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JP4854359B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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JP4854359B2 JP2006090195A JP2006090195A JP4854359B2 JP 4854359 B2 JP4854359 B2 JP 4854359B2 JP 2006090195 A JP2006090195 A JP 2006090195A JP 2006090195 A JP2006090195 A JP 2006090195A JP 4854359 B2 JP4854359 B2 JP 4854359B2
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Description

本発明は、優れた耐欠損性を有し、さらには優れた耐摩耗性をも有しうる硬質被覆層を表面に被着形成した表面被覆切削工具に関する。
従来より、基体の表面に硬質被覆層が被着形成された表面被覆工具が各種用途に用いられている。例えば、金属の切削加工に広く用いられている切削工具は、超硬合金やサーメット、セラミックス等の硬質基体の表面に、TiC層、TiN層、TiCN層、Al層およびTiAlN層等の硬質被覆層が単層または複数層形成された工具が多用されている。
一方、最近の切削加工の高能率化に伴って、さらなる耐欠損性・耐摩耗性の向上が求められている。特に、金属の重断続切削等の大きな衝撃が切刃にかかるような切削が増えており、かかる過酷な切削条件下においては従来の工具では硬質被覆層が大きな衝撃に耐えきれず、チッピングや硬質被覆層の剥離が発生しやすく、これが引き金となって切刃の欠損や異常摩耗の発生等の突発的な工具損傷により工具寿命を長くできないという問題があった。
そこで、上記硬質被覆層の特性改善のために、特許文献1には、(422)面に最高ピーク強度を示すTiCN層を1層目に形成することにより、TiCN層の付着力が高くなり基体および他の硬質層との密着力を高めることができることが記載されている。
また、特許文献2においては、TiCN層の結晶面の(422)面と(311)面における配向係数がTc422,Tc311を最適化することによって、耐摩耗性および耐欠損性を向上させることが記載されている。
さらに、特許文献3において、TiCN層のX線回折分析における(311)面と(200)面のピーク強度の比率を厚み方向で漸次変化させることによって、TiCN層の耐摩耗性と耐欠損性を向上させることが記載されている。
またさらに、特許文献4において、(111)面に最高ピーク強度を示すTiCN層を被覆形成することにより、使用寿命が長くなることが記載されている。
さらに、特許文献5において、TiCN層の結晶粒のアスペクト比が6以上であることなどにより、前記TiCN層を含む微細柱状結晶構造のTiCN膜が、柱状結晶粒界に発生する亀裂によって剥離することを抑制することが記載されている。
特開平5−220604号公報 特開1999−140647号公報 特開1995−100701号公報 特開平8−90310号公報 特開2002−233902号公報
上記特許文献1、2および3には、(422)面に最高ピーク強度を示すTiCN層が、基体との密着性および耐摩耗性および耐欠損性に優れるとある。しかし、このようにTiCN層のX線回折分析によって測定される結晶面のピーク強度を最適化するだけでは、同号公報の実施例に記載された切削条件よりさらに過酷な切削条件、特に高速の荒加工のような、耐摩耗性及び刃先の強度が必要となる過酷な切削条件においては、依然として切刃のチッピングの発生や早期の摩耗の進行によって、工具寿命が短くなってしまうという問題があった。
また、上記特許文献4には、(111)面に最高ピーク強度を示すTiCN層が、逃げ面摩耗を抑制することができるとある。しかし、このような構成とするだけでは、層厚み方向からの衝撃、すなわち、縦方向の衝撃には弱く、チッピングおよび硬質被覆層の剥離が生じてしまうという問題があった。
