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JP4937637B2 - 蓚酸バリウムチタニルの製造方法及びチタン酸バリウムの製造方法 - Google Patents

蓚酸バリウムチタニルの製造方法及びチタン酸バリウムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、特に、圧電体、オプトエレクトロニクス材、誘電体、半導体、センサー等の機能性セラミックの原料として有用な蓚酸バリウムチタニルの製造方法及びこれを用いたチタン酸バリウムの製造方法に関するものである。
従来、チタン酸バリウムは固相法や水熱合成法、蓚酸塩法、アルコキシド法等の湿式方法で製造されている。このうち蓚酸塩法は、TiCl4とBaCl2との水溶液を、約80℃のH224水溶液に攪拌下に滴下して、BaとTiのモル比が1の蓚酸バリウムチタニルを得、該蓚酸バリウムチタニルを仮焼する方法が一般的である。この蓚酸塩法の特徴は、得られる蓚酸バリウムチタニルの組成が均一であり、また安定したモル比で目的物を収率良く得られることである。多くの場合そのモル比(Ba/Ti)は略1となっている。しかしながら、その反面、モル比(Ba/Ti)が1未満の蓚酸バリウムチタニルを収率良く、且つ安定した品質で得る事は困難である。またBaとTiのモル比が略1の場合は、仮焼温度に対するチタン酸バリウムの比表面積変化が大きく、微細なものを安定して得ることが難しいと言う問題もある。
例えば塩化バリウムの水溶液を、蓚酸とオキシ塩化チタンの混合物を含む水溶液に20〜60℃の範囲内の温度で激しくかきまぜながら滴下し、得られる沈澱物を仮焼する方法等が提案されている(特許文献1参照)。しかし、この方法で得られる蓚酸バリウムチタニルを、誘電体セラミック材料のチタン酸バリウム系セラミックの製造原料として用いる場合、特に好適な範囲のTiに対するBaのモル比(Ba/Ti)である0.990〜0.999のものが安定して得られにくいという課題がある。
また本出願人も先に、蓚酸塩法により微粒のチタン酸バリウムを製造する方法として、平均粒径50〜300μmの蓚酸バリウムチタニルを水で洗浄する第一工程、該洗浄後の蓚酸バリウムチタニルをスラリーとした後、湿式粉砕処理して、平均粒径0.05〜1μmの蓚酸バリウムチタニルを得る第二工程、及び該平均粒径0.05〜1μmの蓚酸バリウムチタニルを700〜1200℃で仮焼する第三工程を有する方法を提案した(特許文献2参照)。
特開昭63−103827号公報 特開2004−123431号公報
更に、本発明者らは、蓚酸塩法によりチタン酸バリウムを製造する方法について鋭意研究を進める中で、TiとBaのモル比において、Tiを過剰に含むTiリッチな蓚酸バリウムチタニルを仮焼すると、チタン酸バリウムを得る過程での仮焼温度に対する比表面積変化を小さく抑えられることを知見した。従来、蓚酸塩法を用いてTiを過剰に含む蓚酸バリウムチタニルを安定した品質のものを高純度で、且つ高収率で得ることは困難であった。
従って本発明の目的は、仮焼温度に対する比表面積変化を低く抑えられる高純度な蓚酸バリウムチタニルを、蓚酸塩法よって工業的に有利に製造する方法を提供することにある。また本発明の目的は、安定した品質のチタン酸バリウムの製造方法を提供することにある。
本発明が提供しようとする第1の発明は、四塩化チタン及び塩化バリウムを含む水溶液(A液)を、蓚酸及び四塩化チタンを含む水溶液(B液)に添加し平均粒径が100〜300μmの蓚酸バリウムチタニル粒子を生成させ、次いで50℃以上で熟成反応を行うことを特徴とする蓚酸バリウムチタニルの製造方法である。
