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JP5408560B2 - サイズ剤組成物、抄紙方法、及び板紙の製造方法 - Google Patents

サイズ剤組成物、抄紙方法、及び板紙の製造方法 Download PDF

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JP5408560B2 JP2012532177A JP2012532177A JP5408560B2 JP 5408560 B2 JP5408560 B2 JP 5408560B2 JP 2012532177 A JP2012532177 A JP 2012532177A JP 2012532177 A JP2012532177 A JP 2012532177A JP 5408560 B2 JP5408560 B2 JP 5408560B2
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Description

本発明は、サイズ剤組成物、抄紙方法、及び板紙の製造方法に関し、詳しくは、置換コハク酸無水物を主成分とするサイズ剤組成物、及びこのサイズ剤組成物を用いた抄紙方法及び板紙の製造方法に関する。
アルケニルコハク酸無水物(以下、ASAと略すことがある)は、製紙分野において紙に耐水性を付与するサイズ剤として広く使用されている。同じくアルキルケテンダイマーに代表される2−オキセタノン化合物もサイズ剤として使用されているが、ASAは2−オキセタノン化合物よりも抄造直後のサイズ度が優れ、また古紙パルプや機械パルプに対してサイズ効果が優れる特長を有する。実際の製紙工程において、ASAは水媒体中に乳化分散したエマルションとして使用される。ASAは常温あるいは加温状態で油状物質であるので、乳化分散剤および高速攪拌機を用いた従来公知の乳化方法により乳化することができる(例えば特許文献1参照)。
ASAを乳化させるための乳化分散剤として、例えば、カチオン化澱粉糊液(例えば特許文献1、2参照)、ビニル系や(メタ)アクリルアミド系のカチオン性ポリマー(例えば、特許文献3、4参照)、(メタ)アクリルアミドを含むモノマー類をカチオン化澱粉にグラフト重合させたグラフト化カチオン化澱粉(例えば、特許文献5参照)、両性アクリルアミド系ポリマー(例えば、特許文献6、7参照)が提案されている。
しかしながら、上記の乳化分散剤を用いてもASAは、水分との接触による加水分解を起こし易く、紙へのサイズ効果の低下を起こすばかりでなく、加水分解によって生じたASA加水分解物はその粘着性の高さから製紙工程の汚れの原因になり易い。
ASAを乳化分散した乳化分散液の品質を改良する他の方法として、特定の化学構造を有するASAを使用する方法(例えば、特許文献8参照)、ASAに相溶する疎水性物質を併用する方法(例えば、特許文献9参照)やASAと2−オキセタノン化合物とを含有するサイジング分散液を使用する方法(例えば、特許文献10参照)が提案されている。
また、特許文献11には、「セルロース反応性サイズ剤と非セルロース反応性サイズ剤とを含む高温の過酸化水素による浸透に対して液体包装厚紙の切り口の抵抗性を向上させるためのサイジング混合物において、それが、セルロース繊維に共有接合し、自己架橋することのできる熱硬化性樹脂を含有し、前記非セルロース反応性サイズ剤が・・・又は脂肪酸誘導体であることを特徴とするサイジング混合物」が記載されている(特許文献11の特許請求の範囲参照)。特許文献11では、「セルロース反応性サイズ剤と非セルロース反応性サイズ剤」について「セルロース反応性サイジング剤としては、・・・、アルケニルコハク酸無水物が挙げられ」(特許文献11の段落番号0027参照)、「最も好ましい非反応性サイズ剤は、脂肪酸エステルであり、特に、・・・天然脂肪酸のグリセロールトリエステル(グリセリド)である」(特許文献11の段落番号0031参照)と、開示されている。
また、特許文献11に開示された実施例では、非セルロース反応性サイズ剤である脂肪酸エステルとして、C16〜C18脂肪酸のグリセロールトリエステル(実施例1の表1、実施例3の表3及び表4参照)、C22脂肪酸のグリセリルトリエステル(実施例3の表3参照)、C18脂肪酸のグリセリルトリエステル(実施例3の表4参照)が具体的に示され、グリセリルトリエステル以外の脂肪酸エステルについての実施例がない。
特許文献11には、エマルションの安定性に優れ、使用時に汚れの発生を起こし難いサイズ剤組成物を提供するという課題の開示がなく、サイズ効果の観点から非セルロース反応性サイズ剤として機能しうる融点が高いグリセロールトリエステルとセルロース反応性サイズ剤とを含むサイジング混合物を開示しているに過ぎない。
また、一般に古紙から板紙を抄造する場合、硫酸バンドや硫酸により抄紙pHを酸性にして製造していた。これは一般的に用いられているロジン系サイズ剤の効果を効率良く得る為である。
しかしながら、近年、環境問題から抄紙系はクローズド化が進み、硫酸バンドに由来する硫酸イオンの蓄積によるマシンの腐食が問題となった。また、古紙中の炭酸カルシウム含有量が近年は増えており、抄紙系のpHが下がり難く、そのため硫酸バンドの使用量が増大している。このクローズド化による硫酸イオンの増加と炭酸カルシウム含有量の増加により、硫酸バンドと炭酸カルシウムとの反応物である硫酸カルシウム(石膏)が抄紙系内で増加し、これが抄紙工程で析出する事によるスケールトラブルが多発している。
さらに最近、抄紙工程において合成系のピッチによるトラブルが増加している。合成系のピッチは古紙から持ちこまれるインキビヒクル、コート紙用のバインダーに用いられるラテックス類、ガムテープやラベルに用いられる粘着物質、書籍・雑誌類の背糊として使用されるホットメルト接着剤などに由来する物質である。ピッチは抄紙装置内部や用具類に付着して搾水不良や断紙などを引き起こし、紙の生産性を低下させる。また、集塊化したピッチは、紙面上にピンホールやピッキングなどを生じさせるだけでなく、塗工時や印刷時におけるトラブルを招き、紙の品質が著しく損なわれる原因となる。
現在、板紙の製造において一般的な抄紙pHは5〜6.5である。これは上記の問題を回避する為に従来の酸性抄紙から硫酸バンドの添加量を減らした為であり、また炭酸カルシウムの含有量が増加したため抄紙pHが上がってきた為でもある。
前記した問題を回避するためにピッチコントロール剤を使用する等が提案されている(例えば、特許文献12参照)。しかし、ピッチコントロール剤のみで解決することは不十分であった。
これらを改良する方法として(1)pH6.5〜8.5、(2)アルカリ度50〜400ppm、(3)電導度50〜250mS/m、のパルプスラリーを用い、(4)内添サイズ剤をパルプスラリーに添加して抄紙を行うことを特徴とする板紙の製造方法が提案されている(例えば、特許文献13参照)が、未だ不十分であった。
米国特許3821069号公報(特開昭49−94907号公報) 特公昭39−002305号公報 特開昭60−246893号公報 特公平6−33597号公報 特開平9−111692号公報 特公平3−4247号公報 特開昭58−45731号公報 特開平6−248596号公報(特許第2915241号公報) 米国特許第6576049号公報 特許第3834699号公報 特開平6−220795号公報 米国特許第4765867号公報 特開2007−186822号公報
本発明の課題は、エマルションの分散安定性に優れ、抄紙系での汚れの発生を起こし難いサイズ剤組成物を提供することである。
本発明の別の課題は、抄紙系での汚れの発生を起こし難い抄紙方法を提供することである。
本発明のさらに別の課題は、抄紙系での汚れの発生を低減することによりスケールトラブル及びピッチトラブルを防止することができ、サイズ効果の優れる板紙を提供することのできる板紙の製造方法を提供することである。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、置換コハク酸無水物と特定の脂肪酸エステルとを特定の割合で混合することにより、エマルションの安定性に優れ、抄紙系での汚れの発生を起こし難いサイズ剤組成物及び抄紙方法が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、このサイズ剤組成物を特定のパルプスラリーに添加して抄紙を行うことで、抄紙系での汚れの発生を低減することによりスケールトラブル及びピッチトラブルを防止することができ、サイズ効果の優れる板紙を提供することのできる板紙の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、前記課題を解決する手段は、
<1> (A)1気圧及び20℃の条件下で液状であり、かつ下記の式(1)の構造式に示される脂肪酸エステル及び(B)置換コハク酸無水物の混合物を被乳化体とし、かつ、
前記(A)脂肪酸エステルと前記(B)置換コハク酸無水物との質量比[(A):(B)]が50:50〜10:90であることを特徴とするサイズ剤組成物である。
−COO−R・・・式(1)
(但し、式中のRは炭素数5〜30のアルキル基又はアルケニル基を示し、式中のRは炭素数1〜30のアルキル基を示し、RとRとは同一であっても異なっていてもよい。)
前記<1>のサイズ剤組成物の好適な態様は、
<2> (A)脂肪酸エステルは、前記式(1)におけるRの炭素数が4〜30である。
別の前記課題を解決する手段は、
<3> 前記<1>のサイズ剤組成物を用いて抄紙系内の汚れを低減する抄紙方法である。
さらに別の前記課題を解決する手段は、
<4>(1)pHが6.5〜8.5、
(2)アルカリ度が50〜400ppm、及び
(3)電導度が50〜250mS/m
であるパルプスラリーに、
(4)前記<1>に記載のサイズ剤組成物
を添加して抄紙を行うことを特徴とする板紙の製造方法である。
前記<4>の板紙の製造方法の好適な態様は、
<5> (A)脂肪酸エステルは、前記式(1)におけるRの炭素数が4〜30である。
<6> 前記<4>又は前記<5>に記載の板紙の製造方法において、ピッチコントロール剤を前記<4>に記載のパルプスラリーに添加することを特徴とする。
<7> 前記<4>〜前記<6>のいずれか一つに記載の板紙の製造方法において、紙力剤としてポリアクリルアミド系重合体及び/又は澱粉類を前記<4>に記載のパルプスラリーに添加することを特徴とする。
この発明によると、エマルションの分散安定性に優れ、抄紙系での汚れの発生を起こし難いサイズ剤組成物を提供することができる。
この発明によると、抄紙系での汚れの発生を起こし難い抄紙方法を提供することができる。
この発明によると、抄紙系での汚れの発生を低減することによりスケールトラブル及びピッチトラブルを防止することができ、サイズ効果の優れる板紙を製造することのできる板紙の製造方法を提供することができる。
この発明のサイズ剤組成物は、(A)1気圧及び20℃の条件下で液状であり、特定の構造式で示される脂肪酸エステルと(B)置換コハク酸無水物とを特定の割合で含有する。
前記(B)置換コハク酸無水物としては、コハク酸無水物におけるメチレン基の水素がアルキル基又はアルケニル基に置換した化合物を挙げることができ、好ましくはアルケニルコハク酸無水物を挙げることができ、更に好ましくは1気圧及び25℃の条件下で液状であるアルケニルコハク酸無水物を挙げることができ、特に好ましくは炭素数16以上24以下の内部オレフィンと無水マレイン酸との付加反応生成物である内部アルケニルコハク酸無水物を挙げることができる。ここで内部オレフィンとは、α−オレフィン(二重結合の位置がオレフィンの1位と2位の炭素を結ぶ位置にあるオレフィン)ではなく、二重結合がα位より炭素鎖の内部に存在するオレフィンを言う。また、内部アルケニルコハク酸無水物と称するときの「内部アルケニル」とは二重結合の位置がα位より炭素鎖の内部に存在するアルケニル基を言う。
内部アルケニルコハク酸無水物としては、具体的には、内部ヘキサデセニルコハク酸無水物、内部オクタデセニルコハク酸無水物、内部イコセニルコハク酸無水物、内部ドコセニルコハク酸無水物、内部テトラコセニルコハク酸無水物等が挙げられ、これらは単独で使用しても良いし、複数種の内部アルケニルコハク酸無水物を併用しても良い。また、複数種の内部オレフィンとコハク酸無水物とを反応させることによって形成されるところの、複数種の内部異性化アルケニルコハク酸無水物を含有する混合物もまた、好適な内部アルケニルコハク酸無水物として採用することができる。
炭素数が16以上24以下であるオレフィンが置換するアルケニルコハク酸無水物は、サイズ剤組成物の紙へのサイズ付与効果が優れるので、好ましい。また内部オレフィンを含むオレフィンと無水マレイン酸との付加反応生成物であるアルケニルコハク酸無水物であると、アルケニルコハク酸無水物が加水分解し難くなり、サイズ剤組成物の紙へのサイズ付与効果の低下が少なくなるので、好ましい。
アルケニルコハク酸無水物における内部オレフィンのα位(1位の炭素と2位の炭素を結ぶ位置)より内部に二重結合が存在することは、オレフィンのH−NMRによる分析において、5.4ppm付近に内部オレフィン由来のピークがあることで確認できる。また逆に、アルケニルコハク酸無水物にα−オレフィンが置換していることは、オレフィンのH−NMRによる分析において、5.0ppm付近および5.8ppm付近にα−オレフィン由来のピークがあることで確認できる。また、上記ピークの積分値を基にα−オレフィンが置換したアルケニルコハク酸無水物と内部オレフィンが置換したアルケニルコハク酸無水物との質量比率を求めることも可能である。
コハク酸無水物と付加反応させる内部オレフィンは、通常の有機合成法により合成することができるが、例えば、シリカ・アルミナ系触媒を用いてα−オレフィンを内部異性化することで得ることができる。通常の有機合成法によりα−オレフィンを内部異性化して得られる内部異性化オレフィンは、二重結合の位置が炭素鎖の2位、3位等の様々な位置に形成されてなる内部オレフィンの混合物となっているが、この発明においては、異性化反応により形成された内部オレフィンの混合物である内部異性化オレフィンにあっては、その内部オレフィンの具体的な二重結合の位置が特定されなくてもよく、内部オレフィンの混合物である限りその混合物に含まれる各内部オレフィンが特定されなくても良い。各種の内部オレフィンが含まれている内部異性化オレフィンにあっては、α−オレフィンの含有量は10質量%以下であることが好ましい。
上記オレフィンに無水マレイン酸を付加させ、アルケニルコハク酸無水物を得る方法としては、通常の有機合成法が適用できる。例えば、窒素雰囲気下210℃に加熱したオレフィンに無水マレイン酸を徐々に加え、6〜10時間攪拌することでアルケニルコハク酸無水物を得ることができる。
