FEDに使用されるガラス基板には、次の特性が要求される。
(1)熱処理工程でガラス基板に割れが生じないように、周辺部材と適合する熱膨張係数を有すること
(2)成膜等の熱処理工程でガラス基板が熱収縮して、パターンずれを起こさないように、高い歪点を有すること
(3)FEDの品質に影響を及ぼすような内部欠陥が存在しないこと、特に泡欠陥が存在しないこと
(4)FED全体の重量を軽減するために、低密度であること
(5)FEDの製造工程でカセットの出し入れを容易にできるように、たわみが少ないこと、すなわち比ヤング率が大きいこと
(6)膜応力等の衝撃によってガラス基板が割れにくいこと、すなわちガラスの割れやすさの指標となるクラック発生率が低いこと
ところで、従来の電子放出素子にあっては、安定な電子放出特性について、必ずしも要求を満足するものが得られていない。具体的には、従来のガラス基板には、大型ディスプレイの低コスト化を行うために安価なアルカリガラスが使用されていたため、十分な素子特性が得られていない。これはアルカリガラスの誘電率が比較的高く、基板から浮遊容量成分が生じるという問題に起因する。そのため高速に電子放出を行うと、浮遊容量成分により、最初に充電電流が流れ、安定した電子放出が得られない。この問題を解決するために、基板表面に低誘電率の膜を形成する方法も採用可能であるが、膜付け工程が増え、実質的に低コスト化を行う上で障害となり得る。したがって、上記問題を根本的に解決するために、(7)誘電率の小さいガラスが望まれている。
また、電子放出素子を形成する際、スパッタの精度をより高めることも求められている。スパッタにより形成された膜の凹凸形状は、ガラス基板表面の凹凸形状の影響を大きく受けるため、表面平滑性が良好なガラス基板が求められている。ガラス基板の表面平滑性は、種々の要因により決定されるが、最も影響が大きい因子としてガラス基板の成形方法および加工方法が挙げられる。
ガラス基板を成形する方法としては、オーバーフローダウンドロー法(fusion法とも称される)、フロート法、スロットダウンドロー法等の種々の方法がある。その中でも、オーバーフローダウンドロー法は、ガラス基板を研磨しなくても、言い換えれば加工工程を別途経なくても平坦性の高いガラス基板を得ることができる。したがって、オーバーフローダウンドロー法は、優れた表面平滑性が要求されるFED用ガラス基板の成形方法として好適であると考えられる。しかし、オーバーフローダウンドロー法は、他の成形法と比較して、ガラスの成形時における粘度が高いため、ガラスの耐失透性が悪いと、成形中に失透ブツが発生し、ガラスの成形ができなくなる。そのため、FED用ガラス基板として、(8)失透しにくいガラス組成であることが望ましいといえる。
しかし、従来までのFED用ガラス基板は、上記要求特性(1)〜(8)をすべて満足するガラスがなく、特に、(7)誘電率が小さなガラスおよび(8)耐失透性が良好なガラスを得ることが困難であり、結果として、ガラス基板から浮遊容量成分が発生する事態を抑止し、安定な電子放出特性を確保することが困難であるとともに、電子放出素子を形成する際、スパッタの精度が損なわれ、精度が高い回路パターンを形成することが困難となっていた。
したがって、本発明は、上記要求特性(1)〜(6)を満たすことができるとともに、(7)誘電率が小さく、(8)耐失透性が良好なガラスを得ることを技術的課題とし、それを用いたガラス基板を得ることを技術的課題とする。
本発明者は、鋭意努力の結果、平明画像表示装置用ガラスにおいて、ガラスの組成範囲を、モル%でSiO2 60〜90%、Al2O3 3〜10%、B2O3 0.01〜10%、Li2O 0〜4%、Na2O 0〜7%、K2O 0〜8%、MgO 0〜3%、CaO 0〜4%、SrO 0〜15%、BaO 0〜15%、モル分率でBaO/Al 2 O 3 の値を0.9〜1.2に規制し、且つ30〜380℃における平均熱膨張係数を50〜90×10-7/℃に設定した上で、25℃、1MHzにおける誘電率を9未満に設定することで上記課題を解決できることを見出し、本発明として提案するものである。なお、本発明において、「30〜380℃における平均熱膨張係数」は、ディラトメーターを用いて、測定した値を指す。
ガラス組成を上記の範囲に規制することにより、上記要求特性(1)〜(8)を充足可能なガラスを容易に得ることができる。その結果、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、ディスプレイ等の画像表示装置の表示特性等を損なうことがない。また、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、上記要求特性(1)〜(8)を満足し得るので、表示装置の大画面化、省電力化、高精細化、高画質化、省スペース化、低コスト化等に寄与することができる。
