JP4693961B2 - 緩効性肥料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリマー成分と肥料成分とを含有する緩効性肥料に関する。より、詳しくは、任意期間、肥料成分を周辺土壌中または水中などに徐放するとともに、施肥後はポリマー成分が分解し、環境負荷物質を土壌中などに残存させない緩効性肥料に関する。
【0002】
【従来の技術】
作物が収穫されるまでは様々な肥料が使用されるが、短期間で効力を失うものは施肥の回数が多くなり、作業性などの面で非効率的である。そのため、緩効性肥料を用いることにより、施用回数の低減が可能とされ、現在までに各種の緩効性肥料が提案されている。
【0003】
長期間効力を持続させる徐放を行なうために、たとえば、肥料成分を合成樹脂からなる被覆剤で被覆してマイクロカプセル化することは有効であり、このような粒状肥料は種々考案されている。
【0004】
しかしながら、そのような粒状肥料は、施肥後において土中などに被覆剤を残留させることがあった。合成樹脂からなる被覆剤が自然環境中に残存した場合、土壌汚染、水汚染の原因となる。
【0005】
そのため、被覆剤として生分解性ポリマーを用いた肥料が提案されており、生分解性ポリマーを使用した例としては、ポリ乳酸系(特開平7−061884号公報)、ポリカプロラクトン系(特開平10−101501号公報)などの提案がある。
【0006】
しかし、ポリ乳酸などの生分解性ポリマー単独で被覆剤を構成したとしても、十分な被膜強度を得ることは困難であった。そのため、製造運搬時などに物理的衝撃を受け、被膜にクラックなどが発生して肥料成分が施肥前に外界に流出する問題があった。一方、物理的衝撃に対し十分な被膜強度を持たせようとすると、施肥の段階において、生分解性ポリマーの加水分解速度、微生物分解速度などが極端に遅くなり、安定した徐放を長期間行なうことが困難であった。
【0007】
そのため、上述の生分解性ポリマーと、低分子ポリオレフィン、低分子ワックスなどの難分解性樹脂とを配合した徐放性肥料(特開平9−263476号公報)が提案されたが、依然として、施肥後において、土壌中または水中に難分解性樹脂が残存する問題があった。
【0008】
かかる問題を解決すべく、不飽和結合を有するオレフィン樹脂を酸化分解促進物資とともに、生分解性ポリエステルなどとブレンドしてブレンド被覆剤を構成し、該ブレンド被覆剤で肥料成分を被覆する徐放性肥料が提案された(特開平9−194280号公報、特開平9−309784号公報)。遷移金属などからなる酸化分解促進物資が土中などにおいてオレフィン樹脂を分解させることで、土壌中などに樹脂成分が残存する問題は解決された。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述のブレンド被覆剤で肥料成分を被覆する徐放性肥料は、ブレンド被覆剤の被膜厚みに不均一性がある点で問題があった。そのため、被膜厚みが薄い部分からは肥料成分が土中などへ急速に流出し、一方被膜厚みが薄い部分においては肥料成分が土中へ流出困難であり、結果として均一に土中へ肥料成分を流出させることは困難であった。また、ブレンド被覆剤で肥料成分を被覆する徐放性肥料は、ブレンド被覆剤の被膜厚みを制御すること自体も困難であった。そのため、製造工程において何らかの原因によって平均的に被膜厚みが薄い徐放性肥料が製造された場合にあっては、物理的衝撃に弱い徐放性肥料が形成されることになる。本発明者は上述の問題を解決するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る緩効性肥料は、請求項1に記載のように、2−ヒドロキシ−2−アルキル酢酸単位におけるアルキルの60モル%以上がメチルである脂肪族ポリエステルセグメントと、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する不飽和炭化水素重合体セグメントとを共重合することで得られる生分解性ポリマー成分と、有機の肥料若しくは無機の肥料のうち少なくともいずれか一方を含有する肥料成分とを含有する緩効性肥料である。
【0011】