また、本発明が提供しようとする第2の発明は、四塩化チタン及び塩化バリウムを含む水溶液(A液)を、蓚酸及び四塩化チタンを含む水溶液(B液)に添加し平均粒径が100〜300μmの蓚酸バリウムチタニル粒子を生成させ、次いで50℃以上で熟成反応を行い、該熟成反応により得られる蓚酸バリウムチタニルを仮焼することを特徴とするチタン酸バリウムの製造方法である。
本発明によれば、仮焼温度に対する比表面積変化が低く抑えられる蓚酸バリウムチタニルを安定した品質のものを高純度で且つ高収率で得ることができる。また、このようにして得られた蓚酸バリウムチタニルを仮焼することにより、チタン酸バリウムを工業的に有利に製造することができる。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の製造方法は、四塩化チタン及び塩化バリウムを含む水溶液(A液)を、蓚酸及び四塩化チタンを含む水溶液(B液)に添加し平均粒径が100〜300μmの蓚酸バリウムチタニル粒子を生成させ、次いで50℃以上で熟成反応を行うことを特徴とするものである。本発明の製造方法に従い製造される蓚酸バリウムチタニルは、好適にはTiに対するBaのモル比(以下「Ba/Tiモル比」という。)が1未満のものとなる。
本発明においては、B液に含有される四塩化チタンの含有量が高くなるに従って、Ba/Tiモル比が低い蓚酸バリウムチタニルが得られる傾向がある。基本的には、A液をB液に添加した後の反応液中のBa/Tiモル比が、0.85〜1.20の範囲、好ましくは後述する「(1)及び(2)の製法」に従ってBa/Tiモル比がBa過剰の状態かあるいはTi過剰の状態となるようにA液及びB液の組成を決定し、当該範囲を満たすようにA液をB液に添加することが、特に誘電体材料として有用な蓚酸バリウムチタニルが得られる点で好ましい。A液をB液に添加した後の反応液中のBa/Tiモル比は、A液中のTiのモル数(T1)及びB液中のTiのモル数(T2)の総和と、A液中のBaのモル数(b)との関係式であるb/(T1+T2)から算出される。
本発明において後述するような誘電体セラミック材料の原料として好適なBa/Tiのモル比が0.990〜0.999の蓚酸バリウムチタニルを得る特に好ましい実施態様の一例を示せば以下の(1)及び(2)の通りである。
(1)誘電体セラミック材料の原料として有用なBa/Tiのモル比が0.990〜0.999の蓚酸バリウムチタニルを得る上で、B液中の組成を特定範囲に設定し、A液の組成を適宜調製して目的とする蓚酸バリウムチタニルを得る方法である。この場合、A液として、塩化バリウム及び四塩化チタンを含み、塩化バリウムの含有量がBaとして「b」モル、四塩化チタンの含有量がTiとして「T1」モルである水溶液を調製する。B液として、蓚酸及び四塩化チタンを含み、蓚酸の含有量が「s」モル、四塩化チタンの含有量がTiとして「T2」モルである水溶液を調製する。A液のB液への添加を、添加後の反応液のBa/Tiモル比、即ち{b/(T1+T2)}がBa過剰の状態、好ましくは1.02以上1.20以下で、更にBaと蓚酸のモル比(b/s)が0.34〜0.54となるように行い反応させる(以下、「(1)の製法」と略記する。)。
(2)誘電体セラミック材料の原料として有用なBa/Tiのモル比が0.990〜0.999の蓚酸バリウムチタニルを得る上で、A液中の組成を特定範囲に設定し、B液の組成を適宜調整して目的とする蓚酸バリウムチタニルを得る方法である。この場合、A液のB液への添加を、添加後の反応液のBa/Tiモル比、即ち{b/(T1+T2)}がTi過剰の状態、好ましくは0.85以上0.98以下で、更にBaと蓚酸のモル比(b/s)が0.34〜0.54となるように行い反応させる(以下、「(2)の製法」と略記する。)。