さらに、上記特許文献5には、微細柱状結晶構造のTiCN膜が、柱状TiCN粒子と粒状TiCN粒子を混在させた層を第二層として具備し、第三層のTiCN層のアスペクト比を規定することで、柱状結晶粒界に発生する亀裂による剥離を抑制するとある。しかし、このような構成では、層厚み方向からの衝撃に対しては弱く、膜の剥離を十分抑制することはできないという問題があった。
従って、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、柱状晶TiCN層の特性である高硬度および優れた耐摩耗性を発揮するとともに、刃先の強度が高く、特に層厚み方向からの衝撃に強く、耐チッピング性に優れた表面被覆切削工具を提供することを目的とし、とりわけ鋼等の金属の切削、中でも鋳鉄の高速荒加工等の工具切刃に強い衝撃がかかり、耐摩耗性を要求されるような過酷な切削条件においても、優れた耐チッピング性および耐摩耗性を有する表面被覆切削工具を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題に対し、鋭意研究を重ねた結果、TiCN層の粒子幅を小さくし、かつ、硬質被覆層の表面を適正なものとすることによって、特に層厚み方向からの衝撃に強い、耐欠損性および耐摩耗性に優れた、高硬度で高強度な表面被覆切削工具を得ることができた。
つまり、本発明の表面被覆切削工具は、基体の表面に、基体に対して垂直に伸びる柱状粒子からなる炭窒化チタン層を含む硬質被覆層を有する表面被覆切削工具において、前記
前記炭窒化チタン層の粒子幅が0.01〜0.1μmであるとともに、前記硬質被覆層のJIS B0601’01に準拠して測定されるRsmが18〜30μmであり、前記硬質被覆層のRzが3〜9μm、X線回折分析における前記炭窒化チタン層の最強ピークが、(111)結晶面を表すピークであるとともに、下記に示される式で算出される前記炭窒化チタン層の(111)面における配向係数T が1.1以上であることを特徴とする表面被覆切削工具である。
=[I(111)/I (111)][1/8Σ(I(hkl)/I (hkl))] −1
但し、
I(111) :(111)面におけるX線回折ピーク強度測定値
(111):JCPDSカード番号No.6‐0614(炭化チタン)とNo.6‐0642(窒化チタン)に記載の結晶面の(111)面における標準X線回折ピーク強度の平均値
Σ(I(hkl)/I (hkl)):(111)、(200)、(220)、(311)、(222)、(331)、(420)、(422)面における[X線回折ピーク強度測定値]/[JCPDSカード番号No.6‐0614(炭化チタン)とNo.6‐0642(窒化チタン)に記載の標準X線回折ピーク強度の平均値]の値の合計
また、前記硬質被覆層のRzがμmとすることによって、TiCN層の粒子の成長方向を適正化することができ、TiCN層の層厚み方向からの衝撃に対するTiCN層の強度を向上させることができるとともに溶着を防ぐことができ、表面被覆切削工具の耐チッピング性および耐溶着性を向上させることができるため重要である
さらに、X線回折分析における前記炭窒化チタン層の最強ピークが、(111)結晶面を表すピークであることによって、より炭窒化チタン層の結晶の結合が安定し、前記炭窒化チタン層の強度が向上して、逃げ面摩耗などを抑制することができるため重要である
ここで、下記に示される式で算出される前記炭窒化チタン層の(111)面における配向係数 が1.1以上であることによって、炭窒化チタン層の粒子間の接触面積が増えることにより、炭窒化チタン層を破壊する際に必要なエネルギーが大きくなり、炭窒化チタン層の強度をより高くすることができ、表面被覆切削工具の耐摩耗性を向上させることができるため重要である
=[I(111)/I (111)][1/8Σ(I(hkl)/I (hkl))] −1
但し、
I(111):(111)面におけるX線回折ピーク強度測定値
(111):JCPDSカード番号No.6‐0614(炭化チタン)とNo.6‐0642(窒化チタン)に記載の結晶面の(111)面における標準X線回折ピーク強度の平均値
