以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明によるフロントフォークは、二輪車(図示せず)の前輪側に架装されて走行中の二輪車の前輪(図示せず)に入力される路面振動を吸収する油圧緩衝器として機能する。
ちなみに、この発明のフロントフォークは、二輪車の前輪側に架装されると言うが、二輪車と言うのは、言葉上の問題であって、三輪車の前輪側に架装されても良く、また、バギー車などの四輪車両における前輪側に架装されても良いことはもちろんである。
そして、このフロントフォークは、上端側が二輪車における車体側たるハンドル(図示せず)側に結合されながら下端部で前輪を懸架するフォーク本体(符示せず)と、このフォーク本体内に収装されてこのフォーク本体の伸縮時に同期して伸縮し所定の減衰作用をするダンパ(符示せず)とを有してなる。
ちなみに、フロントフォークを二輪車の前輪側に架装するについては、図示しないが、左右となる二本のフロントフォークの上端側部をあらかじめブリッジ機構で一体化し、各フロントフォークの下端部を前輪の車軸に連結させて前輪を挟むようにして懸架する。
そして、ブリッジ機構は、図示しないが、フロントフォークを構成する車体側チューブにおける上端部の上方側部に連結されるアッパーブラケットと、下方側部に連結されるアンダーブラケットとを有し、それぞれが両端部に形成の取り付け孔に車体側チューブにおける上端部を挿通させて一体的に把持する。
また、このブリッジ機構は、同じく図示しないが、アッパーブラケットとアンダーブラケットとを一体的に連結する一本のステアリングシャフトを両者の中央に有し、このステアリングシャフトが二輪車における車体の先端部を構成するヘッドパイプ内に回動可能に導通され、これによって、ハンドル操作による二本のフロントフォークを介しての前輪における左右方向への転舵が可能になる。
図1は、この発明によるフロントフォークを原理的に示すが、この図1にあって、フォーク本体は、大径のアウターチューブからなり上端側がハンドル側に結合される車体側チューブ1と、この車体側チューブ1の下端側に上端側が出没可能に挿通されながら下端部で前輪を懸架する小径のインナーチューブからなる車輪側チューブ2とでテレスコピック型に形成されて伸縮可能とされる。
ちなみに、図示するところでは、フォーク本体が大径のアウターチューブを車体側チューブ1にする倒立型に設定されるが、この発明の具現化の観点からすれば、フォーク本体が大径のアウターチューブを車輪側チューブ2にする正立型に設定されても良い。
そして、このフォーク本体は、軸芯部に筒型に形成されて正立型に設定のダンパを有するが、このダンパの外となる内側をリザーバRにし、このリザーバRは、作動流体たる作動油を収容すると共に、作動油の液面たる油面Oを境にする気室Aを有する。
また、この発明にあって、フォーク本体内の気室Aには、フォーク本体が最伸長状態にあるときに、大気圧以上となる気圧を封入するが、このことについては、後に詳しく説明する。
ダンパは、シリンダ体3と、このシリンダ体3内に図中で下端側となる先端側が出没可能に挿通されるロッド体4とを有し、図示するところでは、シリンダ体3を下端側部材にすると共にロッド体4を上端側部材にする正立型に設定され、シリンダ体3が車輪側チューブ2の軸芯部に起立されると共にロッド体4が車体側チューブ1の軸芯部に垂設されてなる。
なお、図示するところでは、フォーク本体がいわゆる中立状態にあるときのリザーバRにおける油面Oの高さ位置を示すが、フォーク本体が最伸長状態になって油面Oが最下降する場合であっても、ダンパにおけるシリンダ体3の上端部たるヘッド端部3aが作動油中にあって、シリンダ体3内への作動油の充満が容易になるように設定されるのが好ましい。
一方、このダンパは、ロッド体4の先端に連結されながらシリンダ体3内に摺動可能に収装されるピストン体5を有し、このピストン体5は、シリンダ体3内にピストン体5の上方となるロッド側室R1とピストン体5の下方となるピストン側室R2とを画成すると共にロッド側室R1のピストン側室R2への連通を許容する伸側減衰手段を有し、この伸側減衰手段は、伸側減衰バルブ5aとこれに並列する伸側チェック弁5bとを有し、伸側減衰バルブ5aを作動油が通過するときに所定の伸側減衰作用を具現化させる。
