JP4746163B2 - 積層フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は積層フィルムに関し、更に詳しくは耐コロナブロッキング性走行耐久性、電磁変換特性に優れかつドロップアウトの極めて少ない蒸着金属薄膜型磁気記録媒体のベースフィルムとして有用な積層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気記録媒体の高密度化の進歩はめざましく、例えば、強磁性金属薄膜を真空蒸着やスパッタリング等の物理沈着法又はメッキ法により非磁性支持体上に形成せしめた金属薄膜型磁気記録媒体、またメタル粉や酸化鉄粉等の針状磁性粉体を2μm以下に塗布した薄層塗膜型磁気記録媒体の開発実用化が進められている。前者の例としては、特開昭54―147010号公報には、非磁性材よりなる基材上に付着された第1のCo薄膜磁性層上に、非磁性材層を介して前記第1のCo薄膜磁性層の厚みより大なる厚みの第2のCo薄膜磁性層を形成した磁気記録媒体が開示されており、また特開昭52―134706号公報にはCo―Cr合金からなる垂直磁気記録媒体が開示されている。
【0003】
また、後者の例として、電子通信学会技術報告MR94―78(1995―02)には極薄層塗布型磁気記録媒体による高密度磁気記録が開示されている。
【0004】
従来の塗布型磁気記録媒体(磁性粉末を有機高分子バインダーに混入させて非磁性支持体上に塗布してなる磁気記録媒体)は記録密度が低く、記録波長も長い為に、磁性層の厚みが2μm程度以上と厚いのに対して、真空蒸着、スパッタリング又はイオンプレーティング等の薄膜形成手段によって形成される強磁性金属薄膜は厚みが0.2μm以下と非常に薄く、また極薄層塗布型の場合も、非磁性下地層を設けるものの0.13μmの厚みのものが提供され非常に薄くなっている。この為、上記の高密度磁気記録媒体においては、非磁性支持体(ベースフィルム)の表面状態が磁性層の表面性に大きな影響を及ぼし、特に金属薄膜型の磁気記録媒体の場合には、非磁性支持体の表面状態がそのまま磁性層(磁気記録層)表面の凹凸として発現してしまう。
【0005】
さらに金属薄膜型磁気記録媒体の場合には、実際に使用される時の重大な問題点として、金属薄膜面の走行性がある。磁性体粉末を有機高分子バンダー中に混入させてベースフィルムに塗布してなる塗布型磁気記録媒体の場合には、該バインダー中に潤滑剤を分散させて磁性層面の走行性を向上させることが出来るが、金属薄膜型磁気記録媒体の場合には、この様な対策をとることができず、走行性を安定して保つのは非常に難しく、特に高温高湿条件下の走行性が劣るなどの欠点を有している。さらにこの場合には、繰り返し使用時の出力低下が塗布型磁気記録媒体と比べて大きいという欠点も存在する。
【0006】
そして、金属薄膜型磁気記録媒体の場合には、金属薄膜とベースフィルムとの密着性を良好にする為、金属薄膜成形前にイオンボンバート処理とよばれるベースフィルム表面をイオンにより活性化する処理が施される。この金属薄膜成形時にはフィルム表面に高温の熱がかかり、ベースフィルムが溶けていたりあるいは、機械特性等の物性の低下をまねかぬ様に背面冷却を実施している。背面冷却の方法としては、ドラム状冷却体にベースフィルムを巻付けて実施する場合が多く、この際ドラム表面に金属薄膜が成形されない様にベースフィルム両端をマスキングしている。
【0007】
従って、イオンバード処理のみされ、金属薄膜が形成されない部分が、フィルム長手方向の同一部分に連続的に発生し、しかもロールの両エッジ部となっている。ベースフィルムの表面が超平坦がゆえにこの部分が巻取られることにより、活性化されたベース表面ともう反対側のベース表面が接触し、ブロッキングをおこしやすくなり、工程トラブルになる。
【0008】
一方、非磁性支持体(ベースフィルム)の製膜、加工工程での搬送・傷付き、巻取り、巻出しといったハンドリングの観点からは、フィルム表面が平滑過ぎると、フィルム―フィルム相互の滑り性が悪化し、ここでもブロッキング現象が発生し、ロールに巻いたときの形状(ロールフォーメーション)が悪化し、製品歩留りの低下、ひいては製品の製造コストの上昇を来す。従って、製造コストという観点では非磁性支持体(ベースフィルム)の表面は出来るだけ粗いことが望ましい。
【0009】
このように、非磁性支持体の表面は、電磁変換特性の観点からは平滑であることが要求され、耐ブロッキング性、ハンドリング性、フィルムコストの観点からは粗いことが要求される。特に耐ブロッキング性改良にはフィルムの接触面積を下げる為にも表面を粗いことが要求されていた。そこで、優れた品質の高密度磁気記録媒体を製造するには、上記二律背反する性質を同時に満足させることが必要とされる。
【0010】
特開平5―194772号公報には、ポリエステルフィルムの一つの表面に連続薄膜よりなる、磁性層のためのプライマー層が塗設してあり、該プライマー層の連続薄膜の表面は(A)平均粒径0.06μm未満の粒子を核とする高さ13nm以下の小突起と(B)平均粒径0.06μm以上の粒子を核とする高さ30nm以下の大突起と(C)プライマー層を形成する樹脂のみによる微小突起とを有し、これら突起の数が下記式
AN≧1.0×106(個/mm2)
BN≧1.05×104(個/mm2)
AN≦−3.4×102・BN+13.6×106(個/mm2)
CN≦4.0×106(個/mm2)
[ただし、ANは小突起の数(個/mm2)、BNは大突起の数(個/mm2 )、CNは微小突起の数(個/mm2)である。]
を満足し、そしてプライマー層を形成する樹脂のみによる連続薄膜部の微小表面粗さRaSが1.10nm以下であり、かつ前記連続薄膜の表面粗さRaが1〜10nmである、磁気記録媒体用ポリエステルフィルムが開示されている。
【0011】
特開平5―298670号公報には、ポリエステルフィルムの一つの表面に連続薄膜よりなる、磁性層のためのプライマー層が塗設してあり、該プライマー層の連続薄膜の表面には(A)平均粒径0.06μm未満の粒子を核とする高さ13nm以下の小突起と(B)平均粒径0.06μm以上の粒子を核とする高さが30nm以下の大突起と(C)プライマー層を形成する樹脂のみによる最大長径が0.30μm以下の微小突起とが形成されており、これら突起の数が下記式
AN≧1.0×106(個/mm2)
BN≧1.05×104(個/mm2)
AN≦−3.4×102・BN+13.6×106(個/mm2)
CN≦4.0×106(個/mm2)
[ただし、ANは小突起の数(個/mm2)、BNは大突起の数(個/mm2 )、CNは微小突起の数(個/mm2)である。]
を満足し、前記プライマー層を形成する樹脂のみによる連続薄膜部の微小表面粗さRaSが1.10nm以下であり、さらに前記連続薄膜の表面粗さRaが1〜10nmであり、そして前記連続薄膜はフィルムを160℃で5分間空気中で連続加熱したときにフィルム表面上のポリエステルオリゴマー微結晶の析出率を0.8%以下に抑制できる、磁気記録媒体用ポリエステルフィルムが開示されている。
【0012】
上記の如きポリエステルフィルムによれば、磁性層面側のベースフィルムの平滑化はある程度は実現できるものの、塗膜層に由来する凝集粗大突起の存在により、ドロップアウトを引起こすという問題を解決することができなかった。また、上記の方策では、走行耐久性向上の為に、磁性層面側のベースフィルム中に粒子を添加しているが、粒子の分散性が悪いために粗大突起が多く、これがドロップアウトの原因となったり、磁気ヘッドの偏摩耗を引き起こして出力が低下するなどの問題があった。さらには、これらの処理でも、イオンボンバード処理により活性化されたロールエッジ部のブロッキングは発生する問題は、解消することができなかった。