前記(A)脂肪酸エステルは、1気圧及び20℃の条件下で液状であり、かつ、下記の式(1)の構造式で示される。
−COO−R・・・式(1)
(但し、式中、Rは炭素数5〜30のアルキル基又はアルケニル基であり、好ましくは炭素数8〜24のアルキル基又はアルケニル基であり、Rは炭素数1〜30のアルキル基であり、好ましくは、炭素数4〜30、更に好ましくは、炭素数4〜24のアルキル基であり、RとRとは同一であっても異なっていてもよい。)
サイズ剤組成物は、式(1)の構造式に示される脂肪酸エステルの1種のみを含有してもよいし、2種以上の脂肪酸エステルを含有してもよい。また、前記脂肪酸エステルが1気圧及び20℃の条件下で液状とは、1気圧及び20℃の条件下における粘度が100mPa・S以下であることである。
1気圧及び20℃の条件下で液状でない脂肪酸エステルは、置換コハク酸無水物と混合するために長時間の加熱撹拌操作が必要であったり、置換コハク酸無水物と均一に混合しても1気圧及び20℃の条件下で保管中に脂肪酸エステルが固体として析出しやすかったり、置換コハク酸無水物と脂肪酸エステルとの混合物のエマルションが不安定となりやすく凝集や分離などを起こしたりする、といった不都合があり、この発明の課題を達成することができない。また、上記式(1)の構造式を有しない脂肪酸エステルであるジエステル、トリエステル(油脂)は置換コハク酸無水物の加水分解が速く、抄紙系内で汚れが発生し易いといった不都合があり、この発明の課題を達成することができない。
前記脂肪酸エステルは飽和脂肪酸とアルキルアルコールとのエステルである。前記飽和脂肪酸としてカプロン酸(炭素数6)、エナント酸(炭素数7)、カプリル酸(炭素数8)、ペラルゴン酸(炭素数9)、カプリン酸(炭素数10)、ウンデカン酸(炭素数11)、ラウリン酸(炭素数12)、トリデカン酸(炭素数13)、ミリスチン酸(炭素数14)、ペンタデシル酸(炭素数15)、パルミチン酸(炭素数16)、マルガリン酸(炭素数17)、ステアリン酸(炭素数18)、イソステアリン酸(炭素数18)、ツベルクロステアリン酸(炭素数19)、アラキジン酸(炭素数20)、及びべへン酸(炭素数22)等を挙げることができ、不飽和脂肪酸エステルとしてカプロレイン酸(炭素数10)、リンデル酸(炭素数12)、ミリストレイン酸(炭素数14)、パルミトレイン酸(炭素数16)、オレイン酸(炭素数18)、リノール酸(炭素数18)、リノレン酸(炭素数18)、エイコセン酸(炭素数20)、セトレン酸(炭素数22)及びエルシン酸(炭素数22)等を挙げることができる。これらの中でも、炭素数8〜18である脂肪酸、例えばカプリル酸(炭素数8)、カプリン酸(炭素数10)、ラウリン酸(炭素数12)、ミリスチン酸(炭素数14)、パルミチン酸(炭素数16)、ステアリン酸(炭素数18)、オレイン酸(炭素数18)、リノール酸(炭素数18)が好ましい。アルキルアルコールとしては、前記のメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、2−メチルブチルアルコール、1−メチルブチルアルコール、ネオペンチルアルコール、1,2−ジメチルプロピルアルコール、1−エチルプロピルアルコール、n−ヘキシルアルコール、4−メチルペンチルアルコール、3−メチルペンチルアルコール、2−メチルペンチルアルコール、1−メチルペンチルアルコール、3,3−ジメチルブチルアルコール、2,2−ジメチルブチルアルコール、1,1−ジメチルブチルアルコール、1,2−ジメチルブチルアルコール、1,3−ジメチルブチルアルコール、2,3−ジメチルブチルアルコール、2−エチルブチルアルコール、1−エチルブチルアルコール、1−エチル−1−メチルプロピルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール、n−ウンデシルアルコール、n−ドデシルアルコール、n−トリデシルアルコール、n−テトラデシルアルコール、n−ペンタデシルアルコール等のアルキルアルコールを挙げることができ、炭素数4〜16のアルキルアルコールが好ましい。
これらの脂肪酸エステルは、置換コハク酸無水物と混合する際に短時間の緩やかな撹拌で均一な混合状態となり、また混合物を25℃で保管しても長期間にわたり均一な状態を保つことができ、更に置換コハク酸無水物と脂肪酸エステルとの混合物のエマルションの保存安定性が優れる、という利点があるので好ましい。
本発明のサイズ剤組成物は、上記(A)脂肪酸エステルと上記(B)置換コハク酸無水物とを特定の割合で混合した混合物を乳化することにより得られる。脂肪酸エステルと置換コハク酸無水物との混合割合は、質量比で脂肪酸エステル:置換コハク酸無水物=50:50〜10:90の範囲である。上記範囲よりも脂肪酸エステルが多いと、置換コハク酸無水物単独の場合よりもサイズ効果が劣り好ましくなく、上記範囲よりも脂肪酸エステルが少ないとサイズ効果、エマルションの安定性および抄紙系での汚れ低減に効果が見られず好ましくない。
本発明における脂肪酸エステルおよび置換コハク酸無水物は、互いに相溶性に優れ、双方が液状であればいかなる温度条件でも混合することができるが、100℃以下で加熱混合することが好ましい。100℃より高温になると熱による変質で変色したりサイズ剤としての効果が低下したりするおそれがある。また、混合する際は置換コハク酸無水物と脂肪酸エステルとの両者が攪拌中に空気中の水分で加水分解し、または変性することを防ぐため、乾燥空気、窒素、アルゴン等の水分を含まない雰囲気下で混合することが好ましい。
本発明のサイズ剤組成物は、作業性から少なくとも前記脂肪酸エステルと前記置換コハク酸無水物とが水に分散してなる水分散性サイズ剤として使用することが好ましい。水分散性サイズ剤は必要に応じて界面活性剤や各種水性高分子分散剤を用い、公知の乳化方法にて乳化分散することにより調製可能である。なお、水分散性サイズ剤の調製は置換コハク酸無水物の加水分解による性能低下を最小限にする目的から、使用直前にサイズ剤組成物を水に分散したり、ポンプで連続的に乳化装置に送って水分散性サイズ剤を調製し、連続的に使用したりすることが好ましい。
本発明において、置換コハク酸無水物と脂肪酸エステルとの混合物に更に界面活性剤を混合した混合物を乳化することが、乳化性を改善すること、抄紙用具に汚れが付着し難いことから好ましい。前記のように置換コハク酸無水物と脂肪酸エステルとの混合物に添加する界面活性剤(以下、混合用界面活性剤と略することがある)の使用量は、置換コハク酸無水物と脂肪酸エステルとの合計100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましい。混合用界面活性剤の量が多すぎると、置換コハク酸無水物と脂肪酸エステルと界面活性剤との混合物の保管時に混合物が空気中の水分を吸収しやすくなるため、置換コハク酸無水物の加水分解を促進する場合があり、加水分解物である置換コハク酸が抄紙用具の汚れとサイズ性能の低下をもたらすおそれがある。混合用界面活性剤の量が少なすぎると混合用界面活性剤を置換コハク酸無水物と脂肪酸エステルとの混合物に混合することによる前記利点が十分に発揮されないおそれがある。
混合用界面活性剤としては、従来公知のカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤を挙げることができる。混合用界面活性剤としては、これらのうちの1種又は2種以上を使用してもよい。
前記カチオン性界面活性剤としては、たとえば長鎖アルキルアミン塩、変性アミン塩、テトラアルキル4級アンモニウム塩、トリアルキルベンジル4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルキノリウム塩、アルキルスルホニウム塩等が挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、たとえば各種ベタイン系界面活性剤が挙げられる。
前記アニオン性界面活性剤としては、たとえばアルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアラルキルアリール硫酸エステル塩、アルキル−アリールスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキル燐酸エステル塩および各種スルホコハク酸エステル系界面活性剤等が挙げられる。
前記ノニオン性界面活性剤としては、脂肪酸ソルビタンエステルおよびそのポリアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸ポリグリコールエステル、各種ポリアルキレンオキサイド型ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン脂肪族アミン、ポリオキシエチレン脂肪族メルカプタン、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンアラルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェノールエーテル燐酸エステル等)等が挙げられる。
これらの中でもアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましく、具体的には、スルホコハク酸ジアルキルナトリウム塩またはポリオキシアルキレンアルキルエーテル燐酸エステルが好ましい。
混合用界面活性剤は置換コハク酸無水物と脂肪酸エステルとの混合時に同時に混合してもよいし、乳化直前に置換コハク酸無水物と脂肪酸エステルとの混合物に連続混合してもよいが、予め置換コハク酸無水物と脂肪酸エステルとの混合物に混合しておくことが好ましい。
本発明にて乳化によりサイズ剤組成物を得るに際して、乳化物であるサイズ剤組成物の分散安定性が優れることから水性高分子分散剤を使用することが好ましい。
水性高分子分散剤としては、水溶性の各種合成高分子、天然高分子が挙げられ、具体的には、澱粉類、アクリルアミド系ポリマー類、澱粉グラフトアクリルアミド系ポリマー、ポリビニルアルコール類、カルボキシメチルセルロース類、ガム類、カゼインなどが挙げられる。これらの中でも澱粉類、アクリルアミド系ポリマー、澱粉グラフトアクリルアミド系ポリマー、カルボキシメチルセルロース類、ポリビニルアルコール類が好ましい。
水性高分子分散剤の重量平均分子量は、10,000以上10,000,000以下が好ましい。10,000より重量平均分子量が小さい場合、乳化性および分散安定性が低下するおそれがある。10,000,000より重量平均分子量が大きい場合は水性高分子分散剤の粘度が増加し、取り扱いが困難になるおそれがある。
前記澱粉類として、例えばトウモロコシ、小麦、馬鈴薯、米、タピオカ、モチトウモロコシ等の生澱粉およびそれらの澱粉に、一級、二級、第三級の各アミノ基及び四級アンモニウム基からなる群から選ばれる少なくとも一種の塩基性窒素を含有させたカチオン性澱粉が挙げられる。また上記カチオン性澱粉にアニオン性基(例えば、リン酸エステル基等)を導入した両イオン性澱粉も使用可能である。その他、酸化澱粉、ジアルデヒド澱粉、アルキルエーテル化澱粉、リン酸澱粉、尿素リン酸澱粉、疎水変性澱粉等が挙げられる。
前記アクリルアミド系ポリマー類として、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミド、即ち(メタ)アクリルアミドを50モル%以上含有する、カチオン性基及び/又はアニオン性基を有しても良い水溶性ポリマーを挙げることができる。このアクリルアミド系ポリマーは、例えば、(メタ)アクリルアミドを主成分とする水溶性ポリマーを変性することによってイオン性基を導入する変性方法により、あるいは(メタ)アクリルアミドと必要に応じてカチオン性モノマー、アニオン性モノマー及び他のビニル系モノマーとを含有するモノマー混合物を従来公知の方法で重合させる共重合方法により、更にはこれら両方の方法の組み合わせ等によって得ることができる。
前記変性方法による場合、前記水溶性ポリマーへのカチオン性基の導入には、ホフマン変性反応、マンニッヒ反応及びポリアミンによるアミド交換反応が利用され、他方前記水溶性ポリマーへのアニオン性基の導入には、加水分解反応等が利用できる。
前記カチオン性モノマーとしては、モノ−あるいはジ−アルキルアミノアルキルアクリレート、モノ−あるいはジ−アルキルアミノアルキルメタクリレート、モノ−あるいはジ−アルキルアミノアルキルメタクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、モノ−あるいはジ−アリルアミン及びそれらの混合物、更にはこれらの4級アンモニウム塩などを例示することができる。
前記アニオン性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸類、あるいはこのほかスルホン酸基やリン酸基を有する公知の各種重合性モノマー類を例示することができる。
前記他のビニル系モノマーとしては、(メタ)アクリルアミドなどと共重合可能なN−メチロールアクリルアミド、メチレン(ビス)アクリルアミド、2官能性モノマー、3官能性モノマー、4官能性モノマーなどの架橋性ビニルモノマーや、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニルなどのノニオン性ビニルモノマーも併用可能である。
前記アクリルアミド系ポリマー類の製造法としては、従来公知の各種方法により行うことができる。例えば、攪拌機、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に構成成分であるビニルモノマーと水とを仕込み、重合開始剤として過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、アンモニウムハイドロパーオキサイドなどの過酸化物、或いはこれらの過酸化物と重亜硫酸ソーダなどの還元剤との組み合わせからなる任意のレドックス開始剤、更には2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)二塩酸塩のような水溶性アゾ系開始剤などを使用し、反応温度40〜95℃で1〜5時間反応させてアクリルアミド系ポリマー類を得ることができる。
前記澱粉グラフトアクリルアミド系ポリマーは、澱粉類の存在下に前記アクリルアミド系ポリマー類を形成し得るモノマー類をグラフト重合させて調製される。
例えば、カチオン性澱粉水溶液中において、(a)カチオン性基含有モノマー、(b)アニオン性基含有モノマーおよび(c)(メタ)アクリルアミドを含有するモノマー混合物を共重合して得ることができる。
