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JP5927089B2 - 質量分析装置及び方法 - Google Patents

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JP5927089B2
JP5927089B2 JP2012203261A JP2012203261A JP5927089B2 JP 5927089 B2 JP5927089 B2 JP 5927089B2 JP 2012203261 A JP2012203261 A JP 2012203261A JP 2012203261 A JP2012203261 A JP 2012203261A JP 5927089 B2 JP5927089 B2 JP 5927089B2
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Description

本発明は、質量分析装置及び方法に関する。
特許文献1には、正イオンと負イオンをそれぞれ異なるイオン源で生成し、その後、異なるイオン光学系を用いて同一のリニアイオントラップに導入してトラップする方法が記載されている。この例の場合、正イオンと負イオンは、各極性のイオンを導入するイオン光学系に隣接する異なるエンドレンズからリニアイオントラップに導入される。
特許文献2には、正イオンと負イオンを同一のイオン光学系を通してイオントラップに導入する方法が記載されている。この例の場合、正イオンと負イオンのいずれか一方の極性のイオンをイオントラップに導入した後、イオン光学系の極性を切り替えて逆極性のイオンをイオントラップに導入する。
米国特許出願公開第2011/0186724号明細書 米国特許第7943902号明細書
ところが、特許文献1及び2に記載の装置は、正イオンと負イオンの両方を質量分析する場合、正イオンと負イオンを別々にイオントラップに導入して質量選択的に排出し、排出されたイオンをイオン検出器で検出するという測定シーケンスを実行する。しかし、この測定シーケンスの実行には長時間を要し、スループットが低いという課題がある。加えて、特許文献1の場合は、イオン源を正イオン用と負イオン用のそれぞれについて設ける必要があるため装置構成が複雑となり、コストが高くなるという課題もある。
上記課題を解決するため、本発明は、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本明細書には、上記課題を解決する手段が複数含まれているが、その一例を挙げるならば、イオン源で生成された正イオンと負イオンの両方を、単一のイオントラップに設けられた同一の入口からほぼ同時に導入してトラップし、その後、イオントラップから質量選択的に排出された正イオンと負イオンの両方をイオン検出器で検出する質量分析装置である。
本発明によれば、正イオンと負イオンを別々にイオントラップ内に導入する必要がなく、正イオンと負イオンの両方を高スループットで質量分析することができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
実施例1に係る質量分析装置の全体構成を示す図。 インキャップ電極の構成を示す図。 実施例1に係るリニアイオントラップ周辺の配置関係及び接続関係を説明する図。 実施例1に係る測定シーケンスを示す図。 検出器の他の配置例を示す図。 検出器の他の配置例を示す図。 実施例2に係る質量分析装置の全体構成を示す図。 実施例3に係る質量分析装置の全体構成を示す図。 実施例3に係る質量分析装置の全体構成を示す図。 実施例4に係る質量分析装置の全体構成を示す図。 実施例4に係るリニアイオントラップ周辺の配置関係及び接続関係を説明する図(7a及び7bに印加するトラップ高周波電圧の振幅が非ゼロの場合)。 実施例4に係るリニアイオントラップ周辺の配置関係及び接続関係を説明する図(7a及び7bに印加するトラップ高周波電圧の振幅がゼロ場合)。 実施例4に係る測定シーケンスを示す図。 実施例5に係る質量分析装置の構成を示す図。 正イオンの分布空間と負イオンの分布空間のトラップ軸方向での分離を説明する図。 実施例6に係る測定シーケンスの一部を示す図。 実施例7に係る質量分析装置の構成を示す図。 実施例7に係る測定シーケンスの一部を示す図。 実施例8に係る測定シーケンスの一部を示す図。 トラップ軸上に形成される電界を説明する図。 実施例9に係る質量分析装置の構成を示す図。
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の実施の態様は、後述する実施例に限定されるものではなく、その技術思想の範囲において、種々の変形が可能である。
図1−1に実施例1に係る質量分析装置の構成を示し、図1−2にインキャップ電極の構成を示し、図1−3にリニアイオントラップ周りの構成を示す。
質量分析装置は、測定対象とする試料の一部を気化する気化部14を有している。気化部14には、例えば加熱器、スプレー噴霧器などが用いられる。気化部14にはバルブ4が接続されている。気化部14で気化された試料は、バルブ4が開状態のとき、周辺ガスと共にキャピラリー2を通ってイオン源3に導入される。バルブ4には、ピンチバルブやスライドバルブのように、ガスの導入/非導入を間欠的に制御できるものを使用する。
イオン源3は、誘電体キャピラリー41と、その外周に配置される電極42及び43と、交流電源40とで構成される。誘電体キャピラリー41は、ガラス、セラミック、プラスティックなどの誘電体で構成される管状の細管である。交流電源40は、電極42と電極43に、周波数1〜100kHz、電圧2〜5kV程度の交流電圧を印加する。電極42と電極43は、誘電体キャピラリー41の軸線上の異なる位置に配置される。電極42と電極43で挟まれた空間が放電領域となる。気化された試料が誘電体キャピラリー41に導入され、放電領域の圧力が上昇すると、放電領域で誘電体バリア放電が起こり、試料ガスから正イオンと負イオンの両方が生成される。
