トラクタ等の走行機体に装着され、走行機体の進行方向に沿って圃場における各種の連続直進作業を行う作業機は、農業又は土木用機械としては一般的なものであり、作業の種類に応じた各種の作業機がある。このような作業機の中で、作業の特殊性から、走行機体の走行位置に対して側方にオフセットした位置を作業させるオフセット作業機が、畦塗り機、溝形成機、草刈り機等として知られている。
特に、畦塗り機は、広い圃場の外縁に亘って畦を成形するものであって、多大な時間と労力を要する畦塗作業の機械化を達成したものとして近年注目されている。畦塗り機の基本構成は、走行機体の後部に装着され、走行機体からの動力が入力される入力軸を備える装着部と、入力軸からの動力を伝達する動力伝達機構を備えると共に、伝達された動力によって畦塗作業を行う作業部と、オフセット位置での作業部の支持を行うオフセットフレームとを備え、作業部は、旧畦の一部を切り崩して土盛りを行う前処理部と盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦部を有して構成されている。
このようなオフセット作業機は、走行機体の進行に沿ってオフセット位置での直進作業を行うものであるが、矩形の圃場において圃場の辺に沿った直進作業を行う場合に、走行機体に対する最適なオフセット位置を設定したり、オフセット作業機の直進維持のため作業中にオフセット量の調節が必要であり、また走行機体の先端部分が圃場の端に到達した時点でその後の直進作業を行うことができなくなるという共通の問題がある。
特に、矩形圃場の外縁に沿って直線的な畦塗作業を行う畦塗り機においては、走行機体の先端が圃場端部に達した時点でそこから先の畦塗作業を行うことができなくなるので、矩形圃場の隅部に必ず未作業部分が残ってしまうという間題が生じる。この問題を解決するために、作業部を通常作業時とは反対側のオフセット位置に移動させると共に、その前後関係を反転(反転リバース)させ、隅部の未作業部分に対して走行機体を後進させながら作業を行う反転リバース機構を備えた畦塗り機が開発されている。
このような畦塗り機は、一般的に、作業部を走行機体の側方に移動させるため機体幅方向に回動可能に設けたオフセットフレームの先端部に作業部を回動可能に取り付けた構成を基本構成としているが、1本の伸縮シリンダでオフセットフレームを機体幅方向一方側から他方側に180度回動させることができれば、作業部を前進作業位置から反転作業位置に容易に移動させることが可能になる。しかしながら、1本の伸縮シリンダのみでオフセットフレームを180度回動させることは構造的に困難である。このため、従来の畦塗り機には、オフセットフレームの回動に伴って作業部の向きを反転させるリンク式等の反転機構を備えたものがある(特許文献1、2参照)。
特許文献1に記載の畦塗り機70は、図15(a)(平面図)及び15(b)(平面図)に示すように、走行機体90の後部に連結される固定機枠71の一端側に回動可能に連結されて他端側が回動可能な第1回動アーム体72と、第1回動アーム体72よりも長さが短く、固定機枠71の一端側に回動可能に連結されて他端側が作業部77を支持する可動機枠73に回動可能に連結された第2回動アーム体74と、一端側が回定機枠71に回動可能に取り付けられ他端側が第1回動アーム体72の基端側に回動可能に取り付けられた回動体75と、ロッド側端部が回動体75に取り付けられてボトム側端部が固定機枠71に回動可能に取り付けられた油圧式のシリンダ76を備える。このシリンダ76が伸縮すると、シリンダ76の伸縮動作に応じて回動体75が回動し、2本の両回動アーム体72,74がそれぞれ回動して、作業部77が走行機体90の前進で畦塗り作業を行う通常作業位置Ptから走行機体90の後進で反転された作業部77が畦塗り作業を行う反転作業位置Prまで自動的に移動するようになっている。