なお、伸側減衰手段にあって、伸側チェック弁5bについては、所定のチェック弁機能を果たす限りにおいて、任意の構成とされて良く、たとえば、吸い込みバルブとされても良く、また、圧側減衰バルブとされても良い。
また、このダンパにあっては、シリンダ体3の言わばボトム端部3bに設けられるベースバルブ部6に圧側減衰手段を有し、この圧側減衰手段は、圧側減衰バルブ6aとこれに並列する圧側チェック弁6bとを有し、ピストン側室R2の作動油が圧側減衰バルブ6aを通過してシリンダ体3の外となるリザーバRに流出するときに所定の圧側減衰作用を具現化する。
それゆえ、以上のように形成されたダンパにあっては、シリンダ体3内にロッド体4が没入する収縮作動時に、ピストン側室R2の作動油が伸側チェック弁5bを通過してロッド側室R1に流入する。
そして、このとき、ピストン側室R2において余剰となるロッド侵入体積分に相当する量の作動油が圧側減衰手段6における圧側減衰バルブ6aを通過してリザーバRに流出し、圧側減衰バルブ6aを作動油が通過することで所定の圧側減衰作用が具現化される。
一方、このダンパにあっては、上記と逆に、シリンダ体3内からロッド体4が突出する伸長作動時に、ロッド側室R1の作動油が伸側減衰バルブ5aを通過してピストン側室R2に流出し、伸側減衰バルブ5aを作動油が通過することで所定の伸側減衰作用が具現化される。
そして、このとき、ピストン側室R2において不足するロッド退出体積分に相当する量の作動油が圧側減衰手段6における圧側チェック弁6bを通過してリザーバRから補充される。
ちなみに、前記したように、この発明にあっては、ダンパが正立型に設定されて、シリンダ体3が常に油面Oの下方にあるように位置決められるから、シリンダ体3内への作動油の充満に完全を期すことが可能になり、伸側減衰手段および圧側減衰手段による各側の減衰作用の具現化が設定通りに可能になる。
ダンパが以上のように形成されるこの発明のフロントフォークにあっては、上記したように、最伸長状態にあるフォーク本体内に、すなわち、リザーバRに油面Oを境にして画成される気室Aに大気圧以上となる気圧が封入され、また、この大気圧以上となる気圧の封入に伴う言わば弊害を除去するために抑制手段(符示せず)をフォーク本体内に有してなる。
少し説明すると、この発明によるフロントフォークにあっては、最伸長状態にあるフォーク本体内に油面Oを境にして画成される気室Aに大気圧以上となる気圧を封入して伸長方向の反力を具有させる。
すなわち、出願人が確認したところでは、車輪側チューブ2の外径がほぼ48mmで収縮ストローク長さがほぼ300mmとなるフォーク本体が最伸長状態にあるときに、気室Aに大気圧以上となるほぼ0.3MPaの気体を封入すると、このフォーク本体の最収縮状態時の内圧がほぼ1.5MPaとなる。
このことから、このフロントフォークにあっては、フォーク本体が最伸長状態にあるときに、フォーク本体内に大気圧以上となる気圧を封入することで、フォーク本体内を高圧傾向に維持でき、したがって、フォーク本体が収縮作動を開始するとき、すなわち、収縮作動の開始当初から安定した収縮作動を可能にする。
そして、このフロントフォークにあっては、フォーク本体内に大気圧以上の気圧を封入して伸長方向の反力を具有させるから、フォーク本体が常時伸長方向に附勢され、懸架バネを有せずしてフォーク本体を伸長方向に附勢し得ることになり、その限りにおいて、懸架バネを有しない分、懸架バネの配在のための容積を削減でき、また、重量の軽減と部品点数の削減を可能にする。
以上のように、この発明によるフロントフォークにあっては、最伸長状態にあるフォーク本体内に大気圧以上となる気圧を封入して伸長方向の反力を具有させ、これによって、懸架バネを有せずしてフォーク本体を伸長方向に附勢する。
それに対して、文献などを示さないが、これまでにも懸架バネを有せずして封入した気圧で、すなわち、エアバネのみでフォーク本体を伸長方向に附勢するフロントフォークの提案がある。
また、フロントフォークの組立の際には、フォーク本体内に封入される気圧が大気圧以上でないと、フロントフォークの組立が不可能に近いほど困難になることも周知されている。
ことからすると、この発明において、フォーク本体内に大気圧以上となる、たとえば、ほぼ0.3MPa以上となる気圧を封入することについては、何等特異性を有しないとされる余地がある。
