しかしながら、特許文献1については、判別具を用意しなくとも、印刷物を折り返し線に対して合わせることで、潜像パターンを可視化して真偽判別が行える一方、可視化される潜像パターンは、1対の凸部と凹部により形成された凹凸が一定の配置で配置された箇所の基材自体又は凹凸と基材の間に印刷層を設けて形成されるもので、凹凸自体が潜像パターンを構成する複雑な画線構成となっているものではない。したがって、潜像パターンの出現原理がわかってしまうと、比較的容易に偽造されてしまうという課題があった。
また、特許文献2についても、判別具を用意せずに、用紙自体を二つ折りにして凹凸を重ね合わせながら摩擦により特殊音が発生することで、真偽判別を行えるものであるが、特殊音を発生させることにより、特に目の不自由な人向けの識別に効果があるもので、重ね合わせて画像を出現させるものではない。
また、特許文献3については、一つの印刷物上に機能性材料を用いて形成された二つの領域を、印刷物を所定の折り曲げ位置で折り曲げて重ね、その重ね合わせて形成された情報に対して判別機器を用いて判別するもので、二つの領域に形成された情報は、比較的単純な構成によるものである。さらに、赤外線吸収インキという機能性材料を用いて形成された情報であることから、情報の確認には、特別な機器を用いなければならないという課題があった。
さらに、特許文献4については、二つの情報を重ねて一つの有意味情報(特許文献4においては、コード情報)を形成する際、確実に有意味情報が形成可能なように、凹部の形状にはめ込み可能な形状を具備したタグを用いるものであり、二つの異なる領域を合わせて情報を確実に出現させるためには効果的ではあるものの、一つの印刷物において、異なる領域を重ね合わせて有意味情報を出現させるものではなかった。
そこで、本発明は、特別な判別具を用いなくても、印刷物を所定の位置で折り曲げて第1の有意味情報を出現させ、更にその状態から基材を一定方向にずらして観察すると、第2の有意味情報が出現することで、より精度の高い真偽判別が可能となり、かつ、その有意味情報を形成するための要素が複雑化されることで、容易に偽造をすることが出来ない真偽判別形成体を提供することを目的とする。なお、前述のとおり、有意味情報を形成するための要素を複雑化していることから、有意味情報を出現させるために、同一の基材上に少なくとも二つの領域を形成して、折り曲げて出現させるという構成だけではなく、別々の基材、いわゆる判別具を用いる構成としても、従来にはない、より精度の高い真偽判別を可能とすることも本発明の目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、基材の同一表面上及び/又は異なる面に、凹形状及び/又は凸形状の要素から成る二つの領域が形成され、二つの領域を重ね合わせたときに、二つの潜像画像が視認可能な真偽判別形成体であって、凹形状及び/又は凸形状の要素から成る領域は、凹形状及び/又は凸形状の要素を部分的に位相を異ならせた又は同一の範囲内で面積率を異ならせたことで潜像画像形成部と背景部に区分けされ、二つの領域のうち、第1の領域は、凹形状及び/又は凸形状の第1の要素が万線状に第1のピッチで複数配置され、二つの領域のうち、第2の領域は、凹形状及び/又は凸形状の第2の要素が万線状に第2のピッチで複数配置され、第1の領域の潜像画像形成部により、第一の潜像画像の一部及び第二の潜像画像の一部が所定の距離だけ離れた位置に形成され、第2の領域の潜像画像形成部により、第1の領域の潜像画像形成部が形成している第一の潜像画像の一部以外及び第1の領域の潜像画像形成部が形成している第二の潜像画像の一部以外が所定の距離と同じ距離だけ離れた位置に形成され、第1の領域又は第2の領域の一方の領域内及び/又は一方の領域の近傍に、第一の潜像画像を形成するための基準となる位置を特定する第1の特定部と第二の潜像画像を形成するための基準となる位置を特定する第2の特定部から成る第1の基準部が形成され、他方の領域内及び/又は他方の領域の近傍に、第1の基準部に対応する第2の基準部が形成され、第1の基準部における第1の特定部と第2の特定部の間に第2の基準部がはまるように第1の領域と第2の領域を重ね合わせて第1の特定部と第2の基準部が接した時に、第一の潜像画像を形成するための潜像画像形成部により第一の潜像画像が形成されて視認でき、第2の特定部と第2の基準部が接した時に、第二の潜像画像を形成するための潜像画像形成部により第二の潜像画像が形成されて視認できることを特徴とする真偽判別形成体である。
また、本発明の真偽判別形成体は、第1のピッチと第2のピッチが、同一ピッチ又は一方のピッチに対して他方のピッチが正の整数倍のピッチであることを特徴とする。
また、本発明の真偽判別形成体は、第1の基準部が、第1の領域内に第1の要素によって形成され又は第2の領域内に第2の要素によって形成され、第2の基準部は、第1の基準部が第1の領域内に形成された場合、第2の領域内に第2の要素によって形成され、第1の基準部が第2の領域内に形成された場合には、第1の領域内に第1の要素によって形成されていることを特徴とする。
また、本発明の真偽判別形成体は、第1の基準部が、第1の領域又は第2の領域の近傍に凹形状及び/又は凸形状の要素により形成され、第2の基準部は、第1の基準部が第1の領域の近傍に形成された場合、第2の領域の近傍に凹形状及び/又は凸形状の要素により形成され、第1の基準部が第2の領域の近傍に形成された場合には、第1の領域の近傍に凹形状及び/又は凸形状の要素により形成されていることを特徴とする。
また、本発明の真偽判別形成体は、複数配置された第1の要素、複数配置された第2の要素、第1の基準部及び第2の基準部が、画線、網点、画素、図形及び文字のいずれか一つ又はそれらの組合せから成ることを特徴とする。
また、本発明の真偽判別形成体は、第1の要素及び/又は第2の要素が、万線状に配置された複数の要素の中の一つの要素内において、画線、網点、画素、図形及び文字のいずれか二つ以上の組合せから成ることを特徴とする。
また、本発明の真偽判別形成体は、第1の要素、第2の要素、第1の基準部及び第2の基準部が、エンボス、凹版印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、凸版印刷、インクジェット印刷、レーザ加工及びすき入れのいずれか一つ又はそれらの組合せにより形成されていることを特徴とする。
