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JP5653053B2 - 複相組織高Cr鋼材の製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、オーステナイト相とマルテンサイト相の複相組織を有する高Cr鋼材であって、特に強度と延性をともに高レベルで両立させた鋼材の製造方法に関する。
自動車部材や機械部品などの用途においては、高強度であり、加工性(延性)が良好であり、かつ耐食性に優れる高Cr鋼材が要求される場合がある。加工性の良好な高強度高Cr鋼としては、SUS301HT、SUS304HTなどの加工硬化型オーステナイト系ステンレス鋼が挙げられる。この種の鋼は調質圧延によって機械的性質が調整される。その他の高強度高Cr鋼としては、析出硬化型や変態強化型のマルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト+マルテンサイト複相組織高強度ステンレス鋼などがある。これらは主として熱処理によって機械的性質が調整される。
加工硬化型オーステナイト系ステンレス鋼は、Niを多く含有するため材料コストが高いという問題がある。他方、マルテンサイト系ステンレス鋼やフェライト+マルテンサイト複相組織高強度鋼は、強度には優れるものの同じ強度レベルで比較するとオーステナイト系鋼種に比べ加工性に劣る。
一方、特許文献1には、オーステナイト+マルテンサイト複相組織ステンレス鋼において、焼入れ後に3%以下の歪を付与し、その後、熱処理を施すことによって溶接軟化抵抗を付与する技術が開示されている。しかし、この技術によって得られる材料は比較的良好な延性を示すものの、自動車部材や機械部品などの用途においては 必ずしも満足できる強度レベルを呈するとは限らない。
特開平7−216451号公報
本発明は、オーステナイト系鋼種より安価で、かつマルテンサイト系鋼種や従来の複相組織高強度ステンレス鋼種よりも優れた強度−延性バランスを有する高Cr鋼材を提供しようというものである。
上記鋼材は、本来、焼入れ処理によって常温でほぼ100%マルテンサイト組織となるような化学組成の高Cr鋼種(代表的にはマルテンサイト系ステンレス鋼)において、化学組成および熱処理を工夫することにより実現することができる。
すなわち本発明では、質量%で、C:0.200%以下、Si:5.00%以下、Mn:1.00%以下、Ni:0.00〜2.00%、Cr:10.00〜15.00%、Cu:0.00〜1.00%、Mo:0.00〜1.00%、N:0.200%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式により算出されるMs点が200℃以上である化学組成を有し、マトリクスがオーステナイト相:8.0〜30.0体積%、残部マルテンサイト相からなる複相組織高Cr鋼材が提供される。
Ms=539−423C−30.4Mn−12.1Cr−17.7Ni−10Cu−7.5Mo …(1)
ここで、(1)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量が代入される。上記各元素のうちNi、Cu、Moは任意添加元素である。「マトリクス」は金属素地を意味し、マトリクス中には析出物や介在物が存在していて構わない。上記複相組織鋼材は、オーステナイト相中の炭素濃度が、全体の平均炭素濃度(鋼のC含有量)よりも高くなっている。鋼材の代表的な形態としては鋼板が挙げられる。
また本発明では、上記の複相組織鋼材の製造方法として、前述の化学組成を有する鋼材を、オーステナイト単相温度域に加熱してオーステナイト単相組織としたのち、前記Ms点より低く且つ焼入れマルテンサイト生成量が90体積%以下となる温度域にある温度Tqに焼入れすることにより、オーステナイト相が10体積%以上残留する焼入れ材を得る工程(焼入れ処理工程)、
前記焼入れ材をオーステナイト相の量が10体積%以上に維持された状態で前記Tq以上Ac1点未満の温度に保持してマルテンサイト相中からオーステナイト相中へCの拡散を生じさせたのち、常温まで冷却する工程(炭素分配処理工程)、
