以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、解体中の高層で柱・梁構造の建物10を示す平面図であり、図2は、この建物10を示す立面図である。この建物10の中央にはタワークレーン2が設置され、建物10の隣の敷地には、破砕作業場4が設置されている。また、建物10は、養生8により周囲を囲われている。
本実施形態に係る解体工法では、建物10の高層階からブロック解体を順次行い、分断されたブロック体をタワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降下させる。そして、破砕作業場4において、ブロック体を破砕機6で破砕する。
図3は、建物10の各階をその下階から見上げた状態を示す図(見上図)である。この建物10の各階には、その外周に配置された鉄筋コンクリート製の外周柱12、13と、その内周に配置された鉄筋コンクリート製の内周柱14と、さらにその内周に配置された鉄筋コンクリート製の内周柱15と、外周柱12と内周柱14との間、隣設された一対の外周柱12の間、隣設された一対の内周柱14、15の間にそれぞれ架設されたH鋼である大梁16、18、20、21とが存在する。外周柱13は、建物の4隅に位置する柱である。
また、建物10の各階には、外周柱12と交互に配置された鉄筋コンクリート製の間柱22と、大梁16、18に結合された小梁24と、2本の内周柱14と2本の内周柱15とより囲まれた領域に配置されたエレベータ開口部鉄骨梁26と、エレベータ開口部鉄骨梁26に隣設された鉄骨階段28と、上述の柱や梁等に支持されたスラブ30とが存する。建物10の各階の中央には、スラブ、柱、梁及びエレベータ機械等を撤去することにより開口31が形成されており、その開口31には、タワークレーン2のマスト3が挿通されている。
以下、図面を参照して建物10の解体工法について説明する。なお、以下の説明では、建物10の各階の中央の工区、建物10の各階の図中上側の工区、及び建物10の各階の図中下側の工区を、それぞれA1工区、A2工区、及びA3工区と称する。
図4A及び図4Bはそれぞれ、解体工事の第1工期での屋上階(以下、R階という)、及び最上階(以下、N階という)の状態を示す見上げ図である。なお、N階の下の階を(N−1)階と称する。
図4Aに示すように、N階のA1工区では、R階の塗り潰しで示す領域の内周柱15、大梁21、エレベータ開口部鉄骨梁26、鉄骨階段28、及びスラブ30を、ブロック解体してタワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降ろす。また、N階のA2工区及びA3工区では、R階の大梁16、小梁24、その他スラブ30等を支える支保工を架設する。また、R階のA2工区及びA3工区では、R階のスラブ30をカッターで切断する。
ここで、外周の大梁18に沿って形成された切断線L1と、内周の大梁20に沿って形成された切断線L2と、大梁16に沿って形成された切断線L3で、R階のスラブ30を切断する。隣設された一対の大梁16の間には2本の切断線L3が入るように、R階のスラブ30を切断する。また、R階の小梁24を、切断線L1、L2、L3との交点において切断する。これにより、R階のスラブ30を、大梁16と小梁24とが下面に結合した長方形状のブロック体30Aと、小梁24が下面に結合した長方形状のブロック体30Bとに分断する。
切断線L1、L2は、スラブ30の配力筋方向(長辺方向)に延びており、切断線L3は、スラブ30の主筋方向(短辺方向)に延びている。このため、切断線L1、L2においてスラブ30の主筋が切断され、切断線L3においてスラブ30の配力筋が切断される。
また、N階のA2工区及びA3工区では、R階の小梁24をガスバーナで切断し、N階の外周柱12、間柱22(図中塗り潰しで示す)をワイヤーソーマシーンで切断する。
また、図4Bに示すように、N階のA1工区では、N階の塗り潰しで示す領域のエレベータ開口部鉄骨梁26を、ブロック解体してタワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降ろす。また、(N−1)階のA1工区において、N階の大梁16と小梁24とを支える支保工を架設し、N階のA1工区において、N階のスラブ30をカッターで切断してブロック体30Cに分断する。さらに、N階のエレベータ開口部鉄骨梁26が結合された(N−1)階の一対の内周柱15(図中塗り潰しで示す)をワイヤーソーマシーンで切断する。