また、本発明の真偽判別形成体は、第1の要素及び第2の要素が、凹版印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、凸版印刷及びインクジェット印刷のいずれかにより形成されている場合、赤外線吸収特性を有するインキにより印刷されていることを特徴とする。
また、本発明の真偽判別形成体は、第1の要素、第2の要素、第1の基準部及び第2の基準部が、発泡インキを用いて凸形状に形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、基材を所定の位置で折り曲げて第1の領域と第2の領域を重ね合わせた状態で、真偽判別形成体に赤外光を照射し、第一の潜像画像が出現するか否かの確認を行い、第一の潜像画像の出現を確認と、第1の方向に所定の距離だけ離れた位置までずらした時に、第二の潜像画像が出現するか否かの確認を行い、第一の潜像画像及び第二の潜像画像の両方の出現が確認できるか否かにより、真偽判別形成体を真偽判別することを特徴とする。
また、本発明は、収納部、照射部及び受光部から成る検出部、記憶部及び判定部を少なくとも有する判別機器により真偽判別形成体を真偽判別する方法であって、基材を所定の位置で折り曲げて第1の領域と第2の領域を重ね合わせて第一の潜像画像を形成した状態で判別機器の収納部に挿入し、照射部から基材に対して赤外光を照射して赤外線透過光を受光部で受光し、受光した赤外線透過光により第一の潜像画像の赤外線吸収パターンを検出部により検出し、検出した第一の潜像画像の赤外線吸収パターンを記憶部で一旦記憶し、第一の潜像画像の赤外線吸収パターンが検出された位置から、第1の方向に所定の距離ずらして第二の潜像画像を形成した状態で、照射部から基材に対して赤外光を照射して赤外線透過光を受光部で受光し、受光した赤外線透過光により第二の潜像画像の赤外線パターンを検出部により検出し、検出した第二の潜像画像の赤外線吸収パターンを記憶部で一旦記憶し、記憶部で一旦記憶した第一の潜像画像及び第二の潜像画像の両方の赤外線吸収パターンと、あらかじめ記憶部に記憶してある第一の潜像画像及び第二の潜像画像の赤外線吸収における基準パターンとをパターンマッチングにより比較して、真偽判別を行うことを特徴とする。
さらに、本発明は、互いを重ね合わせることにより二つの潜像画像が出現する二つの領域がそれぞれ形成された二つの形成体から成る真偽判別形成体対であって、二つの形成体のうち一方の形成体には、基材上の第1の領域に、凹形状及び/又は凸形状の第1の要素が万線状に第1のピッチで複数配置され、第1の要素を部分的に位相を異ならせた又は同一の範囲内で面積率を異ならせたことで潜像画像形成部と背景部に区分けされ、二つの形成体のうち他方の形成体には、基材上の第2の領域に、凹形状及び/又は凸形状の第2の要素が万線状に第2のピッチで複数配置され、第2の要素を部分的に位相を異ならせた又は同一の範囲内で面積率を異ならせたことで潜像画像形成部と背景部に区分けされ、第1の領域の潜像画像形成部により、第一の潜像画像の一部及び第二の潜像画像の一部が所定の距離だけ離れた位置に形成され、第2の領域の潜像画像形成部により、第1の領域の潜像画像形成部が形成している第一の潜像画像の一部以外及び第1の領域の潜像画像形成部が形成している第二の潜像画像の一部以外が所定の距離と同じ距離だけ離れた位置に形成され、第1の領域又は第2の領域の一方の領域内及び/又は一方の領域の近傍に、第一の潜像画像を形成するための基準となる位置を特定する第1の特定部と第二の潜像画像を形成するための基準となる位置を特定する第2の特定部から成る第1の基準部が形成され、他方の領域内及び/又は他方の領域の近傍に、第1の基準部に対応する第2の基準部が形成され、第1の基準部における第1の特定部と第2の特定部の間に第2の基準部がはまるように第1の領域と第2の領域を重ね合わせて第1の特定部と第2の基準部が接した時に、第一の潜像画像を形成するための潜像画像形成部により第一の潜像画像が形成されて視認でき、第2の特定部と第2の基準部が接した時に、第二の潜像画像を形成するための潜像画像形成部により第二の潜像画像が形成されて視認できることを特徴とする真偽判別形成体対。
また、本発明の真偽判別形成体対は、第1のピッチと第2のピッチが、同一ピッチ又は一方のピッチに対して他方のピッチが正の整数倍のピッチであることを特徴とする。
また、本発明の真偽判別形成体対は、第1の基準部が、第1の領域内に第1の要素によって形成され又は第2の領域内に第2の要素によって形成され、第2の基準部は、第1の基準部が第1の領域内に形成された場合、第2の領域内に第2の要素によって形成され、第1の基準部が第2の領域内に形成された場合、第1の領域内に第1の要素によって形成されていることを特徴とする。
また、本発明の真偽判別形成体対は、第1の基準部が、第1の領域又は第2の領域の近傍に、凹形状及び/又は凸形状の要素により形成され、第2の基準部は、第1の基準部が第1の領域の近傍に形成された場合、第2の領域の近傍に凹形状及び/又は凸形状の要素により形成され、第1の基準部が第2の領域の近傍に形成された場合、第1の領域の近傍に凹形状又は凸形状の要素により形成されていることを特徴とする。
また、本発明の真偽判別形成体対は、複数配置された第1の要素、複数配置された第2の要素、第1の基準部及び第2の基準部が、画線、網点、画素、図形及び文字のいずれか一つ又はそれらの組合せから成ることを特徴とする。
また、本発明の真偽判別形成体対は、第1の要素及び/又は第2の要素が、万線状に配置された複数の要素の中の一つの要素内において、画線、網点、画素、図形及び文字のいずれか二つ以上の組合せから成ることを特徴とする。
また、本発明の真偽判別形成体対は、第1の要素、第2の要素、第1の基準部及び第2の基準部が、エンボス、凹版印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、凸版印刷、インクジェット印刷、レーザ加工及びすき入れのいずれか一つ又はそれらの組合せによって形成されていることを特徴とする。