Σ(I(hkl)/I (hkl)):(111)、(200)、(220)、(311)、(222)、(331)、(420)、(422)面における[X線回折ピーク強度測定値]/[JCPDSカード番号No.6‐0614(炭化チタン)とNo.6‐0642(窒化チタン)に記載の標準X線回折ピーク強度の平均値]の値の合計
記炭窒化チタン層を構成する粒子のアスペクト比を10〜500の範囲内とすることによって、炭窒化チタン層の硬度と強度を共に高くすることができ、耐摩耗性および耐チッピング性を共に優れたものとすることができるため望ましい。
また、前記炭窒化チタン層の層厚みを3〜10μmの範囲内とすることによって、硬質被覆層の剥離を防ぐと共に、十分な耐摩耗性を得ることができるため望ましい。
本発明の表面被覆工具によれば、基体の表面に、基体に対して垂直に伸びる柱状粒子からなる炭窒化チタン層を含む硬質被覆層を有する表面被覆切削工具において、前記炭窒化チタン層の粒子幅が0.01〜0.1μmであるとともに、前記硬質被覆層のRsmを18〜30μmとすることによって、特に層厚み方向からの衝撃に強い、高硬度かつ高強度な炭窒化チタン層とすることができ、耐摩耗性および耐チッピング性の高い硬質被覆層となるので、高速荒加工のような耐摩耗性が求められ、かつ刃先に大きな負荷がかかるような切削条件に対しても、耐摩耗性が高くなるとともに、刃先がチッピングしたり剥離したりすることを低減することができる。
したがって、鋼等の金属の切削、中でも鋳鉄等の高速荒加工等の、工具切刃に強い衝撃がかかり、耐摩耗性が要求されるような過酷な切削条件においても、優れた耐チッピング性および耐摩耗性を有する表面被覆切削工具とすることができる。
本発明の一実施例である旋削用のスローアウェイチップタイプの表面被覆切削工具(以下、単に工具と称す)1について説明する。
本発明の工具1は、主面にすくい面、側面に逃げ面を配し、該すくい面と逃げ面との交差稜線部に切刃を具備する略平板状の形状の基体からなる。
上記基体の表面に化学蒸着法(CVD)や物理蒸着法(PVD)といった公知の成膜方法によって硬質被覆層を成膜する。本実施例はCVDによって成膜することを例として説明する。
ここで、本発明の工具1は、基体の表面に、基体に対して垂直に伸びる柱状粒子からなる炭窒化チタン層を含む硬質被覆層を有する表面被覆切削工具において、前記炭窒化チタン層の粒子幅が0.01〜0.1μmであるとともに、前記硬質被覆層のRsmが18〜30μmであることを特徴とするものである。
このような構成とすることによって、炭窒化チタン層粒子の粒子幅および硬質被覆層のRsmを最適化させることにより、炭窒化チタン層粒子の成長方向を母材のうねりに沿って変化させることができるため、層の厚み方向からかかる衝撃を分散させることができ、硬質被覆層のチッピングを防ぐことができる。
つまり、炭窒化チタン層粒子の粒子幅が0.01μmを下回ると、炭窒化チタン層と基体との密着力が低下してしまい、膜剥離が発生しやすくなるため、異常摩耗や、突発欠損が発生してしまう。
一方、炭窒化チタン層粒子の粒子幅が0.5μmを超えると、炭窒化チタン層粒子が母材のうねりに沿って成長しにくくなるとともに、炭窒化チタン層の硬度が十分ではなくなってしまい、耐摩耗性が低下してしまう。
さらに、硬質被覆層のRsmが18μm未満だと、柱状晶のアスペクト比が大きくなりづらく、柱状晶の配向がランダムになりやすくなり、炭窒化チタン層の強度が低下し、すくい面方向からの衝撃や負荷による耐チッピング性が低下してしまう。
一方、硬質被覆層のRsmが30μmを越えると、炭窒化チタン層結晶の成長方向が母材と硬質被覆層の境界面に対してほぼ垂直となり、炭窒化チタン層の厚み方向、すなわち母材と硬質被覆層の境界面に対して垂直方向への割れを抑制しにくくなり、やはり炭窒化チタン層の強度が低下し、層厚み方向からの衝撃や負荷による耐チッピング性が低下してしまう。
ここで、炭窒化チタン層の粒子幅の測定方法としては、炭窒化チタン層を含む、工具1の切断面または破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等によって観察した画像にて、炭窒化チタン層の厚みの中間部分に基体と平行な線分Aを引き、線分Aと炭窒化チタン層の粒界との交点数を算出し、線分Aの長さを前記交点数で割った値をとる。