図5A〜図5Dは、外周柱12を切断する手順を示す立面図である。なお、説明は省略するが、間柱22も外周柱12と同様の手順で切断される。図5Aに示すように、まず、外周柱12を切断する前に、外周柱12の下端にハンマードリル41で孔を空けてアンカーを打設する。これは後に、外周柱12の下端にエレクションピース40を取り付けるためである。
次は、図5Bに示すように、ワイヤーソーマシーン36を設置し、防弾シート38を設置し、外周柱12を防弾シート38で包囲する。次は、図5Cに示すように、ワイヤーソーマシーン36で外周柱12の下端を切断する。その後、図5Dに示すように、エレクションピース40を、外周柱12の下端に打設されたアンカーに取り付けることにより、切断された外周柱12の下端を、仮接続する。
図6A〜図6Cはそれぞれ、解体工事の第2工期でのR階、N階、及び(N−1)階の状態を示す見上げ図である。図6Aに示すように、R階のA2工区では、R階のブロック体30B(図中ハッチングで示す)をタワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降ろす。また、N階のA2工区では、R階のブロック体30Bを支えていたN階の支保工を撤去する。
また、図6Bに示すように、N階のA1工区では、N階のブロック体30C(図中ハッチングで示す)、鉄骨階段28、及び内周柱15(ともに塗り潰しで示す)を、タワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降ろす。また、(N−1)階のA1工区において、N階のブロック体30Cを支えていた(N−1)階の支保工を撤去する。また、(N−1)階のA2工区では、N階の小梁24の他、大梁16やスラブ30等を支える支保工32を架設する。
また、図6Cに示すように、(N−1)階のA1工区では、(N−1)階のエレベータ開口部鉄骨梁26(図中ハッチングで示す)をブロック解体してタワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降ろす。また、(N−2)階のA1工区において、(N−1)階のスラブ30を支える支保工34を架設する。
図7A及び図7Bはそれぞれ、解体工事の第3工期でのR階、及びN階の状態を示す見上げ図である。図7Aに示すように、R階のA3工区では、R階のスラブ30を分断したブロック体30B(図中ハッチングで示す)をタワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降ろす。また、N階のA3工区で、R階のブロック体30Bを支えていたN階の支保工を撤去する。さらに、N階のA2工区における図中右側領域(以下、(A2−1)工区という)では、R階の大梁16、18をガスバーナで切断する(図中楕円で示す)。
また、図7Bに示すように、(N−1)階のA3工区では、N階の小梁24を支える支保工48を架設する。
図8は、大梁16の切断手順を示す側断面図である。この図に示すように、大梁16の両端を、ガスバーナにより切断する。ここで、H鋼である大梁16の上端に位置する上フランジはスラブ30と共にカッターで切断し、大梁16の下端に位置する下フランジ16Fは切断せずに残し、大梁16と外周柱12とが下フランジ16Fで接続された状態にする。
図9は、大梁18の切断手順を示す立面図である。この図に示すように、大梁18の両端を、ガスバーナにより切断する。ここで、H鋼である大梁18の上端に位置する上フランジはスラブ30と共にカッターで切断し、大梁18の下端に位置する下フランジ18Fは切断せずに残し、大梁18と外周柱12とが下フランジ18Fで接続された状態にする。また、大梁18を切断する際に、大梁18を上端から下端まで直線的に切断するのではなく、吊りピース42となる部分が外周柱12に残るように切断する。
ここで、大梁18にはPC板44が設けられており、このPC板44は、その両端をファスナー46により大梁18に取り付けられている。そこで、大梁18を、ファスナー46の位置よりも軸方向の両端側で切断する。これにより、両端を切断された大梁18にファスナー46とPC板44とが残るため、大梁18とPC板44とを一のブロック体として揚重することができる。