また特許文献2に記載の畦塗り機80は、図16(a)(平面図)及び16(b)(平面図)に示すように、固定機枠81の一端側が回動可能に連結されて他端側が回動可能な連結アーム体82と、連結アーム体82の先端部に回動可能に取り付けられた作業部83と、固定機枠81と連結アーム体82との間に設けられ、作業部83を前進作業位置Ptと格納位置との間でオフセット移動させるとともに、作業部83を格納位置と反転作業位置Prとの間で反転させるリンク式連動機構84と、固定機枠81に対する作業部83のオフセット位置を調節可能な着脱体被取付部85とを有して構成されている。
リンク式連動機構84は、連結アーム体82の下側に一端部が横方向に回動可能に取り付けられて他端側が略円弧板状に延びる第1リンク84aと、第1リンク84aの他端側に一端側が回動自在に取り付けられて他端側が作業部83を回動可能に支持する可動機枠86に回動可能に取り付けられた略直線状に延びる第2リンク84bと、第1リンク84aと第2リンク84bとを回動可能に連結する案内軸84cの移動を案内する案内板部87に設けられた案内孔部87aとを有してなり、案内板部87は、固定機枠81に取り付けられて後方側へ突設されている。連結アーム体82は、固定機枠81に取り付けられた駆動モータ88からの動力を受けて回動可能になっており、駆動モータ88が駆動すると、連結アーム体82及びリンク式連動機構84の協働によって、作業部83が前進作業位置Ptと反転作業位置Prとの間を移動する。
着脱体被取付部85には左右方向に所定間隔を有し複数の孔部85aが配設され、これらの孔部85aのうち隣接する2つの選択された孔部85aと固定機枠81に着脱可能に取り付けられる着脱体89に挿通されたボルト等によって、着脱体89が着脱体被取付部85に取り付けられて、作業部83のオフセット位置調節が可能になっている。
以下、本発明に係わる畦塗り機の好ましい実施の形態を図1から図14に基づいて説明する。なお、本実施の形態は、オフセット作業機の一例である畦塗り機について説明する。オフセット作業機は、この他、溝掘機等を含む。説明の都合上、図1(平面図)に示す矢印の方向を前後方向及び左右方向として以下説明する。また図3,図4,図5,図7(a),図11,図12,図13の各図面では、部材の上下位置を考慮して図面を描くと部材の形状が判り難くなるため、部材の上下位置に拘わらずに部材を実線や仮想線を用いて記載した。
畦塗り機1は、図1、図2(裏面図)に示すように、走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構(図示せず)に連結されて、走行機体90の前進及び後進に応じて畦塗り作業を行うものである。畦塗り機1は、走行機体90からの動力が入力される入力軸6を備えた装着部5と、装着部5に対して回動可能に支持されたオフセット機構部20と、オフセット機構部20と装着部5との間に設けられた伸縮機構部10によってオフセット機構部20が左右方向に揺動可能とされ、オフセット機構部20の先端側に配設されて入力軸6から伝達される動力によってオフセット作業を行なう作業部60とを有してなる。
装着部5は、左右方向に延びるヒッチフレーム7を備え、ヒッチフレーム7は走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構に連結可能に構成されている。ヒッチフレーム7の左右方向の中央下部にはギアボックス8が設けられ、このギアボックス8には前述した入力軸6が設けられている。入力軸6は、走行機体90に設けられたPTO軸から伝動軸(図示せず)を介して動力が伝達されるようになっている。
オフセット機構部20は、その基端側をヒッチフレーム7に回動自在に連結されて後方側へ延びるオフセットフレーム21と、オフセットフレーム21の右側に沿って並設されて基端側がヒッチフレーム7の右側端部分に回動自在に連結されたリンク部材25と、オフセットフレーム21の先端側とリンク部材25の先端部分間に回動自在に連結された回動支持アーム23とを有してなる。
