JP4924784B2 - 電子輸送材料および該電子輸送材料を用いた有機発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、平面表示パネルやこれに用いられるバックライト用の有機発光素子(OLED)用電子輸送材料及びその製造方法及び該電子輸送材料を用いたOLED及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機発光素子は、1987年にコダック社のC.W.Tangらにより高輝度の発光が示されて(特開昭63−264692、Appl.Phys.Lett.,51巻,913頁,1987年)以来、材料開発、素子構造の改良が急速に進み、最近になってカーオーディオや携帯電話用のディスプレイなどから実用化が始まった。この有機ELの用途を更に拡大するために、発光効率向上、耐久性向上のための材料開発、フルカラー表示の開発などが現在活発に行われている。特に、中型パネルや大型パネル、あるいは照明用途への展開を考える上では発光効率の向上による更なる高輝度化が必要である。
【0003】
これらの発光材料としては従来からアルミキノリニウム錯体(AlQ3)等の金属錯体が、発光効率がよい為、発光強度が高く、よく用いられてきた。また、Tangらは発光材料の発光効率を上げる為に、発光層とは別にトリフェニルアミン誘導体等のホール輸送層やオキサジアゾ−ル誘導体等の電子輸送層等の電荷輸送層を設けた多層構造素子を提案している。しかしながら、これらに用いられてきた材料はいずれも低分子化合物で、これら低分子化合物を発光層に形成するには真空蒸着等の手法が用いられ、大面積化や素子の生産工程でデメリットとなっていた。
【0004】
一方、R.H.Friendらはポリパラフェニレンビニレン(PPV)やこの誘導体のようなπ電子共役系高分子が発光材料となることを見出し(Nature,247巻,539頁,1990年)、時計のバックライト等に一部用いられ始めている。これら高分子材料はキャスティング法での成膜ができるため生産工程上のメリットとなるだけでなく、低分子に比べて耐久性が良好であるというメリットを有する。しかしながらこれらは低分子系に比べ、発光効率が低いというデメリットを有する。また、発光効率を改善するための多層構造素子に用いる電荷輸送層の材料も限られていた。高分子ホール輸送材料としては、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール等、いくつかの材料が検討されてきたが、高分子電子輸送材料はほとんど検討されていない。特開平7−053954号公報には低分子キノキサリン誘導体を発光層に用いた有機発光素子が提案されている。
【0005】
また、これらで検討された発光材料で利用されているのは低分子、高分子に限らず、励起一重項状態からの発光、すなわち蛍光であり、月刊ディスプレイ,1998年10月号別冊「有機ELディスプレイ」,58頁によれば、電気的励起における励起一重項状態と励起三重項状態の励起子の生成比が1:3であることから、有機ELにおける発光の内部量子効率は25%が上限とされてきた。これに対し、M.A.Baldoらは励起三重項状態から燐光発光するイリジウム錯体や白金錯体等を用いることにより外部量子効率7.5%(外部取り出し効率を20%と仮定すると内部量子効率は37.5%)を得、従来上限値とされてきた25%という値を上回ることが可能なことを示した(Appl.Phys.Lett.,75巻,4頁,1999年、WO00/70655、WO00/57676)。しかし、ここで用いられているイリジウム錯体のように常温で安定に燐光を発する材料は極めて稀であるため材料選択の自由度が狭く、また実際の使用に当たっては特定のホスト化合物にドープして使用する必要があるなど、ディスプレイの仕様を満たすための材料選定が極めて困難であるという欠点を有していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、有機発光素子の安定性向上、生産性向上に効果のある高分子系材料を用いた高輝度有機発光素子はまだ存在しない。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決し、高輝度、高耐久性、生産性の優れた有機発光素子、及びこれに用いられる高分子系電子輸送材料、及びこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく種々検討した結果、キノキサリン構造を含む重合体がN型で安定で、電子輸送能が高く、また高分子量で耐熱性、耐酸化還元性等の耐久性に優れ、溶媒可溶性で加工性に優れる為、有機発光素子の高分子電子輸送材料として好適であり、これを電子輸送層に用いた有機発光素子は高輝度大面積化が可能で、耐久性、生産性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[15]に示した電子輸送材料、その製造方法、有機発光素子、およびその製造方法に関する。
【0010】
[1] モノマーの一種類として一般式(7)で表される重合性官能基を有するキノキサリン系化合物を重合して得られる、一般式(1)で表されるキノキサリン構造を側鎖に含む重合体を含有することを特徴とする電子輸送材料。
【0011】
【化9】
(式中、R31は水素原子を表す。R32は炭素数が6以上20以下のアリーレン基を表す。R33〜R37はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、ニトロ基、酢酸メチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロエチル基、フェニル基、ナフチル基またはチエニル基を表す。)
【化10】
(式中、R 3 〜R6の内、少なくとも一つは炭素数が6以上20以下のアリーレン基であり、R 3 〜R 6 の内、残りの基およびR 1 、R 2 はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、ニトロ基、酢酸メチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロエチル基、フェニル基、ナフチル基またはチエニル基を表す。)
【0019】
[2] モノマーの一種類として一般式(7)で表される重合性官能基を有するキノキサリン系化合物を重合することを特徴とする、一般式(1)で表されるキノキサリン構造を側鎖に含む重合体を含有する電子輸送材料の製造方法。
【化11】
(式中、R31は水素原子を表す。R32は炭素数が6以上20以下のアリーレン基を表す。R33〜R37はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、ニトロ基、酢酸メチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロエチル基、フェニル基、ナフチル基またはチエニル基を表す。)
【化12】
(式中、R 3 〜R6の内、少なくとも一つは炭素数が6以上20以下のアリーレン基であり、R 3 〜R 6 の内、残りの基およびR 1 、R 2 はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、ニトロ基、酢酸メチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロエチル基、フェニル基、ナフチル基またはチエニル基を表す。)
【0020】
[3] [1]に記載の電子輸送材料を用いることを特徴とする有機発光素子。
[4] 発光層、電子輸送層の少なくとも2層構造からなる有機発光素子において、[1]に記載の電子輸送材料が厚み100Å以上5000Å以下で形成された電子輸送層を用いることを特徴とする有機発光素子。
[5] 発光材料と電子輸送材料が混合された発光層を有する有機発光素子において、電子輸送材料に[1]に記載の電子輸送材料を用いることを特徴とする有機発光素子。
[6] [1]に記載の電子輸送材料を溶かした溶液を下地層上に塗布成膜後、溶媒を除去することを特徴とする有機発光素子の製造方法。
【0022】
[7] 一般式(7)で表される重合性官能基を有するキノキサリン系化合物を下地層上に塗布成膜後、重合し、一般式(1)で表されるキノキサリン構造を側鎖に含む重合体を含有する電子輸送材料を含む層を形成することを特徴とする有機発光素子の製造方法。
【化13】
(式中、R31は水素原子を表す。R32は炭素数が6以上20以下のアリーレン基を表す。R33〜R37はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、ニトロ基、酢酸メチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロエチル基、フェニル基、ナフチル基またはチエニル基を表す。)