を有する製造法が提供される。
本発明によれば、本来常温でほぼ100%マルテンサイト組織となるいわゆるマルテンサイト系の高Cr鋼種において、常温でマルテンサイト+オーステナイト複相組織を呈する鋼材が実現された。この鋼材は同一鋼種のマルテンサイト単相鋼材よりも延性が大幅に向上しており、高いレベルで強度と延性を両立させたものである。また、強度と延性を比較的両立させやすいオーステナイト系鋼材と比べると、Ni等の高価な元素の含有量が大幅に節減されており、コスト低減効果に優れる。
本発明の複相組織高Cr鋼材を得るためのヒートパターンおよび各段階における金属組織状態を模式的に示した図。 種々の温度Tqで炭素分配処理を行った場合のTq保持時間と残留オーステナイト量の関係を例示したグラフ。
発明者らは詳細な研究の結果、後述の化学組成に調整したステンレス鋼板を、オーステナイト相が残留する温度へ急冷する焼入れ処理、およびその後の加熱による炭素分配処理に供することにより、強度−延性バランスに優れた複相組織高Cr鋼材が得られることを見出した。
図1に、本発明の複相組織高Cr鋼材を得るためのヒートパターンおよび各段階における金属組織状態を模式的に示す。所定の形状に調整された材料(例えば熱延鋼板や冷延鋼板)を用意し、これを焼入れ処理に供する。焼入れ処理では、まず鋼材をオーステナイト(γ)単相温度域に加熱保持する。オーステナイト単相組織(図1(a))とした後、マルテンサイト(α’)変態開始温度Ms点より低い温度Tq(℃)まで冷却する。この冷却は通常のマルテンサイト系ステンレス鋼の焼入れ時と同程度の冷却速度とすればよい。本発明規定範囲の化学組成を有する鋼のMs点は前記(1)式により精度よく推定されるので、本発明を特定するためのMs点は(1)式により定まる値を適用する。ただし、(1)式によるMs点が200℃以上となるように鋼組成が調整されていることが必要である。この場合、マルテンサイト変態終了温度Mf点は常温より高い温度(例えば50℃以上)となる。したがって、本発明で適用する鋼は、通常の焼入れ処理によって100%マルテンサイト組織となるものである。
Mf<Tq<Msを満たす範囲でTqを変動させることにより、Tqまで冷却したときに生成するマルテンサイト量をコントロールすることができる。本発明では焼入れマルテンサイト生成量が90体積%以下となる温度Tqに焼入れすることにより、オーステナイト相が10体積%以上残留する焼入れ材を得る(図1(b))。本明細書では常温からγ単相領域に加熱したのちTqに焼入れする処理を「焼入れ処理」と呼び、上記Tqを「焼入れ終了温度」と呼ぶ。また焼入れ処理後の状態にある材料を「焼入れ材」と呼ぶ。焼入れ材ではオーステナイト相とマルテンサイト相における炭素濃度はそれぞれ、全体の平均炭素濃度(鋼のC含有量)と概ね等しい。このとき、C固溶限の小さいマルテンサイト相には炭素が過飽和に固溶している。
次に、焼入れ材を、そのオーステナイト量が10体積%以上に維持された状態で前記の温度Tdにて保持する。Tdは、Tq≦Td<Ac1を満たす範囲に設定される。この範囲のTdで鋼材を保持することにより、過飽和に固溶しているマルテンサイト相中の炭素が固溶限の大きいオーステナイト相中へと拡散する(図1(c))。その結果、オーステナイト相中のC濃度が増大し、オーステナイト相のMs点は前記(1)式により定まるMs点よりも低下した状態となる(図1(d))。その後、Tdから常温まで冷却すると、オーステナイト相のMs点が低下している(Mf点も低下している)ことに起因して、新たなマルテンサイト相(α’)の生成は見られるものの、100%マルテンサイト組織にはならない。すなわち、常温においてオーステナイト相が残留する組織状態が得られるのである(図1(e))。本明細書では上記Tdに保持してマルテンサイト相からオーステナイト相への炭素の拡散を進行させ、その後常温まで冷却する処理を「炭素分配処理」と呼び、上記Tdを「分配処理温度」と呼ぶ。最終的に得られる鋼材(図1(e))の残留オーステナイト量は、Tqに焼入れを行った時点のオーステナイト量、温度Tdの値、およびTdにおける保持時間に依存する。炭素分配処理によって得られる本発明鋼材の残留オーステナイト量は8〜30%に調整されている。このように適度な残留オーステナイト量が確保されることにより延性が向上し、結果的に「引張強さ(N/mm2)×伸び(%)」で表される強度−延性バランスが改善される。