前記カチオン性基含有モノマー(a)の具体例としては、モノ−或いはジ−アルキルアミノアルキルアクリレート、モノ−或いはジ−アルキルアミノアルキルメタアクリレート、モノ−或いはジ−アルキルアミノアルキルアクリルアミド、モノ−或いはジ−アルキルアミノアルキルメタアクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、モノ−或いはジ−アリールアミン及びそれらの混合物、更にそれらの第4級アンモニウム塩等を例示することができる。また前記アニオン性基含有モノマー(b)としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸類のほか、スルホン酸基やリン酸基を有する公知の各種重合性モノマー類等が使用可能である。上記の変性や共重合の反応は、公知の反応操作に従うもので、適当な反応条件を任意に選択できる。
その他の水溶性ポリマーとしては、カルボキシメチルセルロース類、ポリビニルアルコール類、デキストリン類、キトサン類なども使用可能である。
水性高分子分散剤の濃度、添加量は特に制限はなく、用途に応じて添加量、濃度を変更することができるが、前記脂肪酸エステルと前記置換コハク酸無水物との合計質量に対して0.1〜4倍を添加することが好ましい。
更に乳化によりサイズ剤組成物を得るに際して、水性高分子分散剤に界面活性剤を併用することが、よりサイズ剤組成物の乳化性と得られたエマルションの安定性が向上することから好ましい。
乳化によりサイズ剤組成物を得るに際して用いる界面活性剤(以下において、乳化用界面活性剤と称することがある。)としては、前記従来公知のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤を挙げることができる。乳化用界面活性剤は、これらのうちの1種又は2種以上を使用してもよい。
前記界面活性剤の中でも、本発明の乳化用界面活性剤としてはノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤が好ましい。
前記乳化用界面活性剤の濃度、添加量は特に制限はなく、用途に応じて添加量、濃度を変更することができるが、前記脂肪酸エステルと前記置換コハク酸無水物との合計に対する比で0.3〜3質量%を使用することによりサイズ剤組成物の乳化性、得られたエマルションの安定性が向上するため、好ましい。
乳化用界面活性剤は予め水性高分子分散剤に混合してもよいし、また、乳化時に水性高分子分散剤に連続混合してもよいが、予め水性高分子分散剤に混合しておくことが好ましい。
乳化装置としては、本発明のサイズ剤組成物に含まれる置換コハク酸無水物と脂肪酸エステルと必要に応じて用いられる界面活性剤や各種水性高分子分散剤および水とからサイズ剤組成物の分散液を調製することが可能であれば特に制限はなく、スタティックミキサー、ベンチュリーミキサー、ブレンダー、ホモミキサー、高圧・高速吐出ホモジナイザー、超音波乳化機、高せん断型回転乳化機等の各種乳化機乃至乳化装置が使用可能である。
本発明のサイズ剤組成物は内添サイズ剤組成物、表面サイズ剤組成物のいずれにも使用できる。
本発明のサイズ剤組成物を内添サイズ剤組成物として使用する場合、パルプスラリーに、パルプの乾燥重量に対するサイズ剤組成物の有効成分当りの添加量は、0.005〜5質量%、好ましくは0.01〜2質量%である。この発明における有効成分とは、式(1)の構造式に示される脂肪酸エステル及び置換コハク酸無水物の合計である。
本発明における抄紙系は、パルプと、希釈水と、必要に応じて添加される添加剤例えば填料、染料、サイズ剤、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤、歩留り向上剤、ピッチコントロール剤等とが混合されて成るパルプスラリーである。
本発明のサイズ剤組成物を用いて紙や板紙を製造するに当たって、パルプ原料としては、クラフトパルプ、サルファイトパルプなどの晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプ、サーモメカニカルパルプなどの晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙、脱墨古紙などの古紙パルプのいずれも使用することができる。
本発明のサイズ剤組成物を用いて紙を得るには、填料、染料、硫酸アルミニウム、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤、歩留まり向上剤、濾水性向上剤などの添加物も、それぞれの紙種に要求される物性を実現するために、必要に応じて使用してもよい。填料としては、主として重質又は軽質炭酸カルシウムが使用されるが、クレー、タルクも使用され、これらは併用してもよい。乾燥紙力向上剤としては、アニオン性ポリアクリルアミド系ポリマー、カチオン性ポリアクリルアミド系ポリマー、両性ポリアクリルアミド系ポリマー(それぞれ(メタ)アクリルアミドを主とした他のビニルモノマーとの共重合体、以下同様)、カチオン化澱粉、両性澱粉等が挙げられ、これらは単独で用いても併用してもよい。湿潤紙力向上剤としては、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂等が挙げられる、これらは単独で用いてもアニオン性ポリアクリルアミド系ポリマーと併用してもよい。歩留り向上剤としては、アニオン性又はカチオン性高分子量ポリアクリルアミド系ポリマー、シリカゲルとカチオン化澱粉の併用、ベントナイトとカチオン性高分子量ポリアクリルアミド系ポリマーの併用等が挙げられる。
本発明のサイズ剤組成物を表面サイズ剤組成物として使用する場合、紙の表面へのサイズ剤組成物の有効成分の塗工量は、0.001〜5g/m、好ましくは0.002〜1g/mである。塗工装置にはサイズプレス、ゲートロールコーター、ロッドメタリングコーター、ビルブレードコーター、キャレンダー等が用いられる。
本発明のサイズ剤組成物を表面サイズ剤組成物として用い、紙の表面に塗工する際には、酸化澱粉、燐酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉、カチオン化澱粉及び両性澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類、並びにポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド類、及びアルギン酸ソーダ等の水溶性高分子、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム等の無機塩等を混合して使用することもできる。また、他の表面サイズ剤、防滑剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、粘度調整剤、染料、及び顔料等の添加物を併用できる。
本発明のサイズ剤組成物を適用する紙は、特に制限されないが、各種の紙、板紙が挙げられる。
炭酸カルシウムを用いた、上質紙、中質紙または脱墨パルプ他種々の古紙パルプを含有する再生紙を抄紙する場合は、抄紙装置が汚れ易く、本発明のサイズ剤組成物は特に有効である。
紙の種類としては、ミルクカートン原紙、カップ原紙等の液体容器用原紙、写真用印画紙用原紙、石膏ボード原紙、PPC用紙、インクジェット印刷用紙、レーザープリンター用紙、フォーム用紙、熱転写紙、圧着紙、感熱記録原紙、感圧記録原紙等の記録用紙及びその原紙、アート紙、キャストコート紙、上質コート紙等のコート原紙、クラフト紙、純白ロール紙等の包装用紙、その他ノート用紙、書籍用紙、各種印刷用紙、新聞用紙等の各種紙(洋紙)、マニラボール、白ボール、チップボール等の紙器用板紙、ライナー等の板紙が挙げられる。
特に、ミルクカートン原紙、カップ原紙等の液体容器用原紙、写真用印画紙用原紙などのエッジウィックサイズ度が要求される紙種、また石膏ボード原紙のような強サイズ度が要求される紙種の抄紙においてはサイズ剤がパルプスラリーに絶乾パルプ重量に対して有効成分として0.2質量%以上の高率で添加されるため、抄紙装置が汚れ易く、本発明は有効である。
次に、前述した本発明のサイズ剤組成物を用いた、本発明の板紙の製造方法について説明する。
本発明の板紙の製造方法は、
(1)pHが6.5〜8.5
(2)アルカリ度が50〜400ppm、及び
(3)電導度が50〜250mS/m
であるパルプスラリーに、
(4)本発明に係るサイズ剤組成物を、添加して抄紙を行う。
これら全ての条件を満たすことにより、抄紙系での汚れの発生を低減することによりスケールトラブル及びピッチトラブルを回避することができ、サイズ効果に優れる板紙の製造方法を提供することができる。
<板紙>
本発明における板紙としては、ライナー原紙、中芯原紙、紙管原紙、石膏ボード原紙、コート白板、ノーコート白板、チップボール等を挙げることができる。この中でも中芯原紙、ライナー原紙が好ましく、特にライナー原紙であることが好ましい。
<パルプスラリー>
パルプスラリーは、パルプ原料をスラリー化したものである。パルプ原料として、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプなどの晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプなどの晒あるいは未晒高収率パルプ、上白古紙、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙などの古紙パルプのいずれも使用することができ、古紙パルプを50%以上使用することが好ましい。また、前記パルプ原料としては、前記パルプ原料と、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等との混合物も使用することができる。さらにパルプスラリーに用いる主要な原料として填料がある。填料としては、炭酸カルシウム、クレー、タルク、チョーク、酸化チタン、ホワイトカーボンなどを挙げることができる。
本発明におけるpH、アルカリ度、電導度の値は、シート、特に板紙を形成する直前のパルプスラリーを測定した値である。具体的には、例えば、ウルトラフォーマや長網のインレット中のパルプスラリーや丸網のバット中のパルプスラリーのpH、アルカリ度、電導度の測定値である。
前記パルプスラリーのpHは、6.5〜8.5であり、pH6.6〜8.2が好ましく、6.7〜8.0がさらに好ましい。本発明におけるpHは、25℃の条件で測定した値である。パルプスラリーのpHを前記範囲に調整するには、pH調節剤、たとえば水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ物質や硫酸等の酸性物質を、電導度及びアルカリ度が前記範囲を逸脱しないように、添加するのがよい。
前記パルプスラリーのアルカリ度は、50〜400ppmであり、70〜400ppmが好ましく、更に好ましくは80〜300ppmである。本発明におけるアルカリ度は、抄紙直前のパルプスラリーの一部を、No.5A濾紙(東洋濾紙株式会社製)にて吸引濾過して得られたろ液にメチルレッドとブロムクレゾールグリーンが混合されているエタノール溶媒の指示薬を加え、その液を緩やかに攪拌しながら、ろ液の色が青色から赤色に変わるまで1/50N硫酸を用いて滴定し、ろ液中にあるアルカリ成分量を炭酸カルシウム換算してアルカリ度(mg CaCO/l)(本発明においてはこの値をppmで表示した)=滴定量(ml)×1000/ろ液(ml)の式により求めた値である。パルプスラリーのアルカリ度を前記範囲に調整するには、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ物質を、pH及びアルカリ度が前記範囲を逸脱しないように、添加するのがよい。
前記パルプスラリーの電導度は、50〜250mS/mであり、50〜200mS/mが好ましく、50〜150mS/mがさらに好ましい。本発明における電導度は、25℃の条件で測定した値である。
本発明の板紙の製造方法においては、本発明に係るサイズ剤組成物を前記パルプスラリーに添加して抄紙を行う。サイズ剤組成物は、前述したように水に分散して成る水分散性サイズ剤であることが好ましい。本発明の板紙の製造方法は、前述したように、pH、アルカリ度、電導度が特定の範囲内にあるパルプスラリーに、本発明に係るサイズ剤組成物を添加して抄紙を行うので、抄紙系での汚れの発生を低減することによりスケールトラブル及びピッチトラブルを防止することができ、サイズ効果の優れる板紙を提供することができる。
また、本発明の効果を害することがない範囲で、前記サイズ剤組成物に、2−オキセタノン系サイズ剤、ロジン系サイズ剤、カチオン性合成サイズ剤などの公知のサイズ剤を併用することができる。
前記2−オキセタノン系サイズ剤は、サイズ剤としての有効成分のうち2−オキセタノン化合物を主成分とするサイズ剤であり、2−オキセタノン化合物は、下記の式(2)の基本構造を有するアルキル及び/又はアルケニルケテンダイマー、及び、下記の式(3)の基本構造を有するアルキル及び/又はアルケニルケテンマルチマーの総称である。
Figure 0005408560
(但し、式(2)中のR、Rは、8〜24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和のアルキル基又はアルケニル基を示し、RとRとは同一であっても異なっていてもよい。)
Figure 0005408560
(但し、式(3)中、nは自然数であり、通常1〜10であり、R及びRは8〜24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和のアルキル基又はアルケニル基であり、Rは4〜40個の炭素原子を有する飽和又は不飽和のアルキル基又はアルケニル基であり、RとRとRとは同一であっても異なっていてもよい。)
前記2−オキセタノン系サイズ剤は、前記2−オキセタノン化合物を従来公知の方法により乳化剤を用いて分散してエマルションの形態で用いることができる。分散剤としては、例えば、カチオン化澱粉やカチオン性ポリマー等のカチオン性分散剤、スルホン酸基若しくは硫酸エステル基およびそれらの塩を有するアニオン性分散剤が挙げられる。これらの分散剤の一種あるいは二種以上を混合して用いることができる。また、その乳化方法としては特に制限はなく、従来周知の方法を適用でき、例えば、反転乳化、溶剤乳化、強制乳化などの乳化方法を用いることができる。
前記ロジン系サイズ剤としては、特に制限はなく、従来公知のものを使用できる。例えば、ロジン系物質として、(A)ロジン類および/または、ロジン類のα,β−不飽和カルボン酸変性ロジン類、(B)ロジン類のエステル化反応により得られるロジンエステル類および/または、前記ロジンエステル類のα,β−不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類、を任意に組み合わせて使用することが出来る。これらロジン系物質を、従来公知の方法で水に乳化分散させたロジンエマルションサイズ剤を使用することができる。また、溶液ロジンも使用できる。
