以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
まず、構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る車両の制御装置を搭載した車両の概略ブロック構成図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る車両10は、動力源としてのエンジン(内燃機関)11と、エンジン11において発生した動力を伝達するとともに、選択されたシフトレンジおよび車両10の走行状態に応じた変速段を構成する自動変速機(A/T:Automatic Transmission)20と、自動変速機20を油圧により制御するための油圧制御装置30と、自動変速機20によって伝達された動力を伝達するディファレンシャル機構40と、ディファレンシャル機構40によって伝達された動力を用いて回転することにより車両10を駆動させる駆動輪45L、45Rと、を備えている。
さらに、車両10は、車両10全体を制御するための車両用電子制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)100と、クランクセンサ85と、油圧センサ86と、パーキングロックセンサ87と、駆動軸回転数センサ88と、を備えている。クランクセンサ85、油圧センサ86、パーキングロックセンサ87および駆動軸回転数センサ88は、検出した検出信号を、ECU100に入力するようになっている。
エンジン11は、ガソリンあるいは軽油等の炭化水素系の燃料と空気との混合気を、図示しないシリンダの燃焼室内で燃焼させることによって動力を出力する公知の動力装置により構成されている。エンジン11は、燃焼室内で混合気の燃焼を断続的に繰り返すことにより、シリンダ内部に往復動可能に設けられたピストンを往復動させ、ピストンと動力伝達可能に連結されたクランクシャフト13を回転させることにより、自動変速機20に動力を伝達するようになっている。
また、エンジン11は、クランクシャフト13に直接的または間接的に連結された、例えばトロコイド型のオイルポンプを有している。このオイルポンプは、クランクシャフト13の回転に伴って作動することにより、エンジン11の各潤滑部の潤滑および冷却に必要なオイルを、エンジン11に設けられたオイルパンと各潤滑部との間で循環させるようになっている。
なお、本実施の形態における動力源は、内燃機関としてのエンジンおよび発電機としてのモータジェネレータを併用するものであってもよい。
また、車両10は、シフトレンジを切り替える操作桿としてのシフトレバー17を備えている。本実施の形態におけるシフトレバー17は、いわゆるモーメンタリ式のシフトレバーである。一般に、モーメンタリ式のシフトレバーは、中立ポジション(図1に示すシフトレバー17の位置)を有しており、いずれかのシフトポジションに操作された後は、常に中立ポジションに保持されるようになっている。したがって、シフトレバーが常に一定のポジションに存在するため、運転者がシフトレバーの位置を把握しやすく、操作性が向上する等のメリットがある。
本実施の形態におけるモーメンタリ式のシフトレバー17は、前進ポジション(Dレンジ)、後進ポジション(Rレンジ)、ニュートラルポジション(Nレンジ)、制動ポジション(Bレンジ)および中立ポジションのうちいずれかのシフトポジションに選択的に切り替えられるようになっている。中立ポジションを除く各ポジションには、それぞれシフトポジションセンサが設けられており、各シフトポジションに応じた検出信号がECU100に入力されるようになっている。これにより、ECU100は、シフトレバー17が中立ポジションに復帰しても現時点でのシフトレンジを判定することができる。
なお、中立ポジションにおいては、パーキングスイッチ(以下、「Pスイッチ」という)18を押下することができるようになっており、Pスイッチ18が押下されることにより、駐車ポジション(Pレンジ)に対応する検出信号をECU100に出力するようになっている。また、制動ポジション(Bレンジ)においては、強いエンジンブレーキがかかるようになっており、下り坂を走行するような場合に有効なシフトレンジである。
このようなモーメンタリ式のシフトレバー17を備えた車両10においては、運転者によって例えば前進ポジション(Dレンジ)に操作された後は、シフトレバー17は中立ポジションに保持されるため、シフトレンジがDレンジであるという情報は、次のシフト操作が行われるまで、ECU100のRAM100aに一時的に記憶されるようになっている。
また、ECU100は、図示しないスタータスイッチによってエンジン11がOFFに操作されると、シフトレンジをPレンジ(パーキングレンジ)に設定するようになっている。これにより、例えば車両10の駐車時に、Dレンジのままエンジン11を停止させ、再発進時にエンジン11を再始動した場合には、シフトレンジはPレンジであるので、車両10の急発進が防止される。
一方、車両10が走行中である場合においても、エンジンストールが発生して、エンジン11の再始動時のクランキング等による電圧降下が発生した場合には、ECU100への供給電圧の降下に伴い、ECU100がリセットしまうことがある。そうすると、一時的にRAM100aに記憶されたシフトレンジの情報が失われるが、ECU100は、シフトレンジを初期値としてのPレンジに設定するようになっている。
次に、自動変速機20は、図示しない複数の遊星歯車装置を備えている。これらの遊星歯車装置は、油圧アクチュエータによって係合制御される複数の摩擦係合要素としてのクラッチおよびブレーキを有している。
また、これらのクラッチおよびブレーキは、後述するように油圧制御装置30が有するトランスミッションソレノイドおよびリニアソレノイドの励磁、非励磁や、マニュアルバルブによって切り替えられる油圧回路の状態に応じて、係合状態と解放状態との間で作動するようになっている。したがって、自動変速機20は、これらのクラッチおよびブレーキの係合状態および解放状態の組み合わせに応じたシフトレンジを形成するようになっている。
このような構成により、自動変速機20は、エンジン11の動力として入力されるクランクシャフト13の回転を所定の変速比γで減速あるいは増速してプロペラシャフト(出力軸)25に伝達する有段式の変速機である。
