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JP5083696B2 - 形状記憶樹脂 - Google Patents

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JP5083696B2 JP2008514488A JP2008514488A JP5083696B2 JP 5083696 B2 JP5083696 B2 JP 5083696B2 JP 2008514488 A JP2008514488 A JP 2008514488A JP 2008514488 A JP2008514488 A JP 2008514488A JP 5083696 B2 JP5083696 B2 JP 5083696B2
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Description

本発明は、形状記憶樹脂およびその製造方法に関する。
省資源、省エネルギー、環境問題などへの対応のため、インテリジェント機能材料の開発およびその機械システムへの応用が期待されている。重要なインテリジェント機能材料の1つとして形状記憶材料が挙げられ、金属ならびにポリマーで実用化されている。例えば、加熱によってネジ山がなくなり容易に解体ができるようになる「易解体性ネジ」、あるいは手の不自由な人でも使いやすい形に変形可能な柄を有する「形状記憶スプーン」などが挙げられる。さらに、点滴用留置針、カテーテルなどの医療分野へも応用されている。
形状記憶材料の機能特性は、結晶構造の変化や分子運動の形態の変化による相変態に基づいて現れる。形状記憶材料は、形状をプログラムすることで一時的な形態へ固定化され、外部刺激を与えることで元の形状へ回復する。高機能の形状記憶材料を創製するためには、自在にプログラム可能な材料を設計・開発する必要があり、そのためには材料の分子レベルでの厳密な構造制御が求められている。
形状記憶ポリマーは、相転移による高分子鎖の運動変化に基づいて機能が発現し、融点およびガラス転移温度での相転移が利用される場合が多い。一般に、形状記憶ポリマーはスイッチ部とハード部とから構成され、スイッチ部の相転移現象をハード部で固定することにより網目構造を形成させて、材料としての形態を保持している。
形状記憶ポリマーとして、ポリウレタンを代表例とするハード部が物理架橋である材料が、成形性が容易な点で、頻繁に用いられている(特開2004−300368号公報、特開2005−325336号公報、および国際公開第99/42528号パンフレット)。ウレタン結合を含むハードセグメントがハード部であり、ポリウレタンのソフトセグメントのガラス転移温度での弾性率変化が形状プログラムに利用されている。相転移として融点を利用した方が大きい変異幅を得ることができるために有利であるが、ハード部が物理架橋の場合には、ポリマーの融解により高分子鎖の形態を保持できず、結果としてガラス転移温度を利用せざるを得ない。そのため、大変形・迅速形態変化に対応することが困難である。一方、融解を利用した形状記憶ポリマーの場合には、ハード部が化学架橋であることが多いが、化学架橋したゲルは成形性に乏しく、実用的材料開発に結びついていない。いずれにせよ、従来の形状記憶ポリマーは、同一ポリマー分子内にスイッチ部とハード部とが存在するため、綿密な分子設計と煩雑な合成操作を必要とする。
本発明は、より簡便に製造可能であり、かつ材料特性を用途にあわせて自在に調節可能な新規な形状記憶樹脂を提供することを目的とする。
本発明では、ネットワークポリマーと熱可塑性ポリマーとのブレンドにおいて、熱可塑性ポリマーの相転移を利用することで、従来型とは異なる分子設計に基づく形状記憶樹脂を開発した。
本発明は、ネットワークポリマーと熱可塑性ポリマーとを含む、形状記憶樹脂を提供し、該熱可塑性ポリマーは、該ネットワークポリマー前駆体と相溶性であり、そして該ネットワークポリマー中に分散されている。
本発明はまた、形状記憶樹脂の製造方法を提供し、該方法は、
ネットワークポリマー前駆体に熱可塑性ポリマーを溶解して混合液を得る工程;および
該混合液に硬化剤を加えて該ネットワークポリマー前駆体を架橋する工程;
を含み、
該熱可塑性ポリマーは、該ネットワークポリマー前駆体と相溶性である。
ある実施態様では、上記ネットワークポリマー前駆体は、エポキシ化合物である。
1つの実施態様では、上記エポキシ化合物は、エポキシ化油脂およびエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である。
さらなる実施態様では、上記エポキシ化油脂は、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、およびエポキシ化パーム油からなる群より選択される少なくとも1種であり、そして上記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