図10A及び図10Bはそれぞれ、解体工事の第4工期でのR階、及びN階の状態を示す見上げ図である。図10Aに示すように、N階の(A2−1)工区では、R階の大梁16、18の下フランジ16F、18Fを、ガスバーナで切断する。そして、R階の(A2−1)工区において、R階のブロック体30A、外周柱12、間柱22、及び大梁16、18(図中ハッチングで示す)を、タワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降ろす。また、N階の(A2−1)工区において、R階のブロック体30Aを支えていた支保工を撤去する。
また、N階のA2工区における図中右側領域(以下、(A2−2)工区という)では、R階の大梁16、18を、ガスバーナで下フランジ16F、18Fを残して切断する(図中楕円で示す)。
また、図10Bに示すように、(N−1)階の(A2−1)工区では、N階の大梁16と小梁24とを支持する支保工56を架設する。
図11A〜図11Cは、大梁18を揚重する手順を示す立面図である。図11Aに示すように、まず、間柱22の左右両側の大梁18をタワークレーン2に玉掛けする。この際、吊りチェーン50を、間柱22の左右両側の大梁18に巻き付け、この吊りチェーン50にワイヤー52を取り付ける。そして、タワークレーン2により、大梁18に、所定の荷重(例えば、吊り荷重の約8割の荷重)をかける。なお、所定の荷重は、吊り荷重の約8割には限られず、吊り荷重の5割や6割等であってもよい。
次は、図11Bに示すように、大梁18と外周柱12とを接続する大梁18の下フランジ18Fを切断する。これにより、大梁18と外周柱12とが完全に縁切りされる。なお、吊りピース42は切断せずに外周柱12に残す。
次は、図11Cに示すように、間柱22の下端を仮接続しているエレクションピース40を間柱22から取り外す。これにより、間柱22が下階の間柱22から完全に縁切りされ、大梁18及び間柱22が、タワークレーン2により吊られた状態になる。そして、大梁18及び間柱22をタワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降ろす。
図12A〜図12Cは、外周柱12と大梁16とを揚重する手順を示す側断面図である。図12Aに示すように、まず、外周柱12をタワークレーン2に玉掛けする。この際、ワイヤー52を、外周柱12の左右両側に形成された一対の吊りピース42と、大梁16の切断部に取り付けたコの字金物54との3点に取り付ける。そして、タワークレーン2により、外周柱12に、所定の荷重(例えば、吊り荷重の約8割の荷重)をかける。なお、所定の荷重は、吊り荷重の約8割には限られず、吊り荷重の5割や6割等であってもよい。
次は、図12Bに示すように、外周柱12と大梁16とを接続する大梁16の下フランジ16Fを切断する。これにより、外周柱12と大梁16とが完全に縁切りされる。また、大梁16と内周柱14とを接続する大梁16の下フランジ16Fを切断する。これにより、内周柱14と大梁16とが完全に縁切りされる。なお、支保工により、大梁16や小梁24やスラブ30等が支持されている。
次は、図12Cに示すように、外周柱12の下端を仮接続しているエレクションピース40を外周柱12から取り外す。これにより、外周柱12が下階の外周柱12から完全に縁切りされ、タワークレーン2により吊られた状態になる。そして、外周柱12をタワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降ろす。その後、支保工により支持されている大梁16をタワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降ろす。
図13A及び図13Bはそれぞれ、解体工事の第5工期でのR階、及びN階の状態を示す見上げ図である。図13Aに示すように、N階のA1工区では、(A2−1)工区側の3本のN階の内周柱14(図中塗り潰しで示す)の下端をワイヤーソーで切断する。この際、外周柱12の切断と同様、エレクションピース40で内周柱14の下端を仮接続する。また、(A2−1)工区側の3本のR階の大梁20を、その中央部でガスバーナにより切断する(図中楕円で示す)。この際、大梁16、18の切断と同様、下フランジを残す。