また、自動変速機20は、シフトレンジがDレンジである場合には、アクセル開度と車速とを検出し、変速線図に基づいて、各変速段を形成する自動変速が実現されるようになっている。さらに、自動変速機20は、ECU100がシフトポジションセンサによって検出したシフトレバーの切替位置の変更に応じて、シフトレンジを変更するようになっている。また、自動変速機20は、シフトレバー17が駐車ポジション(Pレンジ)にある場合には、後述するパーキングロック機構によって、プロペラシャフト25の回転を機械的に禁止するように構成されている。
さらに、自動変速機20は、トロコイドポンプ等のオイルポンプを有しており、複数の摩擦係合要素の潤滑および冷却に必要なオイルを、自動変速機20に設けられたオイルパンと複数の摩擦係合要素との間で循環させるようになっている。なお、自動変速機20は、ECU100によって制御されるようになっている。
油圧制御装置30は、複数のトランスミッションソレノイドS、リニアソレノイドSLT、SLUを有し、油圧を用いて自動変速機20を制御するようになっている。複数のトランスミッションソレノイドSは、自動変速機20が各シフトレンジまたは各変速段を互いに切り替える場合に作動するようになっている。リニアソレノイドSLTは、ライン圧制御および図示しないアキュムレータの背圧制御を行うようになっている。
また、油圧制御装置30は、複数のトランスミッションソレノイドSおよびリニアソレノイドSLT、SLUの作動状態に応じて、ライン圧を元圧とする油圧を、自動変速機20の油圧アクチュエータに供給することにより、自動変速機20の複数の摩擦係合要素(後述するクラッチおよびブレーキ)を選択的に係合あるいは解放するようになっている。したがって、油圧制御装置30は、これらの摩擦係合要素の係合状態および解放状態の組み合わせによって、クランクシャフト13とプロペラシャフト25との回転数の比を変更し、自動変速機20に所望のシフトレンジまたは変速段を構成させるようになっている。なお、油圧制御装置30は、ECU100に制御されるようになっている。
ディファレンシャル機構40は、プロペラシャフト25によって伝達された動力を、左右のドライブシャフト43L、43Rを介して駆動輪45L、45Rに分配して伝達するものである。また、ディファレンシャル機構40は、カーブ等を走行する場合に、駆動輪45Lと駆動輪45Rとの回転速度差を許容する公知の差動装置により構成されている。なお、ディファレンシャル機構40は、駆動輪45Lと駆動輪45Rとの回転速度差を許容しない状態を取ることができるものであってもよい。
駆動輪45L、45Rは、ドライブシャフト43L、43Rによって伝達された動力により回転し、路面との摩擦作用によって、車両10を駆動させるようになっている。
ECU100は、揮発性のメモリからなるRAM(Random Access Memory)100a、電気的に書き換え可能な不揮発性のメモリからなるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)100b、図示しない中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)および入出力インターフェース回路を有している。
また、ECU100のEEPROM100bには、後述する作動状態対応マップが記憶されている。
クランクセンサ85は、クランクシャフト13の回転数をエンジン回転数Neとして検出して、検出したエンジン回転数Neを表す検出信号をECU100に入力するようになっている。クランクセンサ85は、例えば、クランクシャフト13に設けられたタイミングロータの回転数を、磁束の変化によって検出する、公知の電磁ピックアップセンサにより構成されている。
クランクシャフト13に設けられたタイミングロータは、外周に一定間隔に複数の凸部を有しているが、一部の凸部が欠損している。各凸部がクランクセンサ85のセンシング面を通過することにより磁束が増減するが、欠損した部分がセンシング面を通過すると、磁束の増減割合が変化するため、その変化を検出することによってクランクシャフト13の回転数を検出するようになっている。
なお、油圧センサ86およびパーキングロックセンサ87の構成については、後述する。
駆動軸回転数センサ88は、ドライブシャフト43Lまたは43Rの回転数を検出し、ドライブシャフト43Lまたは43Rの回転数を表す検出信号をECU100に入力するようになっている。駆動軸回転数センサ88は、例えば、ドライブシャフト43Lまたは43Rに取り付けられた円環板上の磁気ロータの回転に伴う磁界の変化を検出する、公知の半導体式アクティブセンサにより構成されている。
なお、ECU100は、駆動軸回転数センサ88によって入力された上記検出信号に基づいて、車両10の走行速度を算出するようになっている。
次に、自動変速機20の詳細な構成について、図2に基づいて説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る自動変速機の構成を説明するための概要図である。図2(a)は、本実施の形態に係る自動変速機の構成を示すスケルトン図であり、図2(b)は、本実施の形態に係る各シフトレンジおよび各変速段に対応する摩擦係合要素の作動状態を表す作動状態対応マップである。
ここで、上記作動状態対応マップ400におけるC1〜C4、B1、B2、F1は、それぞれ後述する第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2および一方向クラッチF1の作動状態を示している。また、図2(b)において、摩擦係合要素が係合状態である場合には「○」で表記し、摩擦係合要素が解放状態である場合には「×」で表記している。
また、上記作動状態対応マップ400におけるS1は、後述するアンロック機構を制御するためのソレノイドバルブの作動状態を示している。また、図2(b)において、ソレノイドバルブがON状態である場合には「○」で表記し、ソレノイドバルブがOFF状態である場合には「×」で表記している。
図2(a)に示すように、自動変速機20は、エンジン11からクランクシャフト13を介して伝達された動力を、オイルを介して伝達するトルクコンバータ21と、変速装置23と、を備えている。
トルクコンバータ21は、エンジン11と変速装置23との間に配置されており、エンジン11からクランクシャフト13を介して伝達された動力を、オイルを介して変速装置23に伝達するようになっている。