しかしながら、この発明にあっては、フォーク本体内に大気圧以上の気圧を封入して伸長方向の反力を具有させることによる言わば弊害の除去として抑制手段を有する、すなわち、このフォーク本体が最伸長状態から収縮する所定のストローク領域内における伸長方向の反力を抑制する抑制手段を有することで特異性がある。
すなわち、この発明のフロントフォークにあっては、最伸長状態にあるフォーク本体が封入される気圧に起因する伸長方向の反力を具有するから、最伸長状態から収縮作動を開始するときには、この封入された気圧に起因する伸長方向の反力を有しない場合に比較して、たとえば、このフロントフォークを前輪側に架装する二輪車に搭乗するライダーにあっては、フロントフォークが硬いと言う印象を抱くことがあるが、この最伸長状態時に封入された気圧に起因する伸長方向の反力を抑制することで、二輪車に搭乗するライダーにあって、フロントフォークが硬いと言う印象を抱かなくなる。
そして、上記の所定のストローク領域は、最伸長状態から開始される収縮ストロークの領域で、好ましくは、最伸長状態から最収縮状態になるまでの全ストロークの前側のほぼ1/3のストローク領域であるが、これは絶対的なものでなく、多少の差があっても、この発明における抑制手段の意図するところが異なるものではない。
そしてまた、この抑制手段は、図示するところでは、コイルスプリングからなるバランスバネSを有し、このバランスバネSは、シリンダ体3の外に配設されて、収縮状態になるときに伸長力を具有し、シリンダ体3内にロッド体4を没入させる方向に、すなわち、フォーク本体を収縮方向に附勢する。
このフォーク本体を収縮方向に附勢する意味からすると、このバランスバネSは、凡そこの種のダンパに収装される伸び切りバネ53(図2,図3参照)と同様のバネ、すなわち、次なる伸び切りバネとも称される余地がある。
しかし、このバランスバネSは、最伸長状態にあるフォーク本体における伸長方向の言わば初期反力を相殺する観点からすると、ダンパにおける最伸長作動時における作用力を吸収する伸び切りバネ53とは、異なった働きをする。
ところで、このバランスバネSは、図示するところでは、ダンパにおけるシリンダ体3の外に配設される、すなわち、シリンダ体3の外周に巻装されて、ダンパが図示する中立状態にあるときに、最伸長状態になって、下端がロッド体4に連結の有頭筒状に形成のケース体7における筒部71の下端部に担持され、上端がシリンダ体3のヘッド端部3aを構成するロッドガイド23(図2,図3参照)におけるフランジ部23a(図2,図3参照)に係止される。
そして、このバランスバネSにあっては、図示しないが、ダンパが最伸長状態になるときに、上端が上記のフランジ部23aに係止された状態のまま上記の筒部71における下端部が上昇することで最収縮状態になり、自身が伸長しようとする力、すなわち、ダンパを収縮しようとする反力を具有する。
そして、このバランスバネSは、収縮時にその伸長力によって、ダンパ、すなわち、フォーク本体を収縮方向に附勢するもので、フォーク本体が伸長作動して最伸長状態になる手前から始まる上記のストローク領域にあって、このバランスバネSが収縮し、伸長するフォーク本体における動きを抑制する傾向になり、特に、最伸長状態にあるフォーク本体における伸長方向の反力を言わば零にする。
その結果、このフロントフォークを前輪側に架装する二輪車に搭乗するライダーに対して、最伸長状態から収縮作動を開始するフロントフォークが硬いと言う印象を抱かせないことが可能になる。
そして、上記のバランスバネSにあっては、これがシリンダ体3の外周に巻装されるから、最収縮状態になるときのバックリング現象の発現があらかじめ阻止される。
そして、この実施形態による場合には、バランスバネSがシリンダ体3の外に配設されて、シリンダ体3の内側に配設されないから、バランスバネSの配設が容易になり、また、シリンダ体3の内周を傷付けない点で有利となる。
また、この実施形態による場合には、バランスバネSを配設するについて、フォーク本体を構成する車体側チューブ1および車輪側チューブ2に対するいわゆる部品加工が不要になり、既存のフロントフォークに具現化できる点で有利となる。
なお、上記したケース体7についてであるが、要は、頭部72がロッド体4に一体的に連結されていれば良く、また、頭部72の形成で筒部71の内側が上方に開放されないので、筒部71に縦方向に複数となる連通孔71a(図2,図3参照)を設け、あるいは、頭部72に絞り72aを設けるなどして、筒部71の内側をリザーバRに連通させ、油面Oの位置を安定させるのが良い。