また、本発明に係る緩効性肥料は、請求項2に記載のように、請求項1記載の発明において、前記2−ヒドロキシ−2−アルキル酢酸単位におけるL体とD体とのモル比が、1:3〜1:6である緩効性肥料である。
【0012】
また、本発明に係る緩効性肥料は、請求項3に記載のように、請求項1または2記載の発明において、前記生分解性ポリマーの還元粘度が0.15〜1.0dl/gである緩効性肥料である。
【0013】
また、本発明に係る緩効性肥料は、請求項4に記載のように、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記生分解性ポリマー成分に、遷移金属、遷移金属酸化物、遷移金属ハロゲン化物、無機酸遷移金属塩、有機酸遷移金属塩のうち少なくともいずれか一つを含有する分解促進剤を含有させた緩効性肥料である。
【0014】
また、本発明に係る緩効性肥料は、請求項5に記載のように、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記肥料成分を、前記生分解性ポリマー成分を含有する被覆材で被覆した緩効性肥料である。
【0015】
本発明者は、2−ヒドロキシ−2−アルキル酢酸単位におけるアルキルの60モル%以上がメチルである脂肪族ポリエステルセグメントと、両末端にヒドロキシル基を有する不飽和炭化水素重合体セグメントとを共重合することで得られる生分解性ポリマー成分と、有機の肥料若しくは無機の肥料のうち少なくともいずれか一方を含有する肥料成分とを含有する緩効性肥料が、製造時の物理的損傷に耐え得る被膜強度を有するとともに、土中若しくは水中のいずれにおいても長期安定な徐放が可能であるという新知見に基づいて本発明を完成させた。ここで、生分解性とは、分解の一過程において、生物の代謝が関与して、低分子量化合物に変換する性質をいう。
【0016】
前記脂肪族ポリエステルセグメントとしては、2−ヒドロキシ−2−アルキル酢酸単位におけるアルキルの全てがメチルである場合、すなわち、ポリ−2−ヒドロキシ−2−メチル酢酸であることが望ましい。なお、2−ヒドロキシ−2−アルキル酢酸単位におけるアルキルは、水素、メチル、エチルであることが可能であるが、アルキルの60モル%以上がメチルであることが必要である。
【0017】
2−ヒドロキシ−2−アルキル酢酸単位におけるアルキルの60モル%以上がメチルである脂肪族ポリエステルセグメントと、両末端にヒドロキシル基を有する不飽和炭化水素重合体セグメントとを共重合させるから、脂肪族ポリエステル単体の場合と比較して、透湿性を低く抑えることができ、しかも施肥初期のバーストを防止することができるのである。
【0018】
土壌中などにおいて、生分解性ポリマー成分に水が浸透することにより、表面側に肥料成分が存在する場合は、表面側に存在する肥料成分の大半が溶出した後に、前記生分解性ポリマー成分の分解とともに緩効性肥料の中心部から表面側にかけて多くの導通隙間が発生し、肥料成分の溶出を促進させる。
【0019】
2−ヒドロキシ−2−アルキル酢酸単位におけるアルキルの60モル%以上をメチルにすることで、適正な被膜強度を得ることができるとともに、施肥中期において、2−ヒドロキシ−2−アルキル酢酸単位の加水分解を土壌中などにおいて促進できる。また、両末端にヒドロキシル基を有する不飽和炭化水素重合体セグメントの不飽和結合部分が酸化分解されるから、施肥中期において前記不飽和炭化水素重合体セグメントの分解が可能である。
【0020】
施肥後においては、土壌中若しくは水中のいずれにおいても、前記脂肪族ポリエステルセグメントは完全に加水分解し、前記不飽和炭化水素重合体セグメントも完全に分解するから、環境に負荷を与える物質を残留させない。
【0021】
前記2−ヒドロキシ−2−アルキル酢酸単位におけるL体のD体に対するモル比は、溶剤への溶解性、生分解性、加水分解性を確保するために、6以下であることが好ましい。また、所定の被膜強度を有するためには3以上であることが好ましい。なお、2−ヒドロキシ−2−アルキル酢酸単位におけるアルキル基の構造は、既存の測定方法で測定可能であり、たとえばNMRで測定することが可能である。また、前記2−ヒドロキシ−2−アルキル酢酸単位におけるL体とD体との識別認識測定方法も既存の測定方法を使用することが可能であり、たとえば旋光光度計で測定することが可能である。
