以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置(以下、「ブレーキ液圧制御装置」という。)Uは、基体1と、電磁弁2,3と、リザーバ4と、ポンプ5と、モータ6と、電子制御ユニット(制御装置)7と、ハウジング(コントロールハウジング)8とを備えて構成されている。ハウジング8は、基体1の前面(一面)1aに組み付けられ、その内部に電子制御ユニット7を収容している。モータ6は、基体1の後面1b(図2参照)に組み付けられている。
(液圧回路)
本発明に係るブレーキ液圧制御装置Uは、第1の操作子にて作動される第1のマスタシリンダからの液圧により第1の車輪ブレーキを作動させる第1ブレーキ系統と、第2の操作子にて作動される第2のマスタシリンダからの液圧により第2の車輪ブレーキを作動させる第2ブレーキ系統と、前記第2の操作子にて作動される第2のマスタシリンダからの液圧により前記第1の車輪ブレーキを作動させる連動ブレーキ系統と、を備えている。本実施形態では、第1ブレーキ系統が、前輪を制動させる前輪ブレーキ系統BSF(図10参照)、第2ブレーキ系統が、後輪を制動させる後輪ブレーキ系統BSR(図10参照)、連動ブレーキ系統が、後輪用の操作子で前輪の車輪ブレーキを作動させる連動ブレーキ系統BSC(図10参照)に相当する。
本実施形態のブレーキ液圧制御装置Uは、図10に示す液圧回路を具現化したものである。図10に示すように、ブレーキ液圧制御装置Uは、前輪用のマスタシリンダ(第1のマスタシリンダ)MFおよび後輪用のマスタシリンダ(第2のマスタシリンダ)MRと、前輪の車輪ブレーキ(第1の車輪ブレーキ)BFのホイールシリンダWF,WCおよび後輪の車輪ブレーキ(第2の車輪ブレーキ)BRのホイールシリンダWRとの間に介設されるものである。ブレーキ液圧制御装置Uは、前輪用の操作子(ブレーキレバーLF)で前輪の車輪ブレーキBFを作動させる前輪ブレーキ系統(第1ブレーキ系統)BSFと、後輪用の操作子(ブレーキペダルLR)で後輪の車輪ブレーキBRを作動させる後輪ブレーキ系統(第2ブレーキ系統)BSRと、後輪用の操作子(ブレーキペダルLR)で前輪の車輪ブレーキBFを作動させる連動ブレーキ系統BSCとを備えて構成されている。前輪ブレーキ系統BSFと後輪ブレーキ系統BSRの二系統は互いに独立しており、連動ブレーキ系統BSCは、後輪ブレーキ系統BSRに連結されている。ブレーキ液圧制御装置Uは、前輪に装着された車輪ブレーキBFおよび後輪に装着された車輪ブレーキBRに付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御することによって、各車輪ブレーキBF,BRの独立したアンチロックブレーキ制御が可能になっている。
前輪用のマスタシリンダMFは、ブレーキ液を貯蔵するブレーキ液タンク室が接続されたシリンダ(図示せず)を有しており、シリンダ内には第1の操作子であるブレーキレバーLFの操作によりシリンダの軸方向へ摺動してブレーキ液を流出するロッドピストン(図示せず)が組み付けられている。また、後輪用のマスタシリンダMRは、ブレーキ液を貯蔵するブレーキ液タンク室が接続されたシリンダ(図示せず)を有しており、シリンダ内には第2の操作子であるブレーキペダルLRの操作によりシリンダの軸方向へ摺動してブレーキ液を流出するロッドピストン(図示せず)が組み付けられている。
前輪ブレーキ系統BSFは、マスタシリンダMF側の入口ポート11Fから車輪ブレーキBF側の出口ポート12Fに至る系統である。なお、入口ポート11Fには、液圧源であるマスタシリンダMFに至る配管H1が接続され、出口ポート12Fには、前輪のホイールシリンダWFに至る配管H2が接続されている。
後輪ブレーキ系統BSRは、マスタシリンダMR側の入口ポート11Rから車輪ブレーキBR側の出口ポート12Rに至る系統である。なお、入口ポート11Rには、マスタシリンダMFとは別の液圧源であるマスタシリンダMRに至る配管H1が接続され、出口ポート12Rには、後輪のホイールシリンダWRに至る配管H2が接続されている。
連動ブレーキ系統BSCは、後輪ブレーキ系統BSRの後記する出力液圧路Aと開放路Bに接続され、車輪ブレーキBF側の接続ポート(接続部)12Cに至る系統である。なお、接続ポート12Cには、前輪のホイールシリンダWCに至る配管H3が接続されている。配管H3には、遅延バルブ(Delay Valve)62が設けられている。遅延バルブ62は、後輪の車輪ブレーキBRに対して前輪の車輪ブレーキBFを遅れて作動させて、車輪ブレーキBFの効きをスムーズにしている。
このように、ブレーキ液圧制御装置Uは、前記3つの前輪ブレーキ系統BSF,後輪ブレーキ系統BSRおよび連動ブレーキ系統BSCの3つのブレーキ系統から構成されるが、前輪ブレーキ系統BSFと後輪ブレーキ系統BSRは同一の構成であるので、以下においては、まず主として前輪ブレーキ系統BSFについて説明し、その後、後輪ブレーキ系統BSRと合わせて連動ブレーキ系統BSCについて説明する。
前輪ブレーキ系統BSFには、制御弁手段V、リザーバ4、ポンプ5などが設けられている。
なお、以下では、入口ポート11F(11R)から出口ポート12F(12R)に至る流路(油路)を「出力液圧路A」と称し、出力液圧路Aから後記する出口弁を通ってリザーバ4に至る流路を「開放路B」と称する。また、開放路Bからポンプ5を通って出力液圧路Aに至る流路を「戻し路C」と称する。
