JP4974420B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電防止能に優れ、剛性、耐衝撃性、成形品表面外観などにも優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ABS樹脂などのスチレン系樹脂は、成形加工性、物理的性質および機械的性質に優れていることから、電子機器分野、家電分野、自動車分野、雑貨などの幅広い分野に使用されている。しかしながら、このスチレン系樹脂は、電気絶縁体であり、絶縁材料としては有効であるが、帯電した静電気を漏洩する機能、即ち帯電防止能に劣り、成形品表面に埃りがつきやすい不具合がある。また、半導体などの非常に微弱な電流で作動するものは、装置に帯電した静電気を早期に除去しないと、機器の誤作動を招く可能性があり、装置の帯電防止能が求められる。これらに求められる帯電防止能は、例えば表面固有抵抗で100〜107Ωである。
帯電防止能を向上させる方法として、帯電防止剤を練り込む方法が知られているが、この方法では表面固有抵抗値が時間の経過と共に高くなるので、帯電防止効果が持続しない。また半導体などを含む電子機器の誤作動を防止する静電気除去までの性能は得られないなどの欠点を有している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、帯電防止能に優れ、しかも耐衝撃性、剛性、成形品表面外観などにも優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記構成の熱可塑性樹脂組成物が提供されて、本発明の上記目的が達成される。
1.(A)ゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物を必須成分として含有する単量体成分(b)を重合して得られるグラフト共重合体、またはこのグラフト共重合体と単量体成分(b)の(共)重合体との混合物からなるゴム強化芳香族ビニル樹脂50〜97重量%、および
(B)ハードセグメントとしてのポリアミド鎖と、ソフトセグメントとしてのポリ(アルキレンオキシド)鎖とからなるポリアミドエラストマー3〜50重量%(ここで、(A)と(B)の合計は100重量%である)
からなる組成物100重量部に対して、
(C)導電性物質を1〜30重量部の割合で含有する
ことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
2.導電性物質が、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、カーボンブラック、金属繊維、金属酸化物、および導電物質で被覆されたフィラーから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
3.単量体成分(b)が、芳香族ビニル化合物または芳香族ビニル化合物と、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、酸無水物単量体、マレイミド系化合物および水酸基含有ビニル化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種の単量体との混合物であることを特徴とする上記1または2に記載の熱可塑性組成物。
【0005】
【発明の実施形態】
本発明の(A)ゴム強化芳香族ビニル樹脂(以下「ゴム強化樹脂」という)に用いられるゴム質重合体(a)としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン含量5〜60重量%が好ましい)、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、アクリルゴム、ブタジエン−アクリルゴム、ブタジエン−アクリル共重合体、ポリイソプレン、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、エチレン系アイオノマーなどが挙げられる。このうち、スチレン−ブタジエンブロック共重合体およびスチレン−イソプレンブロック共重合体には、AB型、ABA型、テーパー型、あるいはラジアルテレブロック型の構造を有するものが含まれる。また、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体などは、水素化されていてもよい。好ましく用いられるゴム質重合体(a)はポリブタジエン、スチレン−ブタジエン(ブロック)共重合体、エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体、アクリルゴム、シリコーンゴムなどである。
【0006】
単量体成分(b)は、ゴム質重合体(a)の存在下に重合してグラフト共重合体を生成し、さらに単量体成分(b)の(共)重合体を生成する。この単量体成分(b)は、芳香族ビニル化合物を必須成分として含有する。単量体成分(b)は芳香族ビニル化合物単独であってもよく、あるいは芳香族ビニル化合物と、該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他の単量体との混合物であってもよい。芳香族ビニル化合物と共重合可能な他の単量体としては、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、酸無水物単量体、マレイミド系化合物、および水酸基含有不飽和化合物などの極性基含有不飽和化合物を好ましく挙げることができる。これら単量体は1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0007】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン、o−メチルスチレン、ジメチルスチレンなどが挙げられ、これらは1種単独で使用することも2種以上を併用することもできる。