ある実施態様では、上記熱可塑性ポリマーは、ポリカプロラクトン、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、およびポリ(ブチレンサクシネート)からなる群より選択される少なくとも1種である。
1つの実施態様では、上記熱可塑性ポリマーのガラス転移温度または融点は、上記ネットワークポリマーのガラス転移温度と、少なくとも20℃の温度差を有する。
本発明の形状記憶樹脂は、アモルファス性のネットワークポリマーをマトリックスとし、このマトリックス中に熱可塑性ポリマー鎖が分子レベルで固定化されている。そのため、ネットワーク中の相転移ポリマー(すなわち、熱可塑性ポリマー)のマクロな形態変化をアウトプットとして、形状記憶機能を発現させることができる。本発明の形状記憶樹脂は、熱可塑性ポリマーをネットワークポリマー前駆体(例えば、エポキシ化合物)に溶解し、熱可塑性ポリマーの相転移温度以上で硬化させるという非常に簡便な方法によって製造され得る。したがって、幅広い樹脂の組合せに容易に応用可能である。
図1は、ESO/PCL=50/50(PCLのMn=80000)を用いて成形した平板状サンプルの形状を示す写真であって、Aは、平板状サンプルに熱を加えて変形させた輪状の形状(変形形状)を示し、そしてBは、輪状の形状を湯に浸して回復させた平板状サンプルの形状(回復形状)を示す写真である。なお、ESOはエポキシ化大豆油を、そしてPCLはポリカプロラクトンを表す。
図2は、ESO/PCL=50/50(PCLのMn=80000)を用いて成形した平板状サンプルおよびポリウレタンについての一軸伸張試験におけるひずみと引張応力との関係を示すグラフである。
図3は、種々の割合のESO/BPAEP/PCLを用いて成形した平板状サンプルについての一軸伸張試験におけるひずみと引張応力との関係を示すグラフである。なお、BPAEPはビスフェノールAジグリシジルエーテルを表す。
図4は、ESO/PCL/PBS=1/1/1(PCLのMn=80000)を用いて成形した平板状サンプルのDSC曲線を示すグラフである。なお、PBSはポリ(ブチレンサクシネート)を表す。
図5は、ESO/PCL/PBS=1/1/1(PCLのMn=80000)を用いて成形した平板状サンプルの成形形状から変形形状への形状記憶過程における形状を示す写真である。
図6は、ESO/PCL/PBS=1/1/1(PCLのMn=80000)を用いて成形した平板状サンプルの変形形状から成形形状への形状回復過程における形状を示す写真である。
図7は、ESO/PCL/PVC=1/1/1(PCLのMn=80000)を用いて成形したラセン状サンプルの成形形状から変形形状への形状記憶過程における形状を示す写真である。なお、PVCはポリ塩化ビニルを表す。
図8は、ESO/PCL/PVC=1/1/1(PCLのMn=80000)を用いて成形したラセン状サンプルの変形形状から成形形状への形状回復過程における形状を示す写真である。
図9は、ESO/PCL/PVC=1/1/1または1/1/2(PCLのMn=80000)を用いて成形した輪状サンプルの成形形状から変形形状への形状記憶過程およびその形状回復過程における形状を示す写真である。
形状記憶樹脂とは、成形形状と変形形状とを熱による温度操作で使い分けることのできる樹脂である。一般的な形状記憶樹脂においては、形状記憶樹脂自体のガラス転移温度(Tg)以上、溶融温度未満または分解温度未満の温度で変形を加え、その形状を保持した状態でガラス転移温度以下まで冷却することにより、変形形状を固定し、また、ガラス転移温度以上、溶融温度未満または分解温度未満の温度に加熱することにより、元の成形形状を回復する。これに対して、本発明の形状記憶樹脂では、熱可塑性ポリマーのTgまたは融点と比較的大きな温度差を有する(例えば、比較的低いTgを有する)マトリックスポリマー(すなわち、ネットワークポリマー)中に分散されている熱可塑性ポリマーのTgまたは融点での相転移を利用して、形状記憶機能が発現される。
本発明において、ネットワークポリマーとは、ネットワークポリマー前駆体の架橋により形成されたポリマーといい、三次元的に網目構造を有する。さらに、本発明において、ネットワークポリマー前駆体とは、架橋によってネットワークを形成し得るポリマーをいう。
本発明に用いるネットワークポリマー前駆体としては、エポキシ化合物、フェノール樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン樹脂、尿素樹脂などが挙げられる。ネットワークポリマー前駆体は、単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。本発明においては、取り扱いが容易でありそして成形性が良好である点で、エポキシ化合物が好適に用いられる。
本発明に用いるエポキシ化合物としては、エポキシ樹脂または不飽和基を含むトリグリセリドのエポキシ化物(すなわち、エポキシ化油脂)であれば特に限定されない。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル)、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、工業用に市販されているものが用いられ得る。このような市販のエポキシ樹脂としては、代表的には、種々のエピコート(登録商標)が挙げられる。