また、本発明の真偽判別形成体対は、第1の要素及び第2の要素が、凹版印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、凸版印刷及びインクジェット印刷のいずれかにより形成されている場合、赤外線吸収特性を有するインキにより印刷されていることを特徴とする。
また、本発明の真偽判別形成体対は、第1の要素、第2の要素、第1の基準部及び第2の基準部が、発泡インキを用いて凸形状に形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前述した真偽判別形成体対に対して、一方の形成体の第1の領域と、他方の形成体の第2の領域を重ね合わせた状態で、真偽判別形成体に赤外光を照射し、第一の潜像画像が出現するか否かの確認を行い、第一の潜像画像の出現を確認した後、どちらか一方の形成体を第1の方向に所定の距離ずらした時に、第二の潜像画像の出現を確認するか否かの確認を行い、第一の潜像画像及び第二の潜像画像の両方の出現が確認できるか否かにより真偽判別することを特徴とする真偽判別形成体対の真偽判別方法である。
本発明は、二つの領域を重ね合わせることで第一の潜像画像が出現し、さらにその状態から一定方向に一定量ずらして観察すると第二の潜像画像が出現するため、単純な一つの情報の出現による真偽判別ではなく、複雑化された構成により、真偽判別の精度が向上するとともに、より高度な偽造及び改ざん等に対する防止の効果を奏する。
また、本発明は、二つの領域に形成される凹凸形状が、それぞれの領域を重ね合わせた際に、凹部に対して凸部が、逆に凸部に対して凹部が嵌め合わされることから、潜像画像を確実に出現させることができる。
また、本発明は、二つの領域に形成される凹凸形状が、それぞれの領域を重ね合わせて第一の潜像画像を出現させた後、その嵌め合わされたそれぞれの領域の凹部及び凸部を案内部(レール)として一定方向にずらすことが可能となるため、その案内に沿って基材をずらすことで、第二の潜像画像を確実に出現させることができる。
また、本発明は、潜像画像を形成するための基準となる位置に、二つの潜像画像に対応して基準部が形成されているため、それぞれの潜像画像を出現させる位置を特定し易くなっている。
さらに、本発明は、潜像画像を出現させるための各領域の構成要素に対して、機能性材料を用いることで、可視光下における真偽判別と、使用した機能性材料の特性に合った判別機器を用いての真偽判別が行えるため、真偽判別の精度をより向上させることができる。
本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる発明を実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている技術事項の範囲内であれば、発明の実施の形態に適宜、変更を加えることもできる。
本発明は、可視光下においては、透過光によって潜像模様を確認する態様のほかに、例えば、赤外線の機能性材料を用いることで、赤外線を照射し、その透過光を機能性材料の特性にあった判別機器により潜像模様を取得し、真偽判別するものである。図1は、本発明の真偽判別形成体(1)の一例を示す図である。本発明の真偽判別形成体(1)は、図1(a)に示すように、基材(2)の同一表面上の異なる領域又は図1(b)に示すように、基材の表裏の異なる面に、第1の領域(5)及び第2の領域(6)を有している。なお、図2に示すように、第1の領域(5)と第2の領域(6)は、別々の基材上に形成されていても良い。別々の領域に形成されている場合についての詳細は後述する。
第1の領域(5)及び第2の領域(6)を形成する基材については、紙、プラスチック、金属等、凹版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、凸版印刷又はインクジェット印刷が可能な基材や、レーザ加工又はすき入れが施せる基材であれば特に限定されない。なお、基材全体が前述の材質でも良いが、潜像模様を形成する第1の領域及び第2の領域を設ける領域のみが前述した材質でも良い。さらには、基材自体が透明又は半透明の場合には、第1の領域及び第2の領域に形成する各要素(後述する)を有色インキにより形成することとなり、例えば、基材が金属のような光透過性の低い材質の場合には、穿孔や切削により、基材を薄く加工したり、孔を開ける等の方法により形成することとなる。
第1の領域(5)には、図3(a)に示すように、第1の要素(7)が万線状に第1のピッチ(P1)により複数配置されており、第2の領域(6)には、図3(b)に示すように、第2の要素(8)が万線状に第2のピッチ(P2)で複数配置されている。この第1の要素と第2の要素が万線状に配置されている第1の領域と第2の領域は、図1に示すように、単なる万線模様でも良く、後述するが、万線模様等を用いて有意味な情報として形成しても良い。
本実施の形態では、第1のピッチ(P1)と第2のピッチ(P2)を、同一ピッチとして説明するが、第1のピッチ(P1)と第2のピッチ(P2)の関係については、必ずしも同じピッチでなければならないものではなく、一方の領域に形成された各要素同士の間に重ね合わせた時に、他方の領域に形成された各要素が当てはまるように配置されていれば良い。したがって、ピッチに規則性を持たせなくてもよいが、一方の領域の各要素のピッチに対して、他方の領域の各要素のピッチが整数倍であることが好ましい。また、第1の要素(7)及び第2の要素(8)は、図3(a)のY−Y’における断面図である図3(c)に示すように凸形状又は凹形状である。なお、第1のピッチ(P1)及び第2のピッチ(P2)については、50〜1200μmの範囲で形成し、好ましくは500μm±300μm程度である。
図3では、第1の要素(7)及び第2の要素(8)を画線により形成しているが、直線に限定されるものではなく、図4(a)のように点線又は波線であっても良く、また画線に限定されるものではなく、図4(b)に示すように、網点、画素、図形又は文字によって形成しても良い。各要素を図4(b)のように網点、画素、図形又は文字によって形成する場合、一つの要素が肉眼では一本の画線として視認可能な程度に、隣り合う間隔を30〜60μm程度とすることが好ましい。また、各要素の画線、網点、画素、図形又は文字については、図4(c)に示すように、第1の要素(7)と第2の要素(8)を別々の形状、例えば、第1の要素(7)を画線で形成し、第2の要素(8)を網点で形成しても良く、また、図4(d)に示すように、一つの領域内において、各要素を画線、網点、画素、図形又は文字の組合せにより形成しても良い。さらには、図4(e)に示すように、複数配置された要素の一つの要素内において、画線、網点、画素、図形又は文字の組合せにより形成しても良い。なお、本実施の形態では、以下、第1の要素(7)及び第2の要素(8)が画線(直線)によって形成されていることとして説明する。