【化14】
(式中、R 3 〜R6の内、少なくとも一つは炭素数が6以上20以下のアリーレン基であり、R 3 〜R 6 の内、残りの基およびR 1 、R 2 はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、ニトロ基、酢酸メチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロエチル基、フェニル基、ナフチル基またはチエニル基を表す。)
【0023】
[8] 下地層が発光層である[6]または[7]のいずれか一つに記載の有機発光素子の製造方法。
[9] 発光材料と電子輸送材料が混合された発光層を有する有機発光素子において、[1]に記載の電子輸送材料と発光材料を溶かした溶液を下地層上に塗布成膜後、溶媒を除去することを特徴とする有機発光素子の製造方法。
【0025】
[10] 一般式(7)で表される重合性官能基を有するキノキサリン系化合物と発光材料を溶かした溶液を下地層上に塗布成膜後、キノキサリン系化合物を重合し、一般式(1)で表されるキノキサリン構造を側鎖に含む重合体を含有する電子輸送材料を含む層を形成することを特徴とする有機発光素子の製造方法。
【化15】
(式中、R31は水素原子を表す。R32は炭素数が6以上20以下のアリーレン基を表す。R33〜R37はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、ニトロ基、酢酸メチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロエチル基、フェニル基、ナフチル基またはチエニル基を表す。)
【化16】
(式中、R 3 〜R6の内、少なくとも一つは炭素数が6以上20以下のアリーレン基であり、R 3 〜R 6 の内、残りの基およびR 1 、R 2 はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、ニトロ基、酢酸メチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロエチル基、フェニル基、ナフチル基またはチエニル基を表す。)
【0026】
[11] 下地層が電極またはホール輸送層である[9]または[10]のいずれか一つに記載の有機発光素子の製造方法。
[12] 発光材料の発光部位が励起三重項状態からの発光あるいは励起三重項状態を経由する発光であることを特徴とする[3]〜[5]のいずれか一つに記載の有機発光素子。
[13] 発光材料の発光部位が金属錯体であることを特徴とする[3]〜[5]、[12]のいずれか一つに記載の有機発光素子。
[14] 発光材料が高分子発光材料であることを特徴とする[3]〜[5]、[12]、[13]のいずれか一つに記載の有機発光素子。
[15] 発光材料が重合性発光材料を重合することにより得られる高分子発光材料であることを特徴とする[3]〜[5]、[12]〜[14]のいずれか一つに記載の有機発光素子。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0028】
1.キノキサリン構造を含む重合体
本発明(I)はキノキサリン構造を含む重合体を含有することを特徴とする電子輸送材料である。
本発明(I)の「キノキサリン構造を含む重合体」とは、重合体の少なくとも一部にキノキサリン構造を含むものであれば、いかなる構造の物でも使用することができる。例えば、重合体の主鎖を形成する構造に直接キノキサリン構造が含まれるのではなく、キノキサリン構造の一部が主鎖に結合した例えば一般式(1)で表される構造を有する物であっても良く、また、重合体の主鎖を形成する構造の一部としてキノキサリン構造を有する一般式(2)、より好ましくは一般式(3)で表される構造を繰り返し単位として有する物でも良い。
【化33】
(式中、R1〜R6の内、少なくとも一つは重合体の主鎖に結合する基であり、他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン、水酸基、ニトロ基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、アルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜炭素数20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜炭素数20のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜炭素数20のアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環を有する基を表す。)
【化34】
(式中、R7〜R10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン、水酸基、ニトロ基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、アルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜炭素数20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜炭素数20のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜炭素数20のアルキニル基置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環を有する基を表す。)
【化35】
(式中、R11〜R14はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン、水酸基、ニトロ基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、アルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜炭素数20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜炭素数20のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜炭素数20のアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環を有する基を表す。)
【0029】
また、キノキサリン構造の一部が主鎖に結合した一般式(1)で表される構造を有する部分と、一般式(2)で表される構造を有する部分との両方を分子内に含む重合体であっても良く、さらに、キノキサリン構造とは異なる繰り返し単位を含む物であっても良い。さらにはこれらの混合物であっても良い。
【0030】
本発明(I)の「キノキサリン構造を含む重合体」での一般式(1)における「式中、R1〜R6の内、少なくとも一つは重合体の主鎖に結合する基であり」における主鎖とは当該重合体の主たる構造部分を意味する。即ち、直鎖状重合体のいわゆる主鎖のみではなく、網目状重合体(架橋体)における主構造をも意味する。
【0031】
ここで主鎖とキノキサリン構造は、一般式(1)に示したように直接結合する物だけでなく、間に他の官能基を有していても良い。例えば、構造式(2)に示すようなキノキサリン構造を有するアルコールのアクリル酸エステルの重合体の場合は、主鎖とキノキサリン構造との間にエステル構造を有する構造式(3)に示す繰り返し単位を有する重合体となる。
【0032】
一般式(1)における「式中、R1〜R6の内、少なくとも一つは重合体の主鎖に結合する基であり」とは、ここで一例としてあげたエステル結合はもちろんのこと、どの様な形態でも主鎖とキノキサリン構造が結合していれば良いということはいうまでもない。
【0033】
また、本発明(I)における、「一般式(2)で表されるキノキサリン構造を繰り返し単位の一部として含む重合体」とは、重合体の主鎖の少なくとも一部にキノキサリン構造を有する物であればいかなる物であっても良い。
【0034】
ここでいう「キノキサリン構造を繰り返し単位の一部として含む重合体」とは、キノキサリン構造のみからなる重合体であっても、キノキサリン構造に加えて他の一種以上の異なる構造を繰り返し単位として含む物であっても良い。この場合、キノキサリン構造と他の構造とが交互に繰り返されていてもよく、ランダムであってもよい。また、キノキサリン構造のみを繰り返した後に他の構造が繰り返すブロック構造であっても良い。
【0035】
さらにまた、キノキサリン構造が直接に繰り返す構造であってもなくても良く、例えばキノキサリン構造に他の構造が結合した構造を繰り返し単位の基本構造とするような、一般式(4)で表されるような物も含む。
【化36】