変速装置23は、第1遊星歯車装置23aと、第2遊星歯車装置23bと、複数の摩擦係合要素としての第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2およびワンウェイクラッチF1と、油圧センサ86a〜86gと、を有している。ここで、第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2およびワンウェイクラッチF1は、図示しないそれぞれの油圧アクチュエータによって、係合状態と解放状態に制御されるようになっている。
第1遊星歯車装置23aは、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であり、第1サンギヤS1と、第1リングギヤR1と、複数個のインナーピニオンギヤP1aと、複数個のアウターピニオンギヤP1bと、第1キャリヤCA1と、を有している。
第1サンギヤS1は、自動変速機20のケース20aに回転不可能に固定されている。第1リングギヤR1は、第3クラッチC3を介して第1中間ドラムD1に一体回転可能または相対回転可能に支持されるとともに、第1クラッチC1を介して第2中間ドラムD2に一体回転可能または相対回転可能に支持されている。
複数個のインナーピニオンギヤP1aおよび複数個のアウターピニオンギヤP1bは、第1サンギヤS1と第1リングギヤR1とが対向することにより形成される環状空間に複数個介装されている。
それぞれのインナーピニオンギヤP1aは、第1サンギヤS1と、それぞれのアウターピニオンギヤP1bと、に噛合している。また、それぞれのアウターピニオンギヤP1bは、それぞれのインナーピニオンギヤP1aと、第1リングギヤR1と、に噛合している。また、各インナーピニオンギヤP1aおよび各アウターピニオンギヤP1bは、第1キャリヤCA1の支持軸部によって自転可能および公転可能に支持されている。これにより、各インナーピニオンギヤP1aおよび各アウターピニオンギヤP1bは、第1キャリヤCA1の支持軸を回転軸として自転することができるとともに、インプットシャフト22を回転軸として公転することができるようになっている。
なお、インナーピニオンギヤP1aおよびアウターピニオンギヤP1bの自転とは、第1キャリヤCA1の支持軸部を回転軸とした回転であり、公転とは、インプットシャフト22を回転軸とした回転をいうものとする。
第1キャリヤCA1は、各インナーピニオンギヤP1aと、各アウターピニオンギヤP1bとを、支持軸部によって自転可能および公転可能に支持するものである。また、第1キャリヤCA1は、中心軸部がインプットシャフト22に一体的に連結され、各インナーピニオンギヤP1aと、各アウターピニオンギヤP1bとを支持する支持軸部が第4クラッチC4を介して第1中間ドラムD1に一体回転可能または相対回転可能に支持されている。
第1中間ドラムD1は、第1リングギヤR1の外径側に回転可能に配置されており、第3クラッチC3を介して第1リングギヤR1を一体回転可能または相対回転可能に支持し、第4クラッチC4を介して第1キャリヤCA1を一体回転可能または相対回転可能に支持している。また、第1中間ドラムD1は、第1ブレーキB1を介してケース20aに回転不可能または相対回転可能に支持されている。
第2中間ドラムD2は、第1中間ドラムD1の内周側に設けられており、第1クラッチC1を介して第1リングギヤR1を一体回転可能または相対回転可能に支持している。
第2遊星歯車装置23bは、ラビニヨ型の遊星歯車装置を有しており、第2サンギヤS2と、第2サンギヤS2よりも小径の第3サンギヤS3と、第2リングギヤR2と、複数個のロングピニオンギヤP2と、複数個のショートピニオンギヤP3と、第2キャリヤCA2と、を備えている。
第2サンギヤS2は、第1中間ドラムD1に連結され、第3クラッチC3を介して第1リングギヤR1に一体回転可能または相対回転可能に連結されるとともに、第4クラッチC4を介して第1キャリヤCA1に一体回転可能または相対回転可能に連結されている。また。第2サンギヤS2は、インプットシャフト22を回転軸として回転可能となっている。
第3サンギヤS3は、第2中間ドラムD2に連結され、第1クラッチC1を介して第1リングギヤR1に一体回転可能または相対回転可能に連結されるとともに、インプットシャフト22を回転軸として回転可能となっている。
第2リングギヤR2は、プロペラシャフト25に連結されるとともに、インプットシャフト22を回転軸として回転可能になっている。
それぞれのロングピニオンギヤP2は、第2サンギヤS2と、それぞれのショートピニオンギヤP3と、第2リングギヤR2と、に噛合している。また、それぞれのショートピニオンギヤP3は、第3サンギヤS3と、それぞれのロングピニオンギヤP2と、に噛合している。
各ロングピニオンギヤP2と、各ショートピニオンギヤP3は、第2サンギヤS2および第3サンギヤS3が第2リングギヤR2と対向することによって形成される環状空間に複数個介装されるとともに、第2キャリヤCA2によって自転可能および公転可能に支持されている。これにより、各ロングピニオンギヤP2および各ショートピニオンギヤP3は、第2キャリヤCA2の支持軸部を回転軸として自転することができるとともに、インプットシャフト22を回転軸として公転することができるようになっている。
第2キャリヤCA2は、各ロングピニオンギヤP2および各ショートピニオンギヤP3を自転可能および公転可能に支持するようになっている。また、第2キャリヤCA2は、中心軸部が第2クラッチC2を介してインプットシャフト22に一体回転可能または相対回転可能に支持されるとともに、各ロングピニオンギヤP2および各ショートピニオンギヤP3を支持する支持軸部が、第2ブレーキB2を介してケース20aに相対回転不可能または相対回転可能に支持されている。
第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2およびワンウェイクラッチF1は、オイルの粘性を利用した湿式多板型の摩擦係合要素によって構成されている。
第1クラッチC1は、第3サンギヤS3が第1リングギヤR1に対して一体回転可能となる係合状態、または相対回転可能となる解放状態をとることができるようになっている。
第2クラッチC2は、第2キャリヤCA2がインプットシャフト22に対して一体回転可能となる係合状態、または相対回転可能となる解放状態をとることができるようになっている。
第3クラッチC3は、第1リングギヤR1が第1中間ドラムD1に対して一体回転可能となる係合状態、または相対回転可能となる解放状態をとることができるようになっている。
第4クラッチC4は、第1キャリヤCA1が第1中間ドラムD1に対して一体回転可能となる係合状態、または相対回転可能となる解放状態をとることができるようになっている。