これらの芳香族ビニル化合物のうち、好ましく用いられる芳香族ビニル化合物としてはスチレンであり、2種以上の芳香族ビニル化合物を併用する場合も、スチレンを40重量%以上の割合で用いることが好ましい。
【0008】
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、アクリロニトリルが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどの炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、なかでもメタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルが好ましい。単量体成分(b)中の(メタ)アクリル酸エステル量を増やせば、成形品表面外観が良好となり、さらに用いる導電性物質の繊維径または粒子径を小さくすることで、透明感を有する組成物が得られる。透明感を有する組成物を得るために必要な(メタ)アクリル酸エステル量は(A)ゴム強化樹脂中30〜80重量%さらに好ましくは40〜75重量%、特に好ましくは45〜70重量%である。
【0009】
酸無水物単量体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などがあげられ、なかでも無水マレイン酸が好ましい。
【0010】
マレイミド化合物としては、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドが挙げられ、N−フェニルマレイミドが好ましい。特に、単量体成分(b)中にマレイミド系化合物を20〜80重量%共重合すると本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐熱性を向上することができる。
【0011】
水酸基含有不飽和化合物としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペンなどが挙げられる。なかでも2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。また、これらを0.5〜10重量%の割合で共重合に用いることで、ポリアミドエラストマーとの相溶性が良好となり、組成物の耐衝撃性、成形品表面外観がより向上する。
【0012】
好ましいゴム質重合体(a)および単量体成分(b)を組み合わせて得られる代表的なゴム強化樹脂(A)としては、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂、シリコーンゴムにAS樹脂をグラフトした重合体、透明ABS樹脂(PB−MMA−ST−AN)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを共重合したAS樹脂などが挙げられる。中でも、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、透明ABSが好ましい。
【0013】
(A)成分は、1種のみ用いても、(A)成分を2種以上併用してもよい。好ましい組み合わせを下記に記すが、本発明は下記の組み合わせに限定されない。
▲1▼ABS樹脂
▲2▼ABS樹脂/AS樹脂
▲3▼AES樹脂/AS樹脂
▲4▼ABS樹脂/AS樹脂/2−ヒドロキシエチルメタクレートを共重合したAS樹脂
▲5▼ポリオルガノシロキサン強化樹脂/AS樹脂
(シリコーンゴムにAS樹脂をグラフト重合したもの)
▲6▼メチルメタクレートを共重合した透明ABS樹脂
【0014】
いずれの樹脂においても、水酸基、カルボン酸基などの極性基をもつ単量体成分を共重合したAS樹脂あるいはABS樹脂を配合することで、ポリアミドエラストマーとの相容性が向上し、外観や耐衝撃性が向上するので好ましい。特に水酸基をもつ単量体成分を共重合したAS、ABS樹脂は相溶化能力が高く、性能が向上する。なお、本発明の組成物の製造時または成形時の組成物のゲル化のしにくさからは、極性基を有さないグラフト重合体と極性基を有する単量体を含有する単量体成分(b)の(共)重合体の併用が好ましい。この場合の単量体成分(b)中の極性基を有する単量体の含有割合は、好ましくは0.1〜30重量%、特に好ましくは1〜20重量%である。
【0015】
ゴム強化樹脂(A)は、ゴム質重合体(a)の存在下に前記単量体成分(b)を重合したグラフト共重合体、または該グラフト共重合体と単量体成分(b)の(共)重合体との混合物である。ここで、該混合物における単量体成分(b)の(共)重合体はゴム質重合体(a)の非存在下に重合して得られたものである。耐衝撃性の面からゴム強化樹脂(A)中のゴム質重合体(a)の量は5〜60重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜50重量%である。ゴム質重合体(a)が多すぎると成形外観、成形品加工性などが低下する。また、ゴム質重合体(a)が少なすぎる場合は、耐衝撃性が低下する。
【0016】
ゴム強化樹脂(A)を構成するグラフト共重合体のグラフト率は好ましくは10〜150重量%、さらに好ましくは30〜130重量%、特に好ましくは40〜120重量%である。グラフト共重合体のグラフト率が少なすぎると、得られる樹脂組成物の成形品外観不良、衝撃強度などの低下が生じ好ましくない。また、グラフト率が多すぎると成形加工性が劣る。
上記グラフト率は、ゴム強化樹脂のアセトン不溶分中のゴム成分量を、例えばゴム成分がポリブタジエンの場合、赤外分光法による967cm−1のトランス二重結合C−H面外変角振動の吸光度比を用いて事前に作成した検量線から求め、その重量をxとし、アセトン不溶分重量をyとすると、次式で求められる値である。
グラフト率(%)=[(y−x)/x]×100
ここで、アセトン不溶分は、ゴム強化樹脂1gを50m1のアセトン中で室温下、24時間振とう機で振とうし、遊離の(共)重合体を溶解させ、遠心分離し、得られる不溶分を真空乾燥により120℃で1時間乾燥して得られる。