(式中、R15〜R30はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン、水酸基、ニトロ基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、アルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜炭素数20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜炭素数20のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜炭素数20のアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環を有する基を表し、Xはそれぞれ独立に置換基を有しても良いアリーレン基を表し、Yはそれぞれ独立にヘテロ原子単独、炭素数が6以上20以下のアリーレン基または炭素数が2以上20以下である2価の複素環残基を表し、nは0〜5の整数を表す。ただし、nが0の場合はYは存在しないことを意味する。)
【0036】
また、「一般式(1)で表されるキノキサリン構造を側鎖に含み、且つ一般式(2)で表されるキノキサリン構造を繰り返し単位の一部として含む重合体」とは、その一部分がキノキサリン構造の一部が主鎖に結合した例えば一般式(1)で表される構造を有し、且つ他の部分では重合体の主鎖の一部にキノキサリン構造を有する物であればいかなる物であっても良い。
【0037】
この場合、キノキサリン構造を側鎖に含む部分と、キノキサリン構造を主鎖の構造として含む部分とは、それぞれ交互に存在しても、また、キノキサリン構造を側鎖に含む部分を繰り返した後に、キノキサリン構造を主鎖の構造として含む部分を繰り返した物であっても良い。さらに、キノキサリン構造とは異なる繰り返し単位を有する物であっても良く、その場合は各構造がそれぞれ任意の順に結合していてもかまわない。
【0038】
本発明(I)の一般式(1)〜一般式(6)でのR1〜R30は、それぞれ独立に水素、ハロゲン、水酸基、ニトロ基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、アルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜炭素数20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜炭素数20のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜炭素数20のアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環を有する基を表す。
【0039】
ここでいう「それぞれ独立に」とは、R1〜R30のいずれもが独立であると言うことのみならず、重合体のそれぞれのキノキサリン構造においても独立であることを示している。すなわち、例えばキノキサリン構造の任意のRα(αは1〜30)がメチル基である場合、他のキノキサリン構造の相似の位置であるRαではメチル基でも良いしメチル基以外の他の官能基であっても良いことを示している。従って、一つの重合体にn個のキノキサリン構造が存在する場合、任意のRはn個のキノキサリン構造において各々独立の官能基であることを示している。
【0040】
一般式(1)〜一般式(6)におけるR1〜R30として具体的には、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、エテニル基、2−プロペニル基、1,3−ブタジエニル基、4−メトキシー2−ブテニル基等のアルケニル基、エチニル基、2−プロピニル基等のアルキニル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基等のアリール基、フッ素原子、塩素等のハロゲン基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、ニトロ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、チエニル基、ピロリル基、、3―メチルチエニル基等の複素環を有する基等を挙げることができる。
【0041】
これらの中で好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、3−トリフリオロメチルフェニル基、ナフチル基、フッ素、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、ニトロ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基、フッ素、ニトロ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基である。
【0042】
本発明(I)の「一般式(1)で表されるキノキサリン構造を含む重合体」として、好ましくは一般式(2)で表されるキノキサリン構造を繰り返し単位の一部として含む重合体である。
【0043】
より好ましくは一般式(3)で表されるキノキサリン構造を繰り返し単位の一部として含む重合体、又は一般式(4)で表されるキノキサリン構造を繰り返し単位の一部として含む重合体である。
【0044】
一般式(3)におけるR11〜R14として好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、3−トリフリオロメチルフェニル基、ナフチル基、フッ素、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、ニトロ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基、フッ素、ニトロ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基である。
【0045】
一般式(4)におけるR15〜R30として好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、3−トリフリオロメチルフェニル基、ナフチル基、フッ素、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、ニトロ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基、フッ素、ニトロ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基である。
【0046】
一般式(4)におけるXはそれぞれ独立に置換基を有しても良いアリーレン基を表し、Yはそれぞれ独立にヘテロ原子単独、ヘテロ原子を有しても良い炭素数が6以上20以下のアリーレン基または炭素数が2以上20以下である2価の複素環残基を表し、nはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。ただし、nが0の場合はYは存在しないことを意味する。ここで言うX、Y及びnの「それぞれ独立に」とは、各繰り返し単位においてすべてが同じでも良く、また、すべてが異なっても良いと言うことを意味する。すなわち、例えば一般式(4)で示される繰り返し単位をm個有する重合体の場合、m個のX、Y或いはnすべて同じでも良いし、すべて異なっても良いし、一部が同じで一部が違っていてもかまわないことを意味する。
【0047】
一般式(4)におけるXとしては、具体的には例えばフェニレン基、4−メチルフェニレン基、3−ニトロフェニレン基、3−トリフリオロメチルフェニレン基、ナフチレン基、5−メチルナフチレン基、4―ニトロナフチレン基等を挙げることができる。好ましくはフェニレン基、3−ニトロ−フェニレン基、3−トリフリオロメチルフェニレン基、ナフチレン基、4−ニトロナフチレン基であり、より好ましくはフェニレン基、3−トリフリオロメチルフェニレン基、ナフチレン基である。
【0048】
一般式(4)におけるYとしては、具体的には酸素原子、イオウ、セレン、>N−R(RはHまたは炭素数10以下のアルキル基)、フェニレン基、3−ニトロフェニレン基、2,5−ジメトキシフェニレン基、ナフチレン基等を挙げることができる。好ましくは酸素原子、フェニレン基、3−ニトロフェニレン基、ナフチレン基であり、より好ましくは酸素原子、フェニレン基である。
【0049】
また、nは0〜5の整数を表すが、好ましい範囲はYにより異なる。
【0050】
本発明(I)の一般式(1)で表されるキノキサリン構造を含む重合体の具体例としては、ポリフェニルキノキサリン(以下、「PPQ」と略す)、ポリ-2,2’−(p、p’−オキシジフェニレン)−6,6’-オキシジ(3−フェニルキノキサリン)(POPQ)、ポリ−2,2’−(p,p’−オキシジフェニレン)-6,6’−オキシジ(3−フェニルキノキサリン)(POPQ)等を挙げることができるが、これに限定されるわけではない。詳しくは「J.Polymer Science:part A1、第5巻、1453頁、1967年」に記載がある。