第1ブレーキB1は、第1中間ドラムD1が自動変速機20のケース20aに対して相対回転不可能となる係合状態、または相対回転可能な解放状態をとることができるようになっている。
第2ブレーキB2は、第2キャリヤCA2がケース20aに対して相対回転不可能となる係合状態、または相対回転可能となる解放状態をとることができるようになっている。
ワンウェイクラッチF1は、第2キャリヤCA2の一方向のみの回転を許容するようになっている。
油圧センサ86a〜86gは、検出した検出信号をそれそれECU100に入力するようになっている。詳しくは、油圧センサ86a〜86gは、第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2およびワンウェイクラッチF1にそれぞれ対応する上記油圧アクチュエータに供給される油圧を検出するようになっており、あらかじめ設定されたしきい値に基づく検出結果、すなわち、各摩擦係合要素が係合状態であるONを表す信号、各摩擦係合要素が解放状態であるOFFを表す信号をECU100に入力するようになっている。
次に、図3を参照して、パーキングロック機構の詳細な構成について説明する。図3は、本発明の実施の形態に係るパーキングロック機構の概要図である。
パーキングロック機構50は、パーキングシリンダ51と、パーキングシリンダ51内を液密に往復動するパーキングピストン52と、パーキングピストン52を往復動が可能なように支持するとともにパーキングピストン52と一体的に往復動するパーキングピストンロッド53と、パーキングロッド54と、パーキングピストンロッド53とパーキングロッド54とを連結する連結部材55と、パーキングロッド54に押圧されることによりパーキングギヤ27に係合するパーキングロックポール57とを有している。
なお、パーキングギヤ27は、プロペラシャフト25に取り付けられており、プロペラシャフト25と一体的に回転するようになっている。すなわち、パーキングギヤ27の回転が停止すれば、プロペラシャフト25の回転も停止するようになっている。
パーキングシリンダ51の延在方向の一端側には、油路73bを介してソレノイドバルブ72に接続された油孔61が形成され、延在方向の他端側に電磁コイル62が巻回されたアンロック保持部63が取り付けられている。電磁コイル62は、ECU100に接続されており、ECU100により電磁コイル62への通電が制御されるようになっている。
また、パーキングシリンダ51の延在方向の中間位置には、ストッパ64がパーキングシリンダ51の内壁面に固定されており、このストッパ64が、パーキングピストン52の往復動をパーキングシリンダ51の延在方向中間部で規制するようになっている。
さらに、パーキングシリンダ51に設けられた油孔61側の端部は、パーキングピストンロッド53の往復動を、パーキングロックポール57とパーキングギヤ27とが係合するロック位置67で規制している。一方、ストッパ64を設けたパーキングシリンダ51内の延在方向中間部は、パーキングピストンロッド53の往復動を、パーキングロックポール57とパーキングギヤ27とが離間するアンロック位置68で規制している。
そして、パーキングロック機構50は、パーキングピストン52をロック位置67とアンロック位置68との間で往復動させることにより、ロック状態とアンロック状態とを切り替えるようになっている。
パーキングピストン52は、パーキングピストンロッド53の途中部分に固定されている。また、パーキングピストン52とパーキングシリンダ51の内壁とにより、パーキングシリンダ51内に、油孔61を通じてオイルが供給される油圧室71を画成している。さらに、パーキングピストン52は、ECU100に制御され、ソレノイドバルブ72の作動に伴って油圧室71内のオイルの供給および排出が行われることにより、パーキングシリンダ51内をロック位置67とアンロック位置68との間を往復動するようになっている。
なお、油圧室71は、オイルポンプ35と、油路73a、ソレノイドバルブ72、油路73bを介して、接続されている。これにより、油圧室71へのオイルの供給は、エンジン11に設けられた例えばトロコイド式のオイルポンプ35によって行われる。
パーキングピストンロッド53は、一部がパーキングシリンダ51の外部に露出した状態でパーキングシリンダ51に挿入されており、パーキングシリンダ51の外側に位置する端部には連結部材55が回動自在に連結され、パーキングシリンダ51の内側に位置する端部には磁石53mが設けられている。
また、パーキングピストンロッド53における、パーキングシリンダ51の外側に位置する部分の端部には、磁性突起53tが形成されている。ここで、パーキングロックセンサ87はECU100によって通電されることにより磁界を形成しており、この磁性突起53tによる磁界の変化を電圧の変化として検出し、検出信号をECU100に出力するようになっている。
なお、パーキングロックセンサ87は、ロック位置67にパーキングピストン52が移動したときに、磁性突起53tによる磁界の変化に対応する検出信号をECU100に出力するようになっている。すなわち、パーキングロックセンサ87は、パーキングロックポール57の爪部59がパーキングギヤ27と係合する位置に到達したときに、検出信号をECU100に出力する。ECU100は、この検出信号に基づいて、パーキングロック機構50がロック状態である、すなわち、シフトレンジがPレンジであると判定する。
また、このパーキングロック機構50がロック状態であるとは、パーキングピストン52がロック位置67に移動している状態を示すものであり、パーキングロックポール57とパーキングギヤ27とが実際に係合していることを示すものではない。すなわち、パーキングピストン52がロック位置67に移動していても、車両10の速度が所定の速度(後述する、エンゲージ車速Vp)よりも速い場合には、パーキングロックポール57とパーキングギヤ27とは係合しておらず、後述するラチェッティングが発生した状態となっている。
磁石53mは、パーキングピストン52およびパーキングピストンロッド53の往復動に応じてパーキングシリンダ51内を往復動するようになっている。したがって、磁石53mは、パーキングピストン52がアンロック位置68に移動すると、電磁コイル62で囲われた空間に進入し、パーキングピストン52がロック位置67に移動すると、電磁コイル62で囲われた空間から脱出するようになっている。また、磁石53mは、パーキングピストン52がアンロック位置68に移動したときに、ECU100からの通電により電磁コイル62が発生した電磁力によって位置を保持される。これにより、パーキングピストン52がアンロック位置68に保持されるようになっている。