【0017】
また、ゴム強化樹脂(A)のアセトン可溶分、即ちグラフト共重合体中の非グラフト(共)重合体、単量体成分(b)の(共)重合体またはそれらの混合物の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜1.5dl/g、さらに好ましくは0.3〜1dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲であると、耐衝撃性、成形加工性(流動性)に優れた本発明の樹脂組成物が得られる。
【0018】
グラフト共重合体および単量体成分(b)の(共)重合体は、乳化重合、溶液重合、懸濁重合などにより製造できる。乳化重合により製造した場合、通常、凝固剤により凝固し得られた粉末を水洗後、乾燥することによって精製される。このときの凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウムなどの無機塩を使用することができる。
【0019】
なお、グラフト重合時のラジカル開始剤としては一般的なものが使用できる。具体例としては、クメンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、過硫酸カリウム、アゾイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシラウレイト、t−ブチルパーオキシモノカーボネートなどが挙げられる。
【0020】
本発明の樹脂組成物において、(A)成分の使用量は、ポリアミドエラストマー(B)との合計量のうち、50〜97重量%、好ましくは60〜96重量%、さらに好ましくは70〜96重量%、特に好ましくは70〜95重量%を占める量用いられる。多すぎると帯電防止能が劣り、少なすぎると成形外観や剛性が劣る。
【0021】
ポリアミドエラストマー(B)は、ハードセグメントとしてのポリアミド鎖と、ソフトセグメントとしてのポリ(アルキレンオキシド)鎖からなる。
ハードセグメントを構成するポリアミド鎖は、1種あるいは2種以上のポリアミド鎖からなっていてもよい。また、ソフトセグメントを構成するポリ(アルキレンオキシド)鎖は、1種あるいは2種以上のポリ(アルキレンオキシド)鎖からなっていてもよい。
ポリアミドエラストマー(B)のハードセグメントとしてのポリアミド鎖が誘導されるポリアミドとしては;
エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,3,4もしくは2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3もしくは1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミンなどの脂肪族、脂環族または芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの脂肪族、脂環族または芳香族ジカルボン酸とから導かれるポリアミド、
カプロラクタム、ラウリルラクタムなどのラクタム類の開環重合によって得られるポリアミド、
ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナン酸、アミノウンデカン酸、1,2−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸から導かれるポリアミド、
ならびにこれらの共重合ポリアミドさらにはこれらの混合ポリアミドが挙げられる。
上記ポリアミドの数平均分子量は、好ましくは500〜10,000、特に500〜5,000の範囲のものが本発明の目的を達成するうえで好ましく使用される。
【0022】
(B)成分のソフトセグメントであるポリ(アルキレンオキシド)鎖は、下記式で表される。
−(OR)n−
ここで、Rはアルキレン基、好ましくは炭素数2〜10のアルキレン基であり、特に好ましくはエチレンである。nは繰り返し単位数である。
ポリ(アルキレンオキシド)鎖は、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールから誘導することができる。用いられるポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2もしくは1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックまたはランダム共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとのプロックまたはランダム共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリエチレングリコールおよびエチレンオキシドを主たる繰り返し単位とする共重合型グリコールが好ましく、これらの両末端をアミノ化、カルボキシル化、エポキシ化して用いてもよい。
【0023】
また、上記ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをポリアミドと共に重合して(B)ポリアミドエラストマーを製造するに際し、2価フェノール化合物が共重合したポリ(アルキレンオキシド)グリコールを用いることができる。使用される2価フェノールとしては、下記の2価フェノールを例示することができる。特に好ましいものはビスフェノールAである。これにより、本発明の熱可塑性樹脂組成物がさらに帯電防止能、熱安定性に優れる結果となる。ここで言う熱安定性とは、押出成形加工や射出成形加工などの成形加工時の熱履歴によって帯電防止能が変化しにくく安定していることを言う。
【0024】
【化1】
【0025】
【化2】
【0026】
【化3】
【0027】
【化4】
【0028】
【化5】
【0029】
【化6】
【0030】
ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの数平均分子量は、好ましくは200〜20,000、さらに好ましくは300〜10,000、特に好ましくは300〜4,000である。
【0031】
本発明におけるポリアミドエラストマー(B)の好ましい重合法は加熱溶融重合であり、その具体例を下記に示す。
▲1▼ハードセグメントが誘導されるポリアミドを重合したのちジカルボン酸化合物を添加し、ポリアミド成分の両末端をカルボキシル化し、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールを添加重合し、ポリアミドエラストマーを得る方法。
▲2▼ポリアミド重合時に分子両末端が実質上カルボキシル化されるようにジカルボン酸化合物を過剰に添加重合し、さらにポリ(アルキレンオキシド)グリコールを添加重合し、ポリアミドエラストマーを得る方法。
▲3▼ポリアミド生成成分と過剰のジカルボン酸化合物、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールを規定量一括添加重合しポリアミドエラストマーを得る方法。
【0032】
上記ポリアミド成分の分子両末端をカルボキシル化するのに用いられるジカルボン酸としては、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などがあり、本発明の熱可塑性樹脂組成物の帯電防止能を向上させる上で好ましいものは、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸化合物である。
【0033】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成するポリアミドエラストマー(B)は、上記のように優れた帯電防止能を有する上で、芳香環を有することが好ましい。これにより、ゴム強化樹脂(A)との相容性が向上し、耐衝撃性、成形品表面外観、静電防止能がさらに向上する。
(B)成分に芳香環を導入する方法として、ハードセグメントが誘導されるポリアミドに芳香環を有する化合物を共重合する方法、ハードセグメントが誘導されるポリアミドの分子末端に芳香環を有する化合物を共重合する方法、ソフトセグメントが誘導されるポリ(アルキレンオキシド)グリコールに芳香環を有するものを使用する方法およびこれらを併用する方法が挙げられる。
【0034】
ポリアミドエラストマー(B)の特に好ましい具体例として、下記のものを挙げることができる。
▲1▼ハードセグメントはε−カプロラクタムが開環重合して生成したポリアミド鎖であって、かつその末端がテレフタル酸で変性され該テレフタル酸に由来するカルボキシル基を有するポリアミド鎖であり、ソフトセグメントはポリエチレンオキシド鎖であるポリアミドエラストマー。
▲2▼ハードセグメントはε−カプロラクタムが開環重合して生成したポリアミド鎖であって、かつその末端がアジピン酸で変性され該アジピン酸に由来するカルボキシル基を有するポリアミド鎖であり、ソフトセグメントはビスフェノールAが共重合したポリエチレンオキシド鎖であるポリアミドエラストマー。
▲3▼ハードセグメントがε−カプロラクタムが開環重合して生成したポリアミド鎖であって、かつその末端がテレフタル酸で変性され該テレフタル酸に由来するカルボキシル基を有するポリアミド鎖であり、ソフトセグメントはビスフェノールAが共重合したポリエチレンオキシド鎖であるポリアミドエラストマー。
上記▲1▼を用いた場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物は帯電防止能の他に耐衝撃性にも優れる。上記▲2▼を用いた場合、帯電防止能の他に耐熱性に優れる。上記▲3▼を用いた場合、帯電防止能の他に剛性に優れる。
【0035】
(B)ポリアミドエラストマーのハードセグメントとソフトセグメントの重量割合は(ハードセグメント/ソフトセグメント)、90/10〜10/90の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは80/20〜20/80、特に好ましくは70/30〜30/70である。
(B)成分の分子量は特に限定されるものではないが、還元粘度(ηsp/c)(ギ酸溶液中、0.5g/100ml、25℃で測定)は、1〜3dl/gの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは1.2〜2.5dl/gである。
以上の(B)ポリアミドエラストマーは、1種単独であるいは2種以上を併用して用いられる。
【0036】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の帯電防止能をさらに向上させるために、ナトリウム化合物、カリウム化合物、リチウム化合物を(B)成分の原料成分と共に重合系へ添加してもよく、重合中に添加してもさらに重合後に添加してもよい。
ナトリウム化合物、カリウム化合物、リチウム化合物としては有機酸、過塩素酸、チオシアン酸、硫酸、炭酸、ハロゲン、リン酸、ホウ酸などとの化合物が挙げられ、好ましい具体例としてNaCl、KCl、LiClが挙げられ、特に好ましくはLiClである。これらの使用量は、(B)ポリアミドエラストマー中カリウム、ナトリウム、またはリチウム原子換算で10〜50,000ppmが好ましく、さらに好ましくは20〜30,000ppm、特に好ましくは50〜10,000ppmである。
これらの化合物は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
さらに(B)成分には、その変性物、例えば(B)成分にポリオレフィン、スチレン系樹脂、またはポリエステルなどの骨格を有するものも含まれる。
この場合の変成物の変性量は(B)成分の50重量%以下が好ましい。
【0038】