エポキシ化油脂(不飽和基を含むトリグリセリドのエポキシ化物)としては、脂肪酸成分として不飽和脂肪酸を含むトリグリセリドを主成分とする樹脂のエポキシ化物であれば特に限定されない。例えば、天然のトリグリセリドのエポキシ化物が挙げられる。天然のトリグリセリド(天然油脂)としては、大豆油、亜麻仁油、魚油、ひまわり油、桐油、ひまし油、とうもろこし油、なたね油、ごま油、オリーブ油、パーム油、グレープシード油などが挙げられる。このような油脂における脂肪酸成分としては、炭素数4の酪酸から炭素数24のリグノセリン酸に至る飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸が挙げられ、主な飽和脂肪酸はパルミチン酸およびステアリン酸であり、主な不飽和脂肪酸はオレイン酸、リノール酸およびリノレン酸である。硬化(架橋)反応によりエポキシ化合物のネットワーク形成を効率的に進行させるためには、不飽和度が高いトリグリセリドが好ましく、脂肪酸成分中の飽和脂肪酸の比率が低いものが好ましく、かつエポキシ化合物となったときにエポキシ基を多く含むものが好ましい。この点で、大豆油(例えば、脂肪酸成分中の飽和脂肪酸は20%以下である)、亜麻仁油、およびパーム油(例えば、脂肪酸成分中の飽和脂肪酸は50%以下である)が好ましい。市販されているエポキシ化油脂としては、ダイセル化学工業株式会社のエポキシ化亜麻仁油(商品名:ダイコックL−500)、エポキシ化大豆油(商品名:ダイコックS−300K)、花王株式会社のエポキシ化大豆油(商品名:カポックスS−6)などが挙げられる。なお、天然油脂においては上記トリグリセリドの他に少量の遊離脂肪酸、複合脂質、不ケン化物などが含有され得、トリグリセリド以外の成分の含量は一般に5質量%以下である。
上記エポキシ化油脂は、トリグリセリドの不飽和脂肪酸の不飽和部分をエポキシ化、すなわち炭素−炭素二重結合を1,2−エポキシド(オキシラン)へ酸化的に変換したものである。硬化(架橋)反応が効率的に進行する観点から、不飽和部分がエポキシ化される比率(エポキシ化率)は高い方が好ましく、係るエポキシ化率は好ましくは50〜100%、より好ましくは70〜100%である。エポキシ化率が50%未満の場合、架橋率の高いネットワークが形成されず、形状記憶樹脂成形体の形状が保持されにくい傾向にある。また、トリグリセリド中にエポキシ化されていない二重結合が多量に残存していると、残存した二重結合の酸化反応などによって形状記憶樹脂の劣化が促進される可能性がある。
上記のエポキシ化合物は、単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。熱可塑性ポリマーを溶解しやすい点で、室温で液状であるものが好ましい。
本発明に用いる熱可塑性ポリマーは、ネットワークポリマー前駆体と相溶性であれば、特に限定されず、ネットワークポリマー前駆体に応じて適宜選択される。ここで、相溶性とは、2種類または多種類の物質が相互に親和性を有し、溶液または混和物を形成していることをいう。本発明においては、目視により確認できる程度に溶液または混和物が形成されるのであれば、相溶性であるという。本発明に用いる熱可塑性ポリマーは、結晶性ポリマーまたは非晶性ポリマーのいずれであってもよい。
このような熱可塑性ポリマーとしては、例えば、ポリカプロラクトン、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリスルホン、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレングリコール、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリカーボネート、ポリ(オキシテトラエチレン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)などが挙げられる。例えば、ネットワークポリマー前駆体がエポキシ化合物である場合、このネットワークポリマー前駆体との相溶性が良好である点で、ポリカプロラクトン、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、およびポリ(ブチレンサクシネート)が好ましい。これらの熱可塑性ポリマーは、単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に用いる熱可塑性ポリマーは、成形体の形状の保持の点で、分子量が大きい方が好ましい。例えば、ポリカプロラクトンの場合は、数平均分子量(Mn)が、好ましくは少なくとも10000、より好ましくは少なくとも30000、さらに好ましくは少なくとも50000であり得る。熱可塑性ポリマーの分子量についての上限は、用いられるネットワークポリマー前駆体と相溶性であれば特に制限されない。なお、熱可塑性ポリマーの好適な分子量は、上記ネットワークポリマー前駆体の種類および混合比に応じて変動し得る。
