以下、本発明に係るエレベータ群管理システムの実施形態を、実施例毎に図面を用いて説明する。
まず、実施例1に係る群管理システムにつき、図1〜図9を用いて説明する。実施例1に係る群管理システムは、上下に連結されたいずれか一方のかごを基準のかごとして定め、この基準のかごについてのみルート評価値の演算を行い、他方のかごについては、基準のかごのルート評価値と同じとして、ホール呼びに割当てるエレベータのかごを選択することを特徴とする。
図1に示すように、実施例に係るエレベータの群管理システムは、群管理制御部1と、複数台(N台)のダブルデッキエレベータ(60、61、62)と、ダブルデッキエレベータの上かご(70、71、72)及び下かご(80、81、82)を制御する下かごのかご制御装置(40、41、42)及び上かごのかご制御装置(50、51、52)と、各階床のホールに設置されたホール呼び登録装置90とから主に構成されている。
群管理制御部1は、例えばマイコン、DSP(Digital Signal Processer)、システムLSI、パーソナルコンピュータなどの計算機をもって構成される。群管理制御部1には、運行管理制御系10と、学習系20と、知能系30とが備えられており、運行管理制御系10には、入力制御部11、目標ルート仕様設定部12、目標ルート作成部13、予測ルート作成部14、ルート評価関数演算部15、総合評価値演算部16、及びエレベータ選択部17が備えられている。
ダブルデッキエレベータ60、61、62は、それぞれ2つのかごが上下に連結されて1つの昇降路内に設置されている。上下に連結された2つのかごのうち、下側のかご(下かご80、81、82)は、下かごのかご制御装置40、41、42に割り振られ、上側のかご(上かご70、71、72)は、上かごのかご制御装置50、51、52に割り振られており、群管理制御部1はダブルデッキエレベータの上かご70、71、72及び下かご80、81、82をそれぞれ独立したかごとして制御する。各かご制御装置は、群管理制御部1と同様に、例えばマイコン等を含む計算機をもって構成される。なお、本実施例では、下かごのかご制御装置40、41、42と、上かごのかご制御装置50、51、52とを備える構成になっているが、各ダブルデッキエレベータの上かご及び下かごの制御を1つのかご制御装置で行い、群管理制御部1内にて上かごと下かごとを独立に認識する形式とすることもできる。また、本実施例においては、ダブルデッキエレベータの制御を例にとって説明するが、3つ以上のかごが上下に連結された他のエレベータの制御にも適用することができる。さらに、本実施例においては、群管理制御部1が制御する複数台のエレベータが全てダブルデッキエレベータとなっているが、ダブルデッキエレベータとシングルデッキエレベータが混在している場合にも適用することができる。
各かご内には、かご内操作盤100が備えられ、このかご内操作盤100内には、行先階登録ボタン101が備えられている。
各かごの運転に関わる情報は、下かごのかご制御装置40、41、42及び上かごのかご制御装置50、51、52から群管理制御部1の入力制御部11へ格納される。
また、各階床のホールに設置されているホール呼び登録装置90により呼び登録が行われると、その都度、登録された階床情報と上昇又は下降に関する要求情報などが入力制御部11へ格納される。
更に、かご内操作盤100に設置された行先階登録ボタン101を操作することにより、かご呼びが作成されると、各かごに対して実際にサービスを行う行先階情報が入力制御部11へ受け渡される。
上述の各情報のほか、かご内の乗客数やかご位置情報、各かごの既に受け持たれている呼び数、有効かご数、サービス階情報、予め入力されていた各かごに関する仕様情報などのエレベータ情報や、仕様情報等も入力制御部11へ格納される。これらは、入力制御部11へ格納される情報の一例であり、必要に応じて他の情報も入力制御部11へ格納される。本実施例では、上記の入力情報を基にエレベータの割当て制御を行う。
本実施例は、群管理制御部1により運行が管理される複数台のエレベータに、ダブルデッキエレベータなど、複数のかごが上下に連結されて1つの昇降路内に配置されるエレベータが含まれる場合にも、将来の運行ルートを予測し、例えばエレベータを時間的等間隔に制御することで、所謂「だんご運転」を抑制して、運行効率の向上に務めることを目的とする。