また、上記したケース体7にあっては、相対的に見て、筒部71の内側でシリンダ体3のヘッド端部3aを構成するロッドガイド23におけるフランジ部23aが昇降するので、特に、このフランジ部23aが上昇するときに、このフランジ部23aの外周と筒部71の内周との間に出現する環状隙間を作動油が通過することによる減衰作用が具現化されるとしても良い。
また、上記したケース体7は、図示するところでは、ロッド体4に連結されるが、要は、ロッド体4、つまり、車体側チューブ1と同期して昇降すれば足りるから、この観点からすれば、図示しないが、たとえば、車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材14(図2,図3参照)に連結されても良い。
図2乃至図5は、この発明によるフロントフォークの具体的な実施形態について示すもので、以下には、これについて説明するが、このフロントフォークにあっても、符示しないが、フォーク本体を有し、このフォーク本体内に作動流体たる作動油を収容すると共にダンパを収装し、さらに、フォーク本体内に大気圧以上の気圧を封入し、抑制手段を有する。
ちなみに、以下に説明するについて、図2乃至図5において、その構成が前記した図1に示すところと同様となるところについては、図中に同一の符号を付するのみとして、要する場合を除き、その詳しい説明を省略する。
先ず、図2および図3に示すように、このフロントフォークにあって、フォーク本体は、車体側チューブ1内に対して車輪側チューブ2が出没可能とされるテレスコピック型に形成されて伸縮可能とされる。
このとき、フォーク本体にあって、車体側チューブ1と車輪側チューブ2との間に上下となって離間配置とされる上方の軸受21と下方の軸受11とを有し、この離間配置される上下の軸受21,11が車体側チューブ1と車輪側チューブ2との間における同芯となる摺動性を保障する。
また、このフォーク本体にあっては、離間配置される上方の軸受21と下方の軸受11とで車体側チューブ1と車輪側チューブ2との間に潤滑隙間(符示せず)を出現させ、この潤滑隙間に車輪側チューブ2に開穿の連通孔2a(図3参照)を通過させて車輪側チューブ2の内方の作動油を流入させ、この作動油を潤滑油にして車体側チューブ1と車輪側チューブ2との間における潤滑を保障する。
さらに、このフォーク本体にあっては、車体側チューブ1の下端部となる開口端部の内周に下方の軸受11に直列してオイルシール12とダストシール13とを有し、オイルシール12の配設でフォーク本体内を密封空間にし、ダストシール13の配設で車輪側チューブ2の外周に付着する微小な砂粒などのダストを掻き落し、このダストがオイルシール12側に侵入することを阻止して、オイルシール12におけるシール機能を保障する。
また、このフォーク本体にあって、車体側チューブ1の上端開口は、キャップ部材14の螺着で閉塞され、このキャップ部材14は、エアバルブVを有し、このエアバルブVは、フォーク本体内への気圧の封入および封入された気圧の変更調整を可能にする。
そして、このフォーク本体にあっては、車体側チューブ1内に車輪側チューブ2が大きいストロークで没入する最収縮作動時に、それ以上の収縮を阻止するべく、図3に示すように、車輪側チューブ2の上端が上記のキャップ部材14の下端側に当接される。
なお、フォーク本体は、図示しないが、オイルロック機構を有し、このオイルロック機構によって最収縮作動時にクッション効果を発揮してフォーク本体の収縮速度を遅速化させると共に、オイルロック効果を発揮してフォーク本体の最収縮作動時における衝撃を緩和しても良い。
さらに、フォーク本体についてであるが、図示するところでは、大径のアウターチューブが車体側チューブ1にされると共に、細径のインナーチューブが車輪側チューブ2とされる倒立型に設定されるが、この発明が意図するところからすると、これに代えて、図示しないが、アウターチューブが車輪側チューブ2とされると共に、インナーチューブが車体側チューブ2とされる正立型に設定されても良い。
ただ、後述するダンパは、この発明にあって、倒立型に設定されるのを旨とするので、フォーク本体が正立型に設定されても、ダンパが正立型から倒立型に変更されない。
一方、このフォーク本体は、リザーバRとされる内方に作動油を収容すると共にダンパを有し、このダンパは、下端部がインナーチューブ1のボトム部材22に結合されながら車輪側チューブ2の軸芯部に起立されて下端側部材とされるシリンダ体3と、このシリンダ体3内に下端側が出没可能に挿通されて上端側部材とされるロッド体4とを有して正立型に設定される。