前記カチオン性合成サイズ剤としては、公知のものを使用することができ、例えば特開2001−262495公報に記載されているように、スチレン−アクリル酸エステル系共重合体の4級化物を使用できる。これは、スチレン系モノマーと、ジメチルアミノエチルメタクリレートのような3級アミノ基を含有するアクリル酸エステル系モノマーと、これらのモノマーと共重合可能なモノマーを重合させて得られるカチオン性共重合物にエピハロヒドリンのような4級化剤を反応させる方法で製造される。
前記スチレン系モノマーとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼン等が挙げられ、これらのモノマーは一種又は二種以上を使用できる。これらのモノマーの中でもスチレンは入手がしやすく、安価であるため好ましい。
前記3級アミノ基を含有するアクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば(モノアルキル又はジアルキル)アミノアルキル(メタ)アクリレート、(モノアルキル又はジアルキル)アミノヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用できる。これらのモノマーの中でもジメチルアミノエチルメタクリレートは入手がしやすく、安価であるため好ましい。
必要に応じて使用するこれらのモノマーと共重合可能なモノマーとしては、スチレン系モノマー以外の疎水性モノマー、3級アミノ基を含有するアクリル酸エステル系モノマー以外のカチオン性モノマー等を挙げることができる。
スチレン系モノマー以外の疎水性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート、マレイン酸、及びフマル酸のジアルキルジエステル類、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、N−アルキル(メタ)アクリルアミド類、並びにメチルビニルエーテル等が挙げられ、これらのモノマーの一種又は二種以上を使用できる。
前記3級アミノ基を含有するアクリル酸エステル系モノマー以外のカチオン性モノマーとしては、例えば、(モノアルキル又はジアルキル)アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
前記4級化剤としては、塩化メチル、塩化エチル、塩化ベンジル、エピクロロヒドリン、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド、及び3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の有機ハロゲン化物、並びにジメチル硫酸、及びジエチル硫酸等のジアルキル硫酸を挙げることができる。
前記カチオン性共重合物の重合は、例えば前記スチレン系モノマーと、3級アミノ基を含有するアクリル酸エステル系モノマーとの混合物と、必要に応じてその他の共重合可能なビニルモノマーとの混合物を、メチルアルコール、エチルアルコールあるいはイソプロピルアルコール等の低級アルコール系有機溶剤あるいはベンゼン、トルエン、キシレン等の油性有機溶剤中にて、あるいはこれらの低級アルコール系有機溶剤と水との混合液中にて、さらには水中において、ラジカル重合触媒を使用して60〜120℃で1〜10時間重合させることができる。
<紙力剤>
本発明の板紙の製造方法において、パルプスラリーに紙力剤を添加することができる。紙力剤としては、アクリルアミド系重合体類、澱粉類、ポリビニルアルコール類、セルロース類などを挙げることができる。これらの中でも、アクリルアミド系重合体類及び/又は澱粉類が好ましい。
アクリルアミド系重合体類としては、(メタ)アクリルアミド及び/又はイオン性ビニルモノマーを重合してなる単独又は共重合体の(メタ)アクリルアミド系ポリマー、(メタ)アクリルアミド及び/又はイオン性ビニルモノマーに必要に応じてその他のモノマーを加えて重合してなる共重合体の(メタ)アクリルアミド系ポリマー、澱粉存在下でアクリルアミド系モノマー類などを重合して得られる澱粉グラフトポリアクリルアミド系重合体、ホフマン分解反応によるカチオン変性(メタ)アクリルアミド系重合体、マンニッヒ変性によるアクリルアミド系重合体を挙げることができる。
(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミド、又はメタクリルアミドを意味し、これらは、粉体でも、水溶液でも使用することができる。
イオン性ビニルモノマーは、カチオン性ビニルモノマー及び/又はアニオン性ビニルモノマーである。
カチオン性ビニルモノマーとしては、1級アミノ基を有するビニルモノマー、2級アミノ基を有するビニルモノマー、3級アミノ基を有するビニルモノマー、及び4級アンモニウム塩類を有するビニルモノマー等が挙げられる。
前記1級アミノ基を有するビニルモノマーとしては、アリルアミン、メタリルアミン、及びこれらの塩等を挙げることができる。これらの塩類としては塩酸塩、及び硫酸塩等の無機酸塩類、並びにギ酸塩、及び酢酸塩等の有機酸塩類が挙げられる。
前記2級アミノ基を有するビニルモノマーとしては、ジアリルアミン、ジメタリルアミン、及びこれらの塩等を挙げることができる。これらの塩類としては塩酸塩、及び硫酸塩等の無機酸塩類、並びにギ酸塩、及び酢酸塩等の有機酸塩類が挙げられる。
また、前記2級アミノ基を有するビニルモノマーとして、アリルアミン、及びメタアリルアミン等の前記1級アミノ基を有するビニルモノマーと、メチルクロライド、及びメチルブロマイド等のアルキルハライド、ベンジルクロライド、及びベンジルブロマイド等のアラルキルハライド、ジメチル硫酸、及びジエチル硫酸等のジアルキル硫酸、エピクロロヒドリン等のいずれかとの反応により2級アミンの酸塩としたモノマーが挙げられる。
前記3級アミノ基を有するビニルモノマーとしては、例えばジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、及びジエチルアミノプロピルメタクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、及びジエチルアミノプロピルメタクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類、並びにこれらの塩等を挙げることができる。これらの塩類としては塩酸塩、及び硫酸塩等の無機酸塩類、並びにギ酸塩、及び酢酸塩等の有機酸塩類が挙げられる。
また、前記3級アミノ基を有するビニルモノマーとして、ジアリルアミン、及びジメタリルアミン等の前記2級アミノ基を有するビニルモノマーと、メチルクロライド、及びメチルブロマイド等のアルキルハライド、ベンジルクロライド、及びベンジルブロマイド等のアラルキルハライド、ジメチル硫酸、及びジエチル硫酸等のアルキル硫酸、エピクロロヒドリン等のいずれかとの反応により3級アミンの酸塩としたモノマーが挙げられる。
前記4級アンモニウム塩類を有するビニルモノマーとしては、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジメタリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジエチルアンモニウムクロライド、及びジエチルジメタリルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
また、前記4級アンモニウム塩類を有するビニルモノマーとして、前記3級アミノ基を有するビニルモノマーと4級化剤との反応によって得られるビニルモノマーが挙げられる。前記4級化剤としては、メチルクロライド、及びメチルブロマイド等のアルキルハライド、ベンジルクロライド、及びベンジルブロマイド等のアラルキルハライド、ジメチル硫酸、及びジエチル硫酸等のアルキル硫酸、エピクロロヒドリン、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、並びにグリシジルトリアルキルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
前記4級アンモニウム塩類の具体例として、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、及びメタクリロイルオキシプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミドと重合して(メタ)アクリルアミド系ポリマーを形成するカチオン性ビニルモノマーとして、これらの1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、又は4級アンモニウム塩類を有するビニルモノマーを一種単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
アニオン性ビニルモノマーとしては、カルボキシル基含有重合性ビニルモノマー(これは、カルボキシル基を含有する重合性ビニルモノマーと言う意味である。)、スルホン酸基含有重合性ビニルモノマー(これは、スルホン酸基を含有する重合性ビニルモノマーと言う意味である。)、リン酸基含有重合性ビニルモノマー(これは、リン酸基を含有する重合性ビニルモノマーと言う意味である。)が挙げられる。
前記カルボキシル基含有重合性ビニルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、けい皮酸、及びクロトン酸等の不飽和モノカルボン酸、2−アクリルアミドグリコリック酸、及び2−メタクリルアミドグリコリック酸等のグリオキシル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びムコン酸等の不飽和ジカルボン酸、アコニット酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、及び4−ペンテン−1,2,4−トリカルボン酸等の不飽和トリカルボン酸、1−ペンテン−1,1,4,4−テトラカルボン酸、4−ペンテン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、及び3−ヘキセン−1,1,6,6−テトラカルボン酸等の不飽和テトラカルボン酸が挙げられる。
前記スルホン酸基含有重合性ビニルモノマーとしては、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
前記リン酸基含有重合性ビニルモノマーとしては、ビニルホスホン酸、及び1−フェニルビニルホスホン酸等が挙げられる。
また、カルボキシル基含有重合性ビニルモノマー、スルホン酸基含有重合性ビニルモノマー、及びリン酸基含有重合性ビニルモノマーのそれぞれの塩類も使用することができる。前記カルボキシル基含有モノマー、前記スルホン酸基含有モノマー、又は前記リン酸基含有モノマーの塩としてはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びアンモニウム塩等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミドと重合して(メタ)アクリルアミド系ポリマーを形成するアニオン性ビニルモノマーとして、これらのカルボキシル基含有重合性ビニルモノマー、スルホン酸基含有重合性ビニルモノマー、リン酸基含有重合性ビニルモノマー、及びこれらの塩類を一種単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
前記アニオン性ビニルモノマーの中でも好適なアニオン性ビニルモノマーは不飽和ジカルボン酸であり、より好ましくはイタコン酸である。
その他のモノマーのひとつである架橋性モノマー及び架橋性化合物としては、ビニル基を複数持つモノマー、N置換(メタ)アクリルアミド、ビニル基と連鎖移動点を持つことで架橋作用を持つモノマー、シリコン系モノマー、水溶性アジリジニル化合物、及び水溶性多官能エポキシ化合物等を挙げることができる。これらは、一種単独で用いても良いし、二種以上を併用してもよい。
前記ビニル基を複数持つモノマーとしては、ジ(メタ)アクリレート類、ビス(メタ)アクリルアミド類、及びジビニルエステル類等の2官能性モノマーに加え、3官能性ビニルモノマー、4官能性ビニルモノマー等が挙げられる。
前記ジ(メタ)アクリレート類としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、グリセリンジアクリレート、及びグリセリンジメタクリレート等を挙げることができ、これらは一種単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
前記ビス(メタ)アクリルアミド類としては、例えばN,N−メチレンビスアクリルアミド、N,N−メチレンビスメタクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、エチレンビスメタクリルアミド、ヘキサメチレンビスアクリルアミド、ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、N,N−ビスアクリルアミド酢酸、N,N−ビスアクリルアミド酢酸メチル、N,N−ベンジリデンビスアクリルアミド、及びN,N−ビス(アクリルアミドメチレン)尿素等を挙げることができ、これらは一種単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
前記ジビニルエステル類としては、例えば、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、及びジアリルサクシネート等を挙げることができ、これらは一種単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
前記以外の2官能性モノマーとしては、例えば、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジビニルベンゼン、及びジイソプロペニルベンゼン等を挙げることができ、これらは一種単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
前記3官能性ビニルモノマーとしては、例えば、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアヌレート、N,N−ジアリルアクリルアミド、N,N−ジアリルメタクリルアミド、トリアリルアミン、及びトリアリルピロメリテート等を挙げることができ、これらは一種単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