連結部材55は、中間部の支軸55aを中心に回動自在に構成されており、一端部が、ピボットピン55bを介してパーキングピストンロッド53に回動自在に連結され、他端部が、ピボットピン55cを介してパーキングロッド54に回動自在に連結されている。
したがって、パーキングピストン52がロック位置67に移動すると、連結部材55を介してパーキングロッド54の先端がパーキングロックポール57側に押し込まれ、パーキングピストン52がアンロック位置68に移動すると、連結部材55を介してパーキングロッド54の先端がパーキングロックポール57から離間されるようになっている。
また、連結部材55の支軸55aには、捩れコイルばねにより構成されたスプリング75が設けられており、スプリング75はパーキングロッド54をパーキングロックポール57の方向に付勢している。
パーキングロッド54は、先端部にパーキングカム56を設けており、パーキングカム56をパーキングロックポール57の一端に押し当てることにより、パーキングロックポール57の他端をパーキングギヤ27に係合させるようになっている。
パーキングカム56は、断面積が先端に向けて縮小するように外周面がテーパ状に形成されており、パーキングロックポール57の一端に押し当てられることにより、パーキングロックポール57をパーキングギヤ27に向けて移動させるようになっている。
パーキングロックポール57は、パーキングギヤ27の外周面に対向する位置に設けられ、支軸58を中心として揺動するようになっている。また、パーキングロックポール57には、パーキングギヤ27と係合する爪部59が形成されており、この爪部59がパーキングギヤ27に係合することによって、パーキングギヤ27の回転が阻止される。これにより、パーキングギヤ27と一体的に回転するプロペラシャフト25の回転が阻止される。
ここで、パーキングロック機構50のアンロック動作およびロック動作について簡単に説明する。
まず、シフトレバー17(図1参照)が中立位置にありPスイッチ18が押下されているか、または、エンジン11の始動時にシフトレンジがPレンジに設定されている場合には、パーキングロック機構50において、パーキングロックポール57の爪部59がパーキングギヤ27に係合してプロペラシャフト25の回転を禁止するロック状態が成立している。
パーキングロック機構50のロック状態が成立している状態において、Pスイッチ18が解除されるか、または、シフトレバー17が前進ポジション、後進ポジションおよびニュートラルポジションのうちいずれかのシフトポジションに切り替えられると、ECU100は、シフトレンジはPレンジ以外のシフトレンジであると判断する。
ECU100は、シフトレンジがPレンジ以外のシフトレンジであると判断すると、ソレノイドバルブ72をONに切り替える。ソレノイドバルブ72がONに切り替えられると、オイルポンプ35によって油圧室71内にオイルが供給されて、油圧室71の油圧が上昇する。
油圧室71の油圧が上昇することによって、パーキングピストン52がアンロック位置68側に向かって移動し始める。パーキングピストン52がアンロック位置68側に向かって移動し始めると、スプリング75の付勢力に抗するようにしてパーキングカム56がパーキングロックポール57の一端から離間させられ、パーキングロックポール57が支軸58を中心として、図中下方に揺動し、爪部59がパーキングギヤ27から離間するようになっている。
そして、パーキングピストン52がアンロック位置68に到達すると、爪部59がパーキングギヤ27から完全に離間し、パーキングピストンロッド53の一端に設けられた磁石53mが電磁コイル62で囲われた空間に侵入する。この状態で、ECU100からの通電で電磁コイル62が発生した図中右方向の電磁力によって、電磁コイル62で囲われた空間内に磁石53mが保持され、爪部59がパーキングギヤ27から完全に外れたアンロック状態が維持されるようになっている。
このように、パーキングロック機構50のアンロック状態においては、オイルポンプ35から供給される油圧によりパーキングピストン52がアンロック位置68に押し付けられるとともに、電磁力によって、磁石53mが、電磁コイル62で囲われた空間に保持されることで、アンロック状態が維持されるようになっている。すなわち、パーキングロック機構50は、パーキングシリンダ51の油圧室71の油圧が低下した場合でも、電磁コイル62が通電されていれば、電磁力によってアンロック状態を保持する構成となっている。
一方、シフトレバー17(図1参照)の中立位置においてPスイッチが押下され、ECU100がシフトレンジをPレンジであると判定した場合には、パーキングロック機構50は、アンロック状態からロック状態へと移行する。
アンロック状態からロック状態へ移行する場合には、まず、ECU100が電磁コイル62への通電を停止する。これにより、電磁コイル62が電磁力を発生しなくなるので、磁石53mが電磁力によっては保持されなくなる。さらに、ECU100がソレノイドバルブ72をOFFとし、ドレン側油路73dを開状態にする。これにより、油圧室71のオイルがドレン側油路73dから排出されるので、油圧室71の油圧が低下する。
したがって、連結部材55を図中時計回りに回動させるようとするスプリング75の付勢力が、油圧室71の油圧によりパーキングピストン52をアンロック位置68の方向へ移動させようとする力を上回るので、パーキングピストン52がロック位置67側に向かって移動し始める。
パーキングピストン52がロック位置67側に向かって移動し始めると、スプリング75の付勢力によりパーキングカム56がパーキングロックポール57の一端に押し当てられ、パーキングロックポール57が支軸58を中心として上方に揺動して、爪部59がパーキングギヤ27に接近するようになっている。
そして、パーキングピストン52がロック位置67に到達すると、爪部59がパーキングギヤ27に係合し、スプリング75の付勢力によりロック状態が維持される。
このようなパーキングロック機構50においては、エンジンストール時のオイルポンプの停止による油圧室71の油圧が低下しても、電磁力によりアンロック状態が維持されるようになっている。
以下、本実施の形態に係る車両の制御装置の特徴的な構成について説明する。
