JP3856626B2 - 積層熱可塑性樹脂フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は積層熱可塑性樹脂フィルムに関する。さらに詳しくは、耐ブロッキング性、巻取り性、加工適性にすぐれ、特に金属蒸着薄膜型磁気記録媒体としたときに電磁変換特性に優れた積層熱可塑性樹脂フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気記録媒体の高密度化の進歩はめざましく、例えば、強磁性金属薄膜を真空蒸着やスパッタリングなどの物理沈着法またはメッキ法により非磁性支持体上に形成させた強磁性金属薄膜型磁気記録媒体の開発実用化が、進められている。例えば、Coの蒸着テープ(特開昭54―147010号公報)、Co―Cr合金からなる垂直磁気記録媒体(特開昭52―134706号公報)が知られている。
【0003】
従来の塗布型磁気記録媒体(磁性粉末を有機高分子バインダーに混入させて非磁性支持体上に塗布してなる磁気記録媒体)は、記録密度が低く、記録波長も長いために、磁性層の厚みが2μm程度以上と厚い。これに対し、真空蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングなどの薄膜形成手段によって形成される金属薄膜は、厚みが0.2μm以下と非常に簿くなっている。
【0004】
このため、磁気記録層の薄い高密度磁気記録媒体においては、非磁性支持体(ベースフィルム)の表面状態が磁気記録層の表面性に大きな影響を及ぼしている。すなわち、非磁性支持体の表面状態が、そのまま磁気記録層表面の凹凸として発現し、それが記録・再生信号の雑音の原因となる。従って、非磁性支持体の表面は、できるだけ平滑であることが望ましい。
【0005】
一方、非磁性支持体の製膜、製膜工程での搬送、傷つき、巻き取り、巻出しといったハンドリングの観点からは、フィルム表面が平滑過ぎるとフィルム―フィルム相互の滑り性が悪化し、製品歩留りの低下、ひいては、製品の製造コストの上昇をきたす。従って、製造コストという観点では、非磁性支持体の表面は、できるだけ粗いことが好ましい。
【0006】
このように、非磁性支持体の表面は、電磁変換特性という観点からは平滑であることが要求され、ハンドリング性、製造コストの観点からは、粗いことが要求される。
【0007】
さらに、金属薄膜型磁気記録媒体の場合には、金属薄膜のベースフィルム表面への蒸着を真空中の工程で実施するが、この工程で巻き取られたフィルムは真空中で巻き取られるためフィルム層間の密着性が高く、しばしばブロッキングを起こし、次工程以降で切断やしわが発生しやすくなり、収率が大幅に低下してしまうという問題がある。
【0008】
上記のような問題を解決するために、例えば特開平9−207290号公報、特開平9−226063号公報には、A、B層の2層からなり、A層表面よりもB層表面の方が粗い積層フィルムが提案されている。しかしながら、このような方法では、電磁変換特性とハンドリング性、巻き取り性のバランスはある程度取れるものの、まだ不充分であり、かつ上記ブロッキングの発生を抑制することができない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、耐ブロッキング性、巻き取り性、加工適性に優れ、金属蒸着薄膜型磁気記録媒体としたときに電磁変換特性に優れた積層熱可塑性樹脂フィルムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、本発明によれば、熱可塑性樹脂層Bの片面にソルビタントリステアレートを含有する熱可塑性樹脂層Aを積層し、かつB層のA層と接しない表面に塗膜層Cを積層してなる積層フィルムであって、該C層の表面粗さWRaが0.1〜4nmであり、該A層が平均粒径50〜1,500nmの不活性粒子Aを0.001〜5重量%(A層に対し)含有し、該ソルビタントリステアレートの含有量が0.001〜1重量%(A層に対し)であり、かつ該A層のB層と接していない表面の水接触角が60〜80°であることを特徴とする積層熱可塑性樹脂フィルムによって達成される。
【0011】
本発明は、好ましい態様として、上記塗膜層Cが平均粒径10〜50nm、体積形状係数0.1〜π/6の不活性粒子Cを0.5〜30重量%(C層に対し)含有すること、上記熱可塑性樹脂層Bが実質的に粒子を含有しないか、体積形状係数0.1〜π/6、平均粒径30〜400nmの不活性粒子Bを0.001〜0.2重量%(B層に対し)含有すること等を包含する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において、熱可塑性樹脂層A、Bを形成する熱可塑性樹脂A、Bとしては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などを例示することができる。これらのうち、ポリエステル系樹脂、特に芳香族ポリエステルが好ましい。熱可塑性樹脂A、Bは、異なる種類を用いても良いが、同種類の方が好ましい。
【0013】
上記芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)などを例示することができる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。
【0014】
