以下、図1〜図14を参照して本発明によるワイヤ放電加工機の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るワイヤ放電加工機の正面図であり、図2は、このワイヤ放電加工機により加工されるワークWの一例を示す斜視図である。なお、図1では、図示のように左右方向および上下方向を定義するとともに、紙面垂直方向手前側および奥側をそれぞれ前側および後側(前後方向)と定義する。左右方向、前後方向および上下方向は、それぞれX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向と平行である。
本実施の形態では、図2に示すように、エンドミルやリーマ等の棒状の回転工具10をワークWとして用いる。この工具10は、工具回転中心である工具軸線L1方向に沿って基端側と先端側とにそれぞれ略円柱状のシャンク部11と工具部12とを有する。工具部12には工具軸線L1方向に沿って切溝13が形成され、切溝13の加工面に、PCDチップ等の薄板状の切刃14がろう付け等によって取り付けられている。切刃14の端部は、工具部12の先端面よりも軸方向外側に突出し、かつ、工具部12の外周面よりも径方向外側に突出している。すなわち、切刃14は工具10の最外径を規定する。
なお、図では、周方向1箇所に切刃14を設けているが(1枚刃)、周方向対称に複数枚の切刃14を設けることもできる。例えば、周方向180度毎に2枚(2枚刃)、120度毎に3枚(3枚刃)、90度毎に4枚(4枚刃)等、複数の切刃14を設けて回転工具10を形成することができる。また、工具部12を先端部にかけて先細の段付き形状として、軸方向に複数枚の切刃14を離間して設けることもできる(図7参照)。
図1に示すように、ベッド1の上部には、ワーク取付台2が支持されている。ワーク取付台2は、ベース部2aから上方に延設する左右一対の側壁部2bを有し、一方の側壁部2bの上面に、回転割出装置20が搭載されている。回転割出装置20には、X軸と平行な水平軸線L0に沿ってワークWを保持するチャック21が設けられ、チャック21には、図2の工具10の回転軸線L1と軸線L0とが一致した状態で、工具10のシャンク部11が取り付けられている。チャック21は、例えば回転割出装置内のサーボモータによって軸線L0を中心に回転駆動され、これによりX軸と平行な水平軸線回り(以下、C軸回り)に工具10を割出位置決め可能である。
ベッド1上にはワーク取付台2と回転割出装置20とを包囲するように加工槽3が設けられ、加工槽3の下方のベッド1内部に加工液タンク4が収容されている。加工液としては、水や油が用いられる。ワーク取付台2の後方にはコラム5が立設され、コラム5の上部には、直線送り機構を介してY軸スライダ6が前後方向にスライド可能に支持されている。Y軸スライダ6上には、直線送り機構を介してX軸スライダ7が左右方向にスライド可能に支持されている。X軸スライダ7上には、直線送り機構を介してY軸と平行なV軸方向に移動可能なV軸スライダ22が支持されている。V軸スライダ22の前面には、直線送り機構を介してX軸と平行なU軸方向に移動可能なU軸スライダ23が支持されている。U軸スライダ23の前面には、直線送り機構を介してクイル8が上下方向に昇降可能に支持されている。直線送り機構は、例えばボールねじとボールねじを回転駆動するサーボモータとにより構成される。
クイル8の下端には上ヘッド15が取り付けられ、上ヘッド15の下方、すなわち左右一対の側壁部2bの内側の凹空間17に、下ヘッド16が配置されている。上ヘッド15および下ヘッド16には、鉛直方向にワイヤ電極9が支持されている。ワイヤ電極9は図示しない送給手段によってヘッド15,16間に送給される。
X軸スライダ7には支持アーム18が一体に取り付けられている。支持アーム18は、ワーク取付台2の後方から凹空間17内に延設され、下ヘッド16は、支持アーム18の前端部に支持され、支持アーム18を介して上ヘッド15に一体に連結されている。これにより上ヘッド15と下ヘッド16とは前後左右方向に一体に移動可能となり、ワイヤ電極9は鉛直姿勢を維持したまま、ワークWに対して直交2軸のX軸およびY軸方向に相対移動する。また、U軸スライダ23およびV軸スライダ22により上ヘッド15は下ヘッド16に対して前後左右方向に相対移動可能となり、ワイヤ電極9を鉛直線に対して所望の角度で傾斜させることができる。
ワーク加工時には、図示しないポンプを介して加工液タンク4から加工槽3内に加工液が供給されるとともに、ワークWから微小間隔を隔ててワイヤ電極9が配置され、ワイヤ電極9とワークWとの間に加工用電源からパルス電圧が印加される。これによりワークWとワイヤ電極9との間に放電が発生し、ワークWが加工される。このとき、回転割出装置20によってワークWをC軸回りに割り出しながら、X軸スライダ7、Y軸スライダ6、U軸スライダ23、V軸スライダ22の各駆動によってワイヤ電極9を所望の傾斜角でワークWの加工点に沿って移動させ、ワークWを加工する。すなわち本実施の形態に係るワイヤ放電加工機では、XYUVC軸の5軸加工により回転工具10を加工する。