本発明の真偽判別形成体(1)を図1(a)におけるX−X’の位置において折り曲げ、第1の領域(5)と第2の領域(6)を図5(a)に示したように重ね合わせると、図6(a)に示す第一の潜像画像(9)が確認でき、その位置から第1の方向にずらすと、図6(b)に示す第二の潜像画像(10)が確認できる。また、図1(b)のように、第1の領域と第2の領域を同一基材の表裏にそれぞれ形成した場合には、図5(b)に示すように、基材を丸めて第1の領域と第2の領域を重ね合わせれば良い。なお、本発明の第1の要素及び第2の要素が凹形状又は凸形状を成していることから、それぞれの要素を重ね合わせたときに、各要素がレールの役割をするため、各要素と平行する方向にずらし易く、逆の方向には、この凹形状又は凸形状が壁となってずらしにくくなる。したがって、本発明における第1の方向とは、このずらし易い方向、いわゆる、配置されている各要素と平行となる方向のことをいう。また、重ね合わせた際に確認できる潜像画像は、重ね合わせた基材を透過光により観察することが殆どであるが、例えば、基材が透明又は半透明の基材の場合、基材を透かして見なくとも、重ね合わせた段階で潜像画像が確認できることもある。
次に、各潜像画像の構成について、以下に示す。図7は、第一の潜像画像(9)及び第二の潜像画像(10)を形成するための第1の要素(7)及び第2の要素(8)の詳細を説明した図である。まず、第1の領域(5)には、前述のとおり、凸形状又は凹形状の第1の要素(7)が万線状に第1のピッチ(P1)で複数配置されている。また、第2の領域(6)には、第1の要素(7)と同様、凸形状又は凹形状の第2の要素(8)が万線状に第2のピッチ(P2)で複数配置されている。本実施の形態では、第1のピッチ(P1)と第2のピッチ(P2)は、前述のとおり同一ピッチとしている。この凹形状の深さは基材自体の厚さに依存するため、凹形状を施されていない基材面から20〜80μmの範囲の深さに形成し、また、凸形状の高さは、インキの盛り状態にも限度があるため、インキで凸形状を付与する場合は、基材面から20〜80μmの範囲の高さで形成することが好ましい。
この第1の要素(7)及び第2の要素(8)の形状については、凹形状とする場合には、基材に対してエンボス、レーザ加工又はすき入れにより形成し、凸形状とする場合には、印刷によりインキを付与することで形成するため、凹版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷又はフレキソ印刷を用いる。また、凸版印刷やインクジェット印刷を用いることも可能ではあるが、その場合には、発泡インキのように、インキが盛り上がる作用などにより厚みが形成されるインキを用いることが必要となる。
発泡インキとは、インキ中に少なくとも発泡剤が配合されているインキであり、加熱することにより、配合してある発泡剤が発泡してインキ層が隆起するものである。この発泡インキには、プラスチゾルインキ、水性インキ又は有機溶剤型インキ等があるが、本発明では、インキが隆起して凸形状を形成すれば良いため、使用する種類は特に限定されない。
この第1の要素(7)において、部分的に位相を異ならせる又は同一範囲内において面積率を異ならせて潜像画像形成部(11)と背景部(12)に区分けされている。第1の領域(5)においては、第一の潜像画像に対する潜像画像形成部(15)と、第二の潜像画像に対する潜像画像形成部(17)が形成されていることとなる。なお、第1の領域(5)に形成されているそれぞれの潜像画像に対する潜像画像形成部は、第2の領域(6)のそれぞれの潜像画像に対する潜像画像形成部と重ね合わされた時に、それぞれの潜像画像を形成するため、一つずつの領域に形成されている潜像画像形成部だけでは、無意味な情報である。
例えば、図6(a)に示す潜像画像、ここでは「A」という文字を任意に2分割して、一方を図7(a)のような形状とし、他方を図7(c)のような形状とする。同様に、二つ目の潜像画像、ここでは「B」という文字を任意に2分割して、一方を図7(b)のような形状とし、他方を図7(d)のような形状とする。そこで、第1の領域(5)に、第1の要素(7)によって、「A」という文字の一部分である図7(a)の形状を形成し、併せて「B」という文字の一部分である図7(b)の形状を形成する。また、第2の領域(6)に、「A」という文字の残りの一部分である図7(c)の形状を形成し、併せて「B」という文字の残りの一部分である図7(d)の形状を形成する。
なお、第1の要素(7)及び第2の要素(8)の画線幅については、30〜1000μmの範囲で形成するが、あまり画線幅を太くすると、違和感のある模様となったり、潜像画像形成部自体が確認されてしまうため、250±150μmの範囲、いわゆるピッチの約半分の画線幅で形成することが好ましい。
本発明における効果として、第一の潜像画像(9)が確認された位置から所定の距離だけ第1の方向に基材をずらすことで、第二の潜像画像(10)を確認することが可能となるため、各領域内において、第一の潜像画像に対する潜像画像形成部と第二の潜像画像に対する潜像画像形成部は、第1の方向に所定の距離だけ離れた位置に形成する必要がある。この所定の距離については、少なくとも500μm以上であれば良く、その上限は、それぞれの領域内の範囲であれば限定されないが、領域を基材上において広く取りすぎると、デザイン的に好ましくはないことと、本発明の目的が、第一の潜像画像(9)が確認できた位置から、指先をわずかにこすり合わせることによって若干ずらすだけで、別の第二の潜像画像(10)が確認できるというところにあるため、実際には、10mm以下が好ましい。
