[go: up one dir, main page]

JP4710701B2 - 高分子材料の劣化診断方法および装置 - Google Patents

高分子材料の劣化診断方法および装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4710701B2
JP4710701B2 JP2006114794A JP2006114794A JP4710701B2 JP 4710701 B2 JP4710701 B2 JP 4710701B2 JP 2006114794 A JP2006114794 A JP 2006114794A JP 2006114794 A JP2006114794 A JP 2006114794A JP 4710701 B2 JP4710701 B2 JP 4710701B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polymer material
deterioration
diagnosed
wavelength
reflectance
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2006114794A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007285930A (ja
Inventor
哲美 高野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fuji Electric Co Ltd
Original Assignee
Fuji Electric Systems Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Electric Systems Co Ltd filed Critical Fuji Electric Systems Co Ltd
Priority to JP2006114794A priority Critical patent/JP4710701B2/ja
Publication of JP2007285930A publication Critical patent/JP2007285930A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4710701B2 publication Critical patent/JP4710701B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Investigating Or Analysing Materials By Optical Means (AREA)

Description

この発明は、高分子材料を用いている電気機器、例えば、変圧器や、変成器、開閉器、回転機、絶縁用スペーサ、絶縁用ブッシングなどの長時間の運転によって、その電気機器に組み込まれた高分子材料がどの程度劣化を受けているかを判定する高分子材料の劣化診断方法および装置に関し、特に、その高分子材料を非破壊的に診断する高分子材料の劣化診断方法および装置に関する。
例えば、電気機器に組み込まれる絶縁材料などに用いられる高分子材料の不可逆的変成、すなわち、劣化と呼ばれる現象に対する診断には、従来よりさまざまな方法が用いられている。表1は、高分子材料の従来の劣化診断方法を示している。高分子材料の劣化を診断するための各種物性に対する診断項目と、その診断を実施した場合に電気機器に組み込まれた高分子材料を供試材料の切り出しなどで破壊させる必要があるか否かを示している。表1における各診断項目の説明を以下に述べる。
Figure 0004710701