また、N階の(A2−1)工区では、当該工区の角部に配置されたN階の外周柱13(図中塗り潰しで示す)の下端をワイヤーソーで切断してタワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降ろす。また、N階の(A2−2)工区では、R階の大梁16、18の下フランジ16F、18Fを、ガスバーナで切断する。そして、R階の(A2−2)工区において、R階のブロック体30A、外周柱12、間柱22、及び大梁16、18(図中ハッチングで示す)を、タワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降ろす。また、N階の(A2−2)工区において、R階のブロック体30Aを支えていた支保工を撤去する。
また、N階のA3工区における図中右側領域(以下、(A3−1)工区という)では、R階の大梁16、18を、ガスバーナで下フランジ16F、18Fを残して切断する(図中楕円で示す)。
図13Bに示すように、N階の(A2−1)工区では、N階のスラブ30を切断線L1、L2に沿ってカッターで切断する。なお、N階のスラブ30を切断線L1、L2に沿ってカッターで切断する工程に先行して、N階のスラブ30を切断線L3に沿ってカッターで切断する工程が実施されている。また、(N−1)階の(A2−1)工区では、N階の小梁24をガスバーナで切断する(図中楕円で示す)。また、(N−1)階の外周柱12(図中塗り潰しで示す)の下端をワイヤーソーマシーン36により切断し、エレクションピース40により仮接続する。また、(N−1)階の(A2−2)工区では、N階の大梁16と小梁24とを支持する支保工56を架設する。
図14A及び図14Bは、スラブ30をカッターで切断する手順を拡大して示す見上げ図である。まず、図14Aに示すように、スラブ30を、その短辺S1の方向(主筋方向)に、即ち切断線L3に沿ってカッターで切断する。次に、スラブ30等を支える支保工を設置する。次に、図14Bに示すように、スラブ30を、その長辺S2の方向(配力筋方向)に、即ち、切断線L1、L2に沿ってカッターで切断する。これにより、スラブ30の主筋が切断される。
ここで、スラブ30を切断する際、まず主筋方向に切断する工程を実施した後に、配力筋方向に切断する工程を実施することにより、前者の工程を実施してから後者の工程を実施するまでの間、スラブ30の主筋を切断せずに残し、スラブ30の耐荷重を確保することができる。これにより、スラブ30のカッターによる切断作業を始める前に、スラブ30を支持する支保工を設置する必要がなく、切断作業の途中で支保工を設置すればよいため、支保工の設置時間を短縮できる。
図15Aは、外周柱13をワイヤーソーマシーン36で切断している状況を示す平面図であり、図15Bは、当該状況を示す立面図であり、図15Cは、外周柱13を固定する架台60を示す立面図である。また、図16は、外周柱13の揚重手順を示す斜視図である。
図15A〜図15C及び図16に示すように、架台60は、一対のフレーム62と、一対のフレーム62を結合する一対の梁64、66と、ワイヤー68とを備えている。各フレーム62は、外周柱13の下端に接合された一対の大梁18の各々の上に設置され、各大梁18に固定されている。各フレーム62は、各大梁18に固定された底梁62Aと、その上に平行に配された中間梁62B及び上梁62Cと、底梁62A、中間梁62B及び上梁62Cの一端を結合する柱62Dと、底梁62Aの他端と中間梁62Bとを結合する柱62Eと、中間梁62Bと上梁62Cとの他端を結合する柱62Fとを備えている。柱62Fは、外周柱13の側面に対向しており、アンカーにより外周柱13の側面に結合されている。
梁64は、一対のフレーム62の柱62Dの上端を結合し、梁66は、一対のフレーム62の梁62Cを結合している。また、ワイヤー68は、外周柱13の外周側に巻回されて両端を梁66の両端に固定されている。ここで、ワイヤー68の一端は、梁66の一端にレバーブロックを介して固定されており、このレバーブロックにより緊張されたワイヤー68が、外周柱13を架台60に固定している。
ワイヤーソーマシーン36には、ワイヤーWが巻き掛けられたフライホイール36F、上下一対のプーリ36U、36Dが設けられている。また、外周柱13の下端の近傍には、変換架台70が配置されている。変換架台70は、ワイヤーWが巻き掛けられたプーリ72A、72B、72C、74A、74Bを備えている。プーリ72A、72B、72Cは、プーリ36U、36Dの回転軸と平行な回転軸の周りに回転する。また、プーリ74A、74Bは、鉛直な回転軸周りに回転する。