また、本発明の真偽判別形成体(1)は、前述のとおり、第1の要素(7)及び第2の要素(8)が凹形状又は凸形状を成しているため、第1の領域(5)と第2の領域(6)を重ね合わせた時には、図8に示した断面図のように、複数の第1の要素から成る第1の領域(5)の凹部に、複数の第2の要素から成る第2の領域(6)の凸部が合わさり、逆に、複数の第1の要素から成る第1の領域(5)の凸部には、複数の第2の要素から成る第2の領域(6)の凹部が合わさることとなるため、第一の潜像画像(9)が確認できた位置から第二の潜像画像(10)を確認できる位置までずらす際、この凹凸形状がレールの役割を成して、第二の潜像画像(10)を確認できる位置となる第1の方向にスムーズなずらしが可能となる。なお、第1の領域の凹部及び凸部や第2の領域の凹部及び凸部は、図8のように、第1の要素及び第2の要素を凸形状の要素、例えば、インキで形成した場合、凸部は、インキにより盛り上がっている箇所を示し、凹部は、隣り合うインキ同士の間に位置している基材部分を示すものであり、基材自体を更に凹ませて形成していることを示すものではない。要素を凹形状により形成する場合には、その逆で、凹んだ箇所が凹部となり、基材自体が凸部となる。このレールの役割をする第1の要素(7)と第2の要素(8)の形状も、本発明の二つの潜像画像を確認できるための大きな特徴点であることは言うまでもない。
次に、第1の要素(7)及び第2の要素(8)において、どのように潜像画像形成部(11)が形成されているかについて説明する。図9は、第1の要素(7)及び第2の要素(8)の潜像画像形成部(11)を、基材に対して上方から見たときの拡大図である。まず、各要素の一部の面積率を異ならせることで潜像画像形成部(11)を形成する場合を、図9(a)を用いて説明する。
この各要素の一部の面積率を異ならせるとは、図9(a)のように、同一画線において、同一の範囲内(Z)の画線面積率が異なっている状態を示す。図9(a)では、画線によって要素を形成しているため、画線面積率が異なるとは、いわゆる、画線幅を異ならせていることとなる。したがって、画線幅を異ならせたことで、潜像画像形成部(11)と背景部(12)に区分けされていることとなる。
図9(a)では、潜像画像形成部(11)を背景部(12)よりも画線幅を太くしているが、逆に、図9(b)のように、潜像画像形成部(11)を背景部(12)よりも画線幅を細くしても良い。なお、要素が網点又は画素の場合には、図9(c)のように形成することで潜像画像形成部(11)と背景部(12)に区分けされる。
次に、各要素の位相を異ならせることで潜像画像形成部(11)を形成する場合を説明する。この各要素の位相を異ならせるとは、図10(a)のように、同一画線において、一部が一方向に隆起している状態を示す。この隆起した画線は、レリーフ画線として一般的に知られている画線形状を用いることができる。レリーフ画線の隆起方向は、図10(a)のように上方側でも良いし、逆に下方側でも構わない。ただし、第1の要素(7)と第2の要素(8)の隆起する方向は同一方向でなければ、潜像画像が不明瞭な形状となってしまうため、好ましくはない。また、前述したレリーフ画線に限定されるものではなく、図10(b)のように、階段状の形状でも良く、更には、図10(c)のように、潜像画像形成部(11)と背景部(12)の要素が接していなくても良い。
なお、各要素を用いて潜像画像形成部と背景部を形成する方法として、要素の一部の面積率を異ならせる又は要素の位相を異ならせることを説明したが、一つの領域内において、全ての要素を同じ方法により潜像画像形成部と背景部に区分けしても良く、また、要素ごとに異なる方法を用いて潜像画像形成部と背景部とに区分けしても良い。
各要素の形状については、画線、網点、画素、図形又は文字のいずれでも構わないことは前述したとおりであるが、位相を異ならせる場合においても同様であり、例えば、図10(d)のような形成でも構わないことは言うまでもない。
本発明の真偽判別形成体(1)は、第1の要素(7)及び第2の要素(8)が凹形状又は凸形状を成していることから、重ね合わせた際に、それぞれの領域に形成された凹部に対する凸部及び凸部に対する凹部がレール的な役割をして各潜像画像を確認し易くなっていることを、既に図8により説明したところであるが、より一層、潜像画像を確認し易くするため、各領域内又は各領域の近傍にそれぞれの潜像画像を形成させるための基準となる部位を設けても良い。次に、この基準となる部位について説明する。
基準となる部位は、図11(a)に示すように、第1の領域(5)内に形成された部位を第1の基準部(13)とし、第1の領域(5)に第2の領域(6)を重ねた時に、その第1の基準部(13)に対応する位置にある第2の領域(6)内に形成された部位を、図11(b)のように第2の基準部(14)とする。ここで、第1の基準部(13)及び第2の基準部(14)について図12を用いて説明する。
図12(a)は、第1の要素(7)と第2の要素(8)が重ね合わされた際の第1の基準部(13)と第2の基準部(14)の状態を上方から見た拡大図である。第1の要素(7)には、一部に第一の潜像画像(9)を形成する基準となる第1の特定部(19)を形成する。また、その第一の潜像画像(9)が形成された位置である第1の特定部(19)から、基材を第1の方向(S)にずらして第二の潜像画像(10)を形成する位置に第2の特定部(20)を形成する。この時、第1の基準部(13)が形成されている第1の要素(7)に対応する第2の要素(8)に対して、第2の基準部(14)を形成する。この第2の基準部(14)を形成することで、第1の特定部(19)が第2の基準部(14)のストッパーとなり、第2の基準部(14)が第1の特定部(19)に接した位置で、第一の潜像画像(9)が明瞭に形成されることとなる。また、その位置からそれぞれの要素の凹凸形状をレールの役割としながら、図12(b)のように、第1の方向(S)にずらしていった際に、第2の基準部(14)が第2の特定部(20)に接した位置で、第2の特定部(20)がストッパーとなり、ずらしていく方向に負荷が掛かることとなるため、その位置でずらしをやめると、第二の潜像画像(10)が形成され、明瞭に確認できることとなる。
