固定レールはシートをスライドさせる機能をもつ。この場合、シートの幅方向の一方側においてシートをスライドさせても良いし、シートに取り付けられているアッパーレール等の部材をスライドさせることにしても良い。第1ロック部材は、固定レールに対してスライドロックおよびスライドロック解除する機能をもつ。第2ロック部材は、シートの幅方向の他方側においてシートを固定レールに対してスライドロックおよびスライドロック解除する機能をもつ。主導機構は、ウォークイン操作の操作力が作用する側をいう。従導機構は、ウォークイン操作の操作力が主導機構から伝達される側をいう。
主導機構は、シートの幅方向の一方側に設けられシートの背もたれ部の倒れに連動して第1ロック部材をスライドロック解除させる。従導機構は、シートの幅方向の他方側に設けられ主導機構に連動して第2ロック部材をスライドロック解除させる。伝達機構は、主導機構と従導機構との間に設けられており主導機構の作動を従導機構に伝達する。主導機構は、シートの背もたれ部の倒れに連動して作動する第1駆動部材(例えば駆動リンクまたはケーブル)と、第1ロック部材を押してスライドロック解除させる第1解除リンクとを備えている。主導機構は、一般的には、第1駆動部材および第1解除リンクを揺動可能に結合するリンク結合軸とを備える。従導機構は、第2ロック部材を押してスライドロック解除させる主導機構の伝達機構により第1解除リンクに連動する第2解除リンクとを備える。
伝達機構は撓み性をもつ索状部材であり、索状部材の長さ方向の一端部は主導機構の第1解除リンクのリンク結合軸に結合されており、索状部材の長さ方向の他端部は従導機構の第2解除リンクに結合されている形態が例示される。索状部材の長さ方向の一端部はリング体を有しており、リング体はリンク結合軸の外周側に嵌合することにより相対回動可能にリンク結合軸に連結されている。これにより索状部材を良好にリンク結合軸に接続できる。索状部材としてはケーブル、ワイヤ、紐、ロープ、チェーンのうちのいずれかが例示される。リンク結合軸は解除リンクに対して回り止めされているか、溶接で固定されている形態が例示される。リンク結合軸が回り止めされているため、リンク結合軸に起因して索状部材が回転変位することが抑えられる。
主導機構の第1解除リンクは、リンク結合軸を嵌合すると共に断面で非真円形状をなす取付孔を備えている形態が例示される。この場合、リンク結合軸のうち少なくとも取付孔に嵌合する軸部分は、リンク結合軸を回り止めするように断面で非真円形状をなすことができる。これによりリンク結合軸を回り止めできる。
主導機構は、第1解除リンクをスライドロック解除方向と反対方向に付勢する第1付勢部材を備え、従導機構は、第2解除リンクをスライドロック解除方向に付勢する第2付勢部材とを備える形態が例示される。また、主導機構の第1解除リンクは、第1ロック部材を押してスライドロック解除させる第1当接部をもち、従導機構の第2解除リンクは、第2ロック部材を押してスライドロック解除させる第2当接部をもつ形態が例示される。そして、スライドロック解除の初期位置において、主導機構の第1当接部と第1ロック部材との間には主導側遊びクリアランスが形成されており、スライドロック解除の初期位置において、従導機構の第2当接部と第2ロック部材とは接触している形態が例示される。あるいは、主導側遊びクリアランスよりもクリアランス幅の狭い従導側遊びクリアランスが従導機構の第2当接部と第2ロック部材との間に形成されている形態が例示される。
第1付勢部材および第2付勢部材のうちの一方または双方は、当該一方のリンクの過剰揺動を規制するストッパとして用いられている形態が例示される。万一、第1解除リンクおよび/または第2解除リンクに過大ストロークが作用するときであっても、第1解除リンクおよび/または第2解除リンクの過剰揺動が抑制され、ウォークイン装置の機能が良好に維持される。
第1付勢部材および第2付勢部材のうちの一方または双方は、コイル部とコイル部に繋がる腕部とをもつねじりコイルバネである形態が例示される。ねじりコイルバネの腕部は、第1解除リンクまたは第2解除リンクの過剰揺動を規制するストッパとして用いられることができる。腕部はバネ弾性を有するため、第1解除リンクまたは第2解除リンクが衝撃的に当たることが防止される。更に、腕部はバネ弾性を有するため、第1解除リンクまたは第2解除リンクをこれらの初期位置に戻そうとする弾性力を発揮することができる。第1解除リンクおよび/または第2解除リンクは、ねじりコイルバネの腕部に当接するリンクストッパ部を有する形態が例示される。
更に、固定レールに対するシートの相対位置を記憶する記憶部材と、操作部材の操作により記憶部材の記憶を解除する記憶解除部材とを備える形態が例示される。この場合、記憶部材は、固定レールに沿って設けられ複数のメモリロック部をもつメモリレールと、メモリレールに沿って移動可能に設けられメモリレールの各メモリロック部にスライドロック可能およびスライドロック解除可能なメモリスライダとを備えている形態が例示される。