【0051】
本発明(I)の一般式(1)で表されるキノキサリン構造を含む重合体のキノキサリン構造は、核磁気共鳴スペクトル(以下、NMRと略す。)、赤外スペクトル(以下、IRと略す。)、元素分析、質量分析法(以下、MSと略す。)等の方法で分析、同定することが可能である。具体的には洗浄等の方法により本発明の有機発光素子から一般式(1)で表されるキノキサリン構造を含む重合体を分離し、さらに熱重量分析−質量分析法(以下、TG−MSと略す)で分解物の構造からキノキサリン骨格を同定、元素分析で元素の組成比を定量、NMR、IRで結合状態を同定等の方法でキノキサリン構造を同定することが可能である。詳しくは「J.Polymer Science:partA1、第5巻、1453頁、1967年」に記載がある。
【0052】
本発明(I)の一般式(1)で表されるキノキサリン構造を含む重合体の分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す。)等の液体クロマトグラフィーにより測定することができる。具体的にはヘキサイソプロパノール等の溶媒に溶解し、GPCにより測定することが一般的であり、「J.Polymer Science:partB:Polymer Physics、第38巻、1348頁、2000年」、「Chemistry Letters、1049頁、1999年」にその記載がある。
【0053】
本発明(I)の一般式(1)で表されるキノキサリン構造を含む重合体の分子量としては、特に制限はない。一般的には有機発光素子の塗膜としての耐久性、耐熱性、強度の点から高い方が好ましい。具体的にはGPCによる絶対分子量測定での重量平均分子量で5000以上が好ましく、10000以上がより好ましい。
【0054】
本発明(I)の一般式(1)で表されるキノキサリン構造を含む重合体では、低分子量体の存在量が少ない方が好ましい。具体的には前述のGPCによる絶対分子量測定での重量平均分子量における1000未満の分子量を有する低分子量体が重合体全体に対して5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下である。
【0055】
2.キノキサリン構造を有する重合体の合成法、及びその原料
2−1.合成法
本発明の一般式(1)で表されるキノキサリン構造を有する重合体の合成法は特に限定されない。例えば、合成法▲1▼としては、一般式(1)で表されるキノキサリン骨格を有する化合物のR1からR6の少なくともいずれかひとつがビニル基等の重合性官能基である化合物をラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等で重合することにより得られる。
【0056】
この方法で一般式(1)で表されるキノキサリン骨格を有する化合物に重合性官能基を付与することが可能であれば、その官能基を重合すればよいので、材料設計が容易で、重合体も比較的容易に得ることができる。このような重合性官能基が付与されたキノキサリン骨格を有する化合物としては、例えば一般式(7)で表される。
【化37】
(式中、R31は水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜炭素数20のアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環を有する基を表す。R32は酸素原子(−O−)、カルボニルオキシ基(−COO−、−OCO−)、カルボニル基(−CO−)、カーボネート基(−OCOO−)、ウレタン基(−NHCOO−、−OCONH−)、アミド基(−CONH−、−NHCO−)を有する2価の有機基、置換基を有してもよい炭素数1〜炭素数20のアルキレン基、炭素数が6以上20以下のアリーレン基、炭素数が2以上20以下である2価の複素環残基、ポリエーテル残基またはイソシアネート基を含む基を表す。R33〜R37はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン、水酸基、ニトロ基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、アルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜炭素数20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜炭素数20のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜炭素数20のアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環を有する基を表す。)
【0057】
一般式(7)のR31としては、水素原子、メチル基の場合が二重結合の重合性が優れており、好ましい。R32は酸素原子(−O−)、カルボニルオキシ基(−COO−、−OCO−)、カルボニル基(−CO−)、カーボネート基(−OCOO−)、ウレタン基(−NHCOO−、−OCONH−)、アミド基(−CONH−、−NHCO−)の残基を有する2価の有機基(上記の2価の残基そのものであってもよく、2価の有機基のなかに上記の基が残基として含まれていてもよい。例えばR32が−CH3COO−や−OCONHCH2CH2OCO−であってもよいことを意味する。)、置換基を有してもよい炭素数1〜炭素数20のアルキレン基、炭素数が6以上20以下のアリーレン基、炭素数が2以上20以下である2価の複素環残基、ポリエーテル残基またはイソシアネート基を含む基を表す。これらのうち、R32が酸素原子、カルボニルオキシ基、カルボニル基、カーボネート基、ウレタン基、アミド基を有する2価の有機基およびアリーレン基、2価の複素環残基が二重結合の重合性が優れており、好ましい。R33〜R37としては水素原子、フッ素原子、ニトロ基、酢酸メチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロエチル基、フェニル基、ナフチル基、チエニル基が好ましい。
【0058】
これらの例としては、Photochem.Photobiol.、第54巻、1号、7頁、1991年、および第54巻、4号、514頁、1991年、およびMakromol.Chem.第176巻、3号、593頁等に記載のスチリルキノキサリンおよびこれらの置換基誘導体、ビニルキノキサリン及びこれらの置換基誘導体、(メタ)アクリロイルキノキサリン及びこれらの置換基誘導体が挙げられる。これらの合成法も上記文献に記載がある。
【0059】
このような重合性官能基が付与されたキノキサリン骨格を有する化合物を重合する方法は、二重結合の反応性を利用した一般的なラジカル重合、イオン重合等の方法を利用できる。即ち、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物熱重合開始剤を添加し、加熱によりラジカル重合する方法や、ベンゾフェノン等の光重合開始剤を添加し、紫外線照射でラジカル重合する方法、またはルイス酸/塩基の様な触媒を用いてカチオン重合またはアニオン重合する方法が挙げられる。
【0060】
合成法▲2▼としては、一般式(1)で表されるキノキサリン骨格を有する化合物のR1からR6の少なくともいずれか2つがブロム基等のハロゲン基である化合物をCuやNi等の金属触媒で脱ハロゲン重合する方法も挙げられる。このようなハロゲン置換キノキサリン化合物としては、2,6−ジブロモ−キノキサリン、2,5−ジブロモ−キノキサリン及びこれらの他置換誘導体が挙げられる。
【0061】
また、合成法の▲3▼としては、一般式(1)で表されるキノキサリン骨格を有する重合体は、例えばテトラミン誘導体とビスベンジル及びまたはこの誘導体とを脱水重縮合することにより得られる。本発明の一般式(1)で表されるキノキサリン骨格を有する重合体を製造する方法としては、この方法が重合工程的に簡易で、高収率で、高分子量のものが得られ好ましい。但し、モノマーの多様性がこれまでの▲1▼▲2▼の方法よりやや劣る。
【0062】
以下、この▲3▼の脱水重縮合法について詳細に説明する。
【0063】
2−2.テトラミン誘導体
本発明のキノキサリン構造を有する重合体を合成する好ましい方法である▲3▼の脱水重縮合法で用いるモノマーのひとつであるテトラミン誘導体は、一般式(6)で表される。
【化38】