「(1)の製法」及び「(2)の製法」について更に詳しく説明する。「(1)の製法」において、A液中に含有させる四塩化チタンの量と、B液中に含有させる四塩化チタンの量の配合割合は、特に制限されるものではない。基本的に、B液に含有させる四塩化チタンの配合割合が高くなるに従ってBa/Tiモル比の低い蓚酸バリウムチタニルが得られる傾向がある。得られる蓚酸バリウムチタニルにおけるBa/Tiモル比が0.990〜0.999であると、該蓚酸バリウムチタニルを原料として得られるチタン酸バリウムに、誘電体セラミック材料として優れた誘電特性を付与することができる。この観点から、本発明においては、Ba/Tiモル比が前記範囲内である蓚酸バリウムチタニルを生成させることが好ましい。前記範囲内のBa/Tiモル比を有する蓚酸バリウムチタニルは、B液中にBaとの反応当量のTiを1〜50%含有させ、その反応当量の残さ分を、A液で調製して反応を行えばよい。なお、本発明において前記「Baとの反応当量のTi」とは、Ba/Tiのモル比で1.02以上1.20以下をいう。
Ba/Tiモル比が0.990〜0.999である蓚酸バリウムチタニルを生成させるために好ましいA液の具体的な組成は、塩化バリウムがBaとして0.55〜0.65モル/L、四塩化チタンがTiとして0.25〜0.60モル/Lで、BaとTiのモル比(Ba/Ti)が好ましくは1.02〜2.30である。一方、B液の具体的な組成は、蓚酸が1.40〜1.75モル/L、四塩化チタンがTiとして0.02〜0.40モル/Lで、Tiと蓚酸のモル比(Ti/蓚酸)が0.01〜0.25である。
「(1)の製法」では、A液をB液に添加後の反応液中のバリウムとチタンのモル比{b/(T1+T2)}が好ましくは1.02以上1.20以下で、バリウムと蓚酸のモル比(b/s)が0.34〜0.54となるようにA液をB液へ添加し、後述する反応条件にて反応を行えばよい。なお、以下、特に断らない限り、「b」、「T1」、「T2」、「s」の各記号は前記と同義である。
一方、「(2)の製法」において、A液中に含有させる四塩化チタンの量とB液中に含有させる四塩化チタンの量は、A液をB液に添加後の反応液中のバリウムとチタンのモル比{b/(T1+T2)}が好ましくは0.85以上0.98以下の範囲であれば特に制限されるものではない。基本的に、B液に含有させる四塩化チタンの配合割合が高くなるに従って、Ba/Tiモル比が低い蓚酸バリウムチタニルが得られる傾向がある。上述した通り、得られる蓚酸バリウムチタニルにおけるBa/Tiモル比が0.990〜0.999であると、該蓚酸バリウムチタニルを原料として得られるチタン酸バリウムに、誘電体セラミック材料として優れた誘電特性を付与することができる。この観点から、Ba/Tiモル比が前記範囲の蓚酸バリウムチタニルを生成させることが好ましい。このようなBaとTiのモル比を有する蓚酸バリウムチタニルを得るには、「(2)の製法」においてもA液及びB液の各組成は任意に設定することができるが、原料調製液の組成調製の簡易性及び操作性を考えれば、B液として、四塩化チタンがTiとして0.01〜0.20モル/L、蓚酸が1.50〜1.75モル/Lで、Tiと蓚酸のモル比(Ti/蓚酸)が0.01〜0.15であるものを使用し、A液に組成調製に必要なTiを含有させることが好ましい。通常、A液の具体的な組成は、塩化バリウムがBaとして0.55〜0.65モル/L、四塩化チタンがTiとして0.45〜0.65モル/Lで、BaとTiのモル比(Ba/Ti)が好ましくは1.02〜1.20の範囲に調製したものを使用する。
次いで、「(2)の製法」ではA液をB液に添加後の反応液中のバリウムとチタンのモル比{b/(T1+T2)}が好ましくは0.85以上0.98以下で、バリウムと蓚酸のモル比(b/s)が0.34〜0.54となるようにA液をB液へ添加し、後述する反応条件にて反応を行えばよい。「(1)及び(2)の製法」のうち、本発明では特に「(1)の製法」がTiの反応率が特に高くなり工業的に有利に用いられる。