【0013】
【発明の解決しようとする課題】
本発明の目的は、蒸着金属薄膜型磁気記録媒体用ベースフィルムとして有用な積層フィルムを提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、塗膜層形成塗液に由来する、ドロップアウト因となる粗大突起を大幅に低減して、走行耐久性、電磁変換特性に優れ、ドロップアウトが極めて少なくかつ耐ブロッキング性良好なる磁気記録媒体を与えるための積層フィルムを提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は熱可塑性樹脂Aからなるベース層Aおよびベース層Aの一方の表面上に存在する塗膜層Bからなる積層フィルムであって、熱可塑性樹脂Aは芳香族ポリエステルであり、該塗膜層Bは、バインダー樹脂、不活性微粒子および界面活性剤を含有してなり更にシリコーン又はワックスのいづれかを1〜50重量%含む、バインダー樹脂である水溶性樹脂又は水分散性樹脂を主体とする塗膜であるか、もしくはバインダー樹脂、不活性微粒子および界面活性剤を含有し、更にポリシロキサン共重合ポリエステル樹脂を5〜90重量%含む水溶性樹脂又は水分散性樹脂を主体とする塗膜よりなり、塗膜層B中の不活性微粒子は平均粒径が10〜50nmの範囲にあり、その含有量は塗膜層Bの固形分に基づいて0.5〜30重量%で含有されること、塗膜層Bのバインダー樹脂がアクリル変性ポリエステル樹脂であること、コロナ処理ブロッキングはくり力が15g/10cm以下であることを特徴とする蒸着金属薄膜型磁気記録媒体用積層フィルムによって達成される。
【0016】
コロナ処理ブロッキングはくり力が15g/10cmより高いとフィルムを使用する工程にてブロッキングによる切断が発生する。このコロナ処理ブロッキングはくり力が好ましくは10g/10cm以下である。
【0017】
ベース層Aを形成する熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を例示することができる。これらのうちポリステル系樹脂、さらには芳香族ポリエステルが好ましい。
【0018】
この芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ―1,4―シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン―2,6―ナフタレンジカルボキシレート等を好ましくは例示することができる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン―2,6―ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。
【0019】
これらポリエステルは、ホモポリエステルであっても、コポリエステルであっても良い。コポリエステルの場合、例えばポリエチレンテレフタレート及びポリエチレン―2,6―ナフタレンジカルボキシレートの共重合成分としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、p―キシレングリコール等の他のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸(但し、ポリエチレン―2,6―ナフタレンジカルボキシレートの場合)、2,6―ナフタレンジカルボン酸(但し、ポリエチレンテレフタレートの場合)、5―ナトリウムスルホイソフタル酸等の他のジカルボン酸成分、p―オキシエトキシ安息香酸等のオキシカルボン酸成分等が挙げられる。これら共重合成分の量は20モル%以下、更には10モル%以下とするのが好ましい。さらに、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3官能以上の多官能化合物を共重合させることもできる。この場合ポリマーが実質的に線状である量、例えば2モル%以下共重合させるのがよい。ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレン―2,6―ナフタレンジカルボキシレート以外の他のポリエステルの場合の共重合成分についても上記同様に考えられることは理解されるであろう。上記ポリエステルは、それ自体公知であり、かつそれ自体公知の方法で製造することができる。
【0020】
ベース層Aを形成する熱可塑性樹脂Aは、不活性微粒子を含有していても、実質的に含有しなくてもよい。不活性微粒子を含有する場合、不活性微粒子は好ましくは平均粒径が30〜400nmでありそして体積形状係数が0.1〜π/6である不活性微粒子Aである。平均粒径はより好ましくは40〜200nm、特に好ましくは60〜120nmである。また、体積形状係数は、より好ましくは0.4〜π/6である。
【0021】
さらに、ベース層Aに接触していない側の塗膜層Bの表面上には、熱可塑性樹脂Aに含有される不活性微粒子Aに基因して、0.5万〜10万個/mm2の密度で突起が生成される割合で、熱可塑性樹脂Aが不活性微粒子Aを含有するのが好ましい。突起密度はより好ましくは0.75万〜6万個/mm2であり、さらに好ましくは1万〜3万個/mm2である。
【0022】
この平均粒径が30nm未満の場合や、突起頻度が0.5万個/mm2未満の場合には満足な走行耐久性が得られず、一方平均粒径が400nmを超える場合や突起頻度が10万個/mm2を超える場合には電磁変換特性が劣るので、好ましくない。
【0023】
また、粒子の体積形状係数(f)は下記式
f=V/R3
[ここで、fは体積形状係数、Vは粒子の体積(μm3)、Rは粒子の平均粒径(μm)である。]
で定義される。この係数(f)がπ/6の形状は球(真球)である。そしてこの係数(f)が0.4〜π/6の形状は実質的に球(真球)、ラグビーボールのような楕円球を含むものである。体積形状係数(f)が0.1未満の粒子、例えば薄片状粒子では十分な走行耐久性を得るのが難しい。
【0024】
本発明の積層フィルムは、ベース層Aの一方の表面上に、バインダー樹脂、不活性微粒子および界面活性剤を含有してなる塗膜層Bが存在する。このバインダー樹脂としては、例えば水性ポリエステル樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂等が好ましく挙げられ、特に水性ポリエステル樹脂が好ましい。この水性ポリエステル樹脂としては、例えば酸成分がイソフタル酸、フタル酸、1,4―シクロヘキサンジカルボン酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、4,4′―ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、コハク酸、5―Naスルホイソフタル酸、2―Kスルホテレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメリット酸モノカリウム塩、p―ヒドロキシ安息香酸等の多価カルボン酸の1種以上よりなり、グリコール成分が例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4―ブタンジオール、1,6―ヘキサンジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、p―キシリレングリコール、ジメチロールプロパン酸、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物等の多価ヒドロキシ化合物の1種以上より主としてなるポリエステル樹脂が好ましく用いられる。またポリエステル鎖にアクリル重合体鎖を結合させたグラフトポリマー又はブロックコポリマー、あるいは2種のポリマーがミクロな分子内で特定の物理的構成(IPN、コアシェル)を形成したアクリル変性ポリエステル樹脂も同様に用いられる。この水性ポリエステル樹脂としては、水に溶解、乳化、微分散するタイプを自由に用いることができるが、水に乳化、微分散するタイプのものが好ましい。またこれらは親水性を付与するため分子内に例えばスルホン酸塩基、カルボン酸塩基、ポリエーテル単位等が導入されていてもよい。