高分子材料は、継続的な使用により熱的な劣化を生じるが、その元となる現象は、高分子自体の分子鎖の切断による分子量の減少、末端原子の酸化によるC−C(炭素原子の一重結合部)またはC=C(炭素原子の二重結合部)における炭素原子の遊離、充填材として用いられている異質材料との結合部からの切断などによって生じる。
炭素原子の結合部から炭素原子が遊離すれば、高分子材料の電気的特性に影響が及ぶのでその電気的特性である誘電正接、絶縁破壊電圧、絶縁抵抗などが診断される。しかし、相当に多量に炭素原子が遊離しないと、高分子材料の電気的特性は変化しない。劣化の末期になってはじめて電気的特性に変化が現れる。従って、高分子材料の劣化を診断する方法としては、電気的特性は非常に感度が悪い。なお、絶縁抵抗は、湿度や汚れなど周囲の雰囲気の影響を受け易く診断値の信頼性に欠ける。
分子鎖の切断は、高分子材料が力学的に脆くなるという傾向を示し、高分子材料の力学的特性における破断強度や粘弾性率による診断方法がある。
音響伝搬特性は、例えば、音の伝搬速度は高分子材料の弾性率やポアソン比、密度などで決定される力学的特性に対応するが、電気機器に使用している形状での測定は困難であるとともに測定精度の点からも劣っている。
分子の結合特性に基づく診断であるFT・IR(Fourier Transform Infrared Spectrometer フーリエ変換赤外分光法)やATR(Attenuated Total Reflection 全反射吸収法)は、高分子材料に赤外線を射て、その吸収または反射スペクトルを求める方法である。それによって、その材料の分子結合状態を分析し、材料の劣化の程度を知ることができる。この方法は、材料の劣化の程度を詳細に知ることができるという長所があるが、大がかりで精密な測定器による赤外領域の光測定であるために、電気機器が設置された現地での測定は非常に困難である。
表1では、分子の結合状態に依存する変成として色差を分類している。殆どの高分子材料が、経年的な変化としてその表面色の変化が生ずることは一般的に知られている。例えば、ポリアミドのような窒素を分子の側鎖に持つ材料で初期において無色透明であっても経年とともに窒素が遊離するために黄色みを帯びてくることなどは、ポリアミドの大量の用途である繊維を用いている被覆などでは本質的な弱点とされている。ポリアミド以外の高分子材料でも、経年とともに紫外線や熱を受けた場合には変色する。これは、C−CまたはC=C結合からの炭素原子の遊離、カルボニル基などの生成によることが知られている。
実用的な高分子材料では、紫外線による劣化を表面のみにとどめたり、劣化による変色を隠したりするために、樹脂中に樹脂の骨格に関わらない副成分として着色剤が配合されている場合が多い。特に、美観や意匠に対して格別な考慮が要求されない電気機器の場合には、着色剤の役割として表面の劣化を隠すために劣化後の色と同様の色が用いられることも行われており、樹脂の骨格である炭素間の結合の変成による変色が一層不分明になっている場合も多い。
なお、上記の着色剤は、一般には顔料と呼ばれる、長期間の使用においても色の変化が生じくい無機系の金属酸化物、例えば鉄、コバルト、亜鉛、ニッケルなどの酸化物が所要の着色に応じて使用され、この時、高分子材料の硬化反応に対する阻害、一般的に触媒毒とならないように選定される。場合によっては、一般には染料と呼ばれる、有機系の着色剤も用いられる時があるが、着色の広範囲な選択は可能であるものの、長期間の使用に対する耐性は劣る。
また、高分子材料には、着色剤に加えて、さらに無機充填材が配合される場合もある。無機充填材は、高分子材料間に分散させることで、機械的性質である破断強度や弾性率の向上、耐熱性の向上をもたらすとともに、高分子材料よりも安価な材料の場合には樹脂全体としての低価格化を目的に混合される。このための材料としては、無機系材料として鉱物質の、シリカ、アルミナ、ガラスなどが選定される。形状は球状粉末の他、繊維性のものが用いられる場合もある。
電気機器に用いられる樹脂の代表的なものであるエポキシ樹脂の場合、熱的ストレスの下で経年劣化した表面の色は、人間の視覚的な効果を示す色度として明度と彩度の低下として現れる。色差計などの測定器は、彩度を色相の2次元と明度の1次元を組み合わせた3次元空間でその表面色の差異が秤量される。色差計による秤量値は、人間の視覚的効果と一致しているため、直感的にその判定結果が受け入れやすいという利点を持つが、反面、着色剤が上記のように樹脂が劣化したことを隠すように配合されている場合には、色差としては殆ど現れないために劣化の判定が困難である。
元来、人間の色覚は、白色光源の下で物質表面からの反射光を認識するもので、反射光のスペクトルとして示すことが可能である。人間にとっての白色光は、太陽光線のもので、それを視覚細胞のセンサとしてフィルタリングされた380nmから780nmの約400nmの幅で中央で最大感度となる曲線のスペクトルを持つ光を指す。このような限定された範囲のスペクトルとフィルタリングにより制限を受けた内で定義される色差においては、着色剤が配合された樹脂の劣化の有無に対して色差に差異が出ないのは当然の結果となる。
一方で、物理的な白色性は、波長の全範囲で等しい強度を持つ光ということになる。FT−IRも遠赤外という範囲で一定の白色性を有した光を用いてフーリエ変換によりスペクトル分解した波長別の情報からさまざまな物質の同定に用いられていることは公知の事である。図4は、着色材の配合されていない樹脂の劣化による変色の様相を概念的に示した反射光スペクトル図である。縦軸が光強度、横軸が波長で、その横軸に可視光の範囲が示されている。特性線Xが白色光のスペクトル、特性線Yが劣化前の樹脂の反射光スペクトル、特性線Zが劣化後の樹脂の反射光スペクトルである。劣化前の樹脂の反射光が特性線Yのように白色光(特性線Xのように波長の全範囲で等しい強度を持つ)の場合、熱劣化により炭素の遊離が生ずると特性線Zのように全体として反射光の光強度が低下するが、可視光の長波長側である赤色から赤外域では反射光の光強度の低下の度合いが弱い。
上述の色差計を用いた高分子材料の劣化の測定方法が、非特許文献1に開示されている。この非特許文献1では、古くから行われてきた目視点検での色による劣化度の判定に対して、測色計の進歩により定量的に色を測定することができるようになり劣化度が定量化されたとした上で、測色計の定量化の方法として2種類の表色系を比較し劣化度との相関性を調べている。いずれもCIE(国際照明委員会)の表色法に基づく3刺激値(3波長)による方法で劣化度との相関性を見出せるとしている。
一方、視覚の波長範囲に限定されない色のスペクトルによる絶縁材料の劣化度検出方法が、特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の劣化度検出方法は、ある2つの波長の光に対する反射率の差または比により、油、ガス、空気中にある紙、樹脂などの劣化度を評価しようとするものである。
特開平10−74628号公報 芳賀義昭、外4名,「色による絶縁劣化監視法の検討」,第22回電気絶縁材料シンポジウム講演予稿集,平成元年,No.P−20,p.159−162