制御弁手段Vは、出力液圧路Aを開放しつつ開放路Bを遮断する状態、出力液圧路Aを遮断しつつ開放路Bを開放する状態、および出力液圧路Aと開放路Bを遮断する状態を切り換える機能を有しており、入口弁となる電磁弁2、チェック弁2aおよび出口弁となる電磁弁3を備えて構成されている。
入口弁となる電磁弁2は、出力液圧路Aに設けられた常開型の電磁弁であり、開弁状態にあるときにマスタシリンダMF側から車輪ブレーキBF側へのブレーキ液の流入を許容し、閉弁状態にあるときに遮断する。電磁弁2は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが電子制御ユニット7と電気的に接続されており、電子制御ユニット7からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると閉弁し、電磁コイルを消磁すると開弁する。
チェック弁2aは、入口弁となる電磁弁2を迂回するように設けられた流路に設けられており、車輪ブレーキBF側からマスタシリンダMF側へのブレーキ液の流入のみを許容する。
出口弁となる電磁弁3は、開放路Bに設けられた常閉型の電磁弁であり、閉弁状態にあるときに車輪ブレーキBF側からリザーバ4側へのブレーキ液の流入を遮断し、開弁状態にあるときに許容する。電磁弁3は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが電子制御ユニット7と電気的に接続されており、電子制御ユニット7からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると開弁し、電磁コイルを消磁すると閉弁する。
リザーバ4は、出口弁となる電磁弁3が開放されることによって開放路Bを通って逃がされるブレーキ液(すなわち、ホイールシリンダから流出したブレーキ液)を一時的に貯溜する機能を有している。
ポンプ5は、戻し路Cに設けられており、モータ6の回転力によって駆動し、リザーバ4に一時的に貯溜されたブレーキ液を吸入して出力液圧路A側に吐出する。つまり、ポンプ5は、リザーバ4に貯溜されたブレーキ液をマスタシリンダMF側に戻す役割を担っている。ポンプ5には、その吸入側に、リザーバ4側から出力液圧路A側へのブレーキ液の流入のみを許容する吸入弁57が接続されている。ポンプ5の吐出側には、リザーバ4側から出力液圧路A側へのブレーキ液の流入のみを許容する吐出弁56が設けられている。
また、戻し路Cには、吐出弁56よりも出力液圧路A側に、ポンプ5から吐出されたブレーキ液の脈動を減衰させるオリフィス58およびダンパ59が設けられている。
モータ6は、前輪ブレーキ系統BSFにあるポンプ5および後輪ブレーキ系統BSRにあるポンプ5の共通の動力源であり、電子制御ユニット7からの指令に基づいて作動する。
電子制御ユニット7は、図示しない前輪に固定されたパルサーギアの側面に対向して固定配置される前輪用の車輪速度センサSFおよび同じく図示しない後輪に固定されたパルサーギアの側面に対向して固定配置される後輪用の車輪速度センサSRからの出力に基づいて、電磁弁2,3およびモータ6の作動を制御する。
後輪ブレーキ系統BSRにも、前輪ブレーキ系統BSFと同様に制御弁手段V、リザーバ4、ポンプ5などが設けられており、後輪ブレーキ系統BSRは、前輪ブレーキ系統BSFと同様の構成を備えている。
連動ブレーキ系統BSCには、制御弁手段Vが設けられている。連動ブレーキ系統BSCにおいては、リザーバおよびポンプが後輪ブレーキ系統BSRのリザーバ4およびポンプ5と共有されるようになっている。
なお、以下では、後輪ブレーキ系統BSRの出力液圧路Aから分岐して接続ポート12Cに至る流路(油路)を「連動用出力液圧路D」と称し、連動用出力液圧路Dから後記する出口弁を通って後輪ブレーキ系統BSRの開放路Bに繋がる流路を「連動用開放路E」と称する。なお、リザーバ4からポンプ5を介してブレーキ液を出力液圧路A側に戻す「戻し路」は、後輪ブレーキ系統BSRの戻し路Cと共有されている。
制御弁手段Vは、出力液圧路Aから分岐した連動用出力液圧路Dを開放しつつ開放路Bに繋がる連動用開放路Eを遮断する状態、連動用出力液圧路Dを遮断しつつ連動用開放路Eを開放する状態、および連動用出力液圧路Dと連動用開放路Eを遮断する状態を切り換える機能を有しており、入口弁となる電磁弁2、チェック弁2aおよび出口弁となる電磁弁3を備えて構成されている。
入口弁となる電磁弁2は、連動用出力液圧路Dに設けられた常開型の電磁弁であり、開弁状態にあるときに後輪用のマスタシリンダMR側から前輪用の車輪ブレーキBF側へのブレーキ液の流入を許容し、閉弁状態にあるときに遮断する。
チェック弁2aは、入口弁となる電磁弁2を迂回するように設けられた流路に設けられており、車輪ブレーキBF側からマスタシリンダMR側へのブレーキ液の流入のみを許容する。
出口弁となる電磁弁3は、連動用開放路Eに設けられた常閉型の電磁弁であり、閉弁状態にあるときに車輪ブレーキBFのホイールシリンダWC側から後輪ブレーキ系統BSRのリザーバ4側へのブレーキ液の流入を遮断し、開弁状態にあるときに許容する。
次に、図10の液圧回路を参照しつつ、電子制御ユニット7によって実現される通常のブレーキ制御(連動ブレーキ制御も含む)およびアンチロックブレーキ制御について説明する。
(通常のブレーキ制御)
各車輪がロックする可能性のない通常のブレーキ制御時においては、電磁弁2,3を駆動させる電磁コイルは、いずれも電子制御ユニット7によって消磁させられる。つまり、通常のブレーキ制御においては、入口弁となる電磁弁2が開弁状態になっており、出口弁となる電磁弁3が閉弁状態になっている。