オフセットフレーム21は、図3(a)(説明図)に示すように、内部が中空状のフレーム本体部21aと、フレーム本体部21aの先端部に設けられた連結支持部21bとを有してなり、オフセットフレーム21の連結支持部21bの先端側及びヒッチフレーム7の左側端間に枢結された伸縮機構部10の伸縮により、オフセットフレーム21は左右方向に揺動可能である。オフセットフレーム21のフレーム本体部21aには図示しない動力伝達機構が設けられ、この動力伝達機構によって、走行機体90から入力軸6に伝達された動力がオフセットフレーム21のフレーム本体部21aの先端側に回転自在に配設された従動軸22に伝達可能に構成されている。
リンク部材25の先端部は、フレーム本体部21aの先端部分に回動自在に設けられた回動支持アーム23の右側端に回動自在に取り付けられている。回動支持アーム23は、左右方向に延びる平行リンクフレーム部23aと、平行リンクフレーム部23aの左側端部分から装着部5側へ延びるリンクアーム部23bとを有してなり、リンクアーム部23bの基端側がオフセットフレーム21に回動自在に取り付けられている。このように構成されたオフセット機構部20は、オフセットフレーム21、リンク部材25、ヒッチフレーム7及び回動支持アーム23によって平行リンク機構を形成している。
なお、伸縮機構部10は、図1及び図2に示すように、2つの電動式油圧シリンダ11の各ボトム側端部同士を近接した状態で直列状に配置して、各ボトム側端部同士を円筒状の連結部材12やボルト等を介して連結して一体化されたものであり、前側の電動式油圧シリンダ11のロッド側端部はヒッチフレーム7に枢結され、後側の電動式油圧シリンダ11のロッド側端部はオフセットフレーム21の連結支持部21bの先端部分に枢結されている。また、伸縮機構部10は、電動式油圧シリンダ11のストロークよりも大きなストロークを有した図3(a)に示す1つの油圧シリンダ13によって構成されてもよい。また伸縮機構部10は、オフセット機構部20に沿って配設されていればよく、オフセット機構部20よりも上方位置、下方位置若しくは上下同じ高さ位置のいずれの位置に配設されてもよい。
フレーム本体部21aの先端部に設けられた従動軸22の下部には、図6(a)(模式平面図)及び図6(b)(模式側面図)に示すように、これと同軸上に配置されて下方へ延びる動力伝達軸15が連結されて、この動力伝達軸15は従動軸22の回転に伴って回転する。またフレーム本体部21aの先端下部には、動力伝達軸15と同軸上に配置された円筒状の連結部17がフレーム本体部21aに対して回動自在に取り付けられている。この連結部17は動力伝達軸15と非結合状態にあり、動力伝達軸15を回動支点Oとして回動自在である。この連結部17に作業部60の一部である伝動支持ケース61の基端部が接続されている。つまり、作業部60はオフセット機構部20に設けられた動力伝達軸15の中心を回動支点Oとして回動可能である。なお、従動軸22と動力伝達軸15が連結された構造のものを説明したが、従動軸22が動力伝達軸を兼ねる構造としてもかまわない。また図6(a)及び図6(b)はフレーム本体部21aの先端側を模式的に表したものであり、図6(a)及び図6(b)において、フレーム本体部21aは異なる位置に記載されている。
伝動支持ケース61には、図3(a)に示すように、その先端側から基端側に向かって、圃場の周辺に沿って形成された旧畦の上部を切り崩す天場処理部62と、切り崩した土の土盛りを行なう前処理部64と、盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦部66が配設されている。伝動支持ケース61内には図示しない動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構は、動力伝達軸15からの動力を受けて天場処理部62、前処理部64、整畦部66に動力伝達可能に構成されている。
天場処理部62は、回転自在な天場処理ロータ62aを備える。天場処理ロータ62aは天場動力伝達ケース63を介して伝動支持ケース61に連結されて支持される。天場動力伝達ケース63内には図示しない動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構を介して伝動支持ケース61の動力伝達機構に伝達された動力が天場処理ロータ62aに伝達されるようになっている。