目標ルート仕様設定部12は、学習系20に蓄積された日々の運行状態から現在の交通状況を認識し、その情報を基に目標ルートの仕様を決定する。即ち、群管理制御部1内の学習系20では、かご位置や乗降人数等のエレベータ情報や行先階情報に基づいて交通状況を学習し、その時点でどのような運転プログラムが適しているかを判断しているため、ビル内の人の流れを示す階床別乗降人数をオンラインの入力情報から、ビル内の代表的な交通状況を示す特徴モードのいずれかに属するかを識別する。識別された交通状況は、時間的、或いは、その時点でのビルの交通流情報(エレベータを用いた人の移動の統計的情報)によって判断される。そういった交通状況を基に、目標ルートの仕様が決定される。目標ルートの仕様は、基本的に「時間的等間隔」に設定される。
目標ルート作成部13は、目標ルート仕様設定部12で決定された仕様に従って目標ルートの作成を行う。この目標ルート作成部13における目標ルートの作成方法を、図3及び図4を用いて説明する。図3は時間的等間隔調整前の目標ルートの運行軌跡を示す図であり、図4は時間的等間隔調整後の目標ルートの運行軌跡を示す図である。目標ルートの作成に必要な情報は、エレベータの予測される稼動方向であり、上昇方向か下降方向によってルートの運行軌跡が変化する。更に、現在のエレベータの位置情報、サービス可能な最上階と最下階、定格速度等の情報が必要となる。なお、これらの情報は、目標ルートの作成に必要な最低限の情報であり、エレベータの運行情報を考慮することで、より精密な目標ルートの作成が可能となる。
図3において、現時点から任意に設定された間隔推定時間303までの間を調整時間とし、目標ルートの仕様が時間的等間隔に設定された場合、間隔推定時間303における上かごの目標地点304と下かごの目標地点305が、目標ルートの仕様を満足する目標地点に設定される。図3の状態では、時間的等間隔の調整がなされていないので、上かごの目標ルートの運行軌跡301及び下かごの目標ルートの運行軌跡302は、間隔推定時間303に設定された上かごの目標地点304及び下かごの目標地点305を通過しない。
目標ルート作成部13は、目標ルート仕様設定部12で決定された「時間的等間隔」の条件に基づき、上かごの目標地点304及び下かごの目標地点305にそれぞれ上かご及び下かごが向かうように、調整時間内における上かご及び下かごの各目標ルートを調整する。目標ルートの調整は、現時点における各かごの位置に応じて、調整前の目標ルートでの方向反転点の位置を時間軸方向に調整することによって行う。図4に示すように、時間的等間隔に調整した後は、上かごの目標ルート401及び下かごの目標ルート402は、任意の間隔推定時間403において、それぞれ上かごの目標地点404と下かごの目標地点405を通過する。以上により、各かごの運行軌跡が調整時間以降の期間において等間隔となるような目標ルートが作成される。
予想ルート作成部14は、ホール呼び登録装置90より得られたホール呼び情報に対して、予測ルートを作成する有効かごに仮の割当てを行い、予測ルートの作成を行う。その際、各かごの予測ルートは、図5〜図8に示すように、ホール呼びに割当てられ、ホール呼び作成階に停止することが考慮された予測ルートと、ホール呼びに割当てられず、ホール呼びを通過する予測ルートの2つのルートを作成する。
図5はホール呼びを通過する場合の下かごの予測ルートであり、図6は下かごにホール呼びを仮割当てし、下かごをホール呼び作成階に停止する場合の下かごの予測ルートである。図5と図6を比較すると、ホール呼びに対して通過する予測ルート506と、ホール呼びに対して停止する予測ルート606とでは、停止する予測ルート606の方が目標ルート502、602に近くなる。同様に、図7はホール呼びを通過する場合の上かごの予測ルートであり、図8は上かごにホール呼びを仮割当てし、上かごをホール呼び作成階に停止する場合の上かごの予測ルートである。図7と図8を比較すると、ホール呼びに対して通過する予測ルート706と、ホール呼びに対して停止する予測ルート806とでは、通過する予測ルート706の方が目標ルート701、801に近くなる。
なお、目標ルート及び予測ルートの作成に際しては、既に受け持っている呼びに対する停止も考慮する。その際に、ダブルデッキエレベータにおいては、既に一方のかごが受け持っている呼びの影響による停止も考慮する必要がある。
ルート評価関数演算部15は、ルート距離指標により、割当て評価の一部であるルート評価関数の演算を行う。ルート評価関数は、予測ルートと目標ルートとの近さの度合いを表す指標であり、図5〜図8にハッチングを付して示すように、予測ルートと目標ルートからなる面積にて表せられる。