ガラス組成を上記の範囲に規制することによって、ガラスの耐失透性が良好なガラスを得ることができる。一般的に、オーバーフローダウンドロー法において、ガラスの耐失透性は、少なくとも液相温度で1200℃以下、液相粘度で104.5dPa・s以上が要求されるが、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、ガラス組成を上記の範囲に規制しているため、耐失透性が良好であり、液相温度で1200℃以下、液相粘度で104.5dPa・s以上の特性を達成することができる。また、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、ガラス組成を上記の範囲に規制していることにより、オーバーフローダウンドロー法に適した粘度特性を有している。オーバーフローダウンドロー法を採用すれば、別途研磨工程を付与しなくても、ガラス基板の表面品位を向上させることができ、その結果、ガラス基板の表面に精度が高いフォトリソグラフィーを行うことが可能となり、且つ精度が高い回路パターンを形成することが可能となり、平面画像表示装置の信頼性確保(例えば、断線、ショートの発生確率を低減できること等)に寄与することができる。なお、本発明は、オーバーフローダウンドロー法以外の成形方法を排除するものではない。オーバーフローダウンドロー法以外の成形方法であっても、ガラスの製造工程ではガラスの耐失透性が良好であればあるほど、ガラス基板の製造効率が向上するため、本発明が他の成形方法でも有効である点は言うまでもない。
さらに、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、30〜380℃における平均熱膨張係数を50〜90×10-7/℃に規制しているので、良好にフリットシールを行い、平面画像表示装置を製造する際の成膜等の熱処理工程でガラス基板の割れを的確に防止することが可能となる。
本発明の平面画像表示装置用ガラスは、25℃、1MHzにおける誘電率を9未満に規制しているので、ガラス基板表面に低誘電率の膜を形成しなくても、浮遊容量成分により、最初に充電電流が流れ、安定した電子放出が得られないといった事態が生じず、安定した電子放出特性を確保することができ、その結果、平面画像表示装置において、明るく鮮明な表示画像を安定して提供することが可能となる。
また、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、電子放出素子において、高効率で且つ高速に応答する電子放出特性を長時間保持でき、その結果、明るく鮮明な表示画像を安定して提供することが可能となる。
第二に、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、ガラス組成として、モル%でSiO2 60〜89%、Al2O3 4〜8%、B2O3 1〜5%、Li2O 0〜2%、Na2O 0〜5%、K2O 1〜5%、MgO 0〜1%、CaO 0〜4%、SrO 2〜13%、BaO 3〜10%を含有し、モル分率でBaO/Al 2 O 3 の値が0.9〜1.2であり、且つ30〜380℃における平均熱膨張係数が60〜80×10-7/℃、25℃、1MHzにおける誘電率が9未満であることに特徴付けられる。
第三に、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、ガラス組成として、モル%でSiO2 68〜73%、Al2O3 5〜7%、B2O3 1.5〜3%、Li2O 0〜0.5%未満、Na2O 0〜4%、K2O 1.5〜5%、MgO 0〜0.5%、CaO 0〜4%、SrO 6〜10%、BaO 2〜8%を含有し、モル分率でBaO/Al 2 O 3 の値が0.9〜1.2であり、且つ30〜380℃における平均熱膨張係数が65〜75×10-7/℃、25℃、1MHzにおける誘電率が7.5以下であることに特徴付けられる。
第五に、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、モル分率でNa2O/K2Oの値が0〜2であることに特徴付けられる。
第六に、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、モル分率で(Na2O+K2O)/(MgO+CaO+SrO+BaO)の値が0〜1であることに特徴付けられる。
第七に、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、密度が3.0g/cm3以下であることに特徴付けられる。
第八に、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、歪点が590℃以上であることに特徴付けられる。なお、本発明において、「歪点」は、ASTM C336−71に準拠した方法で測定した値を指す。
第九に、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、液相温度が1200℃以下であることに特徴付けられる。なお、本発明において、「液相温度」は、ガラスを粉砕し、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に48時間保持した後、ガラス中に結晶が析出する温度を測定したものである。