【0025】
さらに好ましくは耐コロナ処理ブロッキングを良好にする為、JIS―K7206で測定した軟化点(バインダー樹脂を乾固させたもので測定)が50℃以上であることが好ましく、但し塗布層Bの樹脂のTgが高すぎると、コーティング条件等により層Bの表面が粗れて電磁変換特性が劣る場合がある。
【0026】
従って、Tgが高いバインダーを使用する場合はコーティング条件を工夫して表面を粗さない様にすることが必要である。この場合の粗さとはAFM(走査型原子間力顕微鏡)にて10μmで測定した時の2乗平均粗さをいい、好ましくは2.0μm以下で、さらに好ましくは1.8nm以下で、さらに好ましくは1.5nm以下である。
【0027】
前記不活性微粒子の種類は特に限定されないが、塗液中で沈降しにくい、比較的低比重のものが好ましい。例えば、耐熱性ポリマー(例えば、架橋シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステル、全芳香族ポリエステル等)からなる粒子、二酸化ケイ素(シリカ)、炭酸カルシウム等が好ましく挙げられる。これらの中でも、特に好ましくは、架橋シリコーン樹脂粒子、シリカ、コアシェル型有機粒子(例えば、コア:架橋ポリスチレン、シェル:ポリメチルメタクリレートの粒子など)が挙げられる。これらの不活性微粒子は平均粒径が10〜50nmの範囲にあるのが好ましい。平均粒径はより好ましくは15〜45nmであり、さらに好ましくは18〜40nmである。これらの不活性微粒子は塗膜層Bの固形分に基づいて、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは2〜20重量%で含有される。
【0028】
塗膜層Bのベース層Aと接触していない表面上には、塗膜層B中に含有される不活性微粒子に基因する突起が好ましくは1〜40個/μm2、より好ましくは2〜20個/μm2、特に好ましくは2.5〜18個/μm2、就中3〜15個/μm2で存在する。また、塗膜層Bのベース層Aと接触していない表面上に、非接触三次元粗さ計により求めた表面粗さプロファイルから算出した高さ4nm以上の粗大突起を、好ましくは最大でも200個/mm2以下、より好ましくは最大でも100個/mm2以下で有する。上記突起の存在により、優れた走行耐久性が発現する。
【0029】
界面活性剤(X)は塗液固形分当り、10〜50重量%、好ましくは12〜40重量%、特に好ましくは15〜30重量%の量で用いられる。また界面活性剤(X)は、その量が10重量%(全固形分当り)未満では、ドロップアウト因となりうる粗大突起の発生を抑えることができず、一方、使用量が50重量%(全固形分当り)を超えると発泡による筋状の塗布欠陥が発生する。そして好ましくは耐コロナ処理ブロッキングを良好にする為JIS―K7206で測定した軟化点(界面活性剤を乾固させたもので測定)が30℃以上であることが好ましい。但し、塗液を塗布する際塗布抜けが発生しない様に塗液の表面張力を下げる為上記以外の界面活性剤Yを10重量%(全固形分当り)を超えない範囲で組合せて使用しても良い。前記界面活性剤Xとしてはノニオン系界面活性剤が好ましく、特にアルキルアルコール、アルキルフェニルアルコール、高級脂肪酸等に(ポリ)エチレンオキサイドを付加、結合させたものが好ましい。
【0030】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系化合物として日本油脂製のノニオンNS―230、NS―240、HS―220、HS―240、三洋化成製のノニポール200、ノニポール400、ノニポール500、オクタポール400、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系化合物として日本油脂製のノニオンE―230、K―220、K―230、高級脂肪酸のポリオキシエチレンエステル系化合物として日本油脂製のノニオンS―15.4、S―40等を例示することができる。
【0031】
更に塗膜層Bに含有するシリコーンとしては、鎖状成分として
【0032】
【化1】
【0033】
[ただしR1:CH3、C6H5、H
R2:CH3、C6H5、Hまたは官能性基(例えば、エポキシ基、
アミノ基、水酸基)
n:100〜7000]
を有するシリコーン化合物であり、末端にエポキシ基、アミノ基、水酸基、その他の官能性末端基を有するものが挙げられる。本発明においてシリコーン化合物は必ずしもホモポリマーである必要はなく、コポリマーあるいは、数種のホモポリマーの混合体であってもよい。
【0034】
ワックスとしては、例えば石油系ワックス、植物系ワックス、鉱物系ワックス、動物系ワックス、低分子量ポリオレフィン類などを使用することができ、特に制限されるものではない。石油系ワックスとしてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ワックスなどが挙げられる。また植物性ワックスとしてはキャンデリラワックス、カルナウバワックス、木ロウ、オリキューリーワックス、さとうきびロウ、ロジン変性ワックスなどが挙げられる。
【0035】
又塗膜層Bに含有する水溶性又は水分散性のポリシロキサン共重合ポリエステル樹脂は、シロキサンの重合を行わせたり、ポリエステル樹脂の両端にラジカル開始剤を付加して、シロキサンの重合を行わせたり、あるいはシロキサンの側鎖に水酸基を付け、末端にイソシアネート基やカルボキシル基を有するポリエステルと反応させて櫛形ポリマーとする等によって製造することができる。重合に用いるポリエステル樹脂成分としては、塗膜層Bに用いるポリエステル樹脂で例示したものと同じ樹脂が例示できる。シロキサンとしては鎖状成分として、前述式1に示したものと同様な化合物であり、末端にエポキシ基、アミノ基、水酸基、その他の官能性末端基を有するものがあげられる。本発明においてシリコーン化合物は必ずしもホモポリマーである必要はなく、コポリマーまたは数種のホモポリマーの混合体であってもよい。ポリエステル樹脂成分とシロキサン成分の比率は、重量比で98:2〜60:40、好ましくは95:5〜80:20である。
【0036】
塗膜層B中のシリコーンあるいはワックスの含有量は0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%である。1重量%未満であると、ブロッキングの発生及び帯電の増加を引き起こし、50重量%を越えると磁性層の接着性を悪化させたり、フィルム走行時に接触ロールの汚れを惹起こす。塗膜層B中のポリシロキサン共重合ポリエステル樹脂の含有量は5〜90重量%、好ましくは20〜80重量%である。5重量%未満であると効果が不充分でブロッキングの発生及び帯電の増加を引き起こし、90重量%を超えると磁性層の接着性を悪化させたり、フィルム走行時に接触ロールの汚れを惹き起こす。
【0037】