さらに、熱可塑性ポリマーのガラス転移温度(Tg)または融点は、成形形状と変形形状とを明確に制御できる点で、ネットワークポリマーのTgと少なくとも20℃の温度差があることが好ましい。例えば、20℃以上の融点差を有する複数の熱可塑性ポリマーを用いて、それら複数のポリマーの存在下でネットワークポリマー前駆体の硬化反応を行うと、複数段階で変形可能な形状記憶樹脂を得ることもできる。
ネットワークポリマー前駆体と熱可塑性ポリマーとの混合比は、使用するネットワークポリマー前駆体および熱可塑性ポリマーの種類によって異なる。ネットワークポリマー前駆体と熱可塑性ポリマーとの混合比は、質量比で、通常は10:90〜90:10、好ましくは20:80〜80:20、より好ましくは25:75〜75:25である。ネットワークポリマー前駆体が多すぎると変形性が悪くなる傾向があり、少なすぎると形状を保持しにくくなる傾向にある。
ネットワークポリマー前駆体を架橋させて、ネットワークポリマーを形成するために、硬化剤(すなわち、架橋剤または触媒)が必要である。硬化剤の種類および量は、ネットワークポリマー前駆体の種類に応じて、当業者によって適宜選択される。
例えば、ネットワークポリマー前駆体がエポキシ化合物である場合は、エポキシ化合物中のエポキシ基を開環重合させるための硬化剤として、酸触媒を用いることが好ましい。通常の酸触媒を用いると熱硬化処理の前に架橋反応が開始してしまい、均一な組成の形状記憶樹脂が得られにくい傾向にあるため、熱潜在性の酸触媒を用いることが好ましい。熱潜在性酸触媒は、所定温度以下では触媒として機能せず、所定温度を超えると分解して酸を生じ触媒作用を発揮する。熱潜在性触媒を用いることにより、例えば、常温でエポキシ化合物と熱可塑性ポリマーとを十分に混合した後に温度を上げて重合反応を起こし、均一な組成の形状記憶樹脂を得ることができる。あるいは、硬化剤として、光硬化触媒を用いてもよい。
熱潜在性酸触媒としては公知のものを用いることができる。熱潜在性酸触媒は、例えば「光機能性有機・高分子材料の新局面」(市村国宏監修、シーエムシー出版、2002年)第1章「光・熱潜在性カチオン・アニオン重合触媒」の欄に記載されており、具体的には、芳香族スルホニウム塩(例えば、ベンジルスルホニウム塩)、ベンジルアンモニウム塩、ベンジルホスホニウム塩などが挙げられる。熱潜在性酸触媒の分解により酸を生じる温度が低すぎると、熱硬化処理の前に架橋反応が開始してしまい、均一なネットワークポリマーが形成されにくくなり、高すぎるとエポキシ化合物と熱可塑性ポリマーとの混合物の成分の揮発や分解が起こりやすくなる。そのため、熱潜在性酸触媒は、分解により酸を生じる温度が50〜250℃であることが好ましく、80〜180℃が特に好ましい。
ネットワークポリマー前駆体がエポキシ化合物である場合、硬化剤の好ましい添加量は、エポキシ化合物100質量部に対して0.1〜20質量部、特に好ましくは0.3〜10質量部である。0.1質量部未満であればエポキシ化合物の架橋反応が十分に完結しない傾向にあり、20質量部を超えると、架橋が不均一になる傾向にある。
本発明の形状記憶樹脂の製造方法は、上記ネットワークポリマー前駆体に上記熱可塑性ポリマーを溶解して混合液を得る工程;および、該混合液に硬化剤を加えて該ネットワークポリマー前駆体を架橋する工程を含む。
ネットワークポリマー前駆体と熱可塑性ポリマーとを混合する工程は、通常室温で行われる。必要に応じて加熱してもよく、あるいは超音波により混合を促進してもよい。あるいは、揮発性の有機溶媒を加えて混合を促進してもよい。
次いで、ネットワークポリマー前駆体と熱可塑性ポリマーとの混合物に硬化剤を加え、よく混合する。この混合物を、例えば、型などに流し込んで、ネットワークポリマー前駆体を架橋させるとともに成形する。本発明において用いられる成形法は、ネットワークポリマー前駆体および熱可塑性ポリマーの種類および混合比、所望の成形体の形状などに応じて、当業者によって適宜選択される。例えば、注型、射出成形、ディップ成形などが挙げられる。
混合物中のネットワークポリマー前駆体を架橋させる加熱処理の条件は、用いる硬化剤の種類に応じて選択されるが、50〜250℃(より好ましくは80〜180℃)の範囲内で選択されることが好ましい。加熱処理の温度が50℃未満では架橋反応が十分に進行しなくなる傾向にあり、他方、250℃を越えるとネットワークポリマー前駆体の揮発や分解が起こって良好な形状記憶樹脂が得られなくなる傾向にある。加熱処理に要する反応時間は特に制限されないが、10分間〜24時間程度が好ましく、30分間〜4時間程度がより好ましい。反応時間が10分未満では架橋反応が十分に完結しない傾向にあり、他方、24時間を超えると形状記憶樹脂が徐々に熱分解する傾向にある。
得られた形状記憶樹脂成形体は、熱可塑性ポリマーの相転移温度(すなわち、Tgまたは融点)以上に加温されて変形形状(あるいは一時的形状)が付与された後、急冷することによって、この変形形状に固定され得る。変形形状の成形体は、再度相転移温度以上に加温することによって、元の成形形状に回復する。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