ワイヤ放電加工機の動作、すなわちX軸,Y軸,U軸およびV軸用のサーボモータやC軸用のサーボモータ等の駆動は、制御装置30により制御される。制御装置30は、CPU,ROM,RAM、その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成され、計測制御部31と、加工制御部32とを有する。計測制御部31では、後述するように回転工具10の切刃14の上面位置を自動的に計測し、計測値に基づいてワーク加工に必要なデータ(加工回転角)を取得する。加工制御部32では、この取得したデータに基づき加工プログラムを作成し、加工プログラムに従いサーボモータを制御する。
図3は、ワイヤ電極9をワークWの回転軸方向に移動しながら切刃14の外径部を加工する際の加工動作の一例を示す図であり、左側に工具10を側面視で、右側に工具10を正面視で示している。図中、実線14aは、ワイヤ電極9によって加工される切刃14の外径側の側端面(図2参照)に相当し、切刃14は軸線L0に対して斜めに傾斜して取り付けられている。なお、図3(a)〜図3(d)は、それぞれ加工開始前、加工開始時、中間時、加工終了時に対応する。
図3(a)に示すように、加工開始前には、ワークWは割出位置決めの基準である基準位置にセットされている。基準位置では、C軸回りの絶対角度θが0度であり、切刃14の上面は全域にわたり軸線L0よりも下方に位置している。図3(b)に示すように加工開始時には、切刃14の軸方向一端部の加工点P1が軸線L0上に位置するようにワークWが割り出され、ワイヤ電極9により加工点P1が加工される。図3(c)に示すように中間時には、切刃14の軸方向中間部の加工点P2が軸線L0上に位置するようにワークWが割り出され、ワイヤ電極9により加工点P2が加工される。図3(d)に示すように加工終了時には、切刃14の軸方向他端部の加工点P3が軸線L0上に位置するようにワークWが割り出され、ワイヤ電極9により加工点P3が加工される。以上のように、ワーク加工時には、各加工点P1〜P3がそれぞれ軸線L0と同一高さとなるように加工点位置に応じて回転割出装置20をC軸回りに回転させ、ワークWが連続的に割り出される。
これにより、図4(a)に示すように軸線L0と加工点Pとを結ぶ線分をL2、軸線L0に直交する水平線をL3とするとき、L2とL3とのなす角Δθが0度となり、ワークWは常に軸線L0と同一高さで加工される。このため、平面ワークを加工する場合と同様、軸線L0(基準位置)からのワイヤ電極9の位置を設定するだけで、ワークWを所望の最外径寸法にすることができ、回転工具10の最外径の寸法を容易かつ精度よく設計値に合せることができる。これに対し、図4(b)に示すように軸線L0と同一高さ以外(Δθ≠0)にてワークWを加工する場合、切刃14の軸線L0に対する傾斜角等を測定した上で、三角関数等を用いてその回転角Δθにおける最外径に対応した加工点位置を算出する必要がある。このため、計算誤差が発生し、最外径の寸法を精度よく設計値に合わせることが困難である。
加工制御部32では、加工点位置が軸線L0と同一高さとなるようなワークWの割出指令を含む加工プログラムを作成するが、その前提として、計測制御部31では以下のような処理が実行される。図5は、計測制御部31の構成を示すブロック図である。計測制御部31は、測定シーケンス処理部310を中心として、加工プログラム設定部311と、プログラム解釈部312と、補間処理部313と、サーボ制御部314と、データ入力部315と、データ記憶部316とを有する。計測制御部31には、入力装置33からの信号が入力されるとともに、測定プローブ34からの信号が入出力される。計測制御部31は、X軸用、Y軸用、C軸用の各サーボモータ35a〜35cに制御信号を出力する。
入力装置33は、例えばユーザによって操作されるタッチパネル等の入力モニタによって構成され、入力装置33からの信号はデータ入力部315を介して測定シーケンス処理部310に入力される。この場合の入力情報には、回転工具10の周方向の刃数N、計測プログラムPG、計測開始角θa、計測開始指令等、切刃14の上面位置の計測に関する各種情報が含まれる。計測プログラムPGは、測定プローブ34による切刃上面の計測点数に応じて選択される。本実施の形態では、切刃上面の1点を計測、2点を計測、3点を計測、加工点Pと同一点を計測(全点計測)の4種類の計測プログラムPG1〜PG4の中から1つが選択される。1点計測、2点計測および3点計測で用いられる計測点のXY座標は、自動選択を選択するか、予め計測プログラムPG1〜PG3に対応付けてメモリに記憶しておく。
測定プローブ34は、図6に示すようにベース体36から延設された支持アーム37の先端部に取り付けられ、ベース体36は、上ヘッド15の側面に取り付けられる。切刃14の上面位置の計測時には、上ヘッド15からワイヤ電極9を除去した後、ワイヤ電極9と同軸上に、かつ、プローブ先端が軸線L0と同一高さとなるように測定プローブ34が配置される。測定プローブ34を上ヘッド15と一体に設けることで、プローブ先端を軸線L0と同一高さに保ったまま(Z軸方向の位置を一定としたまま)、サーボモータ35a,35bの駆動により測定プローブ34をXY平面上の任意の計測点位置に移動できる。