このような状態のときに運転者が前輪用のブレーキレバーLFを操作すると、その操作力に起因して発生したブレーキ液圧は、出力液圧路Aを介してそのままホイールシリンダWFに伝達され、その結果、前輪が制動されることとなる。なお、ブレーキレバーLFの操作を解除すると、出力液圧路Aに供給されたブレーキ液は、マスタシリンダMFに戻される。
一方、運転者が後輪用のブレーキペダルLRを操作すると、その操作力に起因して発生したブレーキ液圧は、出力液圧路Aを介してそのまま後輪のホイールシリンダWRに伝達されるとともに、出力液圧路Aから分岐して連動用出力液圧路Dへと伝わり前輪のホイールシリンダWCに伝達される。その結果、後輪が制動されるとともにこれに連動して前輪も制動されることとなる。なお、ブレーキペダルLRの操作を解除すると、出力液圧路Aおよび連動用出力液圧路Dに供給されたブレーキ液は、マスタシリンダMRに戻される。
(アンチロックブレーキ制御)
アンチロックブレーキ制御は、車輪がロック状態に陥りそうになったときに実行されるものであり、ロック状態に陥りそうな車輪のホイールシリンダWF,WC,WRに対応する制御弁手段Vをそれぞれ制御して、ホイールシリンダWF,WC,WRに作用するブレーキ液圧を減圧、増圧あるいは一定に保持する状態を適宜選択することによって実現される。なお、減圧、増圧および保持のいずれを選択するかは、前輪用の車輪速度センサSFおよび後輪用の車輪速度センサSRから得られた車輪速度に基づいて、電子制御ユニット7によって判断される。
以下に、前輪ブレーキ系統BSF、後輪ブレーキ系統BSRおよび連動ブレーキ系統BSCの作動時に前輪がロック状態に陥りそうになったときのアンチロックブレーキ制御を例に挙げて説明する。
電子制御ユニット7において前輪のホイールシリンダWF,WCに作用するブレーキ液圧を減圧すべきであると判断された場合には、前輪ブレーキ系統BSFおよび連動ブレーキ系統BSCの制御弁手段V,Vにより前輪ブレーキ系統BSFの出力液圧路Aおよび連動ブレーキ系統BSCの連動用出力液圧路Dが遮断され、前輪ブレーキ系統BSFの開放路Bおよび連動ブレーキ系統BSCの連動用開放路Eが開放される。具体的には、電子制御ユニット7により前輪ブレーキ系統BSFの電磁弁(入口弁)2および連動ブレーキ系統BSCの電磁弁(入口弁)2を励磁して閉弁状態にするとともに、前輪ブレーキ系統BSFの電磁弁(出口弁)3および連動ブレーキ系統BSCの電磁弁(出口弁)3を励磁して開弁状態にする。このようにすると、出力液圧路Aのブレーキ液が開放路Bを通って前輪ブレーキ系統BSFのリザーバ4に流入するとともに連動用出力液圧路Dのブレーキ液が連動用開放路Eおよび後輪ブレーキ系統BSRの開放路Bを通って後輪ブレーキ系統BSRのリザーバ4に流入する。その結果、前輪のホイールシリンダWF,WCに作用していたブレーキ液圧が減圧される。
なお、アンチロックブレーキ制御を実行する場合には、電子制御ユニット7によりモータ6を駆動させる。モータ6が駆動すると、これに伴ってポンプ5が作動し、各リザーバ4,4に貯溜されたブレーキ液が戻し路C,Cを介して出力液圧路Aおよび連動用出力液圧路Dにそれぞれ還流される。また、ポンプ5が作動することにより戻し路C等に発生する脈動は、オリフィス58およびダンパ59の作用によって吸収・抑制されるので、ポンプ5を作動させてもブレーキレバーLF,LRの操作フィーリングが阻害されることはない。
また、電子制御ユニット7において前輪のホイールシリンダWF,WCに作用するブレーキ液圧を一定に保持すべきであると判断された場合には、前輪ブレーキ系統BSFおよび連動ブレーキ系統BSCの制御弁手段V,Vにより出力液圧路A、開放路B、連動用出力液圧路Dおよび連動用開放路Eがそれぞれ遮断される。具体的には、電子制御ユニット7により前輪ブレーキ系統BSFの電磁弁(入口弁)2および連動ブレーキ系統BSCの電磁弁(入口弁)2を励磁して閉弁状態にするとともに、前輪ブレーキ系統BSFの電磁弁(出口弁)3および連動ブレーキ系統BSCの電磁弁(出口弁)3を消磁して閉弁状態にする。このようにすると、ホイールシリンダWF,WCと電磁弁2,3で閉じられた流路内にブレーキ液が閉じ込められることになり、その結果、ホイールシリンダWF,WCに作用しているブレーキ液圧が一定に保持される。
さらに、電子制御ユニット7によって、前輪のホイールシリンダWF,WCに作用するブレーキ液圧を増圧すべきであると判断された場合には、前輪ブレーキ系統BSFおよび連動ブレーキ系統BSCの制御弁手段V,Vにより出力液圧路Aおよび連動用出力液圧路Dが開放され、開放路Bおよび連動用開放路Eが遮断される。具体的には、電子制御ユニット7により前輪ブレーキ系統BSFの電磁弁(入口弁)2および連動ブレーキ系統BSCの電磁弁(入口弁)2を消磁して開弁状態にするとともに、前輪ブレーキ系統BSFの電磁弁(出口弁)3および連動ブレーキ系統BSCの電磁弁(出口弁)3を消磁して閉弁状態にする。このようにすると、前記した通常のブレーキ制御の場合と同様に、ホイールシリンダWFに作用するブレーキ液圧が増圧される。
(車両用ブレーキ液圧制御装置の構成)
次に、ブレーキ液圧制御装置Uの具体的な構造を詳細に説明する。なお、以下の説明における「左右」「上下」は、図示の状態を基準として便宜的に定めたものであり、車両に取り付けた状態とは何ら関係はない。そして、基体1の前面1aが特許請求の範囲における「一面」に相当し、側面1f,1fが特許請求の範囲における「前記一面と繋がり互いに対向する一対の側面」に相当する。