本実施の形態では、第1の領域(5)に第1の特定部(19)及び第2の特定部(20)から成る第1の基準部(13)を形成し、第2の領域(6)に第2の基準部(14)を形成したが、逆に、第2の領域(6)に第1の特定部(19)及び第2の特定部(20)から成る第1の基準部(13)を形成し、第1の領域(5)に第2の基準部(14)を形成しても良い。また、図12では、第1の基準部(13)及び第2の基準部(14)をそれぞれの要素と接した状態で形成しているが、図13(a)のように離れて形成しても良く、図13(b)のように、第1の要素(7)と異なる形状の網点や画素で形成しても良い。
また、第1の基準部(13)及び第2の基準部(14)について、第1の領域(5)内及び第2の領域(6)内に、それぞれの要素によって形成した形態を説明したが、図14のように、それぞれの基準部をそれぞれの領域外に形成しても良い。ただし、基準部はそれぞれの潜像画像を形成させるための基準となる役割を持っていることから、あまり、潜像画像を形成するそれぞれの領域から離れすぎていると、いくら互いの基準部を合わせても、潜像画像形成部(11)が適正な状態で重ね合わされなくなってしまう恐れが生じるため、それぞれの基準部は、それぞれの領域の近傍に形成することが好ましい。なお、この場合の近傍とは、基準部を指で重ねて押さえたときに、それぞれの領域がしっかりと重ね合わされている位置関係であることが必要となるため、5〜20mm程度が好ましい。
図14のように、基準部を各領域の近傍に形成する場合の基準部の構成としては、一方の基準部である第1の基準部(13)に、第1の特定部(19)及び第2の特定部(20)を有する必要性があるため、第2の基準部(14)に対してストッパーとなる部位を設ける。したがって、例えば、図14の基準部のような形状の場合には、両端の部分が特定部の役割となる。基準部については、前述のとおり、一方の基準部である第1の基準部(13)が、第1の特定部(19)及び第2の特定部(20)を有していれば、図15のようにどのような形状でも構わないが、必ず基材をずらす行為をした際に、第2の基準部(14)が第1の特定部(19)から第2の特定部(20)までスムーズに移動できるような形状でなければならない。また、第1の領域(5)及び第2の領域(6)は、一対の最小単位で形成する必要はなく、適宜、同一基材上の表裏に第1の領域(5)や第2の領域(6)を複数設けることが可能である。その領域内においても、第1の要素(7)及び第2の要素(8)として、凹形状又は凸形状のどちらかを用いるのではなく、その要素として凹形状や凸形状の両方から成ることも可能である。
以上、本発明の真偽判別形成体(1)において、第1の領域(5)と第2の領域(6)を同一基材上に形成する場合で説明してきたが、図2のように、本発明は、第1の領域(5)と第2の領域(6)を別々の基材上に形成することも可能である。別々に第1の領域(5)と第2の領域(6)を形成する場合には、例えば、一方を市場で流通される銀行券、有価証券や商品券等の貴重印刷物とし、他方を簡易的な判別具として、窓口業務を請け負うところで保管しておくことでも良く、また、別の態様としては、例えば、一方の領域を一万円札に形成し、他方の領域を異なる金額の五千円札に形成することで、消費者が手持ちの札により、簡易的に真偽判別を行えることになる。
また、前述では、同一の基材上の異なる領域に、第1の領域(5)と第2の領域(6)の二つの領域を形成した場合で説明したが、第1の領域(5)を基準として、第3の領域を別の領域に設け、第1の領域(5)及び第2の領域(6)で形成した二つの潜像画像とは異なる新たな二つの潜像画像、いわゆる、第三の潜像画像及び第四の潜像画像を第3の領域を用いて形成することも可能であることは、言うまでもない。この場合には、第1の領域(5)内に、第1の要素(7)によって、第2の領域と重ね合わせて形成するための第一の潜像画像及び第二の潜像画像の一部と、第3の領域と重ね合わせて形成するための第三の潜像画像及び第四の潜像画像の一部を併せて形成しておけば良い。
この第3の領域を形成するという考え方を、前述した別々の基材に形成する場合に用いれば、第1の領域を一万円札に形成し、第2の領域を五千円札に形成し、第3の領域を千円札に形成することで、券種毎に、消費者が簡易的に真偽判別を行えることとなる。
また、第1の領域(5)を形成している第1の要素(7)の一部の面積率を異ならせる又は位相を異ならせることで、潜像画像の一部を構成するための潜像画像形成部を形成することについて説明したところであるが、この潜像画像形成部とは異なり、第1の領域(5)内に有意味情報として第1の模様を形成することも可能である。この第1の模様は、潜像画像形成部以外の第1の要素(7)において、要素の一部の面積率を異ならせ又は位相を異ならせて、有意味情報として形成すれば良い。第2の領域(6)内に第2の模様を形成する場合も同様である。ただし、この第1の模様及び第2の模様を形成する場合には、潜像画像を形成し易くするために形成する基準部の作用を妨げないことが必要である。
次に、本発明の別の態様となる機能性材料を用いた真偽判別方法について説明する。凹形状又は凸形状の第1の要素(7)及び第2の要素(8)を、機能性材料、特に赤外線吸収特性を有する材料により形成することで、赤外光を用いた真偽判別も可能となる。この赤外線吸収特性を基材に付与する方法としては、各要素が凹形状から成るエンボス、レーザ加工及びすき入れについて、各要素が形成された領域のみに特別な装置を用いて赤外線吸収特性を有する材料を噴霧等により付与することも可能ではあるが、均一に付与することに困難性があるため、好ましくは、凹版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、凸版印刷又はインクジェット印刷によりインキとして凸形状に付与する。ただし、凸版印刷やインクジェット印刷により各要素を形成する場合には、前述したとおり、使用するインキには発泡インキのように、インキが盛り上がる作用などにより厚みが形成されるインキを用いる。
赤外線吸収特性を有するインキにより各領域が形成された真偽判別形成体(1)について、第1の領域(5)と第2の領域(6)を重ね合わせた状態で赤外光を照射すると、所定の位置で第一の潜像画像(9)が確認でき、その位置から第1の方向にずらすと、第二の潜像画像(10)が確認できる。これらの潜像画像が確認できた場合には、真正品として判断することが可能となるが、この場合では、可視光下でも、同様の確認が可能であることから、あまり機能性材料を用いた効果を奏しない。
