図1は、本発明の一実施形態であるペット用おむつ1を平面状に展開した正面図である。図2は、図1における切断面線II−IIで切断したペット用おむつ1の断面を模式的に示す図であり、図3は、図1における切断面線III−IIIで切断したペット用おむつ1の断面を模式的に示す図である。
ペット用おむつ1は、展開状態で正面視したとき(図1に示す状態)の形状が、I字形状であって、犬などのペット、特に雄犬を屋内で飼育する際に用いられ、その長手方向の各端部がペットの腹部と背中部にそれぞれ位置するようにして、ペットの腹部、股部、臀部および背中部を覆う状態で装着し、使用される。
ペット用おむつ1の形状は、I字形状に限られず、長方形状であってもよく、またI字状や長方形状の長手方向の両端縁が円弧状に湾曲した形状であってもよい。
ペット用おむつ1は、第1方向(長手方向)Xの寸法が第1方向Xに垂直な第2方向(幅方向)Yの寸法よりも長いおむつ本体2と、おむつ本体2の第1方向Xの各端部6,8同士を係止するための係止手段3とを含む。なお、第1方向Xおよび第2方向Yに垂直な方向を、第3方向(厚み方向)Zとする。
本実施形態において、おむつ本体2は、長手のI字状のシート体である。より詳細には、本実施形態において、おむつ本体2は、第1方向X両端部6,8における第2方向Yの寸法よりも、第1方向X中央部における第2方向Yの寸法が短く形成され、第1方向Xの寸法L1は、43cm、第1方向X両端部6,8における第2方向Yの寸法L2は、29cm、第1方向X中央部における第2方向Yの寸法L3は、17.8cmである。おむつ本体2の第1方向X両端部6,8の各端縁7,14は、幅方向と平行な一直線に形成される。
おむつ本体2の寸法L1〜L3は、上記数値に限られることはなく、ペット用おむつ1を装着するペットのサイズに合わせて適宜変更されるが、その寸法比はほぼ一定であり、L1,L2,L3の寸法の比が、約10:7:4となるように形成される。
おむつ本体2は、通気性および透液性を有する表面シート4と、表面シート4に重ねた状態で接合される、不透液性を有する裏面シート5と、表面シート4と裏面シート5との間、より詳細には、表面シート4の未接合部と裏面シート5の未接合部との間であって、第1方向X一端部6の端縁7よりも第1方向X他端部8側に退避して配置される、吸液性を有する吸収体9と、吸収体9の第2方向Y両側で、かつ第1方向Xに沿って延び、表面シート4に接合、より詳細には、表面シート4の補強シート15に臨む一表面4aとは厚み方向(第3方向Z)反対側の他表面4bに接合され、少なくとも吸収体9が配置される領域と対応する領域、換言すれば吸収体に近接する領域が起立可能な一対の漏出防止シート10と、漏出防止シート10に、吸収体9よりも第1方向X一端部6の端縁7側の第2方向Y一端部11寄りの領域と第2方向Y他端部12寄りの領域とにそれぞれ設けられ、換言すれば、吸収体9よりも第1方向X一端部6の端縁7側であって、かつ第2方向Y両端部11,12寄りに設けられ、当該漏出防止シート10と接合可能な接合手段13とを含む。
また、表面シート4と裏面シート5との間には、吸収体9よりも第1方向X一端部6の端縁7側に、可撓性および伸縮性を有する補強シート15が配設され、表面シート4および裏面シート5の吸収体9よりも第1方向X他端部8側には、尻尾を挿通するための尻尾通し用切欠き16が形成される。
表面シート4は、通気性および透液性を有するシートであればよく、たとえば合成繊維および再生繊維から成る繊維シートまたは繊維ウェッブの繊維同士を物理的に交絡させて形成される不織布などを用いることができる。本実施の形態では、不織布を用いて形成される。表面シート4は、通気性および透液性を有するシートであるので、表面シート4側から、排尿を吸収体9に導くことができる。
表面シート4は、吸収体9が設けられる領域では、第2方向Y両端部における一表面4aが裏面シート5の面5aと接合され、第2方向Y中央部における一表面4aは、裏面シート5とは未接合であり、吸収体9と当接する。すなわち、吸収体9が設けられる領域では、一表面4aは、吸収体9および裏面シート5に当接する。
