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JP5619225B1 - 同期電動機の制御装置 - Google Patents

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JP5619225B1
JP5619225B1 JP2013141125A JP2013141125A JP5619225B1 JP 5619225 B1 JP5619225 B1 JP 5619225B1 JP 2013141125 A JP2013141125 A JP 2013141125A JP 2013141125 A JP2013141125 A JP 2013141125A JP 5619225 B1 JP5619225 B1 JP 5619225B1
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Abstract

【課題】磁気的突極性を有しない、もしくは磁気的突極性が低い同期電動機において、外乱等の影響を受けて磁極位置の推定精度が悪化した場合に電動機の制御を停止させるか、電動機の制御を行うに十分な精度が得られるように再度推定を行う。【解決手段】同期電動機の制御装置は、バイアス電流をモータ107に印加して暫定的に磁極位置θ1を推定する第一の磁極位置推定部111と、磁極位置θ1を初期位相としてバイアス電流を流し、収斂演算によりバイアス電流位相と磁極位置との位相差に関連する特徴量を所定値に収斂させることで磁極位置θ2を推定する第二の磁極位置推定部1101と、磁極位置θ1と磁極位置θ2との差分に基づいてモータ107の駆動を制御する駆動制御部1514とを備える。【選択図】 図16

Description

本発明の実施形態は、例えばエレベータの巻上機などに用いられる同期電動機の制御装置に関する。
一般に、同期電動機の制御装置では、回転角度センサを用いて回転角度を計測し、その回転角度に同期した電流を流すことによって同期電動機を駆動している。一方、コスト、設置スペース、信頼性等の問題により、回転角度センサを用いない「センサレス制御」の技術が開発されている。
この技術の一つに、特に同期電動機の停止・低速時に、回転子の磁気的突極性を利用して同期電動機に高周波電圧を印加した時の高周波電流に基づいて磁極位置を推定する技術、および磁気飽和現象を利用して磁極の極性を判別する技術がある。
ここで、磁気的突極性と磁気飽和現象について簡単に説明しておく。
磁気的突極性のある/なしは、磁束が通りやすいか否かで決まる。磁石は磁束が通りにくい物質である。これに対し、磁石を囲む鉄心は磁束が通りやすい。磁束の通りやすさは、インダクタンスLの大きさで表れる。つまり、磁石のある方向は磁束が通りにくく、インダクタンスLの値が小さい。一方、鉄心のある方向は磁束が通りやすく、インダクタンスLの値が大きい。このように方向によって磁束の通りやすさに違いがあるものを「磁気的突極性あり」と呼んでいる。
「磁気的突極性あり」の場合、モータが回転している場合もしくは低速のときでも電気的特性があるので、dq軸のインダクタンスLdLqに基づいて磁極位置を推定することができる。
「磁気飽和現象」とは、磁性体の中で磁束が過密しすぎて、磁束が流れにくくなる現象のことである。磁石は、元々磁束を通しにくい物質である。したがって、埋め込み磁石型のモータの場合、固定子コイルに流す電流による磁束を、回転子に対して一周させて磁束の通りやすさをインダクタンスLから検出すれば、磁石が発する磁束と固定子コイルが発する磁束が同じ方向のときに磁束の通りやすさ、すなわちインダクタンスL最も少なくなる。これを利用して、センサレスで磁極位置を推測できる。なお、「磁極位置を推測(検出)する」とは、「回転角度を推測(検出)」と同じ意味である。
また、回転角度センサとして、PG(Pulse Generator)を用いた制御システムがある。この制御システムでは、PGからモータの回転に応じて出力されるパルスをカウントして回転角度を算出する。しかし、パルスをカウントすることで変位量しかわからない。絶対角度を求めるためには、通常1回転に1回のみ出力されるZパルスを検出する必要があるため、制御が難しいという問題がある。
このような問題に解決するために、上述のセンサレス制御技術を応用して磁極位置を推定し、PGの初期位置として設定するという技術がある。
また、永久磁石同期電動機において、回転子に磁気的突極性のないSPMSM(Surface Permanent Magnet Synchronous Motor:表面磁石型モータ)では、磁気的突極性を利用して磁極位置を推定することが原理的に不可能となる。そこで、磁気飽和現象を利用することによって、SPMSMでも磁極位置の推定を実現した技術がある。
これは、所定の方向と大きさをもつ正負の電圧ベクトルを与えた時に、それぞれの電圧ベクトルによって流れた電流によって、正負の電圧ベクトルのどちらかでのみ磁気飽和が発生し、電流のピーク値に差異が発生することを利用して磁極位置を推定するものである。
特許第3312472号公報 特許第3401155号公報 特許第3213751号公報 特許第4211133号公報
しかしながら、上記技術では、電圧ベクトルの印加のみで磁気飽和を発生させるため、電流値を精度よく制御できない。したがって、必ずしも正確に磁気飽和現象を利用できない場合がある。例えば電圧ベクトルが大きすぎるか、出力の時間幅が長すぎると、電流が増大しすぎることにより、正負どちらの電圧ベクトルでも磁気飽和が発生する。このため、電流ピーク値に明確な差が表れにくいため、磁極位置を正確に推定することができない。
逆に、電圧ベクトルが小さすぎるか、時間幅が短すぎると、電流が小さいままになり、正負どちらの電圧ベクトルでも磁気飽和が発生しない。したがって、上記同様に電流ピーク値に明確な差が表れず、磁極位置を正確に推定することができない。