しかしながら、前述したような従来の高分子材料の劣化診断方法は、診断のために電気機器自体を破壊させる必要があったり、着色剤が配合されている高分子材料の場合は、色差による劣化診断が困難であるという問題があった。
すなわち、表1に示されたように、絶縁破壊電圧、破断強度の診断では、高分子材料自体が破壊されてしまう。また、誘電正接、絶縁抵抗、弾性率、FT・IR、ATRの診断では、供試材料自体は破壊させないが、供試材料の切り出しで電気機器自体が破壊されてしまう。音響伝搬特性の診断では、電気機器は破壊させないが、前述したように電気機器に使用している形状での測定は困難であるとともに、測定精度の点からも劣っているので実用化が難しい。
また、色差による劣化度の診断では電気機器自体は破壊させないで済むが、着色剤が配合されている高分子材料の場合、図4の傾向とは異なり、より複雑な様相を呈する。すなわち、前述のように着色剤として茶色や黄色など劣化後の色と似せたものが配合されているので、劣化による反射光スペクトルの変動特性として、可視光の波長領域では劣化による強度変化が少ない上に、反射光スペクトルが、樹脂の劣化によるものと着色材によるものとの混合による、例えばS字状などの複雑なスペクトル曲線となる場合がある。そのために、着色剤が配合されている高分子材料の劣化の様相を反射光スペクトルから判定することが非常に困難であった。
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、この発明の目的は、電気機器に組み込まれた高分子材料が、着色剤や無機充填材などが配合された高分子材料であっても、この高分子材料の劣化を電気機器の据え付け現地で非破壊的に、かつ精度よく診断することができる高分子材料の劣化診断方法および装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、この発明によれば、着色剤と無機充填材とが配合されている高分子材料の劣化の程度を診断する方法であって、予め被診断の高分子材料と同一種類の高分子材料を熱劣化させ各熱劣化時間における反射率スペクトルを求めておき、互いに波長の異なる2種類の単一波長光として、前記着色剤の反射のピークとなる領域の波長λ2のものと、劣化により前記無機充填材の反射が顕著になる近赤外領域の波長λ3のものとを選び、前記各熱劣化時間における反射率スペクトルから各熱劣化時間における波長λ2,λ3の反射率R2,R3を求め、座標の一方軸をR2、他方の軸をR3として、前記各熱劣化時間における反射率R2とR3とを前記座標にプロットし、前記プロット同士を結ぶ軌跡線を求めておき、前記被診断の高分子材料の一部に前記2種類の単一波長光をそれぞれ照射し各波長に対する反射率を求め、前記被診断の高分子材料の反射率R2とR3とが前記軌跡線の上のどの位置にあるかを調べることにより前記被診断の高分子材料の劣化の程度を判定するようにするとよい(請求項1の発明)。
この発明では、照射光に対する反射率の測定に基づく劣化診断であることにより、電気機器に組み込まれた例えばエポキシ樹脂などの高分子材料を電気機器の据付現地で非破壊的に劣化診断することができる。
また、着色剤の反射のピークとなる領域の波長λ2と、劣化により無機充填材の反射が顕著になる近赤外領域の波長λ3とにおける反射率を基にして判定するので、被診断の高分子材料が、樹脂の劣化による反射率変化特性とは異質の特性を示す要素である着色剤や無機充填剤が配合された高分子材料であっても、着色剤や無機充填剤の反射率特性に影響されないで、劣化後の反射率スペクトルの特徴を見出すことができ、的確で精度のよい劣化診断を行うことができる。
また、反射率R2およびR3を両軸とした2次元座標における軌跡線が寿命のほぼ半分で屈折する曲線を描くので、その屈曲点から被診断の高分子材料の劣化の程度を明確に判定することができる。
また、この発明によれば、着色剤と無機充填材とが配合されている高分子材料の劣化の程度を診断する方法であって、予め被診断の高分子材料と同一種類の高分子材料を熱劣化させ各熱劣化時間における反射率スペクトルを求めておき、互いに波長の異なる3種類の単一波長光として、前記着色剤により吸収され前記無機充填材の反射の影響を受けない領域の波長λ1のものと、前記着色剤の反射のピークとなる領域の波長λ2のものと、劣化により前記無機充填材の反射が顕著になる近赤外領域の波長λ3のものとを選び、前記各熱劣化時間における反射率スペクトルから各熱劣化時間における波長λ1,λ2,λ3の反射率R1,R2,R3を求めて、この反射率R1,R2,R3から各熱劣化時間での反射率の比R2/R1とR3/R1とを求め、座標の一方軸をR2/R1、他方の軸をR3/R1として、前記各熱劣化時間における反射率の比R2/R1とR3/R1とを前記座標にプロットし、前記プロット同士を結ぶ軌跡線を求めておき、前記被診断の高分子材料の一部に前記3種類の単一波長光をそれぞれ照射し各波長に対する反射率を求め、前記被診断の高分子材料の反射率の比R2/R1とR3/R1とが前記軌跡線の上のどの位置にあるかを調べることにより前記被診断の高分子材料の劣化の程度を判定するようにしてもよい(請求項2の発明)。
この発明では、上記請求項1の発明と同様に、照射光に対する反射率の測定に基づく劣化診断であることにより、電気機器に組み込まれた例えばエポキシ樹脂などの高分子材料を電気機器の据付現地で非破壊的に劣化診断することができる。
また、着色剤により吸収され無機充填材の反射の影響を受けない領域の波長λ1と、着色剤の反射のピークとなる領域の波長λ2と、劣化により無機充填材の反射が顕著になる近赤外領域の波長λ3とにおける反射率を基にして判定するので、被診断の高分子材料が、樹脂の劣化による反射率変化特性とは異質の特性を示す要素である着色剤や無機充填材が配合された高分子材料であっても、着色剤や無機充填材の反射率特性に影響されないで、劣化後の反射率スペクトルの特徴を見出すことができ、的確で精度のよい劣化診断を行うことができる。
また、反射率比R2/R1およびR3/R1を両軸とした2次元座標における軌跡線が寿命のほぼ半分で屈折する曲線を描くので、その屈曲点から被診断の高分子材料の劣化の程度を明確に判定することができる。
なお、高分子材料では、例えば紫外線による選択的な着色剤の退色や樹脂の微細なひび割れによる白濁、さらには、化学物質、特に酸性物質またはアルカリ性物質の付着によって、反射率の異常な変化が引き起こされる場合があるが、この発明のように、波長λ2、λ3に加えて、波長λ1に対する反射率も測定することにより、劣化による光反射スペクトルの全体の形状が明確になるので、上記のような反射率特性の異常な変化がある場合に、誤診断することが避けられる。
また、請求項1に記載の高分子材料の劣化診断方法を実施する装置であって、前記被診断の高分子材料の一部に波長λ2,λ3の単一波長光をそれぞれ照射する照射手段と、前記一部からの反射光を検知して信号を出力する受光手段と、この受光手段の出力信号から前記被診断の高分子材料の反射率のR2とR3とを演算し、前記軌跡線と参照することにより前記被診断の高分子材料の劣化の程度を判定して報知する判定手段とを備えるようにするとよい(請求項3の発明)。