これらポリエステルは、ホモポリエステルであっても、コポリエステルであっても良い。コポリエステルの場合、例えば、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートの共重合成分としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコールなどの他のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸(ただし、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(ただし、ポリエチレンテレフタレートの場合)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの他のジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などのオキシカルボン酸成分などが挙げられる。これら共重合成分の量は、20モル%以下、さらには10モル%以下であることが好ましい。
【0015】
さらにトリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上の多官能化合物を、共重合させることも出来る。この場合、ポリマーが実質的に線状である量、例えば2モル%以下で、共重合させるのが良い。
【0016】
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート以外の他のポリエステルの場合の共重合成分についても、上記と同様に考えてよい。
【0017】
上記ポリエステルは、それ自体公知であり、かつそれ自体公知の方法で製造することができる。
【0018】
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂層Aに下記に示すエステルワックスを0.001〜1重量%含有する。
【0021】
本発明のエステルワックスのアルコール成分は、水酸基を2個以上有する多価アルコールであり、耐熱性の観点から、水酸基を3個以上有する多価アルコールであることが好ましい。このアルコール成分として、モノアルコールを用いたのでは、生成したエステルワックスの耐熱性が不足する。
【0022】
上記のエステルワックスとしては、多価アルコールの水酸基の数にもよるが、耐熱性の観点からトリエステルが用いられる。かかるエステルワックスとしては、ソルビタントリステアレートが用いられる。
【0025】
本発明において、熱可塑性樹脂層Aに含有させる前記ソルビタントリステアレートの量は、A層に対し、0.001〜1重量%、好ましくは0.003〜0.8重量%、さらに好ましくは0.005〜0.5重量%、特に好ましくは0.01〜0.3重量%含有する。ソルビタントリステアレートの含有量が、0.001重量%未満であると、ブロッキング改良効果が得られない。一方、1重量%を超えると、加工工程で滑りやすくハンドリング性が劣るという問題や、フィルム製造工程でロール上に巻き上げたときに接する反対面側に、ブリードアウトによってワックス成分が多量に転写し、金属蒸着層とベースフィルムの接着性を妨げるなどの問題がある。
【0026】
本発明において、前記熱可塑性樹脂層Aの、B層と接していない表面の水接触角は60〜80°、好ましくは65〜78°、さらに好ましくは68〜75°である。この水接触角が60°未満では、ブロッキング改良効果が得られない。一方、80°を超えると、バックコート層を塗布する工程で、塗布斑などの問題が発生する。
【0027】
本発明における熱可塑性樹脂層Aは、表面粗さ(WRa)が4〜8nm、さらには5〜7nmであることが好ましい。それには、該熱可塑性樹脂層Aに不活性粒子Aを含有させることが好ましい。該不活性粒子Aの平均粒径(dA)は50〜1,500nm、好ましくは100〜1,000nm、さらに好ましくは150〜800nm、特に好ましくは180〜700nmである。また、かかる不活性粒子Aの含有量は、A層に対し、0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜4重量%、さらに好ましくは0.02〜2重量%、特に好ましくは0.03〜1重量%である。
【0028】
前記不活性粒子Aの平均粒径が50nm未満、または含有量が0.001重量%未満では巻取り性、耐ブロッキング性が不良となる。一方、平均粒径が1,500nmを超えるか、または含有量が5重量%を超えると、反対面のB層表面への突起の形状転写や、B層の下からの突起の突き上げによって電磁変換特性を悪化させる。
【0029】
前記不活性粒子Aとして好ましい粒子は、例えば(1)耐熱性ポリマー粒子(例えば、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステルなどの1種以上からなる粒子)や、(2)金属酸化物(例えば、三二酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなど)、(3)金属の炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなど)、(4)金属の硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、(5)炭素(例えば、カーボンブラック、グラファイト、ダイアモンドなど)、(6)粘土鉱物(例えば、カオリン、クレー、ベントナイトなど)などの無機化合物からなる微粒子が挙げられる。これらのうち、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂粒子、ポリアミドイミド樹脂粒子、三二酸化アルミニウム(アルミナ)粒子、二酸化チタン粒子、二酸化ケイ素粒子、酸化ジルコニウム粒子、合成炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、ダイアモンド粒子、およびカオリン粒子が好ましい。さらに好ましくは、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、三二酸化アルミニウム(アルミナ)粒子、二酸化チタン粒子、二酸化ケイ素粒子、および炭酸カルシウム粒子である。