イオン源3で生成された正イオンと負イオンの両方は、分析室5にほぼ同時に導入される。正イオンと負イオンとを別々に時間をずらして導入しないので、導入プロセスが短くすることが出来る。分析室5の内部には、質量分析部と検出器が配置されている。分析室5の外部には、ターボ分子ポンプやイオンゲッターポンプなどから構成される排気ポンプ11が接続されている。排気ポンプ11により分析室5内は真空状態に保たれる。図1−1では、排気ポンプ11による排気方向を矢印16で示している。
図1−1では、気化部14とバルブ4をキャピラリー2で接続し、バルブ4と分析室5の間を誘電体キャピラリー41で接続する例を示しているが、キャピラリーの代わりにオリフィスを用いても良い。
分析室5に導入されたイオンは、直接、質量分析部に導入される。本実施例では、測定シーケンスを説明するために、質量分析部がリニアイオントラップで形成される場合について説明する。リニアイオントラップは、4本の四重極ロッド電極7a、7b、7c、7dと、インキャップ電極9、エンドキャップ電極10で構成される。
四重極ロッド電極7a、7b、7c、7dは、イオンの導入軸(トラップ軸)に対して等距離かつ平行に配置される。インキャップ電極9には、図1−2に示すように、径φが0.1〜10mm程度の細孔1が設けている。イオン源3から分析室5に導入されたイオンは、この細孔1を通ってリニアイオントラップの内部に導入される。なお、インキャップ電極9の細孔1にメッシュを張ったり、インキャップ電極9の全体をメッシュで作ってもよい。インキャップ電極9の細孔1にメッシュを張ると、メッシュがない場合に比較してイオンの導入効率は低下する。しかし、細孔1による電界の歪みが軽減されるためイオンのトラップは容易になる。
4本の四重極ロッド電極7a、7b、7c、7dのうち互いに対向するロッド電極間には同相の交流電圧が印加され、隣接するロッド電極間には逆相の交流電圧が印加される。図1−3の場合、四重極ロッド電極7a及び7b間にはトラップ高周波電圧源/補助交流電圧源18が接続され、四重極ロッド電極7c及び7d間にはトラップ高周波電圧源19が接続される。
トラップ高周波電圧は、四重極ロッド電極のサイズや測定する質量の範囲により最適な値が異なることが知られている。典型的には、振幅0〜5kV(0-peak)、周波数500kHz〜5MHz程度の高周波電圧が使用される。トラップ高周波電圧の印加により、リニアイオントラップの径方向(xy面)にイオン100をトラップする擬ポテンシャルが生じる。
インキャップ電極9及びエンドキャップ電極10には、交流電源80から周波数10〜1MHzの軸方向トラップ交流電圧が印加される。軸方向トラップ交流電圧の周波数がイオンの運動よりも充分早い場合、トラップ軸方向(Z方向)にイオンをトラップする擬ポテンシャルが生じる。トラップ軸方向に生じる一価のイオンについての擬ポテンシャルの高さは、(式1)で与えられる。
Figure 0005927089
ここで、Ωは軸方向トラップ交流電圧の周波数であり、mはイオンの質量であり、Eは電界である。(式1)より、軸方向トラップ交流電圧の振幅が高く電界が強いほど擬ポテンシャルが高くなることが分かる。また、同じ電圧振幅では、周波数が低いほどポテンシャル高くなることが分かる。ただし、周波数が低いとm/zが小さいイオンをトラップすることができなくなる。擬ポテンシャルは、正イオンと負イオンの両方をトラップできるので、インキャップ電極9とエンドキャップ電極10に軸方向トラップ交流電圧を印加した状態で、四重極ロッド電極7a、7b、7c、7dにトラップ高周波電圧を印加することにより、正イオンと負イオンの両方をリニアイオントラップの内部空間にトラップすることができる。
本実施例で使用する測定シーケンスの一例を図2に示す。図2に示す測定シーケンスは、蓄積工程、排気待ち工程、質量スキャン工程、排除工程の4つの工程で構成される。
蓄積工程では、バルブ4が開き、気化部14からイオン源3に試料ガスが導入される。試料ガスの導入後、イオン源3はプラズマを発生し、正イオンと負イオンの両方を生成する。イオン源3の典型的な圧力は少なくとも500Pa以上であり、気流の流れが支配的である。このため、イオン源3で生成された正イオンと負イオンの両方は気流の流れに乗り、分析室5のリニアイオントラップ内にほぼ同時に導入され、トラップされる。正イオンと負イオンとを別々に時間をずらして導入しないので、導入プロセスが短くすることが出来る。
分析室5に導入される気体の平均速度は、イオン源3と分析室5の間の流路(細孔やキャピラリー)を通過する気体の流量Qと、イオン源3と分析室5の間の流路の断面積Sと、流路内部の圧力Pとで表される(式2)により求めることができる。
Figure 0005927089
分析室5に導入されたイオンのトラップ軸方向(z方向)の運動エネルギーは、導入からの時間の経過と共に減少する。イオンが分析室5内の気体と衝突するためである。イオンがリニアイオントラップのインキャップ電極9の近傍に到達した時点で、イオンのz方向の運動エネルギーが軸方向トラップ交流電圧のポテンシャルより高ければ、イオンはリニアイオントラップに導入される。イオン源3の流路出口における気体の平均流速が速く、分析室5の背圧が低く、リニアイオントラップのインキャップ電極9と流路出口の距離が短いほど、イオンのトラップ軸方向(z方向)の運動エネルギーが大きくなる。イオンのz方向の運動エネルギーが大きければ、インキャップ電極9のポテンシャルが高くても、リニアイオントラップ内にイオンを導入することができる。