図6は、ワークWが基準位置にあるときの切刃14を点線で示している。基準位置では切刃上面が軸線L0よりも下方に位置し、切刃上面は測定プローブ34から離間している。この状態で、測定プローブ34を計測点位置に移動した後、ワークWをA方向へ回転(正回転)させると、実線で示すように切刃14の上面が測定プローブ34に当接する。さらに、当接位置にあるワークWをB方向へ回転(逆回転)させると、測定プローブ34から切刃14が離間する。測定プローブ34は、切刃14の当接時にオン信号を出力し、離間時にオフ信号を出力する。
図5の加工プログラム設定部311には、予めCAD/CAMシステム等を介してワークWの加工点Pにおける加工点データを含む加工プログラムが設定されている。図7(a)は、切刃14の上面に設定された加工点Pの一例を示す図である。なお、図7(a)では、2枚の切刃14A,14Bが軸方向に離間して取り付けられている。加工点P1〜P7は、ワイヤ電極9による切刃上面の加工位置を示す点であり、加工プログラムには、軸線L0上の所定位置P0(例えばチャック21の端面)を原点(X=Y=Z=0)とした各加工点P1〜P7のXY座標が、ブロック形式で設定されている。ブロック端点である加工点P1〜P3およびP4〜P7を順次結んで得られる外形線PA1,PA2は、切刃14の外形形状に相当する。
加工プログラムには、例えばPa〜Pf等、切刃14以外の範囲にもブロック端点が設定されている(非加工点)。以上のブロック端点Pa,Pb,P1〜P3,Pc〜Pe,P5〜P7,Pfを順次直線で結んだ折り曲げ直線がワイヤ電極9の移動経路PA0となる。この場合、ワイヤ電極9の中心位置と実際の加工位置とはワイヤ径に相当する分だけ異なる。そのため、実際の加工位置とワイヤ電極9の中心位置とのずれ量を予め径補正量として設定し、ワーク加工時にはワイヤ電極9の位置をこの径補正量分だけ補正して、加工位置を加工点Pの位置に精度よく合わせる。
ワイヤ電極位置の補正は、ワイヤ電極9が切刃14を加工すべき位置(加工位置)にあるときに行い(径補正オン)、非加工位置にあるときには行わない(径補正オフ)。図7(a)の例では、切刃14上の最初の加工点P1,P5の直前のブロック端点Pb,Peで径補正をオンし、最終の加工点P3,P7の次のブロック端点Pc,Pfで径補正をオフする。これらブロック端点Pb,Pc,Pe,Pfは、単に座標値だけでなく、径補正オン指令およびオフ指令を出力する指令点として加工プログラムに設定されている。なお、本実施の形態で径補正オン範囲とは、径補正をオンオフ指令するブロック端点を除いた範囲、つまり加工点P1〜P3,P4〜P7の範囲をいう。ワイヤ電極9を鉛直線に対して傾斜させて加工する場合、加工プログラムには加工点PのXY座標データ(X軸用、Y軸用データ)だけでなく、ワイヤ電極9の傾斜角あるいは上ヘッド15と下ヘッド16とのずれ量(U軸用、V軸用データ)も設定される。
プログラム解釈部312は、加工プログラムを読み取り解釈し、測定シーケンス処理部310に出力する。測定シーケンス処理部310は、データ入力部315とプログラム解釈部312と補間処理部313とからの信号に基づき、後述するような処理(図9〜図11)を実行して、計測プログラムを作成する。そして、計測プログラムに基づいて、切刃上面の計測位置が測定プローブ34によって計測されるように、プログラム解釈部312に制御信号を出力するとともに、測定プローブ34による計測結果に基づき、新たな加工プログラムの作成に必要なデータ(加工回転角)をデータ記憶部316に記憶する。
図7(b)は、測定プローブ34による切刃上面の計測位置の一例、とくに3点計測(計測プログラムPG3)が選択されたときの計測位置を示す図である。図中、Q1〜Q3は切刃14A上の計測点、Q4〜Q6は切刃14B上の計測点であり、これら計測点Q1〜Q6の位置(XY座標)は、計測プログラム上のブロック端点として、予め入力装置33を介してユーザにより設定され、メモリに記憶されている。なお、図中のQa〜Qfの各点は加工プログラムに設定されたブロック端点Pa〜Pf(図7(a))と等しく、これらブロック端点Qa,Qb,Q1〜Q3,Qc〜Qe,Q4〜Q6,Qfを順次結んだ折れ曲り直線が測定プローブ34の移動経路PA3となる。
この場合、切刃14A上の計測点Q1〜Q3および切刃14B上の計測点Q4〜Q6は、互いに1直線上にない点がそれぞれ設定される。したがって、切刃上面の3点Q1〜Q3,Q4〜Q6の位置をそれぞれ測定プローブ34によって計測することにより、切刃14A,14Bの上面の平面式を算出することができる。本実施の形態では、切刃上面の平面式を用いて、図3に示すように各加工点P1〜P3,P4〜P7を軸線L0と同一高さとするためのワークWの割出位置(加工回転角)を求める。