ルート評価関数が小さなかご、つまりは目標ルートに近い予測ルートの軌跡を示すかごを選択することで、時間的等間隔となるエレベータを得ることが可能である。通常のエレベータでは、本機能を働かせることで、複数のかごが数珠繋ぎとなって運行される「だんご運転」を防止しているが(特許文献1参照)、ダブルデッキエレベータにおいては、上下に連結されたいずれか一方のかごがホール呼びに割当てられ、サービスを行うために走行を開始すると、他方のかごも連動して走行する。つまり、連結している2つのかごが時間的等間隔になることはないため、将来の運行を配慮する目標ルート評価においては、一方のかごに統一する必要がある。
上記目的を果たすために、本実施例では、上かごのルート評価を下かごのルート評価演算結果と同一として、ホール呼びに割当てるエレベータのかごを選択する。このように、ルート評価演算時のみルート評価演算結果を片かごに統一し、他は通常のエレベータと同様の制御を行うことで、ダブルデッキエレベータについても、通常のエレベータと同様の計算機を使用して、最適な割当てを行うことが可能となる。
なお、本実施例では、下かごを基準とし、統一するかごの対象を上かごとしているが、これは単にダブルデッキエレベータの2つのかごを独立に制御する場合、かご番号の若いかごが下かごとなるためであり、基準とするかごが下かごに限定されるものではない。例えば、ホール呼びに対してより近いかごを向かわせるために、上昇方向へ向かう呼びに対しては上かごを基準とし、下降方向へ向かう呼びに対しては下かごを基準とすることもできる。また、階高調整機能付きのダブルデッキエレベータにおいては、階高調整を行う際に、基準となるかごが必ず存在するため、そのかごに合わせるという形態とすることもできる。
また、予測ルート及び目標ルートの作成に際しては、各かごのサービス階を考慮する必要がある。即ち、ダブルデッキエレベータは、それが設置されるビルの構造によっては、サービス不能の階床が生じるので、サービス可能な階床を考慮して予測ルート及び目標ルートを作成することが重要となる。例えば、ダミー階と呼ばれる、かご一つ分入り込める空間が最上階及び最下階に設けられていない通常の10階床のビルについては、下かごの有効サービス階は1階から9階、上かごの有効なサービス階は2階から10階となる。これに対して、ダミー階が設けられた10階床のビルについては、有効サービス階は上かご及び下かご共に1階から10階となる。通常のビルに設置されたダブルデッキエレベータのように、かごによって有効サービス階が異なる場合でも、ホール呼びが作成された階床によって基準となるかごを変動させることや、予測ルート及び目標ルートの作成時に上下各かごのサービス階を合成したサービス階を利用することは有効である。
合成したサービス階を利用する場合、既に受け持っているホール呼びに対する停止も考慮するため、上下の各かごが受け持っているホール呼びによる停止も考慮することが望ましい。つまり、仕様に応じて最適な割当てを行うために、その時の最適な基準となるかごを選択し、ルート指標におけるルート評価値演算を行い、そのルート評価値を1つのかごに統一する。
図9に、ルート評価値を1つのかごに統一した場合の、下かごの予想ルート906及び目標ルート901の一例を示す。
総合評価値演算部16では、ルート評価関数演算部16にて演算されたルート評価値を基に、その他の評価値を含めて、各かごに対する総合評価値の演算を行う。ルート評価値の他には、実待ち時間評価等の評価値が存在し、その瞬間のエレベータ情報や、ホール呼び情報、かご呼び情報等を考慮する。
エレベータ選択部17では、上記の総合評価値演算部16から得られた演算結果より、様々な情報を考慮した結果、その瞬間の最適な運行を行うと予測されるエレベータを選択する。
以上説明したように、実施例1に係る群管理システムは、ダブルデッキエレベータに対しても通常のエレベータとほぼ同等の運行管理を行うことができるので、ダブルデッキエレベータと通常のエレベータの一括管理が可能となる。
次に、実施例1に係る群管理システムの動作フローを、図2により説明する。