【0030】
前記不活性粒子Aは、1種または2種以上のものを混合して使用してもよい。不活性粒子Aが2種以上の粒子からなる場合、不活性粒子Aの平均粒径dAよりも小さい平均粒径の第2、第3の粒子(微細粒子)として、例えば、コロイダルシリカ、α、γ、δ、θなどの結晶形態を有するアルミナなどの微粒子を好ましく用いることができる。また、平均粒径dAを有する不活性粒子Aとして例示した粒子種のうち、平均粒径の小さい微細粒子も、第2、第3の粒子(微細粒子)として用いることができる。
【0031】
この微細粒子の平均粒径は、好ましくは5〜400nm、さらに好ましくは10〜300nm、特に好ましくは30〜250nmの範囲にある。また、第2、第3の粒子(微細粒子)の含有量は、A層に対し、好ましくは0.005〜1重量%、さらに好ましくは0.01〜0.7重量%、特に好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0032】
本発明における積層熱可塑性樹脂フィルムは、磁気テープとした場合の諸特性向上のため、磁性層を設ける側の面が塗膜層Cからなる。この塗膜層Cは、平均粒径10〜50nm、体積形状係数0.1〜π/6の不活性粒子Cを0.5〜30重量%(C層に対し)含有していることが好ましい。
【0033】
前記塗膜層Cの表面粗さWRaは、0.1〜4nm、好ましくは0.2〜3.5nm、さらに好ましくは0.3〜3.0nm、特に好ましくは0.4〜2.5nmである。このWRaが0.1nm未満であると、フィルムの製造が極めて困難であり、一方、WRaが4nmを超えると、電磁変換特性が悪化する。
【0034】
この表面粗さ(WRa)は、塗膜層Cに含有させる不活性粒子Cの粒径と量、および/または、熱可塑性樹脂層Bに含有させる不活性粒子Bの粒径と量によって調整することができる。
【0035】
前記塗膜層Cを形成する樹脂としては、例えば、水性ポリエステル樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂などが好ましく挙げられ、特に水性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0036】
この水性ポリエステル樹脂としては、酸成分が、例えばイソフタル酸、フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、コハク酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、2−スルホテレフタル酸カリウム、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメリット酸モノカリウム塩、p−ヒドロキシ安息香酸などの多価カルボン酸の1種以上よりなり、グリコール成分が、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ジメチロールプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物などの多価ヒドロキシ化合物の1種以上より主としてなるポリエステル樹脂が好ましく用いられる。また、ポリエステル鎖にアクリル重合体鎖を結合させたグラフトポリマーまたはブロックコポリマー、あるいは2種のポリマーがミクロな粒子内で特定の物理的構成(IPN(相互侵入高分子網目)型、コアシェル型など)を形成したアクリル変性ポリエステル樹脂であってもよい。この水性ポリエステル樹脂としては、水に溶解、乳化、微分散するタイプを自由に用いることができるが、水に乳化、微分散するタイプのものが好ましい。また、これらは親水性を付与するため、分子内に例えばスルホン酸塩基、カルボン酸塩基、ポリエーテル単位などが導入されていてもよい。
【0037】
前記塗膜層Cに含有させる不活性粒子Cとしては、特に限定されないが、塗液中で沈降しにくい、比較的低比重のものが好ましい。例えば、架橋シリコーン樹脂、アクリル樹脂、架橋ポリスチレン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステル、全芳香族ポリエステルなどのポリマーからなる微粒子、二酸化ケイ素(シリカ)、炭酸カルシウムなどからなる微粒子が好ましく挙げられる。なかでも、特に好ましくは架橋シリコーン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリカ粒子、コアシェル型有機粒子(コア:架橋ポリスチレン、シェル:ポリメチルメタクリレートの粒子など)が挙げられる。
【0038】
前記不活性粒子Cの平均粒径dCは10〜50nm、さらに12〜45nm、特に15〜40nmであることが好ましい。この平均粒径が10nm未満では、フィルムの滑り性が不良となることがあり、一方50nmを超えると、磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となることがあるため好ましくない。
【0039】
前記不活性粒子Cの形状は、下式(I)で表わされる体積形状係数(f)が0.1〜π/6、さらには0.2〜π/6、特に0.4〜π/6であることが好ましい。
【0040】
【数1】