まず、基体1の構成を、図1乃至図9を参照して詳細に説明する。ここで、図1はブレーキ液圧制御装置の分解斜視図である。図2はブレーキ液圧制御装置を後面側斜め上方から見た斜視図である。図3は基体を前面側斜め上方から見た斜視図である。図4は基体を後面側斜め下方から見た斜視図である。図5は基体に形成された穴および流路の内面を可視化した正面図である。図6は基体に形成された穴および流路の内面を可視化した側面図である。図7は基体に形成された穴および流路の内面を可視化した後面図である。図8は基体に形成された穴および流路の内面を可視化した図であって、前面側斜め上方から見た斜視図である。図9は基体に形成された穴および流路の内面を可視化した図であって、後面側斜め上方から見た斜視図である。
図1に示すように、基体1は、略直方体を呈する金属製の部材であり、その前面1a(一面)側から電磁弁2,3、リザーバ4およびハウジング8が組み付けられ、後面1b(図2参照)側からモータ6が組み付けられ、側面1f側からポンプ5が組み付けられる。また、基体1の上面1dには、入口ポート11F,11Rと出口ポート12F,12Rがそれぞれ開口して形成されている。
図3にも示すように、基体1の前面1aには、3つの入口弁装着穴13F,13R,13Cと、3つの出口弁装着穴14F,14R,14Cと、2つのリザーバ穴15F,15Rとが開口している。また、前面1aには、モータ6の端子棒6b(図1参照)が挿入される端子孔16と、ハウジング8を固定するハウジング取付ねじ(図示せず)が貫通する4つのハウジング取付用貫通孔17,17・・とが開口している。端子孔16とハウジング取付用貫通孔17,17・・は、後面1b(図2参照)から前面1aまで貫通して形成されている。
図4に示すように、後面1bには、モータ6の回転軸6a(図1参照)が挿入される軸受穴18と、端子孔16と、モータ取付ねじ(図示せず)が螺合される2つのモータ取付穴19,19と、4つのハウジング取付用貫通孔17,17・・とが開口している。端子孔16と軸受穴18は、基体1を左右に分ける中央線上に配置されている。
図2,図3および図4に示すように、各側面(一面と繋がり互いに対向する一対の側面)1f,1fには、一対のポンプ孔21F,21Rがそれぞれ開口している。各ポンプ孔21F,21Rは、軸受穴18(図4参照)から左右方向に対称的に沿って延出して形成されており、左右方向に延びる同一軸線上に形成されている。
本実施形態においては、図3および図5に示すように、前輪ブレーキ系統(第1ブレーキ系統)BSFの常開型電磁弁2(図1参照)が装着される入口弁装着穴13Fおよび常閉型電磁弁3(図1参照)が装着される出口弁装着穴14Fと、後輪ブレーキ系統(第2ブレーキ系統)BSRの常開型電磁弁2が装着される入口弁装着穴13Rおよび常閉型電磁弁3が装着される出口弁装着穴14Rとが、ポンプ孔21F,21Rの軸線方向に沿って横向きに略一列に配列されている。これらの装着穴からなる装着穴列は、ポンプ孔21F,21Rよりも上側に配置されており、入口ポート11F,11Rおよび出口ポート12F,12Rに近接されるようになっている。
図5に示すように、基体1を前面1a側から見た状態で、左側には後輪ブレーキ系統BSR、右側には前輪ブレーキ系統BSFが配置されており、左側から入口弁装着穴13R、出口弁装着穴14R、出口弁装着穴14F、入口弁装着穴13Fの順で形成されている。
また、連動ブレーキ系統BSCの常開型電磁弁2が装着される入口弁装着穴13Cおよび常閉型電磁弁3が装着される出口弁装着穴14Cは、後輪ブレーキ系統BSRの入口弁装着穴13Rおよび出口弁装着穴14Rの配列方向と略平行に配列されている。入口弁装着穴13Cおよび出口弁装着穴14Cは、入口弁装着穴13Rおよび出口弁装着穴14Rに対して、ポンプ孔21Rの軸線を挟んだ対称位置に配置されている。本実施形態では、後輪ブレーキ系統BSRの入口弁装着穴13Rおよび出口弁装着穴14Rは、ポンプ孔21Rの上側に位置するので、入口弁装着穴13Cおよび出口弁装着穴14Cは、ポンプ孔21Rの下側に配置される。そして、入口弁装着穴13Rの下方には入口弁装着穴13Cが配置され、出口弁装着穴14Rの下方には出口弁装着穴14Cが配置されている。
なお、入口ポート11F,11R、出口ポート12F,12R、入口弁装着穴13F,13R、出口弁装着穴14F,14R、リザーバ穴15F,15Rおよびハウジング取付用貫通孔17,17・・は、各々、基体1を左右に分ける中央線を挟んで左右対称に配置されている。端子孔16は、2つのリザーバ穴15F,15R間の上方で、基体1の中央線上(左右方向の中央)に配置されている。なお、リザーバ穴15F,15Rは、図6にも示すように、入口弁装着穴13F,13Rや出口弁装着穴14F,14Rなどの開口面(前面1a)よりも前方に延出して形成されており、その周囲の基体1が筒状に前方に突出している。リザーバ穴15F,15Rの中間部の下部には、前面1aから基体1の下面1eに連通する通気用穴25(図3および図4参照)が連通して形成されており、コントロールハウジング8内の通気を確保するようになっている。
図5乃至図9に示すように、基体1には、前輪ブレーキ系統BSFと後輪ブレーキ系統BSR(図10参照)にそれぞれ対応する流路構成部1F,1Rが左右に分けられて形成され、連動ブレーキ系統BSC(図10参照)に対応する流路構成部1Cが、流路構成部1F,1Rの下部に形成されている。具体的には、前面1a側から見て基体1の右半分に前輪ブレーキ系統BSFに対応する流路構成部1Fが形成されており、基体1の左半分に後輪ブレーキ系統BSRに対応する流路構成部1Rが形成されている。そして、流路構成部1F,1Rのポンプ孔21F,21Rの下部に連動ブレーキ系統BSCに対応する流路構成部1Cが形成されている。