ステップST101では、制御に必要な入力情報を更新する。入力情報としては、ホール呼び登録装置90から得られるホール呼び情報と、かご内操作盤100より得られるかご呼び情報と、上かごのかご制御装置40、41、42及び下かごのかご制御装置50、51、52から送信されるかご情報とが更新される。また、ホール呼び情報及びかご呼び情報を基に、交通流情報や、平均停止数情報、停止時間情報等も更新される。更には、群管理制御部1内に予め設定されている各かごの仕様情報と、有効台数と、そのかご名と、サービス階床情報も更新される。なお、図2では、入力情報の更新を割当て制御の前に一括で行うものとしているが、必要な情報を必要なタイミングで更新する形でも良い。各かごの仕様情報とは、据え付けられているビルの形や大きさに依存するもので、予め定数として設定されるものとする。定数で設定されている情報以外の入力情報は、現在のビルの交通状況や時間帯などによって常に変化している。ダブルデッキエレベータは、通常のエレベータと異なり、運転方式に従ってサービス階の変化が生じる。本実施例では、サービス階の変化に迅速に対応するため、割当て制御を行う前に入力情報の更新を行う。
ステップST102では、目標ルート仕様設定部12により目標ルートの仕様が決定される。基本的には時間的等間隔が設定される。ステップST103では、目標ルート仕様設定部12により決定された目標ルートの仕様に従って、決定目標ルート作成部13により目標ルートの作成が行われる。ステップST104では、ホール呼びに対してかごの割当て処理が行われたかどうかの確認を行う。かごの割当て処理が行われた場合にはステップST105へ進み、行われない場合にはステップST101の入力情報の更新へ戻る。ステップST105では、総合評価値演算部16により、群管理制御部1が一括管理している対象のかご分についての総合評価値演算処理を行う。ステップST106では、予想ルート作成部14により予測ルートの作成を行う。予測ルートの作成は、ステップST104で得られたホール呼び情報を基に、対象となるホール呼びに対して、停止する予測ルートと通過する予測ルートの2つを作成する。上述したステップST101からステップST106までの各ステップで行われる処理及び演算は、特許文献1に記載されたシングルデッキエレベータの群管理システムと同様である。
実施例1に係る群管理システムの特徴は、ステップST107からステップST110までのステップを加えたことにある。即ち、ステップST107では、ダブルデッキエレベータであるか否かの判断を行う。ダブルデッキエレベータであればステップST108へ進み、ダブルデッキエレベータでない場合にはステップST109へ進む。なお、実施例1に係る群管理システムにおいては、ダブルデッキエレベータを2つのかごが連結されているものと認識し、予め設定されたデータに基づいてダブルデッキであるか否かを判断する。ステップST108では、下かごの演算であるか否かの判断を行う。下かごの演算であった場合にはステップST110へ進み、上かごの演算であった場合にはステップST109へ進む。ステップST110では、ルート評価関数演算部15により、ルート距離指標に基づく割当て評価の演算を行う。ルート評価関数は、図5〜図8に示したように、予測ルートと目標ルートからなる図形の面積にて表される。ステップST109では、上かごのルート評価値を、ステップST110で求められる下かごのルート評価値と同一にする処理を行う。
ステップST111では、待ち時間評価値の演算を行う。待ち時間評価値は、新規に発生したホール呼びに対し、各かごに対して仮割当てを行った場合の予測待ち時間とする、などの方法で定められる。ステップST112では、総合評価値演算部16により、最終的に割当て制御に使用する総合評価値の演算を行う。上述したルート評価値と待ち時間評価値は、重み付け加算される。ここで示す評価値は、エレベータの状態から評価される評価値等も考慮しており、待ち時間評価、ルート評価のみを使用して割当てを行うとは限らない。ステップST113では、総合評価値演算処理の終了処理を行う。これは一括管理を行うかご数分の総合評価値演算処理が終了した後に、ループ処理を終了するものである。図1の群管理システムでは、1〜2Nかご分の演算を終了した後に行われる。ステップST114では、ステップST113で求められた総合評価値に基づき、割当てエレベータ選択部17が、その瞬間で最適な運行を行うことが可能なかごを選択する。上述したステップST111からステップST114までの各ステップで行われる処理及び演算も、特許文献1に記載されたシングルデッキエレベータの群管理システムと同様である。
上述したように、実施例1に係る群管理システムは、上下に連結されたいずれか一方のかごについてのみルート評価値の演算を行い、他方のかごについては、一方のかごのルート評価値と同じとして、ホール呼びに割当てるエレベータのかごを選択するので、ダブルデッキエレベータについても、時間的等間隔となるような最適な割当て制御を行うことができる。