駆動軸回転数センサ88は、ドライブシャフト43Lまたは43Rの回転数を検出し、ドライブシャフト43Lまたは43Rの回転数を表す検出信号をECU100に入力し、ECU100がこの検出信号により車両10の車速を求めるようになっている。すなわち、駆動軸回転数センサ88は、本発明における車速検出手段を構成している。
パーキングロック機構50は、エンジン11からの動力が伝達されるプロペラシャフト25の回転をロック状態とアンロック状態との間で作動するようになっている。すなわち、パーキングロック機構50は、本発明におけるパーキングロック機構を構成している。
アンロック保持部63は、アンロック状態を電磁コイル62の電磁力によって保持するようになっている。すなわち、アンロック保持部63は、本発明におけるアンロック保持手段を構成している。
ECU100のRAM100aは、各シフトポジションに応じた検出信号に基づくシフトレンジまたは予め初期値として設定されたシフトレンジを一時的に記憶するようになっている。具体的には、ECU100のRAM100aは、ECU100のCPUによって、シフトレバー17に設けられた各シフトポジションセンサから入力された検出信号に基づいて検出したシフトレンジを記憶するようになっている。また、ECU100のRAM100aは、エンジン11の再始動時に、シフトレンジとしてPレンジを記憶するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明におけるシフト一時記憶手段を構成している。
ECU100のEEPROM100bは、RAM100aに記憶されたシフトレンジを記憶するようになっている。具体的には、ECU100のCPUは、クランクセンサ85によって入力されたエンジン回転数Neを表す検出信号に基づいてエンジンストールが発生したか否かを判定し、エンジンストールが発生したと判定した場合に、RAM100aに記憶されたシフトレンジを記憶するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明におけるシフト記憶手段を構成している。
ECU100は、エンジン11の停止が検出されたとき、EEPROM100bにRAM100aに記憶されたシフトレンジを記憶させるようになっている。すなわち、ECU100は、本発明における内燃機関停止時制御手段を構成している。
ECU100は、駆動軸回転数センサ88により入力された検出信号に基づいて、車両10が走行中であるか否かを判定するようになっている。具体的には、ECU100は、駆動軸回転数センサ88により入力された検出信号に基づく車両10の走行速度Vが、予め定められた値(例えば、5km/h)以上である場合には、車両10は走行中であると判定し、予め定められた値未満である場合には、車両10は走行中でないと判定するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明における走行判定手段を構成している。
さらに、ECU100は、クランクセンサ85により入力された検出信号に基づいて、エンジン11を再始動したか否かを検出するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明における再始動検出手段を構成している。
さらに、ECU100は、エンジン11の停止を検出するようになっている。具体的には、ECU100のCPUは、クランクセンサ85によって入力されたエンジン回転数Neを表す検出信号に基づいて、エンジンストールが発生したか否かの判定により、エンジン11の停止を検出するようになっている。より詳しくは、クランクセンサ85の検出信号が表すエンジン回転数Neが予め定められた値(例えば、100rpm)よりも小さい場合に、エンジンストールが発生したものと判定するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明における内燃機関停止検出手段を構成している。
さらに、ECU100は、ドライブシャフト43Lまたは43Rの回転数を表す検出信号に基づいて検出した車速が予め定められた速度未満であるか否かを判定するようになっている。具体的には、ECU100は、駆動軸回転数センサ88により入力された検出信号に基づく車両10の走行速度Vが、後述するエンゲージ車速Vp未満であるか否かを判定するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明における車速判定手段を構成している。
さらに、ECU100は、RAM100aに記憶されたシフトレンジに基づいてパーキングロック機構50の作動を制御するようになっている。具体的には、運転者のシフトレバー17、Pスイッチ18の操作に基づいて、シフトレンジを検出し、このシフトレンジをRAM100aに記憶する。そして、このRAM100aに記憶されたシフトレンジに基づいて、ソレノイドバルブ72、電磁コイル62を制御することにより、パーキングロック機構50を作動させるようになっている。
また、ECU100は、車両10が走行中であると判定し、エンジン11が再始動したと検出された場合に、エンジンが再始動した後のRAM100aに記憶されたシフトレンジにかかわらずパーキングロック機構50の作動状態をアンロック状態に制御するようになっている。
具体的には、ECU100は、エンジン11が再始動した後にRAM100aに記憶したシフトレンジがPレンジであり、EEPROM100bに記憶したシフトレンジがPレンジでない場合に、パーキングロック機構50の作動状態をアンロック状態に制御するようになっている。
また、ECU100は、RAM100aに記憶されたシフトレンジがPレンジであり、検出された車速が予め定められた速度未満であると判定した場合には、パーキングロック機構50の作動状態をロック状態に制御するようになっている。具体的には、ECU100のCPUは、シフトレンジがPレンジであり、駆動軸回転数センサ88により入力された検出信号に基づく車両10の走行速度Vが、エンゲージ車速Vp未満であると判定した場合には、車両10を停車させておくものとして、パーキングロック機構50の作動状態をロック状態に制御するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明におけるロック機構制御手段を構成している。