前処理部64は、回転自在な耕耘ロータ64aを有する。耕耘ロータ64aは伝動支持ケース61内の動力伝達機構を介して動力が伝達されるようになっている。
整畦部66は、伝動支持ケース61に回転自在に支持された多面体ドラム66aと、多面体ドラム66aの右側端部に取り付けられて横方向に延びる円筒部66bとを有してなる。整畦部66は伝動支持ケース61内の動力伝達機構を介して動力が伝達されるようになっている。
このように構成された天場処理部62、前処理部64、整畦部66を支持する伝動支持ケース61に連結された伝動支持フレーム65と回動支持アーム23との間には、リンク機構部30が設けられている。このリンク機構部30は、オフセットフレーム21の下面に取り付けられたガイド部材40と協働して、オフセット機構部20の左右揺動に拘わらずに作業部60の向きを一定に維持するとともに、作業部60の向きを反転させる機能を有している。
ガイド部材40は、例えば、オフセットフレーム21の右側面に沿って延びる第1案内板40aと、オフセットフレーム21の左側面に沿って延びる第2案内板40bと、第2案内板40bの基端側からオフセットフレーム21の右側面側へ延びる第3案内板40cと、第1案内板40a及び第2案内板40bの先端側端部間に繋がる第4案内板40dとを有して形成される。第1案内板40aと第2案内板40bとの間には、所定間隔を有してオフセットフレーム21の長手方向に沿って延びる反転溝41が形成され、第1案内板40aと第3案内板40cの内側端面との間には、反転溝41に連通してオフセットフレーム21の幅方向右側に延びてオフセットフレーム右側面の近傍で開口する通常オフセット溝43が形成され、第1案内板40a及び第2案内板40bの各先端側部分と第4案内板40dの内側端面との間には、反転溝41に連通してオフセットフレーム21の幅方向左側に延びる反転オフセット溝45が形成されている。これらの溝41,43,45は、リンク機構部30の後述するジョイント31が移動可能な幅を有している。なお、ガイド部材40は、連通するこれらの溝41,43,45を有する部材であれば何でもよく、例えば、溝41,43,45を単一部材に形成したものや前記のように複数の部材で形成したものでもよい。また、ガイド部材40は、リンク機構部30の取り付け位置に応じてオフセットフレーム21の下面の他に、オフセットフレーム21の上面に設けてもよい。
通常オフセット溝43は、作業部60のオフセット機構部20に対する回動支点Oから反転溝41によってジョイント31の移動を案内して作業部60の向きを反転させる動作を開始する案内開始位置Paまでの距離を半径r1とする円弧の一部を含む曲線あるいは直線として形成される。なお、通常オフセット溝43の長さを反転溝41に対して短くする場合には、通常オフセット溝43は、案内開始位置Paに移動したジョイント31の中心を通ってこの中心と回動支点Oとを繋ぐ仮想線に対して直交する方向に直線状に延びるようにしてもよい。
反転オフセット溝45は、作業部60のオフセット機構部20に対する回動支点Oから反転溝41によってジョイント31の移動を案内し終える案内終了位置Pe(即ち、反転溝41の終端に移動したジョイント31の中心位置)までの距離を半径r2とする円弧の一部を含む曲線あるいは直線として形成される。なお、反転オフセット溝45の長さを反転溝41に対して短くする場合には、反転オフセット溝45は、案内終了位置Peに移動したジョイント31の中心を通ってこの中心と回動支点Oとを繋ぐ仮想線に対して直交する方向に直線状に延びるようにしてもよい。なお、通常オフセット溝43の位置や反転溝41の長さ等については、後述する。
ガイド部材40の第2案内板40bの左側にはガイド部材40の幅方向外側へ延びるフックガイド47が一体的に設けられている。このフックガイド47は、後述するロック装置50のフック51をロック及びロック解除する際に用いられ、第2案内板40bから延びるガイド板48と、ガイド板48の後側に形成された案内面49とを有してなる。ロック装置50の詳細については後述する。