以下、本発明を具体化した一実施例について図面に従って説明する。本実施例に係る車両用の着座シート装置は、通常のシートスライド機構と、ウォークイン操作する機構とを有する。本実施例に係るウォークイン操作とは、一般的には、車両の後側のシートに乗降するとき、前側のシートの背もたれ部を前方に傾動させることにより、ロアレール(床に固定されている)に対してアッパレールのスライドロックを解除し、乗降スペースを増加させるべく、前側のシートを前方に移動させる機構をいう。この場合、前側のシートの元の位置を記憶させる記憶部材が設けられており、前方に移動させたシートを後方に復帰させるとき、シート側のストッパを記憶部材に当てることにより、記憶部材が記憶している元の位置にシートを戻す。
まず、図1〜図4は利用者の操作力が作用する主導機構100を示す。説明の便宜上、主導機構100から説明する。図1および図2は主導機構100の表裏をそれぞれ示す。図1及び図2は、自動車などの車両の前席側に搭載される車両用シート装置1の骨格部を示す主導機構100の側面図である。図1及び図2は車両の前方に向かって左側に配置された骨格部をそれぞれシート内側及び外側から見た側面図を示す。車両の前方に向かって右側に配置される骨格部については基本的に同様の構造である。
図1及び図2に示すように、車両フロア(図示略)に一対のブラケット2を介して固定される第1レールとしてのロアレール3(固定レール)は、車両前後方向に延在する。図3に示すように、このロアレール3は、シート幅方向両側から立設された一対の側壁部11及びこれら側壁部11を互いに連結する底壁部12を有する断面略リング形状を呈している。そして、各側壁部11の先端(上端)には、幅方向内側に屈曲されて更に側壁部11の基端側に折り返された第1折返し壁部13が連続形成されている。このロアレール3は、略リング形状のレール断面内に収容空間S(図3参照)を形成している。
第2レールとしてのアッパレール4は、シートクッション(シート)の骨格をなすシートクッションフレーム(図示略)に固定され、シートと共に移動する。アッパレール4は、車両前後方向に延在する。図3に示すように、このアッパレール4は、断面略リング形状を呈して下方に開口する壁部20及び壁部20の上面に固着されて上下方向に延びる支持壁部21を有する。壁部20は、シート幅方向で前記ロアレール3の両第1折返し壁部13間に挟まれるように配置されており、その先端(下端)にはこれに連続して幅方向両外側に曲成されて更に前記側壁部11及び前記第1折返し壁部13に包囲されるように折り返された第2折返し壁部22が形成されている。
図4に示すように、上記アッパレール4は、ロアレール3の底壁部12との間に介在する複数のローラ5(転動体)を介して支持されている。また、アッパレール4は、第2折返し壁部22の先端部において、これに対向する第1折返し壁部13とボール6を介して係合する。これによりアッパレール4はロアレール3との間でローラ5を転動させつつ、同ロアレール3に対し長手方向(車両前後方向)に摺動自在に支持される。つまり、シート側のアッパレール4は、ロアレール3に対し相対移動可能となっている。そして、アッパレール4に固定されるシートは、ロアレール3が固定される車両フロアに対して車両の前方向(矢印F方向)および後方向(矢印R方向)にスライドする。
図3に示すように、ロアレール3において、シート幅方向内側に配置される側壁部11には、その長手方向に並設された複数のスライドロック孔11aが所定の間隔をもって形成されている。アッパレール4において、シート幅方向内側に配置される第2折返し壁部22が形成されている。第2折返し壁部22には、複数の挿通孔22aが形成されている。挿通孔22aは隣り合う複数(例えば3つ)のスライドロック孔11aと合致可能とされている。さらに図3に示すように、アッパレール4の支持壁部21において、シート幅方向内側面には、補助プレート23が固定されている。補助プレート23には、隣り合う複数(例えば3つ)のスライドロック孔11aと合致可能な複数の貫通孔23aが形成されている。
図3に示すように、アッパレール4には、補助プレート23とともにブラケット24が固定されている。ブラケット24には、第1ロック部材としての第1スライドロックプレート25が、ポールを挟んだ軸支ピン26により回動自在に支持されている。第1スライドロックプレート25には、複数(例えば3つ)のスライドロック爪25aが形成されている。第1スライドロックプレート25がスライドロック方向(矢印W1方向)に回動すると、スライドロック爪25aは貫通孔23a及び挿通孔22aに対して挿入される。また第1スライドロックプレート25がスライドロック解除方向(矢印W2方向)に回動すると、スライドロック爪25aは貫通孔23a及び挿通孔22aから離脱する。なお、スライドロック爪25aは、貫通孔23a及び挿通孔22aに対する挿脱に合わせて、隣り合う複数(例えば3つ)のスライドロック孔11aに対して挿脱可能となっている。
換言すると、第1スライドロックプレート25がスライドロック方向(図3において矢印W1方向)に回動すると、スライドロック爪25aがスライドロック孔11aに対して貫通孔23a及び挿通孔22aとともに、第1折返し壁部13側へと挿入される。すると、ロアレール3及びアッパレール4がスライドロックされ、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動が規制される。このとき、スライドロック孔11aは、スライドロック爪25aが挿入された貫通孔23a及び挿通孔22a間でスライドロック爪25aが挿入されることで堅固に係止されている。これにより、アッパレール4は、ロアレール3に対する相対移動範囲における所要位置で保持される。故に、アッパレール4に支持されるシートも位置決めされる。