〔化学組成〕
以下、化学組成における「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
Cは、鋼の強度およびMs点に大きな影響を及ぼす重要な元素である。本発明では特に極低C化していない一般的なマルテンサイト系ステンレス鋼種(SUS410など)と同等以上のC含有量とすればよい。例えば0.030%以上のC含有量を確保することがより効果的である。ただし、C含有量が高くなりすぎるとマルテンサイトが過剰に硬化し、延性・靱性が低下する。また、CはCr炭化物を形成するので、あまり多量のCを添加してもその添加効果は飽和する。種々検討の結果、C含有量は0.200%以下に抑えることが望まれ、0.150%以下とすることがより好ましい。
Siは、製鋼での脱酸作用を有する他、Cが炭化物形成に消費されることを抑制する作用を有する。また、炭素分配処理工程における炭化物(M3C)の生成を抑制し、残留オーステナイト量や熱的安定性を大幅に改善する作用を有する。これらの作用を十分に発揮させるためには0.20%以上のSi含有量を確保することがより効果的である。ただし、多量のSi含有はSi酸化物を主体とする硬質な介在物の形成を招き、強度、疲労特性に悪影響を及ぼす。したがってSi含有量は5.00%以下に制限される。3.50%以下、あるいは1.00%以下の範囲に管理してもよい。
Mnは、Ms点の制御、および焼入れ処理における適正加熱温度の範囲拡大に有効な元素である。Mn含有量の下限は特に限定されないが、例えば0.05%以上の範囲で最適なMn含有量を設定すればよい。0.20%以上とすることがより好ましい。ただし、過度にMnを含有すると加工割れの起点となるMn系介在物が増大する。種々検討の結果、Mn含有量の上限は1.00%に制限され、0.90%以下の範囲で調整することがより好ましい。
Niは、靱性向上に有効な元素である。またMs点の制御にも有効である。このため本発明では必要に応じてNiを含有させることができる。上記作用を十分に引き出すためには0.05%以上のNi含有量を確保することが効果的である。ただし、過剰のNi含有は不経済となるので、Niを含有させる場合は1.00%以下の含有量範囲とし、0.60%以下に制限することもできる。
Crは、鋼材の耐食性を確保するために10.00%以上の含有量とする。10.50%以上とすることがより好ましく、11.50%以上とすることが一層好ましい。ただし、多量にCrを含有させるとCr炭化物が生成しやすくなり、炭素分配処理による強度−延性バランスの改善効果が十分に発揮されなくなる場合がある。種々検討の結果、Cr含有量は15.00%以下の範囲に制限され、13.50%以下の範囲に管理しても構わない。
Cuは、Ms点の制御、および焼入れ処理における適正加熱温度の範囲拡大に有効な元素である。このため本発明では必要に応じてCuを含有させることができる。その場合0.01%以上のCu含有量を確保することがより効果的である。ただし、過度のCu含有は耐食性の低下を招くので、Cuを含有させる場合は1.00%以下の範囲で行う必要があり、0.10%以下の範囲に設定しても構わない。
Moは、Niと同様、靱性向上に有効であり、また耐食性改善にも有効である。このため本発明では必要に応じてMoを含有させることができる。その場合、0.01%以上の範囲で含有させることがより効果的である。ただし、Moは高価な元素であるため、Moを含有させる場合は1.00%以下の範囲で行う。0.20%以下の含有量範囲に管理してもよい。
Nは、Cと同様、鋼の強度向上に寄与し、またMs点を制御する上で重要な元素である。N含有量は例えば0.005%以上とすることが望ましい。ただし、過度にNを含有させると熱間圧延時に表面欠陥が生じやすくなる。種々検討の結果、N含有量は0.200%以下に制限される。