特に、電動機が変わった場合には、電動機定数や磁気飽和特性が変わる。このため、最適な電圧ベクトルの大きさと出力時間を調査して設定し直す必要があり、手間がかかる上、製造誤差などによって必ずしも最適な電流値になるとは限らない。
本発明が解決しようとする課題は、磁気的突極性を有しない、もしくは磁気的突極性が低い同期電動機において、外乱等の影響を受けて磁極位置の推定精度が悪化した場合に電動機の制御を停止させるか、電動機の制御を行うに十分な精度が得られるように再度推定を行うようにした同期電動機の制御装置を提供することである。
本実施形態に係る同期電動機の制御装置は、所定の大きさで位相が0から360度まで変化するバイアス電流を同期電動機に流し、上記バイアス電流の電流動作点近傍に電流変化が発生するように印加した高周波電圧と、上記高周波電圧に対応して流れる高周波電流とに基づいて、バイアス電流と同位相の方向のインダクタンス相当値を求め、上記インダクタンス相当値が極値となるバイアス電流位相を第一の磁極位置として推定する第一の磁極位置推定手段と、この第一の磁極位置推定手段によって推定された第1の磁極位置を初期位相として所定の大きさのバイアス電流を流し、上記バイアス電流の動作点近傍に電流変化が発生するように印加した高周波電圧と上記高周波電圧に対応して流れる高周波電流とに基づいてバイアス電流位相と磁極位置との位相差に関連する特徴量を演算し、上記特徴量が所定値に収斂するようバイアス電流位相を修正する収斂演算を行い、その収斂結果として得られるバイアス電流位相を第二の磁極位置として推定し、この第二の磁極位置を上記同期電動機の磁極位置として決定する第二の磁極位置推定手段と、上記第一の磁極位置推定手段によって推定された第一の磁極位置と上記第二の磁極位置推定手段によって推定された第二の磁極位置との差分に基づいて上記同期電動機の駆動を制御する駆動制御手段とを備える。
図1は第1の実施形態に係る同期電動機の制御装置の第一の磁極位置推定部に関する構成を示すブロック図である。 図2は同実施形態における同期電動機の座標系の定義を説明するための図である。 図3は同実施形態における同期電動機の高周波電圧指令の波形図である。 図4(a),同図(b)は同実施形態における同期電動機のバイアス電流位相角指令の波形図である。 図5は同実施形態における同期電動機のバイアス電流の定義を説明するための図である。 図6(a),同図(b)は同実施形態における同期電動機のバイアス電流の応答波形例を示す図である。 図7は同実施形態における同期電動機の制御装置による第一の磁極位置推定処理を示すフローチャートである。 図8は同実施形態における同期電動機の制御装置による第二の磁極位置推定処理を示すフローチャートである。 図9は同実施形態における同期電動機としてSPMSMの構成を模式的に示した断面図である。 図10は同実施形態における同期電動機のバイアス電流に対する磁束特性を示す図である。 図11は同実施形態における同期電動機のバイアス電流の位相角とインダクタンスとの関係を示す図である。 図12は同実施形態における同期電動機の制御装置の第二の磁極位置推定部に関する構成を示すブロック図である。 図13は同実施形態における同期電動機の座標系の定義を説明するための図である。 図14(a),同図(b)は同実施形態における同期電動機の特徴量の特性を示す図である。 図15は同実施形態における同期電動機の制御装置の第二の磁極位置推定部による収斂演算の構成を示すブロック図である。 図16は同実施形態における同期電動機の制御装置の磁極位置比較部分の構成を示すブロック図である。 図17は第2の実施形態に係る同期電動機の制御装置の磁極位置推定処理の繰り返し機構の構成を示すブロック図である。 図18は第2の実施形態における同期電動機の制御装置による第一の磁極位置推定処理を示すフローチャートである。 図19は第2の実施形態における同期電動機の制御装置による第二の磁極位置推定処理を示すフローチャートである。 図20は第3の実施形態における同期電動機の制御装置による第一の磁極位置推定処理を示すフローチャートである。 図21は第3の実施形態における同期電動機の制御装置による第二の磁極位置推定処理を示すフローチャートである。 図22は第3の同実施形態における特徴量の特性の乱れを説明するための図である。
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態における同期電動機の制御装置には、第一の磁極位置推定部と第二の磁極位置推定部が備えられている。以下では、(a)第一の磁極位置推定部の構成、(b)第二の磁極位置推定部の構成に分けて詳しく説明する。なお、便宜的に第一の磁極位置推定部の構成(図1)と第二の磁極位置推定部の構成(図12)に分けて説明するが、同じ制御装置に備えられているものである。
後述するように、第一の磁極位置推定部では、バイアス電流を同期電動機に印加して暫定的に磁極位置θ1を推定する。第二の磁極位置推定部では、第一の磁極位置推定部によって推定された磁極位置θ1を初期位相としてバイアス電流を流し、収斂演算によりバイアス電流位相と磁極位置との位相差に関連する特徴量を所定値に収斂させることで磁極位置θ2を推定する。この磁極位置θ2が最終的に正確な位置として検出されることになる。
(a)第一の磁極位置推定部の構成
まず、第一の磁極位置推定部の構成について説明する。
図1は第1の実施形態に係る同期電動機の制御装置の第一の磁極位置推定部に関する構成を示すブロック図である。
モータ駆動手段としてインバータ105が備えられている。このインバータ105は、三角波PWM変調部104からのインバータ駆動用のゲート指令を入力とし、図示せぬ主回路スイッチング素子のON/OFFを切替えることによって、交流/直流電力を相互に変換してモータ107を駆動する。
モータ107は、SM(同期電動機)もしくはPMSM(永久磁石同期電動機)など、回転子の回転に同期して固定子に回転磁界を励磁する電動機である。このモータ107のUVWの各励磁相に流れる3相交流電流によって回転磁界が発生し、回転子との磁気的相互作用により回転トルクが出力される。