「(1)及び(2)の製法」において、A液のB液への添加は攪拌下に行うことが好ましい。攪拌速度は、添加開始から反応終了までの間に生成する蓚酸バリウムチタニルを含むスラリーが常に流動性を示す状態であればよく、特に限定されるものではない。
「(1)及び(2)の製法」において、反応は、生成される蓚酸バリウムチタニル粒子の平均粒径が100〜300μmの範囲、好ましくは100〜200μm、さらに好ましくは100〜150μmの範囲となるように条件を設定することが好ましい。当該範囲の平均粒径を有する蓚酸バリウムチタニルは、結晶粒が大きいことに起因して、水で洗浄したときにBa及びTiの溶出が少ないという利点がある。その上、塩素等の不純物を効率的に除去できるという利点もある。平均粒径が100μm未満の蓚酸バリウムチタニルは、水で洗浄しても粒子中に取り込まれた塩素等の不純物を150ppm以下まで低減させ難い。また、Ba及びTiの溶出に起因して組成のバラツキが生じやすい。平均粒径が300μmを超える蓚酸バリウムチタニルは、以後の仮焼、粉砕工程において一次径への解砕が困難となり、粒径のバラツキが大きくなる傾向にある。なお、本発明において蓚酸バリウムチタニルの平均粒径とは、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置で測定した値をいう。
本発明では 「(1)及び(2)の製法」において、前記範囲内の平均粒径の蓚酸バリウムチタニルが生成されるように、各反応条件を設定することが好ましい。具体的には「(1)及び(2)の製法」では、反応系に連続的又は断続的に供給するA液の添加時間を長くとったり、添加温度を高くしたりすることにより、生成する蓚酸バリウムチタニルの粒径を大きくすることができる。この観点から、B液は、予め通常50〜90℃、好ましくは55〜70℃となるまで加温しておくことが好ましい。また、A液のB液への添加時間を好ましくは0.5〜5時間、更に好ましくは1〜4時間とし、且つ一定速度で連続的に行うと、得られる蓚酸バリウムチタニルにおけるTiとBaのモル比のバラツキが小さくなり、安定した品質のものとなる。更に、後述する熟成反応を行うことにより、前記範囲の平均粒径で、高純度な蓚酸バリウムチタニルを短時間で得ることができる。なお、A液の温度は特に限定されないが、B液の加熱温度と同様の範囲内にあると、反応操作が容易となるので好ましい。
A液の添加終了後、引き続き反応を行う(以下、「熟成反応」と呼ぶ。)。本発明では、この熟成反応を50℃以上で行うことも重要な要件の1つとなる。即ち50℃以上で熟成反応を行うと、生成する蓚酸バリウムチタニルの粒成長が抑制されると共に反応が完結するので、前記範囲内の平均粒径を有し、塩素含有量が150ppm以下で、TiとBaのモル比のバラツキが少ない所望の蓚酸バリウムチタニルを得ることができる。
熟成条件は、熟成温度が通常は50℃以上、好ましくは50〜90℃、さらに好ましくは55〜70℃である。熟成温度とは、A液添加後における反応液全体の温度をいう。熟成時間は好ましくは0.5〜10時間、更に好ましくは1〜5時間である。
熟成終了後は、常法により固液分離し、次いで水で洗浄する。洗浄方法は特に制限されるものではない。リパルプ等で洗浄を行うと洗浄効率がよいので好ましい。次いで、乾燥、必要により粉砕して蓚酸バリウムチタニルを得る。
かくして得られる蓚酸バリウムチタニルの好ましい物性としては、平均粒径が100〜300μm、好ましくは100〜200μm、さらに好ましくは100〜150μmである。該蓚酸バリウムチタニルの組成は、BaとTiのモル比(Ba/Ti)が1未満、好ましくは0.990〜0.999である。