そして、ロッド体4は、上端部がロックナット41の配設下に車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材14に結合されて、車体側チューブ1の軸芯部に垂下される。
そして、このダンパにあっては、作動油を充満するシリンダ体3内にピストン体5が摺動可能に収装され、このピストン体5にはロッド体4の図中で下端部となる先端部が連結される。
そしてまた、ピストン体5は、シリンダ体3内にピストン体5の上方となるロッド側室R1とピストン体5の下方となるピストン側室R2とを画成すると共に、ロッド側室R1のピストン側室R2への連通を許容する伸側減衰手段を有する。
そして、この伸側減衰手段は、ロッド側室R1の作動油のピストン側室R2への通過を許容する伸側減衰バルブ51と、この伸側減衰バルブ51に並列してピストン側室R2からの作動油のロッド側室R1への流入を許容する伸側チェック弁52とを有してなる。
一方、シリンダ体3は、図中で上端とる開口端をロッドガイド23の螺着で閉塞すると共に、このロッドガイド23の配設でシリンダ体3の上端部たるヘッド端部3a(図1参照)を形成している。
そして、このヘッド端部3aを形成するロッドガイド23の下端部と、このロッドガイド23の軸芯部を貫通するロッド体4におけるピストン体5に近隣するシート部4aとの間に伸び切りバネ53が配設され、この伸び切りバネ53は、図2に示すように、ダンパが最伸長状態になるときに、ロッドガイド23の下端部とシート部4aとの間に挟持されて最収縮され、ダンパにおける最伸長作動時の作用力を吸収する。
なお、シリンダ体3の下端部たるボトム端部(符示せず)の内側には、図示しないが、圧側減衰手段を有するベースバルブ部(図1中の符号6参照)が配設され、このベースバルブ部は、圧側減衰手段を構成する圧側減衰バルブ(図1中の符号6a参照)を有すると共に、この圧側減衰バルブに並列する圧側チェック弁(図1中の符号6b参照)を有してなる。
ところで、この発明によるフロントフォークにあって、フォーク本体は、最伸長状態にあるときに、大気圧以上となる気圧を封入し、したがって、伸長方向の反力を具有し、懸架バネの配設なくして、伸長方向に附勢される。
すなわち、このフォーク本体にあっては、内側たるリザーバRにおいて油面Oを境にする気室Aは、基本的には、フォーク本体の伸縮作動時に膨縮して、その膨縮の際に所定のエアバネ力、すなわち、チューブ反力を発生するが、この発明にあっては、フォーク本体の最伸長作動時に、大気圧以上となる、たとえば、ほぼ0.3MPaとなる気圧が封入される。
それゆえ、このフロントフォークにあっては、最伸長状態時にもダンパ内を昇圧傾向に維持することが可能になり、また、ダンパにおけるシリンダ体3内を昇圧化させる。
それゆえ、ダンパにあっては、ダンパが伸長作動するときにピストン側室R2において負圧化現象が発現されずして作動油中への気泡の発生が阻止され、したがって、ダンパが最伸長状態から反転して収縮作動を開始するときに、ピストン側室R2において作動油中の気泡が潰れるまでの間、所定の圧側減衰作用の発現を期待できなくなる「減衰作用のサボリ」現象の発現を阻止し得る。
一方、このフロントフォークにあっては、フォーク本体が最伸長状態にあるときに、大気圧以上となる気圧を封入するから、この気圧に起因するエアバネ力でフォーク本体を伸長方向に附勢することが可能になり、したがって、特許文献1に開示などの従前からのフロントフォークにあって当然のようにフォーク本体内に収装されている懸架バネの配設を省略できる。
ところで、この発明のフロントフォークにあって、フォーク本体が最伸長状態にあるときに、リザーバR内の気室Aに大気圧以上となる気圧を封入するから、 前記したように、最伸長状態から収縮作動を開始するときには、この封入された気圧に起因する伸長方向の反力を有しない場合に比較して、たとえば、このフロントフォークを前輪側に架装する二輪車に搭乗するライダーにあっては、フロントフォークが硬いと言う印象を抱くことがある。
そこで、同じく前記したが、この発明にあっては、この最伸長状態時に封入された気圧に起因する伸長方向の反力を抑制手段によって抑制することで、二輪車に搭乗するライダーにあって、フロントフォークが硬いと言う印象を抱かせないようにする。