上記測定を、測定場所を変えて5箇所以上行い、得られた値の平均をとって炭窒化チタン層の平均粒子幅とする。
また、硬質被覆層の表面粗さRsmの測定方法としては、硬質被覆層の表面、すなわち、工具表面であるすくい面上の、刃先からすくい面の中心に向かって300μmの範囲で、ホーニング加工部分以外において、触針式の表面粗さ測定器にて、JIS B0601’01に準拠して測定した。
また、工具1のすくい面に切り屑処理のためのブレーカ溝を設けている際には切削により衝撃や負荷がかかるブレーカ溝部においても、上記の方法で硬質被覆層の表面粗さRsmを測定しても問題ない。
前記硬質被覆層のRzをμmとすることによって、TiCN層の粒子の成長方向を適正化することができ、TiCN層の層厚み方向からの衝撃に対するTiCN層の強度を向上させることができ、表面被覆切削工具の耐チッピング性を向上させることができる。
ここで、硬質被覆層のRzが1μm未満であると、TiCN層の層厚み方向、すなわち、母材と被膜の境界面に対して垂直方向の衝撃に対して弱く、硬質被覆層に亀裂が生じやすくなる。
一方、硬質被覆層のRzが5μmより大きいと、工具表面の凹凸が大きくなってしまい、溶着が生じやすくなってしまう。
なお、硬質被覆層の表面粗さRzの測定も、上記した硬質被覆層のRsmの測定方法と同様に、硬質被覆層の表面、すなわち、工具表面であるすくい面上の、刃先からすくい面の中心に向かって300μmの範囲で、ホーニング加工部分以外において、触針式の表面粗さ測定器にて、JIS B0601’01に準拠して測定可能である。
また、X線回折分析における前記炭窒化チタン層の最強ピークを示す結晶面が(111)面以外になると、炭窒化チタン層の粒子間における結合が弱くなり、炭窒化チタン層の強度が低下してしまい、工具の逃げ面摩耗が大きくなりやすい。
下記に示される式で算出される前記炭窒化チタン層の(111)面における配向係数 が1.1以上であることによって、炭窒化チタン層の粒子間の接触面積が増えることにより、炭窒化チタン層を破壊する際に必要なエネルギーが大きくなり、炭窒化チタン層の強度をより高くすることができ、表面被覆切削工具の耐摩耗性を向上させることができる。
=[I(111)/I (111)][1/8Σ(I(hkl)/I (hkl))] −1
但し、
I(111) :(111)面におけるX線回折ピーク強度測定値
(111):JCPDSカード番号No.6‐0614(炭化チタン)とNo.6‐0642(窒化チタン)に記載の結晶面の(111)面における標準X線回折ピーク強度の平均値
Σ(I(hkl)/I (hkl)):(111)、(200)、(220)、(311)、(222)、(331)、(420)、(422)面における[X線回折ピーク強度測定値]/[JCPDSカード番号No.6‐0614(炭化チタン)とNo.6‐0642(窒化チタン)に記載の標準X線回折ピーク強度の平均値]の値の合計
こで、炭窒化チタン層のX線回折分析による最強ピークをしめす結晶面を測定する際には、Kα線を用いて、20度〜150度まで測定する。また、刃先及びすくい面上の刃
先からすくい面の中心に向かって300μmの範囲内におけるX線回折ピーク強度の測定には、微小X線回折分析(微小XRD)により測定する。また、硬質被覆層が多層構造の場合は、TiCN層より上部の層を研磨加工等の方法により除去した後、露出したTiCN層の露出面について、微小XRDにより測定することが可能である。
前記炭窒化チタン層を構成する粒子のアスペクト比を10〜500の範囲内とすることによって、炭窒化チタン層の硬度と強度を共に高くすることができ、耐摩耗性および耐チッピング性を共に優れたものとすることができる。
ここで、前記アスペクト比の測定方法は、炭窒化チタン層の層厚みを、上記粒子幅の測定方法にて算出した粒子幅にて除することにより算出することができる。なお、前記炭窒化チタン層の層厚みは、炭窒化チタン層を含む任意の切断面または破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等で観察することによって測定し、各任意の5箇所における層厚みの平均値とする。