(式中、R15〜R17、R28〜R30はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン、水酸基、ニトロ基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、アルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜炭素数20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜炭素数20のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜炭素数20のアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環を有する基を表す。Yはそれぞれ独立にヘテロ原子単独、炭素数が4以上20以下のアリーレン基または炭素数が2以上20以下である2価の複素環残基を表し、nは0〜5の整数を表す。ただし、nが0の場合はYは存在せず、一般式(6)のベンゼン環が直接結合していることを意味する。)
【0064】
この具体例としては3,3’―ジアミノベンジジン
【化39】
及びこの置換体、
3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルエーテル
【化40】
及びこの置換体が挙げられる。
【0065】
2−3.ビスベンジル及び/またはビスベンジル誘導体
本発明のキノキサリン構造を有する重合体を合成する好ましい方法である▲3▼の脱水重縮合法で用いるのモノマーのひとつであるビスベンジル及び/またはビスベンジル誘導体は一般式(5)で表される。
【化41】
(式中、R18〜R27はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン、水酸基、ニトロ基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、アルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜炭素数20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜炭素数20のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜炭素数20のアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環を有する基を表し、Xはそれぞれ独立に置換基を有しても良いアリーレン基を表す。
【0066】
この具体例としては1,4−ビスベンジル(パラ体、メタ体;次式はパラ体)
【化42】
及びこれらの置換体(次式はパラ体のメトキシ誘導体)
【化43】
が挙げられる。
【0067】
2−4.脱水重縮合
本発明の一般式(1)で表されるキノキサリン骨格を有する重合体を合成する好ましい方法である▲3▼の方法、即ち各種テトラミンとビスベンジル及びまたはビスベンジル誘導体とを脱水重縮合する条件は以下の通りである。
【0068】
反応温度は使用するモノマーの種類や溶媒によって一概に限定できないが一般的には使用する溶媒の環流温度付近で行う。
【0069】
反応時間は使用するモノマーの種類や溶媒によって一概に限定できないが、脱水重縮合であり、高分子化するには少なくとも10時間は要する。好ましい範囲は25時間以上100時間以内であり、30時間以上70時間以下が特に好ましい。使用する溶媒としては、使用するモノマーが溶解しやすく、また反応しないものなら特に限定されない。例えばN,N―ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。
【0070】
重合時の溶媒中のモノマー濃度は、ビスベンジル及びまたはビスベンジル誘導体とテトラミンの重量の総計が反応溶液の5質量%以上40質量%以下が好ましく、8質量%以上30質量%以下が特に好ましい。モノマー濃度が低すぎると重合が進みにくく分子量が増加しにくくなる。モノマー濃度が高すぎると重合溶液の粘度が上がり、混合しづらくなって、重合体の析出が早期に起こり分子量が増加しにくい。
【0071】
3.有機発光素子
次に、本発明(II)の上記キノキサリン構造を含む重合体を用いた有機発光素子について説明する。
【0072】
図1は本発明の有機発光素子構成の一例を示す断面図であり、透明基板上に設けた陽極と陰極の間にホール輸送層、発光層、電子輸送層を順次設けたものである。また、本発明の有機発光素子構成は図1の例のみに限定されず、陽極と陰極の間に順次、1)ホール輸送層/発光層、2)発光層/電子輸送層、のいずれかを設けたものでもよく、更には3)ホール輸送材料、発光材料、電子輸送材料を含む層、4)ホール輸送材料、発光材料を含む層、5)発光材料、電子輸送材料を含む層、6)発光材料の単独層、のいずれかの層を一層設けるだけでもよい。また、図1に示した発光層は1層であるが、2つ以上の層が積層されていてもよい。
【0073】
3−1.電子輸送材料
本発明の有機発光素子においては、上記電子輸送材料にキノキサリン構造を含む重合体を用いることを特徴とする。キノキサリン構造を含む重合体は成膜されて有機発光素子の一部を構成するが、その成膜する方法は特に限定されない。例えば、(A)発光体層の上にキノキサリン構造を含む重合体溶液を塗布し溶媒を揮発除去する方法や、(B)発光層の上にキノキサリン構造を含む重合体モノマーを塗布、成膜後に、モノマーを重合する方法が挙げられる。これらの方法は多層構造素子を作成する場合に好適である。また、発光材料や電子輸送材料、ホール輸送材料の混合単層素子を作成する方法もプロセス上有利である。例えば、(C)キノキサリン構造を含む重合体からなる電子輸送材料と発光材料やホール輸送材料を混合した溶液を調製し、電極上に塗布後、溶媒を揮発除去する方法や、(D)キノキサリン構造を含む重合体モノマーと発光材料やホール輸送材料を混合した溶液を調製し、電極上に塗布後、重合体モノマーを重合し、溶媒を揮発除去する方法が挙げられる。上記、重合体溶液やモノマー溶液を塗布する方法も特に限定されない。例えば、印刷法やインクジェット、スピンコート等、種々の方法が挙げられる。電子輸送層の厚さは、電子輸送層の導電率にもよるので一概に限定はできないが、10nm〜10μmが好ましく、10nm〜1μmが更に好ましい。
【0074】
本発明では上記キノキサリン構造を含む重合体に他の電子輸送材料を混合及び/または積層して用いても良い。用いることのできる他の電子輸送材料としては、Alq3(トリスアルミニウムキノリノール)などのキノリノール誘導体金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体などの既知の電子輸送材料が使用できるが、特にこれらに限定されることはない。
【0075】
上記の電子輸送材料はそれぞれ単独で電子輸送層を形成するほかに、高分子材料をバインダとして各層を形成することもできる。これに使用される高分子材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイドなどを例示できるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0076】
3−2.発光材料
発光材料としてはスチルベン構造等の共役系構造を有する化合物、アルミニウムキノリウム錯体等の軽金属錯体や遷移金属錯体構造等があげられるが、安定性、設計自由性等の面で金属錯体構造が好ましい。
【0077】
本発明の有機発光素子に用いられる発光材料においては、さらに励起三重項状態からの発光あるいは励起三重項状態を経由する発光、いわゆる燐光発光物質を発光部位に有する化合物が好ましい。燐光発光物質は、励起三重項状態の量子効率の値として0.1以上が好ましく、更に好ましくは0.3以上であり、より一層好ましくは0.5以上である。尚、これらの励起三重項状態の量子効率が高い化合物は、例えば“Handbook of Photochemistry,Second Edition(Steven L. Murovほか著,Marcel Dekker Inc.,1993)などから選ぶことができる。本発明の好ましい発光材料の励起三重項状態からの発光あるいは励起三重項状態を経由する燐光発光部位としてはイリジウムや白金等の金属錯体構造及びこれらの誘導体があげられる。燐光性金属錯体構造は励起三重項状態が高温でも比較的安定であり好ましい。
【0078】
上記の燐光性金属錯体構造に使用される遷移金属としては、周期表において第1遷移元素系列は原子番号21のScから原子番号30のZnまでを、第2遷移元素系列は原子番号39のYから原子番号48のCdまでを、第3遷移元素系列は原子番号72のHfから原子番号80のHgまでを含める。また上記の励起三重項状態を経由して発光する燐光性金属錯体構造の他の具体的な例としては希土類金属錯体構造を例示することができるが、何らこれに限定されるものではない。この希土類金属錯体構造に使用される希土類金属としては、周期表において原子番号57のLaから原子番号71のLuまでを含める。