第十に、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、液相粘度が104.5dPa・s以上であることに特徴付けられる。本発明において、「液相粘度」は、上記方法で測定した液相温度におけるガラスの粘度を周知の白金引き上げ法で測定した値を指す。
第十一に、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、比ヤング率が25GPa/(g/cm3)以上であることに特徴付けられる。なお、本発明において、「比ヤング率」は、共振法によって得られたヤング率を密度で割った値を指す。
第十二に、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、クラック発生率が70%以下であることに特徴付けられる。なお、本発明において、「クラック発生率」は、湿度30%、温度25℃に保持された恒温恒湿槽内において、荷重50gに設定した正方形四角錘形状のビッカース圧子を光学研磨したガラス表面に15秒間打ち込み、その15秒後に圧痕の4隅から発生するクラックの数をカウント(1つの圧痕につき最大4とする)する手順を、同一のガラスに対し、20回実行した後、(総クラックカウント数/80)×100(%)を評価した値である。
第十三に、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、高温粘度102.5dPa・sに相当する温度が1600℃以下であることに特徴付けられる。なお、本発明において、「高温粘度102.5dPa・sに相当する温度」は、白金球引き上げ法で測定した値を指す。
第十四に、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、平面画像表示装置がFEDであることに特徴付けられる。
第十五に、本発明の平面画像表示装置用ガラス基板は、上記平面画像表示装置用ガラスから構成されることに特徴付けられる。
第十六に、本発明の平面画像表示装置用ガラス基板の製造方法は、上記平面画像表示装置用ガラス基板の製造方法であって、ガラス基板の成形方法がオーバーフローダウンドロー法であることに特徴付けられる。
ガラス組成を上記の範囲に限定した理由を以下に詳述する。なお、以下の%表示は、特に限定がある場合を除き、モル%表示を指す。
SiO2は、ガラスのネットワークフォーマーであり、その含有量は60〜90%、好ましくは63〜80%、より好ましくは65〜75%、更に好ましくは68〜73%である。SiO2の含有量が90%より多くなると、ガラスの溶融、成形が難しくなったり、熱膨張係数が小さくなりすぎて周辺材料との整合性が取り難くなったりする。一方、SiO2の含有量が60%より少なくなると、熱膨張係数が大きくなり過ぎてガラスの耐熱衝撃性が低下したり、ガラス化が困難になるとともに、誘電率が高くなる傾向がある。
Al2O3は、ガラスの歪点やヤング率を高める成分であり、その含有量は3〜10%、好ましくは3〜9%、より好ましくは4〜8%、更に好ましくは5〜7%である。Al2O3の含有量が10%より多くなると、ガラスの耐失透性が悪化するとともに、高温粘度が高くなり、ガラスの溶融性が悪化する傾向がある。Al2O3の含有量が3%より少なくなると、熱膨張係数が大きくなり、ガラスの耐熱衝撃性が低下したり、ガラスの歪点が低下する傾向があり、平面画像表示装置を製造する際の熱処理工程でガラス基板に割れが発生したり、熱変形や熱収縮が生じやすくなる。
B2O3は、ガラスの誘電率を低下させる成分であり、必須成分である。さらに、B2O3は、ガラスの溶融性を向上させ、失透を抑制する効果を有する成分であり、その含有量は0.01〜10%であり、好ましくは0.1〜10%、より好ましくは0.5〜8%、更に好ましくは1〜5%、最も好ましくは1.5〜3%である。B2O3の含有量が10%より多くなると、歪点が低下する傾向があり、平面画像表示装置を製造する際の熱処理工程でガラス基板に割れが発生したり、熱変形や熱収縮が生じやすくなる。また、B2O3の含有量が10%より多くなると、ヤング率が低下する傾向がある。一方、B2O3の含有量が0.01%より少なくなると、誘電率を低下させる効果が得られ難くなる。
Li2Oは、高温粘度を低下させ、熱膨張係数を調整する成分であり、その含有量は0〜4%、好ましくは0〜3%、より好ましくは0〜2%、更に好ましくは0〜1%、最も好ましくは実質的に含有しない。Li2Oの含有量が4%より多いと、歪点が著しく低下したり、熱膨張係数が高くなりすぎることに加えて、密度が上昇したり、耐失透性が悪化する傾向がある。なお、ここで「Li2Oを実質的に含有しない」とは、Li2Oの含有量が1000ppm以下の場合を指す。