前記炭窒化チタン層の層厚みを3〜10μmの範囲内とすることによって、硬質被覆層の剥離を防ぐと共に、十分な耐摩耗性を得ることができるため望ましい。
また、工具1に成膜される硬質被覆層としては、炭窒化チタン層のほかに、4,5,6族元素の金属、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウムの炭化物、窒化物、酸化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物からなる層を積層させる多層膜とすることで、硬質被覆層の強度、硬度および耐酸化性と炭窒化チタン層の付着力等とをより向上させることができる。
特に、基体の表面に、チタンの窒化物からなる最下層が形成され、該最下層の直上に前記炭窒化チタン層を形成することによって、炭窒化チタン層の付着力を向上させることができ、母材の成分が炭窒化チタン層に拡散し、炭窒化チタン層の強度および硬度が低下することを防ぐことができるため望ましい。
さらに、最下層のX線回折分析における最強ピークが、(111)結晶面を表すピークとすることによって、炭窒化チタン層の付着力を向上させることができると共に、直上に形成される炭窒化チタン層のX線回折分析における最強ピークを(111)結晶面に容易に調整することができる。
本発明の工具1に用いる基体を構成する硬質材料としては、例えばコバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)などの鉄族金属からなる結合相にて硬質相を結合させた超硬合金やサーメットからなる硬質合金が挙げられる。硬質相としては、例えば炭化タングステン(WC)、炭化チタン(TiC)またはTiCN(TiCN)と、所望により周期律表第4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物の群から選ばれる少なくとも1種からなる。
また、基体を構成する硬質材料の他の例としては、例えば窒化珪素(Si)や酸化アルミニウム(Al)質セラミック焼結体、立方晶窒化ホウ素(cBN)やダイヤモンドを主体とした超硬質焼結体等も適応可能である。
なお、本発明の工具としては、前記硬質合金を使用することが高い切削性能を幅広い種類の被削材に発揮することができるため望ましい。
(製造方法)
次に、本発明の一実施形態である上述した表面被覆切削工具を製造する方法について説明する。
まず、上述した硬質合金を焼成によって形成しうる金属炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物等の無機物粉末に、金属粉末、カーボン粉末等を適宜添加、混合、粉砕し、混合粉末を作製する。
ここで本発明によれば、作製した混合粉末を金型プレス成形によって所定の工具形状に成形して成形体を作製するが、このときに使用する金型の表面の面粗度、Rsmを7〜28μm、好ましくは、Rsmに加えてRzを0.8〜4μmの範囲内に調節したものを使用することなどによって、作製された成形体を焼結したときの表面状態を本発明の範囲内に容易に調節することができる。
次に、作製した成形体を真空中または非酸化性雰囲気中にて焼成することによって上述した硬質材料からなる基体を作製する。
そして、上記基体の表面に所望によって研磨加工や切刃部のホーニング加工を施す。このとき、炭化ケイ素等の比較的やわらかい材質の砥粒を用いて、刃先のみに砥石が当たるように角度を調節して刃先処理を施す。これにより、基体表面において、焼成後の焼結体の表面状態を変化させないようにすることができ、本発明の範囲内にある表面構成を有した硬質被覆層を有した工具を作成することができる。
次に、作製した焼結体の表面に例えば化学気相蒸着(CVD)法によって硬質被覆層を成膜する。まず、反応ガス組成として塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを5〜60体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜1000℃、10〜30kPaの条件で下地層であるTiN層を成膜する。