本発明の積層フィルムは、前記のとおり、塗膜層Bのベース層Aと接触していない表面上に、非接触三次元粗さ計により求めた表面粗さプロファイルから算出した高さ4nm以上の粗大突起を、好ましくは最大でも200個/mm2で有する。この粗大突起数が200個/mm2を超える場合、それ自身がドロップアウトの原因物となり、また不活性微粒子Aの分散不良に起因するときにはヘッドの偏摩耗を引き起こし易くなり、電磁変換特性をも悪化させてしまうので好ましくない。
【0038】
不活性微粒子Aの、熱可塑性樹脂層A中での分散性を高めるには、例えば熱可塑性樹脂Aとしてポリエステルを用いるときには、該ポリエステルの重合時にグリコールスラリーとして投入する時期を最適化する方法、該グリコールスラリーの投入速度を最適化する方法などを用いるか、製膜時に溶融ポリマーを押出口金から押出する前に高精度濾過を行なうのが好ましい。この高精度濾過では、フィルター特に金属繊維焼結フィルターの平均目開きを不活性微粒子Aの平均粒径の50倍以上、さらには80倍以上とするのが好ましい。特に粒子添加方法の最適化と、高精度濾過時の平均目開きの最適化とを組合せるのが好ましい。
【0039】
本発明の積層フィルムは、ベース層Aのもう一方の表面すなわち塗膜層Bと接触していない表面上に、薄膜層Cを有するのが好ましい。薄膜層Cは好ましくは不活性微粒子を含有する。また、薄膜層Cは塗膜層であることができ、また共押出しによる熱可塑性樹脂層であることができる。薄膜層Cが塗膜層Cであるとき塗膜層Cはバインダー樹脂および不活性微粒子からなることができまたさらに界面活性剤を含有してなることができる。バインダー樹脂、不活性微粒子および界面活性剤としては塗膜層Bについて記載したものと同様のものを使用することができる。不活性微粒子Cとしては、平均粒径が好ましくは0.01〜0.1μm、より好ましくは0.02〜0.08μm、特に好ましくは0.02〜0.06μmのものが用いられる。また不活性微粒子の量は、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは2〜10重量%である。この場合、界面活性剤としては界面活性剤XおよびYをそれぞれ単独で用いることができあるいは組合せて用いることができる。それ故、薄膜層Cの組成は塗膜層Bと同じ組成であることができる。更に塗膜層Cが、塗膜層Bと同様にシリコーン又はワックスのいずれかを1〜50重量%含む水溶性樹脂又は水分散性樹脂を主体とする塗膜、又は水溶性又は、水分散性のポリシロキサン共重合ポリエステル樹脂を5〜90重量%含む塗膜であることが好ましい。
【0040】
また薄膜層Cは不活性微粒子Cを含有する熱可塑性樹脂層からなりそしてベース層Aとの共押出しにより形成されてもよい。その際薄膜層Cの厚みと不活性微粒子Cの平均粒径との間で、好ましくは、下記式
0.001≦(dc)3×Cc×tc≦100
[ここで、dc(μm)は不活性微粒子の平均粒径であり、Cc(重量%)は不活性微粒子Cの含有量であり、そしてtc(nm)は薄膜層Cの厚みである。]
を満足する。
【0041】
また、薄膜層Cが塗膜層の場合、上記関係は好ましくは
0.001≦(dc)3×Cc×tc≦0.1
であり、共押し層の場合、上記関係は好ましくは
0.1≦(dc)3×Cc×tc≦100
である。
【0042】
この場合、共押出により形成される薄膜層Cは不活性微粒子を含む。該不活性微粒子は下記の平均粒径を有し、下記の量含有される。不活性微粒子の平均粒径dCは0.1〜1μm、さらに0.15〜0.8μm特に0.2〜0.7μmであることが好ましい。またこの平均粒径dCを有する不活性微粒子Cの含有量は、薄膜層Cに対し、0.0001〜1重量%、さらには0.001〜0.5重量%、特に0.005〜0.1重量%であることが好ましい。
【0043】
この平均粒径dCを有する不活性微粒子としては、例えば(1)耐燃性ポリマー粒子(例えば架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂、メラミン―ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステル等からなる粒子)、(2)金属酸化物(例えば三二酸化アミルニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等)、(3)金属の炭酸塩(例えば炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、(4)金属の硫酸塩(例えば硫酸カルシウム、硫酸バリウム等)、(5)炭素(例えばカーボンブラック、グラファイト、ダイアモンド等)、及び(6)粘土鉱物(例えばカオリン、クレー、ベントナイト等)が好ましく挙げられる。これらのうち特に、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子、メラミン―ホルムアルデヒド樹脂粒子、ポリアミドイミド樹脂粒子、三二酸化アルミニウム(アルミナ)、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、合成炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ダイアモンド及びカオリンが好ましく、とりわけ架橋シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子、アルミナ、二酸化チタン、二酸化ケイ素及び炭酸カルシウムが好ましい。さらに、不活性微粒子が2種以上の粒子からなる場合、上記不活性微粒子Cの平均粒径dCよりも小さい平均粒径の第2、第3の粒子として、例えばコロイダルシリカ、α、γ、δ、θ等の結晶形態を有するアルミナ等の微細粒子を好ましく用いることができる。また平均粒径dCを有する不活性粒子として例示した粒子種のうち平均粒径の小さい微細粒子も用いることができる。この微細粒子の平均粒径は5〜400nm、更には10〜300nm、特に30〜250nmの範囲にあり、かつ前記平均粒径dCよりも50nm以上、更には100nm以上、特に150nm以上小さいことが好ましい。第2、第3の粒子(微細粒子)の含有量は、薄膜層Cに対し、0.005〜1重量%、更には0.01〜0.7重量%、特に0.05〜0.5重量%であることが好ましい。
【0044】
薄膜層Cを形成する熱可塑性樹脂はベース層Aを形成する熱可塑性樹脂Aと同一でも異なっていてもよい。好ましくは同一である。特に、ベース層Aと薄膜層Cがポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン―2,6―ナフタレンジカルボキシレートからなるのが好ましい。これらポリエステルとしては、o―クロロフェノール中の溶液として35℃で測定して求めた固有粘度が約0.4〜0.9のものが好ましい。
【0045】
本発明の積層フィルムは、上記薄膜層Cの存在によって、エア抜け指数1〜15mm/hrを示すのが好ましい。本発明の積層フィルムは、上記薄膜層Cが存在しそして上記エア抜け指数を示すことにより、電磁変換特性を損なうことなく、フィルムのハンドリング性、捲取り性の向上が達成される。
【0046】
本発明において積層フィルムの全厚みは、通常2.5〜20μm、好ましくは3.0〜10μm、更に好ましくは4.0〜10μmである。薄膜層Cの層厚みは、積層フィルムの全厚みの1/2以下、さらに1/3以下、特に1/4以下であることが好ましい。また塗膜層Bの層厚みは1〜100nm、さらに2〜50nm、特に3〜10nm、就中3〜8nmであることが好ましい。
【0047】