リニアイオントラップに導入されたイオンは、トラップ高周波電圧による径方向のポテンシャルと、軸方向トラップ交流電圧による軸方向のポテンシャルによりトラップされる。導入されるイオンの軸方向(z方向)の速度は気流の速度で決まる。このため、高質量イオンの方が相対的に大きな運動エネルギーを持つ。インキャップ電極9のポテンシャルを高くすれば、運動エネルギーが小さい低質量のイオンを選択的に排除することができる。
排気待ち工程では、バルブ4が閉状態に切り替えられる。この後、質量分析装置は、分析室5の圧力が、イオンの測定が可能となる0.1Pa以下の圧力に減圧されるまで待機する。典型的な排気待ち時間は500ms〜5000ms程度である。蓄積工程で導入される試料ガスが多いほど感度は向上するが、排気待ち時間は長くなりduty cycleは低下する。
質量スキャン工程では、イオントラップ内部のイオン100を質量選択的に排出する。本実施例の場合、4本の四重極ロッド電極のうち対向する一対の四重極ロッド電極7a及び7b間に一定周波数の補助交流電圧を印加させた状態で、四重極ロッド電極7c及び7d間に印加するトラップ高周波電圧の振幅を増加させる。補助交流電圧には、典型的には、振幅0〜50V(0-peak)、周波数5kHz-2MHz程度の単一周波数とそれら複数の周波数成分の重畳波形が使用される。この周波数に共鳴したイオンは、図中の矢印50及び51の方向に振動し、四重極ロッド電極7a及び7bに形成されたスリット(イオン排出口)から質量選択的に排出される。リニアイオントラップから質量選択的に排出されたイオンは、各スリットの対向位置に設けられた検出器8a及び8bにより検出される。一価のイオンについて共鳴励起されるイオンのm/zは(式3)で与えられる。
Figure 0005927089
ここで、r0は四重極ロッド電極の内接円半径であり、Ωはトラップ高周波電圧の周波数であり、Vはトラップ高周波電圧の振幅であり、eは電荷素量であり、qは補助交流電圧の周波数とトラップ高周波電圧の周波数により一意に決まる定数である。
(式3)より明らかなように、共鳴励起されるイオンのm/zは、電荷の符号に依存しない。このため、正イオンでも負イオンでも、m/zが同じであれば、同じタイミングで、リニアイオントラップから質量選択的に排出される。この他、質量スキャンの方法には、トラップ高周波電圧の振幅を一定にして補助交流電圧の周波数をスイープする方法もある。
リニアイオントラップから質量選択的に排出されたイオンは、電子増倍管、マルチチャンネルプレートなどで構成される検出器8a及び8bにより電気的な信号に変換される。なお、検出器8a及び8bに印加する電圧を個別に切り替えれば、正イオンだけ又は負イオンだけを検出することができる。例えば電子増倍管のアノードが四重極ロッドの直流(DC)電位に対して正の高電圧の場合、電子倍増管は負イオンを選択的に検出することができる。一方、電子倍増管のアノードが四重極ロッドの直流(DC)電位に対して負の高電圧である場合、電子倍増管は正イオンを選択的に検出することができる。
従って、一対の検出器8a及び8bのいずれか一方を正イオンの検出用とし、他方を負イオンの検出用とすれば、1回の測定で、正イオンと負イオンの両方について同時に質量スペクトルを得ることができる。
もっとも、図3に示すように、リニアイオントラップにスリット(イオン排出口)が1つしか形成されていない場合には、1つのスリットの周辺に正イオン検出用の検出器(例えば検出器8a)と負イオン検出用の検出器(例えば検出器8b)を配置すれば良い。この配置の場合でも、スリットからは正イオンと負イオンの両方が同時に排出されるため、1回の測定で、正イオンと負イオンの両方の質量スペクトルを同時に得ることができる。
なお、検出器8aの入力部に印加する電位と検出器8bの入力部に印加する電位は互いに逆極性であるので、図3に示すように、検出器8aの入力部と検出器8bの入力部が互いに対面するように配置する。図3では、スリットの開口軸と直交するように、検出器8aの入力部と検出器8bの入力部を配置している。
なお、図4に示すように、スリットが複数ある場合でも、各スリットの周辺に正イオン検出用の検出器(例えば検出器8a)と負イオン検出用の検出器(例えば検出器8b)を配置しても良い。図4の構成はスリット毎に正イオンと負イオンの両方を検出できるため、図1−3の構成と比較して感度が高い。ただし、図4に示す構成は、検出できるイオンの運動エネルギーの範囲に制限がある。
検出器8a及び8bは、検出されたイオンの強度信号を制御部21に送信する。制御部21は、受信した強度信号を不図示の記憶部に蓄積する。制御部21は、これらの情報を蓄積・変換するだけでなく、各電極などを制御する制御電源22、バルブ制御電源23などを制御する機能も有している。
図2の説明に戻る。排除工程では、トラップ高周波電圧の電圧振幅、軸方向トラップ交流電圧をいずれも0とし、リニアイオントラップ内に残留している全てのイオンを排出する。
以上のように、本実施例に係る質量分析装置は、正イオンと負イオンの両方を同一のインキャップ電極9からほぼ同時にリニアイオントラップ内に導入してトラップし、その後、質量選択的に正イオンと負イオンの両方を同時に排出することができる。このため、本実施例に係る質量分析装置では、従来装置とは異なり、正イオンと負イオンの両方の質量スペクトルを同時に得ることができる。
このように、本実施例に係る質量分析装置は、正イオンと負イオンの両方の質量スペクトルを同時に測定できるため、従来装置のように正イオンと負イオンを別々に測定する場合に比して、測定に要する時間を半分以下に短縮することができる。特に、本実施例のように、間欠的にイオンや試料ガスをリニアイオントラップ内に導入する場合には、長い排気待ち時間が必要とされるため、正イオンと負イオンを同時に測定することによる測定時間の短縮はメリットが大きい。しかも、本実施例に係る質量分析装置の装置構成は、従来装置に比して単純化されるため、製造コストを従来装置に比して低減することができる。