下記(1)式のMsは、鋼のMs点(℃)を表す指標である。
Ms=539−423C−30.4Mn−12.1Cr−17.7Ni−10Cu−7.5Mo …(1)
本発明で規定する組成範囲の鋼に関しては、(1)式によりMs点が精度良く推定される。本発明ではこのMs点が200℃以上となる組成の鋼を適用する。Ms点が200℃を下回る成分系の鋼は通常の焼入れによって常温で残留オーステナイト相が存在する場合があり、そのような鋼種はいわゆるマルテンサイト系鋼種ではないので本発明の製造法によって強度−延性バランスを安定して改善することは難しい。Ms点の上限は、(1)式および各成分元素の含有量範囲(前述)によって制限を受けるので特に定める必要はないが、(1)式によるMs点が400℃以下の鋼種がより好適な対象となる。
〔金属組織〕
本発明のオーステナイト+マルテンサイト複相組織高Cr鋼材は、マトリクスが、オーステナイト相:8.0〜30.0体積%、残部:マルテンサイト相である金属組織を有するものである。オーステナイト量が8.0体積%より少ないと、通常の焼入れ処理を経て製造された同じ組成の材料に対して延性向上の程度が小さく、結果的に強度−延性バランスの顕著な改善効果が得られない場合がある。マトリクス中のオーステナイト量は10.0体積%以上であることがより好ましく、11.0%以上であることが一層好ましい。一方、オーステナイト量が過度に多くなると強度不足となりやすい。本発明ではマトリクス中のオーステナイト量が30.0体積%以下の材料を対象とする。ただし、多量のオーステナイト量を確保するためには焼入れ終了温度TqをMsに近い温度に厳密に制御する必要があり、製造が難しくなる。したがって、マトリクス中のオーステナイト量は20.0体積%以下とすることがより好ましく、18.0体積%以下となるように管理してもよい。
〔焼入れ処理〕
焼入れ処理に供する鋼材は、通常のステンレス鋼板製造工程によって得られた圧延材を適用することができる。例えば、「連続鋳造→熱間圧延→焼鈍・酸洗→冷間圧延」の工程で所定の製品板厚に調整した鋼板を使用することができる。その冷間圧延工程では、必要に応じて中間焼鈍を挟んだ複数回の冷間圧延を行ってもよい。
焼入れ処理においては、まず鋼材をオーステナイト単相温度域に加熱保持して炭素および窒素を完全に固溶させる。例えば900〜1200℃×均熱0〜10minの条件が適用できる。過度に高温または長時間の保持を行うとオーステナイト粒が粗大化し、焼入れ後の複相組織も粗大化して特性低下を招く要因となる。ここで均熱0minとは、材料の肉厚中心部の温度が所定温度に到達した後、直ちに冷却することをいう。次いで加熱温度からMs点より低い温度Tqまで冷却する。
残留オーステナイト量をコントロールするうえで焼入れ終了温度Tqの設定は重要である。最終的にマトリクス中のオーステナイト量が8.0体積%以上である上記の鋼材を得るためには、焼入れ処理を終えた温度Tqにおけるオーステナイト量を10.0体積%以上とすることが望ましい。また、マトリクス中の最終的なオーステナイト量を30.0体積%以下の範囲で調整するためには、この段階でのオーステナイト量が35.0体積%以下の範囲であることが望ましい。鋼の組成に応じて焼入れ終了温度Tqと、Tqにおいて残留するオーステナイト量との関係を予備実験にて求めておくことにより、最適な焼入れ終了温度Tqを定めることができる。
焼入れ処理における冷却は、オーステナイト単相温度域に加熱された鋼材をTqの温度に保持された油浴や塩浴に浸漬する手法を採用することができる。また、通板中の鋼帯を水等の液状冷媒に曝してMs点より低温域まで冷却したのち炉に装入する手法にて、冷却過程での最低到達温度がTqとなるように連続処理することも可能である。本発明で対象とする鋼種はCr含有量が10.00%以上の高Cr鋼であるから、普通鋼のようにパーライト変態を伴わない。したがってA1点通過時の冷却速度を厳密にコントロールする必要はなく、従来一般的なマルテンサイト系ステンレス鋼の焼入れ処理と同程度の冷却速度がMs点通過時に確保されれば十分である。焼入れ終了温度Tqは、必ずしも急冷終了温度と一致する必要はない。したがって、本発明における焼入れ終了温度Tqは、オーステナイト単相温度域から冷却して、後述の炭素分配処理に供するまでの最低到達温度と捉えることができる。