リンク機構部30は、4つの節からなる4節リンク機構であり、作業部60の回動支点Oから伝動支持フレーム65の先端側で後述する所定距離を有した位置までの部分を第1節30aとし、第1節30aの先端部を回動支点として左右方向に回動自在に枢結された第1リンク部材32を第2節30bとし、第1リンク部材32の先端部に一端側が枢結されて左右方向に回動自在であって他端側が回動支持アーム23のリンクアーム部23bの先端部に枢結された第2リンク部材33を第3節30cとし、回動支持アーム23のリンクアーム部23bを第4節30dとして構成されている。なお、第1節30aの長さは、作業部60の回動支点Oから第1節30aと第2節30bとの回動支点Qまでの距離と、回動支点Qから第2節30bと第3節30cとの回動支点Sまでの距離を合算した値が、回動支点Oと回動支点Sとの間の距離よりも大きくなることを条件として設定されている。
リンク機構部30の第1節30aは従動節として機能し、第2節30b及び第3節30cは媒介節として機能し、第4節30dは原動節として機能する。第2節30bは平面視において右側に突出するように屈曲して前後方向に延び、第2節30bと第3節30cとの回動支点Sとなるジョイント31は、ロック装置50によって伝動支持フレーム65が回動支持アーム23にロックされた状態でオフセット機構部20が揺動するに伴って移動するジョイント31の回動半径と通常オフセット溝43の曲率半径r1とが同一になるように配設されている。このため、図3(b)(説明図)に示すように、伝動支持フレーム65が回動支持アーム23にロックされた状態でオフセット機構部20が左側に揺動すると、ジョイント31は通常オフセット溝43内に入り込んでこの溝に沿って移動することができる。
また第1節30aと第2節30bとの回動支点Qとなるジョイント34は、図4(c)(説明図)に示すように、前述したジョイント31が通常オフセット溝43の左側端部、即ち、案内開始位置Paに移動したときに、ジョイント31の中心と作業部60の回動支点Oとを結ぶ仮想線に対して右側に位置するように配設されている。このため、図4(c)において、ジョイント31が前述した反転溝41に沿って装着部5に対して後方側に移動して第2リンク部材32が後方側に移動するに伴ってジョイント34に装着部5に対して後方側を向く力を作用させることができ、第1節30aを時計方向に回動させるモーメントが生じる。従って、図4(d)(説明図)のように作業部60を回動させることができる。
さらに、第2節30bの両端部に設けられたジョイント31,34の中心間距離は、第1リンク部材32に設けられたジョイント34が装着部5に対して後方側に移動して作業部60を反転作業位置Prに回動させるのに必要な長さを有している。従って、ジョイント31が反転溝41に沿って装着部5に対して後方側へ更に移動するに伴い、第2節30bが後方側へ移動し、第1節30aと第2節30bとを繋ぐジョイント34を介して第1節30aが時計方向に回動するとともに、第2節30bが第1節30aに追従してジョイント34の回りに時計方向に回動して、作業部60を図5(説明図)に示す反転作業位置Prに移動させることができる。なお、作業部60がオフセット機構部20に対して回動するときは、後述するロック装置50によってオフセット機構部20に対する作業部60の回動規制は解除される。
ロック装置50は、図7(a)(説明図)、図7(b)(一部断面VII矢視図)に示すように、作業部60の伝動支持フレーム65の側方に配設されて上下方向に延びるロックピン52と、回動支持アーム23のリンクアーム部23bの先端部に回動自在に取り付けられてロックピン52に係止可能な横方向に延びる板状のフック51と、フック51に設けられてフック上方に回転自在に支持されたローラ53と、オフセットフレーム21に設けられたガイド部材40から突設しローラ53と接触してフック51の移動を案内するフックガイド47とを有してなる。