なお、第1スライドロックプレート25は、軸支ピン26周りに配設されたスプリング25d(図1参照)によりスライドロック方向に付勢されている。これにより第1スライドロックプレート25のスライドロック爪25aは、スライドロック孔11aに挿入される方向(スライドロック方向、矢印W1方向)に常時回動付勢されている。また図3に示すように、第1スライドロックプレート25には当接フランジ25bが形成されている。当接フランジ25bは、軸支ピン26を挟んでスライドロック爪25aと対向する。
一方、図1に示すように、アッパレール4の支持壁部21においてシート幅方向内側面には、操作部材としてのスライドロック解除操作レバー28が設けられている。スライドロック解除操作レバー28は、その長手方向の中央部位でピン29により回動自在に支持されている。図1に示すように、スライドロック解除操作レバー28の長手方向後端には、当接フランジ28bが形成されている。この当接フランジ28bは当接フランジ25bと当接可能に対向配置されている。また、スライドロック解除操作レバー28の長手方向の前端には、保持部28cが形成されている。保持部28cには、利用者により操作される操作ハンドル(図示略)が嵌合保持される。操作ハンドルの操作に伴ってスライドロック解除操作レバー28がピン29を中心として回動すると、当接フランジ25b、28b同士が当接する。この結果、第1スライドロックプレート25をスプリング25dの付勢力に抗してスライドロック解除方向、つまり、図3における時計回転方向(矢印W2方向)に回動させる。これによりスライドロック爪25aとスライドロック孔11aとの係合を解除し、アッパレール4およびシートはスライドロック解除されるので、ロアレール3に沿ってスライド可能となる。
さらに、図3に示すように、第1スライドロックプレート25には当接フランジ25c(被当接部)が形成されている。当接フランジ25cとスライドロック爪25aとで軸支ピン26を挟むように、当接フランジ25cは形成されている。図3に示すように、当接フランジ25c(被当接部)は、第1当接ピン33と対面するように、アッパレール4の支持壁部21を貫通し、シート幅方向外側面側に突出している。
なお、スプリング28d(図1参照)はスライドロック解除操作レバー28を矢印Y1方向に常時回動付勢している。この結果、当接フランジ28bが当接フランジ25bから離れる方向に付勢されている。利用者により図略の操作ハンドルが操作されると、操作ハンドルに接続されているスライドロック解除操作レバー28がスプリング28dの付勢力に抗してピン29周りで矢印Y2方向(図1参照)に回動する。すると、スライドロック解除操作レバー28は、前述したようにスライドロック爪25aとスライドロック孔11aとの係合を解除し、スライドロックを解除し、ロアレール3に対してアッパレール4(シート)は相対移動可能となる。この状態でシートをスライドさせれば、シートを位置調整できる。
一方、図2に示すように、ウォークイン操作する機構MAは、シートの背もたれ部の前倒しにより作動する第1駆動部材としての第1駆動リンク35と、シートの背もたれ部の前倒しにより作動してスライドロックを解除する第1解除部材としての第1解除リンク31とを備えている。なお第1駆動部材としての第1駆動リンク35はリンクに限らず、シートの背もたれ部の前倒しにより作動するケーブルなどでも良い。
背もたれ部はシートのうち着座者の背中に対面する。第1解除リンク31は、アッパレール4の支持壁部21において、シート幅方向外側面には、ピン32を中心として回動自在に支持されている。第1解除リンク31は外方に突出するリンクストッパ部31xをもつ。この第1解除リンク31の先端部には、第1当接ピン33(第1当接部、図2参照)が固着されている。この第1当接ピン33はスライドロックを解除する機能をもち、第1スライドロックプレート25の当接フランジ25cに当接可能に対向配置されている(図3参照)。ピン32の周りに配設された第1ねじりコイルバネ34により、第1解除リンク31はスライドロック解除と反対方向(図3における矢印K1方向)に常時付勢されている。これにより第1当接ピン33が当接フランジ25cから離れる方向(スライドロック解除方向と反対方向)とされており、第1当接ピン33と当接フランジ25cとの間に主導側遊びクリアランスE1(図3参照)が形成されている。
図5および図6は従導機構300の表裏の双方をそれぞれ示す。従導機構300は基本的には主導機構100と近似する構成および作用効果をもつ。従導機構300は主導機構100からの動力により作動されるものであり、シートの幅方向の他方側にもうけられている。従導機構300は、シートを第2ロアレール3(固定レール)に対してスライドロックおよびスライドロック解除する第2ロック部材としての第2スライドロックプレート25aをもつ。従導機構300の第2スライドロックプレート25aに関連する構造および作用は、主導機構100の第1スライドロックプレート25aに関連する構造および作用と共通するため、説明を省略する。