【0022】
前記生分解性ポリマーは、土壌中若しくは水中での使用に耐え得る被膜強度を形成するために還元粘度が0.15dl/g以上であることが望ましく、製造効率を担保するために1.0dl/g以下であることが望ましい。ここで生分解性ポリマーの還元粘度は、生分解性ポリマー0.125gをクロロフォルム25mlに溶解し、25℃においてウベローデ粘度管を用いて測定することができる。
【0023】
前記生分解性ポリマー成分に、遷移金属、遷移金属酸化物、遷移金属ハロゲン化物、無機酸遷移金属塩、有機酸遷移金属塩のうち少なくともいずれか一つを含有する分解促進剤を含有させることで、前記生分解性ポリマーの分解を促進することができる。
【0024】
また、有機の肥料若しくは無機の肥料のうち少なくともいずれか一方を含有する肥料成分を、前記生分解性ポリマー成分を含有する被覆材で被覆することで、汎用性容易な形状に緩効性肥料を成形することができるとともに、土壌中などにおいては的確な徐放を行なうことができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
2−ヒドロキシ−2−アルキル酢酸単位におけるアルキルの60モル%以上がメチルである脂肪族ポリエステルセグメントと、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する不飽和炭化水素重合体セグメントとを共重合することで、生分解性ポリマー成分を得ることができる。前記不飽和炭化水素重合体セグメントとして、両末端にヒドロキシル基を有する不飽和炭化水素重合体セグメントを用いることも可能である。
【0026】
前記生分解性ポリマーの重合方法としては、種々の公知の方法で行なうことができる。たとえば、前記不飽和炭化水素重合体セグメントとしての両末端にヒドロキシル基を有する低分子量のジエン系モノマーの重合体若しくは共重合体と、脂肪族ポリエステルセグメントとしての2−ヒドロキシ−2−アルキル酢酸環状2量体ラクチドとを開環付加重合させることで、生分解性ポリマーを得ることができる。
【0027】
前記脂肪族ポリエステルセグメントと前記不飽和炭化水素重合体セグメントとの共重合は、両者は相溶困難であるためバルク状態で行なうよりも溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロフォルム、トリクロロエチレン、テトラヒドロフランなどを使用することができる。なお、前記脂肪族ポリエステルセグメントと前記不飽和炭化水素重合体セグメントとのモル比を適宜変更することで目的用途に応じた徐放速度を得ることができる。
【0028】
前記不飽和炭化水素重合体セグメントとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどについては既存の製造方法で得ることが可能である。
【0029】
また、前記脂肪族ポリエステルセグメントの分子量としては、1000以上100000以下のものを使用することが望ましい。
【0030】
土壌中または水中において、生分解性ポリマーの分解速度を更に向上させるために分解促進剤を添加させることができる。前記分解促進剤としては、遷移金属、遷移金属酸化物、遷移金属ハロゲン化物、無機酸遷移金属塩、有機酸遷移金属塩のうち少なくともいずれか一つを含有する分解促進剤を使用することができる。前記遷移金属は、たとえば、Cu、Ag、Zn、Mn、Fe、Co、Mo、Niなどの微細粉末金属を使用することができる。また、前記遷移金属酸化物は、たとえば、アナターゼ型酸化チタン、酸化クロームグリーン、コバルトブルーなどを使用することができる。また、前記遷移金属ハロゲン化物は、たとえば、FeCl2、FeCl3、NiCl2、NiBr2、CoBr3、MnCl2、MnCl3、TiCl4、CuCl、ZnCl2などを使用することができる。また、前記無機酸遷移金属塩は、たとえば、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、炭酸、燐酸、亜燐酸とZn、Mo、Mn、Fe、Co、Ni、Cuなどの微粉末化塩を使用することができる。また、前記有機酸遷移金属塩は、たとえば、炭素数1ないし22の有機酸、すなわち飽和、不飽和、脂肪属カルボン酸、芳香属カルボン酸の遷移金属塩などを使用することができる。なお、酸化分解促進物質の添加量を適宜変更することで目的用途に応じた徐放速度を得ることができる。