なお、1点計測(計測プログラムPG1)が選択された場合には、図8(a)に示すように切刃14上に1点の計測点Q1が設定され、計測点Q1の位置が測定プローブ34によって計測される。この場合、軸線L0を通る平面上に切刃上面があると仮定し、計測点Q1と軸線L0とにより切刃上面の平面式を算出し、平面式を用いて各加工点におけるワークWの加工回転角を求める。
2点計測(計測プログラムPG2)が選択された場合には、図8(b)に示すように切刃14上に2点の計測点Q1,Q2が設定され、各計測点Q1,Q2の位置が測定プローブ34によって計測される。この場合、Q1,Q2を通る直線L1と軸線L0との両方に垂直に交わる仮想線L2を算出し、その仮想線L2に垂直に交わり、かつ、直線L1を含む平面上に切刃上面があると仮定して平面式を算出し、平面式を用いて各加工点におけるワークWの加工回転角を求める。なお、直線L1と直線L0が交わる場合または平行な場合は、直線L1および直線L0を両方含む平面上に切刃上面があると仮定する。
一方、全点計測(計測プログラムPG4)が選択された場合には、図7(a)の各加工点P1〜P3,P4〜P7がそのまま計測点として設定され、各加工点P1〜P3,P4〜P7の位置が測定プローブ34によって計測される。このため、切刃上面の平面式を算出することなく、計測値からそのまま各加工点P1〜P3,P4〜P7におけるワークWの加工回転角を求めることができる。
補間処理部313は、測定プローブ34を計測位置に移動するための各軸の目標移動量を演算する。さらに、測定プローブ34からのオンオフ信号に基づきワークWのC軸回りの目標回転角を演算する。例えば、測定プローブ34からオン信号が出力されたとき、つまり測定プローブ34の先端が切刃上面に当接したときは、図6のB方向の予め定められた計測開始角θaまでワークWが回転するように目標回転角を演算する。なお、計測開始角θaは、例えば図6の点線で示すように、切刃全体がプローブ34から十分に離間する角度、つまり初期位置の角度(θa=0)に設定されている。一方、測定プローブ34からオフ信号が出力され、かつ、測定シーケンス処理部310から後述するワーク正回転指令が出力されると、切刃上面がプローブ34に当接するまでワークWがA方向へ回転するように目標回転角を演算する。
サーボ制御部314は、測定プローブ34の移動量が補間処理部313で演算された目標移動量となるように、X軸用およびY軸用のサーボモータ35a,35bを制御する。さらに、ワークWの回転角が演算された目標回転角となるように、回転割出装置20のサーボモータ35cを制御する。
ここで、測定シーケンス処理部310における測定処理について説明する。図9は、測定シーケンス処理部310で実行される測定処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、ワイヤ電極9と同軸に測定プローブ34を配置した後、例えば入力装置33を介して計測開始指令が入力されると開始される。なお、測定処理開始前には、測定プローブ34はワークWから離間した初期位置(例えば図7(b)のQa)にセットされ、ワークWは初期位置の角度(θa=0)にセットされている。
ステップS1では、測定プローブ34に電源オン信号を出力する。これにより測定プローブ34がオン信号を出力可能となる。ステップS2では、データ入力部315を介して入力装置33からの信号を読み込むとともに、プログラム解釈部312を介して加工プログラム設定部311からの信号(加工プログラム情報)を読み込む。
ステップS3では、データ入力部315からの信号に基づき、計測プログラムPGとして1点計測、2点計測、3点計測、全点計測のいずれが選択されているかを判定する。ステップS3で、1点計測が選択と判定されるとステップS100に進み、2点計測が選択と判定されるとステップS200に進み、3点計測が選択と判定されるとステップS300に進み、全点計測が選択と判定されるとステップS400に進む。
なお、自動選択が選択されていた場合には、径補正オン範囲内に何点の計測点があるかによって、1点計測、2点計測、3点計測、全点計測のいずれかを選択する。具体的には、径補正オン指令から径補正オフ指令までの計測点が1点ならば1点計測、2点ならば2点計測、3点ならば3点計測、4点以上ならば全点計測を自動的に選択する。
図10は、ステップS300の3点計測処理の一例を示すフローチャートである。ステップS301では、加工プログラム設定部311で設定された加工プログラムを読み込み、3点計測用の計測プログラムPR3を作成する。この場合、計測プログラムのブロック端点として、図7(a)の加工点P1〜P3,P4〜P7の代わりに、予め加工プログラムに図7(b)の計測点Q1〜Q3,Q4〜Q6を設定しておく。なお、以下では、ブロック端点が測定プローブ34の目標位置となるように、径補正オン信号の出力の有無に拘わらず、径補正を行われない。