本明細書では、『第1』の語句は主導機構100において用いられ、『第2』の語句は従導機構300において用いられているが、構造および機能は双方において共通するものであるため、複雑化を回避すべく、同一符号が付せられている。但し、主導機構100と従導機構300との部品の符号を同一にしない方が好ましいときには、従導機構300のうち主要な部品については末尾にSの符号を付しているものがある。従導機構300では、第2解除リンク31S、第2付勢部材としての第2ねじりコイルバネ34S、第2当接ピン33Sが設けられてる。
図6に示すように、第2解除リンク31Sは、従導機構300のアッパレール4の支持壁部21において、シート幅方向外側面には、ピン32を中心として回動自在に支持されている。この第2解除リンク31Sの先端部には、第2当接部としての第2当接ピン33S(図6参照)が固着されている。この第2当接ピン33Sは従導機構100のスライドロックを解除する機能をもち、第2スライドロックプレート25の当接フランジ25c(被当接部)に当接可能に対向配置されている。ピン32の周りに配設された第2ねじりコイルバネ34Sにより、スライドロック解除方向に第2解除リンク31Sは常時付勢されている。
さて、図7は、主導機構100におけるウォークイン操作する機構MAを示す。図7に示すように、第1解除リンク31の先端部には、第1駆動リンク35の一端35hが回動自在に連結されている。ピン36によりシートクッションフレーム(図示略)に回動自在に支持されたリクライニングプレート37が設けられている。この第1駆動リンク35の他端35kは、リクライニングプレート37のレバー部37aに回動自在に連結されている。ピン36の軸心は、シートクッションに対する背もたれ部の回動中心に一致している。リクライニングプレート37から係合片37bが延出している。背もたれ部の骨格をなす背もたれ部フレーム(図示略)に固着された係合片38が係合片37bに対向している。シートクッションフレームに対し背もたれ部フレームがピン36周りを回動することで、係合片37bは、係合片38により押圧されるようになっている。
図7(a)(b)(c)、図8(a)(b)(c)は、主導機構100におけるウォークイン操作を説明する。図7(a)および図8(a)は、ウォークイン操作の初期位置を示し、背もたれ部が乗員の着座可能な通常使用の傾斜角度にあるときを示す。初期位置では、係合片37b 、係合片38間に間隙C(図7(a)参照)が設定されて互いに干渉しないようになっている。更に、ウォークイン操作の初期位置では、図7(a)に示すように、第1当接ピン33と当接フランジ25cとの間に主導側遊びクリアランスE1が形成されている。図7(b)および図8(b)は、ウォークイン操作の途中位置を示し、背もたれ部がスライドロック解除方向へ回動された状態を示す。図7(c)および図8(c)は、ウォークイン操作の最終位置を示し、第1解除リンク31がスライドロック解除方向にフルストローク揺動し、スライドロック解除している。ウォークイン操作では、背もたれ部が所定角度を超えて前方に傾斜する。この結果、図7(b)(c)に示すように、係合片37bが係合片38に押圧される。この結果、リクライニングプレート37は、これに連動してスライドロック解除方向(図7における矢印W8方向)に回動する。この回動に伴い、リクライニングプレート37は、レバー部37aを介して第1駆動リンク35をスライドロック解除方向(矢印W9方向)に引き込む。この結果、ねじりコイルバネ34の付勢力に抗して、ピン32を中心として第1解除リンク31をスライドロック解除方向(図7における矢印W4方向)に回動させる。この結果、図8(a)(b)(c)から理解できるように、第1解除リンク31の第1当接ピン33(第1当接部)は、第1スライドロックプレート25の当接フランジ25c(被当接部)を押圧し、第1スライドロックプレート25をスライドロック解除方向(矢印W2方向)に回動させる。
図10(a)(b)(c)、図11(a)(b)(c)は従導機構300におけるウォークイン操作を説明する。図10(a)および図11(a)は、ウォークイン操作の初期位置を示し、背もたれ部が乗員の着座可能な通常使用の傾斜角度にあるときを示す。ウォークイン操作の初期位置では、図10(a)に示すように、第2当接ピン33S(第2当接部)と当接フランジ25c(被当接部)との間にクリアランスが形成されておらず、接触位置PAを形成している。図10(b)および図11(b)は、ウォークイン操作の途中位置を示し、背もたれ部がスライドロック解除方向へ回動された状態を示す。図10(c)および図11(c)は、ウォークイン操作の最終位置を示し、第2解除リンク31Sがスライドロック解除方向にフルストローク揺動し、スライドロック解除している。
ところで、ウォークイン操作のとき、主導機構100の第1解除リンク31の動力を従導機構300の第2解除リンク31Sに伝達する必要がある。この点本実施例によれば、図7(a)(b)(c)および図10(a)(b)(c)に示すように、主導機構100の第1解除リンク31と従導機構300の第2解除リンク31Sとを繋ぐ伝達機構としての可撓性をもつケーブル400(索状部材)が用いられている。主導機構100ではケーブル400はケーブルガイド420にガイドされている。ケーブル400の長さ方向の一端部401は、主導機構100の第1解除リンク31のリンク結合軸39に結合されている。具体的には、図9に示すように、ケーブル400の長さ方向の一端部401は、透孔403cをもつリング体403を有する。リンク結合軸39は、横断面で四角形状をなす回転止め部390と、円形状部391(391a、391b)と、螺子部392とを有する。そしてケーブル400のリング体403をリンク結合軸39の外周側に嵌合し、更に回転止め部390の先端390cをかしめることにより、リンク結合軸39は第1解除リンク31と第1駆動リンク35とを結合している(図4参照)。ここで、ケーブル400のリング体403はリンク結合軸39の円形状部391に相対回動可能に連結されている。よってケーブル400の変形性が確保される。