ロックピン52は、伝動支持フレーム65の側方から突設された支持板65aに取り付けられており、オフセット機構部20の揺動とともに移動する。フック51は、基端側がリンクアーム部23bの先端部に回動自在に取り付けられて先端側にロックピン52に係止可能な係止突起部51aを有し、フック51の基端部には引っ張りばね54が接続されて常にロックピン52との係合状態を維持する側に付勢されている。引っ張りばね54はフック51の基端部とリンクアーム部23bとの間に設けられ、図7(a)においてフック51を常に反時計回りに回転させようとする力をフック51に与えている。ローラ53は、図7(b)に示すフック51の上面に突設された軸部51bの上端部に回動自在に取り付けられたベアリング等の回転体である。この軸部51bは、図8(斜視図)に示すリンクアーム部23bの先端部に配設した板24に設けられたフック回動規制孔26に挿通されている。このフック回動規制孔26から延出した軸部51bの先端部にローラ53が設けられている。フック回動規制孔26は、フック51の回動方向に沿って延びて円弧状に形成された長孔であり、軸部51bがフック回動規制孔26の端部に接触することで、フック51の回動が規制される。図7(a)の状態では、フック51の係止突起部51aにロックピン52が入り込み、フック51が引っ張りばね54によってロックピン52に係合した状態に維持されている。
ガイド部材40の第2案内板40bから延びるフックガイド47は、第2案内板40bよりも下方に配置されてローラ53との接触を容易にしている。なお、フックガイド47は、オフセットフレーム21から延びるように設けられてもよい。図7(a)、図7(b)に示すように、フックガイド47の案内面49は、フック51がロックピン52に係止される位置に案内する凹状案内面部49aと、凹状案内面部49aの開口端部からフック基端側に直線状に延びてフック51をロックピン52から非ロック状態にする位置に案内する直線案内面部49bを有してなる。凹状案内面部49aは、オフセットフレーム21の基端部側に凹んだ弯曲状をなしている。
直線案内面部49bは、オフセットフレーム21の幅方向に延び、図3(b)を更に追加して説明すると、図3(b)の状態で油圧シリンダ13の縮小によりオフセットフレーム21が時計回りに揺動し、作業部60の回動支点Oが図3(b)の状態から左へ移動すると、フックガイド47に対してローラ53が左側にずれてローラ53が凹状案内面部49aから出て直線案内面部49bに移動して接触し、フックガイド47がローラ53を作業部60の回動支点O側に押してフック51の支軸51cを支点としてフック51を引っ張りばね54の付勢に抗して時計回りに回動させ、ロックピン52がフック51に係合した状態を解除して、図4(c)の状態に移行する。このため、作業部60はオフセット機構部20に対して回動可能な状態になる。
一方、作業部60の回動をオフセット機構部20に対してロックする場合には、図4(c)の状態から油圧シリンダ13の伸長によりオフセットフレーム21が反時計回りに揺動するに伴い、ローラ53が直線案内面部49bから凹状案内面部49aに移動し、引っ張りばね54の付勢によりローラ53がフック51を装着部5側へ押しながらフック51が反時計方向に回動し、この状態で係止突起部51aにロックピン52が入り込んで係合状態となる。
さて、図4(c)の状態から油圧シリンダ13が縮小してオフセット機構部20が更に左側に揺動すると、図4(d)(説明図)に示すように、リンク機構部30の第3節30cと第2節30bの回動支点であるジョイント31が反転溝41に沿って作業部60の回動支点O側に移動し、ジョイント31に繋がる第2節30bが後方側へ移動しながら、第2節30bに繋がる第1節30aが作業部60の回動支点Oを中心として時計方向に回動し、第1節30aを含む伝動支持フレーム65を回動支点Oを中心として時計回りに回動させる。つまり伝動支持フレーム65、伝動支持ケース61に連なる作業部60が回動支点Oを中心に時計回りに回動することになる。