また、吸収体9が設けられない領域、たとえば補強シート15が設けられる領域では、表面シート4は、一表面4aが補強シート15と接合される。すなわち、補強シート15が設けられる領域では、一表面4aが補強シート15とのみ接合される。
また、吸収体9および補強シート15が設けられない領域では、一表面4aは、裏面シート5の面5aとのみ接合される。また、表面シート4の他表面4bは、漏出防止シート10とのみ接合される。
なお、一表面4aおよび他表面4bは、表面シート4の厚み方向(第3方向Z)における両面であり、一表面4aは、第3方向Zにおいて他表面4bの反対側の面である。また、面5aおよび面5bは、裏面シート5の厚み方向(第3方向Z)における両面であり、面5aは、第3方向Zにおいて面5bの反対側の面である。
裏面シート5は、不透液性で可撓性を有するシートなどを用いて形成することができ、本実施の形態では、たとえばポリエチレン製のシートが用いられる。また裏面シート5には、不透液性および可撓性に加えて透湿性を有するシートを用いてもよい。このような透湿性をも有するシートを用いることによって、装着時においてペット用おむつ1とペットとの間の湿度の上昇を防ぐことができ、蒸れることによるペットの不快感を低減することができる。
本実施形態において、裏面シート5は、表面シート4よりも寸法が大きく形成され、表面シート4の第3方向Zに積層されて、表面シート4、補強シート15、漏出防止シート10および係止手段3と接合される。
より詳細には、裏面シート5は、補強シート15が配設される領域では、補強シート15および漏出防止シート10に臨む面5aが、第2方向Y中央部で補強シート15と接合され、第2方向Y両端部で漏出防止シート10の他表面10bと接合される。後述する一表面10aと他表面10bは、漏出防止シート10の厚み方向(第3方向Z)における両面であり、一表面10aは、第3方向Zにおいて他表面10bの反対側の面である。
また、吸収体9が配設される領域では、面5aが、第2方向Y中央部で吸収体9と当接する。換言すれば、面5aは、吸収体9が配設される領域の第2方向Y中央部では、未接合である。また、面5aは、吸収体9と当接する箇所よりも第2方向Y両端部側で、表面シート4の一表面4aと接合される。さらに面5aは、一表面4aと接合されるよりも、第2方向Y両端部側で、漏出防止シート10と接合される。換言すれば、裏面シート5は、第2方向Y両端部において、漏出防止シート10の他表面10bと接合される。
また、吸収体9および補強シート15が設けられない領域では、面5aは、表面シート4の一表面4aおよび漏出防止シート10の他表面10bと接合される。また、裏面シート5の面5bは、係止手段3とのみ接合される。
裏面シート5は、表面シート4、補強シート15、および漏出防止シート10と接合された状態において、裏面シート5の長手方向、幅方向および厚み方向が、表面シート4および漏出防止シート10の長手方向、幅方向および厚み方向と一致する。
表面シート4、裏面シート5、補強シート15および漏出防止シート10の接合には、あらゆる公知の方法を用いることができるが、本実施形態では、工業用糊材であるたとえばホットメルト接着剤を用いて加圧・加熱することにより、両シート4,5は接合されている。前記工業用糊材としては、モレスコ社製のTN−269(商品名)、TN−255(商品名)、TN−288(商品名)などを用いることができる。
吸収体9は、表面シート4と裏面シート5との間に配設され、矩形状で吸液性を有し、吸収した液体を保持する機能を有する。吸収体9は、第1方向X一端部6の端縁7よりも第1方向X他端部8側に退避した位置であって、第2方向Yの略中央部に配置される。
本実施の形態では、吸収体9は、端縁7よりも第1方向X他端部8側に退避した位置から、第1方向Xの中央を第1方向X他端部8側に少し越えた位置にわたって設けられる。より詳細には、端縁7から他端部8側に距離L4退避した位置から、他端部8の端縁14から一端部6側に距離L5退避した位置にわたって設けられる。本実施形態において、距離L4は、2cmであり、距離L5は、18.2cmである。