ここで、図9に示すように、第1解除リンク31のうちリンク結合軸39を取り付ける取付孔31aは、非真円形状とされており、具体的には互いに平行な直辺31cをもつ長孔(二面幅孔)とされている。そしてリンク結合軸39をケーブル400のリング体403の透孔403c、第1駆動リンク35の端側の透孔35c、第1解除リンク31の取付孔31aに嵌合した状態で、リンク結合軸39の先端390cをかしめ処理することにより、リンク結合軸39を第1解除リンク31に取り付けている。従ってリンク結合軸39を取り付けるとき、リンク結合軸39をこれの軸芯まわりで回転させずとも良い。このためケーブル400が過剰に捻られるおそれがなく、ウォークイン操作する機構MAが長期にわたり良好に維持される。
本実施例によれば、前述したように、ケーブル400の長さ方向の一端部401は、主導機構100の第1解除リンク31のリンク結合軸39に直接的に結合されている。ウォークイン操作時に、図7に示すように、第1駆動リンク35をスライドロック解除方向(矢印W9方向)に引き込む結果、第1解除リンク31をスライドロック解除方向(矢印W4方向)に回動させるが、それと同時にリンク結合軸39がケーブル400の一端部401を直接に引っ張る。この結果、ケーブル400の応答性を向上させることができ、ひいては従導機構300側の応答性を向上させることができる。しかも、ケーブル400のリング体403はリンク結合軸39の円形状部391に対してこれの軸芯の回りで相対回動可能である。このため、第1駆動リンク35の姿勢が矢印W4方向において変化したとしても、ケーブル400の応答性は確保される。
なお、リンク結合軸39を溶接(融着手段)で第1解除リンク31に固定しても良い。溶接で固定する場合には、リンク結合軸を溶接で固定して回り止めできるため、リンク結合軸の断面は四角形状で回り止め構造をもたずとも良く、更に、第1解除リンク31の取付孔31aは二面幅孔である必要がなく、断面で真円形状でも良い。
図10に示すように、従導機構300ではケーブル400はケーブルガイド420にガイドされている。そしてケーブル400の長さ方向の他端部402は従導機構300の第2解除リンク31Sに結合されている。この場合、ケーブル400の一端部401を第1解除リンク31に連結する場合と同様な構造を採用している。但し、第2解除リンク31Sでは、第1駆動リンク35に相当するものは用いられていない。
ケーブル400の長さ方向の他端部402は基本的にはケーブル400の長さ方向の一端部401と同様な構造により第2解除リンク31Sに接続されている。このように本実施例によれば、第1解除リンク31と第1駆動リンク35とを結合するリンク結合軸39を用い、ケーブル400の長さ方向のリング体403をリンク結合軸39に連結している。このため、ケーブル400の連動のために第1解除リンク31の形状の変更を必要とすることなく、第1解除リンク31をそのまま用いることができる。このためリンクスペースの増加が防止され、コストの低減にも有利である。
図7に示すように、前述したごとく、主導機構100では第1解除リンク31をスライドロック解除方向と反対方向(矢印K1方向)に付勢する第1付勢部材としての第1ねじりコイルバネ34が設けられている。第1ねじりコイルバネ34は、コイル部340と、コイル部340の一端および他端に繋がる腕部341および腕部342とをもつ。一方の腕部341はアッパレール4の係止孔4xに係止されている。他方の腕部342は第1解除リンク31に係止されている。この結果、図8(a)に示すように、スライドロック解除の初期位置(ウォークイン時の初期位置)において、主導機構100の第1当接ピン33と第1スライドロックプレート25の当接フラン時25cとの間には、主導側遊びクリアランスE1(図3、図8参照)が形成されている。
本実施例によれば、ウォークイン操作時において、主導機構100の第1解除リンク31の動力をケーブル400を介して従導機構300の第2解除リンク31Sに伝達する。このとき様々な動力伝達ロス(例えば、部品の寸法公差、クリアランスの公差、組み付け公差、ケーブル400の弛み等)の影響が存在するおそれがある。特に、ケーブル400は長さ方向に伸張することがある。このため主導機構100の第1解除リンク31に対して従導機構300の第2解除リンク31Sが時間的に遅れるおそれがある。この点本実施例によれば、スライドロック解除の初期位置において、主導機構100の第1当接ピン33と第1スライドロックプレート25の当接フランジ25cとの間には、主導側遊びクリアランスE1が形成されている。これに対して従導機構300には、第2解除リンク31Sをスライドロック解除方向(矢印K2方向)に付勢する第2付勢部材としての第2ねじりコイルバネ34Sが設けられている。第2ねじりコイルバネ34Sは、コイル部340と、コイル部340の一端および他端に繋がる2個の腕部341および腕部342とをもつ。従導機構300では、一方の腕部341はアッパレール4の係止孔4xに係止されている。他方の腕部342は第2解除リンク31Sに係止されている。この結果、図11(a)に示すように、スライドロック解除の初期位置(ウォークイン時の初期位置)において、従導機構300の第2当接ピン33Sと第2スライドロックプレート25Sの当接フランジ25cとは接触している(接触位置PA)。