f=V/R3 ・・・(I)
〔ここで、fは体積形状係数、Vは粒子の体積(μm3)、Rは粒子の平均粒径(μm)である。〕
【0041】
なお、体積形状係数(f)がπ/6である粒子の形状は、球(真球)である。従って、体積形状係数(f)が0.4〜π/6のものは、実質的に球ないしは真球、ラグビーボールのような楕円球を含むものであり、不活性粒子Cとして好ましい。体積形状係数(f)が0.1未満の粒子、例えば薄片状の粒子では、走行耐久性が低下してしまうので好ましくない。
【0042】
前記不活性粒子Cの含有量は、塗膜層Cの固形分に対して0.5〜30重量%、さらには2〜20重量%、特に3〜10重量%であることが好ましい。この含有量が0.5重量%未満であると、フィルムの滑り性が不良となることがあり、一方30重量%を超えると、磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となることがあるため、好ましくない。
【0043】
本発明における熱可塑性樹脂層Bは、実質的に粒子を含有しないものでもよく、不活性粒子Bを含有するものでもよい。前記熱可塑性樹脂層Bが実質的に粒子を含有しない場合、より優れた電磁変換特性が得られ、一方熱可塑性樹脂層Bに電磁変換特性に悪影響を与えない範囲の粒子を含有させると、走行耐久性の向上を図ることができる。具体的には、体積形状係数0.1〜π/6、平均粒径30〜400nmの不活性粒子Bを、B層に対し、0.001〜0.2重量%含有させることが好ましい。
【0044】
好ましい不活性粒子Bの種類としては、前記不活性粒子Aと同様のものが挙げられる。不活性粒子Bの形状は、前記式(I)で表わされる体積形状係数(f)が0.1〜π/6、さらには0.2〜π/6、特に0.4〜π/6であることが好ましい。この体積形状係数(f)が0.1未満の粒子、例えば薄片状の粒子では、走行耐久性が低下してしまうので好ましくない。
【0045】
前記不活性粒子Bの平均粒径dBは30〜400nm、さらには40〜200nm、特に50〜100nmであることが好ましい。この平均粒径dBが30nm未満であると、フィルムの滑り性が不良となることがあり、一方400nmを超えると、磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となることがあるため、好ましくない。
【0046】
前記不活性粒子Bは1種または2種以上のものを混合して使用してもよい。
【0047】
前記不活性粒子Bを熱可塑性樹脂層Bに配合する場合の含有量は、B層に対し、0.001〜0.2重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%、さらに好ましくは0.02〜0.05重量%である。この含有量が0.001重量%未満であると、フィルムの滑り性が不良となることがあり、一方0.2重量%を超えると、磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となることがあるため、好ましくない。
【0048】
本発明における積層熱可塑性樹脂フィルムの全厚みは、通常2.5〜20μm、好ましくは3.0〜10μm、さらに好ましくは4.0〜10μmである。熱可塑性樹脂層Aと熱可塑性樹脂層Bの厚み構成は、好ましくはA層の厚みが積層熱可塑性樹脂フィルムの全厚みの1/2以下、さらに好ましくは1/3以下、特に好ましくは1/4以下である。塗膜層Cの厚みは、通常1〜100nm、好ましくは2〜50nm、さらに好ましくは3〜10nm、特に好ましくは3〜8nmである。
【0049】
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムは、従来から知られている、または当業界に蓄積されている方法に準じて製造することができる。そのうち、熱可塑性樹脂層Aと熱可塑性樹脂層Bとの積層構造は、共押し出し法により製造するのが好ましく、塗膜層Cの積層は塗布法により行うのが好ましい。
【0050】
例えば、二軸配向ポリエステルフィルムで説明すると、押出し口金内または口金以前(一般に、前者はマルチマニホールド方式、後者はフィードブロック方式と呼ぶ)で(部分ケン化)エステルワックス及び不活性粒子Aを微分散、含有させた熱可塑性樹脂Aと、必要に応じて不活性粒子Bを含有する熱可塑性樹脂Bとを、それぞれさらに高精度ろ過したのち、溶融状態にて積層複合し、上記好適な厚み比の積層構造となし、次いで口金より融点(Tm)〜(Tm+70)℃の温度でフィルム状に共押出ししたのち、40〜90℃の冷却ロールで急冷固化し、未延伸積層フィルムを得る。その後、該未延伸積層フィルムを常法に従い、一軸方向(縦方向または横方向)に(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(ただし、Tg:ポリエステルのガラス転移温度)で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向とは直角方向(一段目延伸が縦方向の場合には、二段目延伸は横方向となる)に(Tg)〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸する。さらに、必要に応じて、縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。すなわち、2段、3段、4段あるいは多段の延伸を行うとよい。全延伸倍率としては、通常9倍以上、好ましくは10〜35倍、さらに好ましくは12〜30倍である。
【0051】