【0079】
上述した金属錯体構造に使用される配位子の構造としては、アセチルアセトナート、2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、2−フェニルピリジン、ポルフィリン、フタロシアニン、ピリミジン、キノリン及び/またはこれらの誘導体などを例示することができるが、何らこれらに限定されるものではない。これらの配位子は、1つの錯体について1種類または複数種類が配位される。また、上記の錯体化合物として二核錯体構造あるいは多核錯体構造や、2種類以上の錯体の複錯体構造を使用することもできる。
【0080】
本発明の好ましい発光材料である燐光性金属錯体構造における発光のメカニズムは以下のようになる。すなわち、電気的励起により最低励起一重項状態が25%、最低励起三重項状態が75%の割合で生成するが、遷移金属錯体や希土類金属錯体の場合には重原子効果により最低励起一重項状態から最低励起三重項状態への項間交差が起こりやすくなるため、最低三重項状態の比率が75%以上に増加する。この最低励起三重項状態から燐光を発光する遷移金属錯体のような場合には、燐光を発光する放射遷移と共に無輻射遷移が存在する。また、希土類金属錯体の場合には配位子の最低励起三重項状態の励起エネルギーが中心金属イオンへエネルギー移動し、中心金属イオンの励起準位から発光するが、この場合にも発光の放射遷移と共に無輻射遷移が存在する。これらの無輻射遷移は極低温にしない限りこれを抑えることができず、通常上記のような化合物の常温における発光は極めて微弱である。しかし、本発明の好ましい燐光性金属錯体構造を有する発光材料では、発光部位を分子レベルで高分子に固定することにより分子の振動が抑えられるため、励起エネルギーが分子の振動となって失われることがなくなる。また、励起三重項状態は酸素により失活するが、本発明の好ましい燐光性金属錯体構造を有する発光材料では、発光部位を高分子内に閉じ込めることにより、酸素の進入を抑えることが可能である。
【0081】
上記の発光体層に用いられる発光材料はそれぞれ単独で各層を形成するほかに、高分子材料をバインダとして各層を形成することもできる。これに使用される高分子材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイドなどを例示できるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0082】
発光体層の厚さは一概に限定はできないが、10nm〜10μmが好ましく、10nm〜1μmが更に好ましい。
【0083】
上記の発光層に用いられる発光材料の成膜方法は、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、コーティング法などを用いることが可能で、これらに特に限定されることはないが、低分子化合物に場合は主として抵抗加熱蒸着および電子ビーム蒸着が用いられ、高分子材料の場合は主にコーティング法が用いられる。
【0084】
3−3.ホール輸送材料
本発明の有機発光素子にホール輸送材料も用いることもできる。発光材料にホール輸送機能がない場合は特にホール輸送材料を用いることにより、発光効率の向上、駆動電圧の低下等、素子の性能向上が図れる。用いるホール輸送材料に特に制限はなく、発光材料やキノキサリン構造を有する重合体からなる電子輸送材料との組み合わせで適したものを選べばよい。
【0085】
ホール輸送材料としては、低分子化合物として、フタロシアニン類、金属フタロシアニン類、ナフタロシアニン類、金属ナフタロシアニン類、ビスアゾ化合物類、トリスアゾ化合物類、TPD(N,N’−ジメチル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’ジアミン)、α−NPD(4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル)、m−MTDATA(4、4’,4’’−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)等のトリフェニルアミン誘導体類、ジフェニル類、ナフタレン類、アントラセン類の多環芳香族類、ベンゾキノン、アントラキノン等の芳香族キノン類が挙げられる。また高分子化合物として、上記低分子化合物の重合体以外にポリアニリン、ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリピロール、ポリパラフェニレンビニレン及びこれらの誘導体に代表されるp型導電性高分子、ポリカルバゾール及び誘導体、ポリシラン及び誘導体、ポリシロキサン及び誘導体等が挙げられる。
【0086】
これらのホール輸送材料は単独でも用いられるが、異なるホール輸送材料と混合または積層して用いてもよい。ホール輸送層の厚さは、ホール輸送層の導電率にもよるので一概に限定はできないが、10nm〜10μmが好ましく、10nm〜1μmが更に好ましい。
【0087】
またこれらのホール輸送材料はそれぞれ単独で各層を形成するほかに、高分子材料をバインダとして各層を形成することもできる。これに使用される高分子材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイドなどを例示できるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0088】
上記のホール輸送材料の成膜方法は、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、コーティング法などを用いることが可能で、これらに特に限定されることはないが、低分子化合物に場合は主として抵抗加熱蒸着および電子ビーム蒸着が用いられ、高分子材料の場合は主にコーティング法が用いられる。
【0089】
3−4.陽極材料
本発明に係る有機発光素子の陽極材料としては、ITO(酸化インジウムスズ)、酸化錫、酸化亜鉛、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性高分子などの既知の透明導電材料が使用できるが、特にこれらに限定されることはない。この透明導電材料による電極の表面抵抗は1〜50Ω/□(オーム/スクエアー)であることが好ましい。これらの陽極材料の成膜方法としては、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、化学反応法、コーティング法などを用いることができるが、これらに特に限定されることはない。陽極の厚さは50〜300nmが好ましい。
【0090】
また、陽極とホール輸送層または陽極に隣接して積層される有機層の間に、ホール注入に対する注入障壁を緩和する目的でバッファ層が挿入されていてもよい。これには銅フタロシアニンなどの既知の材料が用いられるが、特にこれに限定されることはない。
【0091】
3−5.陰極材料
本発明に係る有機発光素子の陰極材料としては、Al、MgAg合金、Caなどのアルカリ金属、AlCaなどのAlとアルカリ金属の合金などの既知の陰極材料が使用できるが、特にこれらに限定されることはない。これらの陰極材料の成膜方法としては、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いることができるが、これらに特に限定されることはない。陰極の厚さは10nm〜1μmが好ましく、50〜500nmが更に好ましい。
【0092】
また、陰極と、電子輸送層または陰極に隣接して積層される有機層との間に、電子注入効率を向上させる目的で、厚さ0.1〜10nmの絶縁層が挿入されていてもよい。この絶縁層としては、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミナなどの既知の陰極材料が使用できるが、特にこれらに限定されることはない。
【0093】
3−6.基板、その他
本発明に係る有機発光素子の基板としては、発光材料の発光波長に対して透明な絶縁性基板が使用でき、ガラスのほか、PET(ポリエチレンテレフタレート)やポリカーボネートを始めとする透明プラスチックなどの既知の材料が使用できるが、特にこれらに限定されることはない。
【0094】
本発明の有機発光素子は、既知の方法でマトリックス方式またはセグメント方式による画素を構成することができ、また、画素を形成せずにバックライトとして用いることもできる。
【0095】
【実施例】
以下に本発明について代表的な例を示し具体的に説明する。尚これらは説明のための単なる例示であって、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0096】
【0097】
<参考例1>:電子輸送材料製造例;ポリフェニルキノキサリン(PPQ)の合成反応は下記スキームに従って実施した。