これにより計測プログラムPR3に、図7(b)に示すようにQa,Qb,Q1〜Q3,Qc〜Qe,Q4〜Q6,Qfに沿った折れ曲り直線状の測定プローブ34の移動経路PA3が設定される。なお、加工プログラムに設定された上ヘッド15の移動以外の指令(例えば加工電源のオンオフ指令等)は、計測プログラムPR3においてキャンセルされる。加工プログラムで設定された径補正オンオフ指令自体は、計測プログラムにそのまま残される。
ステップS302では、プログラム解釈部312を介してX軸用およびY軸用の各サーボモータ35a,35bに制御信号を出力し、計測プログラムPR3に基づき測定プローブ34を順次ブロック端点位置に移動する。ステップS303では、ブロック端点毎に出力される径補正オンオフ指令に基づき、測定プローブ34が、径補正オン指令が出力される範囲内にあるか否か、すなわち図7(b)のQ1〜Q3,Q4〜Q6のいずれかに測定プローブ34が位置するか否かを判定する。
ステップS303が肯定されるとステップS304に進み、否定されるとステップS302に戻る。ステップS304では、プログラム解釈部312を介して補間処理部313にワーク正回転指令を出力する。これにより補間処理部313は、ワークWが図6のA方向へ所定速度で回転するような目標回転角を演算し、サーボ制御部314を介してC軸用のサーボモータ35cを制御する。その結果、工具10の切刃上面が測定プローブ34に接近する。
切刃上面が測定プローブ34に当接すると、測定プローブ34から補間処理部313にオン信号が出力される。これにより補間処理部313は、目標回転角を0としてC軸用のサーボモータ35cの駆動を停止させるとともに、測定シーケンス処理部310に現在のワークWの回転角、すなわち基準位置(θ=0)から切刃上面がプローブ34に当接するまでの回転角θqを出力する。その後、補間処理部313は、目標回転角を計測開始角θaとしてサーボ制御部314を介してサーボモータ35cを制御する。これによりこれによりワークWがB方向に回転し、切刃上面が測定プローブ34から離間して、計測開始角θaにてワークWが停止する。
ステップS305では、補間処理部313から測定シーケンス処理部310に回転角θqが入力されたか否かを判定する。ステップS305が肯定されるとステップS306に進み、否定されるとステップS304に戻る。ステップS306では、回転角θqをメモリに記憶する。ステップS307では、切刃上面の全計測点Q1〜Q6における回転角θq1〜θq6の計測が完了したか否かを判定する。ステップS307が否定されるとステップS302に戻り、測定プローブ34を次の計測点に移動して同様の処理を繰り返す。これにより全計測点Q1〜Q6において、切刃上面がプローブ34に当接した際のワークWの回転角θq1〜θq6を取得することができる。
ステップS307が肯定されるとステップS308に進み、各計測点Q1〜Q3,Q4〜Q6のXY座標および計測された回転角θq1〜θq3,θq4〜θq6を用いて、周知の演算式により各切刃14A,14B上面の平面式を算出する。ステップS309では、この平面式を用いて、切刃上面の各加工点P1〜P7(図7(a))が軸線L0と同一高さ、つまりZ=0となる加工回転角θp1〜θp7をそれぞれ演算する。ステップS310では、演算した加工回転角θp1〜θp7をデータ記憶部316に記憶する。
ステップS311では、一連の処理の繰り返し回数を表す整数nに1を加算し、nを更新する。なお、初期状態ではnは0に設定されている。ステップS312では、nが周方向の切刃14の枚数Nに等しいか否か、すなわち周方向全ての切刃14の位置計測が行われたか否かを判定する。ステップS312が否定されるとステップS313に進み、プログラム解釈部312を介してC軸用のサーボモータ35cに制御信号を出力し、360/N度だけワークWをA方向(またはB方向)に回転させる。この際、ワークWと測定プローブ34とが干渉しないように、測定プローブ34を一旦初期位置Qaに退避させてからワークWを回転させる。次いで、ステップS302に戻り、別の切溝13に設けられた切刃14に対して、同様の処理を繰り返す。一方、ステップS312が否定されると3点計測処理を終了する。
なお、図9のステップS100の1点計測処理およびステップS200の2点計測処理と、ステップS300の3点計測処理とは、切刃上面の計測点の個数と、切刃上面の平面式を算出する際の演算式が異なるだけであり、他の処理は同一である。そのため、1点計測処理および2点計測処理については説明を省略する。これに対し、ステップS400の全点計測処理においては、切刃上面の平面式を算出する必要がない。以下、全点計測処理について説明する。