なお、図示は省略するが、基体1の右半分に後輪ブレーキ系統BSRに対応する流路構成部を形成し、左半分に前輪ブレーキ系統BSFに対応する流路構成部を形成しても差し支えない。
まず、前輪ブレーキ系統BSFに対応する流路構成部1Fについて説明した後に、後輪ブレーキ系統BSRに対応する流路構成部1Rおよび連動ブレーキ系統BSCに対応する流路構成部1Cを説明する。
(前輪ブレーキ系統BSF)
入口ポート11Fは、液圧源からの配管H1(図10参照)が接続される部分である。入口ポート11Fは、有底円筒状の穴であり、基体1の上面1dに開口している。入口ポート11Fは、出口ポート12Fよりも外側(側面1f側)後部に形成されている。後面1b側から見て入口ポート11Fに相当する位置には、後方に突出した凸部22(図2および図4参照)が形成されており、入口ポート11Fの後側の肉厚を確保するように構成されている。凸部22は、後面1b側から見て、左右上端部の入口ポート11Fと重なる位置にそれぞれ形成されている。凸部22は、後面1b側から見て四角形の内側下部の角を面取りした五角形状を呈している。面取りした部分には、モータ6の端部が配置される。なお、凸部22の形状は、五角形状に限定されるものではなく、入口ポート11Fの外側に必要な肉厚を確保でき、モータ6と干渉しないような形状であれば他の形状であってもよい。なお、後輪ブレーキ系統BSRの入口ポート11Rの後部にも、前記したような形状の凸部22が形成されている。
入口ポート11Fの下部には、上下方向下方(ポンプ孔21Fの軸方向の垂直方向)に延設される第一流路31Fが形成されている。第一流路31Fは、入口ポート11Fから入口弁装着穴13Fの深部を介してポンプ孔21Fへと連通している。第一流路31Fは、入口ポート11Fの底面から基体1の下面1e側に向かって穿設された縦孔であり、ポンプ孔21Fの浅部(吐出側)の後面1b側に接続されて連通している。第一流路31Fのポンプ孔21Fと入口弁装着穴13Fとの間には、ポンプ5から入口ポート11Fへのブレーキ液の流入のみを許容する一方向弁である吸入弁56(図10参照)が設けられている。
入口弁装着穴13Fは、入口弁となる常開型の電磁弁2(図1参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、入口ポート11Fの下方に形成されている。入口弁装着穴13Fは、第三流路33Fを介して出口弁装着穴14Fと連通している。第三流路33Fは、入口弁装着穴13Fの側壁を左右方向に貫通し、かつ、出口弁装着穴14Fの側壁に達するように側面1fから穿設された横穴33Faからなる。なお、この横穴33Faの側面1fへの開口部は、図示せぬ栓部材によって密封される。
出口ポート12Fは、車輪ブレーキBFに至る配管H2(図10参照)が接続される部分である。出口ポート12Fは、有底円筒状の穴であり、基体1の上面1dに開口しており、入口ポート11Fよりも内側(中央線側)前部に形成されている。
出口ポート12Fの下部には、第一流路31Fと平行(上下方向下方)に延設される第二流路32Fが形成されている。第二流路32Fは、出口ポート12Fから出口弁装着穴14Fへと連通している。第二流路32Fは、出口ポート12Fの底面から基体1の下面1e側に向かって穿設された縦孔であり、出口弁装着穴14Fの浅部(吐出側)にまで達している。
出口弁装着穴14Fは、出口弁となる常閉型の電磁弁3(図1参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、入口弁装着穴13Fよりも中央線寄りに形成されており、さらに、入口弁装着穴13Fと同じ高さ、すなわち、上面1dから同じ距離離間した位置に形成されている。出口弁装着穴14Fは、その深部(吸入側)に接続された第四流路34Fと第五流路35F(図7および図9参照)を介してリザーバ穴15Fと連通している。第四流路34Fは、基体1の上面1dから出口弁装着穴14Fの深部を通過してポンプ孔21Fの側方まで延設して穿設された縦穴34Faからなり、第五流路35Fは、リザーバ穴15Fの底面から後面1bに向かって穿設され、ポンプ孔21Fを通過して第四流路34Fと直角に交差するように形成された横穴からなる。第五流路35Fは、ポンプ孔21Fを通過しているが、ポンプの動作に関係なくリザーバ穴15Fにブレーキ液を送るように構成されている。なお、縦穴34Faの上面1dへの開口部は、図示せぬ栓部材によって密封される。
軸受穴18は、モータ6の回転軸6a(図1参照)の先端部が挿入される有底の段付き円筒状の穴である。軸受穴18は、基体1の後面1bに開口して形成され、中央線上(左右方向の中央)で、出口弁装着穴14F,14Rの斜め下部に配置されている。軸受穴18の側面には、ポンプ孔21F,21Rの奥側端部が開口している。
ポンプ孔21Fは、ポンプ5(図1、図10参照)が装着される段付き円筒状の孔であり、基体1の側面1fから軸受穴18の側面に向かって貫通して形成されている。