本発明の熱可塑性重合体組成物における(B)成分の使用量は、(A)成分との合計量のうち、3〜50重量%、好ましくは4〜40重量%、さらに好ましくは4〜30重量%、特に好ましくは5〜30重量%を占める量用いられる。少なすぎると帯電防止能が劣り、多すぎると成形品表面外観や剛性に劣りる。
【0039】
本発明に用いる導電性物質(C)は、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、カーボンブラック、金属繊維、金属酸化物、導電物質で被覆されたフィラーから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。物性バランスや成形品表面外観を考慮し、これらのどの導電性物質を用いてもよく、また、組み合わせて使用してもよい。
【0040】
PAN系炭素繊維は、ポリアクリロニトリルを原料として焼成させて得られるものである。PAN系炭素繊維は、組成物の帯電防止能とともに剛性をも大きく向上させる。好ましい炭素繊維径は5〜15μm、より好ましくは6〜10μmである。繊維径が細いと、剛性向上向上効果が大きく、成形外観の観点で好ましい。ただし、繊維径が5μm以下になるとコンパウンド時に炭素繊維が折れやすくなり、帯電防止能や剛性の向上効果が小さくなる。
また、PAN系炭素繊維の比抵抗は、好ましくは10−1Ωcm以下、さらに好ましくは10−2Ωcm以下である。
【0041】
ピッチ系炭素繊維は、ピッチを原料として紡糸し熱処理されて得られるものである。ピッチ系炭素繊維は、組成物の帯電防止能とともに剛性をも大きく向上させる。好ましい炭素繊維径は5〜15μm、より好ましくは6〜10μmである。繊維径が細いと、剛性付与、成形外観の観点で好ましい。ただし、繊維径が5μm以下になるとコンパウンド時に炭素繊維が折れやすくなり、帯電防止能や剛性の向上効果が小さくなる。また、ピッチ系炭素繊維の比抵抗は、好ましくは1Ωcm以下、さらに好ましくは10−1Ωcm以下、特に好ましくは10−2Ωcm以下である。
【0042】
本発明に用いる炭素繊維は、通常収束剤により収束されて用いられる。この収束剤の使用量は、2〜9重量%が好ましい。収束剤量が2重量%以下であると解繊しやすくコンパウンド時のハンドリングが困難である。また、収束剤量が9重量%を超えると、耐熱性の低下やシルバーなどの成形不良を起こす。
【0043】
本発明において、熱可塑性樹脂中に残存する炭素繊維の平均繊維長は好ましくは0.05〜0.70mmであり、さらに好ましくは0.10〜0.70mm、特に好ましくは0.15〜0.70mmである。残存平均繊維長が短すぎる時は帯電防止能が小さく、長すぎると流動性、成形品表面外観が劣る。なお、ここで示す残存平均繊維長は、熱可塑性樹脂組成物を加工するためにペレット状にして測定する。
残存平均繊維長の測定方法は、まず、ペレットをジクロロメタン(あるいはメチルエチルケトン、強酸)に溶解して、炭素繊維のみを分離する。その後、炭素繊維のみを電子顕微鏡にて写真撮影し、該写真を画像処理により解析する。炭素繊維の抽出本数200〜500本について繊維長を求め、残存平均繊維長を算出する。
上記炭素繊維の残存平均繊維長を長くするには、二軸押出機での加工温度を高くすることが最も効果的である。好ましい加工温度は210〜260℃、より好ましくは220〜250℃である。また、二軸押出機のスクリューディメンジョンは練りパーツが少ないものが好ましい。さらに、炭素繊維をフィードする位置は二軸押出機の先端(ダイス側)に近い方が好ましい。
【0044】
本発明に用いるカーボンブラックは、ストラクチャ(結晶構造)、すなわち、連鎖状ないしは枝分かれしたミクロ構造が発達しているものが好ましい。このミクロ構造が、樹脂内部で導電性に有効な導電パスを形成するのに適しているからである。
カーボンブラックの平均一次粒子径は、好ましくは800Å以下であり、さらに好ましくは500Å以下である。平均一次粒子径が大きすぎると、先に述べたストラクチャー構造が不安定となり、充分な帯電防止能が得られにくく、また小さすぎると流動性が低下する。
また、カーボンブラックは表面積が大きいほど、帯電防止能が向上する。カーボンブラックの表面積は、好ましくは50m2/g以上、さらに好ましくは200m2/g以上、特に好ましくは500m2/g以上である。
カーボンブラックは、多孔性が増大するほど帯電防止能を付与しやすい。カーボンブラックの多孔性は、DBP(ジブチルフタレート)吸油量でみることができる。カーボンブラックのDBP吸油量は150ml/g以上が好ましい。さらに好ましくは、200ml/g、特に好ましくは300ml/g以上である。
【0045】
カーボンブラックにより帯電防止能を付与するためには、ストラクチャーを破壊しないようにカーボンブラックを樹脂中に分散させる必要がある。ストラクチャーが強固に発達したものは、二軸押出機で強混練りするか、カーボンブラックのマスターバッチ品を作ってそれを再度ベース樹脂と混練りするなどした方が、カーボンブラックがよく分散し、帯電防止能が向上するので好ましい。ストラクチャー構造が破壊しやすいカーボンブラックを配合する場合は、二軸押出機で弱い練りでコンパウンドする。
【0046】
本発明に用いる金属繊維としては、ステンレス、銅、黄銅、アルミニウム、ニッケルなどの繊維が用いられる。この中では特にステンレスの繊維が強度と導電性のバランスに優れており、帯電防止能の付与効果が最も高い。金属繊維径は、5〜15μmが好ましく、さらに好ましくは6〜12μmである。金属繊維径が長すぎると成形品表面外観が劣る。金属繊維径が短すぎると樹脂への分散性が悪化し、帯電防止能が低下する。
金属繊維をコンパウンドする際に、強い練りをかけると繊維が大きな固まりになり分散しないことがある。そのような場合には、樹脂で金属繊維をコーティングしマスターバッチにしたもの、あるいはウレタンなどで収束させた金属繊維と樹脂を、ベース樹脂とブレンドし、直接射出成形などにより成形することが好ましい。
【0047】