このように主導機構100では主導側遊びクリアランスE1が形成されているものの、従導機構300では第2当接ピン33Sは第2スライドロックプレート25Sの当接フランジ25cに接触している。この結果、ウォークイン操作の初期位置において、主導機構100の第1解除リンク31の初期位置よりも、従導機構300(時間遅れが発生しがち)の第2解除リンク31Sの初期位置がスライドロック解除方向に進行している。このため、主導機構100の第1解除リンク31に対して従導機構300の第2解除リンク31Sが時間的に遅れることが抑制される。故に、第1解除リンク31および第2解除リンク31Sの同期性が高まり、主導機構100および従導機構300の同期性が高まる。
また、ウォークイン操作時において第1解除リンク31が揺動するフルストローク位置(スライドロック解除位置)では、図7(a)に示すように、第1解除リンク31のリンクストッパ部31xが第1ねじりコイルバネ34の腕部341に接近しつつも当たらない。しかし第1解除リンク31に過大ストロークが作用するときには、図12に示すように、第1解除リンク31のリンクストッパ部31xが第1ねじりコイルバネ34の腕部341に当たるため、腕部341がストッパ作用を発揮し、第1解除リンク31の過大揺動量は防止される。このとき腕部341はバネ弾性を有するため、第1解除リンク31のリンクストッパ部31xが衝撃的に当たることが防止される。更に、腕部341はバネ弾性を有するため、第1解除リンク31をこれの初期位置の方向に戻そうとする弾性力を発揮する。
第2ねじりコイルバネ34Sと第2解除リンク31Sとの関係についても同様であり、ウォークイン操作時において第2解除リンク31Sが揺動するフルストローク位置では、図10(C)および図11(C)に示すように、第2解除リンク31Sのリンクストッパ部31xが第2ねじりコイルバネ34の腕部341に接近しているものの、接触しない。しかし第2解除リンク31Sをフルストローク位置よりも回動させる過大ストロークが第2解除リンク31Sに作用するときには、図13に示すように、第2解除リンク31Sのリンクストッパ部31xが第2ねじりコイルバネ34Sの棒状の腕部341に当たるため、第2解除リンク31Sの過大揺動量は防止される。更に、腕部341はバネ弾性を有するため、第2解除リンク31Sをこれの初期位置の方向に戻そうとする弾性力を発揮する。
次に、記憶部材の周辺の機構について説明を加える。図3に示すように、ロアレール3の底壁部12には収容空間Sが形成されている。収容空間S内にメモリレール46が固着されている。これによりメモリレール46はロアレール3を介して車両フロアに固定されている。メモリレール46は、開口側がシート幅方向内側に折り返された断面略リング字形状を呈している。メモリレール46は、その中心線をロアレール3の中心線に略一致させて、ロアレール3の長手方向に沿って、即ち、車両前後方向に沿って延在している。図3に示すように、メモリレール46において、シート幅方向内側に折り返された両先端部には、溝状のメモリロック部46aが形成されている。メモリロック部46aは、メモリレール46の長手方向において所定の間隔で直列に複数並設されている。複数のメモリロック部46aは、複数のスライドロック孔11aと同等の所定の間隔をもって形成されている。
図3に示すように、メモリレール46の内部には、記憶部材としてのメモリスライダ47が移動可能に設けられている。このメモリスライダ47は、メモリレール46とともに収容空間S内に配置されている。図14に示すように、メモリスライダ47は、スライダ本体48と、スライダ本体48に形成された収容凹部48aに収容された係止体49とを備えている。スライダ本体48は、メモリレール46の内壁面に対応する外壁面を有しており、メモリレール46に沿って摺動可能とされている。収容凹部48aは上方に開口している。係止体49の下面と収容凹部48aの底面との間には、メモリロック用のスプリング50が介装されている。スプリング50により係止体49は上方(メモリロック方向、図14の矢印W6方向と反対方向)に突出するように付勢されている。
図14において、矢視X1−X1は係止体49の中央に沿った断面を示す。矢視力X2−X2は係止体49の中央よりも片側に寄った断面を示す。図14に示すように、係止体49には、複数(例えば2つ)の嵌合片49aが突設されている。嵌合片49aは、メモリレール46のメモリロック部46aに対して係脱可能とされている。嵌合片49aは、シート幅方向両側にそれぞれ配設されている。スプリング50により係止体49がメモリロック方向に付勢され、嵌合片49aがメモリロック部46aに嵌入する。この結果、メモリレール46に対してメモリスライダ47はスライドロックされて固定される。スライドロックされたメモリスライダ47の位置は、記憶したシート位置(ロアレール3およびアッパレール4の相対位置)の基準に相当するものである。