吸収体9の設けられる位置は、上記範囲に限らず、たとえば、端縁7よりも第1方向X他端部8側に退避した位置から、第1方向X他端部8の端縁14にわたって配設されていてもよく、端縁7よりも第1方向X他端部8側に退避した位置から、第1方向Xの中央までに配設されていてもよい。
吸収体9のサイズや吸収能力などは、ペット用おむつ1が用いられるペットのサイズや種類によって適宜決定されるが、生理現象およびマーキングによるペットの複数回の排尿を十分に吸収し、保持することができるサイズおよび吸収能力であればよい。
吸収体9としては、公知のあらゆる吸水性材料を用いることができる。本実施形態では、吸収体9は、フラッフ状繊維、吸水性ポリマおよび消臭剤を含む。フラッフ状繊維は、たとえばパルプを1mm以上10mm以下の長さに切断した親水性繊維を撹拌して綿状にした綿状パルプを用いることができる。吸収体9は、フラッフ状繊維で形成されるので、吸収体9は繊維間に多数の空隙を有する。したがって、液体を面方向および厚み方向に効率よく移動させて吸収することができる。
吸水性ポリマは、自重の約10倍以上300倍以下の水分を吸収してゲル状に凝固する高分子吸収体であり、吸水性ポリマとしては、たとえば抗菌性を有する吸水性ポリマや荷重下通液性を有する吸水性ポリマ等を用いることができる。前記抗菌性を有する吸水性ポリマの例としては、商品名サンフレッシュST−900E(サンダイヤポリマー株式会社製)を挙げることができ、荷重下通液性を有する吸水性ポリマとしては、商品名サンウェットIM−930(サンダイヤポリマー株式会社製)を挙げることができる。本実施形態では、吸水性ポリマとして、アクリル酸ナトリウム塩およびアクリル酸カリウム塩などの吸水性ポリマに、抗菌剤を電気的に重合させて付着させた抗菌性を有する高機能吸水性ポリマを用いている。このように吸水性ポリマが抗菌性をも有することで、吸収体9における菌の繁殖を抑えることができる。
また、本実施形態では、吸水性ポリマは、吸収体9内に均等に分散されている。このように構成されることによって、ペットの排尿が表面シート4上のいずれの部分から浸透した場合であっても、効率よく排尿を吸収し保持することができる。また、消臭剤を吸収体9内に均等に分散することで、アンモニア臭などの人にとって不快な臭いが外部に漏れ出すのを防ぐことができる。
本実施形態において吸収体9は、第1方向の寸法L6が22.8cm、第2方向の寸法L7が9.5cm、第3方向の寸法L8が8.0mmである。吸収体9の寸法L6〜L8は、上記数値に限られず、ペット用おむつ1が用いられるペットのサイズや種類によって適宜決定され、前述のように生理現象およびマーキングによるペットの複数回の排尿を十分に吸収し、保持することができる容量、すなわちサイズおよび吸収能力を有していればよい。本実施形態では、吸収体9は、約300ccを吸収し保持することができる。
漏出防止シート10は、表面シート4の他表面4bおよび裏面シート5の面5a上に、第1方向Xに沿って延びて設けられる帯状のシート体である。漏出防止シート10は、後述する基端部が含まれる、幅方向一端部において、他表面10bが裏面シート5の面5aと接合される。また、幅方向一端部と幅方向他端部との間において、他表面10bが表面シート4の他表面4bと接合される。
漏出防止シート10は、その幅方向一端部が表面シート4の他表面4bおよび裏面シート5の面5aに接合される基端部として形成され、幅方向他端部が弾発的に伸縮可能な遊端部として形成される。漏出防止シート10における長手方向は、ペット用おむつ1を水平面上に展開して載置した場合において、第1方向Xと一致し、幅方向は、ペット用おむつ1を水平面上に展開して載置した場合において、第2方向Yと一致する。漏出防止シート10の遊端部は、内側に折り返され、その中に後述する索条30が内封される。