本発明の製造方法で得られる蓚酸バリウムチタニルは、誘電体セラミック材料のチタン酸バリウム系セラミックの製造原料として好適に用いることが出来る。本発明のチタン酸バリウムの製造方法は以下の通りである。
本発明のチタン酸バリウムの製造方法は、前述の方法で得られた熟成反応終了後の蓚酸バリウムチタニルを仮焼することを特徴とするものである。本発明では、必要により、更に微粒なチタン酸バリウムを得ることを目的として、仮焼を行う前に、蓚酸バリウムチタニルをボールミル、ビーズミル等の湿式で粉砕処理し、平均粒径が好ましくは0.01〜1μm、更に好ましくは0.05〜0.8μmとなるまで粉砕処理を行ってもよい。湿式粉砕処理で用いる溶媒としては、蓚酸バリウムチタニルに対して不活性であるものが用いられる。例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン、アセトン、塩化メチレン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド及びジエチルエーテル等が挙げられる。このうち、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン、アセトン、塩化メチレン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル等の有機溶媒で、且つBa及びTiの溶出が少ないものを用いると、結晶性の高いペロブスカイト型チタン酸バリウムを得ることができるので好ましい。特にエタノールを用いると、結晶性の優れたチタン酸バリウムを、800〜950℃程度の低温域で安価に製造することができるので好ましい。
最終製品に含まれる蓚酸由来の有機物は、材料の誘電体特性を損なうとともに、セラミック化のための熱工程における挙動の不安定要因となるので好ましくない。従って、本発明では仮焼により蓚酸バリウムチタニルを熱分解して目的とするチタン酸バリウムを得ると共に、蓚酸由来の有機物を十分除去する必要がある。仮焼条件は、仮焼温度が好ましくは600〜1200℃、更に好ましくは800〜1100℃である。仮焼温度が600℃未満では、単一相のチタン酸バリウムが得られにくい。一方、仮焼温度が1200℃を超えると、粒径のバラツキが大きくなる。仮焼時間は好ましくは2〜30時間、更に好ましくは5〜20時間である。仮焼の雰囲気は特に制限されず、大気中又は不活性ガス雰囲気中の何れであってもよい。
仮焼は所望により何度行ってもよい。或いは、粉体特性を均一にする目的で、一度仮焼したものを粉砕し、次いで再仮焼を行ってもよい。
仮焼後、適宜冷却し、必要に応じ粉砕してチタン酸バリウムの粉末を得る。必要に応じて行われる粉砕は、仮焼して得られるチタン酸バリウムがもろくブロック状のものである場合等に適宜行うが、チタン酸バリウムの粒子自体は下記特定の平均粒径、BET比表面積を有するものである。即ち、前記で得られるチタン酸バリウムの粉末は、走査型電子顕微鏡写真(SEM)から求められる平均粒径が好ましくは0.05〜5μm、更に好ましくは0.1〜2μmである。BET比表面積は、好ましくは1〜20m2/g、更に好ましくは2〜15m2/gである。更に、本発明の製造方法で得られるチタン酸バリウムの組成は、BaとTiのモル比(Ba/Ti)が1未満、特に0.990〜0.999であることが好ましい。
本発明の製造方法で得られるチタン酸バリウムには、必要により誘電特性や温度特性を調製する目的で、副成分元素含有化合物を該チタン酸バリウムに添加し副成分元素を含有させることができる。用いることができる副成分元素含有化合物としては、例えば、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの希土類元素、Ba、Li、Bi、Zn、Mn、Al、Si、Ca、Sr、Co、Ni、Cr、Fe、Mg、Ti、V、Nb、Mo、W及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物が挙げられる。