以下では、PMSMを例に説明する。なお、SMを用いる場合でも、モデル上は回転子の界磁が永久磁石によって作られるか界磁コイルによって作られるかの違いだけであるので、同一のモデルを適用可能である。
電流検出部106aおよび106bは、モータ107に流れる3相交流電流のうち2相もしくは3相の電流応答値を検出する。図1の例では2相の電流を検出する構成を示している。ブレーキ108は、モータ107の回転子の回転を固定する。
磁極位置検出部109は、エンコーダ等の回転角度センサによって、回転子(ロータ)の回転角を検出する。座標変換部(αβ/UVW)103aおよび座標変換部(UVW/αβ)103bは、三相固定座標系と直交2軸(αβ軸)の固定座標系の座標変換を行う。
ここで、本実施形態における同期電動機の座標系の定義を図2に示す。
固定子コイル201a、201b、201cは、それぞれ固定子のU相、V相、W相のコイルである。αβ軸固定座標系202は、α軸がU相方向と一致し、β軸が90度位相の進んだ座標系である。dq軸回転座標系203は、d軸が回転子204の磁極位置の方向と一致し、q軸が90度位相の進んだ座標系である。α軸とd軸の位相差が回転角度θである。
図1において、電圧指令値を座標変換する座標変換部(αβ/UVW)103aにおける変換処理を式1に示す。電流応答値を変換する座標変換部(UVW/αβ)103bにおける変換処理を式2に示す。
Figure 0005619225
Figure 0005619225
電流制御部102は、電流応答値iα,iβと電流指令値iαref,iβrefを比較し、電圧指令値vα,vβを決定する。電流制御部102における一般的な演算処理は、PI制御器を用いて式3のように表される。
Figure 0005619225
ここでKp,Kiはそれぞれ比例ゲイン、積分ゲイン、sはラプラス演算子である。
三角波PWM変調部104は、モータ107を駆動するための3相電圧指令値を三角波PWMによって変調し、インバータ105の各相スイッチング素子のON/OFF指令であるゲート信号を出力する。
高周波電圧重畳部113は、例えば図3に示す振幅一定の波形の高周波電圧指令vα_hfおよびvβ_hfを計算する。高周波電圧指令vα_hfおよびvβ_hfに電流制御出力であるvα0およびvβ0が加算されて、新たな電圧指令vαおよびvβが生成される。
図3の高周波電圧指令vα_hfおよびvβ_hfは、式4のように表すことができる。
Figure 0005619225
ここで、ωhfは高周波の角周波数、Hは高周波の振幅であり、どちらも予め設定した値である。tは時間である。Hは、この高周波電圧によって流れる高周波電流が後述するバイアス電流指令値と比較して十分小さい振幅となる値に設定することが望ましい。これは、高周波電流によってバイアス電流が小さくなりすぎてしまうと、モータの磁気飽和現象が緩和されてしまい、磁極位置の推定が正確に行えなくなるためである。
バイアス電流指令生成部101は、予め設定した振幅指令Ibiasとバイアス電流位相角指令生成部112の出力である位相角指令値θbiasを入力とし、式5により電流指令iαrefおよびiβrefを生成する。
Figure 0005619225
バイアス電流位相角指令生成部112は、連続的もしくは断続的に時間変化する位相角指令値θbiasを出力する。例えば図4(a)に示すように、0〜360°を連続的に出力しても良いし、図4(b)のように断続的に出力しても良い。このとき、この位相角の変化速度は、式4における角周波数ωhfよりも十分低い角周波数に設定する。言い換えると、周期Tbiasが、図3中に図示する周期Thfよりも十分に長い周期となるように設定する。
図5はαβ軸固定座標系におけるバイアス電流指令の空間配置を示す図である。
高周波電圧重畳部113が生成する高周波電圧によって、図5中に示す電流動作点近傍で動作点が微小に動く高周波電流が発生することになる。
図6は所定の振幅で位相を変更して、電流制御によってモータ107に流したバイアス電流の応答波形例を示す図である。
高周波電圧を重畳しているため、図6(a)に示す全体波形では、iαとiβはそれぞれ太い波形となっているが、図6(b)に示す部分的に拡大した波形図では、周期Thfの高周波波形となっている。このように、バイアス電流の位相角の変化は高周波の周期に対して十分長くとることにより、高周波成分はバイアス電流の回転の影響をほとんど受けないように構成することができる。
高周波電流検出部110は、一般的なハイパスフィルタやバンドパスフィルタによって、高周波電圧と同じ周波数の高周波電流iα_hfとiβ_hfを検出する。フィルタのカットオフ周波数は、少なくともバイアス電流の変化成分を除去できる高い周波数に設定する。バンドパスフィルタの場合、高域側のカットオフ周波数は電流検出部106aおよび106bにおける検出ノイズをカットする周波数に設定する。
第一の磁極位置推定部111は、バイアス電流方向のインダクタンス相当値Lbiasを演算する。すなわち、第一の磁極位置推定部111は、高周波電流検出部110で検出した高周波電流のバイアス電流の方向θbiasの成分ihf_biasを式6のように演算し、この成分の振幅値Ihf_biasを計測する。振幅値の計測は、例えば周期Thfの間に現れる最大値と最小値を記憶して差分を計算すれば良い。
Figure 0005619225
ここで、ψは重畳した高周波電圧に対する位相差分である。
続いて、第一の磁極位置推定部111は、振幅値Ihf_biasから式7のようにインダクタンス相当値Lbiasを演算する。
Figure 0005619225
高周波電圧振幅Hと角周波数ωhfを一定値とすれば、インダクタンス相当値Lbiasは高周波電流振幅Ihf_biasに反比例する。したがって、Ihf_biasをインダクタンス相当値とみなすこともできる。また、同様に、式6で表される高周波電流のゼロクロス付近の時間変化率を計測もしくは計算すれば、Ihf_biasに相当する値となるため、この時間変化率をインダクタンス相当値としても良い。