【化16】
即ち、DMF(含水量200ppm)600ccを加えた1Lのガラス製四口フラスコ(長さ4cmの撹拌はね及び冷却管付き)に、1,4−ビスベンジル(BBZと略す、Mw342.4、昭和電工製、GC純度98%)41.52g、3,3’−ジアミノベンジジン(DABZと略す、Mw214.3、アルドリッチ製、LC純度98%)25.98gを添加し、室温窒素雰囲気下で30分撹拌し、BBZ及びDABZを完全に溶解させた。その後、窒素雰囲気下、130℃まで1時間で昇温した後、130℃で攪拌しながら40時間反応させた。
【0098】
得られた黄色沈殿を濾過、メタノール洗浄、乾燥後120℃で12時間、真空乾燥することにより、54.03gのPPQ粉末を得た。
【0099】
この粉末の元素分析値及びIRスペクトルから目的通りの構造と推定された。また、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を溶離液としたGPCからの光散乱法による絶対分子量(重量平均)は51000であった。
【0100】
<参考例2>:PPQ塗膜評価
参考例1で製造したPPQ粉末の5wt%HFIP溶液を調製した。これをスピンコータで1×1cmの白金箔上に塗布後、HFIPを蒸発除去させることにより、厚さ約2000ÅのPPQ塗膜を白金箔上に成膜した。このPPQ/白金電極を作用極とし、対極を白金箔(2×2cm)、飽和カロメル電極(SCE)を参照極として、20wt%硫酸水溶液中で、10mV/secの走査速度で、サイクリックボルタモグラムを行った。その結果、−0.05Vvs.SCEに水素イオンのN型ドーピングによる酸化還元ピークがみられ、このPPQフィルムが容易にN型ドーピングすることが確認できた。
【0101】
<参考例3>:電子輸送材料製造例;ポリフェニルキノキサリンエーテル(PPQE)の合成
反応は下記スキームに従って実施した。
【化17】
即ち、参考例1で用いたDABZ25.98gの代わりに、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルエーテル(TADEと略す、Mw230.27、文献(OPPI
BRIEFS,vol.25,No.4,478頁,1993年)に従い合成、LC純度98%)27.92gを用いた以外は参考例1と同様の方法で、55.83gの黄色のPPQE粉末を得た。
【0102】
この粉末の元素分析値及びIRスペクトルから得られた粉末は目的通りの構造と推定された。また、HFIPを溶離液としたGPCからの光散乱法による絶対分子量(重量平均)は48000であった。
【0103】
<参考例4>:PPQE塗膜評価
参考例3で製造したPPQE粉末の5wt%HFIP溶液を調製し、参考例2と同様にPPQE/白金電極を製造した。PPQ/白金電極の代わりに、このPPQE/白金電極を用いて、参考例2と同様にしてサイクリックボルタモグラムを行った。その結果、−0.07Vvs.SCEに水素イオンのN型ドーピングによる酸化還元ピークがみられ、このPPQEフィルムが容易にN型ドーピングすることが確認できた。
【0104】
<参考例5>:電子輸送材料製造例;ポリメトキシフェニルキノキサリン(PPQOM)の合成
反応は下記スキームに従って実施した。
【0105】
【化18】
即ち、参考例1で用いたBBZ41.52gの代わりに、BBZメトキシ体(BBZOMと略す、Mw404.41、文献(OPPI
BRIEFS,vol.25,No.4,478頁,1993年)に従い合成、LC純度98%)49.04gを用いた以外は参考例1と同様の方法で、黄赤色の60.33gのPPQ粉末を得た。
【0106】
この粉末の元素分析値及びIRスペクトルから目的通りのPPQOMが得られていると推定された。また、HFIPを溶離液としたGPCからの光散乱法による絶対分子量(重量平均)は38000であった。
【0107】
<参考例6>:PPQOM塗膜評価
参考例5で製造したPPQOM粉末の5wt%HFIP溶液を調製し、参考例2と同様にPPQOM/白金電極を製造した。PPQ/白金電極の代わりに、このPPQOM/白金電極を用いて、参考例2と同様にしてサイクリックボルタモグラムを行った。その結果、−0.1Vvs.SSCEに水素イオンのN型ドーピングによる酸化還元ピークがみられ、このPPQOMフィルムが容易にN型ドーピングすることが確認できた。
【0108】
<実施例7>:電子輸送材料製造例;スチリルキノキサリン(以下、STQと略す。)の重合、評価
Photochem.Photobiol.、第54巻、1号、7頁、1991年に記載の方法で合成したスチリルキノキサリンを下記スキームに従い、重合した。
【化47】
【0109】
即ち、STQ(LC純度96%)30.00gを脱水トルエン500CCに溶解し、撹拌しながら、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルを0.1g加え、60℃に昇温し、3時間反応させることにより、ポリスチリルキノキサリン(以下、PSTQと略す。)が析出、沈殿した。これを濾過、分離し、24.50gを淡黄色粉末として得た。
【0110】
この粉末の元素分析値及びIRスペクトルからSTQの二重結合が消失し、PSTQが得られていると推定された。また、HFIPを溶離液としたGPCからの光散乱法による絶対分子量(重量平均)は42000であった。
【0111】
このPSTQ粉末の5wt%HFIP溶液を調製し、参考例2と同様にしてPSTQ/白金電極を製造した。このPSTQ/白金電極を用いて、参考例2と同様にしてサイクリックボルタモグラムを行った。その結果、−0.07Vvs.SSCEに水素イオンのN型ドーピングによる酸化還元ピークがみられ、このPSTQフィルムが容易にN型ドーピングすることが確認できた。
【0112】
<実施例8>:発光材料製造例;燐光高分子用重合性化合物:Ir(4−MA−PPy)2(PPy)の合成
常法に従い4−メトキシフェニルピリジン(4−MeO−PPy)を合成した。即ち、下記スキームに示すように、常法によりアルゴン気流下において4−ブロモアニソール22.4g(120mmol)から脱水テトラヒドロフラン(THF)中でマグネシウム(Mg)3.4gを用いて(4−メトキシフェニル)マグネシウムブロマイドを合成し、これを2−ブロモピリジン15.8g(100mmol)と(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)ジクロロニッケル(II)(Ni(dppe)Cl2) 1.8gの脱水THF溶液に徐々に添加し、1時間還流した。反応液に5%塩酸水溶液250mlを加えた後、クロロホルムで洗浄した。水層を炭酸水素ナトリウムで中和した後、クロロホルムで目的物を抽出し、有機層を減圧下に蒸留した。蒸留物は室温で直ちに固化し、白色固体として2−(4−メトキシフェニル)ピリジン(4−MeO−PPy)を15.1g(81.5mmol)得た。同定はCHN元素分析、1H−NMRで行った。
【化48】
【0113】
次いでこの4−MeO−PPyのメトキシ基を常法に従い加水分解した。即ち、下記スキームに示すように、4−MeO−PPy 15.0g(80.1mmol)を濃塩酸中に溶解させ密閉容器中130℃で4時間攪拌した。反応後、反応液を炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、目的物をクロロホルムで抽出し、抽出物をクロロホルム/ヘキサン溶液より結晶化させ、無色の結晶として2−(4−ヒドロキシフェニル)ピリジン(4−HO−PPy)10.0g(58.5mmol)を得た。同定はCHN元素分析、1H−NMRで行った。
【化49】
【0114】
次いでこの4−HO−PPyを常法に従いヘキサクロロイリジウム酸ナトリウムn水和物(Na3IrCl6・nH2O)と反応させてビス(μ-クロロ)テトラキス(2−(4−ヒドロキシフェニル)ピリジン)ジイリジウム(III)([Ir(4−HO−PPy)2Cl]2)を合成した。即ち、下記スキームに示すように、Na3IrCl6・nH2O 10.0gを2−エトキシエタノールと水の3:1の混合溶媒400ml中に溶解させ、アルゴンガスを30分間吹き込んだ後に、アルゴン気流下で4−HO−PPy 8.6g(50.2mmol)を加えて溶解させ、5時間還流した。反応後、溶媒を留去し、エタノールより再結晶させ、赤橙色の結晶として[Ir(4−HO−PPy)2Cl]2 5.88g(5.18mmol)を得た。同定はCHN元素分析、1H−NMRで行った。
【化50】
【0115】