また、請求項2に記載の高分子材料の劣化診断方法を実施する装置であって、前記被診断の高分子材料の一部に波長λ1,λ2,λ3の単一波長光をそれぞれ照射する照射手段と、前記一部からの反射光を検知して信号を出力する受光手段と、この受光手段の出力信号から前記被診断の高分子材料の反射率の比R2/R1とR3/R1とを演算し、前記軌跡線と参照することにより前記被診断の高分子材料の劣化の程度を判定して報知する判定手段とを備えるようにするとよい(請求項4の発明)。
上記請求項3〜4の発明によれば、照射光に対する反射率の測定に基づく劣化診断であることにより、電気機器に組み込まれた例えばエポキシ樹脂などの高分子材料を電気機器の据付現地で非破壊的に劣化診断することができる高分子劣化診断装置を提供することができる。なお、照射手段や受光手段の被診断の高分子材料表面への保持部を絶縁物で構成しておけば、被診断の高分子材料が充電されていても電気機器の運転を中止することなく劣化診断をすることができる。
この発明によれば、照射光に対する反射率の測定に基づく劣化診断であることにより、電気機器に組み込まれた高分子材料を電気機器の据付現地で非破壊的に劣化診断することができるとともに、少なくとも、着色剤の反射のピークとなる領域の波長λ2と、劣化により無機充填材の反射が顕著になる近赤外領域の波長λ3との2つの波長における反射率を基にして判定するので、被診断の高分子材料が、着色剤や無機充填材が配合された高分子材料であっても、着色剤や無機充填材の反射率特性に影響されないで的確で精度のよい劣化診断を行うことができる。
以下、実施例を用いて、この発明による高分子材料の劣化診断方法および劣化診断装置について詳細に説明するが、この発明は実施例に限定されるものではない。
図1は、この発明の実施例1にかかる高分子材料の劣化診断方法を説明する反射率スペクトル図である。縦軸が反射率、横軸が波長であり、着色剤と無機充填材とが配合された高分子材料を200℃一定の雰囲気で熱劣化させた場合の光反射スペクトル、すなわち反射率スペクトル曲線が複数示されている。各反射率スペクトル曲線に示された数字は、それぞれ熱劣化させた時間である。この高分子材料は、エポキシ樹脂に着色剤として赤またはこげ茶色の無機系顔料を、無機充填材として白色の無機系粉末を配合したものである。
図1において、劣化時間が0時間から10時間のものは、ほぼ同じ特性であり、波長570nm程度から反射率が立ち上がり、波長630nmで飽和し、それ以上の波長ではほぼ平坦な反射率を示しており、その反射率スペクトル曲線はS字状の飽和曲線となっている。これは、透明な樹脂に有色の顔料が白色の無機充填材を背景に反射した特性であり、着色剤自体の反射率スペクトル曲線とほぼ同じである。劣化時間が96時間から230時間になるにしたがって、反射率スペクトル曲線は、そのS字状飽和曲線における反射率の立ち上がる波長が長波長側に移行し、230時間の劣化では、その反射率スペクトル曲線は、波長600nmから反射率が漸増し、波長900nmまで上昇を続ける曲線、すなわち、波長に対する単調増加曲線となる。230時間よりさらに長い時間劣化すると、反射率は、長波長側で劣化の進行とともに上昇するようになる。
目視によって観測される波長は前述のように780nmまでなので、劣化時間が230時間までは樹脂の炭化により黒くなっていくが、それ以上の劣化時間では樹脂の灰化と無機充填材の遊離により白くなっていくように目視される。図1において、可視領域における反射率スペクトル曲線は、劣化時間の96時間のものと1000時間のものとは殆ど差異がないので、可視領域の反射率だけ、例えば、図1における波長λ1やλ2の反射率だけで劣化診断を行うのは困難であることが分かる。
しかし、図1の反射率スペクトル図には、上述のように、劣化時間が230時間までは、反射率スペクトル曲線がS字状の飽和曲線を描くとともに、劣化時間が230時間以上になると、可視領域の長波長側から赤外領域、例えば、波長λ3を含む領域にかけては、反射率スペクトル曲線が波長に対する単調増加曲線を描くという特徴が見られる。
そこで、図1の反射率スペクトル図における上記の特徴に着目し、劣化診断の方法として、被診断の高分子材料と同一種類の高分子材料について予め図1のような各熱劣化時間における反射率スペクトル曲線を求めておき、次に、被診断の高分子材料に波長λ1,λ2,λ3をそれぞれピーク波長とする3種類の単色光をそれぞれ照射し、波長λ1,λ2,λ3における反射率をそれぞれ調べ、図1の反射率スペクトル曲線と参照することによって被診断の高分子材料の劣化の程度を判定する。
この場合、上記の波長λ1,λ2,λ3は次のように選定する。すなわち、λ1は、例えば、530nmなど反射率が熱劣化の有無に殆ど依存しない領域、すなわち着色剤により吸収され無機充填材の反射の影響を受けない領域の波長とする。また、λ2は、例えば、630nmなど初期の劣化により反射率が大きく低下する領域、すなわち着色剤の反射のピークとなる領域の波長とする。また、λ3は、例えば、830nmなど劣化の終期に反射率が増加する領域、すなわち劣化により無機充填材の反射が顕著になる近赤外領域の波長とする。
このように選定された波長λ1,λ2,λ3における反射率を基にして判定することにより、被診断の高分子材料がS字状飽和曲線の反射率スペクトル特性を有し、劣化がまだ少ない状態にあるのか、あるいは、被診断の高分子材料が単調増加曲線の反射率スペクトル特性を有し、劣化が進んだ状態にあるのかを判断することができる。
次に、被診断の高分子材料の波長λ1,λ2,λ3での反射率と、被診断の高分子材料と同一種類の高分子材料の各熱劣化時間における反射率スペクトルとの対比により劣化程度を的確に判定するための具体的な判定処理は、次のように行うことができる。
図2は、この発明の実施例1にかかる高分子材料の劣化診断方法における具体的な判定処理方法を説明する特性線図である。前述の波長λ1、λ2、λ3における反射率(反射光の照射光に対する強度の比)をR1、R2、R3とし、2次元座標として横軸に反射率の比R2/R1を目盛り、縦軸に反射率の比R3/R1を目盛る。図1における反射率スペクトルから各熱劣化時間における反射率の比R2/R1とR3/R1とを上記の2次元座標にプロットし、そのプロット同士を結ぶ屈折した軌跡線Pを求める。プロット■は、温度θ2(200℃)の雰囲気で高分子材料を熱劣化させた場合のものであり、プロット◆は、温度θ1(220℃)の雰囲気で高分子材料を熱劣化させたものである。軌跡線Pは、温度条件にはよらないことが分かる。このことは、この軌跡線Pは、高分子材料の劣化診断に使えることを示している。すなわち、軌跡線Pにおける端部P1,P3および屈折点P2は、それぞれ異なる劣化の程度を示している。通常、劣化の程度または劣化度は、その材料の曲げ強度などの機械的強度により示されることが多く、劣化していない状態を劣化度0とし、材料の機械的強度が半分になる状態を寿命である劣化度1としている。劣化度は、温度一定の雰囲気で劣化した場合、熱の履歴時間に比例するので、劣化度を0から1の間で数値的に定量化することができる。P1,P2,P3のポイントは、このようにして定義された劣化度から数値的に示すと、それぞれ劣化度が0,0.3から0.7,1となっている。すなわち、屈折点P2は、ほぼ中程度の劣化度に相当している。この屈折点P2を超えて縦軸方向への変化が大きくなると、劣化度が1、すなわち、寿命に近いということが分かる。劣化診断の判定として、寿命にどの程度近づいているか、その反対に今後どの位電気機器として機能できるかという余寿命が診断結果として示されることが多いが、これまでに使用されてきた運転時間に対する考慮がなされていなかった。屈折点P2を検出することによって、高分子材料が寿命の半分程度まで到達していることが分かり、その電気機器をこれまでと同一の使い方をしている限り、これまでの経過時間と同程度の寿命を有していることが分かる。したがって、予め被診断の高分子材料と同一種類の高分子材料について2次元座標における軌跡線Pを求めておき、被診断の高分子材料の反射率の比R2/R1とR3/R1に対応する座標点(R2/R1,R3/R1)が軌跡線Pの上のどの位置にあるかを調べることにより被診断の高分子材料の劣化の程度を判定することができ、被診断の高分子材料の劣化の程度が明確になる。