さらに、第一の磁極位置推定部111は、バイアス電流方向θbiasが0から360度に変化する間のインダクタンス相当値Lbiasが最小値となるバイアス電流方向θbias_minを出力する。Ihf_biasをインダクタンス相当値とする場合は、これが最大値となるバイアス電流方向がθbias_minとなる。すなわち、演算したインダクタンス相当値が極値を示すバイアス電流方向をθbias_minとすれば良い。このθbias_minがモータ107の極磁位置となる。
図7および図8は第一の実施形態における磁極位置の推定処理を示すフローチャートである。このうち、図7のステップA11〜A19は第一の磁極位置推定部111による磁極位置の推定処理を示している。
すなわち、図1の構成の制御装置では、まず、電流および電圧の初期値をセットした状態で(ステップA11)、電流制御部102を通じてモータ107に対する電流制御を開始する(ステップA12)。また、制御装置は、高周波電圧重畳部113を通じて高周波電圧の重畳を開始する(ステップA13)
ここで、バイアス電流指令値が制御装置に入力されると(ステップA14)、所定の位相のバイアス電流がモータ107に供給され、そのバイアス電流に対して高周波電圧が印加され、同時に高周波電流が観測できるようになる。
制御装置は、この高周波電圧に対応して流れる高周波電流を検出し(ステップA15)、第一の磁極位置推定部111を通じてバイアス電流と同位相の方向のインダクタンス相当値を求める(ステップA16)。詳しくは、バイアス電流の電流動作点近傍に電流変化が発生するように印加した高周波電圧と、この高周波電圧に対応して流れる高周波電流とに基づいて、バイアス電流と同位相の方向のインダクタンス相当値を求める。
制御装置は、バイアス電流を0から360度まで変化させながら、そのときのバイアス電流と同位相の方向のインダクタンス相当値を順次求めていく(ステップA17〜A18)。その結果、最終的にインダクタンス相当値が極値となるバイアス電流位相をモータ107の磁極位置とする(ステップA19)。このときに得られた磁極位置θ1を初期回転角度とする。
次に、上記構成の作用について説明する。
まず、磁気飽和現象の発生について説明する。
図9はSPMSMの構成を模式的に示した断面図である。この例では、4極の表面磁石型PMSM(SPMSM)を示しており、図中の801はステータ、802はロータである。また、図中のdq軸は回転子の磁極に一致した座標系を示している。
バイアス電流の磁束は、図9の状態でバイアス電流の位相を変化させた時にバイアス電流が作る磁束を模式的に表したものである。図9において、磁石磁束の方向とバイアス電流の磁束が同一方向となる(1)の状態のとき、磁気飽和が発生してバイアス電流の方向のインダクタンスは低下する。(2)および(3)の状態のときは、磁石磁束がないかバイアス電流の磁束と逆向きのため、磁気飽和が発生せず、インダクタンスの低下は起こらない。
バイアス電流位相角をd軸正方向、q軸方向、d軸負方向の3パターンに設定した際のバイアス電流の振幅とバイアス電流方向の磁束の模式的な特性を図10に示す。
図10において、バイアス電流の振幅に対する磁束の傾きがインダクタンスである。バイアス電流を正方向に増加させれば、磁気飽和が発生して傾きが小さくなる特性となっている。この特性は、バイアス電流位相が、磁極つまりd軸に対してどの方向にあるかによって変動する。d軸を基準としたバイアス電流位相=0度つまりバイアス電流位相がd軸正方向にある時、もっとも小さいバイアス電流で磁気飽和が始まることを示している。
一方、d軸負方向にバイアス電流を流した時にも、バイアス電流の振幅を増加させれば磁気飽和が発生する。このため、このバイアス電流振幅ではバイアス電流の位相の違いによるインダクタンスの差が小さくなることがわかる。
すなわち、バイアス電流振幅値が小さい場合(例えば図9動作点a)では、どの位相角でも磁気飽和が発生せずにインダクタンスの差が現れない。バイアス電流振幅値が大きい場合(動作点c)では、どの位相でも磁気飽和が発生してしまい、インダクタンスの差が現れなくなることになる。
磁気飽和を利用して磁極位置を推定する場合、インダクタンスの差が明確に現れるバイアス電流を正確に流すことが重要であり、図10においては、動作点bを含む網掛け部の範囲の電流値が適切と言える。
また、磁気飽和現象について、d軸基準のバイアス電流位相角とバイアス電流方向のインダクタンスとを対応づけて図示すると、図11のようになる。
図11におけるバイアス電流動作点a、b、cは図9における動作点と一致している。すなわち、バイアス電流動作点bでの特性では、バイアス電流位相角とd軸の位相差がゼロ近傍の時、磁石磁束とバイアス電流による磁束が同方向となるため、磁気飽和によってインダクタンスが低下する。動作点aやcでは、上述した理由によりインダクタンスの差が現れにくく、検出ノイズ等によってインダクタンスが極値をとる位相角を精度よく推定することができない。
以上のように、磁気飽和現象によってバイアス電流方向のインダクタンスが変化することを利用して、同じ方向の高周波電流振幅を用いて磁極位置を推定する。すなわち、重畳した高周波電圧によって少なくともバイアス電流と同じ方向に流れた高周波電流の振幅と、高周波電圧の振幅および周波数からインダクタンス相当値を演算することにより、バイアス電流位相角がd軸と一致する位相角を計測できる。
(b)第二の磁極位置推定部の構成
次に、第二の磁極位置推定部の構成について説明する。
図12は同期電動機の制御装置の第二の磁極位置推定部に関する構成を示すブロック図である。なお、図1の構成と同じ部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略するものとする。また、図示を省略するが、実際には図1に示した構成要素がこの図12の構成の中にも同様に含まれているものとする。
図1の座標変換部(αβ/UVW)103aおよび座標変換部(UVW/αβ)103bに代えて、座標変換部(st/UVW)1102aおよび座標変換部(UVW/st)1102bが設けられる。さらに、第一の磁極位置推定部111とは別に、第二の磁極位置推定部1101が設けられる。