リザーバ穴15Fは、リザーバ4(図1、図10参照)が装着される有底円筒状の穴であり、入口弁装着穴13Fおよび出口弁装着穴14Fの下方(下面1e側)で、前面1aに開口して形成されている。リザーバ穴15Fは、ポンプ孔21Fよりも前面1a側に形成されており、前方に突出している。リザーバ穴15Fは、基体1の前面1a側から見て、ポンプ孔21Fと略同等の高さに配設されている。リザーバ穴15Fは、第六流路(図示せず)を介してポンプ孔21Fの深部と連通している(図6および図8参照)。第六流路は、リザーバ穴15Fの底面から後面1b側に向かって穿設され、ポンプ孔21Fと交差するように形成された横穴からなる。第六流路には、リザーバ4からポンプ5へのブレーキ液の流入のみを許容する一方向弁である吸入弁57(図10参照)が設けられている。
ハウジング取付用貫通孔17は、基体1を前面1aから見て上下左右に四つ形成されており、上側のハウジング取付用貫通孔17,17は、流路構成部1Fの入口ポート11Fと出口ポート12Fとの間の上方、流路構成部1Rの入口ポート11Rと出口ポート12Rとの間の上方にそれぞれ形成されている。また、下側のハウジング取付用貫通孔17,17は、下部両側の角部近傍にそれぞれ形成されている。各ハウジング取付用貫通孔17,17・・は、ハウジング8の枠部8a(図1参照)に相当する位置に形成されている。さらに、各ハウジング取付用貫通孔17,17・・は、後面1b側から見てモータ6のフランジ6c(図1参照)と重ならない位置に形成されており、言い換えれば、モータ6のフランジ6cと当接する部分からオフセットするように形成されている。これによって、ハウジング取付ねじ(図示せず)がモータ6のフランジ6cと干渉することはない。
モータ取付穴19,19は、図4および図7に示すように、2つ形成されており、その内側には雌ネジが形成されている。一方のモータ取付穴19は、軸受穴18の両側にそれぞれ形成されたポンプ孔21F,21Rのうちの一方のポンプ孔21Fの上方に形成され、他方のモータ取付穴19は、他方のポンプ孔21Rの下方に形成されている。モータ取付穴19,19は、軸受穴18の軸芯を中心として互いに点対称の位置に形成されている。これによって、モータ6は、ポンプ孔21F,21Rを挟んでバランスよく基体1に固定される。
(後輪ブレーキ系統BSR)
流路構成部1Rのポンプ孔21Rより上側は、流路構成部1Fのポンプ孔21Fより上側と、基体1を左右に分ける中央線を挟んで左右対称に配置されているので、符号の「F」を「R」に代えて表示し、その説明を省略する。
(連動ブレーキ系統BSC)
流路構成部1Cは、流路構成部1F,1Rのポンプ孔21F,21Rの下部に形成されており、流路構成部1Rの下部に、入口弁装着穴13Cおよび出口弁装着穴14Cが形成され、流路構成部1Fの下部に、前輪のホイールシリンダWCに至る配管H3が接続される接続ポート12Cが形成されている。
入口弁装着穴13Cは、入口弁となる常開型の電磁弁2(図1参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、入口ポート11Rおよび入口弁装着穴13Rの下方のポンプ孔21Rのさらに下方に形成されている。詳しくは、入口弁装着穴13Cは、入口弁装着穴13R対して、ポンプ孔21Rの軸線を挟んだ対称位置に配置されている。
入口ポート11Rから入口弁装着穴13Rの深部を介してポンプ孔21Rへと連通している第一流路31Rは、流路構成部1Fの第一流路31Fの下端高さよりもさらに下方まで延出して、入口弁装着穴13Cの深部に連通しており、入口ポート11R、入口弁装着穴13R、ポンプ孔21Rおよび入口弁装着穴13Cを直線的に接続している。第一流路31Rは、入口ポート11Rの底面から基体1の下面1e側に向かって穿設された縦孔であり、入口弁装着穴13Cの深部に接続されて連通している。これによって、連動ブレーキ系統BSCの入口弁装着穴13Cは、後輪ブレーキ系統BSRのリザーバ穴15Rおよびポンプ孔21Rにそれぞれ連通されている。
出口弁装着穴14Cは、出口弁となる常閉型の電磁弁3(図1参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、出口ポート12Rおよび出口弁装着穴14Rの下方のポンプ孔21Rのさらに下方に形成されている。詳しくは、出口弁装着穴14Cは、出口弁装着穴14Rに対して、ポンプ孔21Rの軸線を挟んだ対称位置に配置されている。言い換えれば、出口弁装着穴14Cは、出口弁装着穴14Rの下方で、入口弁装着穴13Rよりも中央線寄りに形成されており、さらに、入口弁装着穴13Rと同じ高さ、すなわち、下面1eから同じ距離離間した位置に形成されている。
出口弁装着穴14Rの深部から第五流路35R(図7および図9参照)を介してリザーバ穴15Rと連通している第四流路34Rは、流路構成部1Fの第四流路34Fの下端高さよりもさらに下方まで延出して、出口弁装着穴14Cの深部に連通しており、出口弁装着穴14R、第五流路35Rおよび出口弁装着穴14Cを直線的に接続している。第四流路34Rは、基体1の上面1dから出口弁装着穴14Rの深部を通過して出口弁装着穴14Cの深部まで延設して穿設された縦穴34Raからなり、第五流路35Rは、リザーバ穴15Rの底面から後面1bに向かって穿設され、ポンプ孔21Rを通過して第四流路34Rと直角に交差するように形成された横穴からなる。これによって、連動ブレーキ系統BSCの出口弁装着穴14Rは、後輪ブレーキ系統BSRのリザーバ穴15Rおよびポンプ孔21Rにそれぞれ連通されている。なお、縦穴34Raの上面1dへの開口部は、図示せぬ栓部材によって密封される。
入口弁装着穴13Cは、第七流路37を介して出口弁装着穴14Cと連通している。第七流路37は、入口弁装着穴13Cの側壁から出口弁装着穴14Cの側壁に達するように後記する接続ポート12Cの底面から穿設された横穴からなる。