そこで、真偽判別の精度を向上させるために、判別機器(図示せず)を用いて真偽判別を行うことも可能である。例えば、対象とする製品を載置する収納部と、赤外光等の使用されている機能性材料の判別に適した所定の光源を照射可能な照射部及びその照射した所定の光が製品から反射又は透過した光を受光する受光部を少なくとも有する検出部と、対象とした製品から検出した二つの潜像画像を一旦記憶するとともに、あらかじめ真偽判別形成体の真正品に対して検出した二つの潜像画像を基準パターンとして記憶しておく記憶部と、対象とした製品から検出した二つの潜像画像と基準パターンとを比較して真偽を判定する判定部を有する判別機器を用いる。
前述した構成から成る判別機器を用いて真偽判別する方法を図16のフローチャートに基づき説明する。まず収納部に、対象とする製品を所定の位置で折り曲げて(S1)、第1の領域(5)と第2の領域(6)を重ねた状態で載置する(S2)。この時、そのままの状態では、第1の領域と(5)第2の領域(6)が離れてしまったり、ずれてしまうこともあるため、所定の光源を妨げない押さえ部材、例えば、透明ガラス等で押さえたり、当該の判別機器に押さえ手段を設けても良い(S3)。対象製品の第1の領域(5)と第2の領域(6)が適正に重なった状態において、所定の光源を照射する。なお、本発明では、赤外線吸収特性を有するインキを用いて各要素を形成している例で説明するため、赤外光を照射部から照射し、対象製品からの透過光を受光部により受光して(S4)、第一の潜像画像(9)をパターンとして検出した(S5)。検出された第一の潜像画像パターンは、一旦記憶部において記憶される(S6)。さらに、第一の潜像画像(9)が形成されているか否かについては、判別機器に検出パターンが画像表示される表示部を備えておくことにより、適正な潜像画像のパターンを検出可能である。
第一の潜像画像(9)が検出された位置から、第1の方向にずらして第二の潜像画像(10)を形成させ(S7)、その状態で第一の潜像画像(9)を検出したときと同じように、赤外光を照射して、透過光を受光して(S8)、第二の潜像画像(10)のパターンを検出し(S9)、記憶部において、その潜像画像パターンを一旦記憶する(S10)。
記憶部においては、前述のとおり、真正品の第一の潜像画像パターンと第二の潜像画像パターンを基準パターンとして記憶し、基準パターンと検出された二つの潜像画像パターンとを判定部によりパターンマッチングを行い、両方共潜像画像パターンが基準パターンと一致した場合には、対象製品が真正であるとして判定し、一方でも一致しない場合には、偽造品として判定する。なお、パターンマッチングについては、両方の領域の重ね合わせ具合により、完全な潜像画像が形成されないことも有り得るため、ある閾値以上の類似度であれば、同一の潜像画像であることとする判断基準を設定しても良い。ここで、閾値については、適宜、設定すれば良い。
なお、前述の機能性材料を用いた真偽判別形成体については、画像パターンのパターンマッチングによる真偽判定について説明したが、単純に、機能性材料が付与されているということを、当該領域に対して特定の波長を検出するだけで真偽判別を行っても良い。例えば、赤外線吸収特性を有する材料、特にインキにより各領域を形成した場合、潜像画像の出現状態は、可視光下で行うこととし、更に真偽判別の精度を向上させるために、当該領域が設計時の赤外線吸収特性を有する材料で形成されているか否かだけを検出する。この場合には、潜像画像の出現状態を検出するものではないため、判別機器に対して所定の位置で折り曲げる必要性はなく、対象製品をそのままの状態で判別機器に通紙して、光源からの光に対する反射又は透過における波長の状態を検出して、判定を行う。それにより、潜像画像の出現状態の可視光下での確認に加え、所定の機能性材料で形成されていることが確認できることとなる。
前述のとおり、潜像画像を可視光下で確認し、更なる真偽判別を行うために機能性材料を用いる場合には、機能性として赤外吸収特性に限定されるものではなく、例えば、赤外線で反射又は透過する材料や紫外線で発光する材料、温度により変色する2色性のサーモクロミック(示温)材料又は応力によって発色する材料を用いることでも良い。
以下、本発明における真偽判別形成体について、実施例を用いて詳細に説明するが、以下の実施例に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的な範疇であれば、適宜、変更しても本発明に含まれることは言うまでもない。
実施例1として、図17に示す商品券である真偽判別形成体(21)に対して、両端の下部に印刷された二つの領域に潜像画像を形成した。第1の領域(22)は、左下部に印刷された彩紋模様の中央部に形成し、第2の領域(23)は、右下部に印刷された彩紋模様の中央部に形成した。両方の領域は、凹版印刷を用いて、第1の要素(28)及び第2の要素(29)が図19のように、画線幅は200μm及び画線ピッチは500μmで万線状に配置されている。なお、各要素の画線高さは50μmとなっている。
潜像画像としては、第一の潜像画像を図18(a)に示すような「千円」の文字とし、第二の潜像画像を図18(b)に示すような「OK」の文字としている。
第1の領域(22)は、図20(a)に示すような第一の潜像画像の一部及び図21(a)に示すような第二の潜像画像の一部を、第1の要素(28)により、画線幅を一部異ならせることで形成し、第2の領域(23)は、第1の領域(22)でそれぞれ形成した第一の潜像画像と第二の潜像画像の残りの部分である図20(b)及び図21(b)に示す形状を、第2の要素(29)の画線幅を一部異ならせることで形成した。なお、第1の領域(22)内において、第1の基準部(30)を第1の要素(28)により、画線幅を異ならせることで形成し、第2の領域(23)内において、第2の基準部(31)を第2の要素(29)により、画線幅を異ならせることで形成している。第1の基準部(30)の第1の特定部(32)及び第2の特定部(33)は、基本となる第1の要素(28)の画線より100μmの高さ(h)を有し、かつ、200μmの幅(w)を有している。同様に、第2の基準部(31)も、基本となる第2の要素(29)の画線よりも100μmの高さ(h)を有し、かつ、200μmの幅(w)を有している。なお、ここで言う各基準部の高さ及び幅とは、図19(c)に示すように、高さとは、例えば、第1の要素に対して突出している基準部の画線幅に該当し、図中のhのことであり、また、幅とは、各基準部の長さに該当し、図中のwのことである。第1の基準部(30)における第1の特定部(32)と第2の特定部(33)の間隔は、第一の潜像画像と第二の潜像画像が形成されている間隔と同じ距離となる1.5mmとなっている。