エポキシ化大豆油(ESO)(カポックスS−6:花王株式会社)50質量部とMn=80000のポリカプロラクトン(PCL)(アルドリッチ)50質量部とを室温でよく混合し、酸触媒(サンエイドSI−100L:三新化学工業株式会社)1質量部を加えてさらによく混合した。この混合液を、44mm×5mm×1mmのフッ素樹脂型に流し込み、150℃にて2時間加熱処理して、約1mm厚の平板状サンプル(成形形状)を得た。このサンプルについて、示差走査熱量測定(DSC)(SSC/5200:Seiko Instruments社)を行った。
次いで、得られた平板状サンプルを80℃に加温し、44mmの外周長を有するガラス棒に巻きつけ、そのまま室温まで急冷し、輪状サンプル(変形形状)を得た(図1A)。この輪状サンプルの両端間の距離を測定した。次いで、この輪状サンプルを90℃の湯に浸して回復させ(図1B)、この回復形状の長手方向の両端間の距離を測定した。この操作を、さらに4回繰り返した。結果を表1に示す。
(実施例2)
PCLとしてMn=42500のPCL(アルドリッチ)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様に行った。得られた平板状サンプル(成形形状)の厚さは約1.2mmであった。結果を表1にまとめて示す。
(実施例3)
PCLとしてMn=10000のPCL(アルドリッチ)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様に行った。得られた平板状サンプル(成形形状)の厚さは約1.4mmであった。結果を表1にまとめて示す。
ESO/PCL=50/50のサンプルでPCLの分子量をMn=10000、42500、および80000と変化させた場合、PCLの分子量が高いほど、変形形状での両端間の距離が短く、高い変形性を示した。また、いずれの分子量においても、変形形状から成形形状への回復率は高かった。また、DSC測定の結果から、Mn=42500のPCLを用いた場合は、ΔHの値が大きく最も高い結晶化度を示したにもかかわらず、Mn=80000のPCLを用いた場合の方が高い変形性を示した。したがって、変形形状を保持する能力は、PCLの結晶化度ではなく、主に分子量に起因していると考えられる。
(実施例4)
ESOを25質量部およびPCLを75質量部用いたこと、ならびにDSCを行わなかったこと以外は、上記実施例1と同様に行った。得られた平板状サンプル(成形形状)の厚さは約1mmであった。結果を表2に示す。
ESO/PCL=25/75の場合は、変形性および回復率ともに、ESO/PCL=50/50(実施例1)と同様に良好であった。
(実施例5)
ESOを75質量部およびPCLを25質量部用いたこと、ならびにDSCを行わなかったこと以外は、上記実施例1と同様に行った。得られた平板状サンプル(成形形状)の厚さは約0.6mmであった。結果を表3に示す。
ESO/PCL=75/25の場合は、回復率は良好であるが、ESO/PCL=50/50または25/75の場合と比較すると、変形性があまり高くなかった。
(実施例6)
上記実施例1と同様にして平板状サンプル(ESO/PCL=50/50、PCLのMn=80000)を得た。この平板状サンプルを80℃に加温し、約20mmの外周長を有するガラス棒にラセン状に約2回巻きつけ、そのまま室温まで急冷し、ラセン状サンプルを得た。このラセン状サンプルを室温にて放置し、10日ごとに30日まで形状の経時変化を観察した。室温では、30日経過しても、ラセン状の変形形状がほぼ維持されていた。
(実施例7)
上記実施例6と同様にしてラセン状サンプルを得た。このラセン状サンプルを80℃のホットプレート上に置き、形状の経時変化を観察した。ホットプレート上に置くと、直ちにラセンの巻きがゆるくなり始め、約60秒でほぼ平板状の成形形状に回復した。
(実施例8)
上記実施例1と同様にして40mm×5mm×1mmの平板状サンプル(ESO/PCL=50/50、PCLのMn=80000)を得た。このESO/PCL平板状サンプルについて、測定装置としてEZ Graph(SHIMADZU社)を用いて5.0mm/分で伸長して一軸伸張試験を行った。また、比較のために、エステル系ポリオールおよびトリレンジイソシアネートから合成した平板状ポリウレタンについても、一軸伸張試験を行った。なお、ポリウレタンの合成は、次のように行った:精製ひまし油(伊藤製油株式会社)4質量部、トリレン−2,4−ジイソシアネート(東京化成工業株式会社)1質量部、およびクロロホルム40質量部を混合し、40℃にて4時間攪拌した。次いで、混合液をフッ素樹脂型に流し込み、140℃にて15分間加熱して、ポリウレタンを得た。
結果を図2に示す。図2に示すように、ESO/PCLは、ポリウレタンと比較して、破断応力が非常に高かった。このように、ESO/PCLは、引張強度が高いことがわかった。
(実施例9)