本発明の積層フィルムは、従来から知られている或いは当業界に蓄積されている方法で製造することができる。そのうち、ベース層Aと薄膜層Cとの積層構造は共押出し法により製造するのが好ましく、そして塗膜層Bの積層は塗布法により行なうのが好ましい。例えば、二軸配向ポリエステルフィルムで説明すると、押出し口金内又は口金以前(一般に前者はマルチマニホールド方式、後者はフィードブロック方式と呼ぶ)で、前述の不活性微粒子Aを微分散、含有させたポリエステルAと不活性微粒子Cを微分散、含有させたポリエステルCをそれぞれさらに高精度濾過したのち溶融状態にて積層複合し、前述の好適な厚み比の積層構造と成し、次いで口金より融点Tm℃〜(Tm+70)℃の温度でフィルム状に共押出した後、40〜90℃の冷却ロールで急冷固化し未延伸積層フィルムを得る。しかる後に、該未延伸積層フィルムを常法に従って一軸方向(縦方向又は横方向)に(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(但し、Tg:該ポリエステルのガラス転移温度)で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸し、次いで前記方向とは直角方向にTg〜(Tg+70)℃温度で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸する。更に必要に応じて縦方向及び/又は横方向に再度延伸しても良い。即ち、2段、3段、4段、或いは多段の延伸を行うと良い。全延伸倍率は、面積延伸倍率として通常9倍以上、好ましくは12〜35倍、更に好ましくは15〜30倍である。更に引き続いて、二軸配向フィルムを(Tg+70)〜(Tm−10)℃の温度、例えば180〜250℃で熱固定結晶化することによって優れた寸法安定性が付与される。なお、熱固定時間は1〜60秒が好ましい。
【0048】
上記の方法において、前述の不活性微粒子、バインダー樹脂、界面活性剤を含む塗液、好ましくは水性塗液を塗布する。塗布は最終延伸処理を施す以前のポリエステル層Aの表面に行ない、塗布後にはフィルムを少なくとも一軸方向に延伸するのが好ましい。この延伸の前乃至途中で塗膜は乾燥される。その中で、塗布は未延伸積層フィルム又は縦(一軸)延伸積層フィルム、特に縦(一軸)延伸積層フィルムに行なうのが好ましい。塗布方法としては特に限定されないが、例えばロールコート法、ダイコート法等が挙げられる。
【0049】
上記塗液、特に水性塗液の固形分濃度は0.2〜8重量%、さらに0.3〜6重量%、特に0.5〜4重量%であることが好ましい。そして塗液(好ましくは水性塗液)には、本発明の効果を妨げない範囲で、他の成分例えば、他の界面活性剤、安定剤、分散剤、UV吸収剤、増粘剤等を添加することができる。上述の例は、熱可塑性樹脂A、および薄膜層Cの熱可塑性樹脂が共にポリエチレン―2,6―ナフタレンジカルボキシレート又はポリエチレンテレフタレートの場合に好適であるが、ベース層Aのみ或いは薄膜層Cのみがポリエチレン―2,6―ナフタレンジカルボキシレート又はポリエチレンテレフタレートの場合にも同様である。
【0050】
なお、積層フィルムの製造に際し、熱可塑性樹脂に、所望により上述の不活性粒子以外の添加剤例えば安定剤、着色剤、溶融ポリマーの固有抵抗調整剤等を添加含有させることができる。
【0051】
本発明において、磁気記録媒体としてのヘッドタッチ、走行耐久性を初めとする各種性能を向上させ、同時に薄膜化を達成するには、積層フィルムのヤング率を縦方向および横方向でそれぞれ450kg/mm2以上および600kg/mm2以上、更には480kg/mm2以上および680kg/mm2以上、特に550kg/mm2以上および800kg/mm2以上、就中550kg/mm2以上および1000kg/mm2以上とするのが好ましい。また、ポリエチレンテレフタレート層の結晶化度は30〜50%、ポリエチレン―2,6―ナフタレンジカルボキシレート層の結晶化度は28〜38%であることが望ましい。いずれも下限を下回ると、熱収縮率が大きくなるし、一方上限を上回るとフィルムの耐磨耗性が悪化し、ロールやガイドピン表面と摺動した場合に白粉が生じやすくなる。
【0052】
本発明によれば、本発明の積層フィルムをベースフィルムとする磁気記録媒体、すなわち、本発明の積層フィルムおよび該積層フィルムの塗膜層B上に存在する磁性層からなる磁気記録媒体が同様に提供される。
【0053】
本発明の積層フィルムから磁気記録媒体を製造する実施態様は以下のとおりである。
【0054】
本発明の積層フィルムは、塗膜層Bの表面に、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の方法により、鉄、コバルト、クロム又はこれらを主成分とする合金もしくは酸化物より成る強磁性金属薄膜層を形成し、またその表面に、目的、用途、必要に応じてダイアモンドライクカーボン(DLC)等の保護層、含フッ素カルボン酸系潤滑層を順次設け、更に必要により、薄膜層C側の表面に公知のバックコート層を設けることにより、特に短波長領域の出力、S/N,C/N等の電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用蒸着型磁気記録媒体とすることが出来る。この蒸着型磁気記録媒体は、アナログ信号記録用Hi8、ディジタル信号記録用ディジタルビデオカセットレコーダー(DVC)、データ8ミリ、DDSIV用テープ媒体として極めて有用である。
【0055】
本発明の積層フィルムは、また、塗膜層Bの表面に、鉄又は鉄を主成分とする針状微細磁性粉(メタル粉)をポリ塩化ビニール、塩化ビニール・酢酸ビニール共重合体等のバインダーに均一分散し、磁性層厚みが1μm以下、好ましくは0.1〜1μmとなるように塗布し、更に必要により、薄膜層C側の表面に公知の方法でバックコート層を設けることにより、特に短波長領域での出力、S/N,C/N等の電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用メタル塗布型磁気記録媒体とすることが出来る。また、必要に応じてベース層Aの上に、該メタル粉含有磁性層の下地層として微細な酸化チタン粒子等を含有する非磁性層を磁性層と同様の有機バインダー中に分散、塗設することもできる。このメタル塗布型磁気記録媒体は、アナログ信号記録用8ミリビデオ、Hi8、βカムSP、W―VHS、ディジタル信号記録用ディジタルビデオカセットコーダー(DVC)、データ8ミリ、DDSIV、ディジタルβカム、D2、D3、SX等用の磁気テープ媒体として極めて有用である。
【0056】
本発明の積層フィルムは、また、塗膜層Bの表面に、酸化鉄又は酸化クロム等の針状微細磁性粉、又はバリウムフェライト等の板状微細磁性粉をポリ塩化ビニール、塩化ビニール・酢酸ビニール共重合体等のバインダーに均一分散し、磁性層厚みが1μm以下、好ましくは0.1〜1μmとなるように塗布し、更に必要により、薄膜層C側の表面に公知の方法でバックコート層を設けることにより、特に短波長領域での出力、S/N、C/N等の電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用塗布型磁気記録媒体とすることが出来る。また、必要に応じて層Cの上に、該磁性粉含有磁性層の下地層として微細な酸化チタン粒子等を含有する非磁性層を磁性層と同様の有機バインダー中に分散し、塗設することも出来る。この酸化物塗布型磁気記録媒体は、ディジタル信号記録用データストリーマー用QIC等の高密度酸化物塗布型磁気記録媒体として有用である。
【0057】
上述のW―VHSはアナログのHDTV信号記録用VTRであり、またDVCはディジタルのHDTV信号記録用として適用可能なものであり、本発明のフィルムはこれらHDTV対応VTR用磁気記録媒体に極めて有用なベースフィルムと言うことができる。