なお、図12では図示を省略するが、第一の磁極位置推定部111については、図1で説明したように、高周波電流検出部110で検出された高周波電流iα_hfとiβ_hfに基づいてバイアス電流方向のインダクタンス相当値Lbiasを演算する。さらに、第一の磁極位置推定部111は、バイアス電流方向θbiasが0から360度に変化する間のインダクタンス相当値Lbiasが最小値となるバイアス電流方向θbias_minを出力する。
図12の構成において、座標変換部(st/UVW)1102aおよび座標変換部(UVW/st)1102bは、三相固定座標系と直交2軸(st軸)回転座標系の座標変換を行う。図13に示すように、st軸回転座標系1201は、α軸を基準としてバイアス電流位相角θbiasで回転する座標系である。
座標変換部1102aおよび1102bにおける処理を式8および式9に示す。
Figure 0005619225
Figure 0005619225
また、電流制御部102への入力である電流指令は、s軸電流指令としてバイアス電流振幅指令Ibiasをそのまま入力する。
第二の磁極位置推定部1101は、高周波電圧指令vs_hfおよびvt_hfと高周波検出部110で検出した高周波電流is_hfおよびit_hfに基づいて、バイアス電流と磁極位置の位相差Δθに関連した特徴量Rを演算する。
特徴量Rは、理想的にはΔθそのものが得られるのが理想であるが、Δθのゼロ近傍でΔθに略比例する量が得られれば良い。このような特徴量の特性を図14に示す。図14(a)では、Δθ=0の点で特徴量もゼロとなる特性であるが、特徴量はオフセットを持っていても良い。図14(b)では、Δθ=0の点でのオフセット値Rofsを持っている。この場合、後述する収斂演算の目標値をオフセット値Rofsに設定すれば良い。
特徴量Rの演算は、例えば高周波電圧をバイアス電流と同じ方向にのみ印加したとき、バイアス電流に直交する方向に現れる高周波電流の振幅を計測して特徴量Rとすることができる。
すなわち、式10に示す高周波電流を与える。
Figure 0005619225
この時、バイアス電流に直交する方向に現れる高周波電流は、t軸高周波電流であり、式11の特性を持つ。
Figure 0005619225
ここで、Lsatはバイアス電流が磁極位置近傍にある場合に発生する磁気飽和によって変動する係数である。バイアス電流が磁極位置近傍になく磁気飽和が発生しない場合、Lsat=0となり、磁気飽和が発生する場合は0以外の値を持つ。
式11の高周波電流から、cos(ωhft)の振幅成分を抽出すると、その振幅はsin(2Δθ)の関数となり、Δθ=0近傍でΔθに略比例する特性となるため、特徴量として用いることができる。
このように高周波電圧をバイアス電流と同じ方向のみに印加する構成では、高周波電流の発生による電磁騒音を、その他の構成と比べて小さく抑制することが可能となるなどの利点がある。
第二の磁極位置推定部1101では、続いて、特徴量Rに基づいて収斂演算を行ってバイアス電流位相θbias_setを出力する。
図15は第二の磁極位置推定部1101における収斂演算の構成を示すブロック図である。
ゲイン乗算器1401および1402は、それぞれ所定のゲインKp_pllとKi_pllを乗算する。積分器1403および1404は、それぞれの入力を時間積分する。積分初期値については、積分器1403は初期値ゼロ、積分器1404では初期値をθbias_minとする。
θbias_minは、図12において、第一の磁極位置推定部111で推定した磁極位置である。これを初期値とすることにより、バイアス電流の位相θbias_setはθbias_minから収斂演算が始まるため、第一の磁極位置推定部111で推定した磁極位置近傍の位相から第二の磁極位置推定部1101の推定処理を開始できる。
収斂判定器1405は、特徴量RとRofsの差分が一定値以下になるか、収斂演算を実行している時間が一定時間経過するか、その他の判定基準に基づいて、収斂演算の終了を判定し、その時点のθbias_setを最終推定磁極位置θbias_endとして出力する。上記その他の判定基準としては、特徴量の差分が継続して一定値以下になっている時間が所定時間以上経過する、などがある。
図15のように構成すると、この収斂演算により特徴量Rをオフセット量Rofsに一致するようにθbias_setを修正することができる。なお、特徴量Rの特性に合わせて、Rofsはゼロとする場合もある。
第二の磁極位置推定部1101を用いることにより、推定磁極位置を特徴量RとΔθのゼロクロス点に収束させて推定することができる。したがって、第一の磁極位置推定部111やその他の方式と比較して高い精度で磁極位置を推定することが可能となる。
図8のフローチャートにおいて、ステップB11〜B19は第二の磁極位置推定部1101による磁極位置推定処理を示している。
すなわち、図12の構成の制御装置では、まず、上記第一の磁極位置推定部111で得られた磁極位置θ1を初期値としてセットした状態で(ステップB11)、電流制御部102を通じてモータ107に対する電流制御を開始する(ステップB12)。また、制御装置は、高周波電圧重畳部113を通じて高周波電圧の重畳を開始する(ステップB13)
ここで、バイアス電流指令値が制御装置に入力されると(ステップB14)、所定の位相のバイアス電流がモータ107に供給され、そのバイアス電流に対して高周波電圧が印加され、同時に高周波電流が観測できるようになる。
制御装置は、この高周波電圧に対応して流れる高周波電流を検出し(ステップB15)、第二の磁極位置推定部1101を通じて収斂演算によるバイアス電流位相角を求める(ステップB16〜B18)。詳しくは、上記磁極位置θ1を初期位相として所定の大きさのバイアス電流を流し、バイアス電流の動作点近傍に電流変化が発生するように印加した高周波電圧とこの高周波電圧に対応して流れる高周波電流とに基づいてバイアス電流位相と磁極位置との位相差に関連する特徴量を演算し、この特徴量が所定値に収斂するようバイアス電流位相を修正する収斂演算を行う。