本実施例では、大気圧イオン源を用いる質量分析装置について説明する。図5に、本実施例に係る質量分析装置の構成例を示す。図5には、図1−1との対応部分に同一符号を付して示している。本実施例の場合、大気圧イオン源30はキャピラリー2を介してバルブ4の入口と接続されている。なお、バルブ4の出口は分析室5の入口に接続されている。
大気圧イオン源30には、例えば大気圧化学イオン源、エレクトロスプレーイオン源などを使用する。本実施例の場合、大気圧イオン源30で生成されたイオンは、周辺ガスと共にキャピラリー2を通過し、分析室5に導入される。
本実施例の場合も、大気圧イオン源30には、正イオンと負イオンの両方を同時に生成できるものを使用する。例えば大気圧化学イオン源の場合、正の高電圧が印加された針電極と負の高電圧が印加された針電極の両方において放電を同時に起こすことにより、正イオンと負イオンの両方を同時に生成することができる。また例えばエレクトロスプレーイオン源の場合、正の高電圧が印加されたプローブと負の高電圧が印加されたプローブのそれぞれからエレクトロスプレーを行うことにより、又は、交流の高電圧を印加した単一のプローブからエレクトロスプレーを行うことにより、正イオンと負イオンの両方を同時に生成することができる。
本実施例の測定シーケンスは、実施例1と同様である。なお、本実施例の場合、蓄積工程の際、大気圧イオン源30で生成された正イオンと負イオンの両方を、バルブ4を開いてリニアイオントラップに同時に導入し、トラップする。大気圧イオン源30の圧力はほぼ大気圧であるので、実施例1の場合と同様、大気圧イオン源30で生成された正イオンと負イオンの両方が気流の流れにより、インキャップ電極9を通ってほぼ同時にリニアイオントラップに導入され、トラップされる。排気待ち工程以降の動作は実施例1と同様であるので説明を省略する。
本実施例に係る質量分析装置は、実施例1の質量分析装置に比して装置構成を一段と単純化できる。特に誘電体キャピラリー41等が不要になるため、装置の小型化に有利である。
引き続き、大気圧イオン源を用いる質量分析装置について説明する。ただし、本実施例の場合には、イオンを連続的に分析室5に導入できる装置構成について説明する。図6−1及び図6−2に、本実施例に係る質量分析装置の構成例を示す。図6−1及び図6−2のそれぞれには、図5との対応部分に同一符号を付して示している。
まず、図6−1に示す質量分析装置について説明する。図6−1の場合、大気圧イオン源30で生成されたイオンは、キャピラリー2を通じ、分析室5に連続的に導入される。なお、イオンは、細孔などのコンダクタンスを通して導入しても良い。図6−2は、大気圧イオン源30に代え、減圧下で試料をイオン化する減圧イオン源31を用いる質量分析装置を示している。
いずれの装置構成の場合も、生成された正イオンと負イオンの両方が、気流により連続的に分析室5に導入される。この場合も、実施例1で示したように、気流により運ばれるイオンの運動エネルギーがインキャップ電極9のポテンシャルを超えていれば、正イオンと負イオンの両方をほぼ同時にリニアイオントラップに導入し、トラップすることができる。
本実施例の測定シーケンスは、実施例1と同様である。ただし、本実施例の場合、分析室5に対するイオンの導入を物理的に阻害するバルブ4が存在しない。従って、本実施例では、蓄積工程以降、イオンがリニアイオントラップ内に導入されないようにする仕組みが必要となる。
そこで、本実施例に係る質量分析装置では、排気待ち工程と質量スキャン工程で印加する軸方向トラップ交流電圧を、蓄積工程で印加する軸方向トラップ交流電圧よりも高く設定する。これにより、排気待ち工程と質量スキャン工程におけるインキャップ電極9のポテンシャルは、蓄積工程におけるインキャップ電極9のポテンシャルよりも高くなり、イオンがリニアイオントラップ内に導入されるのを防ぐことができる。
ところで、本実施例における分析室5の圧力は、リニアイオントラップや検出器が動作できる圧力以下に常に保たれるため、排気待ち工程の時間は、実施例1に比較して短くすることができる。この実施例における排気待ち工程の時間は、典型的には、0〜100ms程度である。
その一方で、この実施例の場合には、分析室5の真空度をリニアイオントラップや検出器が動作可能な圧力以下に常に維持する必要がある。このため、本実施例の場合には、大気との間のコンダクタンスを実施例1に比較して小さくする必要があり、その分、本実施例の検出感度は実施例1よりも低くなる。なお、前述したように、本実施例の場合には、排気待ち工程の時間を短くできるため、実施例1よりもスループットを高めることができる。
本実施例では、リニアイオントラップを構成するインキャップ電極9とエンドキャップ電極10に直流電圧を印加する質量分析装置について説明する。図7−1に、本実施例に係る質量分析装置の構成例を示す。図7−1には、図1−1との対応部分に同一符号を付して示している。図7−1と図1−1を比較すれば分かるように、本実施例の場合には、インキャップ電極9及びエンドキャップ電極10には直流電源90が接続されている。その他の接続構成は、実施例1と同様である。直流電源90は、オフセット直流(DC)電圧をインキャップ電極9及びエンドキャップ電極10の両方に印加する。