次いでこの[Ir(4−HO−PPy)2Cl]2を、常法に従いトリフルオロメチルスルホン酸銀(I)(AgCF3SO3)の存在下に2−フェニルピリジン(PPy)と反応させた。即ち、下記スキームに示すように、アルゴン気流下にて[Ir(4−HO−PPy)2Cl]2 3.98g(3.5mmol)とPPy 15.5g(10.0mmol)の脱水トルエン懸濁液にAgCF3SO3を1.98g加え、6時間還流した。反応液をシリカゲルカラムで精製した後、溶媒を留去し、黄色粉末としてビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)ピリジン)(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(4−HO−PPy)2(PPy))2.20g(3.2mmol)を得た。同定はCHN元素分析、1H−NMRで行った。
【化51】
【0116】
次いで、下記スキームに示すように、アルゴン気流下にて、Ir(4−HO−PPy)2(PPy) 1.37g(2.0mmol)、脱酸剤としてのトリエチルアミン(TEA)0.81g(8.0mmol)の脱水THF溶液にメタクリル酸クロライド0.50g(4.8mmol)を加えて20℃で5時間反応させた。反応液からトリエチルアミンの塩酸塩を濾別し、濾液をシリカゲルカラムで精製した後、溶媒を留去し、ビス((2−(4−(2−メタクリロイルオキシ)フェニル)ピリジン)(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(4−MA−PPy)2(PPy))1.55g(1.88mmol)を得た。同定はCHN元素分析、1H−NMRで行った。
【化52】
【0117】
<実施例9>:発光材料製造例;燐光高分子用重合性化合物:Ir(4−MOI−PPy)2(PPy)の合成
下記スキームに示すように、アルゴン気流下にて、実施例8と同様に合成したIr(4−HO−PPy)2(PPy) 1.37g(2.0mmol)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)18mg、ジブチル錫(IV)ジラウレート(DBTL)26mgの脱水THF溶液にメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI、昭和電工製)0.75g(4.83mmol)を加えて50℃で1時間反応させた。反応液をシリカゲルカラムで精製した後、溶媒を留去し、ビス((2−(4−(2−メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ)フェニル)ピリジン)(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(MOI−PPy)2(PPy))1.68g(1.68mmol)を得た。同定はCHN元素分析、1H−NMRで行った。
【化53】
【0118】
<参考例10〜12、14〜16、実施例13、17>: 有機発光素子の作製、評価
実施例8、9で合成した2種の燐光高分子用重合性化合物、Ir(4−MA−PPy)2(PPy)、Ir(4−MOI−PPy)2(PPy)のそれぞれのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)の5wt%溶液をポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT、バイエル社製)が500Åの厚さで予め塗布成膜されたITO陽極(ガラス基板上にITOが塗布されたもの)上にスピンコート法により5mm×5mmの大きさに塗布後、窒素雰囲気で60℃加熱2時間行い、燐光高分子用重合性化合物を架橋熱重合/60℃3時間真空乾燥することにより、各厚さ約1000Åの各燐光性高分子層(Ir(4−MA−PPy)2(PPy)架橋重合体、Ir(4−MOI−PPy)2(PPy)架橋重合体)をPEDOT/ITO陽極上に各4個ずつ成膜し、発光層を形成した。これら2種、各4個の燐光性高分子/PEDOT/ITO電極上に電子輸送材料として参考例1,3,5,実施例7で合成したPPQ、PPQE、PPQOM、PSTQの3wt%溶液を各発光層につき1種ずつスピンコ−トにより成膜後、60℃3時間真空乾燥することにより、各厚さ約500Åの電子輸送層を形成させた。ついで陰極としてAg/Mgを重量比9/1で約1000Åの厚さに成膜し、発光層、電子輸送層のことなる6種の有機発光素子を作製した。これら素子をアルゴン雰囲気のグローブボックス中でリード線をつけガラス容器内にアルゴン雰囲気で密閉し、発光評価に用いた。
【0119】
発光輝度は電源として、(株)アドバンテスト社製 プログラマブル直流電圧/電流源TR6143を用い、参考例および実施例において得られた有機発光素子に電圧を印加し、発光輝度を(株)トプコン社製 輝度計 BM−8を用いて測定した。
【0120】
上記発光素子に直流電源を引加したところ、発光開始電圧、10Vでの初期輝度、その後10Vで固定し連続発光させた場合の240時間後の輝度は表1の如くなった。
【0121】
<比較例1〜4>:有機発光素子の作成、評価
参考例10、14の2種の燐光性高分子系有機発光素子の電子輸送層を省略、または電子輸送層としてPBD(2−(4−biphenylyl)−5−(4−tert−butylphenyl)−1,3,4−oxadiazol)を約500Åの厚さに真空蒸着により成膜した以外は参考例10、14と同様の有機発光素子を作製し、直流電源を引加したところ、発光開始電圧、10Vでの初期輝度、その後10Vで固定し連続発光させた場合の240時間後の輝度は表2の如くなった。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
【発明の効果】
本発明のキノキサリン構造を有する高分子からなる電子輸送材料を用いることにより、高輝度で耐久性のある有機発光素子を提供することが可能となる。
【0125】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機発光素子の断面図の例である。
【0126】
【符号の説明】
1 ガラス基板
2 陽極
3 ホール輸送層
4 発光層
5 電子輸送層
6 陰極
Claims (15)
- モノマーの一種類として一般式(7)で表される重合性官能基を有するキノキサリン系化合物を重合して得られる、一般式(1)で表されるキノキサリン構造を側鎖に含む重合体を含有することを特徴とする電子輸送材料。
- モノマーの一種類として一般式(7)で表される重合性官能基を有するキノキサリン系化合物を重合することを特徴とする、一般式(1)で表されるキノキサリン構造を側鎖に含む重合体を含有する電子輸送材料の製造方法。
- 請求項1に記載の電子輸送材料を用いることを特徴とする有機発光素子。
- 発光層、電子輸送層の少なくとも2層構造からなる有機発光素子において、請求項1に記載の電子輸送材料が厚み100Å以上5000Å以下で形成された電子輸送層を用いることを特徴とする有機発光素子。
- 発光材料と電子輸送材料が混合された発光層を有する有機発光素子において、電子輸送材料に請求項1に記載の電子輸送材料を用いることを特徴とする有機発光素子。
- 請求項1に記載の電子輸送材料を溶かした溶液を下地層上に塗布成膜後、溶媒を除去することを特徴とする有機発光素子の製造方法。
- 一般式(7)で表される重合性官能基を有するキノキサリン系化合物を下地層上に塗布成膜後、重合し、一般式(1)で表されるキノキサリン構造を側鎖に含む重合体を含有する電子輸送材料を含む層を形成することを特徴とする有機発光素子の製造方法。
- 下地層が発光層である請求項6または7のいずれか一つに記載の有機発光素子の製造方法。
- 発光材料と電子輸送材料が混合された発光層を有する有機発光素子において、請求項1に記載の電子輸送材料と発光材料を溶かした溶液を下地層上に塗布成膜後、溶媒を除去することを特徴とする有機発光素子の製造方法。
- 一般式(7)で表される重合性官能基を有するキノキサリン系化合物と発光材料を溶かした溶液を下地層上に塗布成膜後、キノキサリン系化合物を重合し、一般式(1)で表されるキノキサリン構造を側鎖に含む重合体を含有する電子輸送材料を含む層を形成することを特徴とする有機発光素子の製造方法。
- 下地層が電極またはホール輸送層である請求項9または10のいずれか一つに記載の有機発光素子の製造方法。
- 発光材料の発光部位が励起三重項状態からの発光あるいは励起三重項状態を経由する発光であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一つに記載の有機発光素子。
- 発光材料の発光部位が金属錯体であることを特徴とする請求項3〜5、12のいずれか一つに記載の有機発光素子。
- 発光材料が高分子発光材料であることを特徴とする請求項3〜5、12、13のいずれか一つに記載の有機発光素子。
- 発光材料が重合性発光材料を重合することにより得られる高分子発光材料であることを特徴とする請求項3〜5、12〜14のいずれか一つに記載の有機発光素子。
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