50質量部のESO、50質量部のポリ塩化ビニル(PVC)(分子量8万:アルドリッチ)、および200質量部のクロロホルムを室温でよく混合し、酸触媒(サンエイドSI−100L:三新化学工業株式会社)1質量部を加えてさらによく混合した。この混合液を大型のテフロン(登録商標)型中に流し込み、クロロホルムを蒸発させた後、生成したフィルムをテフロン(登録商標)型から剥離し、67mm×5mmの大きさに切断した(試料の厚み:1mm)。このフィルムを円筒状ガラス管に巻きつけ、150℃にて2時間加熱して、輪状サンプル(成形形状)を得た。
次いで、得られた輪状サンプルを90℃に加温し、輪を開いて平板状にし、そのまま室温まで急冷し、平板状サンプル(変形形状)を得た。この平板状サンプルの長手方向の両端間の距離を測定した。次いで、この平板状サンプルを90℃の湯に浸して、両端間の距離を測定した。この操作を、さらに4回繰り返した。結果を表4に示す。
平板状にしたサンプルは、湯に浸すことによって、直ちに輪状に形状回復した。
(実施例10)
ESO、ポリ乳酸(PLLA)(分子量10万、島津製作所)、およびクロロホルム(ESOとポリ乳酸との合計の質量部の2倍の質量部)を以下の表5に記載の種々の割合で室温にてよく混合し、酸触媒(サンエイドSI−100L)1質量部(1.0gのESOに対して10μL)を加えてさらによく混合した。この混合液を、ガラス板上にアプリケーターを用いて塗布して製膜した。クロロホルムをある程度まで蒸発させた後、生成したフィルムをガラス板から剥離し、85mm×5mmの大きさに切断した(試料の厚み:0.1mm)。このフィルムを円筒状ガラス管に巻きつけ、150℃にて2時間加熱して、輪状サンプル(成形形状)を各4個ずつ得た。
次いで、得られた各輪状サンプルを加温し、輪を開いて平板状にして100℃にて15分間保持した後、水中で急冷し、平板状サンプル(変形形状)を得た。この平板状サンプルの両端間の距離を測定した。次いで、この平板状サンプルを100℃のホットプレート上で3分間加熱し、この回復形状の両端間の距離を測定した。各4個のサンプルについての測定結果の平均値を表5に示す。
ポリ乳酸(PLLA)のみでは変形後に形状回復しなかったが、ESOとPLLAとを混合して得られたサンプルでは、いずれも変形性および回復率ともに、Mn=80000のPCLを用いた場合(実施例1)と同様に良好であった。なお、ESOのみの場合は、輪状に成形することができなかった。
(実施例11)
ネットワークポリマーとしてESOおよびビスフェノールAジグリシジルエーテル(BPAEP)(エピコート(登録商標)828、ジャパンエポキシレジン株式会社)、そしてリニアポリマーとしてPCL(Mn=80000)を以下の表6に記載の種々の割合で用いて、200質量部のクロロホルムとともに室温にてよく混合し、酸触媒(サンエイドSI−100L)1質量部(1.0gのESOに対して10μL)を加えてさらによく混合した。この混合液を、44mm×5mm×1mmのフッ素樹脂型に流し込み、150℃にて2時間加熱処理して、約1mm厚の平板状サンプル(成形形状)を得た。
得られた各サンプルについて、引張試験を行った。結果を図3に示す。ESO単独に比べて、ESO/BPAEPは破断応力および破断ひずみともに非常に向上していた。一方、ESO/BPAEP/PCLは、ESO/BPAEPに比べて破断応力は減少していたが、破断ひずみは向上し、ESO/PCLと類似の強度を有していた。
(実施例12)
25質量部のESO、25質量部のBPAEP、50質量部のPCL(Mn=80000)、および200質量部のクロロホルムを室温でよく混合し、酸触媒(サンエイドSI−100L)1質量部を加えてさらによく混合した。この混合液を大型のテフロン(登録商標)型中に流し込み、クロロホルムを蒸発させた後、生成したフィルムをテフロン(登録商標)型から剥離し、67mm×5mmの大きさに切断した(試料の厚み:1mm)。このフィルムを円筒状ガラス管に巻きつけ、150℃にて2時間加熱して、ラセン状サンプル(成形形状)を得た。
次いで、得られたラセン状サンプルの相転移温度は、PCLの融点60℃であるため、このサンプルを80℃に加温し、ラセンを開いて平板状にし、そのまま室温まで急冷すると、平板状(変形形状)になった。次いで、この平板状サンプルを80℃の湯に浸すと、元のラセン状に戻った。
(実施例13)
25質量部のESO、25質量部のBPAEP、および50質量部のPVC(分子量8万)を室温でよく混合し、酸触媒(サンエイドSI−100L)1質量部を加えてさらによく混合した。この混合液を、44mm×5mm×1mmのフッ素樹脂型に流し込み、150℃にて2時間加熱処理して、約1mm厚の平板状サンプル(成形形状)を得た。
次いで、得られた平板状サンプルの相転移温度は、PCLのガラス転移温度60℃であるため、このサンプルを80℃に加温し、約20mmの外周長を有するガラス棒にラセン状に約2回巻きつけ、そのまま室温まで急冷すると、ラセン状(変形形状)になった。次いで、このラセン状サンプルを100℃の湯に浸すと、元の平板状に戻った。
(実施例14)