ワイヤーWは、フライホイール36F、プーリ36U、36D、72A、72B、72Cにより鉛直面内で周回するように張架され、プーリ72D、72Eと外周柱13とにより水平面内で周回するように張架されている。これにより、ワイヤーソーマシーン36が駆動されてワイヤーWが周回すると、外周柱13の下端がワイヤーWにより切断される。
図15A〜15Cに示すように、外周柱13の下端を、架台60により固定した状態でワイヤーソーマシーン36により切断する。これにより、大梁18から分断されて独立して建っている外周柱13を、転倒させることなく切断することができる。
図16に示すように、外周柱13の下端を切断した後は、架台60により外周柱13を固定した状態で、外周柱13をタワークレーン2に玉掛けする。この際、ワイヤー52を2個の吊りピース42に固定すると共に、外周柱13に胴巻きする。そして、タワークレーン2により、外周柱13に、所定の荷重(例えば、吊り荷重の約8割の荷重)をかける。なお、所定の荷重は、吊り荷重の約8割には限られず、吊り荷重の5割や6割等であってもよい。
次は、ワイヤー68の緊張を開放し、アンカーによる架台60と外周柱13との結合を解除する。これにより、架台60による外周柱13の固定が開放され、外周柱13が、タワークレーン2により吊られた状態になる。そして、外周柱13をタワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降ろす。
なお、フレーム62の構成は、上述のものには限られず、柱や梁の数や配置を変更したり、板やブレースを付加したりする等、必要に応じて適宜変更してもよい。
図17A及び図17Bはそれぞれ、解体工事の第6工期でのR階、及びN階の状態を示す見上げ図である。図17Aに示すように、N階のA1工区では、(A2−2)工区側の3本のN階の内周柱14の下端をワイヤーソーで切断する。この際、外周柱12の切断と同様、エレクションピース40で内周柱14の下端を仮接続する。また、(A2−2)工区側の3本のR階の大梁20を、その中央部でガスバーナにより切断する。この際、大梁16、18の切断と同様、下フランジを残す。
また、N階の(A2−2)工区では、当該工区の角部に配置されたN階の外周柱13の下端を、架台60等を用いた状態でワイヤーソーで切断してタワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降ろす。
また、N階の(A3−1)工区では、R階の大梁16、18の下フランジ16F、18Fを、ガスバーナで切断する。そして、R階の(A3−1)工区において、R階のブロック体30A、外周柱12、間柱22、及び大梁16、18を、タワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降ろす。また、N階の(A3−1)工区において、R階のブロック体30Aを支えていた支保工を撤去する。
また、N階のA3工区における図中左側領域(以下、(A3−2)工区という)では、R階の大梁16、18を、ガスバーナで下フランジ16F、18Fを残して切断する。
図17(B)に示すように、(N−1)階の(A2−2)工区では、N階の小梁24をガスバーナで切断する。また、(N−1)階の外周柱12の下端をワイヤーソーマシーン36により切断し、エレクションピース40により仮接続する。また、N階のスラブ30の外周と内周とを切断線L1、L2に沿ってカッターで切断する。また、(N−1)階の(A3−1)工区では、N階の大梁16と小梁24とを支持する支保工56を架設する。
図18A〜図18Cはそれぞれ、解体工事の第7工期でのR階、N階、及び(N−1)階の状態を示す見上げ図である。図18Aに示すように、N階のA1工区では、(A3−1)工区側の3本のN階の内周柱14(図中塗り潰しで示す)の下端をワイヤーソーで切断する。この際、外周柱12の切断と同様、エレクションピース40で内周柱14の下端を仮接続する。また、(A3−1)工区側の3本のR階の大梁20を、その中央部でガスバーナにより切断する(図中楕円で示す)。この際、大梁16、18の切断と同様、下フランジを残す。