前記4官能性ビニルモノマーとしては、例えば、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリテート、N,N,N’,N’−テトラアリル−1,4−ジアミノブタン、テトラアリルアミン(塩)、及びテトラアリルオキシエタン等を挙げることができ、これらは一種単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
前記N置換(メタ)アクリルアミドとしては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、及びN−t−オクチル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
前記ビニル基と連鎖移動点とを持つことで架橋作用を持つモノマーとしては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルアクリレート、及びグリシジルメタクリレート等を挙げることができ、これらは一種単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
前記シリコン系モノマーとしては、例えば、3−アクリロイロキシメチルトリメトキシシラン、3−メタクリロイロキシメチルトリメトキシシラン、3−アクリロイロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロイロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−アクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイロキシプロピルメチルジクロロシラン、3−メタクリロイロキシプロピルメチルジクロロシラン、3−アクリロイロキシオクタデシルトリアセトキシシラン、3−メタクリロイロキシオクタデシルトリアセトキシシラン、3−アクリロイロキシ−2,5−ジメチルヘキシルジアセトキシメチルシラン、3−メタクリロイロキシ−2,5−ジメチルヘキシルジアセトキシメチルシラン、及びビニルジメチルアセトキシシラン等を挙げることができ、これらは一種単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
前記水溶性アジリジニル化合物としては、例えば、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、及び4,4’−ビス(エチレンイミンカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等を挙げることができ、これらは一種単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
前記水溶性多官能エポキシ化合物としては、例えば、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、及び(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル等を挙げることができ、これらは一種単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
また、(メタ)アクリルアミド系ポリマーを合成する際に用いることのできるその他のモノマーとしては、ノニオン性ビニルモノマー等を挙げることができる。ノニオン性ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、スチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びメチルビニルエーテル、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド等を挙げることができ、これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
(メタ)アクリルアミド系ポリマーを構成する各モノマーの使用量は、得られる(メタ)アクリルアミド系ポリマーを含有する紙力剤を使用して紙を製造した場合における、紙の内部結合強さ、破裂強さ度等の紙力や、抄紙時の濾水性や微細繊維、填料等の歩留り等の性能を十分に考慮して決定する事ができる。
(メタ)アクリルアミド系ポリマーを構成するモノマーは、(メタ)アクリルアミド及びイオン性ビニルモノマーが必須であり、これらのモノマーとその他の共重合可能なモノマーとの総和100モル%に対し、(メタ)アクリルアミドが、通常100〜45モル%、好ましくは98〜74モル%、イオン性ビニルモノマーが、通常0〜55モル%、好ましくは2〜26モル%である。その他の共重合可能なモノマーは、上記(メタ)アクリルアミドの一部に代えて使用し、通常0〜20モル%、好ましくは0.01〜10モル%使用することが好ましい。
なお、イオン性ビニルモノマー中におけるカチオン性ビニルモノマー及びアニオン性ビニルモノマーの使用量は、それぞれ通常0〜27.5モル%である。
前記モノマーの重合を行うにあたり、従来公知の重合開始剤を用いることが出来る。重合開始剤としては、具体的には、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の過酸化物、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム等の臭素酸塩、過ホウ素酸ナトリウム、過ホウ素酸アンモニウム等の過ホウ素酸塩、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸アンモニウム等の過炭酸塩、過リン酸ナトリウム、過リン酸カリウム、過リン酸アンモニウム等の過リン酸塩等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、1種単独でも使用できるが、2種以上組み合わせて使用しても良く、また、還元剤と併用してレドックス系重合開始剤として使用することができる。還元剤としては、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の有機アミン、及びアルドース等の還元糖等を挙げることができる。また、これらの還元剤は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、上記以外の重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩、2,2’−アゾビス−2,4’−ジメチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸及びその塩等のアゾ系重合開始剤を用いることも出来る。
また、紙力剤には、必要に応じて従来公知の連鎖移動剤を併せて適宜使用できる。従来公知の連鎖移動剤としては、分子内に1個ないし複数個の水酸基を有する化合物、分子内に1個または複数個のメルカプト基を含む化合物、分子内に1個または複数個の炭素―炭素不飽和結合を有する化合物、次亜リン酸等を挙げることができる。
分子内に1個ないし複数個の水酸基を有する化合物としては、例えば、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、グリセリンアルコール類、ポリエチレンオキサイド、ポリグリセリン等のオリゴマー及びポリマー類、グルコース、アスコルビン酸、ショ糖等の糖類やビタミン類を挙げることができる。
分子内に1個または複数個のメルカプト基を含む化合物としては、例えば、ブチルメルカプタン、メルカプトエタノール、チオグリコール酸及びそのエステル、メルカプトプロピオン酸及びそのエステル、チオグリセリン、システアミン及びその塩等を挙げることができる。
分子内に1個または複数個の炭素―炭素不飽和結合を有する化合物としては、例えば(メタ)アリルアルコール及びそのエステル誘導体、(メタ)アリルアミン、ジアリルアミン、ジメタリルアミン及びそのアミド誘導体、トリアリルアミン、トリメタリルアミン、(メタ)アリルスルホン酸及びその塩、アリルスルフィド類、アリルメルカプタン類を挙げることができる。
本発明に用いることのできる紙力剤として(メタ)アクリルアミド系ポリマーの合成は、窒素等の不活性ガス雰囲気下、所定の反応容器にモノマーと、溶媒である水(有機溶媒を併用することがあっても良い)と、必要に応じて上記連鎖移動剤とを仕込み、攪拌下、上記重合開始剤を加えて重合を開始することで、本発明の板紙の製造方法に用いることのできる紙力剤としての(メタ)アクリルアミド系ポリマーが得られる。
前記ホフマン分解反応によるカチオン変性(メタ)アクリルアミド系重合体としては、ホフマン分解反応によりカチオン変性した(メタ)アクリルアミド系重合体であれば良く、変性前の(メタ)アクリルアミド系重合体としては(メタ)アクリルアミドと共重合可能なノニオン性モノマー、カチオン性モノマー、アニオン性モノマーとの共重合体や、これに架橋性モノマーや連鎖移動剤を併用したものであってもよい。
前記(メタ)アクリルアミドと共重合可能なノニオン性モノマーとしては、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル等が挙げられる。
前記(メタ)アクリルアミドと共重合可能なカチオン性モノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アリルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基を有するビニルモノマー又はそれらの無機酸若しくは有機酸の塩類あるいは3級アミノ基含有ビニルモノマーとメチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、エピクロロヒドリン、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級化剤との反応によって得られる4級アンモニウム基を有するビニルモノマー等が挙げられる。
前記(メタ)アクリルアミドと共重合可能なアニオン性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、フマル酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸又はそれらのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩等のビニルモノマーが挙げられる。
前記(メタ)アクリルアミドと共重合可能な架橋性ビニルモノマーとしては、メチロールアクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等のジビニルエステル類、エポキシアクリレート類、ウレタンアクリレート類、ジビニルベンゼン、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、トリアリルアミン、N,N−ジアリルアクリルアミド、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリラート、N置換アミド基を有するN,N−ジメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド等が挙げられる。
前記ホフマン分解反応によるカチオン変性(メタ)アクリルアミド系重合体は、前記(メタ)アクリルアミドと共重合可能なモノマーの1種または複数種を共重合させても良く、好ましくは(メタ)アクリルアミドは総モル%の60%以上である。
(メタ)アクリルアミド系重合体の製造方法としては、従来公知の各種の方法を採用することが出来る。例えば、撹拌機及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、前述のモノマーと水を仕込み、重合開始剤として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、アンモニウムハイドロパーオキサイド等の過酸化物、またはそれらの過酸化物と重亜硫酸塩等の還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤、あるいは2,2−アゾビス−(2−アミジノプロパン)塩酸塩等の水溶性アゾ系重合開始剤などを加え、また必要に応じてイソプロピルアルコール、アリルアルコール、次亜リン酸ナトリウム、メルカプトエタノール、チオグリコール酸等の重合調整剤又は連鎖移動剤を適宜使用し、反応温度20〜90℃で1〜5時間反応させ、目的とする(メタ)アクリルアミド系重合体を得ることが出来る。
前記(メタ)アクリルアミド系重合体のホフマン分解反応によるカチオン変性は従来と同様の方法を採用すれば良い。例えば、前述の(メタ)アクリルアミド系重合体の水溶液に次亜ハロゲン酸塩とアルカリ触媒とを添加することにより、アルカリ性領域において(メタ)アクリルアミド系重合体と次亜塩素酸塩とを反応せしめ、しかる後に酸を添加してpH3.5〜5.5に調整する方法、塩化コリンの存在下にポリ(メタ)アクリルアミドをホフマン分解反応して調整する方法(例えば、特開昭53−109545号公報)、ホフマン分解反応において水酸基を有する3級アミンと塩化ベンジルあるいはその誘導体との4級反応物を添加して調整する方法(例えば、特公昭58−8682号公報)、ホフマン分解反応において安定剤として有機多価アミンを添加して調整する方法(例えば、特公昭60−17322号公報)、またはホフマン分解反応において安定剤として特定のカチオン化合物を添加して調整する方法(例えば、特公昭62−45884号公報)等を挙げることが出来る。
澱粉類としては、澱粉そのものである生澱粉、澱粉を原料として各種変性を行って得られるカチオン化澱粉、酸化澱粉、両性澱粉などの化学変性澱粉、ならびにこれら澱粉及び前記化学変性澱粉を酵素変性した酵素変性澱粉などを用いることができる。前記澱粉としては各種の植物、例えば馬鈴薯、さつまいも、タピオカ、小麦、米、とうもろこし(コーン)等から得られる澱粉等を挙げることができ、これらの誘導体としては、前記澱粉をアセチル化、リン酸エステル化等の変性又は処理した澱粉等を挙げることができる。これらは、粉体でも溶液状でも用いることができる。
カチオン化澱粉とはカチオン変性反応によりカチオン基を導入した澱粉を意味し、酸化澱粉とは酸化反応によりアニオン性基を導入した澱粉を意味し、両性澱粉はカチオン性基及びアニオン性基の両方を導入した澱粉を意味する。
澱粉類のカチオン基の導入にあたっては、例えば、澱粉又はその誘導体を公知のカチオン化剤である3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル・トリメチルアンモニウム・クロライドやグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドあるいはジメチルアミノエチルクロライド等と触媒の存在下に反応させることによって得られる。