本発明で用いる金属酸化物には、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム、酸化チタンなどがある。これらの金属酸化物は通常導電性を示さず、帯電防止効果はない。しかし、酸素欠陥状態で製造するなどして余剰電子が生成した金属酸化物に、その金属酸化物の金属と価数が異なるドーパント金属をドープすることで導電性を持った金属酸化物をつくることができる。金属酸化物/ドーパント金属の組み合わせとしては、二酸化錫/アンチモン、三酸化インジウム/錫、酸化亜鉛/アルミニウムなどがある。これらのうち、特に二酸化錫/アンチモンは、得られる粒子が0.2μmであり、透明樹脂に配合すれば、透明性および帯電防止能に優れた樹脂が得られる。
【0048】
本発明で用いる導電物質で被覆されたフィラーは、メッキなどの湿式コーティングや、物理高速剪断ミルを用いた乾式コーティング、焼成などによりフィラー表面に導電性物質を被覆したフィラーである。
たとえば、ニッケルや銀を被覆した金属被覆炭素繊維、ニッケルや銀を被覆したガラス繊維、(二酸化錫/アンチモン)薄膜被覆酸化チタン、(二酸化錫/アンチモン)薄膜被覆チタン酸カリウムウィスカー、カーボン薄膜被覆チタン酸カリウムウィスカー、銀薄膜被覆チタン酸カリウムウィスカー、銀薄膜被覆チタン酸カリウムウィスカーなどの導電物質被覆ウィスカー、銅、銀、ニッケルなどをコーティングしたPMMA(ポリメチルメタクリレート)粒子などの金属被覆ポリマー粒子などがある。
【0049】
これらの導電性物質は、分散性向上を目的に表面処理剤を用いて表面処理をしてもよい。表面処理剤の種類としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などがあげられる。これらの表面処理剤には、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、ビニル基などが含まれていることが好ましい。表面処理剤の使用量は、通常、0.1〜3重量%である。
【0050】
本発明の(C)成分の使用量は、ゴム強化樹脂(A)とポリアミドエラストマー(B)との合計量100重量部に対して、1〜30重量部、好ましくは3〜27重量部、さらに好ましくは4〜25重量部である。(C)成分が多すぎると、耐衝撃性が大きく低下する。また、少なすぎると帯電防止能が劣る。
【0051】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、剛性を付与する目的で公知の充填剤を配合することができる。充填剤としては、ワラストナイト、タルク、マイカ、酸化亜鉛ウイスカー、チタン酸カルシウムウイスカー、ガラス繊維、ガラスビーズなどが挙げられる。これらの無機充填剤の中で、タルク、マイカおよびガラス繊維が好ましく、特に好ましくはタルクである。このタルクの好ましい平均粒径は0.5〜20μmである。
【0052】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、耐侯剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、シリコーンオイルなどの添加剤を配合することができる。耐侯剤としては、リン系、硫黄系の有機化合物、水酸基またはビニル基を含有する有機化合物(例えば、住友化学(株)社製:スミライザーGS)が好ましい。帯電防止剤としてはアルキル基を有するスルホン酸塩が挙げられる。
これらの添加剤の好ましい配合量は、本発明の熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0053】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物に難燃性を付与するために、難燃剤を配合することもできる。難燃剤としては、ハロゲン系化合物、有機リン系化合物、窒素系化合物、金属水酸化化合物、アンチモン化合物などを、単独あるいは併用して使用することができる。
【0054】
このうち、ハロゲン系化合物としては、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのオリゴマー(末端がエポキシ基、トリブロモフェノールなどで封止してあってもよい)、臭素化ポリスチレン、後臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネートオリゴマー、トリブロモフェノキシエタン、トリアジン骨格にトリブロモフェノールを付加したもの、塩素化ポリスチレン、脂肪族塩素化合物などが挙げられる。なかでも、テトラブロモビスフェノールAのオリゴマーが好ましい(好ましい分子量は、1,000〜6,000程度である)。
また、ハロゲン系化合物中の臭素などのハロゲン原子濃度は、好ましくは30〜65重量%、さらに好ましくは45〜60重量%である。
【0055】
また、有機リン系化合物としては、トリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルチオホスフェート、ハイドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールとジキシレニルホスフェートの縮合物、ビスフェノールAとジフェニルホスフェートの縮合物、トリフェニルホスフェートのオリゴマーなどが挙げられる。なかでも、トリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、レゾルシノールとジキシレニルホスフェートの縮合物、ビスフェノールAとジフェニルホスフェートの縮合物が好ましい。有機リン系化合物の好ましいリン濃度は、4〜30重量%、さらに好ましくは、6〜25重量%である。
窒素系化合物としては、トリアジン、メラミンなどが挙げられる。
金属水酸化化合物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが使用できる。
アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどが使用できる。
【0056】
以上の難燃剤の配合量は、本発明の熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは2〜30重量部、特に好ましくは5〜25重量部である。
【0057】
更に、本発明の熱可塑性樹脂組成物には要求される用途に応じて、他の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を配合することができる。例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、スチレン−酢酸ビニリデン共重合体、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリエーテルエステルアミド、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、レゾール樹脂などである。これらの配合量は本熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは1〜150重量部、より好ましくは5〜100重量部である。
【0058】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは各種押出機(好ましくは2軸押出機)を用い、(C)成分を途中フィードして混練りする方法により製造することができる。また、バンバリーロール、ロール練りなどの加工法を用いてもよい。ただし、先に述べたように、炭素繊維や金属繊維などの場合は、強混練りすることで帯電防止能が低下する場合があるので、ロール練りなどの方法は好ましくない。このような場合は、先に述べたとおり弱練りでコンパウンドするか、マスターバッチ化して直接成形するなどの方法により、帯電防止能に優れた成形品を得ることができる。
【0059】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、シート押し出し、真空成形、異形押し出し、発泡成形などによって各種成形品に成形することができる。上記成形法によって得られる各種成形品はその優れた性質を利用して、OA製品、家電製品の各種部品、ハウジング、さらには電子機器分野、自動車分野の各種部品、雑貨などに有用である。
【0060】
【実施例】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明する。なお実施例中、部および%は、特にことわらない限り重量基準である。
また、実施例におげる各種測定は、下記に従って測定した。
・帯電防止能
直径100mm、厚み2mmの円板を230℃で射出成形し、23℃×相対湿度50%で7日間状態調節したのち、横河ヒューレット・パッカード(株)製、4329A型超絶縁抵抗計を用いて表面固有抵抗(Ω)を測定した。
・耐衝撃性
射出成形で成形した2.4mm厚の平板を、1/2”φ、先端半径1/2”の打撃棒で2.4m/secの速度で打ち抜いた際の破壊エネルギーを測定し、耐衝撃性とした。
・曲げモジュラス
ASTM D790に準拠した方法で、曲げモジュラスを測定した。
試験片には、射出成形により得られた25×100×3.1mmの成形品を用いた。
・成形品表面外観
(イ)目視評価
射出成形機にて平板を成形し、成形品の表面外観を下記の評価基準で目視評価した。
○:平滑であり良好
×:成形品表面にムラ、凹凸などがあり不良
(ロ)全光透過率(%)
射出成形により40mm×80mm×3mmの成形品を成形し、ビックガードナー社製ヘイズガードプラスを用いて測定した。
・残存平均繊維長さ
前記した方法により測定した。
【0061】
〔参考例:各成分の調製〕
〔I〕スチレン系樹脂の調製
(i)ゴム質重合体1〜5
ゴム強化樹脂(A)の調製に使用されるゴム質重合体として下記表1に示されるものを用いた。
【0062】
【表1】
【0063】
(ii)ゴム強化樹脂A−1〜A−10の調製方法
ゴム質重合体1〜5の存在下または非存在下に芳香族ビニル化合物、または芳香族ビニル化合物と他のビニル系単量体からなる単量体成分を重合し、表2に示す重合体A−1〜A−10を得た。このうち重合体A−1、A−2、A−5、A−6、A−9、A−10は乳化重合で、また重合体A−3、A−4、A−7、A−8は溶液重合で得た。
【0064】
【表2】
【0065】
〔II〕ポリアミドエラストマーB−1〜B−4の調製
(i)重合体B−1の調製
ステンレス製オートクレーブに、ε−カプロラクタム、テレフタル酸および水を仕込み、チッ素置換後230℃で加圧密閉下で4時間加熱撹拌し、分子末端にカルボキシル基を有するポリアミドオリゴマー(a−1)を得た。
次にビスフェノールA骨格を有する数平均分子量約1,500のポリエチレンオキシドグリコール、触媒として酢酸ジルコニウムおよび塩化カリウムを加え、250℃、1mmHg以下の減圧下の条件で4時間重合し、粘稠なポリマー(b−1)を得た。
このポリマーをベルト上にストランド状に取り出し、ペレット化し、水分量0.1%以下に乾燥し、ポリエーテルエステルアミドエラストマー(重合体B−1)を得た。このものの(a−1)ポリアミド成分と(b−2)ポリエチレンオキシドグリコール成分の重合比率は(a−1)/(b−1)=45/55であった。 また還元粘度(ηsp/c)(ギ酸溶液中、0.5g/100ml、25℃測定)は1.65dl/gであった。さらにカリウム量は、原子換算で800ppmであった。結果を表3に示す。
【0066】
(ii)重合体B−2〜B−4の調製
重合体B−1の条件でハードセグメントおよびソフトセグメントの量と種類並びに電解質の量と種類を変えて、また重合反応時間を変えて重合体B−2〜B−4を得た。結果を表3に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