また、N階の(A3−1)工区では、当該工区の角部に配置されたN階の外周柱13(図中塗り潰しで示す)の下端をワイヤーソーマシーン36で切断してタワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降ろす。
また、N階の(A3−2)工区では、R階のブロック体30A、外周柱12、間柱22、及び大梁16、18を、タワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降ろす。また、R階のブロック体30Aを支えていた支保工を撤去する。
図18Bに示すように、N階の(A3−1)工区では、N階のスラブ30の外周と内周とを切断線L1、L2に沿ってカッターで切断する。(N−1)階の(A3−1)工区では、N階の小梁24をガスバーナで切断する(図中楕円で示す)。また、(N−1)階の外周柱12、間柱22(図中塗り潰しで示す)の下端をワイヤーソーマシーン36により切断し、エレクションピース40により仮接続する。また、(N−1)階の(A3−2)工区では、N階の大梁16と小梁24とを支持する支保工56を架設する。
図18Cに示すように、(N−1)階のA1工区では、内周柱15(図中塗り潰しで示す)の下端をワイヤーソーマシーン36で切断し、エレクションピース40により仮接続する。
図19A〜図19Cはそれぞれ、解体工事の第8工期でのR階、N階、及び(N−1)階の状態を示す見上げ図である。図19Aに示すように、N階のA1工区では、(A3−2)工区側の3本のN階の内周柱14(図中塗り潰しで示す)の下端をワイヤーソーマシーン36で切断する。この際、外周柱12の切断と同様、エレクションピース40で内周柱14の下端を仮接続する。また、(A3−2)工区側の3本のR階の大梁20を、その中央部でガスバーナにより切断する。この際、大梁16、18の切断と同様、下フランジを残す。その後、N階のA1工区では、内周柱14をタワークレーンで玉掛けし、所定の荷重をかけてからR階の大梁20の下フランジを、ガスバーナで切断し、エレクションピース40による内周柱14の仮接続を解除する。また、内周柱14及び大梁20(図中ハッチングで示す)を、タワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降ろす。
また、N階の(A3−2)工区では、当該工区の角部に配置されたN階の外周柱13(図中塗り潰しで示す)の下端を、架台60等を用いた状態でワイヤーソーマシーン36で切断し、タワークレーン2で揚重して破砕作業場4に降ろす。
図19Bに示すように、N階の(A3−2)工区では、N階のスラブ30の外周と内周とを切断線L1、L2に沿ってカッターで切断する。(N−1)階の(A3−2)工区では、N階の小梁24をガスバーナで切断する(図中楕円で示す)。また、(N−1)階の外周柱12(図中塗り潰しで示す)の下端をワイヤーソーマシーン36により切断し、エレクションピース40により仮接続する。
図19Cに示すように、(N−2)階のA1工区では、N階の小梁24をガスバーナにより切断する(図中楕円で示す)。
以上、説明したように、本実施形態に係る建物10の解体工法では、外周柱12をブロック解体するに際して、外周柱12の断面全体を切断してその切断部をエレクションピース40で仮接続する工程を実施する(図8及び図9参照)。即ち、外周柱12をその下側の外周柱12から完全に分断したままではなく、外周柱12がエレクションピース40によりその下側の外周柱12に接続された状態にして、周囲の外周柱12等のワイヤーソーマシーンによる切断や周囲の大梁16等のガスバーナによる切断や下階のスラブ30のカッターによる切断等の他の解体作業を進行する。そして、この外周柱12を揚重する前に、エレクションピースを切断部から取り外す。(図11A〜図11C及び図12A〜図12C参照)。
これにより、解体中の外周柱12とこの外周柱12に結合された大梁16、18とに水平力を負担させた状態で、その周囲又は下階の解体作業を進行することができる。また、外周柱12を揚重する前の仮接続を開放する作業は、エレクションピース40を取り外すのみであり、ブロック体を吊り固定したりその吊り固定を開放したりするような大掛かりなものとはならない。従って、本実施形態に係る建物10の解体工法によれば、タワークレーンの使用効率を向上でき、支保工の使用頻度を低減できることにより、建物10の解体工事の施工能率を向上できると共に、解体階の耐震性能の低下を抑制できる。