制御装置は、上記収斂演算の結果によって最終的に得られたバイアス電流位相をモータ107の磁極位置θ2とする(ステップB19)。
(第一の磁極位置と第二の磁極位置の比較)
図16は同期電動機の制御装置の磁極位置比較部分の構成を示すブロック図である。なお、図1および図12の構成と同じ部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略するものとする。また、図示を省略するが、実際には図1および図12に示した構成要素がこの図16の構成の中にも同様に含まれているものとする。
本実施形態における同期電動機の制御装置には、図1に示した第一の磁極位置推定部111と図12に示した第二の磁極位置推定部1101が備えられる。さらに、この制御装置には、2つの推定部に関連した構成として、速度制御用電流指令生成部1511、磁極位置比較部1512、外部記憶部1513、駆動制御部1514が備えられる。
速度制御用電流指令生成部1511は、モータ107の速度が速度指令Sと一致するような電流指令iαrefとiβrefを算出して電流制御部102に出力する。
磁極位置比較部1512は、第一の磁極位置推定部111から出力される暫定的な極位置θ1と第二の磁極位置推定部1101から出力される磁極位置θ2とに基づいて、磁極位置差分Δθを式12のように算出する。
Δθ=|θ1−θ2| (式12)
磁極位置比較部1512は、この磁極位置差分Δθを外部記憶部1513に記憶された磁極位置差分の閾値θthと比較する。駆動制御部1514は、磁極位置比較部1512の比較結果に基づいてモータ107の駆動を制御する。
ここで、θ1およびθ2は、いずれも磁気飽和によって生じるインダクタンスの低下を基に検出された磁極位置である。原理的には同じ角度を示すため、Δθはゼロとなる。しかしながら、例えば電流検出部106aおよび106bが外部機器の影響を受けて、電流応答値i、iに外乱等が生じた場合に、特に第一の磁極位置推定部111では、真の極値以外の点を磁極位置θ1として検出することがある。これは、第一の磁極位置推定部111がインダクタンス相当値Lbiasあるいは高周波電流振幅Ihf_biasが極値となるような演算を行っているためである。
この場合、θ1を初期位相として収斂演算を実施する第二の磁極位置推定部1101は、真の磁極位置へ位相を収束させるために、通常よりも長い時間を要することになる。例えば、収斂演算の終了条件を一定時間の経過とした場合においては、検出した磁極位置θ2がθ1から大きく離れた位置となり、真の磁極位置を検出していないと考えられる。
θ2が真の磁極位置でない状態(誤った磁極位置)でモータ107の制御を行うと、異音が生じたり、あるいは速度指令Sを満足しないなどの現象が生じる。このような場合に、上記式12において計算される磁極位置差分Δθはゼロ以外の値となる。
そこで、図8のフローチャートに示すように、磁極位置差分Δθ<閾値θthを満足しない場合、つまり、θ1とθ2の差分Δθが予め設定された閾値θth以上であれば(ステップB20のNo)、磁極位置比較部1512は、駆動制御部1514へ制御禁止指令Cinhを出力する。駆動制御部1514は、この制御禁止指令Cinhを入力すると、速度制御用電流指令生成部1511に対して回転指令Crotを遮断することでモータ107の制御を禁止する(ステップB21)。
一方、磁極位置差分Δθ<閾値θthを満足する場合、つまり、θ1とθ2の差分Δθが予め設定された閾値θthより小さければ(ステップB20のYes)、磁極位置比較部1512から駆動制御部1514に対して制御禁止指令Cinhは出力されない。これにより、駆動制御部1514から速度制御用電流指令生成部1511へ回転指令Crotが出力され、モータ107の制御が開始される(ステップB22)。
以上のように第1の実施形態によれば、磁極位置θ1と磁極位置θ2とを比較することでより磁極位置の推定精度を高めてモータ107を正常に駆動制御することができ、外乱等の影響により正しい磁極位置を検出できなかった場合にはモータ107を安全に停止させることができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
上記第1の実施形態では、第一の磁極位置推定部111にて得られた磁極位置θ1と第二の磁極位置推定部1101にて得られた磁極位置θ2との差分Δθが閾値θthを超える場合に直ちにモータ107の制御を禁止するものとした。これに対し、第2の実施形態では、磁極位置θ1と磁極位置θ2との差分Δθが閾値θth以上の間場合に磁極位置の推定処理を所定回繰り返すようにしたものである。
図17は第2の実施形態に係る同期電動機の制御装置の磁極位置推定処理の繰り返し機構の構成を示すブロック図である。なお、図16の構成と同じ部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略するものとする。また、図示を省略するが、実際には図1および図12に示した構成要素がこの図17の構成の中にも同様に含まれているものとする。
本実施形態における同期電動機の制御装置には、外部記憶部1515と繰り返し判定部1516が備えられる。
外部記憶部1515には、磁極位置推定処理の繰り返し判定基準となる回数Nrpが記憶されている。なお、図17の例では、外部記憶部1513と外部記憶部1515が独立して設けられているが、1つの記憶部に閾値θthと回数Nrpを記憶しておくことでも良い。繰り返し判定部1516は、磁極位置比較部1512から制御禁止指令Cinh1を出力された場合に、上記回数Nrpに基づいて磁極位置推定処理を再度実行するか否かを判定する。
図18および図19は第2の実施形態における磁極位置の推定処理を示すフローチャートである。このうち、図18のステップA11〜A19は第一の磁極位置推定部111による磁極位置推定処理を示している。図19のステップB11〜B19は第二の磁極位置推定部1101による磁極位置推定処理を示している。