【0031】
前記分解促進剤は、前記生分解性ポリマー成分に対して0.001〜20wt%添加するのが望ましい。20wt%よりも多い添加量は製造中の過熱によって被膜の劣化を招く場合もあるので適当ではない。また、0.001wt%よりも少ない添加量では酸化促進効果が不十分である。前記分解促進剤は、前記生分解性ポリマー成分に対して0.05〜15wt%添加するのがより好適である。なお、分解促進剤の添加量を適宜変更することで目的用途に応じた徐放速度を得ることができる。
【0032】
本発明で使用される肥料成分としては、硫安、硝安、尿素、硝酸ソーダ、イソブチルアルデヒド縮合尿素、リン酸カリ、リン酸石灰、焼成リン肥、塩化カリウム、重炭酸カリウム、リン酸カリウム、硝酸カリウムなど、各種の有機の肥料を1種または2種以上組合せて用いることができる。
【0033】
なお、前記分解促進物質として昇華性微粒子を使用することも可能である。前記分解促進物質としては、たとえば、ナフタレン、樟脳、硫黄のうち少なくともいずれか一つを含有するものを使用できる。前記昇華性微粒子は、前記脂肪族ポリエステル中に分散された昇華性微粒子が、施肥後徐々に昇華した結果、微細な空隙が生成して、空気との接触面積を著しく増加させ、また酸化分解性高分子組成物の隔壁が極薄化して急激に酸化分解を受けて崩壊し易くなる。このため、前記昇華性微粒子の昇華性の程度は、施肥後空隙が完成するまでの期間に影響を与える。すなわち、高分子組成物の酸化分解性と、空隙界面は比例し、空隙界面は昇華性微粒子の割合に比例し、粒径に反比例する。すなわち、添加割合が多いほど、また微粒子径が小さいほど酸化分解は進行し、被膜設計に際してはこれらの組合せを充分に検討し計画される。本発明に必須の昇華性微粒子とは常温において個体で、かつ水に不溶または難溶性で、粒径が0.1〜50μmのものを使用することができる。
【0034】
前記生分解性ポリマー成分と前記肥料成分との重量比は、1:1〜1:100であることが望ましい。
【0035】
また、被覆粒状肥料の形態は、肥料成分の徐放濃度、徐放期間などの要求性能に応じるために組成物中に含有させるべき肥料成分の量、また施用作業時の利便性を考慮し、粒状、球状、柱状、円盤状に成形することができる。
【0036】
生分解性ポリマーの肥料への被覆方法については、混練りしてペレット状、シート状などに成形する方法、樹脂をカプセル状として肥料成分を充填した後に密封する方法が挙げられ、特に限定はないが、たとえば、噴流層内において、転動または流動状態にある肥料成分粒材に被覆材溶液を噴霧し、同時に熱風を高速で吹き付けることで溶剤を速やかに蒸発乾燥する方法など、肥料成分を樹脂で被覆できるものが好ましい。但し、生分解性ポリマーが熱によって分解または劣化する可能性があるため、混合混練・成形・被覆材噴霧・乾燥などの過程においては温度を熱分解温度・劣化温度以下に制御する必要がある。
【0037】
肥料成分へ噴霧被覆する生分解性ポリマーの形態としては、ポリマーをトリクロロエチレン、パークロロエチレンなどの含塩素系溶剤の他トルエン、キシレンなどの汎用溶剤に溶解した溶液、溶融ポリマー、水分散体などが考えられ、特に限定はない。
【0038】
本発明では、前記生分解性ポリマー成分と前記肥料成分とに加え、前記肥料成分の溶出コントロール機能が失われない範囲で、添加物としての粉体フィラーを使用することが可能である。前記粉体フィラーは、難水溶性または不水溶性の粉体であり、無機質若しくは有機質の何れのものも使用できる。粉体フィラーは被膜内に均一に分散されるが、分散性不良のものはシリコンなどによる表面処理や界面活性剤などで分散し易くするなどの分散性改良処理が必要である。無機質粉体フィラーの好ましい材料としては、たとえば、タルク、炭酸カルシウム、クレイ、ケイソウ土、シリカおよびその塩、金属酸化物、イオウなどが挙げられる。これら無機質粉体フィラーのうちイオウは微生物分解を受ける材料であり、被膜の複合材料の成分として土壌中での分解を受け易くするなどの利点がある。一方、有機質の粉体フィラーは、微生物によって分解を受けるものが多く、複合材料としての土壌分解はイオウより優れた点があり、たとえば澱粉その他澱粉質の材料や、土壌中で微生物分解によってアオンモニウムイオンを生成するクロチリデンジウレアなどが好ましい材料である。