さらに、前記二軸配向フィルムは、(Tg+70)〜(Tm−10)℃の温度、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムの場合180〜250℃の温度で熱固定結晶化することによって、優れた寸法安定性が付与される。また、熱固定時間は1〜60秒が好ましい。
【0052】
なお、積層熱可塑性樹脂フィルムの製造に際し、熱可塑性樹脂A、Bに所望により上記不活性粒子以外の添加剤、例えば安定剤、着色剤、溶融ポリマーの固有抵抗調整剤などを添加含有させることができる。
【0053】
本発明における塗膜層Cの積層は、熱可塑性樹脂層Bの上に、水性塗液を塗布する方法で行う。
【0054】
塗布は、最終延伸処理を施す以前の熱可塑性樹脂層Bの表面に行い、塗布後にはフィルムを少なくとも一軸方向に延伸するのが好ましい。この延伸の前ないし途中で塗膜は乾燥される。その中で、塗布は未延伸積層フィルムまたは縦(一軸)延伸積層フィルム、特に縦(一軸)延伸積層フィルムに行うのが好ましい。塗布方法としては特に限定されないが、例えばロールコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0055】
上記塗液、特に水性塗液の固形分濃度は0.2〜8重量%、さらには0.3〜6重量%、特に0.5〜4重量%であることが好ましい。そして、水性塗液には、本発明の効果を妨げない範囲で、他の成分、例えば他の界面活性剤、安定剤、分散剤、紫外線吸収剤、増粘剤などを添加することができる。
【0056】
本発明における積層熱可塑性樹脂フィルムは、磁気記録媒体としてのヘッドタッチ、走行耐久性を始めとする各種性能を向上させ、同時に薄膜化を達成するには、該フィルムのヤング率を、縦方向および横方向でそれぞれ、4,500N/mm2以上および6,000N/mm2以上、さらには4,800N/mm2以上および6,800N/mm2以上、特に5,500N/mm2以上および8,000N/mm2以上、就中5,500N/mm2以上および10,000N/mm2以上とするのが好ましい。かかるヤング率の上限は、18,000 N/mm2、さらには15,000 N/mm2であることが好ましい。
【0057】
また、熱可塑性樹脂層A、Bの結晶化度は、熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートの場合は30〜50%、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合は28〜38%であることが望ましい。いずれも下限を下回ると、熱収縮率が大きくなるし、一方上限を上回ると、フィルムの耐摩耗性が悪化し、ロールやガイドピン表面と摺動した場合に白粉が生じやすくなる。
【0058】
本発明によれば、前記熱可塑性樹脂層Bの片面に前記熱可塑性樹脂層Aが積層され、かつ該熱可塑性樹脂層Bの層Aと接していない表面に塗膜層Cが積層されている積層熱可塑性樹脂フィルムをベースフィルムとする磁気記録媒体が、同様に提供される。
【0059】
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムから磁気記録媒体を製造する実施態様は、下記のとおりである。
【0060】
すなわち、本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムは、塗膜層Cの表面に、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の方法により、鉄、コバルト、クロムまたはこれらを主成分とする合金もしくは酸化物よりなる強磁性金属薄膜層を形成し、またその表面に、目的、用途、必要に応じてダイアモンドライクカーボン(DLC)などの保護層、含フッ素カルボン酸系潤滑層を順次設け、さらに必要により、熱可塑性樹脂層Aの表面に、公知の方法でバックコート層を設けることにより、特に短波長領域での出力、S/N、C/Nなどの電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用蒸着型磁気記録媒体とすることができる。この蒸着型磁気記録媒体は、アナログ信号記録用Hi8、ディジタル信号記録用ディジタルビデオカセットレコーダー(DVC)、データ8ミリ、DDSIV用磁気テープ媒体として極めて有用である。
【0061】
また、本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムは、塗膜層Cの表面に、鉄または鉄を主成分とする針状微細磁性粉(メタル粉)をポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などのバインダーに均一に分散し、磁性層厚みが1μm以下、好ましくは0.1〜1μmとなるように塗布し、さらに必要により、熱可塑性樹脂層Aの表面に、公知の方法でバックコート層を設けることにより、特に短波長領域での出力、S/N、C/Nなどの電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用メタル塗布型磁気記録媒体とすることができる。また、必要に応じて塗膜層Cの表面に、上記メタル粉含有磁性層の下地層として微細な酸化チタン粒子などを含有する非磁性層を磁性層と同様の有機バインダー中に分散し、塗設することもできる。このメタル塗布型磁気記録媒体は、アナログ信号記録用8ミリビデオ、Hi8、βカムSP、W−VHS、ディジタル信号記録用ディジタルビデオカセットレコーダー(DVC)、データ8ミリ、DDSIV、ディジタルβカム、D2、D3、SXなど用磁気テープ媒体として極めて有用である。
【0062】