Na2Oは、高温粘度を低下させ、熱膨張係数を調整する成分であるとともに、アルカリ金属酸化物の中ではヤング率を高める効果がある成分であり、その含有量は0〜7%、好ましくは0〜6%、より好ましくは0〜5%、更に好ましくは0〜4%である。Na2Oの含有量が7%より多くなると、歪点が低下したり、熱膨張係数が高くなりすぎる。また、高液相粘度のガラスを的確に得る観点からは、Na2Oの含有量を0.5%以上、1%以上、1.5%以上、特に2%以上とするのが好ましい。
K2Oは、高温粘度を低下させ熱膨張係数を調整する成分であるとともに、アルカリ金属酸化物の中では液相温度付近の粘度が下がりにくく、高液相粘度のガラスを得やすくする成分であり、その含有量は0〜8%、好ましくは0.1〜7%、より好ましくは0.5〜6%、更に好ましくは1〜5%、最も好ましくは1.5〜5%である。K2Oの含有量が8%より多くなると、歪点が低下したり、熱膨張係数が高くなりすぎる。また、高液相粘度のガラスを得る観点からは、K2Oの含有量を0.1%以上、0.5%以上、1%以上、特に1.5%以上とするのが好ましい。
MgOは、ガラスの歪点を高めると同時に、高温粘度を低下させる成分であり、その含有量は0〜3%、より好ましくは0〜1%、更に好ましくは0〜0.5%、最も好ましくは実質的に含有しない。MgOの含有量が3%より多くなると、密度や熱膨張係数が高くなり過ぎたり、耐失透性が悪化する傾向がある。また、ガラスの歪点を高めると同時に、高温粘度を低下させる効果を得る観点から、MgOの含有量を0.1%以上、あるいは0.5%以上とすれば、上記効果が得られやすいが、耐失透性を低下させない程度にその含有量を制限する必要がある。なお、ここで「MgOを実質的に含有しない」とは、MgOの含有量が1000ppm以下の場合を指す。
CaOは、歪点をあまり低下させることなく、高温粘度を低下させる成分であり、その含有量は0〜4%、より好ましくは0〜3.5%である。CaOの含有量が4%より多くなると、密度や熱膨張係数が高くなり過ぎたり、耐失透性が悪化する傾向がある。耐失透性の悪化を的確に抑制する観点からは、CaOを実質的に含有しないことが望ましい。なお、ここで「CaOを実質的に含有しない」とは、CaOの含有量が1000ppm以下の場合を指す。
SrOは、耐失透性を悪化させることなく、歪点をあまり低下させることなく、高温粘度を低下させる成分であり、その含有量は0〜15%、好ましくは2〜13%、より好ましくは4〜13%、更に好ましくは5〜13%、最も好ましくは6〜10%である。SrOの含有量が15%より多くなると、密度や熱膨張係数が高くなり過ぎたり、ガラス組成のバランスを欠いて、逆に耐失透性が悪化したりする。
BaOは、耐失透性を悪化させないことに加えて、歪点をあまり低下させることなく、高温粘度を低下させる成分であり、その含有量は0〜15%(好ましくは2〜13%、3〜10%、4〜10%、5〜9%)である。BaOの含有量が15%より高くなると、熱膨張係数が高くなりすぎたり、密度が高くなったり、ガラス組成のバランスを欠いて、逆に耐失透性が悪化したりする。
ZrO2は、歪点やヤング率を高める成分であり、その含有量は0〜8%(好ましくは、0.01〜8%、0.1〜7%、0.5〜6%、1〜5%、1〜4%)である。ZrO2の含有量が8%より多くなると、耐失透性が悪化したり、平均表面粗さ、うねり等のガラス基板の表面品位に悪影響を及ぼす虞が生じる。
MgO+CaO+SrO+BaOの合量は5〜20%とするのが好ましく、7〜18%がより好ましく、8〜14%が更に好ましい。MgO+CaO+SrO+BaOの合量が20%を超えると、ガラスの密度や熱膨張係数が高くなる傾向があるとともに、耐失透性も悪化する傾向がある。一方、MgO+CaO+SrO+BaOの合量が5%より少ないと、ガラスの溶融性が悪化したり、熱膨張係数が小さくなりすぎる。
また、モル分率でBaO/Al2O3の値を0.9〜1.2(好ましくは、0.95〜1.15)に設定すると、ガラスの耐失透性を悪化させることなく、高歪点化を達成できるため、好ましい。BaO/Al2O3のモル分率が2を超えると、歪点が低下し、密度や熱膨張係数が高くなりすぎる傾向がある。
さらに、BaO/Al2O3のモル分率を0.9〜1.2の範囲に設定して、耐失透性の悪化を抑制しつつ歪点を高くする効果は、モル分率でNa2O/K2Oの値を0〜2(好ましくは、0〜1.5、0.3〜1.4、0.7〜1.1、0.8〜0.9)の範囲に調整することで、より的確に享受することが可能となる。また、Na2O/K2Oのモル分率が2を超えると、歪点が低下したり、ガラス組成のバランスを欠いて、逆に失透が生じやすくなる。Na2O/K2Oのモル分率が小さくなると、Al2O3/BaOのモル分率を調整することによる上記効果が若干得られにくくなるため、Na2O/K2Oのモル分率を0.3以上にすることが更に好ましい。
ガラスのクラック発生率を低減するとともに、ガラスの歪点を高く保ち、熱膨張係数を高くしすぎない観点から、モル分率で(Na2O+K2O)/(MgO+CaO+SrO+BaO)の値を0〜1に設定することが好ましく、0.2〜0.8に設定することがより好ましく、0.3〜0.8に設定することが更に好ましく、0.5〜0.8に設定することが最も好ましい。質量分率で(Na2O+K2O)/(MgO+CaO+SrO+BaO)の値が1より大きいと、上記効果を的確に享受できない虞がある。