そして、抑制手段が抑制する領域は、最伸長状態から開始される収縮ストロークの領域で、好ましくは、最伸長状態から最収縮状態になるまでの全ストロークの前側のほぼ1/3のストローク領域となる所定のストローク領域であるが、これは絶対的なものでなく、多少の差があっても、この発明における抑制手段の意図するところが異なるものではない。
そしてまた、この抑制手段は、図示するところでは、コイルスプリングからなるバランスバネSを有し、このバランスバネSは、シリンダ体3の外に配設されて、収縮状態時に伸長力によってシリンダ体3内にロッド体4を没入させる方向に、すなわち、フォーク本体を収縮方向に附勢する。
一方、このバランスバネSは、図示するところにあって、シリンダ体3の外周に巻装されて、下端がロッド体4に連結されたケース体7における筒部71の下端部71aに担持される。
そして、このバランスバネSにあっては、図2に示すフォーク本体の最伸長作動時には、上端がシリンダ体3のヘッド端部3aを形成するロッドガイド23におけるフランジ部23aに係止されて最収縮状態になる。
そしてまた、このバランスバネSにあっては、図3に示すフォーク本体の最収縮作動時には、上端が上記のロッドガイド23におけるフランジ部23aから離脱していわゆる自由端となる。
なお、上記したケース体7にあって、頭部72は、適宜の手段でロッド体4に一体的に連結されるが、このとき、頭部72が筒部71の内側のリザーバRへの連通を阻止するとき、筒部71の内側に作動油が溜まる弊害を除去するために、筒部71に縦方向に複数となる連通孔71aを設け、あるいは、頭部72に絞り72aを設けるなどして、筒部71の内側をリザーバRに連通させるのが良い。
そして、この場合には、筒部71内にあって、油面Oの位置が安定され、頭部72に開穿された絞り72aを作動油が通過することで、また、図示しないが、上記のロッドガイド23におけるフランジ部23aが筒部71内を上昇するようになるとき、筒部71の内周とフランジ部23aの外周との間に環状隙間が出現し、この環状隙間を作動油が通過することで、絞り効果による減衰作用の具現化が可能になる。
以上のように、この発明における抑制手段たるバランスバネSにあっては、これがシリンダ体3の外周に巻装されるから、これが最収縮するときのバックリング現象の発現が阻止されて、設定通りの伸縮が具現化される。
そして、このバランスバネSは、最収縮状態にあるときに伸長方向の反力で最伸長状態にあるフォーク本体を収縮方向に附勢して、最伸長状態にあるフォーク本体が具有する伸長方向の反力を言わば零にするから、このフロントフォークを前輪側に架装する二輪車に搭乗するライダーにあっては、最伸長状態にあるフロントフォークが硬いと言う印象を抱かないことになる。
図4乃至図6および図7乃至図9に示すところは、たとえば、前記した図3に示すように、バランスバネSが最伸長状態にあるときに、上端がロッドガイド23におけるフランジ部23aから離脱して、あるいは、図示しないが、下端がケース体7の下端部たるバネ受部71cから離脱して、いわゆる自由端となるのを阻止する保持手段を示す。
すなわち、保持手段は、基本的には、最伸長状態にあるバランスバネSの上端あるいは下端における自由状態の発現を阻止して、バランスバネSのシリンダ体3の外周やロッド体4の外周におけるいわゆる遊動による騒音発生を効果的に阻止する。
その一方で、図示する保持手段は、フォーク本体が最伸長状態から収縮状態に反転し、引き続きフォーク本体が最収縮状態になるときに、一旦伸長したバランスバネSを再度最収縮させることを可能にする。
そして、フォーク本体が最収縮状態になるときに、最収縮されるバランスバネSが伸長方向の反力を具有することで、最収縮状態になるフォーク本体において伸長方向の反力を大きくし、最収縮作動時における衝撃吸収を効果的に実現可能にする。
ちなみに、このように、フォーク本体の最伸長状態時に、最収縮状態になって、フォーク本体を収縮方向に附勢するバランスバネSが一旦伸長してから引き続き収縮する設定とする場合には、フォーク本体における最収縮作動時における衝撃を効果的に緩和させるために、フォーク本体内に封入される気圧を著しく高く設定しなくても済む点で有利となる。