以上の構成によれば、連動ブレーキ系統BSCの入口弁装着穴13Cおよび出口弁装着穴14Cは、それぞれ後輪ブレーキ系統BSRのポンプ孔21Rおよびリザーバ穴15Rに連通しており、後輪ブレーキ系統BSRのポンプ5およびリザーバ4を連動ブレーキ系統BSCのポンプおよびリザーバとして共用することができる。
接続ポート12Cは、有底円筒状の穴であり、基体1の流路構成部1F側の側面1fに開口しており、ポンプ孔21Fよりも下側に形成されている。すなわち、連動ブレーキ系統BSCの車輪ブレーキBFのホイールシリンダWCへの接続部である接続ポート12Cは、第1ブレーキ系統である前輪ブレーキ系統BSFの入口弁装着穴13Fおよび出口弁装着穴14Fに対して、ポンプ孔21Fの軸線を挟んだ逆側位置に配置されていることとなる。
接続ポート12Cの底部(中央線側端部)には、ポンプ孔21Fと平行(左右方向中央線側)に延設される第八流路38が形成されている。第八流路38は、接続ポート12Cから出口弁装着穴14Cの深部へと連通している。第八流路38は、接続ポート12Cの底面から図7中、右側に向かって穿設された横穴にて構成されている。この横穴は、出口弁装着穴14Cの浅部(吐出側)を通過して、入口弁装着穴13Cの浅部(吐出側)にまで達しており、接続ポート12Cと出口弁装着穴14Cとの間で第八流路38を構成し、出口弁装着穴14Cと入口弁装着穴13Cとの間で第七流路37を構成している。
続いて、前記構成のブレーキ液圧制御装置Uを用いて、通常のブレーキ制御およびアンチロックブレーキ制御を行った場合のブレーキ液の実際の流れを詳細に説明する。
(通常のブレーキ制御)
前輪の通常のブレーキ制御においては、前記したように、入口弁装着穴13Fに装着された電磁弁2が開弁状態にあるので、図8において実線の矢印Y1で示すように、入口ポート11Fから流入したブレーキ液は、第一流路31Fを通って入口弁装着穴13Fの底部に流入し、開弁状態にある電磁弁2(図1参照)の内部を通って第三流路33Fに流入する。第三流路33Fに流入したブレーキ液は、出口弁装着穴14Fを通って第二流路32Fに流入し、出口ポート12Fを通ってホイールシリンダWF(図10参照)に至る。つまり、通常のブレーキ制御においては、運転者がブレーキレバーLF(図10参照)を操作することによってマスタシリンダMFで発生したブレーキ液圧は、入口ポート11F、第一流路31F、入口弁装着穴13F、第三流路33F、出口弁装着穴14F、第二流路32Fおよび出口ポート12Fを介してホイールシリンダWFに作用することとなる。なお、通常のブレーキ制御においては、出口弁装着穴14Fに装着される電磁弁3は、閉弁状態にあるので、出口弁装着穴14Fに流入したブレーキ液が電磁弁3の内部を通って第四流路34F(すなわち、リザーバ穴15F)に流入することはない。
後輪の通常のブレーキ制御(連動ブレーキ制御)においては、前記したように、入口弁装着穴13Rおよび入口弁装着穴13Cにそれぞれ装着された電磁弁2,2が開弁状態にあるので、図8において実線の矢印Y2で示すように、入口ポート11Rから流入したブレーキ液は、第一流路31Rを通って入口弁装着穴13Rおよび入口弁装着穴13Cの底部にそれぞれ流入する。入口弁装着穴13Rに流入したブレーキ液は、開弁状態にある電磁弁2(図1参照)の内部を通って第三流路33Rに流入し、出口弁装着穴14Rを通って第二流路32Rに流入し、出口ポート12Rを通ってホイールシリンダWR(図10参照)に至る。一方、入口弁装着穴13Cに流入したブレーキ液は、開弁状態にある電磁弁2(図1参照)の内部を通って第七流路37に流入し、出口弁装着穴14Cを通って第八流路38に流入し、接続ポート12Cを通ってホイールシリンダWC(図10参照)に至る。つまり、通常のブレーキ制御においては、運転者がブレーキペダルLR(図10参照)を操作することによってマスタシリンダMRで発生したブレーキ液圧は、入口ポート11R、第一流路31R、入口弁装着穴13R(入口弁装着穴13C)、第三流路33R(第七流路37)、出口弁装着穴14R(出口弁装着穴14C)、第二流路32R(第八流路38)および出口ポート12R(接続ポート12C)を介してホイールシリンダWR(WC)に連動して作用することとなる。なお、通常のブレーキ制御においては、出口弁装着穴14Rおよび出口弁装着穴14Cに装着される電磁弁3,3は、閉弁状態にあるので、出口弁装着穴14Rおよび出口弁装着穴14Cに流入したブレーキ液が電磁弁3,3の内部を通って第四流路34R(すなわち、リザーバ穴15R)に流入することはない。
(アンチロックブレーキ制御)
以下に、後輪ブレーキ系統BSRおよび連動ブレーキ系統BSCの作動時に前後両輪がロック状態に陥りそうになった場合のアンチロックブレーキ制御を例に挙げて説明する。
アンチロックブレーキ制御によってホイールシリンダWR,WCに作用するブレーキ液圧を減圧する場合には、前記したように、入口弁となる電磁弁2,2が閉弁状態にされ、出口弁となる電磁弁3,3が開弁状態にされるので、ホイールシリンダWR,WCに作用していたブレーキ液は、図9において一点鎖線の矢印Y3で示すように流れる。ホイールシリンダWRに作用していたブレーキ液は、出口ポート12Rおよび第二流路32Rを通って出口弁装着穴14Rの側部に流入し、さらに、開弁状態にある電磁弁3の内部を通って第四流路34Rに流入し、第五流路35Rを介して、最終的にはリザーバ穴15Rに流入する。なお、入口弁装着穴13Rに装着した電磁弁2が閉弁状態にあることから、ブレーキ液が電磁弁2の内部を通って第一流路31Rに流入することはない。