図4(d)に示す状態からオフセット機構部20が更に左側に揺動すると、図5(説明図)に示すように、リンク機構部30の第3節30cと第2節30bの回動支点であるジョイント31が更に反転溝41に沿って作業部60の回動支点O側に移動して案内終了位置Peに到達する。またジョイント31の移動に伴い、ジョイント31に繋がる第2節30bも作業部60の回動支点Oの後方側へ移動し、第2節30bに繋がる第1節30aが回動支点Oを中心として時計方向に回動して、作業部60が反転作業位置Prに移動する。
作業部60が反転作業位置Prに移動した状態でオフセット機構部20が更に左側に揺動すると、ジョイント31は反転オフセット溝45内を移動する。このとき、ジョイント31の中心は作業部60の回動支点Oから一定の距離r2を半径とした円弧(反転オフセット溝45)に沿って移動するので、ジョイント31に繋がる第2節30bが回動支点Oに対して接近したり離反したりすることはなく、第1節30aが回動支点Oを中心として回動することはない。従って、作業部60はその向きを維持したまま反転作業位置Prにおいてさらに左側にオフセット移動させることができる。
さて、図3(b)に示すように、ロック装置50によって作業部60の回動がオフセット機構部20にロックされた状態では、作業部60は回動支持アーム23に対する相対的な回動が拘束された状態にある。このため、オフセット機構部20が装着部5に対して右側へ揺動すると、平行リンクを構成するオフセット機構部20によって、作業部60はその向きが一定に維持されたままで、図3(a)に示す通常作業位置Ptの最外側位置までオフセット移動することになる。
なお、第2節30bと第3節30cとを繋ぐジョイント31は、ロック装置50によって作業部60の回動がオフセット機構部20にロックされた状態では、前述したように通常オフセット溝43に沿って移動可能な位置に配設されている。このため、ジョイント31が通常オフセット溝43の入り口に位置している図3(b)の状態にあるときにオフセット機構部20が時計方向に揺動すると、ジョイント31は通常オフセット溝43に沿って移動して案内開始位置Paに移動する。従って、オフセット機構部20が反転作業位置側へ揺動する過程においてジョイント31の移動を案内する通常オフセット溝43により、ジョイント31を確実に案内開始位置Paに移動させることができ、作業部60をオフセット移動から反転移動させる一連の動作を連続的に行わせることができる。
また、オフセットフレーム21に反転溝41を設け、この反転溝41に案内されるジョイント31を、オフセットフレーム21の揺動に応じて回動する回動支持アーム23とオフセットフレーム21の先端下方に回動自在に設けられた連結部17に接続された伝動支持フレーム65との間に設けられた4節リンクをなすリンク機構部30に設けることで、オフセット機構部20の揺動のみによって作業部60を反転させることができ、作業部60を反転させるためのシリンダ等のアクチュエータを、オフセット機構部20を揺動させるための手段とは別に設ける必要がない。
次に、このように構成された畦塗り機1の作業部60を通常作業位置Ptから反転作業位置Prに移動させる場合の畦塗り機1の動作について説明する。図9(a)(平面図)に示すように、畦塗り機1の作業部60が通常作業位置Ptにある状態(図9(a))から作業部60を反転作業位置Pr(図11(f))に移動させるには、先ず、伸縮機構部10の2つの電動式油圧シリンダ11を縮小させる。これらの電動式油圧シリンダ11が縮小すると、作業部60は、図9(a)に示す状態から図9(b)(平面図)に示す状態へ、オフセット機構部20によって左側にオフセット移動する。以下電動式油圧シリンダ11の収縮を続けると、図10(c)(平面図)に示すように、リンク機構部30のジョイント31がガイド部材40の通常オフセット溝43に入り込み反転溝41の案内開始位置Paまで移動すると、作業部60のオフセット移動が停止するとともに、ロック装置50によるオフセットフレーム21に対する作業部60のロックが解除される。このように、作業部60が通常作業位置Ptにある状態で電動式油圧シリンダ11を縮小すると、ジョイント31が案内開始位置Paに移動するまで作業部60はオフセット移動するので、電動式油圧シリンダ11の伸長量を調節し、電動式油圧シリンダ11を静止させることで、通常作業位置Ptから案内開始位置Paまでの間において作業部60のオフセット位置調節を伸縮機構部10によって無段階に連続調節することができる。