先ず、図4に示すところは、フォーク本体が最収縮状態にあるときに、バランスバネSも最収縮状態にあり、図5に示すところは、フォーク本体が最収縮状態から伸長状態に反転することで、バランスバネSが伸長状態になり、図6に示すところは、フォーク本体が最伸長状態になって、バランスバネSが再度最収縮状態になったところを示す。
そして、バランスバネSを保持する保持手段であるが、図示するところでは、ロッド体4に一体的に連結されたケース体7における筒部71の内周に形成の環状溝71bと、同じく筒部71の下端部たるバネ受部71cと、シリンダ体3の外周に形成の環状溝3cに嵌装されたストップリング24と、シリンダ体3のヘッド端部3aを構成するロッドガイド23におけるフランジ部23aとからなる。
すなわち、図示するところにあって、バランスバネSは、図5に示すように、最伸長状態にあるときには、ケース体7における筒部71の内周に形成の環状溝71bに収装され、この状態で上端がこの環状溝71bにおける上端部に係止されると共に、下端が上記のバネ受部71cに担持され、それゆえ、上下端におけるいわゆる遊びが阻止される。
そして、このバランスバネSは、図4に示す最収縮状態にあるときには、上端が上記の環状溝71bにおける上端部に係止され、下端が上記のストップリング24に担持される。
そしてまた、このバランスバネSは、図6に示す最収縮状態にあるときには、上端が上記のロッドガイド23におけるフランジ部23aに係止され、下端が上記のストップリング24に担持される。
ちなみに、この図4乃至図6に示すところにあって、バランスバネSは、シリンダ体3の外周に巻装され、したがって、最収縮作動時におけるバックリング現象の発現が効果的に阻止される。
それゆえ、上記した保持手段にあっては、バランスバネSが最伸長状態になるときに、上端あるいは下端が自由端となって遊動することを阻止し、遊動に起因する騒音発生を招来させない。
そして、この保持手段が利用される場合には、車体側チューブ1や車輪側チューブ2にいわゆる部品加工をしなくて済み、既存のフロントフォークをそのまま利用できる点で有利となる。
一方、バランスバネSにあっては、前述したように、フォーク本体が最伸長状態になるときに最収縮状態になって、その伸長力で、つまり、負の反力でフォーク本体を収縮方向に附勢する。
それゆえ、最伸長状態にあるフォーク本体は、具有する伸長方向の反力が言わば零にされて、このフロントフォークを前輪側に架装する二輪車に搭乗するライダーにあって、最伸長状態にあるフロントフォークが硬いと言う印象を抱かせないことになる。
そして、このバランスバネSにあっては、フォーク本体が収縮作動に転じて、たとえば、最伸長状態から最収縮状態になるまでの全ストロークの前側のほぼ1/3のストローク領域で収縮すると、最伸長状態に、すなわち、いわゆる伸び切り状態になり、負の附勢力を具有しなくなる。
そしてまた、このバランスバネSにあっては、フォーク本体がさらに収縮作動を継続してさらに収縮状態になるときには、再び収縮するようになって、言わば正の反力を具有するようになり、フォーク本体が最収縮状態になると、最収縮状態になって、フォーク本体を伸長方向に附勢する。
ちなみに、バランスバネSが最伸長した状態から再度収縮作動を開始する領域は、たとえば、最収縮状態から最伸長状態になるまでの全ストロークの後側のほぼ1/3のストローク領域とされて良い。
その結果、最伸長状態にあるフォーク本体が全ストロークの前側のほぼ1/3のストローク領域で収縮すると、収縮状態にあって負の反力を具有していたバランスバネSが一旦最伸長状態になった後、再び収縮状態になって、今度は正の反力を具有する。
つまり、この実施形態によるバランスバネSにあっては、前記した図1および図2,図3に示す実施形態によるバランスバネSに比較して、フォーク本体の伸縮作動時に正負の反力を具有することになって、いわゆるフル利用され、フォーク本体の伸縮作動を効果的に実現する。
図7乃至図9に示すところは、前記した図4乃至図6に示す保持手段に代えて他の実施形態による保持手段を示すもので、以下にはこれについて少し説明するが、その作用効果は、図4乃至図6に示すところと異なるものでない。
すなわち、先ず、図7に示すところは、フォーク本体が最収縮状態にあって、したがって、バランスバネSも最収縮状態にあるところを示し、図8に示すところは、フォーク本体が伸縮の中間状態にあって、したがって、バランスバネSが最伸長状態にあるところを示し、図9に示すところは、フォーク本体が最伸長状態にあって、したがって、バランスバネSが最収縮状態にあるところを示す。