〔炭素分配処理〕
炭素分配処理では前述のように焼入れ材のマルテンサイト相中に過飽和に存在している炭素をオーステナイト相中に吐き出させるための加熱を行う。その加熱温度(分配処理温度)Tdは、前記Tq以上、且つAc1点未満の温度とする。ただし、最終的なオーステナイト量を8.0体積%以上とするためには少なくともオーステナイト量が10体積%以上に維持された状態のままTdで保持する必要がある。Cの拡散を効率的に進行させるためには、Tdは(1)式によるMs点より高い温度とすることがより好ましい。特に「(1)式によるMs点+30℃」以上、Ac1点未満の温度域で行うことが一層好ましく、「(1)式によるMs点+50℃」以上、Ac1点未満の温度域とすることがさらに好ましい。なお、上限は600℃以下、あるいは550℃以下に管理してもよい。
マルテンサイト相からオーステナイト相への炭素の拡散は、加熱温度が高いほど進行しやすい。また加熱温度が同じであれば、加熱時間が(ある程度までは)長いほど進行しやすい。拡散によりオーステナイト相中のC濃度が増大するほど当該オーステナイト相のMs点は低下する。したがって、鋼組成および焼入れ処理条件が同じであれば、炭素分配処理での拡散の進行が大きいほど、Tdから常温までの冷却過程で新たに生成するマルテンサイト量が少なくなる。つまり、温度Tdの値およびTdでの保持時間は最終的に残留するオーステナイト量に大きく影響する。そして、残留オーステナイト量は強度−延性バランスを大きく支配する。炭素の拡散はTdに到達するまでの昇温過程においても生じうるので、使用する加熱炉における「材料温度−時間曲線」を考慮する必要もある。具体的には、化学組成、焼入れ材のオーステナイト量、材料の厚さ毎の材料温度−時間曲線に応じて、目標の強度−延性バランスとなる最終的な残留オーステナイト量が得られる加熱条件(炉温、在炉時間)を予備実験において求めておき、そのデータに基づいて熱処理を施せばよい。
Tdから常温までの冷却速度については特にこだわる必要はないが、炭化物が析出するような極端に遅い冷却速度は避けるべきである。例えば材料を炉外の空気中で放冷する条件が採用できる。
表1に示す鋼を溶製し、そのスラブを抽出温度1200℃で熱間圧延して板厚4.0mmの熱延鋼帯とし、800℃×6h、炉冷の条件で焼鈍し、酸洗を施し、冷間圧延して板厚2.0mmとし、800℃×均熱1minの中間焼鈍および酸洗を施し、仕上げ冷間圧延を行って板厚1.0mmの冷延鋼板を得た。この冷延鋼板に対して、1000℃×均熱1minの加熱処理を施したのち240〜300℃の油浴中に浸漬する焼入れ処理を施すことにより焼入れ材を得た。この場合、油浴温度が焼入れ終了温度Tqに相当する。比較のために常温(25℃)まで水焼入れした焼入れ材(常温焼入れ材)も用意した。この場合、焼入れ終了温度Tq=25℃となる。温度Tqの焼入れ材を直ちにTqより高温の炉に装入し、表2中に示す温度Tdおよび保持時間にて加熱処理したのち常温大気中で放冷する炭素分配処理を施し、供試材とした。ただし一部の常温焼入れ材については焼入れままの材料を供試材とした。なお、実施した炭素分配処理の加熱温度はいずれもAc1点未満である。表1中には前記(1)式により算出されるMs点を表示した。
Figure 0005653053
各供試材について、以下の調査を行った。
〔残留オーステナイト量〕
供試材から採取した試料について透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて組織観察を行うことによりマトリクス中の残留オーステナイト量(体積%)を求めた。なお、いずれの供試材もマトリクスを構成するオーステナイト相以外の相はマルテンサイト相であった。
〔硬さ〕
JIS Z2240に従って荷重10kgで鋼板表面のビッカース硬さを測定した。
〔引張強さ、伸び〕
供試材から圧延方向を長手方向とするJIS13B号引張試験片を採取し、引張速度1mm/minにて破断するまで引張試験を行って、引張強さおよび破断伸びを求めた。また、この引張強さおよび伸びの値を下記(2)式に代入して強度−延性バランス指標A値を求めた。