【0039】
前記粉体フィラーとして使用した場合、その使用量が増えると、生分解性ポリマー成分の被膜強度が低下する傾向がある。したがって、緩効性肥料中における前記粉体フィラーの使用量としては、30〜70重量%濃度が好ましい。
【0040】
上述の実施の形態では、2−ヒドロキシ−2−アルキル酢酸単位におけるアルキルの60モル%以上がメチルである脂肪族ポリエステルセグメントと、両末端にヒドロキシル基を有する不飽和炭化水素重合体セグメントとを開環付加重合することで、生分解性ポリマー成分を得たが、前記脂肪族ポリエステルセグメントと前記不飽和炭化水素重合体セグメントとをグラフト共重合することで生分解性ポリマー成分を得ることも可能である。また、ブロック共重合することで生分解性ポリマー成分を得ることも可能である。
【0041】
また、前記肥料成分を、前記生分解性ポリマー成分を含有する被覆材で被覆することで緩効性肥料を形成したが、前記肥料成分が、前記生分解性ポリマー成分中に分散されているで緩効性肥料であってもよい。
【0042】
本発明では、前記生分解性ポリマー成分と前記肥料成分とに加え、前記肥料成分の溶出コントロール機能が失われない範囲で、さらに、添加物としての界面活性材を使用することが可能である。前記界面活性剤としては、陽イオン性のもの、陰イオン性のもの、両性のもの、非イオン性のもの何れも使用できる。
【0043】
前記界面活性剤は、親水性が強すぎる場合は被膜内に均一に分散せずに凝集して被膜欠陥の原因になり、一方、親油性が強すぎると被膜への影響は少ないが、肥料成分の溶出促進効果が劣る傾向がある。したがって、前記界面活性剤はその親水性疎水性のバランスが重要である。
【0044】
また、前記生分解性ポリマー成分と前記肥料成分とに加え、添加物として鉱物成分を含有させることが可能である。前記鉱物成分を含有させた場合、前記鉱物成分と前記生分解性ポリマーとの界面から優先的に水が浸透する。施用初期においてはこの界面隙間は小さく、肥料成分の溶出速度は一定レベルに制限される。そして、日数経過に伴う生分解性ポリマーの分解により上記界面隙間が拡大するとともに、より内部の肥料成分が溶出してゆく。最終的に生分解性ポリマーの大部分が消失しても、鉱物成分の肥料成分吸着効果により徐放性が残存し、最終的にすべての肥料成分が溶出するまで徐放性は維持される。
【0045】
鉱物成分としては、特に限定されないが、肥料成分に対する吸着性などの見地から酸性白土(粘土)、活性白土(粘土)、セッコウ、珪酸質原料などが望ましい。これらを1種または2種以上を混合して使用することが可能である。珪酸質原料としては、白珪石、軟珪石、炉材珪石、ケイソウ土、パーライト(真珠岩)、X型、Y型、ZSM型などのセオライト、シリカライトなどを、それぞれ挙げることができる。
【0046】
前記鉱物成分の形態は、粉末状、球状、鱗片状、板状、薄片状、繊維状、粉砕片などであってもよい。また、前記鉱物成分の均粒径は、大き過ぎると肥料成分の溶出が早過ぎて十分な徐放効果を得難いとともに、固形体である農薬が崩壊し易くなる。小さすぎると、水が浸透することによる鉱物成分と生分解性ポリマーとの界面形成効果が充分でない。したがって、前記鉱物成分の均粒径は0.1〜50μmが好適である。このように、鉱物成分の粒径は、肥料成分の溶出速度と関連するため、速い溶出速度を所望する場合は大きく、非常に遅い溶出速度を所望する場合は小さく、上記範囲内で適宜設定して溶出速度を制御することが可能である。
【0047】
【実施例】
以下に、本発明における実施例を示す。
(実施例1)
DLラクチド100重量部、ポリイソプレンポリオール(数平均分子量2500)25重量部、オクチル酸スズ0.1重量部、無水キシレン100重量部を、窒素導入管を備えた重合管に投入し、窒素雰囲気下で140℃で加熱攪拌、20時間開環重合させた後、165℃にてキシレンを留去し、前記生分解性ポリマーとしてのポリイソプレン共重合乳酸系ポリエステルを得た。