図10(c)に示す状態からオフセット機構部20が更に左側に揺動するように2つの電動式油圧シリンダ11を縮小させると、図10(d)(平面図)、図11(e)(平面図)に示すように、リンク機構部30のジョイント31がガイド部材40の反転溝41に沿って作業部60の回転支点O側に移動するに伴い、リンク機構部30によって作業部60がその回動支点Oを中心として時計方向に回動する。そして、図11(f)(平面図)に示すように、ジョイント31が反転溝41の案内終了位置Peに移動すると、作業部60は反転した状態となって反転作業位置Prに移動する。
図11(f)に示す状態から更にオフセット機構部20が左側に揺動するように2つの電動式油圧シリンダ11を縮小させると、作業部60はその向きを維持したまま、更に左側に移動、即ち、オフセット移動する。
このように、本願発明の畦塗り機1は、作業部60が通常作業位置Ptにある状態で伸縮機構部10の電動式油圧シリンダ11を縮小するだけで、作業部60を通常作業位置Ptから反転作業位置Prに移動させることができるとともに、各作業位置において作業部60のオフセット位置を伸縮機構部10によって無段階に連続調節することができる。
なお、前述した実施の形態では、通常オフセット溝43及び反転オフセット溝45の長さ(区間)が反転溝41と比較して短い場合を示したが、図12(a)(説明図)に示すように、これらのオフセット溝43,45の長さをより長くしてもよい。このように通常オフセット溝43及び反転オフセット溝45の長さを長くすると、通常オフセット溝43を移動するジョイント31を案内する距離が長くなり、リンク機構部30の動きが安定化して、オフセット機構部20の回動をスムースに行わせることができる。また図12(b)(説明図)に示すように、反転オフセット溝45を長くすると、作業部60の反転作業位置Prにおけるオフセット位置を無段階に連続調節可能な範囲Hを拡大することができる。
また、前述した実施の形態では、作業部60をオフセットフレーム21にロック可能なロック装置50を設けた畦塗り機1を示したが、図13(説明図)に示すように、通常オフセット溝43の先端部を、作業部60が通常作業位置Ptに移動したときのジョイント31の位置まで延ばして、前述したロック装置50をなくしてもよい。この場合には、ガイド部材40を1枚の板状部材で構成し、この板状部材に通常オフセット溝43、反転溝41及び反転オフセット溝45を連通した状態で設けるとともに、通常オフセット溝43及び反転オフセット溝45の各先端部を閉じた状態にする。
このようにすると、図14(a)(説明図)〜図14(e)(説明図)に示すように、作業部60を通常作業位置Pt(図14(a)参照)から反転作業位置Pr(図14(d)、(e)参照)に移動させるに伴い、リンク機構部30のジョイント31の移動を全てガイド部材40に設けられた通常オフセット溝43、反転溝41、反転オフセット溝45によって案内して、作業部60を通常作業位置Ptから反転作業位置Prに移動させることができる。このため、前述したロック装置50は不要になり、畦塗り機1の部品点数を低減してコストを安価にすることができる。また、リンク機構部30の動きがより安定化して、オフセット機構部20の回動をさらにスムースに行わせることができる。
なお、前述した実施の形態では、オフセット作業機として畦塗り機1を例にして説明したが、溝掘機の場合でも畦塗り機1の場合と同様に構成することで、畦塗り機1の場合と同様の効果、即ち、シリンダにより作業部を通常作業位置から反転作業位置に移動させる場合において、各作業位置において作業部のオフセット位置をシリンダで無段階に連続調節が可能であるという効果を得ることができる。