図11は、全点計測処理の一例を示すフローチャートであり、図12は、全点計測処理における計測位置を示す図である。ステップS401では、加工プログラム設定部311で設定された加工プログラムを読み込み、全点計測用の計測プログラムPR4を作成する。この場合、計測プログラムのブロック端点として、図7(a)の加工点P1〜P7がそのまま用いられる。これにより、図12に示すように、図7(a)の加工点P1〜P7と同一位置に計測点Q1〜Q7が設定され、ブロック端点Qa,Qb,Q1〜Q3,Qc〜Qe,Q4〜Q7,Qfを順次結んだ折れ曲り直線が測定プローブ34の移動経路PA4となる。この移動経路PA4は、ワーク電極9の移動経路PA0(図7(a))と同一である。なお、3点計測処理の場合と同様、加工プログラムに設定された上ヘッド15の移動以外の指令は、計測プログラムPR4においてキャンセルされる。また、全点計測処理の実行時には、径補正オン信号の出力の有無に拘わらず、径補正は行われない。
ステップS402では、プログラム解釈部312を介してX軸用およびY軸用の各サーボモータ35a,35bに制御信号を出力し、計測プログラムPR4に基づき測定プローブ34を順次ブロック端点位置に移動する。ステップS403では、ブロック端点毎に出力される径補正オンオフ指令に基づき、測定プローブ34が、径補正オン指令が出力される範囲内にあるか否か、すなわち図12のQ1〜Q7のいずれかに測定プローブ34が位置するか否かを判定する。
ステップS403が肯定されるとステップS404に進み、否定されるとステップS402に戻る。ステップS404では、プログラム解釈部312を介して補間処理部313にワーク正回転指令を出力する。これにより、ワークWが図6のA方向へ所定速度で回転し、工具10の刃部上面が測定プローブ34に当接し、測定プローブ34がオン信号を出力する。測定プローブ34からオン信号が出力されると、補間処理部313は、測定シーケンス処理部310に現在のワークWの回転角θqを出力するとともに、サーボ制御部314を介してサーボモータ35cに制御信号を出力し、計測開始角θaまでワークWをB方向に回転させる。
ステップS405では、補間処理部313から回転角θqが入力されたか否かを判定する。ステップS405が肯定されるとステップS406に進み、否定されるとステップS404に戻る。ステップS406では、回転角θqをメモリに記憶する。ステップS407では、切刃上面の全計測点Q1〜Q7における回転角θq1〜θq7の計測が完了したか否かを判定する。ステップS407が否定されるとステップS402に戻り、測定プローブ34を次の計測点に移動して同様の処理を繰り返す。これにより全計測点Q1〜Q7において、基準位置から切刃上面がプローブ34に当接するまでのワークWの回転角θq1〜θq7を取得することができる。この場合、計測点Q1〜Q7は加工点P1〜P7と同一であるため、メモリに記憶された回転角θq1〜θq7が加工回転角θp1〜θp7となる。
ステップS407が肯定されるとステップS408に進み、一連の処理の繰り返し回数を表す整数nに1を加算し、nを更新する。ステップS409では、nが周方向の切刃14の枚数Nに等しいか否かを判定する。ステップS409が否定されるとステップS410に進み、プログラム解釈部312を介してC軸用のサーボモータ35cに制御信号を出力し、360/N度だけワークWをA方向(またはB方向)に回転させる。次いで、ステップS402に戻り、別の切溝13に設けられた切刃14に対して、同様の処理を繰り返す。一方、ステップS409が否定されると全点計測処理を終了する。
次に、図1の加工制御部32について説明する。図13は、加工制御部32の構成を示すブロック図である。図中、図5と同一の箇所には同一の符号を付している。加工制御部32は、プログラム変換処理部321を中心として、プログラム記憶部322と、加工プログラム設定部311と、プログラム解釈部312と、補間処理部313と、サーボ制御部314と、データ入力部315とを有する。とくに、計測制御部31と比較した場合に、プログラム変換処理部321とプログラム記憶部322とを有し、データ記憶部316を有しない点が、加工制御部32の特有の構成である。加工制御部32には、入力装置33からの信号とデータ記憶部316からの信号が入力される。加工制御部32は、X軸用、Y軸用、C軸用、U軸用、V軸用の各サーボモータ35a〜35eに制御信号を出力する。
加工プログラム設定部311に設定される加工プログラムには、ワークWの加工点Pの加工点データ、すなわち、各加工点のX軸用、Y軸用、U軸およびV軸用データや、径補正オンオフ指令を行うブロック端点のデータ、加工電源のオンオフ指令等が含まれる。プログラム変換処理部321には、データ入力部315を介して入力装置33からの信号が入力されるとともに、加工プログラム設定部311およびデータ記憶部316からの信号が入力される。入力装置33からの入力情報には、回転工具10の周方向の刃数N、加工開始指令、加工経由点、仕上げ代、X軸方向の追い込み量、Y軸方向の追い込み量等、切刃14の加工に関する各種情報が含まれる。
プログラム変換処理部321は、加工プログラム設定部311から読み込んだ各加工点Pの加工点データ(X軸用、Y軸用、U軸およびV軸用データ)に、データ記憶部316から読み込んだ加工回転角θpのデータ(C軸用データ)を追加し、加工プログラムを変換する。すなわち4軸加工用のプログラムを5軸加工用のプログラムに書き換える。書き換えられたプログラムは、新たな加工プログラムとしてプログラム記憶部322に記憶される。