50質量部のBPAEP、50質量部のPVC(分子量8万)、および200質量部のクロロホルムを室温でよく混合し、酸触媒(サンエイドSI−100L)1質量部を加えてさらによく混合した。この混合液を大型のテフロン(登録商標)型中に流し込み、クロロホルムを蒸発させた後、生成したフィルムをテフロン(登録商標)型から剥離し、67mm×5mmの大きさに切断した(試料の厚み:1mm)。このフィルムを円筒状ガラス管に巻きつけ、150℃にて2時間加熱して、ラセン状サンプル(成形形状)を得た。
次いで、得られたサンプルの相転移温度は、PVCのガラス転移温度80℃であるため、このサンプルを100℃に加温し、輪を開いて平板状にし、そのまま室温まで急冷すると、平板状(変形形状)になった。次いで、この平板状サンプルを100℃の湯に浸すと、元のラセン状に戻った。
(実施例15)
50質量部のBPAEPおよび50質量部のPCL(Mn=80000)を室温でよく混合し、酸触媒(サンエイドSI−100L)1質量部を加えてさらによく混合した。この混合液を、44mm×5mm×1mmのフッ素樹脂型に流し込み、150℃にて2時間加熱処理して、約1mm厚の平板状サンプル(成形形状)を得た。
次いで、得られた平板状サンプルの相転移温度は、PVCのガラス転移温度80℃であるため、この平板状サンプルを80℃に加温し、約20mmの外周長を有するガラス棒にラセン状に約2回巻きつけ、そのまま室温まで急冷し、ラセン状サンプルを得た。次いで、このラセン状サンプルを80℃の湯に浸すと、元の平板状に戻った。
(実施例16)
50質量部のESO、50質量部のPCL(Mn=80000)、および50質量部のポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)を室温でよく混合し、酸触媒(サンエイドSI−100L)1質量部を加えてさらによく混合した。この混合液を、44mm×5mm×1mmのフッ素樹脂型に流し込み、150℃にて2時間加熱処理して、約1mm厚の平板状サンプル(成形形状)を得た。
このサンプルについて、示差走査熱量測定(DSC)(EXSTAR6000:Seiko Instruments社)を行った。まず、サンプルを、室温から10℃/分で150℃まで加熱し、十分に結晶を融解させるために10分間保持した。次に、10℃/分で−30℃まで冷却して十分に結晶化させた。このサンプルを、再び150℃まで10℃/分で加熱した。
セカンドスキャンの結果を図4に示す。55℃付近および112℃付近にそれぞれPCLおよびPBSの融解による吸熱ピークが表れた。このことからPCLおよびPBSともに、複合材料中でもそれぞれの結晶構造を保持していることがわかる。これらの相転移挙動を利用してESO/PCL/PBSは、2段階での形状記憶機能を発現できると考えられる。
そこで、この平板状のESO/PCL/PBSについて形状記憶過程(図5)および形状回復過程(図6)を検討した。
相転移温度は、PCLの融点60℃およびPBSの融点120℃である。そのため、まず、図5に示すように、平板状サンプル(成形形状)をPBSの融点以上である140℃に加熱し、左巻きラセン状(変形形状1)に変形させた。次に、PBSの融点以下かつPCLの融点以上である80℃まで冷却してPBSのみを結晶化させると、そのラセン形状(変形形状1)を保持した。さらに、その温度で、右巻きラセン状(変形形状2)に変形させ、そのまま室温まで冷却してPCLを結晶化させると、その形状(変形形状2)を保持した。
次に、図6に示すように、右巻きラセン状(変形形状2)のサンプルを80℃に加熱すると、左巻きラセン状(変形形状1)へと回復した。続いて120℃に加熱すると平板状(成形形状)へと回復した。
(実施例17)
50質量部のESO、50質量部のPCL(Mn=80000)、50質量部のPVC(分子量8万)、および200質量部のクロロホルムを室温でよく混合し、酸触媒(サンエイドSI−100L)1質量部を加えてさらによく混合した。この混合液を大型のテフロン(登録商標)型中に流し込み、クロロホルムを蒸発させた後、生成したフィルムをテフロン(登録商標)型から剥離し、67mm×5mmの大きさに切断した(試料の厚み:1mm)。このフィルムを円筒状ガラス管に巻きつけ、150℃にて2時間加熱して、ラセン状サンプル(成形形状)を得た。
相転移温度は、PCLの融点60℃およびPVCのガラス転移温度80℃である。そのため、まず、図7に示すように、PVCのガラス転移温度80℃以上である100℃に加熱して、44mmの外周長を有するガラス棒に巻きつけ、輪状サンプル(変形形状1)に変形させた。次に、PCLの融点以上かつPVCのガラス転移温度以下である65℃まで冷却させると、その形状を保持した。さらにその温度で輪を開いて平板状(変形形状2)に変形させ、そのまま室温まで冷却すると、その形状(変形形状2)を保持した。
次に、図8に示すように、平板状サンプル(変形形状2)を65℃に加熱すると、ゆるいラセン状の形状に回復し、さらに100℃に加熱すると、ラセン状(成形形状)に回復した。
(実施例18)