本発明の平面画像表示装置用ガラスは、上記成分以外にもガラスの特性を損なわない範囲で種々の成分を10%まで添加させることが可能である。例えば、ZnO、TiO2、CeO2、Y2O3、La2O3、Nb2O5をそれぞれ10%以下含有させてもよい。また、着色剤としてFe2O3、CoO、NiO、Cr2O3、Nd2O5をそれぞれ2%以下含有させても良い。さらに、清澄剤としてAs2O3、SO3、Sb2O3、SnO2、F、Clの群から選択された1種または2種以上を合量で0〜3%含有させてもよい。
上記組成範囲において、各成分の好ましい範囲を任意に組み合わせて、好ましい組成範囲を選択することは当然可能であるが、その中にあって、平面画像表示装置用ガラスとして、より好ましい組成範囲は、SiO2 60〜89%、Al2O3 4〜8%、B2O3 1〜5%、Li2O 0〜2%、Na2O 0〜5%、K2O 1〜5%、MgO 0〜1%、CaO 0〜4%、SrO 2〜13%、BaO 3〜10%を含有し、モル分率でBaO/Al 2 O 3 の値が0.9〜1.2であり、且つ30〜380℃における平均熱膨張係数が60〜80×10-7/℃、25℃、1MHzにおける誘電率が9未満とするガラスが挙げられる。ガラスの組成範囲を上記に規制すれば、耐失透性を大幅に改善できるとともに、誘電率の低いガラスを的確に得ることができる。
平面画像表示装置用ガラスの更に好ましい態様として、SiO2 68〜73%、Al2O3 5〜7%、B2O3 1.5〜3%、Li2O 0〜0.5%未満、Na2O 0〜4%、K2O 1.5〜5%、MgO 0〜0.5%、CaO 0〜4%、SrO 6〜10%、BaO 2〜8%を含有し、モル分率でBaO/Al 2 O 3 の値が0.9〜1.2であり、且つ30〜380℃における平均熱膨張係数が65〜75×10-7/℃、25℃、1MHzにおける誘電率が7.5以下とするガラスが挙げられる。ガラスの組成範囲を上記に規制すれば、耐失透性を顕著に改善できるとともに、誘電率の低いガラスをより的確に得ることができる。
本発明の平面画像表示装置用ガラスは、30〜380℃における平均熱膨張係数が50〜90×10-7/℃であり、好ましくは55〜85×10-7/℃、より好ましくは60〜80×10-7/℃である。良好にフリットシールを行い、平面画像表示装置を製造する際の成膜等の熱処理工程でのガラス基板の割れを確実に防止する観点から、65〜80未満×10-7/℃が好ましく、65〜75×10-7/℃がより好ましい。30〜380℃における平均熱膨張係数が50×10-7/℃より小さいと、前面ガラス基板と背面ガラス基板をフリットシールするための封着ガラスの熱膨張係数と整合が取れず、封着工程後にガラス基板に割れ等の問題が生じやすくなる。また、30〜380℃における平均熱膨張係数が90×10-7/℃より大きいと、平面画像表示装置に使用される他の周辺部材の熱膨張係数と整合が取れない虞がある。
本発明の平面画像表示装置用ガラスにおいて、25℃、1MHzにおける誘電率は9未満、好ましくは8.5以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7.5以下、最も好ましくは7以下である。ガラスの誘電率が9未満であると、ガラス基板表面に低誘電率の膜を形成しなくても、浮遊容量成分により、最初に充電電流が流れ、安定した電子放出が得られないといった事態が生じず、安定した電子放出特性を確保することができ、その結果、平面画像表示装置において、明るく鮮明な表示画像を安定して提供することが可能となる。さらに、本発明の平面画像表示装置用ガラス基板は、誘電率が9未満であるので、平面画像表示装置の発光に要する電流量を低減させることができ、平面画像表示装置の消費電力の低下にも寄与することができる。しかし、ガラスの誘電率が9以上であると、ガラス基板から浮遊容量成分が発生し、それが原因で充電電流が流れ、安定した電子放出特性を確保することができなくなり、高効率で且つ高速に応答する電子放出特性を長時間維持できなくなる。
本発明の平面画像表示装置用ガラスにおいて、密度は3.0g/cm3以下であることが好ましく、2.9g/cm3以下であるとより好ましい。ガラスの密度が低ければ低いほど、ガラスの軽量化を図ることができ、平面画像表示装置の軽量化に寄与することができる。密度が3.0g/cm3より大きいと、平面画像表示装置の軽量化に寄与し難くなる。
本発明の平面画像表示装置用ガラスにおいて、歪点は590℃以上(好ましくは600℃以上、610℃以上、620℃以上、630℃以上)が好ましい。歪点が590℃未満であると、平面画像表示装置を製造する際の成膜等の熱処理工程で、ガラス基板の熱収縮が生じ易くなり、ゲート電極等のパターニングのずれ等が生じ易くなる。