プログラム解釈部312は、この新たな加工プログラムを読み取り解釈し、プログラム解釈部312からの信号に基づき補間処理部313で各軸の目標移動量および目標回転角を演算し、サーボ制御部314を介して各サーボモータ35a〜35eに制御信号を出力する。この場合、一の加工点から次の加工点まで加工位置が変化するときに、補間処理部313では、加工点間のワイヤ電極9の目標移動量およびワークWの目標回転角を補間処理により求める。これにより加工位置に応じてワークWがC軸回りに回転し、切刃上面の加工位置を常に軸線L0と同一高さにしてワークWを加工することができる。
本実施の形態に係るワイヤ放電加工機による回転工具の加工方法の動作をまとめると次のようになる。
(1)測定工程
ワークWを加工する前に、まず、切刃14の上面位置を測定する。この測定工程では、ユーザは、上ヘッド15の下方に測定プローブ34を配置するとともに、入力装置33を介して1点計測、2点計測、3点計測、全点計測の中から所望の計測モードを選択する。例えば切刃14のサイズが小さいときは、計測点数が多くなると誤差が大きくなるおそれがある。この場合には、例えば1点計測や2点計測が選択される。一方、切刃14が十分な大きさであり、最小限の計測点数で、切刃上面の計測精度を確保したい場合には、3点計測が選択される。切刃上面が平面式で精度よく近似できない場合には、全点計測が選択される。
計測制御部31は、選択された計測モードに応じて計測プログラムPR1〜PR4を作成し(ステップS301、ステップS401)、計測プログラムPR1〜PR4に従い、X軸用、Y軸用およびC軸用のサーボモータ35a〜35cに制御信号を出力する。これにより、回転割出装置20に取り付けられた工具10の切刃上面の計測位置に、測定プローブ34が移動する(ステップS302,ステップS402)。この場合、ワークWを予め計測開始角θaに回転させて切刃14を退避させた状態で、測定プローブ34の先端を軸線L0と同一高さに保ったままXY平面上を移動させ、測定プローブ34が計測点位置に到達すると、ワークWをC軸回りに回転させて切刃上面を測定プローブ34に当接させる(ステップS304、ステップS404)。このときの各計測点の回転角θqをメモリに記憶する(ステップS306、ステップS406)。
(2)割出位置導出工程
測定モードとして1点計測、2点計測、3点計測のいずれかが選択されていれば、切刃上面が測定プローブ34に当接したときの各計測点の回転角θqに基づき、切刃上面の平面式を算出する(ステップS308)。そして、この平面式に基づいて、各加工点Pが軸線L0と同一高さとなるような加工回転角θp、つまり目標割出位置を算出し、計測制御部31のデータ記憶部316に記憶する(ステップS310)。一方、測定モードとして全点計測が選択されていれば、計測点Qと加工点Pとが同一であり、計測点Qにおける回転角θqをそのまま加工回転角θpとして、データ記憶部316に記憶する(ステップS406)。
(3)加工工程
以上により、各加工点Pにおける加工回転角θpが求まると、上ヘッド15と下ヘッド16との間にワイヤ電極9を張設し、ワークWの加工を開始する。この加工工程においては、加工点データに加工回転角θpのデータを追加して新たに加工プログラムを作成し、新たな加工プログラムの実行によりX軸用、Y軸用、C軸用、U軸用およびV軸用の各サーボモータ35a〜35eを制御する。これによりワークWは、各加工点Pにおいて加工回転角θpに割り出され、加工点Pが軸線L0と同一高さに自動的に調整されるとともに、加工点Pに沿ってワイヤ電極9が移動し、ワイヤ電極9からの放電エネルギーによってワークWが加工される。このため、ワイヤ電極9と軸線L0とのY軸方向の距離のみによってワークWの最外径の寸法が定まり、回転工具10の最外径の寸法精度を高めることができる。
本実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)回転割出装置20の軸線L0と同一高さに測定プローブ34の先端をセットし、回転工具10の切刃上面の計測位置Qにおいて、切刃上面が測定プローブ34に当接する回転角θqを測定し、この回転角θqに基づき、切刃上面の加工点Pが軸線L0と同一高さとなる加工回転角θpを導出する。そして、各加工点PにおいてワークWを加工回転角θpに割り出すとともに、加工点Pに沿ってワイヤ電極9を移動し、ワイヤ電極9からの放電エネルギーによって切刃14の端部を加工するようにした。これにより軸線L0と同一平面上で切刃14の端部を加工することができ、回転工具10の最外径の寸法を精度よく設計値に合わせることができる。
(2)切刃上面の計測点における回転角θqを単に計測するだけであり、軸線L0に対する切刃14の傾斜角等を計測する必要がないため、切刃14が3次元的にいかなる方向に傾いて取り付けられていたとしても、精度よく加工点の位置を求めることができる。
(3)入力装置33からの指令により、切刃14の上面位置を計測する際の測定モードを選択可能としたので、切刃14の形状等に応じて切刃上面位置の最適な測定が可能である。