また、本実施形態に係る建物10の解体工法では、大梁16、18をブロック解体するに際して、大梁16、18を、その断面の一部(下端)を残して切断する工程を実施する(図8及び図9参照)。即ち、直ちに、大梁16、18を外周柱12又は内周柱14から完全に分断するのではなく、大梁16、18がその断面の一部により外周柱12又は内周柱14に接続された状態にして、周囲の大梁16、18等のガスバーナによる切断や周囲の外周柱12等のワイヤーソーマシーンによる切断や下階のスラブ30のカッターによる切断等の他の解体作業を進行する。そして、この大梁16、18を揚重する前に、切断されずに残っている大梁16、18の断面の一部を切断する(図11A〜図11C及び図12A〜図12C参照)。
これにより、解体中の大梁16、18と、この大梁16、18により結合された外周柱12又は内周柱14とに水平力を負担させた状態で、その周囲又は下階の解体作業を進行することができる。また、大梁16、18を揚重する前の大梁16、18の切断作業は、その断面の一部を切断するのみであり、ブロック体を吊り固定したりその吊り固定を開放したりするような大掛かりなものとはならない。従って、本実施形態に係る建物10の解体工法によれば、タワークレーンの使用効率を向上でき、支保工の使用頻度を低減できることにより、建物10の解体工事の施工能率を向上できると共に、解体階の耐震性能の低下を抑制できる。
また、大梁16はH鋼であり、切断されずに残る下フランジ16Fは鋼材である。このため、大梁16と外周柱12又は内周柱14との接合部を、コンクリート等の鋼材以外の部材で構成する場合と比較して、当該接合部の曲げ耐力や引張り耐力を増大させることができ、解体階の耐震性能の低下をより一層向上させることができる。
また、大梁16の切断せずに残す断面の一部をH鋼の下フランジ16Fとしたことにより、大梁16と外周柱12又は内周柱16との接合部の断面積を、効率的に拡大させることができ、当該接合部の曲げ耐力や引張り耐力を効率的に増大させることができる。従って、当該接合部の高さ方向の寸法をより小さくすることができ、大梁16を揚重する前の当該接合部の切断作業を容易化できる。
図20は、他の実施例に係る鉄筋コンクリート製の大梁116の切断手順を示す側断面図である。この図に示すように、大梁116の両端を、ワイヤーソーマシーンにより、上端から下端まで完全に切断する。そして、エレクションピース40により大梁116の両端を仮接続する。この状態で、周囲の大梁116や外周柱12のワイヤーソーマシーンによる切断作業を実施する。そして、大梁116と、この大梁116により結合された外周柱12と内周柱14とをタワークレーン2で揚重して撤去する前に、エレクションピース40を取り外して、大梁116の切断部の仮接続を開放する。
本実施形態に係る解体工法によれば、解体中の大梁116と、この大梁116により結合された外周柱12又は内周柱14とに水平力を負担させた状態で、その周囲又は下階の解体作業を進行することができる。また、大梁116を揚重する前の作業は、エレクションピースを取り外すのみであり、ブロック体を吊り固定したりその吊り固定を開放したりするような大掛かりなものとはならない。従って、本実施形態に係る建物10の解体工法によれば、タワークレーンの使用効率を向上でき、支保工の使用頻度を低減できることにより、建物10の解体工事の施工能率を向上できると共に、解体階の耐震性能の低下を抑制できる。
図21は、他の実施例に係るH鋼である外周柱112の切断手順を示す側断面図である。この図に示すように、外周柱112の下端を、ガスバーナにより内周側から外周側へ切断する。この際、外周側のフランジ112Fを切断せずに残す。この状態で、周囲の外周柱112や大梁16のガスバーナによる切断作業等を実施する。そして、外周柱112と、この外周柱112に結合された大梁16とをタワークレーン2で揚重して撤去する前に、外周柱112のフランジ112Fをガスバーナにより切断して、外周柱112を、切断部の下側から完全に縁切りする。