なお、図1で反射率スペクトル曲線を示した高分子材料は、着色剤が、樹脂の劣化による変色を可視領域でマスクするように選定されたものであり、劣化による変化の出やすい赤色から近赤外の領域において反射率が高くなっているため、目視やそれと同等の波長に対する感度を持つ従来の測色計では劣化度の判定がし難いが、この発明の方法によれば、図1の反射率スペクトル図において選定された3点の波長λ1、λ2、λ3での反射率測定を行い、図2の特性線図による判定処理を行うことにより、劣化度を的確に判定することが可能となる。
一方、高分子材料に配合される着色剤として、反射率のほとんどが500nm以下の波長領域にあるような顔料が選定されている場合には、図1の反射率スペクトル図において選定された波長での反射率測定を行っても、図2と同様な2つの反射率比R2/R1およびR3/R1を両軸とした特性線図における横軸、すなわち、反射率比R2/R1での変化がほとんど現れないため、劣化の初期における劣化診断は難しいが、着色剤の反射率が大きな領域の波長をλ2とするとともに着色剤の反射がほとんど無い領域の波長をλ1とするような波長選定を行うことにより、図2と同様な特性線図における横軸での変化が充分に現れるようになり、劣化の初期においても的確な劣化診断を行うことができるようになる。
図3は、この発明の実施例2にかかる高分子材料の劣化診断装置の構成を説明するブロック図である。A1は、着色剤と無機充填材とが配合されている被診断の高分子材料である。電気機器Aが、充電部A2を高分子材料A1で覆うようにして構成されている。高分子材料A1の表面の一点A3を遮光するように絶縁性の保持部材Gが取り付けられ、その保持部材Gに投光ヘッドB5と受光ヘッドC1が嵌め込まれている。照射手段は、前述の波長λ1,λ2,λ3のそれぞれの単色光を発光させる3つの発光素子B2と、この発光素子B2のそれぞれに必要に応じて電力を供給する選択器B1と、3つの発光素子B2からの光を1つに纏めて光ケーブルや透明な光導通部材からなる伝送路B4に送るものであってスターカプラなどからなる光分配器B3と、高分子材料A1の一点A3に照射光Eを向けるように設けられた前述の投光ヘッドB5とからなる。受光手段は、高分子材料A1の一点A3からの反射光Fを受けるように設けられた前述の受光ヘッドC1と、受光ヘッドC1からの光を光ケーブルや透明な光導通部材からなる伝送路C2を介して受け電気信号に変換する受光素子C3と、受光素子C3からの電気信号を増幅する増幅器C4と、この増幅器C4で増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器C5とからなる。判定手段Dは演算部であり、各波長λ1,λ2,λ3におけるデジタル信号から反射率R1,R2,R3を求めるとともに、反射率の比R2/R1,R3/R1を座標データとして算出し、予め入力されている図2のような軌跡線Pと比較することによって劣化度を判定し報知する。なお、各波長λ1,λ2,λ3における反射率R1,R2,R3は、標準白色拡散反射板との比較により較正され、数値化される。
図3において、投光ヘッドB5は、高分子材料A1の一点A3に斜めから対向するように設けられ、受光ヘッドC1は、高分子材料A1の一点A3にほぼ直角に対向するように設けられている。ここで、高分子材料A1の一点A3が必ずしも完全拡散面でなく、一般的には全反射する成分を持っているので、有効な拡散成分のみを取り出すために、投光ヘッドB5からの照射光Eの方向は、一点A3に対して45度程度の角度になるように選ばれている。
3つの発光素子B2は、前述の波長λ1,λ2,λ3をそれぞれピーク波長とする単色光を発光する発光素子であって、レーザーダイオードやLEDなどが使用される。3つの発光素子B2からの光は、スターカプラなどからなる光分配器B3でもって纏められて1つの光路である伝送路B4に送られるとともに、選択器B1でもって電力供給対象を選択するという操作により動作させる発光素子を選択することができるので、機械的な光路の切り替えを行うことなく電気的な操作だけで照射する光を切り替えることができる。
また、図3の装置において、高分子材料A1の一点A3とは異なる位置の一点A4を測定の対象とすることにより、被診断の高分子材料の異なる熱的履歴を診断することができる。高分子材料A1の一点A4のように電気機器Aの充電部A2から離れた部分や重力から見て下にある部分では、充電部A2からの熱抵抗が大きく、かつ外気への熱伝達が働く。そのために、一点A4のような場所は、他の場所に比べて電気機器の使用時における温度の上昇値が小さくなる。一般に、高分子材料の温度による劣化速度は、数1の式のアレニウス則に従う。ここで、Dは劣化の量、dD/dtは劣化の進行速度、ΔEは材料の自由化エネルギー、Rは気体定数、Tは温度である。
[数1]
dD/dt=exp(−ΔE/RT)
これまでに知られている高分子材料の殆どは、実用的な温度範囲である90℃から180℃において8から10Kの温度の低下により劣化速度は半減する。一方で実用的な電気機器が50cm程度の高さを有しているとき、上部の高分子材料の表面温度に比べて底面の高分子材料の表面温度はより低く、20K以上の温度差がある。これにより、劣化速度として1/4から1/6の部分を測定していることになり、同一の電気機器に用いられている同一の高分子材料の異なる劣化度のデータが得られる。実質的に1/4から1/6の劣化速度は、劣化が無いと見なしてよいので、未劣化のサンプルが入手出来ず、その反射率が分からないときには簡易的な未劣化の比較サンプルとして用いることができる。
また、図3において、保持部材Gが絶縁性なので、高分子材料A1の表面の電位が充電部A2からの静電誘導により接地電位より高くなり、投光ヘッドB5や受光ヘッドC1を接地することができなくても、電気機器Aをそのまま充電した状態で測定や診断をすることができる。
また、高分子材料では、例えば紫外線による選択的な着色剤の退色や樹脂の微細なひび割れによる白濁、さらには化学物質、特に酸性物質またはアルカリ性物質の付着によって、反射率特性の異常な変化が引き起こされる場合がある。