また図14に示すように、係止体49には、可動式の係止片49bが形成されている。一方、アッパレール4にはストッパ51(図2参照)が固着されている。ストッパ51は、スライダ本体48のストッパ面48fに対面し、ストッパ面48fに当接可能とされている。従って、メモリレール46においてメモリスライダ47がメモリロック部46aによりスライドロックされている状態において、アッパレール4(シート)が後方(矢印R方向)へ移動されると、アッパレール4(シート)側のストッパ51がメモリスライダ47のストッパ面48fに当接する。このとき、メモリスライダ47がメモリロック部46aにスライドロックされて固定されているため、アッパレール4(シート)を、メモリスライダ47による記憶位置に復帰させることができる。これによりメモリスライダ47は、シート位置を記憶するメモリ機能を果たすことができる。
アッパレール4の支持壁部21において、シート幅方向外側面には、メモリ解除レバー41が設けられている。メモリ解除レバー41は、シート位置を記憶するメモリスライダ47によるメモリ機能を解除する記憶解除部材として機能する。メモリ解除レバー41は、ピン29により回動自在にアッパレール4に支持されている。メモリ解除レバー41は、スライドロック解除操作レバー28に接続されており、スライドロック解除操作レバー28に連動する。図14に示すように、メモリ解除レバー41の長手方向後端には、係合片41aが形成されている。
図14に示すように、メモリ解除レバー41の長手方向中間部には、ピン29周りの周方向に延びる長孔41bが形成されている。一方、スライドロック解除操作レバー28には、係合ピン42が固着されている。この係合ピン42は、アッパレール4の支持壁部21を貫通して前記長孔41bに挿通されている。従って、スライドロック解除操作レバー28及びメモリ解除レバー41の相対回動可能範囲は、長孔41b内において係合ピン42の移動範囲で規定されている。そして、ピン29の周りにスプリング43が配設されている。メモリ解除レバー41の係合片41aがロアレール3側に近づく方向(図14において時計回転方向、矢印W6方向)に、メモリ解除レバー41はスプリング43により常時回動付勢されている。詳述すると、スプリング43の一端はメモリ解除レバー41に係止されており、スプリング43の他端は係合ピン42に係止されている。このスプリング43は、長孔41bの周方向一側(図14において反時計回転方向)の内壁面と係合ピン42とが当接するように付勢している。従って、メモリ解除レバー41によれば、これの係合片41aがロアレール3側に近づく方向に常時回動付勢され、係合片41aが係合ピン42に係脱可能に係止されている。
ここで、アッパレール4には、図14に示すように、規制部材としての規制壁部44が設けられている。メモリ解除レバー41が所定範囲を超えるように一側(図8において時計回転方向、矢印W6方向)へ回動すると、メモリ解除レバー41が規制壁部44に当接する。この結果、規制壁部44は、メモリ解除レバー41の所定範囲を超えた一側(図14において時計回転方向)への回動を規制する。
本実施例によれば、スライドロック解除操作レバー28とメモリ解除レバー41は連動する。従って、利用者が操作ハンドルを操作すると、スライドロック解除操作レバー28をスライドロック解除方向に回動させると共に、メモリ解除レバー41をメモリ解除方向に回動させることができる。従って、図14(a)(b)(c)に示したように、メモリ解除レバー41が規制壁部44により規制されるまでの間は、スライドロック解除操作レバー28の回動に連動して、メモリ解除レバー41は、長孔41bの内壁面を係合ピン42に当接させつつ回動する。
ここで、アッパレール4に連結されたメモリ解除レバー41の係合片41aは、メモリスライダ47の係止体49の係止片49bに係合可能に対向している。つまり、メモリ解除レバー41の係合片41aは、メモリスライダ47の係止体49を押圧し得る位置に配置されている。図14(b)(c)に示すように、利用者による操作ハンドルの操作に伴って、スライドロック解除操作レバー28が回動すると、メモリ解除レバー41がメモリ解除方向(図14において時計回転方向、矢印W6方向)に回動する。すると、メモリ解除レバー41の係合片41aにより、係止片49bを挟み込むように、スプリング50の付勢力に抗して、メモリスライダ47の係止体49をメモリロック解除方向(下方、矢印W6方向)に押し下げる。これによりメモリレール46のメモリロック部46aに嵌入していた嵌合片49aがメモリロック部46aから離脱する。この結果、メモリレール46に対するメモリスライダ47のメモリロックが解除される。即ち、メモリレール46に対するメモリスライダ47の相対移動の規制が解除される。
本実施例によれば、基本的に第1スライドロックプレート25によるロアレール3及びアッパレール4がスライドロックされている状態において、メモリスライダ47はメモリロック部46aに嵌入しており、メモリレール46においてスライドロックされている。この結果、メモリスライダ47はメモリレール46に対する相対移動が規制されている。そして利用者の操作によりメモリ解除レバー41を矢印W6方向へ回動させれば、係合片41aが係止体49をメモリロック解除方向(矢印W6方向)に下降させる。このためメモリスライダ47はメモリロック解除され、メモリスライダ47はメモリレール46において相対移動可能となる。この場合、メモリ解除レバー41の係合片41aがメモリスライダ47の係止体49に係合しているため、アッパレール4(シート)がメモリ解除レバー41と共に前方または後方に移動すれば、メモリスライダ47は連動して同方向にメモリメール46に沿って移動する。