副成分元素含有化合物は無機物又は有機物のいずれであってもよい。例えば、前記の元素を含む酸化物、水酸化物、塩化物、硝酸塩、蓚酸塩、カルボン酸塩及びアルコキシド等が挙げられる。副成分元素含有化合物がSi元素を含有する化合物である場合は、前記酸化物等に加えて、シリカゾルや珪酸ナトリウム等も用いることができる。副成分元素含有化合物は1種又は2種以上適宜組み合わせて用いることができる。その添加量や添加化合物の組み合わせは、常法に従って行えばよい。
チタン酸バリウムに前記副成分元素を含有させるには、例えば、該チタン酸バリウムと該副成分元素含有化合物を均一混合後、焼成を行えばよい。或いは、蓚酸バリウムチタニルと前記副成分元素含有化合物を均一混合後、仮焼を行ってもよい。
本発明に従い得られたチタン酸バリウムを用いて例えば積層セラミックコンデンサを製造する場合には、先ず、チタン酸バリウムの粉末を、前記した副成分元素を含め従来公知の添加剤、有機系バインダ、可塑剤、分散剤等の配合剤と共に適当な溶媒中に混合分散させてスラリー化し、シート成形を行う。これにより、積層セラミックコンデンサの製造に用いられるセラミックシートを得る。該セラミックシートから積層セラミックコンデンサを作製するには、先ず、該セラミックシートの一面に内部電極形成用導電ペーストを印刷する。乾燥後、複数枚の前記セラミックシートを積層し、厚み方向に圧着することにより積層体とする。次に、この積層体を加熱処理して脱バインダ処理を行い、焼成して焼成体を得る。さらに、該焼成体にNiペースト、Agペースト、ニッケル合金ペースト、銅ペースト、銅合金ペースト等を塗布し焼き付けて、積層コンデンサが得られる。
また、本発明に従い得られたチタン酸バリウムの粉末を、例えばエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂に配合して、樹脂シート、樹脂フィルム、接着剤等とすると、プリント配線板や多層プリント配線板等の材料、内部電極と誘電体層との収縮差を抑制するための共材、電極セラミック回路基板、ガラスセラミックス回路基板、回路周辺材料及び無機EL用の誘電体材料として用いることができる。
また、本発明に従い得られたチタン酸バリウムは、排ガス除去、化学合成等の反応時に使用される触媒や、帯電防止、クリーニング効果を付与する印刷トナーの表面改質材として好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〜5及び比較例1〜3:蓚酸バリウムチタニルの製造〕
塩化バリウム2水塩、四塩化チタン水溶液、蓚酸2水塩及び純水を用いて、表1に示す組成のA液及びB液を調製した。次いで、B液を60℃に加温保持し、A液を室温(25℃)で120分かけて攪拌下にB液に添加した。添加量は表1に示す通りである。添加完了後の反応液におけるTi、Ba、蓚酸イオンのモル比は表2に示す通りである。添加完了後、更に60℃で1時間攪拌下に熟成した。冷却後、濾過して蓚酸バリウムチタニルを回収した。
〔比較例4:蓚酸バリウムチタニルの製造〕
塩化バリウム2水塩、四塩化チタン水溶液、蓚酸2水塩及び純水を用いて、表1に示す組成のA液及びB液を調製した。次いで、B液を30℃に加温保持し、A液を室温(25℃)で120分かけて攪拌下にB液に添加した。添加量は表1に示す通りである。添加完了後の反応液におけるTi、Ba、蓚酸イオンのモル比は表2に示す通りである。添加完了後、更に30℃で1時間攪拌下に熟成した。冷却後、濾過して蓚酸バリウムチタニルを回収した。
Figure 0004937637
Figure 0004937637