さらに、本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムは、塗膜層Cの表面に、酸化鉄または酸化クロムなどの針状微細磁性粉、またはバリウムフェライトなどの板状微細磁性粉をポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などのバインダーに均一に分散し、磁性層厚みが1μm以下、好ましくは0.1〜1μmとなるように塗布し、さらに必要により、熱可塑性樹脂層Aの表面に、公知の方法でバックコート層を設けることにより、特に短波長領域での出力、S/N、C/N等の電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用酸化物塗布型磁気記録媒体とすることができる。また、必要に応じて、塗膜層Cの表面に、上記酸化物粉末含有磁性層の下地層として微細な酸化チタン粒子などを含有する非磁性層を磁性層と同様の有機バインダー中に分散し、塗設することもできる。この酸化物塗布型磁気記録媒体は、ディジタル信号記録用データストリーマー用QICなどの高密度記録用酸化物塗布型磁気記録媒体として有用である。
【0063】
上述のW−VHSはアナログのHDTV信号記録用VTRであり、またDVCはディジタルのHDTV信号記録用として適用可能なものである。それ故、本発明の積層フィルムは、これらHDTV対応VTR用磁気記録媒体に極めて有用なベースフィルムと言うことができる。
【0064】
【実施例】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、実施例および比較例における「部」および「%」は、特に断らない限り重量部および重量%である。また、本発明における物性値および特性は、それぞれ下記の方法で測定し、かつ、定義されるものである。
【0065】
(1)固有粘度
オルソクロロフェノール溶媒中35℃で測定した値から求める。
【0066】
(2)粒子の平均粒径(I)(平均粒径:60nm以上)
株式会社島津製作所製「CP−50型セントリヒューグル パーティクル サイズ アナライザー(Centrifugal Particle Size Analyzer)」を用いて測定する。得られる遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50マスパーセントに相当する粒径「等価球直径」を読み取り、この値を上記平均粒径(nm)とする(「粒度測定技術」日刊工業新聞社発行、1975年、頁242〜247)。
【0067】
(3)粒子の平均粒径(II)(平均粒径:60nm未満)
小突起を形成する平均粒径60nm未満の粒子は光散乱法を用いて測定する。すなわち、ニコンプインストゥルメント株式会社(Nicomp Instruments Inc.)製の商品名「NICOMP MODEL 270 SUBMICRON PARTICLE SIZER」により求められる全粒子の50%の点にある粒子の「等価球直径」をもって、平均粒径(nm)とする。
【0068】
(4)体積形状係数(f)
走査型電子顕微鏡により、用いたサイズに応じた倍率にて各粒子の写真を撮影し、画像解析処理装置ルーゼックス500(日本レギュレーター社製)を用い、投影面最大径(D)(μm)および粒子の体積(V)(μm3)を算出し、下記式(II)により計算する。
【0069】
【数2】
f=V/D3 ・・・(II)
【0070】
(5)熱可塑性樹脂層A、Bの厚み、およびフィルム全体の厚み
フィルム全体の厚みはマイクロメーターにてランダムに10点測定し、その平均値を用いる。熱可塑性樹脂層A、Bの層厚については、薄い熱可塑性樹脂層の層厚みを下記に述べる方法にて測定し、厚い熱可塑性樹脂層の層厚みは、全厚みより塗膜層および薄い熱可塑性樹脂層の層厚を引き算して求める。すなわち、二次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、被覆層を除いた表層から深さ5,000nmの範囲のフィルム中の粒子の内最も高濃度の粒子に起因する金属元素(M+)と熱可塑性樹脂(ポリエステル)の炭化水素(C+)の濃度比(M+/C+)を粒子濃度とし、表面から深さ5,000nmまで厚さ方向の分析を行う。表層では表面という界面のために粒子濃度は低く、表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。本発明の場合、粒子濃度は一旦安定値1になったのち、上昇して安定値2になる場合と、単調に減少する場合とがある。この分布曲線をもとに、前者の場合は、(安定値1+安定値2)/2の粒子濃度を与える深さをもって、また後者の場合は粒子濃度が安定値1の1/2になる深さ(この深さは安定値1を与える深さよりも深い)をもって、薄い熱可塑性樹脂層の厚み(μm)とする。
【0071】
測定条件は、以下のとおりである。
(a)測定装置
二次イオン質量分析装置(SIMS);パーキン・エルマー株式会社(PERKIN ELMER INC.)製、「6300」
(b)測定条件
一次イオン種:O2+
一次イオン加速電圧:12KV
一次イオン電流:200nA
ラスター領域:400μm
分析領域:ゲート30%
測定真空度:6.0×10-9Torr
E−GUNN:0.5KV−3.0A
【0072】
なお、表層から5,000nmの範囲に最も多く存在する粒子がシリコーン樹脂以外の有機高分子粒子の場合はSIMSでは測定が難しいので、表面からエッチングしながらFT−IR(フーリエトランスフォーム赤外分光法)、粒子によってはXPS(X線光電分光法)などで上記同様の濃度分布曲線を測定し、層厚(μm)を求める。