しかしながら、上述の実施例1〜2による高分子材料の劣化診断方法および装置では、波長λ2、λ3に加えて、着色剤により吸収され無機充填材の反射の影響を受けない領域の波長λ1に対する反射率も測定するようにしており、これにより、劣化による光反射スペクトルの全体の形状が明確になるので、上記のような反射率特性の異常な変化がある場合に、誤診断を避けることができる。なお、高分子材料における紫外線による選択的な着色剤の退色や樹脂の微細なひび割れによる白濁などの場合の光反射スペクトル変化は、波長λ1に対する反射強度の上昇となって現れるが、上記のような波長λ1に対する反射率も測定する劣化診断方法を適用することにより、誤診断が避けられる。
また、高分子材料における上記のような反射率特性の異常については、設置場所の環境条件に基づいて反射率特性の異常な変化が発生している可能性が高いと判断することができる場合が多く、反射率特性の異常な変化を目視により確認することができる場合も多い。従って、被診断の高分子材料において上記のような反射率特性の異常な変化が発生しておらず、被診断の高分子材料の劣化が通常の劣化によると見なされる場合には、λ2およびλ3の2波長の反射率が得られれば、劣化程度を判定することができるので、上記の図1〜3で説明した実施例1〜2によるλ1,λ2,λ3の3波長の反射率を用いた構成の代わりに、λ2,λ3の2波長の反射率を用いた構成を適用することができる。
すなわち、着色剤と無機充填材とが配合されている高分子材料を対象とした、この発明による高分子材料の劣化診断方法の構成として、実施例1の構成の代わりに、予め被診断の高分子材料と同一種類の高分子材料を熱劣化させ各熱劣化時間における反射率スペクトルを求めておき、互いに波長の異なる2種類の単一波長光として、前記着色剤の反射のピークとなる領域の波長λ2のものと、劣化により前記無機充填材の反射が顕著になる近赤外領域の波長λ3のものとを選び、前記各熱劣化時間における反射率スペクトルから各熱劣化時間における波長λ2,λ3の反射率R2,R3を求め、座標の一方軸をR2、他方の軸をR3として、前記各熱劣化時間における反射率R2とR3とを前記座標にプロットし、前記プロット同士を結ぶ軌跡線を求めておき、前記被診断の高分子材料の一部に前記2種類の単一波長光をそれぞれ照射し各波長に対する反射率を求め、前記被診断の高分子材料の反射率R2とR3とが前記軌跡線の上のどの位置にあるかを調べることにより前記被診断の高分子材料の劣化の程度を判定する構成とすることができ、このような構成とすれば、被診断の高分子材料の一部に照射する単一波長光が2種類で済むことなどにより、劣化診断の処理速度をより高速化することができる。なお、このλ2,λ3の2波長の反射率を用いた劣化診断方法の判定処理で用いる2次元座標は、実施例1に対応する図2の特性線図における2次元座標の横軸を反射率の比R2/R1から反射率R2に置き換え、縦軸を反射率の比R3/R1から反射率R3に置き換えたものである。そして、この反射率R2,R3を両軸とした2次元座標において、予め被診断の高分子材料と同一種類の高分子材料について求めた各熱劣化時間における波長λ2,λ3の反射率R2,R3をプロットし、プロット同士を結んで得られる軌跡線は、図2における軌跡線Pと同様に端部P1(劣化度=0),P3(劣化度=1)および屈折点P2(劣化度=0.3〜0.7)を有する屈折した軌跡線となる。そして、被診断の高分子材料の反射率R2とR3とに対応する座標点(R2,R3)が上記の軌跡線の上のどの位置にあるかを調べることにより、実施例1によるλ1,λ2,λ3の3波長の反射率を用いた構成と同様に、被診断の高分子材料の劣化の程度を明確に判定することができる。
また、この発明による高分子材料の劣化診断装置の構成として、実施例2の構成の代わりに、被診断の高分子材料の一部に波長λ2,λ3の単一波長光をそれぞれ照射する照射手段と、前記一部からの反射光を検知して信号を出力する受光手段と、この受光手段の出力信号から前記被診断の高分子材料の反射率R2とR3とを演算し、予め被診断の高分子材料と同一種類の高分子材料について求めた各熱劣化時間における波長λ2,λ3の反射率R2,R3を、R2、R3を両軸とした2次元座標にプロットし前記プロット同士を結んで求めておいた軌跡線と参照することにより前記被診断の高分子材料の劣化の程度を判定して報知する判定手段とを備えた構成とすることができ、このような構成とすれば、発光素子B2が2つで済むことなどにより、劣化診断装置の構成をより簡素化することができる。なお、このλ2,λ3の2波長の反射率を用いた劣化診断装置は、実施例2に対応する図3のブロック図における照射手段Bの発光素子B2を、波長λ2,λ3のそれぞれの単色光を発光させる2つの発光素子とするとともに、判定手段D(演算部)には反射率R2,R3を両軸とした2次元座標での軌跡線を基にした判定処理機能を設けた構成となり、このような装置構成により、上記のλ2,λ3の2波長の反射率を用いた劣化診断方法を実施することができる。
また、この発明による高分子材料の劣化診断装置として、実施例2に対応する図3のブロック図で示されるような、3つの発光素子B2を備え、λ1,λ2,λ3の3波長の反射率を測定することのできる装置構成に加えて、診断方式切替え操作手段(スイッチ)を設けておき、被診断の高分子材料において上述のような反射率特性の異常な変化が発生していると見なされる場合と、被診断の高分子材料の劣化が通常の劣化によると見なされる場合とに対応して、λ1,λ2,λ3の3波長の反射率を用いた劣化診断方法(3波長方式)と、λ2,λ3の2波長の反射率を用いた劣化診断方法(2波長方式)とを切替えて実施するようにしてもよい。なお、このような構成では、判定手段D(演算部)において、反射率の比R2/R1,R3/R1を両軸とした2次元座標での軌跡線を基にした3波長方式用の判定処理機能と、反射率R2,R3を両軸とした2次元座標での軌跡線を基にした2波長方式用の判定処理機能との両方を設けることが必要となるが、通常は、被診断の高分子材料の劣化が通常の劣化による場合に対応した2波長方式を選定しておいて、より高速な劣化診断処理を行い、被診断の高分子材料において反射率特性の異常な変化が発生している場合には、上記診断方式切替え操作手段により3波長方式に切替えて、反射率特性の異常な変化による誤診断のない的確な劣化診断処理を行う、というように運用することができる。
この発明は、変圧器や、変成器、開閉器、回転機、絶縁用スペーサ、絶縁用ブッシングなどの電気機器の長時間の運転によって、その電気機器に組み込まれた高分子材料がどの程度劣化を受けているかを電気機器の据え付け現地で非破壊的に診断するのに利用することができる。
この発明の実施例1にかかる高分子材料の劣化診断方法を説明する反射率スペクトル図 この発明の実施例1にかかる高分子材料の劣化診断方法を説明する特性線図 この発明の実施例2にかかる高分子材料の劣化診断装置の構成を示すブロック図 着色材の配合されていない樹脂の劣化による変色の様相を概念的に示した反射光スペクトル図
符号の説明
A:電気機器、A1:高分子材料、A2:充電部、A3,A4:一点、B:照射手段、B1:選択器、B2:発光素子、B3:光分配器、B4:伝送路、B5:投光ヘッド、C:受光手段、C1:受光ヘッド、C2:伝送路、C3:受光素子、C4:増幅器、C5:A/D変換器、D:判定手段(演算部)