50質量部のESO、50質量部のPCL(Mn=80000)、50質量部または100質量部のPVC(分子量8万)、および200質量部のクロロホルムを室温でよく混合し、酸触媒(サンエイドSI−100L)1質量部を加えてさらによく混合した。各混合液を大型のテフロン(登録商標)型中に流し込み、クロロホルムを蒸発させた後、生成したフィルムをテフロン(登録商標)型から剥離し、67mm×5mmの大きさに切断した(試料の厚み:1mm)。これらのフィルムをそれぞれ円筒状ガラス管に巻きつけ、150℃にて2時間加熱して、それぞれの輪状サンプル(成形形状)を得た。
次に、図9に示すように、100℃で輪を開くように力を加えて輪状サンプルを変形させた。24時間放冷した後、加えていた力を除去すると、いずれのサンプルもほぼ平板状を保った(変形形状)。次いで、65℃に加熱すると、曲がった形状に回復し、さらに100℃に加熱すると、輪状の元の形状に戻った。
本発明によれば、アモルファス性のネットワークポリマーをマトリックスとし、このマトリックス中に熱可塑性ポリマー鎖が分子レベルで固定化されている形状記憶樹脂が提供される。この形状記憶樹脂では、ネットワーク中の相転移ポリマーのマクロな形態変化を、アウトプットとして形状記憶機能を発現させることができる。したがって、材料特性を、用途にあわせて自在に調節することが可能であり、幅広い樹脂の組合せに容易に応用可能である。また、本発明の形状記憶樹脂は、熱可塑性ポリマーをネットワークポリマー前駆体(例えば、エポキシ化合物)に溶解し、熱可塑性ポリマーの相転移温度以上で硬化させるという非常に簡便な方法によって製造され得る。したがって、製造コストの削減につながる。さらに、例えば、再生可能な資源として注目されている天然油脂のエポキシ化物は、本発明においてはネットワークポリマー前駆体として有効利用できる。

Claims (10)

  1. ネットワークポリマーと熱可塑性ポリマーとを含む、形状記憶樹脂であって、該熱可塑性ポリマーが、該ネットワークポリマー前駆体と相溶性であり、そして該ネットワークポリマー中に分散されており、
    ここで、該ネットワークポリマー前駆体がエポキシ化合物である、形状記憶樹脂。
  2. 前記エポキシ化合物が、エポキシ化油脂およびエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項に記載の形状記憶樹脂。
  3. 前記エポキシ化油脂が、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、およびエポキシ化パーム油からなる群より選択される少なくとも1種であり、そして前記エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である、請求項に記載の形状記憶樹脂。
  4. 前記熱可塑性ポリマーが、ポリカプロラクトン、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、およびポリ(ブチレンサクシネート)からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1からのいずれかに記載の形状記憶樹脂。
  5. 前記熱可塑性ポリマーのガラス転移温度または融点が、前記ネットワークポリマーのガラス転移温度と、少なくとも20℃の温度差を有する、請求項1からのいずれかに記載の形状記憶樹脂。
  6. 形状記憶樹脂の製造方法であって、
    ネットワークポリマー前駆体に熱可塑性ポリマーを溶解して混合液を得る工程;および
    該混合液に硬化剤を加えて該ネットワークポリマー前駆体を架橋する工程;
    を含み、
    該熱可塑性ポリマーが、該ネットワークポリマー前駆体と相溶性であり、そして
    該ネットワークポリマー前駆体がエポキシ化合物である、方法。
  7. 前記エポキシ化合物が、エポキシ化油脂およびエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項に記載の方法。
  8. 前記エポキシ化油脂が、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、およびエポキシ化パーム油からなる群より選択される少なくとも1種であり、そして前記エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である、請求項に記載の方法。
  9. 前記熱可塑性ポリマーが、ポリカプロラクトン、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、およびポリ(ブチレンサクシネート)からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項からのいずれかに記載の方法。
  10. 前記熱可塑性ポリマーのガラス転移温度または融点が、前記ネットワークポリマーのガラス転移温度と、少なくとも20℃の温度差を有する、請求項からのいずれかに記載の方法。
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