【0048】
得られたポリイソプレン共重合乳酸系ポリエステルを、トリクロロエチレンに5重量%濃度になるように溶解し、平均粒径4mmの尿素に噴霧被覆装置を用いて噴霧被覆、高温の熱風により溶剤を蒸発乾燥して被覆粒状肥料を作製した。
(実施例2)
実施例1のポリイソプレンポリオールの代わりに、ポリブタジエンポリオール(数平均分子量2500)を用いた他は、実施例1と同様の方法で生分解性ポリマーを得た。そして、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。
(実施例3)
実施例1で得られた生分解性ポリマーをトリクロロエチレンに5重量%濃度になるように溶解した。その後、アナターゼ型酸化チタンを生分解性ポリマーに対して2重量%になるように添加し、平均粒径4mmの肥料に噴霧被覆装置を用いて噴霧被覆、高温の熱風により溶剤を蒸発乾燥して被覆粒状肥料を得た。
(比較例)
被覆剤用樹脂としての低密度ポリエチレン(MI(メルトインデックス)=23、密度0.916g/cm3)を、トリクロロエチレンに5重量%濃度になるように溶解し、平均粒径4mmの尿素に噴霧被覆装置を用いて噴霧被覆、高温の熱風により溶剤を蒸発乾燥して被覆粒状肥料を得た。
【0049】
実施例1、実施例2、実施例3、比較例のそれぞれで得られた被覆粒状肥料において尿素溶出率(%)を測定した。被覆粒状肥料をそれぞれ5.0gを200ml水中に浸漬して25℃に静置する。所定期間後肥料成分と水に分け、水中に溶出した尿素を定量分析により求めた。肥料成分には新水を200ml入れて再び25℃に静置、所定期間後同様な分析を行なった。この様な操作を反復して水中に溶出した尿素の溶出累計と日数との関係を求めた。尿素の溶出累計から相対的に尿素溶出率(%)を測定した。その結果を下記表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
上述の表1に結果から、本発明に係る緩効性肥料では、施肥初期においてはバーストすること無く、しかも、日数が経過するにつれて窒素成分の純水中への高溶出率を達成することができた。なお、施肥後は、ポリマー成分が分解することで土壌中などにおいて環境に負荷を与えることはなかった。一方、比較例に係る緩効性肥料では、日数が経過したとしても窒素成分の純水中への溶出率は低く、土壌中などに肥料成分を溶出させる効果は低かった。
【0052】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0053】
【発明の効果】
本発明に用いられているポリマーは、脂肪族ポリエステルセグメントの加水分解と不飽和炭化水素重合体セグメントの酸化分解、さらに土壌中での微生物分解の効果により、施肥初期のバーストを抑制しつつ、目的用途における徐放期間を任意に制御することができる。また、施肥後は、生分解性ポリマー成分が容易に分解するため、土壌中または水中において環境に負荷を与える物質を残留させない。
Claims (4)
- 2−ヒドロキシ−2−アルキル酢酸単位におけるアルキルの60モル%以上がメチルである脂肪族ポリエステルセグメントと、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する不飽和炭化水素重合体セグメントとを共重合することで得られる生分解性ポリマー成分と、
有機の肥料若しくは無機の肥料のうち少なくともいずれか一方を含有する肥料成分とを含有する緩効性肥料。 - 前記生分解性ポリマー0.125gをクロロフォルム25mlに溶解し、25℃においてウベローデ粘度管を用いて測定した前記生分解性ポリマーの還元粘度が0.15〜1.0dl/gである請求項1記載の緩効性肥料。
- 前記生分解性ポリマー成分に、遷移金属、遷移金属酸化物、遷移金属ハロゲン化物、無機酸遷移金属塩、有機酸遷移金属塩のうち少なくともいずれか一つを含有する分解促進剤を含有させた請求項1または2に記載の緩効性肥料。
- 前記肥料成分を、前記生分解性ポリマー成分を含有する被覆材で被覆した請求項1〜3のいずれかに記載の緩効性肥料。
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