本実施形態に係る解体工法によれば、解体中の外周柱112と、この外周柱112に結合された大梁16とに水平力を負担させた状態で、その周囲又は下階の解体作業を進行することができる。また、外周柱112を揚重する前の作業は、その断面の一部をガスバーナで切断するのみであり、ブロック体を吊り固定したりその吊り固定を開放したりするような大掛かりなものとはならない。従って、本実施形態に係る建物10の解体工法によれば、タワークレーンの使用効率を向上でき、支保工の使用頻度を低減できることにより、建物10の解体工事の施工能率を向上できると共に、解体階の耐震性能の低下を抑制できる。
なお、本実施形態では、外周柱112が鉄骨梁であり、その断面全体が鋼材からなるため、切断せずに残る断面の一部は、必ず鋼材となる。ここで、外周柱が鉄筋コンクリート製あるいは鉄筋鉄骨コンクリート製の柱であり、その断面がコンクリートと鋼材とからなる場合がある。この場合には、切断せずに残る柱の断面の一部に、必ず、鉄筋あるいは鉄骨が含まれるように、梁を切断すればよい。
図22A及び図22Bは、他の実施例に係る鉄筋コンクリート造の大梁216の切断手順を示す断面図である。図22Aに示すように、大梁216には、上主筋217と下主筋218とが配筋されており、この大梁216の両端を、上側から下側にワイヤーソーマシーンにより切断する。この際、図22Bに示すように、大梁216の下主筋218を含む下端部を切断せずに残す。この状態で周囲の大梁216や外周柱12のワイヤーソーマシーンによる切断作業等を実施する。そして、外周柱12と、この外周柱12に結合された大梁216とをタワークレーン2で揚重して撤去する前に、大梁216の下主筋218を含む下端部をカッター等により切断して、大梁216を、外周柱12から完全に縁切りする。
本実施形態に係る解体工法によれば、解体中の大梁216と、この大梁216に結合された外周柱12とに水平力を負担させた状態で、その周囲又は下階の解体作業を進行することができる。また、大梁216を揚重する前の作業は、その断面の一部をカッター等で切断するのみであり、ブロック体を吊り固定したりその吊り固定を開放したりするような大掛かりなものとはならない。従って、本実施形態に係る建物10の解体工法によれば、タワークレーンの使用効率を向上でき、支保工の使用頻度を低減できることにより、建物10の解体工事の施工能率を向上できると共に、解体階の耐震性能の低下を抑制できる。
なお、上記実施形態では、外周柱12の断面全体を切断してその切断部を仮接続する工程と、外周柱12をその断面の一部を残して切断する工程との何れか一方を実施しているが、これらの工程の両方を実施してもよい。例えば、鉄筋コンクリート製や鉄骨鉄筋コンクリート製の柱と鉄骨柱とが混在しているような場合には、鉄筋コンクリート製や鉄骨鉄筋コンクリート製の柱に対しては前者の工程を実施し、鉄骨梁に対しては後者の工程を実施すること等が可能である。
また、上記の各実施形態では、大梁16、18をその断面の一部を残して切断する工程、又は、大梁16、18の断面全体を切断して仮接続する工程を実施したが、これらの工程を実施することは必須ではない。例えば、大梁16、18を切断することなく、大梁16、18と外周柱12や内周柱14とを一体のブロック体として解体して撤去する等、施工手順は適宜変更できる。
また、外周柱12、大梁116の切断部を仮接続するための仮設材としてプレート状のエレクションピース40を用いたが、この仮設材は、棒材であってもよく、FRPシート等の高強度シート材であってもよい。また、支保工の設置位置は、スラブ30の下や小梁24の下や大梁16の下等、工程毎に適宜決めればよい。
また、上記の各実施形態では、梁及び柱を鉄骨又は鉄筋コンクリート造とする柱・梁構造の建物を解体する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、梁及び柱の少なくとも一方を鉄骨鉄筋コンクリート造とする柱・梁構造の建物を解体する場合にも適用できる。また、上記の各実施形態では、鉄骨梁や鉄骨柱がH鋼である建物を解体する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、組立型鋼や折板等の他の構造の鉄骨梁や鉄骨柱を備える建物を解体する場合にも適用できる。さらに、上記の各実施形態では、高層の建物を解体する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、低層の建物等を解体する場合にも適用できる。