本発明の平面画像表示装置用ガラスにおいて、液相温度は1200℃以下が好ましく、1100℃以下がより好ましく、1080℃以下が更に好ましく、1050℃以下が最も好ましい。一般的に、オーバーフローダウンドロー法は、他の成形方法と比較してガラス成形時の粘度が高いため、ガラスの耐失透性が悪いと、成形中に失透ブツが発生し、ガラス基板に成形できなくなる虞がある。具体的には、少なくとも液相温度が1200℃より高いと、オーバーフローダウンドロー法の適用が困難になる。したがって、液相温度が1200℃より高いと、平面画像表示装置用ガラスの成形方法に不当な制約が課され、所望の表面形状のガラスを成形できなくなる虞が生じる。なお、液相温度が低いほど、ガラスの耐失透性は良好である。
本発明の平面画像表示装置用ガラスにおいて、液相粘度は104.5dPa・s以上が好ましく、105.0dPa・s以上がより好ましく、105.5dPa・s以上が更に好ましく、105.8dPa・s以上が最も好ましい。一般的に、オーバーフローダウンドロー法は、他の成形方法と比較して、ガラス成形時の粘度が高いため、ガラスの耐失透性が悪いと、成形中に失透ブツが発生し、ガラス基板に成形できなくなる虞がある。具体的には、少なくとも液相粘度が104.5dPa・s未満であると、オーバーフローダウンドロー法の適用が困難になる。したがって、液相粘度が104.5dPa・s未満であると、平面画像表示装置用ガラスの成形方法に不当な制約が課され、所望の形状のガラスを成形できなくなる虞が生じる。なお、液相粘度が高いほど、ガラスの耐失透性は良好である。
本発明の平面画像表示装置用ガラスにおいて、比ヤング率は25GPa/g・cm-3以上が好ましく、25.4GPa/g・cm-3以上がより好ましく、25.7GPa/g・cm-3以上が更に好ましい。比ヤング率が25GPa/g・cm-3未満であれば、FEDの製造工程、例えばカセットの出し入れの際、ガラス基板がたわんでガラス基板同士が接触し、それが原因でガラスに割れ等が発生しやすくなる。特に、大型で薄肉のガラス基板の場合、その傾向が顕著となる。
本発明の平面画像表示装置用ガラスにおいて、クラック発生率は70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、55%以下が更に好ましい。クラック発生率が70%より大きいと、ガラス基板に形成された膜に起因する応力によってガラス基板が割れたり、その他の機械的衝撃によってガラス基板が割れる虞がある。
本発明の平面画像表示装置用ガラスにおいて、高温粘度102.5dPa・sに相当する温度は1650℃以下が好ましく、1620℃以下がより好ましく、1600℃以下が更に好ましい。この温度が低いほど、溶融時にガラス中に存在する気泡の浮上速度が速くなるため、泡を低減し易くなり、泡品位が向上する。また、この温度が低いほど、炉体耐火物の耐久性も向上し、その結果、溶融炉等の耐久性向上に寄与することができる。高温粘度102.5dPa・sに相当する温度が1650℃よりも高いと、溶融時にガラス中に存在する気泡の浮上速度が遅くなるため、泡を低減し難くなり、泡品位が悪化する。また、高温粘度102.5dPa・sに相当する温度が1650℃よりも高いと、炉体耐火物の耐久性も低下し、その結果、溶融炉等の耐久性が低下し、ガラスの製造コストの高騰を招く。
本発明の平面画像表示装置用ガラスにおいて、平面画像表示装置はFEDであることが好ましい。本発明の平面画像表示装置用ガラスは、FED用ガラス基板に求められる特性を満足しているため、本用途に好適に使用することができる。特に、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、誘電率を小さくすることができることに加えて、ガラス基板の表面品位を向上させることができるだけでなく、熱膨張係数等の特性も同時に充足するため、本用途に好適に使用することが可能となる。したがって、本発明の平面画像表示装置用ガラスは、ガラス基板から浮遊容量成分が発生する事態を抑制し、安定な電子放出特性を確保することができる。その上、電子放出素子を形成する際、スパッタの精度を高めることができるため、精度の高いフォトリソグラフィーを行うことができ、且つ精度が高い回路パターンを形成することが可能となり、平面画像表示装置の信頼性確保(例えば、断線、ショートの発生確率を低減できること等)に寄与することができる。結果として、本発明の平面画像表示装置用ガラスを用いたFEDは、明るく鮮明な表示画像を安定して提供することが可能となる。
本発明の平面画像表示装置用ガラス基板において、平均表面粗さ(Ra)は、10Å以下であることが好ましく、7Å以下がより好ましく、4Å以下が更に好ましく、2Å以下が最も好ましい。平均表面粗さ(Ra)が10Åより大きいと、FED等の製造工程において、ゲート電極等の正確なパターニングを行うことが困難となり、その結果、回路電極が断線、ショートする確率が上昇し、平面画像表示装置の信頼性を担保し難くなる。本発明において、「平均表面粗さ(Ra)」は、SEMI D7−94「FPDガラス基板の表面粗さの測定方法」に準拠した方法により測定した値を指す。