前記カチオン基を有する澱粉は、粘度を低減した澱粉も使用できる。粘度低減方法としては例えば酸化剤処理、又は酵素変成として酵素分解を行う方法等が挙げられる。
酸化剤としては、従来公知慣用の酸化剤を用いることが出来る。酸化剤としては、具体的には、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸アンモニウム等の次亜塩素酸塩、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の過酸化物、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム等の臭素酸塩、過ホウ素酸ナトリウム、過ホウ素酸アンモニウム等の過ホウ素酸塩、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸アンモニウム等の過炭酸塩、過リン酸ナトリウム、過リン酸カリウム、過リン酸アンモニウム等の過リン酸塩を使用することができる。酸化剤は、1種単独でも使用できるが、2種以上組み合わせて使用しても良い。
酵素分解変成に使用する澱粉分解酵素には各種細菌、酵母、動植物の生産するα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、γ−アミラーゼ、isoアミラーゼ等を挙げることができる。この中でも、過度の低分子物や単糖類を生じさせない点でα−アミラーゼがもっとも好ましい。
クッキングした後の澱粉類は、25℃における固形分1%水溶液の粘度が好ましくは5〜10,000mPa・s、さらに好ましくは、5〜1,000mPa・sである。
<ピッチコントロール剤>
本発明の板紙の製造方法において、前記パルプスラリーにピッチコントロール剤を添加することが好ましい。ピッチコントロール剤としては有機系ピッチコントロール剤と無機系ピッチコントロール剤が挙げられる。
前記有機系ピッチコントロール剤としては、少なくとも1種以上のカチオン性モノマーを含んで重合することにより得られるカチオン性重合物、アミン−エピハロヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン変性物、ポリビニルアミン等のカチオン性化合物、ノニオン性分散剤、アニオン性界面活性剤が挙げられる。
前記カチオン性重合物に用いられるカチオン性モノマーとしては、下記式(4)〜式(6)で示される化合物、ジアリルアミン類等が挙げられ、これらは単独でも用いられるが2種以上併用することもできる。
Figure 0005408560
(但し、式(4)中、Aは酸素又はNH、nは2〜4の整数、R12はH又はメチル基、R13、R14、R15、R16、R17は同一又は異なる炭素数1〜3の低級アルキル基、X、Yは同一又は異なるアニオン性基を示す。)
前記式(4)の具体的なカチオン性モノマーとしては、2−ヒドロキシ−N,N,N,N′,N′−ペンタメチル−N′−(3−(メタ)アクリロイルアミノプロピル)−1,3−プロパンジアンモニウムジクロライド、2−ヒドロキシ−N−ベンジル−N,N−ジエチル−N′,N′−ジメチル−N′−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−1,3−プロパンジアンモニウムジブロマイドなどが挙げられる。
Figure 0005408560

(但し、式(5)中、Aは酸素又はNH、nは2〜4の整数、R18はH又はメチル基、R19、R20は同一又は異なる炭素数1〜3の低級アルキル基を示す。)
上記式(5)の具体的なカチオン性モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
Figure 0005408560

(但し、式(6)中、Aは酸素又はNH、nは2〜4の整数、R21はH又はメチル基、R22、R23は同一又は異なる炭素数1〜3の低級アルキル基、R24は低級アルキル基又はベンジル基、Zはアニオン性基を示す。)
上記式(6)の具体的なカチオン性モノマーとしては、上記式(6)で示されるカチオン性モノマーを適当な4級化剤、例えばアルキルハライド、ジアルキルカーボネート、アルキルトシレート、アルキルメシレート、ジアルキル硫酸、ベンジルハライドなどにより4級化することにより得られ、例えばN−エチル−N,N−ジメチル−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アンモニウムブロマイド、N−ベンジル−N,N−ジメチル−(3−(メタ)アクリロイルアミノプロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。
ジアリルアミン類として、ジアリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
前記カチオン性重合物は、カチオン性モノマーを10モル%以上含有するのがよく、その他の共重合可能なモノマーとしてアクリルニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル等のノニオン性モノマー、アクリル酸、メタクリル酸などのα、β−不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などのα、β−不飽和ジカルボン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などの不飽和スルホン酸及びそれらの塩類、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等のアニオン性モノマー等を挙げることができ、また、従来公知の連鎖移動剤、架橋剤を使用してもよい。
前記カチオン性重合物の重合方法としては、特に制限はなく従来公知の方法を採用できる。
さらには、前記のように式(5)のカチオン性単量体を前記4級化剤により4級化してから重合反応を行うのみならず、上記式(5)に属するカチオン性単量体等を重合反応させる途中又は重合反応後に上記4級化剤を用いて4級化することもできる。この場合全部を4級化しても良いが、一部を4級化しても良い。
前記アミン−エピハロヒドリン樹脂は、アミン類とエピハロヒドリンを反応させることにより得られる。アミン類として用いることのできるアミンは、分子中に少なくとも1個のエピハロヒドリンと反応可能なアミノ基を有するアミン類であれば特に制限はないが、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、アルキレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン、及びアルカノールアミンからなる群から選択された1種以上のアミンが好ましい。
アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、アリルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロオクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、及びプロピレンジアミン、N,Nジメチルアミノプロピルアミン、1 ,3−ジアミノシクロヘキシル、1,4−ジアミノシクロヘキシル、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。
エピハロヒドリンとしては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等を使用でき、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。エピハロヒドリンとしてはエピクロロヒドリンが好ましい。
前記アミン−エピハロヒドリン樹脂の重合方法としては、特に制限はなく従来公知の方法を採用できる。
前記無機系ピッチコントロール剤としては、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム、ポリアルミニウムシリケートサルフェート、ポリ水酸化アルミニウム等のポリアルミニウム化合物、ポリ硫酸鉄、炭酸ジルコニウム、ベントナイト、タルク(微粉末)等が挙げられる。
<歩留り剤>
本発明の板紙の製造方法において、前記パルプスラリーに歩留り剤を添加することが好ましい。歩留り剤としては有機系歩留り剤、無機系歩留り剤を挙げることができる。
有機系歩留り剤としては、アクリルアミド系重合体類、澱粉類、ポリビニルアルコール類、セルロース類などを挙げることができる。これらは紙力剤としても機能するものもあるが、歩留り向上を目的とするものは、紙力剤に比べ、分子量が大きく凝集能が大きい。歩留り剤のイオン性に関してはカチオン性、アニオン性、両性、ノニオン性のいずれでもよく、2種以上を適宜組み合わせることもできる。また、有機系歩留り剤を構成するポリマーの構造は直鎖状、分岐状、架橋構造のいずれの構造を有していてもよい。
無機系歩留り剤としては、ベントナイト、コロイド状珪酸、アルミニウム化合物などを挙げることができる。
本発明の板紙の製造方法において、前記パルプスラリーに必要に応じてアルミニウム化合物が添加される。アルミニウム化合物としては、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム、アルミナゾル、ポリ硫酸ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムゾル、ポリ水酸化アルミニウム等の水溶性アルミニウム化合物が挙げられ、添加する場合には、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウムが好ましい。これらのアルミニウム化合物は単独又は2種以上併用して用いることができる。アルミニウム化合物は使用しないのが好ましく、使用する場合には、前記パルプスラリーの固形分に対してアルミニウム化合物を1質量%以下使用することが好ましく、0.1〜0.5質量%使用するのがより好ましい。
<サイズ剤組成物の添加場所及び添加量>
本発明の板紙の製造方法において、サイズ剤組成物を添加する場所は特に限定されないが、抄紙工程の叩解機出口からインレットの入口の間に添加するのが好ましい。また、1箇所に限らず複数箇所に分割添加することもできる。さらに、抄紙工程で使用する他薬品と混合してパルプスラリーに添加してもよい。
サイズ剤組成物のパルプ固形分あたりの添加率は有効成分で、好ましくは0.03〜1質量%、より好ましくは0.05〜0.3質量%である。前記の範囲より少ない場合はサイズ効果が不十分となるおそれがあり、前記の範囲を越えて使用した場合、効果が頭打ちとなるおそれがある。
<紙力剤の添加場所及び添加量>
本発明の板紙の製造方法において紙力剤をパルプスラリーに添加する場合、添加場所は特に制限されないが、抄紙工程の叩解機出口からインレット入口の間に添加するのが好ましい。また1箇所に限らず複数箇所に分割添加することもできる。
紙力剤のパルプ固形分あたりの添加率は、好ましくは0.02〜3質量%、より好ましくは0.05〜1質量%である。0.02質量%未満では紙力効果が不十分となる場合があり、3質量%を越えて使用しても効果が頭打ちとなる場合がある。
<歩留り剤の添加場所及び添加量>
本発明の板紙の製造方法において歩留り剤をパルプスラリーに添加する場合、添加場所は特に制限されないが、抄紙工程の叩解機出口からインレット出口の間の混合性の良い場所で添加されるのが好ましい。また、1箇所に限らず複数箇所に分割添加してもよく、1種または2種以上の歩留り剤を使用しても良い。
歩留り剤のパルプ固形分あたりの添加率は、好ましくは0.005〜2質量%、より好ましくは0.01〜1質量%である。
<ピッチコントロール剤の添加場所及び添加量>
本発明の板紙の製造方法においてピッチコントロール剤をパルプスラリーに添加する場合、添加場所は特に制限されないが、抄紙工程の叩解機出口からインレット出口の間の混合性の良い場所で添加されるのが好ましい。また、一箇所に限らず複数箇所に分割添加してもよく、1種または2種以上のピッチコントロール剤を使用しても良い。
前記ピッチコントロール剤をパルプスラリーに添加する場合、パルプ固形分あたりの添加率は好ましくは0.005〜1質量%、さらに好ましくは0.01〜0.5質量%である。添加率0.005質量%未満では汚れ防止効果が不良となる場合があり、1質量%を超える添加率では紙力剤等の定着が低下する場合がある。
パルプスラリーには、上記以外の添加薬品としてポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂等の湿潤紙力剤等、また、軽質炭酸カルシウムや重質炭酸カルシウムのような炭酸カルシウム、クレー、酸化チタンなどの填料を適宜併用することは何ら差し支え無い。
パルプスラリーと紙力剤やサイズ剤などの薬品が混合されたスラリーを常法により脱水、乾燥することで板紙原紙を製造することができる。
以上のようにして板紙原紙を製造した後に必要に応じて、塗工液を板紙原紙の表面に塗工することもできる。
塗工液には、表面紙力剤、表面サイズ剤、防滑剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、防錆剤、離型剤、難燃剤、染料、撥水剤、罫割防止剤等の添加剤を使用できるが、表面紙力剤及び/又は表面サイズ剤を塗工液に含有していることが好ましい。
表面紙力剤の塗工量について、通常は固形分で0.05〜5g/m、好ましくは0.1〜2g/mである。また、表面サイズ剤の塗工量について、通常は固形分で0.01〜1g/m、好ましくは0.02〜0.1g/mである。
塗工液中に含まれる表面サイズ剤の濃度は、通常、0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜1質量%である。
また、表面サイズ剤を含有する塗工液の塗工量は、固形分で0.01〜1g/m、好ましくは0.02〜0.1g/mである。前記範囲内であると、特に良くサイズ効果が発揮される。
塗工液は、公知の方法により紙に塗工することができ、例えば、サイズプレス、フィルムプレス、ゲートロールコーター、ロッドメタリングコーター、ブレードコーター、キャレンダー、バーコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーターを用いて塗工することが可能である。また、スプレー塗工を行うこともできる。
<表面紙力剤>
前記表面紙力剤としてはアクリルアミド系樹脂類、ポリビニルアルコール類などの合成高分子、澱粉類、セルロース類、キトサン、アルギン酸、カラギーナン等多糖類の天然高分子を挙げることができる。これらの中でもアクリルアミド系樹脂類を用いることが好ましい。