ただし、本実施例の場合、四重極ロッド電極7a、7b、7c、7dのうち対向する電極対に印加するトラップ高周波電圧の振幅の大きさと、他の電極対に印加するトラップ高周波電圧の振幅の大きさとが異なるように設定する。振幅の小さい方のトラップ高周波電圧の振幅は、典型的には、振幅が大きい方のトラップ高周波電圧の0〜80%程度に設定される。なお、振幅の小さい方のトラップ高周波電圧の振幅が非ゼロの場合、四重極ロッド電極7a、7b、7c、7dとトラップ高周波電圧源/補助交流電圧源18とトラップ高周波電圧源19の接続関係は図7−2のようになる。特に、スリットを設けた四重極ロッド電極7a、7bに印加するトラップ高周波電圧の振幅をゼロとする場合、四重極ロッド電極7a、7b、7c、7dとトラップ高周波電圧源/補助交流電圧源18とトラップ高周波電圧源19の接続関係は図7−3のように単純になる。
図8に、本実施例の測定シーケンスを示す。図8は、図2に対応する。図8と図2を比較して分かるように、本実施例の場合、軸方向トラップ交流電圧が直流である点と、トラップ高周波電圧の振幅が電極対で異なる点を除き、実施例1と同様である。なお、本実施例の場合には、振幅の大きさが異なる2つのトラップ高周波電圧を隣接する電極対に印加するため、リニアイオントラップのトラップ軸上に、トラップ高周波電圧の振幅の差に比例した高周波電圧が印加される。
また、本実施例の場合、インキャップ電極9とエンドキャップ電極10に直流電圧を印加するが、実施例1の場合と同様に、インキャップ電極9とエンドキャップ電極10の付近には擬ポテンシャルが形成され、正イオンと負イオンの両方をリニアイオントラップの中心軸方向にトラップすることができる。
以上の通り、本実施例の場合、インキャップ電極9やエンドキャップ電極10に交流電圧を印加する必要がないため、実施例1の場合と比較して、質量分析装置の回路構成が単純となり、製造コストを低減することができる。また、本実施例の場合には、インキャップ電極9やエンドキャップ電極10として分析室5の壁面を使うことができる。この場合、装置構成が一段と簡略化され、製造コストを低減することができる。ただし、本実施例の場合には、トラップ効率が実施例1よりも低くなる。このため、感度では、実施例1に劣る。
本実施例では、質量分析部として、三次元四重極型イオントラップを用いる質量分析装置について説明する。質量分析部以外の装置構成と測定シーケンスは実施例4と同様である。
図9に、三次元四重極型イオントラップのyz断面構成を示す。図9に示すように、三次元四重極型イオントラップは、1つのリング電極70と、インキャップ電極9とエンドキャップ電極10とで構成される。リング電極70は、概略ドーナツ形状を有するトラップ軸に対して回転対称である電極である。なお、リング電極70の内周面は双曲面を形成する。リング電極70は単一の電極であるので、実施例4のように振幅が異なる複数のトラップ高周波電圧を用意する必要は無い。図9では、トラップ高周波電圧源19だけをリング電極70に接続している。
なお、本実施例の場合、インキャップ電極9とエンドキャップ電極10の内周面も、図9に示すように、双曲面形状に加工されている。本実施例の場合、エンドキャップ電極10にも細孔1が形成されており、当該細孔1を通じ、質量選択的にイオンが排出される。すなわち、本実施例の場合、イオンの導入軸とイオンの排出軸が一致する。因みに、インキャップ電極9とエンドキャップ電極10には直流電源90が接続され、直流電圧が印加される。
本実施例の場合も、イオン源3で生成された正イオンと負イオンの両方が、インキャップ電極9の細孔1を通じて三次元四重極型イオントラップ内にほぼ同時に導入される。リング電極70にトラップ高周波電圧を印加すると、図9に示すように、リング電極70の内周面とインキャップ電極9及びエンドキャップ電極10の内周面とで挟まれた空間に正イオンと負イオンの両方がトラップされる。
この後、インキャプ電極9とエンドキャップ電極10に補助交流電圧を印加してトラップされたイオン100を共鳴励起すると、励起されたイオンがエンドキャップ電極10の細孔1から質量選択的に排出される。
本実施例に係る質量分析装置は、実施例1の質量分析装置と比較してトラップ効率が低くトラップ容量も小さいため感度は低いが、製造コストを低減できるという利点がある。
本明細書で説明する各実施例は、いずれも質量分析部に、正イオンと負イオンを同時にトラップすることを前提とする。ところが、正イオンと負イオンを同じ空間内にトラップすると、特に多価イオンの場合、正イオンと負イオンの間の電子移動により、イオンの損失が発生する。この損失を避けるためには、トラップ空間内で正イオンの分布空間と負イオンの分布空間を分離する必要がある。
そこで、本実施例では、リニアイオントラップのトラップ軸方向に電界を形成して、正イオンと負イオンの分布空間を分離し、イオンの損失を抑制する質量分析装置について説明する。なお、本実施例に係る質量分析装置の基本構成は実施例1と同様である。
まず、リニアイオントラップのトラップ軸方向に電界を形成する方法を説明する。具体的には、インキャップ電極9とエンドキャップ電極10に対し、(1) 軸方向トラップ交流電圧と、(2) 四重極ロッド電極7a、7b、7c、7dに印加する直流電圧に対するオフセット直流電圧とを印加する。
図10(b)は、インキャップ電極9に正のオフセット電圧を印加し、エンドキャップ電極10に負のオフセット電圧を印加した場合におけるリニアイオントラップのトラップ軸線上における電位の変化を示している。インキャップ電極9及びエンドキャップ電極10からトラップ空間内への電位の染み込みにより、インキャップ電極9の近くでは電位がプラスであるが、中央付近では電位がほぼゼロになり、エンドキャップ電極10の近くでは反対に電位がマイナスとなっている。この結果、図10(a)に示すように、正イオンの分布空間111はエンドキャップ電極10側に偏り、負イオンの分布空間110はインキャップ電極9側に偏っている。勿論、分布空間の重なりをゼロにはできないが、少なくとも分布空間が重なっていない領域(インキャップ電極9とエンドキャップ電極10の近辺)では、電子の移動反応を抑制することができる。