漏出防止シート10は、裏面シート5と同様に不透水性および可撓性を有するシートなどを用いて形成することができ、本実施の形態では、スパンボンド法およびメルトブロー法で製造したポリプロピレン製の複数の不織布を、スパンボンド法で製造した不織布、メルトブロー法で製造した不織布、メルトブロー法で製造した不織布、スパンボンド法で製造した不織布の順で積層させ、防水加工を施した不織布によって形成されている。漏出防止シート10は、いわゆる立体ギャザーである。
漏出防止シート10の遊端部には、弾発的に伸縮可能な索条30が表面シート4および裏面シート5に対して第1方向Xに緊張、すなわち伸長された状態で内封して配設されており、遊端部は、弾発的に伸縮可能である。したがって、ペット用おむつ1の装着時には、索条30の収縮力によって遊端部が基端部よりも収縮し、漏出防止シート10が立体的に立ち上げられる。
このように、漏出防止シート10が立体的に立ち上がることによって、たとえばペット用おむつ1が、ペットに装着された場合には、第2方向Yに排尿が拡がると、漏出防止シート10によってせき止められ、漏出防止シート10に沿って吸収体9に導かれることになるので、排尿が第2方向Yから漏れ出すのを防ぐとともに、排尿を吸収体9に確実に吸収させることができる。
索条30は、弾発的に伸縮可能なものであれば、公知のあらゆる素材を用いることができ、本実施形態では細いゴム紐が用いられる。
接合手段13は、漏出防止シート10の一表面10a上に設けられ、漏出防止シート10の一表面10aと接合可能な部材である。ここで、漏出防止シート10の一表面10aとは、漏出防止シート10の厚み方向(第3方向Z)における両主面のうち、折り返された部分以外で、表面シート4や裏面シート5、補強シート15と対向しない側の主面である。
本実施形態では、接合手段13は、第1方向Xにおいて、吸収体9よりも一端部6の端縁7側であって、かつ第2方向Yにおいて、吸収体9よりも両端部11,12寄りの位置に設けられる。より詳細には、接合手段13は、第1方向Xにおいて、端縁7から吸収体9が配設される領域の手前までであって、かつ第2方向Yにおいて、両端部11,12の各端縁17,18から所定の距離L9だけ離間した位置から漏出防止シート10が形成された領域の手前までに設けられる。換言すれば、接合手段13は、第2方向Y中央部には設けられない。距離L9は、ペット用おむつ1が用いられるペットのサイズや種類などによって適宜決定され、5.5cm〜10.3cmの範囲であればよいが、本実施形態では7.75cmである。
本実施形態では、接合手段13は正方形状であって、マジックテープ(登録商標)とも呼ばれる面状ファスナによって実現される。正方形の各辺の長さL10は、2cmである。接合手段13の形状は、正方形状に限られず、長方形状や、他の多角形状、円形状などであってもよい。また、接合手段13は、漏出防止シート10の一表面10aと接合可能であればよく、たとえば、他の実施形態では、面状ファスナに代えて両面に粘着層を有する粘着テープを用いてもよい。
このように接合手段13が設けられるので、展開状態において接合手段13の漏出防止シート10の一表面10aと接触しない側の面13aが、漏出防止シート10の一表面10aと対向するように、第1方向X一端部6を第1方向X他端部8に向かって折り返し、接合手段13の面13aと漏出防止シート10の一表面10aとを接合することによって、一端部6の第2方向Y中央部が漏出防止シート10の一表面10aおよび表面シート4の他表面4bから離間した、すなわち一端部6の第2方向Y中央部が立ち上がった起立片を形成することができる。
このような起立片を形成できるので、ペット用おむつ1をペットに装着すると、前記起立片が、ペットの排泄器官を排泄方向前方、すなわちペットの頭部側から覆うように装着される。ペットが雄犬である場合には、雄犬の排泄器官の尿道口から排尿がなされても、排泄された尿を起立片によってせき止める、より詳細には排尿が表面シート4を透過し、裏面シート5に当たることによってせき止められる。したがって、排尿が排泄方向前方に漏れ出すことを防止することができる。また、せき止められた排尿は、排尿の排泄方向とは逆側に流れるので、排尿を、端縁7よりも他端部8側に退避して配置される吸収体9が配設される領域に導き、確実に吸収体9に吸収させることができる。