(4)1点計測、2点計測、3点計測の計測モードが選択されたときは、切刃14の上面位置の測定値θqに基づいて切刃上面の平面式を演算し、この平面式により加工点Pにおける加工回転角θpを算出するようにしたので、少ない計測点数で効率よく加工回転角θpを求めることができる。
(5)全点計測モードが選択されたときは、切刃上面の加工点位置を計測し、その計測値θqを加工回転角θpとするので、加工プログラムから計測プログラムPG4への変更が最小限ですみ、計測プログラムPG4の作成が容易である。また、全点計測モードにおいては、切刃上面が湾曲している場合等、切刃上面を平面式で近似できない場合であっても、加工点Pを軸線L0と同一高さにしてワークWを加工することができる。
(6)予め定められた加工プログラム形式で測定プログラムPG1〜PG4を作成するようにしたので、加工プログラムの作成に慣れたユーザにとって測定プログラムPG1〜PG4の作成が容易となり、切刃14の上面位置の自動計測を容易に行うことができる。
(7)周方向に複数枚の切刃14がある場合において、一の位相にある切刃14に対して作成した測定プログラムを、他の位相にある切刃14に対しても同様に適用するようにしたので(ステップS311〜ステップS313、ステップS408〜ステップS410)、測定プログラムを容易に構成できる。
なお、上記実施の形態では、計測制御部31での処理により、切刃上面を測定プローブ34に当接させて切刃14の上面位置を測定するとともに(測定工程)、その測定結果に基づき、切刃上面の加工点Pが軸線L0と同一高さとなる加工回転角θp(目標割出位置)を算出するようにしたが(割出位置導出工程)、割出位置導出工程を加工制御部32での処理によって行うようにしてもよい。すなわち、測定された回転角θqのみをデータ記憶部316に記憶し、切刃上面の平面式の演算や加工回転角θpの算出をプログラム変換処理部321で行うようにしてもよい。
上記実施の形態では、加工制御部32において新たな加工プログラムを作成および記憶するようにしたが、加工制御部32の構成は上述したものに限らない。図14は、加工制御部32の変形例を示すブロック図である。図14では、加工プログラム設定部311で設定された加工プログラムをプログラム解釈部312が読み取り解釈し、補間処理部313、サーボ制御部314を介してサーボモータ35a〜35eを制御する。一方、データ記憶部316からの信号はデータ処理部323に取り込まれ、データ処理部323は、プログラム解釈部312からの信号により加工点Pを認識し、加工点Pに応じた加工回転角θpを補間処理部313に出力する。これにより元の加工プログラムを書き換えることなく、加工点Pが軸線L0と同一高さとなるようにワークWの回転角を制御することができる。なお、図13の方式(プログラム変換方式)と図14の方式(実時間制御方式)のいずれかを、入力装置33を介してユーザが選択可能としてもよい。
上記実施の形態では、切刃14の上面位置が軸線L0の高さと一致するようにワークWを基準位置から回転させたときの回転角θqを測定するようにしたが、ワークWの回転を固定した状態で測定プローブ34を切刃上面に当接するまで下降させ、切刃上面に当接したときのプローブ位置を計測することで、切刃14の上面位置を測定するようにしてもよい。測定プログラムを作成して切刃14の上面位置を自動的に測定するようにしたが、測定プログラムを作成することなく、切刃14の上面位置を手動操作により測定するようにしてもよい。切刃14の上面位置を測定プローブ34以外によって測定してもよく、測定手段の構成は上述したものに限らない。
サーボモータ35a,35bの駆動によりワイヤ電極9をX軸方向およびY軸方向に移動可能としたが、ワイヤ電極9をワークWに対して相対移動可能とするのであれば、移動手段はいかなるものでもよい。工具素材に刃部が設けられた回転工具10として構成するのであれば、ワークWの形状はいかなるものでもよい。したがって、工具素材に切溝13を加工して切刃14を取り付けるようにしたが、刃部の構成はこれに限らず、例えば、円柱状の工具素材自体の外周面を加工して刃部を形成するようにしてもよい。
切刃上面の加工点Pが軸線L0と同一高さとなるようにワークWを割り出すとともに、割出後の切刃上面の加工点Pに沿ってワイヤ電極9が移動するように回転割出装置20およびサーボモータ35a〜35eを制御するのであれば、制御手段としての制御装置30の内部構成はいかなるものでもよい。以上の実施の形態では、ワイヤ放電加工機を、X軸、Y軸、U軸、V軸、およびC軸方向に移動可能な5軸加工機として構成したが、X軸、Y軸、およびC軸方向に移動可能な3軸加工機として構成してもよい。すなわち、本発明によるワイヤ放電加工機は、刃部の上面の加工点を回転軸線と同一高さに割り出す点に特徴を有するのであり、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態のワイヤ放電加工機に限定されない。