以下、実施例2に係る群管理システムにつき、図10を用いて説明する。実施例2に係る群管理システムは、ホール呼びに対してエレベータが向かう方向別に目標ルート作成時の基準となるかごを変動させることを特徴とする。
ステップST201からステップST206までの各ステップは、図2に示した実施例1に係る群管理システムの動作フローのステップST101からステップST106までと同じである。また、ステップST214からステップST217までの各ステップは、図2に示した実施例1に係る群管理システムの動作フローのステップST111からステップST114までと同じである。従って、重複を避けるため、これらの各ステップについては、説明を省略する。
実施例2に係る群管理システムの特徴は、ステップST207からステップST210までのステップを加えたことにある。即ち、ステップST207では、ダブルデッキエレベータであるか否かの判断を行う。ダブルデッキエレベータであればステップST208へ進み、ダブルデッキエレベータでない場合はステップST210へ進む。なお、実施例2に係る群管理システムにおいても、実施例1に係る群管理システムと同様に、ダブルデッキエレベータを2つのかごが連結されているものと認識し、予め設定されたデータに基づいてダブルデッキであるか否かを判断する。
ステップST208では、ホール呼びに対するエレベータの移動方向が、上昇方向であるのか、下降方向であるのかの判断を行う。上昇方向であった場合はステップST209へ進み、下降方向であった場合はステップST212へ進む。ステップST209では、下かごの演算であるか否かの判断を行う。下かごの演算であった場合にはステップST210へ進み、上かごの演算であった場合にはステップST211へ進む。
ステップST210では、ルート評価関数演算部15により、ルート距離指標に基づく割当て評価の演算を行う。ルート評価関数は、図5〜図8に示したように、予測ルートと目標ルートからなる図形の面積にて表される。ステップST211では、上かごのルート評価値を、ステップST210で求められる下かごのルート評価値と同一にする処理を行う。ステップST212では、下かごの演算であるか否かの判断を行う。下かごの演算であった場合にはステップST213へ進み、上かごの演算であった場合にはステップST210へ進む。ステップST213では、下かごのルート評価値を、ステップST210で求められる上かごのルート評価値と同一にする処理を行う。
実施例2に係る群管理システムは、ホール呼びに対してエレベータが向かう方向別に目標ルート作成時の基準となるかごを変動させるので、全てのサービス階のホール呼びに対して最適な目標ルートを作成することが可能となる。
なお、実施例2においては、上昇方向へのホール呼びに対しては上かごを基準とし、下降方向へのホール呼びに対しては下かごを基準としたが、基準となるかごはこれに限ったものではない。例えば、階高調整機能付きのダブルデッキエレベータにおいては、階高調整を行う際の基準となるかごが必ず存在する。この場合には、予め定められた基準のかごにルート評価演算時の基準となるかごを合わせることもできる。このように、ルート評価演算時の基準となるかごは、ダブルデッキエレベータの仕様等に応じて適宜選択することができる。
その他については、実施例1に係る群管理システムと同じであるので、重複を避けるため、説明を省略する。
以下、実施例3に係る群管理システムにつき、図11〜図18を用いて説明する。実施例3に係る群管理システムは、上下に連結されたいずれか一方のかごについてルート評価関数演算を行う際に、他方のかごの停止も考慮に入れることを特徴とする。
実施例1の説明からも推測されるように、シングルデッキエレベータについて目標ルート評価に基づく割当て制御を行う場合、図1に示した運行管理制御系10内の予測ルート処理部14は、新規のホール呼びに対して、1つのかごに対して、1回の予測ルートの作成を行う。ところが、ダブルデッキエレベータは、1つの昇降路内で2つのかごが連結状態で動作する。従って、いずれか一方のかごに受け持ち呼び(ホール呼びやかご呼び)が既に割当てられている場合、既登録の呼びが割当てられたかご(自かご)が既登録の呼びに対応して停止するだけでなく、自かごに連結された他方のかご(相手かご)の停止に連動しても停止する。
そのため、予測ルートに関しても、シングルデッキエレベータについての運行ルートの作成時には、ホール呼び情報、かご呼び情報等を考慮するが、ダブルデッキエレベータの場合には、相手かごの停止に連動する自かごの停止をも考慮しなくてはならないため、相手かごの呼び情報やエレベータ情報を考慮する必要がある。