補強シート15は、表面シート4と裏面シート5との間に設けられ、可撓性および伸縮性を有する素材からなる。補強シート15は、表面シート4の一表面4aおよび裏面シート5の面5aに、厚み方向(第3方向Z)における各面がそれぞれ対向するように配置され、表面シート4および裏面シート5と接合される。また本実施形態において、補強シート15は、第2方向Y両端部11,12には設けられず、第2方向Y中央部を含む範囲にのみ設けられる。
補強シート15は、吸収体9よりも第1方向X一端部6の端縁7側、より詳細には、第1方向Xにおいて、端縁7から吸収体9が配設される領域の手前までであって、第2方向Yにおいて、端縁17から所定の距離L11だけ離間した位置から端縁18から所定の距離L11離間した位置までに設けられる。距離L11は、ペット用おむつ1が用いられるペットのサイズや種類などによって適宜決定され、1.25cm〜6.5cmの範囲であればよく、本実施形態では5.25cmである。
補強シート15のサイズは、ペット用おむつ1が用いられるペットのサイズや種類などによって適宜決定されるが、たとえば長辺が18.5cm〜24.0cm、短辺が1.2cm〜2.0cmの長方形状の素材が用いられる。本実施形態では、長辺が18.5cm、短辺が2.0cmの長方形状の伸縮ウレタンが用いられる。本実施形態では、補強シート15の長手方向(長辺方向)は、第2方向Yと一致し、幅方向(短辺方向)は、第1方向Xと一致し、厚み方向は、第3方向Zと一致する。
このように、補強シート15が設けられるので、第1方向X一端部6を折り返して起立片を形成した場合に、第2方向Yにおける中央部にギャザーを形成することができるとともに、装着時に起立片が倒伏してしまうことを防ぐことができる。また、装着対象のペットの動きに追従して起立片を移動させて排泄器官の排泄方向前方に配置された状態を維持することができる。したがって、排尿を、吸収体9が配設される領域に導き、確実に吸収させることができる。
補強シート15は、本実施形態では、ペット用おむつ1の第1方向X一端部6側のみに設けられるが、他の実施形態では第1方向X他端部8側のみに設けられてもよく、第1方向X両端部6,8側に設けられてもよい。
また、伸縮ウレタンに代えて、漏出防止シート10と同様に、細いゴム紐のような弾発的に伸縮可能な索条を内封しても、同様にギャザーを形成することができる。このような場合には、装着時に起立片が倒伏しないように、一端部6の厚みを大きくするなどして、強度を高めておくことが望ましい。
尻尾通し用切欠き16は、装着時にペットの尻尾を外部に出すための孔を形成するための切欠きであり、表面シート4および裏面シート5の吸収体9よりも第1方向X他端部8側であって、第2方向Yの略中央に設けられる。本実施形態では、尻尾通し用切欠き16は、U字形状に切欠かれている。
このように尻尾通し用切欠き16が形成されるので、尻尾通し用切欠き16にペットの尻尾を通してペット用おむつ1を装着することができる。したがって、尻尾によってペット用おむつ1の位置が固定されるので、ペット用おむつ1が不所望にずれることを防ぐことができ、排尿の漏れを防止し、吸収体9に確実に吸収させることができる。
尻尾通し用切欠き16の形状は、尻尾を通すことができれば、半円状や一本の直線、複数本の直線が一点でクロスしたもの等のいずれでもよいが、角が無いほうが加工を行い易く製造を容易に行うことができるので、U字形状や半円状が好ましい。尻尾通し用切欠き16の寸法は、ペット用おむつ1が用いられるペットのサイズや種類などによって適宜決定されるが、その開口面積が3cm2〜15cm2であればよい。また、尻尾通し用切欠き16を設ける代わりに、予め開口した抜き孔を形成してもよい。