【0073】
(6)塗膜層Cの厚み
フィルムの小片をエポキシ樹脂にて固定成形し、ミクロトームにて約600オングストロームの厚みの超薄切片(フィルムの流れ方向に平行に切断する)を作成した。この試料を透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製:H−800型)にて観察し、塗膜層Cの境界面を探して塗膜層の厚み(nm)を求める。
【0074】
(7)接触角
協和科学(株)製、接触角測定装置を用いて測定した。フィルムサンプルを、温度25℃、湿度50%の環境下に24時間以上置いたのち、フィルム上に蒸留水を5mg滴下し、水平の方向から20秒後に写真を撮影した。フィルムと水滴の接線が形成する角度を接触角(°)とする。
【0075】
(8)中心線平均粗さ(表面粗さ)(WRa)
WYKO株式会社製の非接触三次元粗さ計、商品名「TOPO−3D」を用いて、測定倍率40倍、測定面積242μm×239μm(0.058mm2)の条件にて測定を行い、表面粗さのプロフィル(オリジナルデータ)を得る。上記粗さ計内蔵ソフトによる表面解析により、下記式(III)によって定義される中心線平均粗さ(WRa)を得る。
【0076】
【数3】
【0077】
また、Zjkは、測定方向(242μm)、それと直行する方向(239μm)を、それぞれM分割、N分割したときの各方向のj番目、k番目の位置における三次元粗さチャート上の高さである。
【0078】
(9)ヤング率
東洋ボールドウィン株式会社製の引っ張り試験機、商品名「テンシロン」を用いて、温度20℃、湿度50%に調節された室内において、長さ300nm、幅12.7mmの試料フィルムを10%/分のひずみ速度で引っ張り、引っ張り応力−ひずみ曲線の初めの直線部分を用いて下記式(IV)によって計算する。
【0079】
【数4】
E=Δσ/Δε ・・・(IV)
ここで、Eはヤング率、Δσは直線上の2点間の元の平均断面積による応力差、Δεは同じ2点間のひずみ差である。
【0080】
(10)ブロッキング剥離力
ロール状フィルムの長手方向に100mm、幅方向に200mmの長方形にサンプリングし、熱可塑性樹脂層A(ベースフィルム)側に、室温20±2℃、湿度40±5%の環境下で、コロナ処理を施す。
【0081】
上記コロナ処理は、春日電気株式会社製、商品名「CG−102」型の高周波電源を用いて、以下の条件にて処理する。
電流;4.5A
電極間距離;1.0mm
処理時間;1.2m/分の速度で、電極間を通過させて処理する。
【0082】
フィルムの処理した面を、直ちにフィルムの熱可塑性樹脂層Aと反対側の面と接触させ、100kg/cm2の圧力にて温度60℃、湿度80%の環境下で17時間エイジングさせたのち、上記引っ張り試験機、商品名「テンシロン」を用いて、幅100mm当りの剥離力を求める。
【0083】
(11)巻き取り性
スリット時の巻き取り条件を最適化したのち、幅600mm×12,000mのサイズで、30ロールを速度100m/分でスリットし、スリット後のフィルム表面に、ブツ状、突起やシワのないロールを良品として、以下の基準にて巻き取り性を評価する。
◎;良品ロールの本数28本以上
○;良品ロールの本数25〜27本
×;良品ロールの本数24本以下
【0084】
(12)バックコート塗布適性(加工適性)
下記磁気テープの製造加工工程において、バックコート塗布後の熱可塑性樹脂層Aの表面を目視観察し、以下の基準にて評価する。
○;バックコート層に、塗布斑、ハジキがない。
×;バックコート層に、塗布斑か、ハジキが認められる。
【0085】
(13)磁気テープの製造および特性(電磁変換特性)評価
積層熱可塑性樹脂フィルムの塗膜層Cの表面に、真空蒸着法により、コバルト100%の強磁性薄膜を0.2μmの厚みになるように2層(各層厚約0.1μm)形成する。形成した強磁性薄膜の表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜、さらに含フッ素カルボン酸系潤滑層を順次設け、さらに熱可塑性樹脂層Aの表面に、公知の方法でバックコート層を設ける。その後、8mm幅にスリットし、市販の8mmビデオカセットにローディングした。次いで、下記の市販の機器を用いてテープの特性(C/N)を測定する。
使用機器
8mmビデオテープレコーダー、ソニー株式会社製、商品名「EDV−6000」
C/N測定:
株式会社シバソク製、ノイズメーターを用い、記録波長0.5μm(周波数約7.4MHz)の信号を記録し、その再生信号の6.4MHzと7.4MHzの値の比をそのテープのC/Nとし、市販8mmビデオ用蒸着テープのC/Nを0dBとし、相対値で評価する。
【0086】
(14)エステルワックス
エステルワックスとして、下記のものを使用する。
(a);ソルビタントリステアレート(融点55℃)
【0087】
[実施例1]
ジメチルテレフタレートとエチレングリコールとを、エステル交換触媒として酢酸マンガン、重合触媒としてトリメリット酸チタン、安定剤として亜リン酸を用い、さらに滑剤(不活性粒子B)として平均粒径60nmの球状シリカ(体積形状係数0.5)を0.03%(ポリマーに対し)添加して、常法により重合し、固有粘度0.60の熱可塑性樹脂層B用のポリエチレンテレフタレート(PET)(樹脂B1)を得た。
【0088】
さらに、上記と同様の方法で、滑剤(不活性粒子A)として、平均粒径300nmの真球状シリカおよび平均粒径60nmのθ型アルミナを、それぞれ0.05%(ポリマーに対し)および0.2%(ポリマーに対し)添加して、常法により重合し、固有粘度0.60のポリエチレンテレフタレートを得た。