一方、ホイールシリンダWCに作用していたブレーキ液は、接続ポート12Cおよび第八流路38を通って出口弁装着穴14Cの側部に流入し、さらに、開弁状態にある電磁弁3の内部を通って第四流路34Rに流入し、第五流路35Rを介して、ポンプ5内をバイパスして最終的にリザーバ穴15Rに流入する。なお、入口弁装着穴13Cに装着した電磁弁2が閉弁状態にあることから、ブレーキ液が電磁弁2の内部を通って第一流路31Rに流入することはない。
なお、アンチロックブレーキ制御を実行する場合には、電子制御ユニット7の指令に基づいてモータ6(図1参照)が作動されてポンプ5(図1参照)が駆動され、その結果、リザーバ穴15R(リザーバ4)に流入したブレーキ液は、図9において破線の矢印Y4で示すように、第六流路(図示せず)を介してポンプ孔21Rに吸入され、ポンプ5の働きにより第一流路31Rへ吐出される。そして、このブレーキ液圧は、入口ポート11Rを介してマスタシリンダMRに還流される。
また、アンチロックブレーキ制御によってホイールシリンダWR,WCに作用するブレーキ液圧を一定に保持する場合には、前記したように、入口弁となる電磁弁2,2および出口弁となる電磁弁3,3が閉弁状態にされるので、第三流路33Rおよび第七流路37からのブレーキ液の流入も第四流路34Rへのブレーキ液の流出も起こらない。
また、アンチロックブレーキ制御によって車輪ブレーキBRのホイールシリンダWRと、車輪ブレーキBFのホイールシリンダWCに作用するブレーキ液圧を増圧する場合には、前記したように、入口弁となる電磁弁2,2が開弁状態にされ、出口弁となる電磁弁3,3が閉弁状態にされるので、ブレーキ液の流れは、図8中の実線の矢印Y2と同じになる。
(車両用ブレーキ液圧制御装置の作用効果)
以上説明した本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置Uによると、各電磁弁の配置が最適化されて基体1のスペースを効率的に有効活用できる。具体的には、前輪ブレーキ系統BSFの入口弁装着穴13F、出口弁装着穴14Fおよび後輪ブレーキ系統BSRの入口弁装着穴13R、出口弁装着穴14Rがポンプ孔21F,21Rの軸方向に沿って横方向に直線状に並列されているので、高さ方向の寸法を短縮することができる。また、連動ブレーキ系統BSCの入口弁装着穴13Cと出口弁装着穴14Cを、入口弁装着穴13F,13R、出口弁装着穴14F,14Rの配列と平行に配置することでも高さ方向の寸法を短縮することができる。
また、前記構成によれば、後輪ブレーキ系統BSRと連動ブレーキ系統BSCとでリザーバ4およびポンプ5を共有化できるので、部品点数を削減することができる。さらに、リザーバ穴15Rとポンプ孔21Rを共有化できるので、基体1およびブレーキ液圧制御装置U全体のコンパクト化および軽量化が達成される。
さらに、連動ブレーキ系統BSCの入口弁装着穴13Cおよび出口弁装着穴14Cを、後輪ブレーキ系統BSRの入口弁装着穴13Rおよび出口弁装着穴14Rに対して、ポンプ孔21Rの軸線を挟んだ対称位置に配置したことによって、後輪ブレーキ系統BSRの入口弁装着穴13Rおよび出口弁装着穴14Rと共有のポンプ5とを連通させる配管(流路)と、連動ブレーキ系統BSCの入口弁装着穴13Cおよび出口弁装着穴14Cと共有のポンプ5とを連通させる配管(流路)とを直線状に形成でき、その距離を短くできるので効率的な流路構成が施され、基体1およびブレーキ液圧制御装置U全体のさらなるコンパクト化を達成できるとともに、基体1の製造加工の簡素化も達成できる。
さらに、ポンプ孔を挟むように第2ブレーキ系統の入口弁装着穴および出口弁装着穴と、連動ブレーキ系統BSCの入口弁装着穴13Cおよび出口弁装着穴14Cとを配置しているので、ポンプ5,5を基体1の高さ方向中央部に配置することができる。これと併せて、ポンプ孔21F,21Rおよびリザーバ穴15F,15Rは、軸受穴18を中心に左右対称に形成されているので、モータ6の取付位置を基体1の中央部にすることができる。これによって、基体1の各構成部がモータ6の軸芯を中心としてバランスよく配置されることとなり、基体1の重量バランスの最適化が達成される。また、基体1の各部がモータ6の軸芯を収容する軸受穴18を中心としてバランスよく形成されているので、基体1が軸受穴18から偏心して局所的に突出して大型化することがなく、モータ6の投影面積内に基体1を取り付けることが可能となり、近年のモータ6の小型化に対応してブレーキ液圧制御装置U全体のコンパクト化も達成できる。
さらに、連動ブレーキ系統BSCの車輪ブレーキBFのホイールシリンダWCへの接続ポート12Cは、前輪ブレーキ系統BSFの入口弁装着穴13Fおよび出口弁装着穴14Fに対して、ポンプ孔21Fの軸線を挟んだ逆側位置に配置されているので、基体1内のスペースを有効に活用することができ、基体1およびブレーキ液圧制御装置U全体のさらなるコンパクト化を達成できる。さらに、接続ポート12Cは、入口弁装着穴13Cおよび出口弁装着穴14Cの側方に形成されることになるので、これらを連通させる第八流路38の長さを短くでき、基体1の製造加工の簡素化を達成できる。
なお、本実施の形態においては、前輪ブレーキ系統BSFを第1ブレーキ系統とし、後輪ブレーキ系統BSRを第2ブレーキ系統としているが、これらが逆であってもよい。
また、本実施形態においては、連動ブレーキ系統BSCの接続ポート12Cを基体1の側面1fに開口するようになっているが、下面1eに開口するようにしても差し支えない。