図19に示した第1の領域(22)及び第2の領域(23)に対して、第一の潜像画像に対する潜像画像形成部のみを取り出したのが図20である。図20(a)は、第1の要素により形成された第一の潜像画像に対する潜像画像形成部(24)を示し、図20(b)は、第2の要素により形成された第一の潜像画像に対する潜像画像形成部(25)を示している。また、図19に示した第1の領域(22)及び第2の領域(23)に対して、第二の潜像画像に対する潜像画像形成部のみを取り出したのが図21である。図21(a)は、第1の要素により形成された第二の潜像画像に対する潜像画像形成部(26)を示し、図21(b)は、第2の要素により形成された第二の潜像画像に対する潜像画像形成部(27)を示している。
本実施例1の商品券(21)を折り曲げて、第1の領域の彩紋模様と第2の領域の彩紋模様を重ね合わせて、ちょうど両方の基準部が接する状態で重ね合わされた位置で、図20(c)に示すような第一の潜像画像(34)が透過光により確認でき、その位置から各要素である画線が平行に配置されているのと同じ平行方向(第1の方向)に基材を指先で若干(1.5mm)ずらして、第2の基準部(31)が第2の特定部(33)に接する感覚を指先に感じたところで、図21(c)に示すような第二の潜像画像(35)を確認することができた。
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例2における商品券(36)は、実施例1の商品券である真偽判別形成体(21)において、図22(a)に示すように、左下部の彩紋模様だけを用いて第1の領域(38)の第1の要素を網点により形成したものである、図22(b)のように、別の基材に、第2の領域(39)を画線により形成した。
本実施例2の商品券(36)については、第1の領域(38)を有する彩紋模様はスクリーン印刷により凸形状の画線を主体として印刷し、前述したとおり、第1の領域(38)のみ網点にて構成している。彩紋模様の画線幅は80μmであり、画線の高さは、約10μmとした。第1の要素の網点は、直径が200μmで、画線の高さは50μmとした。また、判別具(37)に形成された第2の領域(39)は、凹版印刷により、画線幅200μm、画線高さが50μmで、第1の領域(38)及び第2の領域(39)は、共に400μmのピッチにより配置されている。さらに、各領域において、潜像画像形成部は、同一の一本に該当する要素内において、位相を異ならせることで形成している。
本実施例2においても、各領域内に基準部を設けてあるが、実施例1とは異なり、複数の基準部を各要素によって形成している。第1の領域(38)内における第1の基準部は、第1の要素である網点と同様、網点により形成し、網点の直径も、他の第1の要素の網点直径と同様、200μmとし、第1の特定部から第2の特定部までの距離は2mmとした(図示しない)。また、第2の基準部は、第2の要素である画線に対して、50μmの高さ及び200μmの幅により形成した。なお、各基準部については、各領域内のランダムな位置に配置してある。
本実施例2の商品券(36)の彩紋模様内に配置されている第1の領域(38)と、判別具(37)の第2の領域(39)を重ね合わせて、ちょうど両方の基準部が接する状態で重ね合わされた位置で、第一の潜像画像(34)が透過光により確認でき、その位置から各要素である画線及び網点が平行に配置されているのと同じ平行方向に基材を指先で若干(2mm)ずらして、第2の基準部が第2の特定部に接する感覚を指先に感じたところで第二の潜像画像(35)を確認することができた。なお、本実施例では、基準部を複数配置しているため、より一層、潜像画像を形成するための位置を特定し易い状態であった。
次に本発明の実施例3について説明する。本実施例3については、実施例1の商品券(21)と同様のデザイン(各要素の構成等を含む)及び印刷方式は同じであり、異なるところは、凹版インキに赤外線吸収特性を有する材料が含まれている点である。したがって、実施例1と重複するところの説明は省略する。
第1の領域(22)及び第2の領域(23)を各々含む彩紋模様は、前述のとおり、赤外線吸収特性を有する材料が配合された凹版インキにより印刷されている。本実施例3では、この赤外線吸収特性を有する材料については、一般的に公知であるカーボンブラックを用いたが、これに限定されるものではない。
前述の赤外線吸収特性を有する凹版インキにより印刷された商品券(21)を、二つ折りにして両方の彩紋模様を重ね、収納部、照射部及び受光部を有する検出部、記憶部、判定部及び画像表示部から少なくとも構成されている判別機器の収納部に載置し、照射部から赤外線を照射しながら、第一の潜像画像(34)が確認できる位置を画像表示部を見て特定し、第一の潜像画像(34)が確認できた位置で、商品券(21)上に透明ガラス板を載せて固定し、その赤外線吸収パターンを一旦記憶部において記憶させた。
透明ガラス板を一度取り除き、第一の潜像画像(34)を特定した位置から、各要素に対して平行に基材を指先でつまみ少しずらして、基準部同士が接する感覚を指先に感じたところで、第二の潜像画像(35)が確認できるかを、同様に、判別機器の画像表示部を見ながら特定し、第二の潜像画像(35)が確認できた位置で、再度、商品券(21)上に透明ガラス板を載せて固定し、その赤外線吸収パターンを記憶部において記憶させた。
第一の潜像画像と第二の潜像画像の両方の赤外線吸収パターンが記憶されたため、あらかじめ記憶してある 第一の潜像画像と第二の潜像画像の基準パターンとの比較を判定部にてパターンマッチングにより行い、設定した閾値以上の類似度であったことから、商品券(21)が真正品であると判定した。