係止手段3は、第1方向X一端部6であって、かつ第2方向Y両端部にそれぞれ設けられ、本実施形態では、2つ設けられる。係止手段3は、裏面シート5の面5aとは第3方向Z反対側の面5b上に設けられ、厚み方向両面のうち一方の面3aの一部が、面5bと接合して設けられる。本実施形態では、係止手段3は、マジックテープとも呼ばれる面状ファスナによって実現され、装着時には、面3aの、面5bと接合しない部分が、第1方向X他端部8側の裏面シート5の面5bと接合される。本実施形態の係止手段3は、長方形状であって、その長手方向、幅方向、厚み方向は、それぞれ第2方向Y、第1方向X、第3方向Zと一致する。
係止手段3は、裏面シート5の面5bと接合可能であればよく、たとえば、他の実施形態では両面に粘着性を有する粘着テープによって実現されてもよい。また、係止手段3の形状は、長方形状に限らず、たとえば、正方形状や他の多角形状、円形状であってもよい。
本実施形態では、おむつ本体2の第2方向Y両端部に、索条31が第1方向Xに沿って、かつ第1方向Xに緊張、すなわち伸長された状態で配置される。より詳細には、裏面シート5と漏出防止シート10との間であって、吸収体9および表面シート4よりも第2方向Y両端部側の位置に内封して配設される。このように索条31が内封されることによって、第2方向Y両端部は、弾発的に伸縮可能である。索条31は、弾発的に伸縮可能なものであれば、公知のあらゆる素材を用いることができ、本実施形態では細いゴム紐が用いられる。また、索条31の数は、弾発的に伸縮可能であれば、限られることはないが、本実施形態では、各端部に2本ずつ設けられる。このような索条31が設けられることによって、ペット用おむつ1の装着時には、索条31の収縮力によって第2方向Y両端部が立体的に立ち上げられる。
下記の表1は、ペット用おむつ1と従来のペット用おむつ(接合手段を有さないので、一端部を折り返して、接合することができず、排尿の排泄方向前方に起立片を形成できないタイプのおむつ)との、排泄方向前方からの尿が漏れない確率について、おむつのサイズ毎にまとめた表である。表1において、「○」印は漏れ出さなかった場合を示し、「×」印は漏れ出した場合を示す。
尿が漏れない確率は、成犬の1回の平均的な尿量の生理食塩水(濃度9%)を角度15度の滑り台からペット用おむつの一端部に向かって流しこむ実験によって確認した。実験は各サイズ10回行い、10回中で尿が漏れ出さなかった回数に基づいて算出した。なお、生理食塩水を流し込む距離は20cmとした。
また、成犬の1回の平均的な尿量は、正常な成犬が24時間で、体重1ポンドあたり約12〜20mlの尿を産生することから(学窓社、犬・猫の尿検査ハンドブック 35頁)、各おむつのサイズ毎に、装着対象の犬の体重に基づいて1日の尿量を算出し、当該算出された1日あたりの尿量の中央値(表2における、犬の1日の尿量の欄内で、括弧内の値)を1日の平均排尿回数である5で除して求めた。なお、一般的な成犬の1日の排尿回数は、環境によって多少変動するが、3〜10回の間である。このことから、本実験では、平均排尿回数を5回と設定した。
なお、おむつのサイズ毎の装着対象となる犬の体重の目安、当該体重から算出される1日あたりの尿量、1回の平均的な尿量は、下記の表2に示すとおりである。
また、生理食塩水を流し込む位置は、ペット用おむつのサイズ毎に、装着対象の犬種の後足の付け根から尿道口(陰部の先端)までの距離を測定して、その寸法の平均を算出し、ペット用おむつにおいてペットの後足に対応する箇所から、前記平均寸法離間した位置に決定した。
なお、ペットの後足は、I字の第2方向Yの寸法が大きくなり始める箇所のうち、第1方向Xにおいて一端部6側の、前記箇所にくるように装着される。表3は、ペット用おむつのサイズ毎に、装着対象の犬の種類、年齢、体重、ウエストの長さ、装着するサイズ、後足の付け根から尿道口(陰部の先端)までの距離、およびその距離の平均を表した表である。
