12を介して加圧するように設定し、それに伴い定着フィルム13も長めに設定する場合がある。また、定着フィルム13の長手方向端部は回転動作時の回転軌道が不安定になりやすい。
ヒータホルダ12の枠体部12bは、前述のように定着フィルム13の回転軌道を保持する役目も担っており、その定着フィルム13の回転軌道を保持する部分を回転軌道保持部12cとする。従って、図8(c)の領域Cで示すように、ヒータホルダ12の回転軌道保持部12cは、ヒータ11の発熱領域Aの外側から非発熱領域Bの一部まで存在させるのが望ましい。金属ステー14は領域Cにおいてヒータホルダ12の枠体部12bの一部である回転軌道保持部12cを背面より支えることにより、回転軌道保持部12c全域を適切に加圧支持し、定着フィルム13の安定した回転を確保する。
ヒータ11においては、発熱抵抗体層11bの存在する発熱領域Aにおいて熱エネルギーが生成されることから、ヒータ11の異常昇温時におけるヒータ支持面部12aでの溶融埋没が顕著に起こる。
図8(c)、(d)に示す本実施例のヒータホルダ12においては、ヒータ11の発熱領域Aと非発熱領域Bの境界位置と、ヒータ支持面部12aの発熱領域部A1と非発熱領域部B1の境界位置と、を一致させている。しかしながら、基板11aを通じた熱伝達により熱エネルギーの分散が起こることから、その境界位置は発熱領域Aと比べ、ヒータ11の異常昇温時のヒータ支持面部12aでの溶融埋没は若干鈍くなる場合も考えられる。その溶融埋没の進行速度に差が生じると、ヒータ11にせん断応力が発生することから、これを避けることが望ましい。
そこで、発熱領域Aと非発熱領域Bの境界位置に対してヒータ支持面部12aの発熱領域部A1と非発熱領域部B1の境界位置を、発熱領域部A1の若干、具体的には5〜10mm内側に修正するのが望ましい。これにより、ヒータ11の発熱領域Aの位置や熱分布、発熱領域Aの端部領域熱拡散などの影響を受けた場合においても、ヒータ支持面部12aにおける非発熱領域部B1は発熱領域部A1の溶融埋没に対して確実に連動変位することが可能となる。
以上に述べた条件を満たす実施例3の変形例としてのヒータホルダ12の形状を模式的に表わしたのが図8(c)、(d)である。定着フィルム13の回転軌道を保持する回転軌道保持部12cはヒータ11の発熱領域Aから非発熱領域Bへ跨って形成可能である。つまり、回転軌道保持部12cは、ヒータ11の発熱領域Aに相当する発熱領域部A2と、非発熱領域Bに相当する非発熱領域部B2と、を長手方向に連続して有している。
ヒータ支持面部12aは回転軌道保持部12cの発熱領域部A2と非発熱領域部B2の間で長手方向に連続である。そして回転軌道保持部12cの非発熱領域部B2においてヒータ支持面部12aと回転軌道保持部12cが短手方向で不連続である。つまり、回転軌道保持部12cの非発熱領域部B2において、ヒータ支持面部12aと回転軌道保持部12cとの間に間隙S3を設けることにより、ヒータ支持面部12aと回転軌道保持部12cを短手方向で不連続に形成している。
本実施例のヒータホルダ12は、ヒータ支持面部12aの発熱領域部A1と非発熱領域部B1の境界位置がヒータ支持面部12aの発熱領域部A1の若干内側に位置されている。また、回転軌道保持部12cの非発熱領域部B2においてヒータ支持面部12aと回転軌道保持部12cが短手方向で不連続となっている。これにより、ヒータ11の異常昇温時の際に、ヒータ支持面部12aの発熱領域部A1の埋没による変形に連動して非発熱領域部B1もホルダ部12dに埋没するので、ヒータ11にせん断力が加わらずヒータ11の早期破損を抑制することができる。
ヒータホルダ11背面のパターンに関しては実施例2と同様、ヒータ支持面部12aの背面側において一対の側壁部12gを不連続とすることで溶融埋没時の抗力むら発生を抑制するものとした。ヒータ支持面部12a背面においても、発熱領域部A1と非発熱領域部B1を跨ぐ部分に関しては、実施例1にて述べたとおり凸壁部12iを不連続化させることで抗力を発生させる要因を低減した。
また、ヒータホルダ12において、ヒータ11の非発熱領域Bを支持する部位即ち枠体部12bに関しては、ヒータ11の異常昇温時に発熱領域Aが溶融埋没する挙動に連動して動くにあたり、可動性を確保する必要がある。本実施例では、ヒータ11の異常昇温時における変形挙動において、枠体部12bが金属ステー14の長手方向両端部にあるバネ受け部14aと干渉することを抑制するために、図8(d)で符号hにて示すように枠体部12bの高さを低減した形状に変更した。枠体部12bについては、通常時の役割に加え、ヒータ11のヒータ支持面部11aでの溶融埋没過程における可動性も考慮して形状を設計するものとする。