本発明の平面画像表示装置用ガラス基板において、うねりは、0.1μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.03μm未満が更に好ましく、0.01μm以下が最も好ましい。さらに、理想的には、実質的にうねりが存在しないことが望ましい。近年、平面画像表示装置の大画面化や高精細化が進んでいる。平面画像表示装置の画面サイズが大きくなると、ガラス基板にうねりが存在した場合、平面画像表示装置の映像品位が損なわれる虞がある。したがって、うねりが0.1μmより大きいと、近年の平面画像表示装置の大画面化、高精細化の要請を満たすことが困難となる。うねりが0.1μmより大きいと、FED等の製造工程において、露光時に焦点があわず、精度の高いパターニングが行えず、結果としてゲート孔形状にバラツキが生じるために所望の円錐の形状が得られなくなる虞が生じる。電子放出素子では電界が集中する部分において、低電圧で効率的に電子の放出を行うことができるので、所望の円錐形状が得られない場合には、駆動電圧が高くなったり、電子が放出されないといった不具合が発生する虞が生じる。なお、本発明において、「うねり」は、触針式の表面形状測定装置を用いて、JIS B−0610に記載のWCA(ろ波中心線うねり)を測定した値であり、この測定は、SEMI STD D15−1296「FPDガラス基板の表面うねりの測定方法」に準拠した方法で測定し、測定時のカットオフは0.8〜8mm、ガラス基板の引き出し方向に対して垂直な方向に300mmの長さで測定したものである。
本発明の平面画像表示装置用ガラス基板において、最大板厚と最小板厚の差は20μm以下であることが好ましく、10μm以下がより好ましい。平面画像表示装置の画面サイズが大きくなると、ガラス基板の最大板厚と最小板厚の差が20μm以下である場合、画面上に大きな歪み(スジ)が生じ易くなり、結果として、画像が局所的に湾曲し、平面画像表示装置の映像品位が劣化する。したがって、ガラス基板の最大板厚と最小板厚の差が20μmより大きいと、近年の平面画像表示装置の大画面化、高精細化の要請を満たすことができなくなる。また、ガラス基板の最大板厚と最小板厚の差が20μmより大きいと、FED等の製造工程において、露光時に焦点があわず、精度の高いパターニングが行えず、結果としてゲート孔形状にバラツキが生じるために所望の円錐の形状が得られなくなる虞が生じる。電子放出素子では電界が集中する部分において、低電圧で効率的に電子の放出を行うことができるので、所望の円錐形状が得られない場合には、駆動電圧が高くなったり、電子が放出されないといった不具合が発生する虞が生じる。ここで、本発明において、「最大板厚と最小板厚の板厚差」は、レーザー式厚み測定装置を用いて、ガラス基板の任意の一辺に板厚方向からレーザーを走査することにより、ガラス基板の最大板厚と最小板厚を測定し、最大板厚の値から最小板厚の値を減じた値を指す。
本発明の平面画像表示装置用ガラス基板において、目標板厚に対する誤差が10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。ガラス基板の目標板厚に対する誤差が10μmより大きいと、ゲート電極のパターニングを精度良く行うことができなくなり、所定の条件で高品質の平面画像表示装置を安定して製造することが困難となり、平面画像表示装置の製造効率の低下を招く虞がある。なお、本発明において、「目標板厚に対する誤差」は、目標板厚から上記方法で得られる最小板厚を減じた値または上記方法で得られる最大板厚から目標板厚を減じた値のうち大きい方を指す。
本発明の平面画像表示装置用ガラス基板において、ガラス基板は、大型化の傾向にあるが、基板面積が大きくなると、基板中に失透物が現れる確率が高くなるとともに、ガラス基板に求められる表面品位が厳しくなることに加えて、ガラス基板の成形が困難となる。したがって、耐失透性等が良好な本発明の無アルカリガラス基板によれば、本発明が奏する効果を的確に享受することができ、特に、大型のガラス基板を作製する上で大きなメリットがある。例えば、基板面積が0.1m2以上(具体的には、320mm×420mm以上のサイズ)、特に0.5m2以上(具体的には、630mm×830mm以上のサイズ)、1.0m2以上(具体的には、950mm×1150mm以上のサイズ)、更には2.3m2以上(具体的には、1400mm×1700mm以上のサイズ)、3.5m2以上(具体的には、1750mm×2050mm以上のサイズ)4.8m2以上(具体的には、2100mm×2300mm以上のサイズ)と大型化するほど有利になる。
本発明の平面画像表示装置用ガラス基板において、平面画像表示装置はFEDであることが好ましい。本発明の平面画像表示装置用ガラス基板は、FED用ガラス基板に求められる特性を満足しているため、本用途に好適に使用することができる。特に、本発明の平面画像表示装置用ガラス基板は、オーバーフローダウンドロー法で成形することができるため、ガラス基板の表面品位を向上させることができるだけでなく、熱膨張係数等の特性も同時に充足するため、本用途に好適に使用することが可能となる。