図11に、本実施例で使用する測定シーケンスの一部を示す。図11に示す電圧以外のシーケンスは実施例1(図2)と同じである。本実施例の場合、蓄積時間におけるインキャップ電極9及びエンドキャップ電極10のオフセット直流(DC)電位はゼロに設定する。排気待ち時間には、インキャップ電極9に正のオフセット直流(DC)電位を印加する一方、エンドキャップ電極10に負のオフセット直流(DC)電位を印加し、正イオンと負イオンの空間分布を分離する。本実施例の場合、オフセット直流電位の絶対値は同じであるものとするが、異なっていても良い。典型的な排気待ち時間は500ms〜5s程度である。排気待ち時間が全測定時間に占める割合は大きいので、排気待ち時間における電子移動反応の抑制効果は大きい。
以上の通り、本実施例に係る質量分析装置は、実施例1と比較して装置構成や電圧の印加方法が複雑になるが、電子移動反応によるイオンの損失を抑制できるため、検出感度を高めることができる。特に、実施例1や実施例2に係る質量分析装置のように、リニアイオントラップ内にイオンを間欠導入する場合には、排気待ち工程の時間が長いため、本実施例の方式により高い損失抑制効果を期待できる。
本実施例でも、正イオンの分布空間と負イオンの分布空間をトラップ軸方向に分離することが可能な質量分析装置について説明する。図12に、本実施例に係る質量分析装置の構成例を示す。図12には、図10との対応部分に同一符号を付して示している。本実施例の場合も、その基本構成は実施例1と同様である。
本実施例と実施例6との相違点は、図12(a)及び(b)に示すように、4本の四重極ロッド電極7a、7b、7c、7dの各間隙に、図12(d)に示す形状の羽根電極60を挿入する点と、四重極ロッド電極7a、7b、7c、7dの直流(DC)電位に対するオフセット電圧を羽根電極60に印加する点の2点である。
本実施例で使用する羽根電極60は、イオンの導入口側であるインキャップ電極9側の幅が最も狭く、エンドキャップ電極10の方向に向かって幅が単調に増加する形状を有している。なお、羽根電極60は、その曲線部分の変化が、インキャップ電極9側で大きく、エンドキャップ電極10側で小さくなるように形成されている。このため、羽根電極60の外縁とトラップ軸までの距離は、インキャップ電極9側で大きく、エンドキャップ電極10側で小さくなる。この形状のため、エンドキャップ電極10に近い位置ほど、トラップ軸上の電位は羽根電極60に対する印加電圧に近くなる。この結果、トラップ軸上の電位は、図12(c)に示すように直線的に変化する。具体的には、インキャップ電極9側の電位が最も低く、エンドキャップ電極10側の電位が最も高くなるように変化する。因みに、図12(c)は、羽根電極60に正のオフセット電圧を印加した場合である。
本実施例の場合、インキャップ電極9とエンドキャップ電極10の間には、実施例1と同様に、軸方向トラップ交流電圧のみが印加される。
図13に、本実施例で使用する測定シーケンスの一部を示す。図13に示す電圧以外のシーケンスは実施例1(図2)と同じである。すなわち、四重極ロッド電極7a、7b、7c、7dに対するトラップ高周波電圧の印加やインキャップ電極9及びエンドキャップ電極10に対する軸方向トラップ交流電圧の印加は実施例1と同じである。なお、実施例6の測定シーケンス(図11)との違いは、オフセット直流(DC)電圧が羽根電極60に印加される点である。
本実施例に係る質量分析装置の装置構成は、実施例6の装置構成と比較してリニアイオントラップの構造が複雑になる上に、挿入した羽根電極60によってリニアイオントラップの径方向に電界の歪が生じるという問題があるが、電子移動反応による損失を抑制する効果は大きくなる。
なお、本実施例では、インキャップ電極9側で最も幅が狭く、エンドキャップ電極10で最も幅が広い形状を有する羽根電極60を用いる場合について説明したが、これとは反対に、インキャップ電極9側で最も幅が広く、エンドキャップ電極10で最も幅が狭い形状(すなわち、トラップ軸に方向に沿って幅が単調に減少する形状)を有する羽根電極60を用いても良い。この場合は、インキャップ電極9側に負イオンが分布し、エンドキャップ側に正イオンが分布する。
本実施例では、任意のm/z以上のイオンを排除する質量分析装置について説明する。なお、装置構成は実施例1と同様である。
図14に本実施例で使用する測定シーケンスの一部を示す。図14に示す電圧以外のシーケンスは実施例1(図2)と同じである。図14に示すように、本実施例の場合、アイソレーション工程の際、インキャップ電極9とエンドキャップ電極10のそれぞれに、軸方向トラップ交流電圧に加えると共に、同じ極性の直流(DC)オフセット電圧を追加的に印加する。図14の場合には、正の直流(DC)オフセット電圧を印加している。
図15に、アイソレーション工程でインキャップ電極9とエンドキャップ電極10の両方に、正の直流(DC)電圧を印加した場合の電位と空間分布の関係を示す。図15(a)に示すように、同電位間の反発作用により、正イオンの分布空間111はトラップ軸方向に圧縮され、トラップ空間の中央付近に集中する。一方、負イオンの分布空間110は、トラップ空間の全体に広がるように分布する。なお、図15(b)〜(d)における原点は、図15(a)の下方に位置する四重極ロッド電極7bの内周面である。
図15(b)は、リニアイオントラップの中心付近における径方向(x,y)方向の直流(DC)電位の変化を示す。インキャップ電極9とエンドキャップ電極10からの電位の染み込みにより、リニアイオントラップのトラップ軸から径方向の距離が大きくなる方向に正イオンを排除する電界が生じている。
一方、図15(c)は、リニアイオントラップの径方向の擬ポテンシャルを示している。擬ポテンシャル井戸の深さは、以下の(式4)で与えられる。