図9に本実施例の変形例に係る定着装置FUのヒータ11とヒータホルダ12を示す。本変形例に係る定着装置FUは、実施例3のヒータホルダ12において回転軌道保持部12cの発熱領域部A2の非発熱領域部B2側の端部A1tまで間隙S3を延長して形成した点を除いて、実施例3の定着装置FUと同じ構成としてある。
図9において、(a)は実施例1の定着装置FUにおけるヒータ11の定着ニップ部N側からの表面図である。(b)は本変形例のヒータホルダ12の定着ニップ部N側からのヒータ支持面部12aの説明図である。(c)は本変形例のヒータホルダ12の記録材搬送方向上流側からのヒータ支持面部12aの説明図である。(d)はヒータ11とヒータ11を支持している本変形例のヒータホルダ12の定着ニップ部N側からの表面図である。(e)は本変形例のヒータホルダ12を記録材搬送方向上流側から透視しホルダ部12dに溶融埋没したヒータ11を表わす模式図である。
本変形例のヒータホルダ12において、ヒータ支持面部12aは回転軌道保持部12cの発熱領域部A2と非発熱領域部B2及び発熱領域部A2の端部A1tとの間で長手方向に連続である。そして回転軌道保持部12cの非発熱領域部B2及び発熱領域部A2の端部A1tとの間においてヒータ支持面部12aと回転軌道保持部12cが短手方向で不連続である。これにより、ヒータ11の異常昇温時の際に、ヒータ支持面部12aの発熱領域部A1の埋没による変形に連動して非発熱領域部B1もホルダ部12dに埋没するので、実施例3と同様、ヒータ11にせん断力が加わらずヒータ11の早期破損を抑制することができる。
[実施例4]
他の定着装置を説明する。本実施例の定着装置FUは、実施例1の定着装置FUにおいけるヒータホルダ12のヒータ支持面部12a背面の構成が異なる点を除いて、実施例1の定着装置FUと同じ構成としてある。
図10は本実施例に係る定着装置FUのヒータホルダ12背面と、従来の定着装置のヒータホルダ12背面の構造を表わす説明図である。図10において、(a)は本実施例のヒータホルダの背面図である。(b)は(a)に示すヒータホルダ12のb−b線矢視断面図である。(c)は従来の定着装置のヒータホルダ12の背面図である。(d)は(c)に示すヒータホルダ12のd-d線矢視断面図である。図10(c)、(d)は、本実施例のヒータホルダ背面の構造と比較説明のために併記したものである。
定着装置FUの小型化に伴い、ヒータホルダ12、温度検知ユニット、通電遮断ユニット24などの各種構成部材と、金属ステー14との間に隙間が十分確保できない場合も考えられる。ヒータ11の異常昇温に伴うヒータ支持面部12aでの溶融埋没過程において、上記構成部材が金属ステー14と干渉すると、ヒータ11の溶融埋没における局所的な抵抗となり、ヒータ11の早期破損を引き起こすことが考えられる。
実施例2においては、ヒータホルダ12において、ヒータ支持面部12aでの発熱領域部A1における溶融埋没過程で局所抵抗となりうる部分、つまり抵抗が局所的に高い部分の構造を変え、その溶融埋没過程における抵抗を均一化することを提案した。
それに対し、本実施例では、ヒータホルダ12への温度検知ユニットの配置自由度が無い場合を想定し、溶融埋没過程において抵抗の低い部分に凸壁部12kを設ける構成とした。これにより抵抗を増大させ、結果としてヒータ支持面部12aの発熱領域部A1における溶融埋没時のヒータ11の溶融埋没における局所的な抵抗を均一化させる。
本実施例においては、ヒータホルダ12背面に通電遮断ユニット24を配置し、温度検知素子19はヒータホルダ12背面には配置せずに加圧ローラ20の表面に当接させる構成とした。通電遮断ユニット24は耐熱樹脂製のカバーを有し、金属ステー14との空間は1mmと狭くなる設定である。本実施例におけるヒータホルダ12におけるヒータ支持面部12aの発熱領域部A1に含まれる部位には、図10(b)に示すように、凸壁部12kを通電遮断ユニット24と同じ高さ、つまり金属ステー14まで1mmの位置になるよう形成した。
これにより、本実施例のヒータホルダ12は、ヒータ11の異常昇温時においてヒータ支持面部12aの発熱領域部A1と非発熱領域部B1とでヒータ支持面部12aに段差は発生せず、発熱領域部A1においても段差の発生は抑制される。これにより、ヒータ11の早期破損を抑制することができる。
これに対し、従来例のヒータホルダ12は、凸壁部12kが存在せず、ヒータ11の異常昇温時において通電遮断ユニット24が金属ステー14と干渉すると、ヒータ11の溶融埋没における局所的な抵抗となり、ヒータの早期破損を引き起こす可能性がある。
[他の実施例]
本実施例の定着装置は、記録材が担持する未定着トナー画像を記録材に加熱定着する装置としての使用に限られず、記録材に仮定着されたトナー画像を加熱してトナー画像の表面に光沢性を付与する像加熱装置として使用することもできる。