次に、反応ガス組成として、体積%で塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを5〜60体積%、メタン(CH)ガスを0〜0.1体積%、アセトニトリル(CHCN)ガスを0.1〜2体積%、アセトニトリルガスに対するTiCl4ガスとの流量比率が0.5〜6の範囲内、と残りが水素(H2)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、成膜温度を780〜950℃、5〜25kPaの条件でTiCN層を成膜する。
次に、所望により中間層を成膜する。例えば中間層としてTiCNO層を成膜する場合には、塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜3体積%、メタン(CH)ガスを0.1〜10体積%、二酸化炭素(CO)ガスを0.01〜5体積%、窒素(N)ガスを0〜60体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜1100℃、5〜30kPaとする。
そして、引き続き、Al層を成膜する。Al層の成膜方法としては、塩化アルミニウム(AlCl)ガスを3〜20体積%、塩化水素(HCl)ガスを0.5〜3.5体積%、二酸化炭素(CO)ガスを0.01〜5.0体積%、硫化水素(HS)ガスを0〜0.01体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、900〜1100℃、5〜10kPaとすることが望ましい。
また、表層(TiN層)を成膜するには、反応ガス組成として塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを5〜60体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜1100℃、5〜85kPaとすればよい。
そして、所望により、成膜した硬質被覆層の表面の少なくとも切刃部を研磨加工する。この研磨加工により、硬質被覆層中に残存する残留応力が開放されてさらに耐欠損性に優れた工具となる。
なお、本発明は上記実施態様に限定されるものではなく、例えば、上記説明においては成膜方法として化学蒸着(CVD)法を用いた場合について説明したが、硬質被覆層の一部または全部を物理蒸着(PVD)法によって形成したものであってもよい。
例えば、イオンプレーティング法にてTiCN層を成膜する場合でも、TiCN層の構成を上述した範囲に制御することによって、耐欠損性に優れ、さらに耐摩耗性に優れた工具を作製することができる。
平均粒径1.5μmの金属コバルト(Co)粉末を7質量%、平均粒径2.0μmの炭化チタン(TiC)粉末を0.5質量%、窒化チタン(TiN)粉末を1.0、炭化タンタル(TaC)粉末を3.0質量%、炭化ジルコニウム(ZrC)粉末を1.0質量%、炭化ニオブ(NbC)粉末を1.5質量%、残りが平均粒径1.5μmの炭化タングステン(WC)粉末である割合でそれぞれ添加、混合した。得られた混合粉末を、表1に示す表面粗さを持つ金型を用いたプレス成形により切削工具形状(CNMA120412)に成形して成形体を作製した。その後、得られた成形体に脱バインダ処理を施し、0.01Paの真空中、1500℃で1時間焼成して超硬合金を作製した。さらに、作製した超硬合金に表1に示す加工条件にて刃先処理(ホーニングR)を施し、母材試料No.1〜7の母材を作製した。
Figure 0004854359
次に、上記母材に対して、CVD法により各種の硬質被覆層を表2に示す構成の多層膜からなる硬質被覆層を成膜して、試料No.1〜8の工具を作製した。なお、表2の各層の成膜条件は表3に示した。
Figure 0004854359
Figure 0004854359
得られた工具について、硬質被覆層のうち、研磨加工によって、TiCN層より上部の層を除去し、刃先近傍におけるTiCN層の露出面についてX線回折測定を行った。X線回折測定として、理学電機社製微小部X線回折装置PSPC/MDG−2000を用いて、X線出力はCu−Kα線にて電圧40kV、電流200mAの条件にて行い、コリメータ径は30μm、サンプリング時間は11990秒、ステップ幅は0.02°の条件で微小X線回折測定を行なった。回折チャートにおいてはKα線除去処理を行ったデータを用いて炭窒化チタン層の最強ピークを示す結晶面を割り出した。また、測定されたピーク強度を上記の式に当てはめて、TiCN層の(111)結晶面における配向係数Tを算出した。結果は表4に示した。