また、シングルデッキエレベータについての運行ルートの作成時において、連続階床による呼びが発生した場合は、ルート評価の再検討を行い、2階連続で停止する運行ルートを作成する。しかし、上下のかごが1階床分の間隔を隔てて連結されているダブルデッキエレベータについては、同様の場合、相手呼びによる停止も考慮することで、1回の停止で済むような運行ルートを作成すれば、上述の条件内で更に運行効率の向上を図ることができる。このように、実施例3は、上下に連結されたいずれか一方のかごについてルート評価関数演算を行う際に、他方のかごの停止も考慮に入れることで、ダブルデッキエレベータに特有の運行効率の向上を図ると共に、「だんご運転」を解消するような将来の運行を予測した割当て制御を実現するものである。
図11〜図16は、白三角マークで示す受け持ち呼びが既にある場合の予測ルートについて示している。なお、以下の説明においては、割当て済みホール呼びが下かごに割当てられていると仮定する。このように割当て済みホール呼びが下かごに割当てられている場合において、黒三角マークで示す新規のホール呼びが作成されると、図1に示す運行管理制御系10内の予測ルート処理部14は、新規のホール呼びA07を通過する場合と仮割当てされた場合について、運行ルートの作成を行う。ここで、図11は下かごが新規のホール呼びA08を通過する場合の予測ルートであり、図12は下かごに新規のホール呼びA08を仮割当てした場合の予測ルートである。図12から明らかなように、割当て済みホール呼びが下かごに割当てられている場合において、下かごに新規のホール呼びA08を仮割当てした場合の予測ルートを作成すると、下かごが一階床ずつ連続して停止する運行ルートとなる。
図13は上かごが新規のホール呼びA08を通過する場合の予測ルートであり、図14は上かごに新規のホール呼びA08を仮割当てした場合の予測ルートである。図13及び図14において、既登録の呼びC07、D07は下かごに割当たっているため、下かごの停止を考慮している。そして、図11〜図14において、最も目標ルートに近く、ルート指標による目標ルート評価が高いものは図12となる。
ここで着目すべきは、本例におけるエレベータがダブルデッキエレベータであることである。図12において、一階床ずつの停止する運行ルートが作成されるが、ダブルデッキエレベータの本来の目的は、冒頭にも述べた通り、停止階床を少なくすることで、輸送能力の向上と運行効率を高めたものである。従って、本来のダブルデッキエレベータのあるべき制御としては、連続階床の呼びに対しては、前述の一階床ずつ運行するのでなく、上かごと下かごに振り分けて1回の停止で、図14における割当て済みホール呼びD07と新規のホール呼びD08に応答すべきである。
ダブルデッキエレベータにおける上かごと下かごの理想的な運行ルートを、図15及び図16に示す。図15は、既登録の呼びE07に対して既に割り当たっていたかごを、下かごから上かごに割当て変更を行ったあとの運行ルートであり、図16は、新規のホール呼びF08に対して、下かごに割当てを行った場合の運行ルートである。
図15及び図16に示すような、ダブルデッキエレベータにおける上かごと下かごの理想的な運行ルートを実現するため、連続階床にホール呼びがある場合には、再度予測ルートの作成を行う。このようにすると、将来目標ルート評価のみにおいては、等間隔性の評価が下がってしまうが、ダブルデッキエレベータの群管理制御として時間的等間隔を実現できると共に、全体の運行効率の向上を図ることができる。
次に、実施例3に係る群管理システムの動作を、図17及び図18を用いて説明する。
ステップST301からステップST305までの各ステップは、図2に示した実施例1に係る群管理システムの動作フローのステップST101からステップST105までと同じである。また、ステップST313及びステップST314は、図2に示した実施例1に係る群管理システムの動作フローのステップST113及びステップST114と同じである。従って、重複を避けるため、これらの各ステップについては、説明を省略する。
実施例3に係る群管理システムの特徴は、ステップST306からステップST312までのステップを加えたことにある。即ち、ステップST306では、ダブルデッキエレベータであるか否かの判断を行う。ダブルデッキエレベータである場合には、ステップST307へ進み、ダブルデッキエレベータでない場合には、ステップST308へ進む。実施例1及び実施例2と同様に、実施例3に係る群管理システムは、ダブルデッキエレベータを2つのかごが上下に連結されているものと認識し、設定されたデータよりダブルデッキであるか判断する。