Figure 0005927089
ここで、r0は四重極ロッド電極の内接円半径であり、Ωはトラップ高周波電圧の周波数であり、Vはトラップ高周波電圧の振幅であり、eは電荷素量であり、mはイオンの質量である。
(式4)からは、m/zが大きいイオンほど、径方向の擬ポテンシャル井戸が浅くなることが分かる。図15(c)では、m/zの大きさが異なる2つのイオンについて、擬ポテンシャル井戸の深さの違いを表している。
図15(d)は、図15(b)に示す直流(DC)電位と図15(c)に示す擬ポテンシャルを足し合わせた合成ポテンシャルの径方向の変化を示している。m/zが小さく擬ポテンシャル井戸が深いイオンの合成ポテンシャルは、基本的なポテンシャル形状を維持したまま径方向の全域についてポテンシャルが大きくなる。一方、m/zが大きく擬ポテンシャル井戸が浅いイオンの合成ポテンシャルは、ポテンシャル形状が上下反転し、径方向の全域について小さくなる。結果的に、2つの合成ポテンシャルは2つに分離される。
その結果、m/zが小さく擬ポテンシャル井戸が深いイオンはリニアイオントラップ内部にトラップされ続けるのに対し、m/zが大きく擬ポテンシャル井戸が浅いイオンはリニアイオントラップの径方向に排除され易くなる。
本実施例のように、インキャップ電極9とエンドキャップ電極10に同極性の電圧を印加し、リニアイオントラップの径方向にイオンを排除するような直流(DC)電位(図15(b))を形成すると、任意のm/z以上のイオンを選択的に排除することができる。なお、インキャップ電極9とエンドキャップ電極10に印加する直流(DC)電圧と、トラップ高周波電圧の振幅V、周波数Ωを変更することにより、トラップ空間から排除するm/zの下限値を選択することができる。
一方、インキャップ電極9とエンドキャップ電極10に印加する直流(DC)電圧と逆極性のイオンは、図15(a)に示すように、トラップ空間内に形成される電界により、トラップ軸方向に沿ってトラップ空間の全体に広がる。インキャップ電極9やエンドキャップ電極10の付近では、イオンをインキャップ電極9とエンドキャップ電極10のそれぞれから遠ざける擬ポテンシャルによる力と、イオンをインキャップ電極9とエンドキャップ電極10のそれぞれに引き出す直流(DC)電界による力が作用している。トラップ軸方向の擬ポテンシャルも(式1)から明らかなように、m/zが大きいイオンほど擬ポテンシャル井戸が浅くなるため、インキャップ電極9とエンドキャップ電極10に印加する直流(DC)電圧と軸方向トラップ交流電圧の振幅で定まるある閾値以上のm/zのイオンが選択的に排除される。
このように、本実施例に係る質量分析装置を用い、インキャップ電極9とエンドキャップ電極10の電位を制御すれば、任意のm/z以上のイオンを選択的にトラップ空間から排除することができる。
本実施例では、前述した実施例装置の簡易構成例を説明する。図16に、本実施例に係る質量分析装置の主要部分を示す。なお、図16に示す検出器8aと制御部21以外の構成及び測定シーケンスは実施例1と同様である。
本実施例の場合、新たに、コンバージョンダイノード300を用意する。この実施例の場合、コンバージョンダイノード300には負の高電圧、検出器8aには正の高電圧を印加する。このため、リニアイオントラップから質量選択的に排出された正イオンは、コンバージョンダイノード300に引き寄せられて負イオン又は電子に変換される。変換後の負イオン又は電子は、リニアイオントラップから質量選択的に排出された負イオンと共に検出器8aに入射され検出される。
すなわち、本実施例に係る質量分析装置では、正イオンの信号と負イオンの信号を区別することなく検出し、質量スペクトルを生成する。このため、本実施例に係る質量分析装置で測定される情報量は、一般的に実施例1よりも少なくなる。ただし、試料から発生されるイオンが予め分かっている場合には、実施例1と同等の情報量を得ることができる。さらに、本実施例の装置構成の場合、検出器が一つで済むので製造コストを実施例1に比して低減することができる。
なお、前述の説明では、コンバージョンダイノード300に負の高電圧、検出器8aに正の高電圧を印加しているが、この反対に、コンバージョンダイノード300に正の高電圧、検出器8aに負の高電圧を印加しても良い。
〔他の実施例〕
本発明は上述した実施例に限定されるものでなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成を追加、削除又は置換することも可能である。
なお、各図に示した制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示すものであり、製品上必要な全ての制御線や情報線を表すものでない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
1…インキャップ電極の細孔、2…キャピラリー、3…イオン源、4…バルブ、5…分析室、7a、7b、7c、7d…四重極ロッド電極、8a、8b…検出器、9…インキャップ電極、10…エンドキャップ電極、11…排気ポンプ、14…気化部、16…排気方向を示す矢印、18…トラップ高周波電圧源/補助交流電圧源、19…トラップ高周波電圧源、21…制御部、22…制御電源、23…バルブ制御電源、30…大気圧イオン源、31…減圧イオン源、40…交流電源、41…誘電体キャピラリー、42、43…電極、50、51…イオンの排出方向、60…羽根電極、70…リング電極、80…交流電源、100…トラップされたイオンの分布、110…負イオンの分布空間、111…正イオンの分布空間、300…コンバージョンダイノード。

Claims (15)

  1. 試料から正イオンと負イオンの両方を生成するイオン源と、