【0058】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。尚、本発明において用いた測定法及び定義は次の通りである。
【0059】
(1)固有粘度
オルソクロロフェノール溶媒中35℃で測定した値から求める。
【0060】
(2)粒子の平均粒径I(平均粒径:0.06μm以上)
島津製作所製CP―50型セントリフューグル パーティクル サイズ アナライザー(Centrifugal Particle Size Analyzer)を用いて測定する。得られる遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50マスパーセントに相当する粒径「等価球直径」を読み取り、この値を上記平均粒径とする(Book「粒度測定技術」日刊工業新聞発行、1975年、頁242〜247参照)。
【0061】
(3)粒子の平均粒径II(平均粒径:0.06μm未満)
小突起を形成する平均粒径0.06μm未満の粒子は、光散乱法を用いて測定する。即ち、ニコンプインストゥルメント(Nicomp Instruments Inc.)社製のNICOMP MODEL 270 SUBMICRON PARTICLE SIZER により求められる全粒子の50重量%の点にある粒子の「等価球直径」をもって表示する。
【0062】
(4)熱可塑性樹脂層A、Cの厚み及び全体の厚み
フィルムの全体の厚みはマイクロメーターにてランダムに10点測定し、その平均値を用いる。層A、Cの厚みは、薄い側の層厚みを以下に述べる方法にて測定し、また厚い側の層厚みは全体の厚みより塗膜層及び薄い側の層厚みを引き算して求める。即ち、二次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、被覆層を除いた表層から深さ5000nmの範囲のフィルム中の粒子の内最も高濃度の粒子に起因する金属元素(M+)とポリエステルの炭素元素(C+)の濃度比(M+/C+)を粒子濃度とし、表面から深さ5000nmまで厚さ方向の分析を行う。表層では表面という界面の為に粒子濃度は低く、表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。本発明の場合、粒子濃度は一旦安定値1になった後、上昇して安定値2になる場合と、単調に減少する場合とがある。この分布曲線をもとに、前者の場合は、(安定値1+安定値2)/2の粒子濃度を与える深さをもって、また後者の場合は粒子濃度が安定値1の1/2になる深さ(この深さは安定値1を与える深さよりも深い)をもって、当該層の層厚みとした。
【0063】
測定条件は以下の通りである。
▲1▼測定装置
二次イオン質量分析装置(SIMS);パーキン・エルマー(PERKIN ELMER)社製 6300
▲2▼測定条件
一次イオン種 :O2+
一次イオン加速電圧:12KV
一次イオン電流:200nA
ラスター領域 :400μm
分析領域 :ゲート30%
測定真空度 :6.0×10-9Torr
E―GUNN :0.5KV―3.0A
【0064】
尚、表層から5000nmの範囲に最も多く含有する粒子がシリコーン樹脂以外の有機高分子粒子の場合はSIMSでは測定が難しいので、表面からエッチングしながらFT―IR(フーリエトランスフォーム赤外分光法)、粒子によってはXPS(X線光電子分光法)等で上記同様の濃度分布曲線を測定し、層厚を求める。
【0065】
(5)塗膜層B表面の不活性微粒子Bによる突起頻度(35000倍で測定)フィルム表面の突起頻度の測定は走査型電子顕微鏡により行う。即ち、積層フィルムの塗膜層Bの表面写真を倍率35000倍にてランダムに25枚撮影し、表面突起頻度をカウントし、その平均値より1mm2当たりの突起数に換算し、この値を塗膜層B表面の不活性微粒子Bによる突起頻度とする。
【0066】
(6)塗膜層B表面の不活性微粒子Aによる突起頻度(5000倍で測定)
フィルム表面の突起頻度の測定は走査型電子顕微鏡により行う。即ち、積層フィルムの塗膜層Bの表面写真を倍率5000倍にてランダムに25枚撮影し、表面突起頻度をカウントし、その平均値より1mm2当たりの突起数に換算し、この値を塗膜層B表面の不活性微粒子Aによる突起頻度とする。
【0067】
(7)中心面平均粗さ WRa
WYKO社製非接触三次元粗さ計(TOPO―3D)を用いて測定倍率40倍、測定面積242μm×239μm(0.058mm2)の条件にて測定を行ない、表面粗さのプロフィル(オリジナルデータ)を得た。同粗さ計内臓ソフトによる表面解析より、WRaは以下の式により計算されアウトプットされた値を用いる。
【0068】
【数1】
【0069】
また、Zjkは測定方向(242μm)、それと直行する方向(239μm)をそれぞれM分割、N分割したときの各方向のj番目、k番目の位置に於ける三次元粗さチャート上の高さである。
【0070】
(8)粗大突起数
上記(7)で得られた表面粗さのプロフイル(オリジナルデータ)を用い、このプロフイルのうちの、測定方向の連続した15分割分(例えばj=1〜15)とこれと直交する方向(直交方向)の連続した15分割分(例えばk=1〜15)とで形成される面積(15×15分割分面積)における高さの平均値を求め(j,k)=(1,1)の平均高さとする。次いで、測定方向又は直交方向の分割位置を1つ移動させたときの(例えばj=2〜16、k=1〜15又はj=1〜15、k=2〜16)15×15分割分面積における高さの平均値を求め(j,k)=(2,1)又は(1,2)の平均高さとする。さらに分割位置を1つずつ移動させて例えばj=p〜p+14,k=q〜q+14の15×15分割分面積における高さの平均値を算出して(j,k)=(p,q)の平均高さを求め、測定方向256分割分、直交方向256分割分まで平均高さの算出をくり返す。これら平均高さで構成される表面粗さのプロフイルはフィルム表面のうねり曲面成分に相当する。
【0071】
前記オリジナルデータから前記うねり曲面成分を差引いて、フィルム表面のプロフイル(再構成データ)を再構成する。この再構成データを粗さ計内臓のソフトで解析し、高さ4nm以上の突起を粗大突起としてカウントし、この測定を測定箇所を変えて10回実施し、この平均値を1mm2当りの個数に換算した値を粗大突起数とする。
【0072】
(9)ヤング率
東洋ボールドウィン社製の引っ張り試験機テンシロンを用いて、温度20℃、湿度50%に調節された室内に於いて、長さ300mm、幅12.7mmの試料フィルムを、10%/分のひずみ速度で引っ張り、引っ張り応力―ひずみ曲線の初めの直線部分を用いて次ぎの式によって計算する。
E=Δσ/Δε
ここで、Eはヤング率(kg/mm2)、Δσは直線上の2点間の元の平均断面積による応力差、Δεは同じ2点間のひずみ差である。
【0073】
(10)エア抜け性
(株)東洋製機製、ベック平滑度試験機を用いて、まずフィルム40枚を重ね合わせ、その内試料台最上部にくる1枚を除いて、残り39枚に直径5mmφの孔をあけ、試料台にセットする。このとき孔の中心部が、試料台の中心にくるようにする。この状態で0.5kg/cm2の荷重を加え、真空到達度を550mmHgに設定する。550mmHgに到達した後、常圧に戻ろうとするため、フィルムとフィルム間を空気が流れ込んでいく。この時、1時間の間30秒毎に降下していく真空度(mmHg)を測定し、測定時間(hr)に対する真空度を直線近似したときの直線の傾き(=mmHg/hr)を空気漏れ指数Gとする。
【0074】
(11)微細突起数