また、得られた工具について、硬質被覆層の表面粗さRzおよびRsmを触針式の表面粗さ測定器にて、JIS B0601’01に準拠して測定した。結果は表4に示した。さらに、上記の方法で、TiCN粒子の粒子幅を算出し、平均粒子幅を、TiCNの粒子幅として表4に示した。
さらに、TiCN粒子のアスペクト比を、上記のように、TiCN層の層厚みを測定し、該層厚みおよび前記TiCNの粒子幅を用いて、算出した。結果は、表4に示した。
そして、この切削工具を用いて下記の条件により、連続切削試験および断続切削試験を行い、耐摩耗性および耐欠損性を評価した。
(連続切削条件)
被削材 :ダクタイル鋳鉄スリーブ材(FCD700)
工具形状:CNMA120412
切削速度:250m/分
送り速度:0.3mm/rev
切り込み:2mm
切削時間:20分
その他 :水溶性切削液使用
評価項目:20分間切削した後、顕微鏡にて切刃を観察し、フランク摩耗量・先端摩耗量を測定
(断続切削条件)
被削材 :ダクタイル鋳鉄4本溝付スリーブ材(FCD700)
工具形状:CNMA120412
切削速度:250m/分
送り速度:0.3〜0.5mm/rev
切り込み:2mm
その他 :水溶性切削液使用
評価項目:欠損に至る衝撃回数
衝撃回数1000回時点で顕微鏡にて切刃の硬質被覆層の剥離状態を観察
Figure 0004854359
表4より、炭窒化チタン層の粒子の粒子幅または硬質被覆層の表面粗さRsmが本発明の範囲内ではない試料No.6〜8では、刃先にチッピングが早期に発生し、耐摩耗性および耐欠損性共に不十分なものとなった。なお、表2、4の試料No.1−3は参考例、試料No.6−8は比較例試料を示す。
これに対して、本発明に従い、炭窒化チタン層の粒子の粒子幅および硬質被覆層の表面粗さRsmを本発明の範囲内にした試料No.1〜5では、刃先のチッピングもほとんど発生せずに、良好な耐摩耗性、耐欠損性を発揮し、優れた切削性能を有するものであった。

Claims (3)

  1. 基体の表面に、基体に対して垂直に伸びる柱状粒子からなる炭窒化チタン層を含む硬質被覆層を有する表面被覆切削工具において、前記炭窒化チタン層の粒子幅が0.01〜0.1μmであるとともに、前記硬質被覆層のJIS B0601’01に準拠して測定されるRsmが18〜30μmであり、前記硬質被覆層のRzが3〜9μm、X線回折分析における前記炭窒化チタン層の最強ピークが、(111)結晶面を表すピークであるとともに、下記に示される式で算出される前記炭窒化チタン層の(111)面における配向係数T が1.1以上であることを特徴とする表面被覆切削工具。
    =[I(111)/I (111)][1/8Σ(I(hkl)/I (hkl))] −1
    但し、
    I(111) :(111)面におけるX線回折ピーク強度測定値
    (111):JCPDSカード番号No.6‐0614(炭化チタン)とNo.6‐0642(窒化チタン)に記載の結晶面の(111)面における標準X線回折ピーク強度の平均値
    Σ(I(hkl)/I (hkl)):(111)、(200)、(220)、(311)、(222)、(331)、(420)、(422)面における[X線回折ピーク強度測定値]/[JCPDSカード番号No.6‐0614(炭化チタン)とNo.6‐0642(窒化チタン)に記載の標準X線回折ピーク強度の平均値]の値の合計
  2. 前記炭窒化チタン層を構成する粒子のアスペクト比が10〜500の範囲内であることを特徴とする請求項に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記炭窒化チタン層の層厚みが3〜10μmの範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
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