ここで、第2の実施形態では、磁極位置差分Δθ<閾値θthを満足しない場合、つまり、θ1とθ2の差分Δθが予め設定された閾値θth以上であれば(ステップB20のNo)、磁極位置比較部1512は、繰り返し判定部1516へ制御禁止指令Cinh1を出力する。繰り返し判定部1516は、この制御禁止指令Cinh1を入力すると、磁極位置推定処理の繰り返す回数がNrp回目に達しているか否かを判断する(ステップB23)。
Nrp回目に達していなければ(ステップB23のNo)、上記第1の実施形態で説明したように、第一の磁極位置推定部111による磁極位置推定処理と第二の磁極位置推定部1101による磁極位置推定処理が再度実行される。この結果、磁極位置差分Δθ<閾値θthを満足しない場合には、Nrp回を限度として、上記第一および第二の磁極位置推定処理が繰り返される。
この繰り返しの中で、磁極位置差分Δθ<閾値θthが成立した場合。つまり、θ1とθ2の差分Δθが予め設定された閾値θthより小さくなれば(ステップB20のYes)、繰り返し判定部1516は駆動制御部1514へ制御禁止指令Cinh2を出力せず、駆動制御部1514は速度制御用電流指令生成部1511へ回転指令Crotを出力して、モータ107の制御が開始される(ステップB22)。
一方、繰り返しの中で磁極位置差分Δθ<閾値θthが成立せず、磁極位置推定を繰返した回数がNrp回目に達すると、繰り返し判定部1516から制御禁止指令Cinh2が駆動制御部1514に出力される。駆動制御部1514は、この制御禁止指令Cinhを入力すると、速度制御用電流指令生成部1511に対して回転指令Crotを遮断することでモータ107の制御を禁止する(ステップB21)。
以上のように第2の実施形態によれば、磁極位置θ1と磁極位置θ2との比較結果に応じて第一および第二の磁極位置推定処理を繰り返すことで磁極位置を正しく検出できようになり、例えば外乱等の影響で磁極位置を検出できずにモータ107の運転を停止させてしまう事態を回避することができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態では、第一および第二の磁極位置推処理により磁極位置を検出できなかった場合に、磁極位置θ1を補正して第二の磁極位置推処理を再度実行するようにしたものである。
装置構成については上記第2の実施形態における図17と同様である。ここでは、図20および図21を参照して、第3の実施形態としての処理についてのみ説明する。
図20および図21は第3の実施形態における磁極位置の推定処理を示すフローチャートである。このうち、図20のステップA11〜A19は第一の磁極位置推定部111による磁極位置推定処理を示している。図21のステップB11〜B19は第二の磁極位置推定部1101による磁極位置推定処理を示している。
磁極位置差分Δθ<閾値θthを満足しない場合、つまり、θ1とθ2の差分Δθが予め設定された閾値θth以上であれば(ステップB20のNo)、磁極位置比較部1512は、繰り返し判定部1516へ制御禁止指令Cinh1を出力する。繰り返し判定部1516は、この制御禁止指令Cinh1を入力すると、磁極位置推定処理の繰り返す回数がNrp回目に達しているか否かを判断する(ステップB23)。
ここで、第3の実施形態では、磁極位置推定処理の繰り返す回数がNrp回目に達していない場合に(ステップB23のNo)、繰り返し判定部1516では、次の式13によって磁極位置θ1を補正し(ステップB24)、その補正後の磁極位置θ1’を初期値として第二の磁極位置推定部1101にセットする(ステップB25)。
θ1’=θ2+sign(θ1−θ2)*θo (式13)
θ1は第一の磁極位置推定部111によって得られた磁極位置、θ2は第二の磁極位置推定部1101によって得られた磁極位置、θoは例えば30度などの所定値、signは括弧内の値が正であれば1、負であれば(−1)を返す関数である。第二の磁極位置推定部1101では、上記式13で得られた補正後の磁極位置θ1’を初期値として第二の磁極位置推定処理を再度実行する。
このように、磁極位置差分Δθ<閾値θthを満足しない場合に、補正後の磁極位置θ1’を用いて第二の磁極位置推定処理を再度実行することで、制御対象とするモータ107やインバータ105の特性で発生する特徴量の乱れを起因とした磁極位置の誤推定を回避することができる。
すなわち、Δθが図14に示したような理想的な特徴を示さずに、例えば図22のように60°周期で理想値から外れるような場合に、真の磁極位置を0°とし、θth=15°、θo=30°に設定したとする。
ここで、最初の第一の磁極位置推定処理および第二の磁極位置推定処理によって、θ1=12°,θ2=28°が得られたとすると、上記式12により、
Δθ=|θ1−θ2|=16°
となる。
つまり、位相差Δθが閾値θth=15°より大きい値となるため、第二の磁極位置推定処理をやり直すことになる。このとき、補正後の磁極位置θ1’は、上記式13により、以下のような値となる。
θ1’=28°+(−1)*30°
=−2°
このθ1’を初期値として、第二の磁極位置推定処理を実施することになる。この場合、第二の磁極位置推定処理の1回目は12°の位置からスタートしたが、2回目は−2°の位置からスタートすることになる。これにより、図22に示した位相差Δθの波形もずれることになるので、30°の特異点に収斂結果(特徴量ゼロ)が得られることを回避できる。
この結果、磁極位置差分Δθ<閾値θthでなければ、再び、第2の磁極位置推定が繰り返される。この繰り返しの中で、磁極位置差分Δθ<閾値θthが成立した場合、つまり、θ1とθ2の差分Δθが予め設定された閾値θthより小さくなれば、繰り返し判定部1516は駆動制御部1514へ制御禁止指令Cinh2を出力せず、駆動制御部1514は速度制御用電流指令生成部1511へ回転指令Crotを出力して、モータ107の制御が開始される。
一方、繰り返しの中で磁極位置差分Δθ<閾値θthが成立せず、磁極位置推定を繰返した回数がNrp回目に達すると、繰り返し判定部1516から制御禁止指令Cinh2が駆動制御部1514に出力される。駆動制御部1514は、この制御禁止指令Cinhを入力すると、速度制御用電流指令生成部1511に対して回転指令Crotを遮断することでモータ107の制御を禁止する。