表1に示すように、従来のペット用おむつでは、いずれのサイズであっても、排尿が漏れ出しており、漏れない確率は20〜50%である。すなわち、50〜80%の確率で尿が漏れ出している。これに対して、ペット用おむつ1では、いずれのサイズであっても、排尿が漏れない確率は100%、すなわち尿が漏れ出すことはないことがわかる。このように、ペット用おむつ1の構成を採用することによって、排泄器官の尿道口が覆われるので、尿道口から排尿を行った場合には、排尿がせき止められ、尿道口の向く方向から排尿が漏れ出すのを防げることがわかる。
ペット用おむつ1は、表面シート4と裏面シート5の間に吸収体9を配設して、両シート4,5を貼着する工程と、表面シート4および裏面シート5に漏出防止シート10を貼着する工程と、裏面シート5に係止手段3を設ける工程と、漏出防止シート10に接合手段13を貼着する工程と、表面シート4、吸収体9、裏面シート5、漏出防止シート10および接合手段13の各素材が積層される、第1方向Xに長手の積層体を製造する工程と、当該積層体を打抜き加工して、ペット用おむつ1を型抜きする工程と、型抜きされた積層体を個々のペット用おむつ1に切断する工程とを経て製造される。
図4は、積層体を打抜き加工した状態を模式的に示す平面図である。図中、矢符は製造ラインが流れる方向を示し、2点鎖線は、連続する積層体を個々のペット用おむつ1に切断するための切断線を示す。
本実施形態における、シート体の型を抜く工程では、一方向の寸法が一方向に垂直な他方向よりも長く、一方向中央部は、他方向の寸法が等しい、長方形状であって、当該長方形の一方向の両端縁から一方向(長方形と離れる方向)に進むにつれて、他方向の寸法が大きくなる形状であり、一方向の両端縁は、他方向と平行な一直線となる形状、すなわちI字形状に外周部に切刀を有するカッタローラまたはプレス金型などによって貼着と同時に型抜きが行われる。
なお、一方向は、積層体が製造ラインを流れる方向(図4中の矢符で示す方向)および第1方向Xと一致し、他方向は、第2方向Yと一致する。
また、表面シート4と裏面シート5とを貼着する方法、表面シート4および裏面シート5に漏出防止シート10を貼着する方法、裏面シート5に係止手段3を設ける方法、漏出防止シート10に接合手段13を貼着する方法、表面シート4、吸収体9、裏面シート5、漏出防止シート10および接合手段13の各素材が積層される、第1方向Xに長手の積層体を製造する方法、当該積層体を打抜き加工して、ペット用おむつ1を型抜きする方法、型抜きされた積層体を個々のペット用おむつ1に切断する方法の各方法には、前述のカッタローラおよびプレス金型以外に公知のあらゆる方法を用いることができる。
このように、表面シート4、吸収体9、裏面シート5、漏出防止シート10および接合手段13の各素材が積層された積層体を型抜きするので、容易に所望の形状のペット用おむつ1を製造することができる。
また、接合手段13が形成された状態で型抜きを行うので、切断する位置を調整することによって、接合手段13を第1方向Xの一端部6のみに設ける、または両端部6,8に設けるかを調整することができる。したがって、容易に所望のタイプのペット用おむつ1を製造することができる。
図5は、本発明の他の実施形態であるペット用おむつ1Aの正面図である。ペット用おむつ1Aは、ペット用おむつ1と略同一に構成されるので、対応する部分については、それぞれ同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。ペット用おむつ1Aは、接合手段13Aの配置される位置が、前述の実施形態のペット用おむつ1の接合手段13と相違する。
本実施形態では、接合手段13Aは、第2方向Yにおいて端縁17,18から所定の距離L9だけ離間した位置から吸収体9が配設された領域の手前までであって、かつ第1方向Xにおいて一端部6側の吸収体9の端縁9Aから他端部8側に向かって所定の範囲に設けられる。
図6は、本発明の他の実施形態であるペット用おむつ1Bの正面図である。ペット用おむつ1Bは、ペット用おむつ1と略同一に構成されるので、対応する部分については、それぞれ同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。ペット用おむつ1Bは、接合手段13Bの配置される位置および形状が、前述の実施形態のペット用おむつ1の接合手段13と相違する。