アクリルアミド系樹脂類は、アニオン性であっても、カチオン性であっても、ノニオン性であってもよく、少なくともアクリルアミド類と、必要に応じてイオン性ビニルモノマー、ノニオン性ビニルモノマー及び架橋剤などの共重合可能なモノマーとを共重合して得ることができる。
前記アクリルアミド類としては、アクリルアミド、メタクリルアミドが好ましく、またN−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−オクチル(メタ)アクリルアミド等のN置換(メタ)アクリルアミドのいずれか一種以上をアクリルアミド、メタクリルアミドと併用して使用することもできる。
前記イオン性ビニルモノマーとしては、アニオン性ビニルモノマー及びカチオン性ビニルモノマーを挙げることができる。
前記アニオン性ビニルモノマーとしては、例えばアクリル酸、メタアクリル酸等のα、β−不飽和モノカルボン酸及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の塩類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等のα、β−不飽和ジカルボン酸及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の塩類、アコニット酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、4−ペンテン−1,2,4−トリカルボン酸等のα、β−不飽和トリカルボン酸及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の塩類、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の有機スルホン酸及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩類やアンモニウム塩等の塩類、ビニルホスホン酸、α−フェニルビニルホスホン酸等のホスホン酸及びそれらのナトリウム、カリウム塩等のアルカリ金属塩類やアンモニウム塩等の塩類が例示でき、これらを1種または2種以上使用することが出来る。
前記カチオン性ビニルモノマーとしては、1級アミノ基を有するビニルモノマー、2級アミノ基を有するビニルモノマー、3級アミノ基を有するビニルモノマー、及び4級アンモニウム塩類を有するビニルモノマー等が挙げられる。
前記1級アミノ基を有するビニルモノマーとしては、アリルアミン、メタリルアミン、及びこれらの塩等を挙げることができる。これらの塩類としては塩酸塩、及び硫酸塩等の無機酸塩類、並びにギ酸塩、及び酢酸塩等の有機酸塩類が挙げられる。
前記2級アミノ基を有するビニルモノマーとしては、ジアリルアミン、ジメタリルアミン、及びこれらの塩等を挙げることができる。これらの塩類としては塩酸塩、及び硫酸塩等の無機酸塩類、並びにギ酸塩、及び酢酸塩等の有機酸塩類が挙げられる。
また、前記2級アミノ基を有するビニルモノマーとして、アリルアミン、及びメタアリルアミン等の前記1級アミノ基を有するビニルモノマーと、メチルクロライド、及びメチルブロマイド等のアルキルハライド、ベンジルクロライド、及びベンジルブロマイド等のアラルキルハライド、ジメチル硫酸、及びジエチル硫酸等のジアルキル硫酸、エピクロロヒドリン等のいずれかとの反応により2級アミンの酸塩としたモノマーが挙げられる。
前記3級アミノ基を有するビニルモノマーとしては、例えばジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、及びジエチルアミノプロピルメタクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、及びジエチルアミノプロピルメタクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類、並びにこれらの塩等を挙げることができる。これらの塩類としては塩酸塩、及び硫酸塩等の無機酸塩類、並びにギ酸塩、及び酢酸塩等の有機酸塩類が挙げられる。
また、前記3級アミノ基を有するビニルモノマーとして、ジアリルアミン、及びジメタリルアミン等の前記2級アミノ基を有するビニルモノマーと、メチルクロライド、及びメチルブロマイド等のアルキルハライド、ベンジルクロライド、及びベンジルブロマイド等のアラルキルハライド、ジメチル硫酸、及びジエチル硫酸等のアルキル硫酸、エピクロロヒドリン等のいずれかとの反応により3級アミンの酸塩としたモノマーが挙げられる。
前記4級アンモニウム塩類を有するビニルモノマーとしては、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジメタリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジエチルアンモニウムクロライド、及びジエチルジメタリルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
また、前記4級アンモニウム塩類を有するビニルモノマーとして、前記3級アミノ基を有するビニルモノマーと4級化剤との反応によって得られるビニルモノマーが挙げられる。前記4級化剤としては、メチルクロライド、及びメチルブロマイド等のアルキルハライド、ベンジルクロライド、及びベンジルブロマイド等のアラルキルハライド、ジメチル硫酸、及びジエチル硫酸等のアルキル硫酸、エピクロロヒドリン、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、並びにグリシジルトリアルキルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
前記4級アンモニウム塩類を有するビニルモノマーとして、具体的には、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、及びメタクリロイルオキシプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
前記ノニオン性ビニルモノマーとしては、例えばアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、スチレン、スチレン誘導体、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、メチルビニルエーテル等が例示でき、これら1種または2種以上使用することができる。
前記架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類や、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N−ビスアクリルアミド酢酸等のビス(メタ)アクリルアミド類や、アジピン酸ジビニル、ジアリルマレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアリルジメチルアンモニウム、グリシジル(メタ)アクリレート等の2官能性ビニルモノマー、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリアリルアミン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート等の3官能性ビニルモノマー、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリレート、テトラアリルアミン塩、テトラアリルオキシエタン等の4官能性ビニルモノマー等が挙げられる。
また、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオンエート等の水溶性アジリジニル化合物や、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等の水溶性の多官能エポキシ化合物、3−(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリフェノキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリアセトキシシラン、等のシリコン系化合物が例示でき、これらを1種または2種以上使用することができる。
また、前記アクリルアミド系樹脂類を得るために前記モノマー類を重合する前後で尿素類やアンモニウム塩類を加えることができ、特に、尿素類を反応前に加えることが好ましい。尿素類としては、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素が挙げられ、アンモニウム塩としては、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム塩などを挙げることができ、これらを1種または2種以上使用することもできる。これらの中でも、尿素または硫酸アンモニウムを使用することが経済的に特に好ましい。尿素の使用量は、アクリルアミド類などのモノマーの合計量に対して、5〜30質量%が好ましい。
アクリルアミド系樹脂類に使用するアクリルアミド類成分とイオン性モノマー成分の質量比は、アクリルアミド類成分/イオン性モノマー成分=100〜50/0〜50、好ましくは98〜80/2〜20である。
アクリルアミド系樹脂類を得る反応は、所定の反応容器に、アクリルアミド系樹脂類の構成成分であるモノマーの合計濃度が5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%となるように仕込み、公知慣用の重合開始剤を使用し、反応温度40〜100℃、1〜10時間の条件下で行う。もちろん、使用するモノマー成分の特徴に合わせて、モノマーを連続滴下する、あるいはモノマーを分割して添加する等により反応を行うこともできる。
アクリルアミド系樹脂類の反応に使用する重合開始剤は、特に限定されるものではなく、公知慣用のものが使用される。ラジカル重合開始剤としては、例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の過酸化物、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム等の臭素酸塩、過ホウ素酸ナトリウム、過ホウ素酸カリウム、過ホウ素酸アンモニウム等の過ホウ素酸塩、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸アンモニウム等の過炭酸塩、過リン酸ナトリウム、過リン酸カリウム、過リン酸アンモニウム等の過リン酸塩等が例示できる。
これらの重合開始剤は単独でも使用できるが、還元剤と組み合わせてレドックス系重合開始剤としても使用できる。還元剤としては、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩あるいはN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の有機アミン、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ化合物、アルドース等の還元糖類が例示できる。これらの重合開始剤は、2種以上併用してもよい。重合開始剤の使用量は、アクリルアミド系樹脂類に使用するモノマーの合計量に対して、通常0.01〜5質量%である。
アクリルアミド系樹脂類は、固形分濃度が5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%の水溶液であり、25℃における粘度(ブルックフィールド回転粘度計)が500〜15,000mPa・s、好ましくは1,000〜10,000mPa・sである。15,000mPa・sを越えると塗工作業性が悪くなることがあり、500mPa・s未満では比破裂強さ、表面強度向上効果に劣る場合がある。
また、アクリルアミド系樹脂類のpHは、反応終了後、酸やアルカリを用いて適宜調整することができる。酸およびアルカリとしては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸化物、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン等のアミン塩基が使用可能である。
前記ポリビニルアルコール類としては、カチオン性ポリビニルアルコール、アニオン性ポリビニルアルコール、両性ポリビニルアルコール、ノニオン性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
前記カチオン性ポリビニルアルコールとしては、3級アミノ基を有するポリビニルアルコールや4級アンモニウム塩となっているポリビニルアルコールを挙げることができる。前記アニオン性ポリビニルアルコールとしては、カルボシキル基を有するポリビニルアルコールなどを挙げることができる。前記両性ポリビニルアルコールは、3級アミノ基などのカチオン性を有する基とアニオン性を有する基を同時に有しているポリビニルアルコールをいう。
前記ポリビニルアルコール類は、様々な方法で製造され、通常はポリビニルエステルの加水分解あるいはアルコリシス(加アルコール分解)によって製造される。このポリビニルエステルには、ビニルエステルの単独重合体、2種以上のビニルエステルの共重合体、およびビニルエステルと他のエチレン性不飽和単量体との共重合体などが含まれる。ここでビニルエステルとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が使用できるが、なかでも工業的に製造され安価な酢酸ビニルが好適に使用できる。ビニルエステルと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体としては、様々なものがあり、特に制限はないが、例えば、α−オレフィン、ハロゲン含有単量体、カルボン酸含有単量体、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエーテル、スルホン酸含有単量体、アミド基含有単量体、アミノ基含有単量体、第4級アンモニウム塩含有単量体、シリル基含有単量体、水酸基含有単量体、アセチル基含有単量体等が挙げられる。
上記ポリビニルアルコール類は、その重合度については特に制限がないが、通常は重合度300〜4000が好ましい。また、ポリビニルアルコール類のケン化度は、特に制限はないが、通常は60〜100モル%、好ましくは80〜100モル%、更に好ましくは95〜100モル%である。
前記澱粉類としては、澱粉そのものである生澱粉、澱粉を原料として各種変性を行って得られる酸化澱粉、カチオン化澱粉、両性澱粉などの化学変性澱粉、ならびにこれら澱粉及び前記化学変性澱粉を酵素変性した酵素変性澱粉などを用いることができる。前記澱粉としては各種の植物、例えば馬鈴薯、さつまいも、タピオカ、小麦、米、とうもろこし等から得られる澱粉等を挙げることができ、これらの誘導体としては、前記澱粉をアセチル化、リン酸エステル化等の変性又は処理した澱粉等を挙げることができる。これらは、粉体でも溶液状でも用いることができる。