さらに、ECU100は、エンジン11が再始動したと検出したとき、予め初期値として設定されたシフトレンジをRAM100aに記憶するようになっている。具体的には、車両10は、モーメンタリ方式のシフトレバー17を採用するものであり、ECU100は、エンジン11が再始動したとき、シフトレンジをPレンジに設定するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明における再始動時レンジ設定手段を構成している。
ここで、車両10の実際のシフトレンジ(以下、実レンジという)の検出方法について、説明する。
まず、ECU100のCPUは、油圧センサ86a〜86gから入力された検出信号に基づいて、自動変速機20の第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2およびワンウェイクラッチF1の作動状態を検出する。また、ECU100のCPUは、ソレノイドバルブ72の作動状態を抽出する。
さらに、ECU100のCPUは、EEPROM100bに記憶されている作動状態対応マップ400に基づいて、検出した第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2およびワンウェイクラッチF1の作動状態と、抽出したソレノイドバルブ72の作動状態と、により、対応するシフトレンジを検出する。また、ECU100のCPUは、ソレノイドバルブ72の作動状態の代わりに、パーキングロックセンサ87の検出信号に基づくパーキングロック機構50の作動状態を検出するようにしてもよい。
このようにして、ECU100のCPUは、実レンジを検出することができる。また、ECU100のCPUは、検出したシフトレンジをRAM100aに記憶するようになっている。
次に、本発明の実施の形態に係る車両の制御装置の動作について、図面を参照して説明する。図4は、本発明の実施の形態に係るパーキングロック機構の制御処理を示すフローチャートである。
なお、図4に示すフローチャートは、ECU100のCPUによって、RAM100aを作業領域として実行されるパーキングロック機構の制御処理のプログラムの実行内容を表す。このパーキングロック機構の制御処理のプログラムは、ECU100のEEPROM100bに記憶されている。また、このパーキングロック機構の制御処理は、ECU100のCPUによって、予め定められた時間間隔で実行されるようになっている。
なお、このパーキングロック機構の制御処理は、後述する走行中であるか否かの判定(ステップS11)およびエンジンストールであるか否かの判定(ステップS12)を行う代わりに、走行中のエンジンストールが発生した場合に、処理を実行するようにしてもよい。また、ECU100のCPUは、本パーキングロック機構の制御処理の実行に先立ち、車両10の走行中にシフトレンジを検出し、検出したシフトレンジをRAM100aに記憶するようになっている。
図4に示すように、まず、ECU100のCPUは、車両10が走行中であるか否かを判定する(ステップS11)。具体的には、ECU100のCPUは、駆動軸回転数センサ88(図1参照)により入力された検出信号に基づく車両10の走行速度Vが、予め定められた値(例えば、5km/h)以上である場合には、車両10は走行中であると判定する。
ECU100のCPUは、車両10が走行中ではないと判定した場合には(ステップS11でNo)、本処理を終了する。
一方、ECU100のCPUは、車両10が走行中であると判定した場合には(ステップS11でYes)、エンジンストールが発生したか否かを判定する(ステップS12)。具体的には、ECU100のCPUは、クランクセンサ85によって入力されたエンジン回転数Neを表す検出信号に基づいて、エンジンストールが発生したか否かを判定する。すなわち、クランクセンサ85の検出信号が表すエンジン回転数Neが予め定められた値(例えば、100rpm)よりも小さい場合には、エンジンストールが発生したものと判定する。
ECU100のCPUは、エンジンストールが発生していないと判定した場合には(ステップS12でNo)、本処理を終了する。
一方、ECU100のCPUは、エンジンストールが発生したと判定した場合には(ステップS12でYes)、RAM100aに保持しているシフトレンジをEEPROM100bに記憶する(ステップS13)。なお、ここで記憶したシフトレンジをSmと定義する。シフトレンジSmは、ECU100のEEPROM100bに記憶されるため、エンジン11の再始動に伴う電圧降下によってECU100がリセットされても保持しておくことができることとなる。
ECU100のCPUは、シフトレンジSmを記憶した後(ステップS13)、エンジン11が再始動したか否かを判定する(ステップS14)。具体的には、ECU100のCPUは、一度低下したエンジン回転数Neが(ステップS12でYes)、予め定められた値(例えば、1000rpm)以上になった場合には、エンジン11が再始動したものと判定する。
エンジン11が再始動した場合には、ECU100のCPUは、上述したように、電圧降下によってリセットし、シフトレンジをPレンジに設定するので、パーキングロック機構50をロック状態に移行させることとなる。
ECU100のCPUは、エンジン11が再始動していないと判定した場合には(ステップS14でNo)、本処理を終了する。
一方、ECU100のCPUは、エンジン11が再始動したと判定した場合には(ステップS14でYes)、現在のシフトレンジがPレンジであるか否かを判定する(ステップS15)。
具体的には、ECU100のCPUは、RAM100aに記憶されているシフトレンジがPレンジであるか否かを判定する。また、この現在のシフトレンジがPレンジであるか否かの判定は、パーキングロック機構50がロック状態であるか否かを判定するようにしてもよい。すなわち、ECU100のCPUは、ソレノイドバルブ72の作動状態に基づいて判定する。
ECU100のCPUは、現在のシフトレンジがPレンジではないと判定した場合には(ステップS15でNo)、本処理を終了する。
一方、ECU100のCPUは、現在のシフトレンジがPレンジであると判定した場合には(ステップS15でYes)、車両10の走行速度Vがエンゲージ車速Vp以上であるか否かを判定する(ステップS16)。
具体的には、ECU100のCPUは、駆動軸回転数センサ88により入力された検出信号に基づく車両10の走行速度Vが、エンゲージ車速Vp以上であるか否かを判定する。
ここで、エンゲージ車速Vpとは、パーキングギヤ27とパーキングロックポール57とが係合して、後述するラチェッティングが発生しない範囲での最大の走行速度Vをいう。なお、本実施の形態においては、車両10の走行速度Vが、エンゲージ車速Vpと同一であった場合には、安全側制御のため、ラチェッティングが発生するものとして扱うものとした。