アルミニウムを0.5μm厚みに蒸着した塗膜層Bの表面を、光学顕微鏡ニコン(NIKON)製OPTIPHOTを用いて、微分干渉法により倍率400倍にて観察し、長手方向2μm×幅方向5μm以上の大きさの突起をカウントし、1mm2当りの個数に換算した。
【0075】
(12)コロナ処理ブロッキングはくり力
ロール状フィルムの長手方向に100mm、幅方向に200mmの長方形にサンプリングしベース層A側に気温25℃±5℃、湿度50%±5%の環境下でコロナ処理を施す。
処理は春日電機製CG―102型の高周波電源を用いて以下の条件にて処理した。
電流:4.5A
電極間距離:1.0mm
処理時間:1.2m/分のスピードで電極間を通過させて処理した
処理したフィルムを直ちにベース層Aと反対側の面と接触させ、100kg/cm2の圧力にて60℃×80%の環境下で17hrエージングさせたのちテンションにて幅100mm当りのはくり力を求める。
【0076】
(13)AFM粗さ
Digital Instruments社製の原子間力顕微鏡Nano ScopeIII AFMのJスキャナーを使用し、以下の条件で算出される2乗平均粗さを下記の条件で測定する。
探針:単結合シリコンセンサー
走査モード:タッピングモード
走査範囲:10μm×10μm
画素数:256×256データポイント
スキャン速度:2.0Hz
測定環境:室温、大気中
数値は5回測定した平均とする。
【0077】
(14)磁気テープの製造及び特性評価
二軸配向積層フィルムの塗膜層Cの表面に、真空蒸着法により、コバルト100%の強磁性薄膜を0.2μmの厚みになるように2層(各層厚約0.1μm)形成し、その表面にダイアモンドライクカーボン(DLC)膜、更に含フッ素カルボン酸系潤滑層を順次設け、更に熱可塑性樹脂C側の表面に公知方法でバックコート層を設ける。その後、8mm幅にスリットし、市販の8mmビデオカセットにローディングする。次いで、以下の市販の機器を用いてテープの特性を測定する。
【0078】
使用機器:
8mmビデオテープレコーダー:ソニー(株)製EDV―6000
C/N測定:シバソク(株)製ノイズメーター
▲1▼C/N測定
記録波長0.5μm(周波数約7.4MHz)の信号を記録し、その再生信号の6.4MHzと7.4MHzの値の比をそのテープのC/Nとし、市販8mmビデオ用蒸着テープのC/Nを0dBとし、下記の基準で判定する。
判定基準 基準
◎:市販8mmテーブ対比+5dB以上
○:市販8mmテーブ対比+1dB以上+5dB未満
×:市販8mmテーブ対比+1dB未満
▲2▼ドロップアウト
シバソク(株)製ドロップアウトカウンターを使用して、3μsec/10dB以上のドロップアウトを10分間測定し、1分当りの個数に換算する。
下記の基準で判定する。
○:ドロップアウト10ケ/分以下
×:ドロップアウト11ケ/分以上
▲3▼走行耐久性
前記した蒸着テープに4.2MHzの映像信号を記録し、25℃50%RH条件下でテープ走行速度41m/分、巻き戻し速度41m/分の走行を1回とし、合計200回くり返した後の出力変動を調べる。この出力変動から次の基準で判定する。
◎:200回繰り返し後の出力変動が0dB〜−0.3dB
○:200回繰り返し後の出力変動が−0.3dB〜−0.6dB
×:200回繰り返し後の出力変動が−0.6dB以下
【0079】
[実施例1〜4]
ジメチルテレフタレートとエチレングリコールとを、エステル交換触媒として酢酸マグネシウムを、重合触媒としてトリメリット酸チタンを、安定剤として亜燐酸を、更に滑剤として表1に示す不活性微粒子を添加して常法により重合し、固有粘度0.60の層A用、及び層C用のポリエチレンテフタレート(PET)(それぞれ樹脂A、樹脂C)を得た。
【0080】
この樹脂A、樹脂Cをそれぞれ170℃で3時間乾燥後、2台の押出し機に供給し、溶融温度280〜300℃にて溶融し、平均目開き11μmの鋼線フィルターで高精度濾過した後マルチマニホールド型共押出しダイを用いて、樹脂層Aの片面に樹脂層Cを積層させ、急冷して厚さ89μmの未延伸積層フィルムを得た。
【0081】
得られた未延伸フィルムを予熱し、更に低速・高速のロール間でフィルム温度100℃にて3.3倍に延伸し、急冷し、次いで縦延伸フィルムの層A面側に表2に示す組成の水性塗液(全固形分濃度1.0重量%)をキスコート法により塗布し、続いてステンターに供給し、110℃にて横方向に4.2倍に延伸した。
得られた二軸延伸フィルムを220℃の熱風で4秒間熱固定し、厚み6.4μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。層A、Cの厚みについては、2台の押出し機の吐出量により調整した。このフィルムのヤング率は縦方向500kg/mm2、横方向700kg/mm2であった。
【0082】
この積層フィルムの表面特性、このフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1〜7に示す。
【0083】
[実施例5]
層Aのための熱可塑性樹脂として、不活性微粒子を含まない、固有粘度0.60のポリエチレンテレフタレートを用いる他は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムの特性等を表1〜7に示した。
【0084】
[実施例6]
不活性微粒子を含まない、同固有粘度0.60のポリエチレンテレフタレートから実施例1と同様にして厚さ89μmの未延伸フィルムを得た。
【0085】
得られた未延伸フィルムを予熱し、更に低速・高速のロール間でフィルム温度100℃にて3.3倍に延伸し、急冷し、次いで縦延伸フィルムの両面に表1に示す組成の水性塗料(B1)をキスコート法により塗布し、続いてステンターに供給し、110℃にて横方向に4.2倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを220℃の熱風で4秒間熱固定し、厚み6.4μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。層A、Cの厚みについては、2台の押出し機の吐出量により調整した。このフィルムのヤング率は縦方向500kg/mm2、横方向700kg/mm2であった。
【0086】
この積層フィルムの表面特性、このフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1〜7に示す。
【0087】
[実施例7]
実施例6において、得られた縦延伸フィルムのそれぞれの面に、表1に示す組成の水性塗料(B1)および水性塗料(B3)を塗布する他は、実施例6と同様に実施した。結果を表1〜7に示す。
【0088】
[実施例8]
実施例7にて塗布する塗料が表1〜7に示す組成の水性塗料(B1)および水性塗料(B3+R1)を塗布する他は実施例7と同様に実施した結果を表1に示す。
【0089】
[実施例9]
ベース層が、不活性微粒子を含まない、固有粘度0.6のポリエチレンテレフタレートからなる厚み5.6μmの層と、平均粒径0.6μmのシリコーン粒子0.1重量%と平均粒径0.06μmのθ―アルミナ粒子0.3重量%を含有するポリエチレンテレフタレートからなる厚み0.8μmの層とからなる積層フィルムである他は実施例7と同様である。但し、不活性微粒子を含まない層の上に塗膜層Bが存在し、不活性微粒子を含む層の上に薄膜層Cが存在した。結果を表1〜7に示す。
【0090】
[比較例2]