【0089】
得られたポリエチレンテレフタレート99.9%に、ソルビタントリステアレート(a)の粉末0.1%をまぶし、ベント付き二軸ルーダーにて練り込み、固有粘度0.59の熱可塑性樹脂層A用のポリエチレンテレフタレート(PET)(樹脂A1)得た。
【0090】
得られた樹脂A1、樹脂B1を、それぞれ170℃で3時間乾燥後、2台の押出機に供給し、溶融温度280〜300℃にて溶融し、平均目開き11μmの鋼線フィルターで高精度ろ過したのち、マルチマニホールド型共押出しダイを用いて、樹脂層Aの片面に樹脂層Bを積層させ、急冷して厚さ89μmの未延伸積層熱可塑性樹脂フィルムを得た。
【0091】
得られた積層未延伸フィルムを予熱し、さらに低速・高速のロール間でフィルム温度100℃にて3.3倍に延伸し、急冷して縦延伸フィルムを得た。次いで縦延伸フィルムの層B面側に下記に示す組成(固形分換算)の水性塗液(全固形分濃度1.0%)をキスコート法により塗布した。
C層厚み(乾燥後):5nm
【0092】
続いてステンターに供給し、110℃にて横方向に4.2倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを、220℃の熱風で4秒間熱固定し、全厚み6.4μmで、ベース層(熱可塑性樹脂層A)厚み1.0μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルムの熱可塑性樹脂層A、Bの厚みについては、2台の押出機の吐出量により調整した。このフィルムのヤング率は縦方向5,000N/mm2、横方向6,500N/mm2であった。この積層フィルムのその他の特性、およびこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0093】
[実施例2]
熱可塑性樹脂層Aに含有させる不活性粒子Aの種類、平均粒径、添加量、およびソルビタントリステアレートの添加量を表1に示すとおり変更し、熱可塑性樹脂Bに粒子を含有させない以外は、実施例1と同様にして積層熱可塑性樹脂フィルムを得た。得られたフィルムの特性、およびそのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0098】
[比較例1]
熱可塑性樹脂層Aにソルビタントリステアレートを含有させない以外は、実施例1と同様にして積層熱可塑性樹脂フィルムを得た。得られたフィルムは、ブロッキング剥離力を測定する際に、フィルムが密着しており、むりやり剥がそうとすると破れてしまった。その他の特性、およびそのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0099】
[比較例2]
ソルビタントリステアレート(a)の添加量を5%にした以外は、実施例1と同様にして積層熱可塑性樹脂フィルムを得た。得られたフィルムは、磁気テープの製造工程においてバックコートに塗布する際、ハジキが発生してしまい、通常の塗布ができなかった。その他の特性、およびそのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0100】
[比較例3]
熱可塑性樹脂層Bに添加する不活性粒子Bとして、平均粒径200nmの真球状シリカ(体積形状係数;0.5)を0.2%添加する以外は、実施例1と同様にして積層熱可塑性樹脂フィルムを得た。得られたフィルムは、C層の表面粗さWRaが本発明の範囲外となり、電磁変換特性に劣っていた。その他の特性、およびそのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
表1から明らかなように、本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムは、片面が非常に平坦で、優れた電磁変換特性を示すとともに、巻き取り性が極めて良好であり、かつ耐ブロッキング性が良好である。一方、本発明の要件を満たさないものは、これらの特性を同時に満足できない。
【0103】
【発明の効果】
本発明によれば、耐ブロッキング性、巻き取り性、加工適性に優れ、特に金属蒸着薄膜型磁気記録媒体としたときに電磁変換特性に優れた積層熱可塑性樹脂フィルムを得ることができる。
Claims (5)
- 熱可塑性樹脂層Bの片面にソルビタントリステアレートを含有する熱可塑性樹脂層Aを積層し、かつB層のA層と接しない表面に塗膜層Cを積層してなる積層フィルムであって、下記(1)〜(4)を満足することを特徴とする積層熱可塑性樹脂フィルム。
(1)C層の表面粗さWRa:0.1〜4nm
(2)A層の平均粒径50〜1,500nmの不活性粒子Aの含有量:0.001〜5重量%(A層に対し)
(3)A層のソルビタントリステアレートの含有量:0.001〜1重量%(A層に対し)
(4)A層のB層と接していない表面の水接触角:60〜80° - 塗膜層Cが平均粒径10〜50nm、体積形状係数0.1〜π/6の不活性粒子Cを0.5〜30重量%(C層に対し)含有する請求項1に記載の積層熱可塑性樹脂フィルム。
- 熱可塑性樹脂層Bが実質的に粒子を含有しない請求項1または2に記載の積層熱可塑性樹脂フィルム。
- 熱可塑性樹脂層Bが体積形状係数0.1〜π/6、平均粒径30〜400nmの不活性粒子Bを0.001〜0.2重量%(B層に対し)含有する請求項1または2に記載の積層熱可塑性樹脂フィルム。
- 熱可塑性樹脂層Aがポリエチレンテレフタレートからなる請求項1〜4のいずれかに記載の積層熱可塑性樹脂フィルム。
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