すなわち、パーキングロック機構50(図3参照)がロック状態である場合には、パーキングロックポール57は、パーキングカム56によって、パーキングギヤ27と係合する位置まで押し上げられている。この場合、車両10の走行速度Vが十分に小さければ(例えば、10km/h未満)、パーキングロックポール57とパーキングギヤ27とが係合して、プロペラシャフト25の回転が阻止され、ロック状態が成立する。
ECU100のCPUは、走行速度Vがエンゲージ車速Vp未満であると判定した場合には(ステップS16でNo)、本処理を終了する。
ECU100のCPUが、走行速度Vがエンゲージ車速Vp未満であると判定した場合に、本処理を終了するのは、以下の理由による。
走行中にエンジンストールが発生するのは、車両10に何らかの異常が発生した可能性があると考えられるので、以降の処理を行わずに本処理を終了して、車両10を停車させた方が、安全であると考えられる。また、上述したように、走行速度Vがエンゲージ車速Vp未満であれば、パーキングロック機構50をロック状態に移行させたとしても、ラチェッティングは発生しない。したがって、ECU100のCPUは、走行速度Vがエンゲージ車速Vp未満である場合には、本処理を終了して車両10を停車させることとしている。
一方、ECU100のCPUは、走行速度Vがエンゲージ車速Vp以上であると判定した場合には(ステップS16でYes)、記憶したシフトレンジSm(ステップS13)が、Pレンジ以外であるかを判定する(ステップS17)。
ECU100のCPUは、記憶したシフトレンジSmが、Pレンジであると判定した場合には(ステップS17でNo)、本処理を終了する。
一方、ECU100のCPUは、記憶したシフトレンジSmが、Pレンジ以外、すなわちDレンジ、Rレンジ、NレンジおよびBレンジのうちいずれかのシフトレンジであると判定した場合には(ステップS17でYes)、パーキングロック機構50をアンロック状態に制御させる(ステップS18)。
具体的には、ECU100のCPUは、ソレノイドバルブ72(図3参照)を制御して、オイルポンプ35により油圧室71に油圧を供給し、油圧室71の油圧によってパーキングピストン52をアンロック位置68に移動させる。これにより、ECU100のCPUは、パーキングロック機構50をアンロック状態に移行させることとなる。
さらに、エンジン11の再始動によって降下した電圧が回復していれば、電磁コイル62に通電して、電磁力により磁石53mの位置を保持することによって、アンロック状態を維持することができる。
以上のように、本実施の形態に係る車両の制御装置は、車両10が走行中にエンジン11が再始動したと検出された場合に、エンジン11が再始動した後のECU100のRAM100aに記憶されたシフトレンジにかかわらずパーキングロック機構50の作動状態をアンロック状態に制御するので、エンジン11の再始動による電圧降下によって、アンロック状態を電磁コイル62の電磁力によって保持するアンロック保持部63によるパーキングロック機構50のアンロック状態が維持できない状況下で、エンジン11が再始動した後のECU100のRAM100aに記憶されたシフトレンジが、Pレンジであってもアンロック状態に制御し、ロック状態が継続してしまうことを防止することができ、ラチェッティングの継続を防止することができる。
具体的には、エンジン11が再始動した後に記憶したシフトレンジがPレンジであり、エンジン11が停止した時に記憶したシフトレンジがPレンジ以外である場合に、パーキングロック機構50の作動状態をアンロック状態に制御するので、エンジン11の再始動によりシフトレンジが変更されてしまい、パーキングロック機構50の作動状態がアンロック状態からロック状態となってしまっても、ロック状態が継続してしまうことを防止することができ、ラチェッティングの継続を防止することができる。
さらに、本実施の形態に係る車両の制御装置は、ECU100のRAM100aに記憶されたシフトレンジがPレンジであり、車速Vが予め定められたエンゲージ車速Vp未満である場合には、パーキングロック機構50の作動状態をロック状態に制御することができる。このため、パーキングロック機構50に無用な負荷を与えずプロペラシャフト25の回転を確実に禁止できるほど車速が小さい場合には、パーキングロック機構50をロック状態とし、エンゲージ車速Vp未満のラチェッティングが発生しない程度の車速Vであれば、車両10を停止させて安全性を向上させることができる。
さらに、本実施の形態に係る車両の制御装置は、車両10が走行中である場合にのみ、エンジン11が再始動した時にECU100のRAM100aに記憶されたPレンジにかかわらず、パーキングロック機構50をアンロック状態に制御するので、車両10の走行中にはパーキングロック機構50のロック状態が継続してしまうことを防止できるとともに、車両10が走行中でなければ、パーキングロック機構50をアンロック状態とせず、車両10が移動してしまうことを防止できる。したがって、例えば、モーメンタリ方式のシフトレバーを採用した車両等の利点を有効に活用しつつ、本発明を適用することができる。
なお、本実施の形態においては、モーメンタリ方式のシフトレバー17を利用した車両10について説明したが、これに限らず、シフトレバーの指定位置(ポジション)を検出し、この検出したポジションに応じて自動変速機のシフトレンジを切り換えるアクチュエータを電気的に制御するような、通常のシフトバイワイヤ方式を採用した車両に適用することができる。この場合も上述した車両の制御装置と同様の効果が得られる。
また、本実施の形態においては、ECU100が1つであるものとして説明したが、これに限らず、複数のECUによって構成されるものであってもよい。例えば、エンジン11を制御するE−ECU、自動変速機20を制御するT−ECU等の複数のECUによって、本実施の形態のECU100が構成されるものであってもよい。この場合、各ECUは、必要な情報を相互に入出力する。
以上説明したように、本発明に係る車両の制御装置は、内燃機関の再始動による電圧降下によって、パーキングロック機構のアンロック状態が維持できない場合であっても、ロック状態が継続してしまうことを防止することができ、ラチェッティングの継続を防止することができるという効果を有し、パーキングロック機構を備えた車両の制御装置等として有用である。