A値=引張強さ(N/mm2)×伸び(%)…(2)
本来、常温で100%マルテンサイト組織となるマルテンサイト系高Cr鋼を複相組織化することによる強度−延性バランスの改善効果を確認するために、それぞれの鋼種(A〜C)ごとに強度−延性バランス指標A値が常温焼入れ材を用いた供試材(残留オーステナイト量=0体積%)に対してどの程度向上するのかを調べた。具体的には、[各供試材のA値]/[常温焼入れ材を用いた供試材のA値]の比を求めた。この比を「強度−延性バランス向上比」と呼ぶ。
これらの結果を表2に示す。なお、本発明例のものは焼入れ材の段階におけるマトリクス中のマルテンサイト量がいずれも10.0〜35.0体積%の範囲内にあることを確認している。
Figure 0005653053
表2からわかるように、適正な条件で焼入れ処理および炭素分配処理を施した本発明例のものは、焼入れ処理材を用いて作製した同じ鋼種の供試材(それぞれNo.1、3、7)を基準とする強度−延性バランス向上比が1.20以上であり、強度−延性バランスの顕著な改善が認められた。これに対し、比較例No.6は焼入れ終了温度Tqを低くしたことにより焼入れ材のオーステナイト量が10.0体積%未満となったものである。また比較例No.12は分配処理温度TdをMs点以下の温度域としたものである。これらはいずれも分配処理後のオーステナイト量が少なく、強度−延性バランスの向上が小さかった。
なお、本発明例の材料における炭素分配処理前後のオーステナイト相(面心立方格子)の格子定数をX線回折により測定したところ、いずれも炭素分配処理によって格子定数が増大していることが確認された。この格子定数の増大は、炭素分配処理によってオーステナイト結晶の侵入型位置に固溶する炭素量が増大したことに起因するものであると考えられる。なお、窒素についてもマルテンサイト相中からオーステナイト相中への拡散が生じると考えられ、上記の格子定数増大には窒素の拡散も一部寄与しているものと考えられる。
図2には、鋼Cを用いて焼入れ終了温度Tq=240℃で焼入れした後、種々の温度Tqで炭素分配処理を行った場合のTq保持時間と残留オーステナイト量の関係を例示する。炭素分配処理を行うと焼入れ材(オーステナイト量=18.1%)に対して残留オーステナイト量は低下するが、常温で100%マルテンサイト組織とならないものが得られ、その残留オーステナイト量は炭素分配処理の条件(温度、保持時間)によってコントロールできることがわかる。

Claims (1)

  1. 質量%で、C:0.200%以下、Si:5.00%以下、Mn:1.00%以下、Ni:0.00〜2.00%、Cr:10.00〜15.00%、Cu:0.00〜1.00%、Mo:0.00〜1.00%、N:0.200%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式により算出されるMs点が200℃以上である化学組成の鋼材を、オーステナイト単相温度域に加熱してオーステナイト単相組織としたのち、前記Ms点より低く且つ焼入れマルテンサイト生成量が90体積%以下となる温度域にある温度Tqに焼入れすることにより、オーステナイト相が10体積%以上残留する焼入れ材を得る工程(焼入れ処理工程)、
    前記焼入れ材をオーステナイト相の量が10体積%以上に維持された状態で前記Tq以上Ac1点未満の温度に保持してマルテンサイト相中からオーステナイト相中へCの拡散を生じさせたのち、常温まで冷却する工程(炭素分配処理工程)、
    を有する、マトリクスがオーステナイト相:8.0〜30.0体積%、残部マルテンサイト相からなる複相組織高Cr鋼材の製造法。
    Ms=539−423C−30.4Mn−12.1Cr−17.7Ni−10Cu−7.5Mo …(1)
    ここで、(1)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量が代入される。
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