そして、この実施形態にあっても、バランスバネSが保持手段に保持され、保持手段は、ロッド体4を軸芯部に挿通させるようにロッド体4の外側に配設されてロッド体4に副って上下動するほぼ筒状に形成の内側スライダ8と、この内側スライダ8と同芯でありながらこの内側スライダ8の外側に配設されて車輪側チューブ2の軸線方向に沿うように上下動するほぼ筒状に形成の外側スライダ9と、インナーチューブ1の上端部の内周に連結される環状ストッパ部25と、ロッド体4の外周に形成の環状溝4bに嵌装のストップリング10とを有してなる。
そして、内側スライダ8は、下端部にフランジ状に形成されたバネ受部8aを有すると共に、上端部に内側に折り曲げ状態に形成の係止部8bを有し、また、外側スライダ9は、下端側部の内周部を切削するようにして形成された環状段部9aを有すると共に、下端部にフランジ上に形成の係止部9bを有し、内側スライダ8のバネ受部8aにバランスバネSの下端を担持させ、外側スライダ9の環状段部9aにバランスバネSの上端を係止させて、いわゆる挟むように配設させる。
それゆえ、バランスバネSは、前記した実施形態の場合と異なり、ロッド体4の外側に、すなわち、内側スライダ8の外側に巻装される状態になり、最伸長状態時における上下端の遊動が効果的に阻止され、また、最収縮状態におけるバックリング現象の発現が効果的に阻止される。
一方、この保持手段の作動であるが、車輪側チューブ2が車体側チューブ1内を最上昇するフォーク本体の最収縮作動時には、車輪側チューブ2の上端部に連結された環状ストッパ部25が車体側チューブ1の開口端を閉塞するキャップ部材14の下端側に当接される。
そして、このとき、シリンダ体3内にロッド体4が没入する、相対的に見ると、シリンダ体3のヘッド端部3aが上昇するようになって、下端部たるバネ受部8aがヘッド端部3aに担持される内側スライダ8を上昇させる。
それゆえ、バランスバネSの下端が上昇されるようになって、バランスバネSが収縮されるようになり、その際の反力で外側スライダ9を上昇させるが、このとき、外側スライダ9の上端が上記の環状ストッパ部25に当接されて、外側スライダ9のそれ以上の上昇が阻止される。
その結果、バランスバネSは、図7に示すように、最収縮状態になって、最収縮しているフォーク本体を伸長する方向に附勢する正の反力を具有する。
上記の状態から、フォーク本体が伸長作動すると、バランスバネSが伸長作動でき、したがって、内側スライダ8がバランスバネSの伸長作動に呼応するようにロッド体4の外周で下降し、さらなるバランスバネSの伸長作動で内側スライダ8の下降がこの内側スライダにおける上端係止ブラケット8bのロッド体4の環状溝4bに嵌装のストップリング10への当接で阻止される。
このとき、車輪側チューブ2が車体側チューブ1内を下降するから、車輪側チューブ2の上端部に連結された環状ストッパ部25がシリンダ体3に合せて下降するようになり、したがって、環状ストッパ部25が外側スライダ9の下端係止部9bに係止され、このとき、バランスバネSが最伸長状態になる(図8参照)。
そして、フォーク本体の伸長作動がさらに継続されると、車輪側チューブ2の上端部に連結の環状ストッパ部25が外側スライダ9の下端係止部9bに係止されたままさらに下降することになり、したがって、外側スライダ9の段部9aに上端が係止されたバランスバネSが収縮作動する。
そしてまた、車輪側チューブ2が車体側チューブ1内から大きく突出する最伸長状態時になると、外側スライダ9のそれ以上の下降が停止されて、バランスバネSのそれ以上の収縮が阻止される。
以上のように、この発明にあっては、バランスバネSが保持手段に保持されるから、最伸長状態にあるバランスバネSにおける端部の自由が拘束され、したがって、バランスバネSの端部のいわゆる遊動による騒音発生が効果的に阻止される。
前記したところでは、フォーク本体が懸架バネを有しないとしたが、この発明における抑制手段たるバランスバネSが機能するところからすると、フォーク本体が懸架バネを有してなるとしても、この発明の具現化が可能になるのはもちろんであり、その場合の作用効果も異なるところはない。
そして、前記したところでは、抑制手段を構成するバランスバネSがダンパの外に配設されるとしたが、このバランスバネSが機能するところを勘案すると、このバランスバネSがシリンダ体3内に配設されても良い。