上記表3中:
(a)成分の種類で、
(a−1)はテレフタル酸末端ポリアミド、(a−2)はアジピン酸末端ポリアミドを各々示す。
(b)成分の種類で、
(b−1)はビスフェノールA骨格を有するポリエチレンオキシドグリコール、(b−2)はポリエチレンオキシドグリコールを各々示す。
【0069】
〔III〕導電性物質(C)
C−1:PAN系炭素繊維
東邦コンポジット(株)社製 HTA−C6
(繊維径 7μm、繊維長6mmチョップドストランド)
C−2:ピッチ系炭素繊維
三菱化学産資(株)社製 K223Y1
(繊維径 10μm、繊維長6mmチョップドストランド)
C−3:カーボンブラック
ケッチェンブラックインターナショナル社製 ケッチェンブラックEC
(DBP吸油量 360 ml/100g、粒子径 311Å、表面積800m2/g)
C−4:酸化錫(酸化アンチモンドープ)被覆酸化チタン
三菱マテリアル(株)社製 W−1
(平均粒子径 0.2μm、吸油量 35ml/100mg、比重 4.6)
C−5:アルミニウムドープ酸化亜鉛
白水化学工業(株)社製 23−K
(平均粒子径 0.12〜0.25μm、吸油量 20ml/100mg)
C−6:ステンレスファイバー
ベカルト(株)社製 GR75/C14−E/6
(ステンレスファイバー75%、収束剤+コーティング剤25%、繊維長6mm)
C−7:(酸化錫/アンチモンドープ)被覆チタン酸カリウムウィスカー
大塚化学(株)製 WK200B
(平均粒子径 10〜20μm)
C−8:ニッケル被覆炭素繊維
東邦コンポジット(株)社製 ベスファイト−MC
(繊維径 7μm、繊維長6mmチョップドストランド、Ni被覆膜厚 0.25μm)
【0070】
実施例1〜3
上記各樹脂、ポリアミドエラストマーおよび無機フィラーを水分量0.1%以下に乾燥し、表4に示す配合処方で混合し(但し、導電性繊維は後記押出機の途中にフィード)、ベント付き二軸押出機を用い、溶融混練りしペレット化した。
得られたペレットを除湿乾燥機で水分量0.1%以下まで乾燥し、帯電防止能、成形品表面外観、耐衝撃性および曲げモジュラスの評価用成形品を射出成形により作製した。
【0071】
実施例4,5
上記各樹脂、ポリアミドエラストマーおよび無機フィラーを水分量0.1%以下に乾燥し、表4に示す配合処方で混合し、バンバリーミキサーで混練りしペレット化した。
得られたペレットを除湿乾燥機で水分量0.1%以下まで乾燥し、帯電防止能、成形品表面外観、耐衝撃性および曲げモジュラスの評価用成形品を射出成形により作製した。
【0072】
実施例6
表4に示す配合処方のうちC−6以外を水分量0.1%以下に乾燥し、混合し、ベント付き二軸押出機を用いて溶融混練りしペレット化した。
得られたペレットとC−6をブレンドし、除湿乾燥機で水分量0.1%以下まで乾燥後、帯電防止能、成形品表面外観、耐衝撃性および曲げモジュラスの評価用成形品を射出成形により作製した。
【0073】
実施例7〜14、比較例1〜3
実施例1〜3と同様にして、表4に示す配合処方を用いて評価用成形品を射出成形により作製した。
【0074】
評価結果を表5に示す。
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
実施例1〜14の樹脂組成物は、帯電防止能に優れ、かつ剛性、耐衝撃性、成形品表面外観にも優れる。実施例11〜13の樹脂組成物は透明性にも優れる。比較例1は、導電性物質の配合がなく、ポリアミドエラストマーの帯電防止能、剛性に劣る。比較例2は、ポリアミドエラストマーの配合がなく、C−1(炭素繊維)のみの配合では帯電防止能、耐衝撃性に劣る。比較例3は、導電性物質の量が多すぎて、成形品表面の凹凸が目立ち、外観に劣る。
【0078】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、帯電防止能に優れ、かつ剛性、耐衝撃性、成形品表面外観にも優れるので、OA製品、家電製品の各種部品、ハウジング、さらには電子機器分野、自動車分野の各種部品、雑貨などに有用である。
Claims (2)
- (A)ゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物を必須成分として含有する単量体成分(b)を重合して得られるグラフト共重合体、またはこのグラフト共重合体と単量体成分(b)の(共)重合体との混合物からなるゴム強化芳香族ビニル系樹脂50〜97重量%、および(B)ハードセグメントとしてのポリアミド鎖と、ソフトセグメントとしてのポリ(アルキレンオキシド)鎖とからなるポリアミドエラストマー3〜50重量%(ここで、(A)と(B)の合計は100重量%である)からなる組成物100重量部に対して、(C)導電性物質を1〜30重量部の割合で含有し、前記(メタ)アクリル酸エステル化合物はゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)中30〜80重量%含まれる熱可塑性樹脂組成物において、前記導電性物質は、余剰電子が生成した金属酸化物に、その金属酸化物の金属と価数が異なるドーパント金属をドープすることで導電性がもたらされたものであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- 単量体成分(b)が、芳香族ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物と、シアン化ビニル化合物、酸無水物単量体、マレイミド系化合物および水酸基含有ビニル化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種の単量体との混合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
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