カチオン化澱粉とはカチオン変性反応によりカチオン基を導入した澱粉を意味し、酸化澱粉とは酸化反応によりアニオン性基を導入した澱粉を意味し、両性澱粉はカチオン性基及びアニオン性基の両方を導入した澱粉を意味する。
澱粉類の酸化剤としては、従来公知慣用の酸化剤を用いることが出来る。酸化剤としては、具体的には、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸アンモニウム等の次亜塩素酸塩、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の過酸化物、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム等の臭素酸塩、過ホウ素酸ナトリウム、過ホウ素酸アンモニウム等の過ホウ素酸塩、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸アンモニウム等の過炭酸塩、過リン酸ナトリウム、過リン酸カリウム、過リン酸アンモニウム等の過リン酸塩を使用することができる。これらの酸化剤は、1種単独でも使用できるが、2種以上組み合わせて使用しても良い。
澱粉類にカチオン基を導入するにあたっては、例えば、澱粉又はその誘導体を公知のカチオン化剤である3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル・トリメチルアンモニウム・クロライドやグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドあるいはジメチルアミノエチルクロライド等と触媒の存在下に反応させることによって得られる。
酵素分解変成に使用する澱粉分解酵素には各種細菌、酵母、動植物の生産するα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、γ−アミラーゼ、isoアミラーゼ等を挙げることができる。この中でも、過度の低分子物や単糖類を生じさせない点でα−アミラーゼがもっとも好ましい。
上記のクッキングした後の澱粉類の水溶液粘度について特に制限はないが、通常は25℃、固形分濃度10%水溶液の粘度がブルックフィールド型粘度計において、1〜1000mPa・s、好ましくは5〜500mPa・s、更に好ましくは10〜100mPa・sである。
セルロース類等のカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等を挙げることができる。これらは、粉体でも溶液状でも用いることができる。
なお、塗工液として表面紙力剤を塗工する際の塗工液濃度は0.1〜15質量%で行われるのが好ましい。塗工量は原紙のサイズ度、その他を勘案して適宜設定することができるが、通常は固形分で0.05〜5g/m、好ましくは0.1〜2g/mである。
<表面サイズ剤>
表面サイズ剤としては、公知のアニオン性表面サイズ剤又はカチオン性表面サイズ剤を使用することができる。
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
(実施例1〜9、比較例1〜10)
水分散性サイズ剤の調整
アルケニルコハク酸無水物(AS1533、星光PMC株式会社製、15質量部)と表1〜3に記載の各物質を表1〜3に記載の割合で混合した被乳化体と水性高分子分散剤(SP1808、星光PMC株式会社製、18.3質量部)とを混合し、ユニバーサルホモジナイザー(日本静機製作所製)を用いて10000rpmで60秒間乳化操作を行い、水を加え、アルケニルコハク酸無水物 1質量%、粒子径0.8μmの水分散性サイズ剤を得た。なお、表1〜3に記載の実施例における脂肪酸エステルは1気圧、20℃での粘度が100mPa・S以下である。
汚れ評価(粘着性)
ASA加水分解物と表1〜3に示す各物質とを混合し、試料を調製した。各試料について、タッキングテスター(プローブを測定試料に接触させ、引き離す際の荷重を測定する装置)を用いて30℃における引っ張り応力を測定した。引っ張り応力の値が大きいほど、試料の粘着性が高いことを示し、抄紙系内で汚れとして付着しやすいことを示す。なお、ASA加水分解物は、抄紙系内でASAより生じ、ASAより極めて粘着性が高く、製紙工程で汚れとなりやすいので、この粘着性の評価では、ASAの代わりに、ASA加水分解物を用いた。
汚れ評価(水分散性サイズ剤の加水分解速度)
硬度300ppm(炭酸カルシウム)の希釈水で水分散性サイズ剤を0.02質量%の濃度に希釈し、撹拌下、40℃、pH8で一定となるように水酸化ナトリウム水溶液を45分間滴下した。水酸化ナトリウムの滴下量から、水分散性サイズ剤の加水分解率を算出した。加水分解率が高いほど、加水分解速度が速いことを示す。加水分解速度が速いほどASA加水分解物がより早く生成するため汚れが発生しやすいことを示す。加水分解率が70%以上になるとほとんどの場合、汚れが発生する。
汚れ評価(脂肪酸エステルの安定性)
上記のようにして調整した水分散性サイズ剤(濃度0.1質量%)及び軽質炭酸カルシウム(タマパール121、奥多摩工業株式会社製、濃度1質量%)のスラリーを調整し、40℃で48時間撹拌した後、脂肪酸エステルの分解をH−NMRで確認した。脂肪酸エステルが分解すると汚れが発生しやすい。
Figure 0005408560
Figure 0005408560
Figure 0005408560
表1から特定の脂肪酸エステルをASAに混合することで、ASAの加水分解物の粘着性を低減することが可能であり、またASAの加水分解速度を遅くすることが可能であることが分かる。ただし、特定の脂肪酸エステル以外の非セルロース反応性サイズ剤になりうる脂肪酸多価エステルは粘着性を低減出来るものがあるものの、ASAの加水分解が早く、グリセリンとパルミチン酸エステルまたはステアリン酸エステルのような多価脂肪酸エステルの場合は粘着性を低減する効果は見られなかった。また、多価脂肪酸エステルが固体であるため、エマルション化することもできなかった。さらに、特定の脂肪酸エステル以外の非セルロース反応性サイズ剤になりうる親油性物質として、パラフィンオイル、大豆油について検討したところ、ASA加水分解物の粘着性低減効果は見られなかった。かつ、ASAの加水分解速度を遅くする効果も見られなかった。また、脂肪酸エステルの原料となりうるパーム油を検討したところ、ASAの加水分解物の粘着性低減効果は見られたものの、ASAの加水分解速度を遅くする効果は全く見られなかった。
表2から特定の脂肪酸エステルの占める割合が5質量%と少ない場合、粘着性の低減効果が少なく、かつASAのエマルションの加水分解速度が速く(70質量%を超える)なる。一方、エステルの占める割合が多い場合、50質量%と60質量%ではその効果に差は見られないため、特定の脂肪酸エステルのASAへの混合の効果は50質量%で頭打ちし、特定の脂肪酸エステルの割合を増やすことによるサイズ効果の低減が問題になる可能性があるため、特定の脂肪酸エステルの混合量は10〜50質量%が好ましい。
表3から特定の脂肪酸メチル、エチルのようなエステルのアルコール部分の炭素数が少ない特定の脂肪酸エステルは48時間で分解することが分かる。特定の脂肪酸エステルが分解することで、前述した汚れ防止効果は低下するため、48時間を超える長期的なサイズ剤組成物の滞留がある場合においては、脂肪酸エステルのアルコール部分の炭素数が4以上であることが望ましい。
(実施例11〜25、比較例11〜20)
水分散性サイズ剤の調製
表1〜表3に記載の各物質及びその使用割合に代えて表4〜6に記載の各物質を表4〜6に記載の割合で用いたこと以外は、実施例1と同様にして水分散性サイズ剤を調製した。なお、表4〜6に記載の実施例における脂肪酸エステルは1気圧、20℃での粘度が100mPa・S以下である。
汚れ評価(金属板への汚れ付着量)
カナディアンスタンダードフリーネス315、灰分15%に調整した段ボール古紙パルプを用い、パルプ固形分に対して、前述のように調製した水分散性サイズ剤を有効成分として0.2質量%、ピッチコントロール剤(AC7314、星光PMC株式会社製)をパルプ固形分に対して、固形分として0.05質量%となるように添加し、電導度100mS/mの用水で0.8質量%に希釈した後、高分子歩留まり剤(NR12MLS、ハイモ社製)をパルプ固形分に対して、固形分として0.02質量%となるように添加した。このパルプスラリーのpHは、7.2であった。また、上述したようにパルプスラリーのアルカリ度を測定したところ108ppmであった。このパルプスラリーを45℃で60分撹拌した後、定法に従い、角型シートマシンで坪量100g/mとなるよう手抄きを行い、湿紙に金属板を乗せ、4.2kgfで2分間、平面プレスを行った。湿紙から金属板を剥離し、金属板への汚れの付着量を目視で5段階評価した(汚れが最も少ない場合を1とし、汚れが増加するにしたがい評価数値を大きくし、汚れが最も多い場合を5とした。)。金属板への汚れの付着量が多い程、抄紙系内で汚れが付着し易い。
サイズ評価
カナディアンスタンダードフリーネス311、灰分15%に調整した段ボール古紙パルプを用い、パルプ固形分に対して、前述のように調製した水分散性サイズ剤を有効成分として0.2質量%、ピッチコントロール剤(AC7314、星光PMC株式会社製)をパルプ固形分に対して、固形分として0.05質量%となるように、併用薬品の評価を行う際には表3に記載の併用薬品を順次パルプ固形分に対して、表6中の使用割合となるように添加し、電導度100mS/mの用水で0.8質量%に希釈した後、高分子歩留まり剤(NR12MLS、ハイモ社製)をパルプ固形分に対して、固形分として0.02質量%となるように添加した。このパルプスラリーのpHは、7.2であった。また、上述したようにパルプスラリーのアルカリ度を測定したところ110ppmであった。このパルプスラリーを45℃で60分撹拌した後、ノーブルアンドウッド社製シートマシンで坪量80g/mとなるよう手抄きを行い、ドラムドライヤー100℃、80秒の条件で乾燥した。得られた紙を23℃、50%RHの恒温恒湿室中で24時間調湿した後、JIS P 8140 に準拠して120秒のコブ(Cobb)サイズ度を測定した。
Figure 0005408560
Figure 0005408560
Figure 0005408560
表6中の略号の説明
AC7314:星光PMC株式会社製 有機系カチオン性ピッチコントロール剤
DS4416:星光PMC株式会社製 両性アクリルアミド系紙力剤
DH4162:星光PMC株式会社製 ホフマン変性アクリルアミド系紙力剤
Cato304:日本NSC株式会社製 カチオン化澱粉をクッキングして糊状にして使用
Cato3210:日本NSC株式会社製 両性澱粉をクッキングして糊状にして使用
表4から特定の構造を有する脂肪酸エステルをASAに混合し、この混合物を特定のパルプスラリーに添加することで、汚れの付着量が低減することが可能であることが分かる(実施例11〜16)。
しかし、本発明の特定の構造を有しない多価のアルコールからなる脂肪酸エステルの場合、汚れの低減効果がほとんどないことが分かる(比較例11〜14)。また、脂肪酸エステル以外の親油性物質としてパラフィンオイル、大豆油、パーム油について検討を行ったところ、こちらは汚れの低減効果は全くないことが分かる(比較例15〜17)。
表4からサイズ評価において、特定の構造を有する脂肪酸エステルをASAに混合し、この混合物を特定のパルプスラリーに添加することで、抄紙系内で45℃60分という、置換コハク酸無水物が加水分解することによりサイズ効果が低下するのに十分な時間が経過しても、優れたサイズ効果を示すことが分かる(実施例11〜16)。しかし、本発明の特定の構造を有しない多価のアルコールからなる脂肪酸エステルの場合、サイズ効果は低いことが分かる(比較例11〜14)。
表5から本発明の特定の構造を有する脂肪酸エステルをASAに混合する割合は、10〜50%が好ましいことが分かる(実施例11、17〜19)。10%未満では汚れの防止効果が小さく、50%を超えるとサイズ効果が著しく低下していることが分かる(比較例18〜20)。
表6から抄紙系で併用する薬品としては、有機系カチオン性ピッチコントロール剤(AC7314)、ホフマン変性アクリルアミド系紙力剤(DH4162)、及び硫酸バンドが汚れ防止効果に優れ、有機系カチオン性ピッチコントロール剤(AC7314)、ホフマン変性アクリルアミド系紙力剤(DH4162)、カチオン化澱粉(Cato304)、両性澱粉(Cato3210)がサイズ向上効果に優れることが分かる(実施例11、20〜25)。特に、有機系カチオン性ピッチコントロール剤(AC7314)、ホフマン変性アクリルアミド系紙力剤(DH4162)は汚れ防止効果とサイズ向上効果の両方に優れており、併用することが望ましいことが分かる(実施例20、22)。

Claims (7)

  1. (A)1気圧及び20℃の条件下で液状であり、かつ下記の式(1)の構造式で示される脂肪酸エステル及び(B)置換コハク酸無水物の混合物を被乳化体とし、かつ、
    前記(A)脂肪酸エステルと前記(B)置換コハク酸無水物との質量比[(A):(B)]が50:50〜10:90であることを特徴とするサイズ剤組成物。
    −COO−R・・・式(1)
    (但し、式中のRは炭素数5〜30のアルキル基又はアルケニル基を示し、式中のRは炭素数1〜30のアルキル基を示し、RとRとは同一であっても異なっていてもよい。)
  2. (A)脂肪酸エステルは、前記式(1)におけるRの炭素数が4〜30である請求項1に記載のサイズ剤組成物。
  3. 請求項1に記載のサイズ剤組成物を用いて抄紙系内の汚れを低減する抄紙方法。
  4. (1)pHが6.5〜8.5、
    (2)アルカリ度が50〜400ppm、及び
    (3)電導度が50〜250mS/m
    であるパルプスラリーに、
    (4)請求項1に記載のサイズ剤組成物
    を添加して抄紙を行うことを特徴とする板紙の製造方法。
  5. (A)脂肪酸エステルは、前記式(1)におけるRの炭素数が4〜30である請求項4に記載の板紙の製造方法。
  6. ピッチコントロール剤を請求項4に記載のパルプスラリーに添加することを特徴とする請求項4又は5に記載の板紙の製造方法。
  7. 紙力剤としてポリアクリルアミド系重合体及び/又は澱粉類を請求項4に記載のパルプスラリーに添加することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の板紙の製造方法。
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