本発明の平面画像表示装置用ガラスは、所望のガラス組成となるように調合したガラス原料を連続溶融炉に投入し、ガラス原料を加熱溶融し、脱泡した後、成形装置に供給した上で溶融ガラスを板状に成形し、徐冷することにより製造することができる。
表面品位が良好なガラス基板を製造する観点から、オーバーフローダウンドロー法で板状に成形することが好ましい。その理由は、オーバーフローダウンドロー法の場合、ガラス基板の表面となるべき面は桶状耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形されることにより、無研磨で表面品位が良好なガラス基板を成形できるからである。ここで、オーバーフローダウンドロー法は、溶融状態のガラスを耐熱性の桶状構造物の両側から溢れさせて、溢れた溶融ガラスを桶状構造物の下端で合流させながら、下方に延伸成形してガラス基板を製造する方法である。桶状構造物の構造や材質は、ガラス基板の寸法や表面精度を所望の状態とし、平面画像表示装置用ガラス基板用途で使用できる品位を実現できるものであれば、特に限定されない。また、下方への延伸成形を行うためにガラス基板に対してどのような方法で力を印加するものであってもよい。例えば、充分に大きい幅を有する耐熱性ロールをガラス基板に接触させた状態で回転させて延伸する方法を採用してもよいし、複数の対になった耐熱性ロールをガラス基板の端面近傍のみに接触させて延伸する方法を採用してもよい。本発明の平面画像表示装置用ガラスは、耐失透性が優れるとともに、成形に適した粘度特性を有しているため、オーバーフローダウンドロー法による成形を精度よく実行することができる。
本発明の平面画像表示装置用ガラス基板の製造方法は、オーバーフローダウンドロー法以外にも、種々の方法を採用することができる。例えば、フロート法、スロットダウンドロー法、オーバーフローダウンドロー法、リドロー法、ロールアウト法等の様々な成形方法を採用することができる。安価でガラス基板を製造する観点から、フロート法で板状に成形することが好ましい。その理由は、フロート法の場合、比較的安価に大型の板ガラスを得やすいためである。
以下、本発明を実施例の基づいて説明する。
表1、2において、試料No.1〜6、12、13は本発明の実施例を示しており、試料No.7〜11、14は本発明の参考例を示し、試料No.15は本発明の比較例を示している。
各試料は、次のようにして作製した。
まず表1、2の組成となるように各種ガラス原料を調合した。これらの原料を、白金ポットを用いて1580℃で5.5時間溶融した。その後、溶融ガラスをカーボン板の上に流し出して板状に成形し、各種の評価に供した。
このようにして作製した各試料について、平均熱膨張係数、誘電率、密度、歪点、液相温度、液相粘度、高温粘度、ヤング率、比ヤング率、クラック発生率を測定した。結果を表1、2に示す。
熱膨張係数は、ディラトメーターを用いて、30〜380℃における平均熱膨張係数を測定したものである。
誘電率は、ASTM C336−71に準拠した方法により測定した。
密度は、周知のアルキメデス法によって測定した。
歪点は、ASTM C336−71に準拠した方法により測定した。
液相温度の測定は、ガラスを粉砕し、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に48時間保持して、結晶の析出する温度を測定したものである。液相粘度は、液相温度における各ガラスの粘度を周知の白金引き上げ法で測定したものである。
高温粘度102.5dPa・sに相当する温度は、周知の白金球引き上げ法で測定した。
ヤング率は、共振法によって測定した。比ヤング率は、共振法によって得られたヤング率を密度で割った値である。
クラック発生率は、湿度30%、温度25℃に保持された恒温恒湿槽内において、荷重50gに設定した正方形四角錘形状のビッカース圧子を光学研磨したガラス表面に15秒間打ち込み、その15秒後に圧痕の4隅から発生するクラックの数をカウント(1つの圧痕につき最大4とする)する手順を、同一のガラスに対し、20回行った後、(総クラックカウント数/80)×100(%)として評価した。
表1、2から明らかなように、試料No.1〜14は、平均熱膨張係数が68〜73×10-7/℃、誘電率が7.0〜7.3、密度が2.81〜2.88g/cm3、歪点が591〜657℃、液相温度が980〜1150℃、液相粘度が104.6〜106.2dPa・s、高温粘度102.5dPa・sに相当する温度が1489〜1555℃、ヤング率が73〜76GPa、比ヤング率が25.5〜26.7GPa/(g/cm3)、クラック発生率が49〜55%であり、いずれの試料も平均熱膨張係数が50〜90×10-7/℃、25℃、1MHzにおける誘電率が9未満、密度が3.0g/cm3以下、歪点が590℃以上、液相温度が1200℃以下、液相粘度が104.5dPa・s以上、高温粘度102.5dPa・sに相当する温度が1600℃以下、比ヤング率が25GPa/(g/cm3)以上、クラック発生率が70%以下であった。
表2から明らかなように、試料No.15は歪点が510℃と低く、耐熱性が乏しかった。