図14(d)は、メモリ解除レバー41の回動が規制壁部44により規制された状態を示す。この場合、スライドロック解除操作レバー28は、第1スライドロックプレート25をスライドロック解除方向(矢印W2方向)に回動させ、スライドロック爪25aとスライドロック孔11aとのスライドロックの解除を完了する。
上記したよう通常操作時には、利用者が操作ハンドル(図略)を操作することにより、スライドロック解除操作レバー28およびメモリ解除レバー41が作動する。即ち、スライドロック解除操作レバー28の作動により、ロアレール3及びアッパレール4のスライドロックを解除して、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動可能とする。更にメモリ解除レバー41の作動により、メモリスライダ47をメモリロック部46aからスライドロック解除する。従ってアッパレール4(シート)が前方または後方に移動すると、アッパレール4(シート)と共にメモリスライダ47は、メモリレール46に沿って摺動する。メモリスライダ47の係止体49の係止片49bがメモリ解除レバー41の係合片41aに係止されているためである。これによりメモリスライダ47は、アッパレール4およびシートと一体に同じ方向にメモリレール46に対して相対移動する。
これに対して、ウォークイン操作時には、利用者は、背もたれ部を所定角度を超えるように前方に傾斜させる。この場合、スライドロック解除操作レバー28を操作しない。この結果、前記したようにウォークイン操作の機構MAの第1解除リンク31がシートスライドロック解除方向(矢印W4方向)回動し、ロアレール3及びアッパレール4のスライドロック解除を行い、これによりロアレール3及びアッパレール4を相対移動可能とする。ウォークイン操作時には、スライドロック解除操作レバー28およびメモリ解除レバー41は回動操作されないため、メモリレール46に対するメモリスライダ47は、メモリロック部46aに係止してメモリロックされてメモリレール46に固定されたままである。故に、メモリレール46に対するメモリスライダ47の相対移動は規制されている。従ってウォークイン操作時には、メモリスライダ47はシートの位置(ロアレール3およびアッパレール4の相対位置)を記憶しているメモリ機能を果たす。
ウォークイン操作時には、前方(乗降スペース増加方向、矢印F方向)に移動させたシートを後方(矢印R方向)に復帰させる。この場合、アッパレール4のストッパ51がメモリスライダ47のストッパ面48fに当接するまで、アッパレール4(シート)は後方(矢印R方向)に移動することができる。これにより、シートの位置(ロアレール3及びアッパレール4の相対位置)は、アッパレール4の前方へ移動する前の相対位置(メモリ位置)に復帰する。そしてメモリ解除レバー41の係合片41aもメモリスライダ47の係止体49を押圧して係合し得る位置に復帰する。
(その他)
本発明は上記しかつ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。例えば、上記した実施例では、スライドロック解除の初期位置において、従導機構300の第2当接部と第2ロック部材とは接触して接触位置PAを形成している。しかしこれに限らず、従導機構300において、主導側遊びクリアランスよりもクリアランス幅の狭い従導側遊びクリアランスを形成することにしても良い。更に上記した実施例では、第1ねじりコイルバネ34および第2ねじりコイルバネ34Sの双方が解除リンク31,31Sの揺動量を規制するストッパとして機能するが、いずれか一方のみとしても良い。
前記実施例において、各車両用シート装置1に対してロアレール及びアッパレールをそれぞれ3つ以上設けてもよい。また、十分な強度と安定性が確保されるのであれば、各車両用シート装置1に対しロアレール及びアッパレールは1つだけでもよい。また前記実施例において、ロアレール及びアッパレールの相対移動に伴うシートの移動方向は、車両の前後方向とされているが、これに限られるものではなく、例えば車両の幅方向であってもよい。また、前記実施例において、ウォークイン操作時には前側のシートを前方に移動させるが、前側のシートは運転席、助手席側に限らない。更に、ウォークイン操作時には前側のシートを前方に移動させるが、後席側のシートを後方に移動させて乗降スペースを増加させることにしても良い。
また前記した実施例では、シートの背もたれ部の倒れに連動する第1駆動リンク35に代えて、背もたれ部の倒れに連動するケーブル等の索状部材を用いても良い。前記した実施例では、主導機構100の他に従導機構300および伝達機構(ケーブル400)が設けられているが、従導機構300および伝達機構(ケーブル400)を廃止し、主導機構100のみとしても良い。例えば、シートの背もたれ部の倒れに連動して各々の第1ロック部材および第2ロック部材のロックを解除する機構(主導機構100)を、シートの幅方向の両側に備えることにしても良い。