熱可塑性樹脂Aを押出機に供給したのち高精度濾過に使用する鋼線フィルターの目開きを4.8μmに変更した外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。この積層フィルム及びこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着テープの特性を表1に示す。表1から明らかなように、このフィルムは表面粗大突起数が多い為に、テープとしたときのドロップアウトが多く、またヘッドの偏磨耗によって走行耐久性が低くなってしまった。
【0091】
[実施例10]
層A、層Cの添加不活性微粒子及び層厚みを表1に示すとおりとし、塗膜層Bの組成を表1〜7に示すとおりとする外は実施例1と同様の積層フィルムを得た。得られたフィルムの特性、及びこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着磁気テープの特性を表1に示す。
【0092】
[実施例11〜13]
ジメチルテレフタレートの代わりに2,6―ナフタレンジカルボン酸ジメチルを同モル量使用し、不活性微粒子として表1〜7に示す微粒子を用いた外は、実施例1と同様の方法で層A、層C用のポリエチレン―2,6―ナフタレート(PEN)(樹脂A、樹脂C)を得た。
【0093】
この樹脂A、樹脂Cをそれぞれ170℃で6時間乾燥後、実施例1と同様にして各層厚みを調整し、各実施例、比較例を満たす未延伸積層フィルムを得た。
【0094】
この様にして得られた未延伸フィルムを予熱し、更に低速・高速のロール間でフィルム温度135℃にて実施例11では3.3倍、実施例12では3.6倍、実施例13では4.0倍に延伸し、急冷し、次いで表1に示す塗膜Bの水性塗液を実施例1と同様に塗布し、続いてステンターに供給し、155℃にて横方向に実施例11では6.4倍、実施例12では5.6倍、実施例13では5.2倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを200℃の熱風で4秒間熱固定し積層フィルムを得た。
【0095】
[比較例1]
層A、層Cの添加不活性微粒子及び層厚みを表1に示すとおりとし、塗膜層Bの組成を表1〜7に示すとおりにする以外は実施例1と同様の積層フィルムを得た。得られたフィルムの特性、及びこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着磁気テープの特性を表1〜7に示す。
【0096】
[実施例14〜17、比較例3〜6]
塗布層Bの組成を表1〜7に示すとおりにする以外は実施例1と同様の積層フィルムを得た。得られたフィルムの特性、及びこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着磁気テープの特性を表1〜7に示す。
【0097】
表1〜7から明らかなように、実施例の積層フィルムは、優れた電磁変換特性を示すと共に、ドロップアウトの原因となる微細突起が極めて少ないばかりでなく、耐コロナ処理ブロッキングはくり力が良好である。さらに、実施例の積層フィルムは、磁性層面側に当る層Aに添加する不活性微粒子が適切で、かつ粗大粒子数も少ないことから、これらに起因するドロップアウトが少なく、また走行耐久性も優れている。一方、比較例のフィルムは、これらの特性を同時に満足できていない。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
【表4】
【0102】
【表5】
【0103】
【表6】
【0104】
【表7】
【0105】
【発明の効果】
本発明によれば、耐コロナ処理ブロッキングが良好で、蒸着金属薄膜型磁気記録媒体として用いられた場合にも走行耐久性、電磁変換特性に優れ、ドロップアウトの極めて少ない磁気記録媒体の製造が可能な積層フィルムを提供することができる。
Claims (16)
- 熱可塑性樹脂Aからなるベース層Aおよびベース層Aの一方の表面上に存在する塗膜層Bからなる積層フィルムであって、熱可塑性樹脂Aは芳香族ポリエステルAであり、該塗膜層Bはバインダー樹脂、不活性微粒子、界面活性剤、及びシリコーン又はワックスのいずれかを1〜50重量%含む、バインダー樹脂である水溶性樹脂又は水分散性樹脂を主体とする塗膜であり、塗膜層B中の不活性微粒子は平均粒径が10〜50nmの範囲にあり、その含有量は塗膜層Bの固形分に基づいて0.5〜30重量%で含有されること、塗膜層Bのバインダー樹脂がアクリル変性ポリエステル樹脂であること、コロナ処理ブロッキングはくり力が15g/10cm以下であることを特徴とする蒸着金属薄膜型磁気記録媒体用積層フィルム。
- 熱可塑性樹脂Aからなるベース層Aおよびベース層Aの一方の表面上に存在する塗膜層Bからなる積層フィルムであって、熱可塑性樹脂Aは芳香族ポリエステルAであり、該塗膜層Bがバインダー樹脂、不活性微粒子、界面活性剤、更に水溶性又は水分散性のポリシロキサン共重合ポリエステル樹脂を5〜90重量%含む塗膜であり、塗膜層B中の不活性微粒子は平均粒径が10〜50nmの範囲にあり、その含有量は塗膜層Bの固形分に基づいて0.5〜30重量%で含有されること、塗膜層Bのバインダー樹脂がアクリル変性ポリエステル樹脂であること、コロナ処理ブロッキングはくり力が15g/10cm以下であることを特徴とする蒸着金属薄膜型磁気記録媒体用積層フィルム。
- ベース層Aを形成する熱可塑性樹脂Aが不活性微粒子を実質的に含有しない、請求項1または2に記載の積層フィルム。
- ベース層Aを形成する熱可塑性樹脂Aが平均粒径30〜400nm、体積形状係数0.1〜π/6の不活性微粒子Aを含有する請求項1または2に記載の積層フィルム。
- 不活性微粒子Aが、不活性微粒子Aに基因して、ベース層Aに接触しない側の塗膜層Bの表面上に、0.5万〜10万個/mm2の密度で突起を生成する割合で熱可塑性樹脂Aに含有される請求項1または2に記載の積層フィルム。
- 塗膜層Bのベース層Aと接触していない表面上に、塗膜層Bに含有される不活性微粒子に基因する突起が1〜40個/μm2存在する請求項1または2に記載の積層フィルム。
- 塗膜層Bが、ベース層Aと接触していない表面上に、非接触三次元粗さ計により求めた表面粗さプロファイルから算出した、高さ4nm以上の粗大突起を最大でも200個/mm2以下で有する請求項1または2に記載の積層フィルム。
- 界面活性剤がノニオン系界面活性剤である請求項1または2に記載の積層フィルム。
- ベース層Aの塗膜層Bと接触していない表面上に、薄膜層Cがさらに存在する請求項1または2に記載の積層フィルム。
- 薄膜層Cがバインダー樹脂、不活性微粒子および界面活性剤からなる塗膜層である請求項9に記載の積層フィルム。
- 薄膜層Cが塗膜層Bと同じ組成からなる請求項10に記載の積層フィルム。
- 薄膜層Cが不活性微粒子Cを含有する熱可塑性樹脂層からなりそしてベース層Aとの共押出しにより形成される請求項9に記載の積層フィルム。
- 薄膜層Cが下記式
0.001≦(dc)3×Cc×tc≦100
[ここで、dc(μm)は不活性微粒子Cの平均粒径であり、Cc(重量%)は不活性微粒子Cの含有量であり、そしてtc(nm)は薄膜層Cの厚みである。]
を満足する請求項12に記載の積層フィルム。 - 積層フィルムがエア抜け指数1〜15mmHg/hrを示す請求項10または12に記載の積層フィルム。
- 請求項1または2に記載の積層フィルムおよび該積層フィルムの塗膜層B上に存在する蒸着金属薄膜型磁性層からなる磁気記録媒体。
- アナログ信号記録用Hi8、ディジタル信号記録用ディジタルビデオカセットレコーダーまたはデータ8mm、DDSIV用である請求項15に記載の磁気記録媒体。
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