Claims (4)

  1. 着色剤と無機充填材とが配合されている高分子材料の劣化の程度を診断する方法であって、予め被診断の高分子材料と同一種類の高分子材料を熱劣化させ各熱劣化時間における反射率スペクトルを求めておき、互いに波長の異なる2種類の単一波長光として、前記着色剤の反射のピークとなる領域の波長λ2のものと、劣化により前記無機充填材の反射が顕著になる近赤外領域の波長λ3のものとを選び、前記各熱劣化時間における反射率スペクトルから各熱劣化時間における波長λ2,λ3の反射率R2,R3を求め、座標の一方軸をR2、他方の軸をR3として、前記各熱劣化時間における反射率R2とR3とを前記座標にプロットし、前記プロット同士を結ぶ軌跡線を求めておき、
    前記被診断の高分子材料の一部に前記2種類の単一波長光をそれぞれ照射し各波長に対する反射率を求め、前記被診断の高分子材料の反射率R2とR3とが前記軌跡線の上のどの位置にあるかを調べることにより前記被診断の高分子材料の劣化の程度を判定することを特徴とする高分子材料の劣化診断方法。
  2. 着色剤と無機充填材とが配合されている高分子材料の劣化の程度を診断する方法であって、予め被診断の高分子材料と同一種類の高分子材料を熱劣化させ各熱劣化時間における反射率スペクトルを求めておき、互いに波長の異なる3種類の単一波長光として、前記着色剤により吸収され前記無機充填材の反射の影響を受けない領域の波長λ1のものと、前記着色剤の反射のピークとなる領域の波長λ2のものと、劣化により前記無機充填材の反射が顕著になる近赤外領域の波長λ3のものとを選び、前記各熱劣化時間における反射率スペクトルから各熱劣化時間における波長λ1,λ2,λ3の反射率R1,R2,R3を求めて、この反射率R1,R2,R3から各熱劣化時間での反射率の比R2/R1とR3/R1とを求め、座標の一方軸をR2/R1、他方の軸をR3/R1として、前記各熱劣化時間における反射率の比R2/R1とR3/R1とを前記座標にプロットし、前記プロット同士を結ぶ軌跡線を求めておき、前記被診断の高分子材料の一部に前記3種類の単一波長光をそれぞれ照射し各波長に対する反射率を求め、前記被診断の高分子材料の反射率の比R2/R1とR3/R1とが前記軌跡線の上のどの位置にあるかを調べることにより前記被診断の高分子材料の劣化の程度を判定することを特徴とする高分子材料の劣化診断方法。
  3. 請求項1に記載の高分子材料の劣化診断方法を実施する装置であって、前記被診断の高分子材料の一部に波長λ2,λ3の単一波長光をそれぞれ照射する照射手段と、前記一部からの反射光を検知して信号を出力する受光手段と、この受光手段の出力信号から前記被診断の高分子材料の反射率R2とR3とを演算し、前記軌跡線と参照することにより前記被診断の高分子材料の劣化の程度を判定して報知する判定手段とを備えたことを特徴とする高分子材料の劣化診断装置。
  4. 請求項2に記載の高分子材料の劣化診断方法を実施する装置であって、前記被診断の高分子材料の一部に波長λ1,λ2,λ3の単一波長光をそれぞれ照射する照射手段と、前記一部からの反射光を検知して信号を出力する受光手段と、この受光手段の出力信号から前記被診断の高分子材料の反射率の比R2/R1とR3/R1とを演算し、前記軌跡線と参照することにより前記被診断の高分子材料の劣化の程度を判定して報知する判定手段とを備えたことを特徴とする高分子材料の劣化診断装置。
JP2006114794A 2006-04-18 2006-04-18 高分子材料の劣化診断方法および装置 Active JP4710701B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006114794A JP4710701B2 (ja) 2006-04-18 2006-04-18 高分子材料の劣化診断方法および装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006114794A JP4710701B2 (ja) 2006-04-18 2006-04-18 高分子材料の劣化診断方法および装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007285930A JP2007285930A (ja) 2007-11-01
JP4710701B2 true JP4710701B2 (ja) 2011-06-29