ステップST307では、一度にサービス可能な階床数から、同方向のホール呼び(連続階床の呼び)が作成されたか否か判断する。一度にサービス可能な階床とは、例えば、階高調整機能のないダブルデッキエレベータでは、2階と3階のような、連続した2階床となる。また、1階床分の階高調整機能のあるダブルデッキエレベータでは、2階と4階といった、3階床分の階床となる。本条件を満たすホール呼びが作成されている場合は、ステップST312へ進み、作成されていない場合は、ステップST310へ進む。
ステップST308では、自かご(既登録の呼びが割当てられたかご)のかご情報のみを使用して、予想ルート作成部14により予測ルートの作成を行う。このとき、ステップST304で得られたホール呼び情報を基に、対象となるホール呼びに対して、停止する予測ルートと通過する予測ルートの2つを作成する(図11〜図14参照。)。
ステップST309では、ステップST308で得られた予想ルートを基に、図1のルート評価関数演算部15で、通常の目標ルート制御を行う。ルート評価関数演算部15は、ルート距離指標によるルート評価により、割当て評価の演算を行う。ルート評価関数は、上述したように、予測ルートと目標ルートからなる面積にて表せられる。その他、待ち時間評価値を演算し、最終的に図1の総合評価値演算部16により、割当て制御に使用する総合評価値の演算を行う。ルート評価と待ち時間評価は、重み付け加算される。ここで示す評価値とは、エレベータの状態から評価される評価値等も考慮しており、待ち時間評価、ルート評価のみを使用して割当てを行うとは限らない。
ステップST310では、自かごの情報と、相手かご(自かごに連結された他方のかご)のかご情報を使用し、図1の予想ルート作成部14により予測ルートの作成を行う。このときも、ステップST304で得られたホール呼び情報を基に、対象となるホール呼びに対して停止する予測ルートと通過する予測ルートの2つを作成する。
ステップST311では、ダブルデッキエレベータに特有の目標ルート制御を行う。ダブルデッキエレベータに特有の目標ルート制御とは、図2のステップST107からステップST110までの制御や、図10のステップST207からステップ213までの制御などをいう。
ステップST312では、対象の階床からのホール呼びに対して、目標ルートの再作成を行う。目標ルートの再作成については、後に図18を用いて説明する。しかる後に、ステップST315で総合評価値演算処理の終了処理を行い、次いで、ステップST316に移行して、図1の割当てエレベータ選択部17により、前記に示した総合評価値を基にその瞬間の最適な運行を行うことが可能なエレベータを選択する。
次に、ステップST312の目標ルートの再設定処理を、図18を用いて説明する。
ダブルデッキエレベータにおいて、一度にサービス可能な階床数から、同方向へのホール呼びが検出された場合、本フローが動作する。具体的には、2つのかごが単純に連結されている階高調整機能のないダブルデッキエレベータにおいて、3階の上昇方向へのホール呼びが作成されて割当て処理が行われた後、2階の上昇方向へのホール呼びが作成された場合や、4階の上昇方向へのホール呼びが作成された場合である。このとき、3階の上昇方向へのホール呼びを既登録呼び、2階や4階の上昇方向へのホール呼びは新規呼びとする。更に、ダブルデッキエレベータが、一度にサービス可能な階床数を停止可能階床数とする。
以下、停止可能階床における呼びが3階と2階であり、既登録が3階の呼び場合を例にとって説明する。これらの各呼びがともに上昇方向への呼びであった場合、停止可能階床における下方階、本例では2階からのルート評価演算は下かご分について行い、上かご分についてはルート評価演算を行わない。3階のルート評価演算については、先ほど演算を行った下かご分のルート演算をコピーする。これらのルート演算結果を1つの指標とし、総合評価を行う。更に、既登録の3階に対して、既登録時の割当て評価と、今回新たに演算を行った評価値と比較し、今回新たに演算を行った評価値が良好であった場合、割当ての変更を行い、停止可能階床における呼びに対して、一回の停止で済むような割当てを行う。