    前記イオン源より正イオンと負イオンを同一の入口からほぼ同時に導入してトラップする単一のイオントラップと、
    前記イオントラップから質量選択的に同時に排出された正イオンと負イオンの両方を検出する検出器と
    を有する質量分析装置。
  2. 請求項1に記載の質量分析装置において、
    前記検出器は、正イオンを検出する第1の検出器と、負イオンを検出する第2の検出器で構成される
    ことを特徴とする質量分析装置。
  3. 請求項2に記載の質量分析装置において、
    前記イオントラップの少なくとも1つのイオン排出口には前記第1の検出器が配置され、前記イオントラップが有する他のイオン排出口のうち少なくとも1つには前記第2の検出器が配置される
    ことを特徴とする質量分析装置。
  4. 請求項2に記載の質量分析装置において、
    前記イオントラップの少なくとも1つのイオン排出口には、前記第1の検出器と前記第2の検出器の両方が配置される
    ことを特徴とする質量分析装置。
  5. 請求項1に記載の質量分析装置において、
    前記イオントラップに対して正イオン及び負イオンを間欠的に導入するためのバルブを有する
    ことを特徴とする質量分析装置。
  6. 請求項5に記載の質量分析装置において、
    前記バルブは、前記イオン源に対する試料の導入流路を間欠的に開閉する
    ことを特徴とする質量分析装置。
  7. 請求項5に記載の質量分析装置において、
    前記バルブは、大気圧下で動作する前記イオン源と前記イオントラップの入口とを接続する流路を間欠的に開閉する
    ことを特徴とする質量分析措置。
  8. 請求項1に記載の質量分析装置において、
    リニアイオントラップである前記イオントラップのインキャップ電極の電位を制御する制御部を有し、
    前記制御部は、
    蓄積工程には、第1の軸方向トラップ交流電圧を前記インキャップ電極に印加して前記イオン源から正イオンと負イオンを連続的に導入し、
    蓄積工程以降では、前記第1の軸方向トラップ交流電圧より大きい交流電圧であって、正イオンと負イオンの運動エネルギーよりも大きいポテンシャルを前記入口に発生する第2の軸方向トラップ交流電圧を前記インキャップ電極に印加して前記イオン源からの正イオンと負イオンの導入を阻害する
    ことを特徴とする質量分析装置。
  9. 請求項1に記載の質量分析装置において、
    リニアイオントラップである前記イオントラップのインキャップ電極とエンドキャップ電極の電位と、前記リニアイオントラップを構成する複数本のロッド電極の電位を制御する制御部を有し、
    前記制御部は、蓄積工程及び排気待ち工程において、前記インキャップ電極と前記エンドキャップ電極には直流電圧のみを印加し、トラップ軸に対して対向する複数の前記ロッド電極で構成される第1の電極対に対しては第1のトラップ高周波電圧を印加し、トラップ軸に対して対向する複数の前記ロッド電極であって、前記第1の電極対とは別のロッド電極で構成される第2の電極対に対しては前記第1のトラップ高周波電圧よりも振幅が小さい第2のトラップ高周波電圧又は直流電圧を印加する
    ことを特徴とする質量分析装置。
  10. 請求項1に記載の質量分析装置において、
    前記イオントラップは、ドーナツ形状のリング電極と、インキャップ電極と、エンドキャップ電極とで構成される三次元四重極型イオントラップである
    ことを特徴とする質量分析装置。
  11. 請求項1に記載の質量分析装置において、
    リニアイオントラップである前記イオントラップのインキャップ電極及びエンドキャップ電極の電位を制御する制御部を有し、
    前記制御部は、蓄積工程において、前記インキャップ電極及びエンドキャップ電極に対して逆極性のオフセット直流電圧を印加する
    ことを特徴とする質量分析装置。
  12. 請求項1に記載の質量分析装置において、
    前記イオントラップを構成する複数本のロッド電極の各隙間に配置される複数枚の羽根電極と、
    前記複数枚の羽根電極に印加する電位を制御する制御部を有し、
    前記制御部は、蓄積工程において、トラップ軸方向に沿って幅が単調に増加又は減少する形状を有する前記羽根電極にオフセット直流電圧を印加する
    ことを特徴とする質量分析装置。
  13. 請求項1に記載の質量分析装置において、
    リニアイオントラップである前記イオントラップのインキャップ電極及びエンドキャップ電極の電位を制御する制御部を有し、
    前記制御部は、アイソレーション工程において、前記インキャップ電極及びエンドキャップ電極に対して同極性のオフセット直流電圧を印加する
    ことを特徴とする質量分析装置。
  14. 請求項1に記載の質量分析装置において、
    前記イオントラップから排出された正イオンと負イオンのいずれか一方を逆極性のイオンに変換するコンバージョンダイノードを有し、
    前記検出器は、前記コンバージョンダイノードにより生成された第1のイオンと、前記イオントラップから排出された正イオン及び負イオンのうち前記第1のイオンと同極性のイオンを同時に検出する
    ことを特徴とする質量分析装置。
  15. イオン源において、試料から正イオンと負イオンの両方を生成する工程と、
    前記イオン源で生成された正イオンと負イオンを、単一のイオントラップの同一の入口に対してほぼ同時に導入し、トラップする工程と、
    前記イオントラップから質量選択的に同時に排出された正イオンと負イオンの両方を検出器にて検出する工程と
    を有する質量分析方法。
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