Family

ID=38757834

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006114794A Active JP4710701B2 (ja) 2006-04-18 2006-04-18 高分子材料の劣化診断方法および装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4710701B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20230070716A (ko) * 2021-11-15 2023-05-23 한국전력공사 Xple 절연체 열화 진단 장치

Families Citing this family (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5787565B2 (ja) * 2011-03-23 2015-09-30 株式会社東芝 絶縁劣化診断方法
IL230879A0 (en) 2014-02-06 2014-09-30 Eli Margalit System and method based on spectral features for feeding an additive into a plastic processing machine
JP6191643B2 (ja) * 2015-03-26 2017-09-06 日新電機株式会社 電線被覆劣化検出装置及び電線被覆劣化検出方法
JP6964399B2 (ja) * 2015-09-02 2021-11-10 旭有機材株式会社 配管部材劣化診断方法及び装置
WO2017141793A1 (ja) * 2016-02-17 2017-08-24 株式会社日立産機システム 電気絶縁用樹脂モールドを備えた電気機器の診断方法および診断システム
JP6668101B2 (ja) * 2016-02-17 2020-03-18 株式会社日立産機システム 電気絶縁用樹脂モールドを備えた電気機器の診断方法および診断システム
JP6670629B2 (ja) * 2016-02-19 2020-03-25 株式会社日立産機システム 電気機器の診断システム
JP7000169B2 (ja) * 2018-01-15 2022-01-19 株式会社東芝 劣化推定装置、劣化推定システム、劣化推定方法及びコンピュータープログラム
JP7237516B2 (ja) * 2018-10-24 2023-03-13 株式会社東芝 劣化推定装置、劣化推定システム、劣化推定方法及びコンピュータプログラム
US20220306374A1 (en) * 2020-08-27 2022-09-29 Akimoto Seisakusyo Co., Ltd. Container

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6159242A (ja) * 1984-08-31 1986-03-26 Toshiba Corp 絶縁物の劣化診断方法
JPH0526809A (ja) * 1991-07-24 1993-02-02 Yaskawa Electric Corp 光検出用プローブ
JPH0599978A (ja) * 1991-10-03 1993-04-23 Yaskawa Electric Corp 絶縁材料の熱劣化検出方法
JPH06273326A (ja) * 1993-03-24 1994-09-30 Densen Sogo Gijutsu Center 可塑剤および充填剤を含有する合成樹脂成形品の非破壊的劣化診断方法
JPH07286956A (ja) * 1994-02-25 1995-10-31 Hitachi Ltd 材料の劣化度測定システムおよび測定装置
JPH1074628A (ja) * 1996-06-28 1998-03-17 Hitachi Ltd 電気機器の劣化診断方法及び装置
JP2004077469A (ja) * 1994-02-25 2004-03-11 Hitachi Ltd 材料の劣化度測定システムおよび測定装置

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6159242A (ja) * 1984-08-31 1986-03-26 Toshiba Corp 絶縁物の劣化診断方法
JPH0526809A (ja) * 1991-07-24 1993-02-02 Yaskawa Electric Corp 光検出用プローブ
JPH0599978A (ja) * 1991-10-03 1993-04-23 Yaskawa Electric Corp 絶縁材料の熱劣化検出方法
JPH06273326A (ja) * 1993-03-24 1994-09-30 Densen Sogo Gijutsu Center 可塑剤および充填剤を含有する合成樹脂成形品の非破壊的劣化診断方法
JPH07286956A (ja) * 1994-02-25 1995-10-31 Hitachi Ltd 材料の劣化度測定システムおよび測定装置
JP2004077469A (ja) * 1994-02-25 2004-03-11 Hitachi Ltd 材料の劣化度測定システムおよび測定装置
JPH1074628A (ja) * 1996-06-28 1998-03-17 Hitachi Ltd 電気機器の劣化診断方法及び装置

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20230070716A (ko) * 2021-11-15 2023-05-23 한국전력공사 Xple 절연체 열화 진단 장치
KR102655984B1 (ko) 2021-11-15 2024-04-11 한국전력공사 Xlpe 절연체 열화 진단 장치

Also Published As

Publication number Publication date
JP2007285930A (ja) 2007-11-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4710701B2 (ja) 高分子材料の劣化診断方法および装置
CN104406921B (zh) 一种光学检测系统和方法
KR100517104B1 (ko) 비파괴진단방법및비파괴진단장치
CN101228435B (zh) 原丝类纺织材料中外来物质的检测和分类
Stroyuk et al. Nondestructive characterization of polymeric components of silicon solar modules by near-infrared absorption spectroscopy (NIRA)
JP6191643B2 (ja) 電線被覆劣化検出装置及び電線被覆劣化検出方法
JP3794290B2 (ja) 物品の劣化診断方法,品質検査方法,素材判定方法および診断装置,物品の劣化管理方法
WO2002033387A2 (en) Method and apparatus for nondestructive determination of polymer hydrolytic stability
EP3327736B1 (en) Method for determining abnormality in oil-filled electric apparatus
CN114878479A (zh) 一种用于丝绢文物的光损伤测试方法
JP3860846B2 (ja) 材料の劣化度測定システムおよび測定装置
WO2017163065A1 (en) Portable optical analysis apparatus for universal application
JP2017110916A (ja) 劣化診断装置及び劣化診断方法
JP6811699B2 (ja) 絶縁劣化診断方法および絶縁劣化診断装置
JPH09222393A (ja) 劣化度診断装置
JP2004077469A (ja) 材料の劣化度測定システムおよび測定装置
JPH1074628A (ja) 電気機器の劣化診断方法及び装置
Ossia et al. Novel chromatic technique based on optical absorbance in characterizing mineral hydraulic oil degradation
JP2019215230A (ja) 電線被覆劣化検出装置及び電線被覆劣化検出方法
Teramoto et al. Mid‐Infrared Spectroscopy and Machine Learning for Nondestructive Detection of Inapparent Deterioration in Acrylic Waterborne Coatings for Wood
JP2000249660A (ja) 表面検査装置および表面検査方法
JPH07260688A (ja) 蛍光を用いたポリマー材料の劣化診断方法
JP3205212B2 (ja) 劣化度診断装置
JP4591064B2 (ja) 血卵の非破壊検出方法
WO2016055527A2 (en) Optical detector module, measurement system and method of detecting presence of a substance in a test material

Legal Events

Date Code Title Description
RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20081215

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20090219

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090313

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110217

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110222

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110307

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4710701

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140401

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250