具体的には、ステップST401で、目標ルートの再設定処理を開始する。目標ルートの再設定処理は、停止可能階床数分かつかご数分のループについて行われる。ステップST402では、図1のホール呼び登録装置90で作成されたホール呼びが、上昇方向への呼びであるか、下降方向への呼びであるか判断を行う。上昇方向であった場合はステップST404へ進み、下降方向であった場合はステップST403へ進む。ステップST403では、連続階床での下方階からの呼びであるか否かの判断を行う。下方階からの呼びである場合はステップST406へ進み、上方階からの呼びである場合はステップST405へ進む。ステップST404では、連続階床での上方階からの呼びであるか否かの判断を行う。上方階からの呼びである場合はステップST408へ、下方階からの呼びである場合はステップST407へ進む。
ステップST405では、連続階床での上方階からの呼びに対して、上かごのルート評価値の演算を行う。このとき、かごの評価は上かご分のみとし、図17のステップST310及びST311と同等の処理を行う。相手かごと自かごのホール呼び情報及びかご呼び情報を考慮した予測ルートを作成し、ルート評価の演算を行う。ステップST406では、連続階床での下方階からの呼びに対して、下かごのルート評価値の設定を行う。このとき、下かごのルート評価値には、ステップST405で演算された上かごのルート評価値をコピーする。ステップST407では、連続階床での下方階からの呼びに対して、下かごのルート評価値の設定を行う。このとき、かごの評価は下かご分のみとし、図17のステップST310及びST311と同等の処理を行う。即ち、相手かごと自かごのホール呼び情報及びかご呼び情報を考慮した予測ルートを作成し、ルート評価の演算を行う。ステップST408では、連続階床での上方階からの呼びに対して、上かごのルート評価値の設定を行う。このとき、上かごのルート評価値には、ステップST407で演算された下かごのルート評価値をコピーする。
ステップST409では、待ち時間評価値の演算を行う。待ち時間評価値の演算方法としては、新規に発生したホール呼びに対して各かごに対して仮割当てを行った場合の予測待ち時間とする方法等などがある。ステップST410では、図1の総合評価値演算部16により、最終的な割当て制御に使用する総合評価値の演算を行う。前記のルート評価と待ち時間評価は、重み付け加算される。ここで示す評価値とは、エレベータの状態から評価される評価値等も考慮しており、待ち時間評価、ルート評価のみを使用して割当てを行うとは限らない。
ステップST411では、既に割当て済のホール呼びを作成した階床であるか否かの判断を行う。既に割当て済のホール呼びを作成した階床である場合はステップST412へ進み、新規呼びの場合は、通常の割当て制御であるため、そのままステップST414へ進む。ステップST412では、以前登録された際の評価値と、今回の評価値演算結果との比較を行う。評価値が以前よりも良好の場合、ステップST413へ進み、それ以外ではそのままステップST414へ進む。ステップST413では、今回の評価結果を用いて最適なかごを選択する。
このとき、望ましくは、ダブルデッキエレベータを用いて、一度の停止で2階床分サービスを行うことである。このため、ステップST414では、ループ処理の確認を行う。対象かご数、停止可能階床数の処理が終えていた場合、処理を終了する。対象かご数、停止可能階床数の処理が終えていなかった場合、ループ数を更新し、ステップST401へ戻る。
ここで重要なことは、将来の運行を考慮し、停止階少数を最小限に抑え、時間的等間隔となるようなルート評価演算を行うことである。即ち、本実施例においては、単純にルート評価のコピーを行っているが、停止階が少なくなるような評価計算を行う形式でも良いとする。例えば、停止回数が少なくなる場合にルート評価が通常の評価よりも良くなるような計算を行う形式である。
実施例3によると、相手かご情報を考慮して目標ルート制御を行うので、なるべく停止階床が少なくなるような目標ルート制御を作成することが可能となり、ダブルデッキエレベータの運行効率を高めることができる。但し、停止階床が少なくなるようなルート評価を行った場合でも、実際の割当てには総合評価値が参照されるため、実待ち時間評価や、エレベータのかご内情報によっては、停止可能階床からの呼びでも上下かごが必ずサービスするとは限らない。望ましくは、現時点での交通需要に合った最適な割当てを行うことである。
以上説明したように、本発明に係るエレベータの群管理システムは、ダブルデッキエレベータについても目標ルート制御を取り入れるので、ダブルデッキエレベータを時間的等間隔に配車することができ、その瞬間における運行効率の向上を図ることができる。