次いで、回収した蓚酸バリウムチタニルを純水でリパルプして入念に洗浄した。その後105℃で2時間乾燥して蓚酸バリウムチタニルの粉末を得た。得られた蓚酸バリウムチタニルの諸物性を表3に示す。BaとTiのモル比は蛍光X線で測定した。平均粒径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置で測定した。塩素含有量はイオンクロマトグラフィー法で測定した。また、BaとTiの反応率を求め、その結果を表3に併記した。反応率とは、反応終了時に溶出しているBaとTiをICPで測定し、その溶出分を未反応分とし、仕込量からその未反応分を差し引いたものを反応分とし、仕込みの百分率として表わしたものである。この反応率が高い方が未反応で残存するBa及びTiの成分が少なく反応効率及び収率が高いことを示す。
Figure 0004937637
表3の結果より、本発明の製造方法を用いて得られる蓚酸バリウムチタニルは、Ba/Tiモル比が0.990〜0.999のものであることが判る。Ba/Tiモル比が0.990〜0.999の蓚酸バリウムチタニルが、誘電体材料として有用なチタン酸バリウムの原料として好ましいものであることは、先に述べた通りである。これに対して、必要量のTiを全量B液に予め仕込んで反応を行った比較例2の蓚酸バリウムチタニルや、A液に必要量のTiを全量仕込んで反応を行った比較例1の蓚酸バリウムチタニルは、Ba/Tiモル比が0.990〜0.999となっていないことが分かる。更に、比較例3ではTiの反応率が低下していることが分かる。また、熟成温度を30℃とした比較例4では塩素含有量が多くなっていることが分かる。
〔実施例6〜10及び比較例5〜6:チタン酸バリウムの製造〕
実施例1〜6、比較例1、4で得られた蓚酸バリウムチタニル試料の5gを、大気中、800℃で5時間又は1000℃で5時間仮焼した。冷却後、解砕してそれぞれチタン酸バリウムの粉末を得た。得られたチタン酸バリウムの諸物性を表4に示した。BaとTiのモル比、平均粒径は前記と同様な方法で求めた。比表面積はBET法で求めた。
Figure 0004937637
表4の結果より、本発明にかかる製法を用いない蓚酸バリウムチタニル(比較例1、4)を原料とするチタン酸バリウム(比較例5〜6)は、仮焼温度に対する比表面積変化が大きくなっていることが分かる。これに対して本発明にかかる製法を用いた蓚酸バリウムチタニル(実施例1〜5)を原料とするチタン酸バリウム(実施例6〜10)は、仮焼温度に対する比表面積変化が低く抑えられており、比表面積の安定したチタン酸バリウムを製造できることが分かる。

Claims (5)

  1. 四塩化チタン及び塩化バリウムを含む水溶液(A液)を、蓚酸及び四塩化チタンを含む水溶液(B液)に添加し平均粒径が100〜300μmの蓚酸バリウムチタニル粒子を生成させ、次いで50℃以上で熟成反応を行うことを特徴とする蓚酸バリウムチタニルの製造方法。
  2. 前記A液の前記B液への添加は、添加終了後の反応液中のTiとBaのモル比(Ba/Ti)が0.85〜0.98又は1.02〜1.20となるように行う請求項記載の蓚酸バリウムチタニルの製造方法。
  3. 請求項1の方法によって製造された蓚酸バリウムチタニル。
  4. Tiに対するBaのモル比(Ba/Ti)が0.990〜0.999である請求項記載の蓚酸バリウムチタニル。
  5. 四塩化チタン及び塩化バリウムを含む水溶液(A液)を、蓚酸及び四塩化チタンを含む水溶液(B液)に添加し平均粒径が100〜300μmの蓚酸バリウムチタニル粒子を生成させ、次いで50℃以上で熟成反応を行い、該熟成反応より得られる蓚酸バリウムチタニルを仮焼することを特徴とするチタン酸バリウムの製造方法。
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