以上のように第3の実施形態によれば、磁極位置θ1と磁極位置θ2との比較結果に応じて磁極位置θ1を補正して第二の磁極位置推定処理を再度実行することで、モータ107やインバータ105の特性で発生する特徴量の乱れを起因とした磁極位置の誤推定を回避して、正しい磁極位置を検出することができる。
なお、第2の実施形態と第3の実施形態を組み合わせることも可能である。例えば、第3の実施形態で第二の磁極位置推定処理を2回繰り返した場合は、第2の実施形態で第一の磁極位置推定処理からやり直し、第二の磁極位置推定処理を2回繰返す。この繰り返しを3回実施した場合はモータ107の駆動を停止する。これにより、磁極位置の誤推定とモータ制御の停止の回避をより強化することが可能である。
特にエレベータの巻上機に用いられる同期電動機にあっては、磁極位置の誤推定によって異音の異常が発生することは回避しなければならず、また、モータ制御の停止により運転サービスが中断することも避けなければならないため、磁極位置を確実に検出してモータ制御を開始することのできる本実施形態の手法は有効である。
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、磁気的突極性を有しない、もしくは磁気的突極性が低い同期電動機において、外乱等の影響を受けて磁極位置の推定精度が悪化した場合に電動機の制御を停止させるか、電動機の制御を行うに十分な精度が得られるように再度推定を行うようにした同期電動機の制御装置を提供することができる。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
101…バイアス電流指令生成部、102…電流制御部、103a…座標変換部(αβ/UVW)、103b…座標変換部(UVW/αβ)、104…三角波PWM変調部、105…インバータ、106aおよび106b…電流検出部、107…モータ、108…ブレーキ、109…磁極位置検出部、110…高周波電流検出部、111…第一の磁極位置推定部、112…バイアス電流位相角指令生成部、113…高周波電圧重畳部、201a、201b、201c…固定子コイル、202…αβ軸固定座標系、203…dq軸回転座標系、204…回転子、801…ステータ、802…ロータ、1101…第二の磁極位置推定部、1102a…座標変換部(st/UVW)、1102b…座標変換部(UVW/st)、1201…st軸回転座標系、1401および1402…ゲイン乗算器、1403および1404…積分器、1405…収斂判定器、1511…速度制御用電流指令生成部、1512…磁極位置比較部、1513…外部記憶部、1514…駆動制御部、1515…外部記憶部、1516…繰り返し判定部。

Claims (6)

  1. 所定の大きさで位相が0から360度まで変化するバイアス電流を同期電動機に流し、上記バイアス電流の電流動作点近傍に電流変化が発生するように印加した高周波電圧と、上記高周波電圧に対応して流れる高周波電流とに基づいて、バイアス電流と同位相の方向のインダクタンス相当値を求め、上記インダクタンス相当値が極値となるバイアス電流位相を第一の磁極位置として推定する第一の磁極位置推定手段と、
    この第一の磁極位置推定手段によって推定された第1の磁極位置を初期位相として所定の大きさのバイアス電流を流し、上記バイアス電流の動作点近傍に電流変化が発生するように印加した高周波電圧と上記高周波電圧に対応して流れる高周波電流とに基づいてバイアス電流位相と磁極位置との位相差に関連する特徴量を演算し、上記特徴量が所定値に収斂するようバイアス電流位相を修正する収斂演算を行い、その収斂結果として得られるバイアス電流位相を第二の磁極位置として推定し、この第二の磁極位置を上記同期電動機の磁極位置として決定する第二の磁極位置推定手段と、
    上記第一の磁極位置推定手段によって推定された第一の磁極位置と上記第二の磁極位置推定手段によって推定された第二の磁極位置との差分に基づいて上記同期電動機の駆動を制御する駆動制御手段と
    を具備したことを特徴とする同期電動機の制御装置。
  2. 上記駆動制御手段は、
    上記第一の磁極位置と上記第二の磁極位置との差分が予め設定された閾値より小さい場合には上記同期電動機の制御を開始し、上記第一の磁極位置と上記第二の磁極位置との差分が上記閾値以上の場合には上記同期電動機の制御を禁止することを特徴とする請求項1記載の同期電動機の制御装置。
  3. 上記駆動制御手段は、
    上記第一の磁極位置と上記第二の磁極位置との差分が予め設定された閾値以上の場合に、上記第一および第二の磁極位置推定手段による磁極位置の推定処理を繰り返し実行させることを特徴とする請求項1記載の同期電動機の制御装置。
  4. 上記駆動制御手段は、
    予め設定された回数を限度として、上記第一および第二の磁極位置推定手段による磁極位置の推定処理を繰り返し実行させ、上記回数に達しても上記第一の磁極位置と上記第二の磁極位置との差分が上記閾値以上の場合には上記同期電動機の制御を禁止することを特徴とする請求項3記載の同期電動機の制御装置。
  5. 上記駆動制御手段は、
    上記第一の磁極位置と上記第二の磁極位置との差分が予め設定された閾値以上の場合に、上記第二の磁極位置に所定値を加えて補正し、その補正後の磁極位置を初期位置として上記第二の磁極位置推定手段による磁極位置の推定処理を繰り返し実行させることを特徴とする請求項1記載の同期電動機の制御装置。
  6. 上記駆動制御手段は、
    予め設定された回数を限度として、上記第二の磁極位置推定手段による磁極位置の推定処理を繰り返し実行させ、上記回数に達しても上記第一の磁極位置と上記第二の磁極位置との差分が上記閾値以上の場合には上記同期電動機の制御を禁止することを特徴とする請求項5記載の同期電動機の制御装置。
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