本実施形態では、接合手段13Bは、第1方向Xにおいて、端縁7から吸収体9が配設される領域の手前までであって、かつ第2方向Yにおいて、各端縁17,18から、吸収体9が配設された領域の手前までに設けられる。本実施形態の接合手段13Bは、長辺が9.75cm、短辺が2.0cmの長方形状である。接合手段13Bの長手方向(長辺方向)は、第2方向Yと一致し、幅方向(短辺方向)は、第1方向Xと一致する。
図7は、本発明の他の実施形態であるペット用おむつ1Cの正面図である。ペット用おむつ1Cは、ペット用おむつ1と略同一に構成されるので、対応する部分については、それぞれ同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。ペット用おむつ1Cは、接合手段13Cの配置される位置が、前述の実施形態のペット用おむつ1の接合手段13と相違する。
本実施形態では、接合手段13Cは、第1方向Xにおいて、一端部6と他端部8の両側に設けられる。より詳細には、吸収体9よりも一端部6の端縁7側であって、かつ第2方向Yにおいて、吸収体9よりも両端部11,12寄りの位置および、吸収体9よりも他端部8の端縁14側であって、かつ第2方向Yにおいて、吸収体9よりも両端部19,20寄りの位置に設けられる。
本実施形態において、接合手段13Cは4つ設けられ、一端部6側に2つ、他端部8側に2つ設けられる。一端部6側の2つの接合手段13Cと他端部8側の2つの接合手段13Cとは、おむつ本体2の第1方向X中央部を基準として対称に設けられる。
図8は、本発明の他の実施形態であるペット用おむつ1Dの正面図である。ペット用おむつ1Dは、ペット用おむつ1Bと略同一に構成されるので、対応する部分については、それぞれ同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。ペット用おむつ1Dは、接合手段13Dの配置される位置が、前述の実施形態のペット用おむつ1Bの接合手段13Bと相違する。
本実施形態では、接合手段13Dは、第1方向Xにおいて、一端部6と他端部8の両側に設けられる。より詳細には、第1方向Xにおいて、吸収体9よりも端縁7側であって、かつ第2方向Yにおいて、各端縁17,18から、吸収体9が配設された領域の手前まで、および第1方向Xにおいて、吸収体9よりも端縁14側であって、かつ第2方向Yにおいて、各端縁21,22から、吸収体9が配設された領域の手前までに設けられる。端縁21,22は、他端部8における、第2方向Yの両端部19,20の端縁である。
本実施形態において、接合手段13Dは4つ設けられ、一端部6側に2つ、他端部8側に2つ設けられる。一端部6側の2つの接合手段13Dと他端部8側の2つの接合手段13Dとは、おむつ本体2の第1方向X中央部を基準として対称に設けられる。
図9は、本発明の他の実施形態であるペット用おむつ1Eの正面図である。ペット用おむつ1Eは、ペット用おむつ1Aと略同一に構成されるので、対応する部分については、それぞれ同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。ペット用おむつ1Eは、接合手段13Eの配置される位置が、前述の実施形態のペット用おむつ1Aの接合手段13Aと相違する。
本実施形態では、接合手段13Eは、第1方向Xにおいて、一端部6側だけでなく、他端部8側における一端部6側で接合手段が設けられた位置と対応する位置にも接合手段が設けられる。本実施形態において、接合手段13Eは4つ設けられ、一端部6側に2つ、他端部8側に2つ設けられる。一端部6側の2つの接合手段13Eと他端部8側の2つの接合手段13Eとは、おむつ本体2の第1方向X中央部を基準として対称に設けられる。
本発明の他の実施形態であるペット用おむつ1A〜1Eの構成であっても、図1〜図4に示す実施形態のペット用おむつ1と同様の効果を達成することができる。