[go: up one dir, main page]

JP4591667B2 - 光機能材料 - Google Patents

光機能材料 Download PDF

Info

Publication number
JP4591667B2
JP4591667B2 JP2004235051A JP2004235051A JP4591667B2 JP 4591667 B2 JP4591667 B2 JP 4591667B2 JP 2004235051 A JP2004235051 A JP 2004235051A JP 2004235051 A JP2004235051 A JP 2004235051A JP 4591667 B2 JP4591667 B2 JP 4591667B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
photoelectric conversion
general formula
sensitizing dye
group
dye
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004235051A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005097561A (ja
Inventor
弾生 八木
宗徳 安藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Artience Co Ltd
Original Assignee
Toyo Ink Mfg Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyo Ink Mfg Co Ltd filed Critical Toyo Ink Mfg Co Ltd
Priority to JP2004235051A priority Critical patent/JP4591667B2/ja
Publication of JP2005097561A publication Critical patent/JP2005097561A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4591667B2 publication Critical patent/JP4591667B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E10/00Energy generation through renewable energy sources
    • Y02E10/50Photovoltaic [PV] energy
    • Y02E10/542Dye sensitized solar cells

Landscapes

  • Hybrid Cells (AREA)
  • Photovoltaic Devices (AREA)

Description

本発明は光機能材料に関する。当該光機能材料は、光電変換材料、光発光材料または光吸収材料などに使用できる。また、本発明は、この光機能材料を用いた光電変換材料、光電変換電極、およびこれを用いた光電変換セルに関する。
太陽光発電は単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、テルル化カドミウムやセレン化インジウム銅などの化合物太陽電池が実用化、もしくは研究開発対象となっているが、普及させる上で製造コスト、原材料確保、エネルギーペイバックタイムが長い等の問題点を克服する必要がある。一方、大面積化や低価格を指向した有機材料を用いた太陽電池もこれまでに多く提案されているが変換効率が低く、耐久性も悪いという問題があった。
こうした状況の中で、色素によって増感された半導体微多孔質体を用いた光電変換電極および光電変換セル、ならびにこれを作成するための材料および製造技術が開示された(非特許文献1および特許文献1参照)。開示された電池は、ルテニウム錯体色素によって分光増感された酸化チタン多孔質薄層を作用電極としヨウ素を主体とする電解質層および対電極から成る色素増感型の光電変換セルである。この方式の第一の利点は酸化チタン等の安価な酸化物半導体を用いるため、安価な光電変換素子を提供できる点であり、第二の利点は用いられるルテニウム錯体色素が可視光域に幅広く吸収を有していることから比較的高い変換効率が得られる点である。
このような色素増感型光電変換セルの問題点のひとつとして、色素の原料にルテニウムを用いていることが挙げられる。ルテニウムはクラーク数が0.01ppmと白金やパラジウムに匹敵する量しか地球に現存せず、大量に使われると枯渇が免れない。さらにルテニウム錯体色素の価格も高価な物となり、光電変換セルの大量普及の妨げとなる。
最近、色素増感型太陽電池における増感色素として、非ルテニウム錯体色素の研究が盛んに行なわれている。その例としてはフェニルキサンテン系色素、フタロシアニン系色素、クマリン系色素、シアニン形色素、ポルフィリン系色素、アゾ系色素等があげられる。これらの有機色素はルテニウム錯体に比較して吸光係数が大きく、分子設計の自由度も大きいため、高い光電変換効率が期待されている。しかしながら、色素の光吸収領域がせまかったり、酸化チタンへの電荷の注入が非効率的である等の理由から、良い有機増感色素はなかった。
これらの問題を解決するため、酸化チタンとの吸着末端に特徴をもたせた増感色素として、置換アクリル酸部位を持つ増感色素が比較的高い変換効率を有することが開示されている(特許文献2、3参照)。これらの増感色素に特徴的な点はアクリル酸末端のカルボン酸基が結合する炭素原子が同時にシアノ基を代表とする電子吸引性置換基を有することによりアクリル酸末端の電子吸引効果を増大させている点にある。増感色素は末端のカルボン酸基で酸化チタン等の無機酸化物半導体表面に結着し、増感色素が光吸収することによって生じた励起電子をカルボン酸基を通して無機酸化物側へ注入しているが、この部位の電子吸引効果が強くなることによって電子注入効果が促進され、ひいては高い変換効率を実現している。代表的な例としては、クマリン骨格とシアノ基を有するアクリル酸末端とを組み合わせた増感色素で、5%以上の高い変換効率を実現している(非特許文献2参照)。また、ポリエン構造とアミノ基を組み合わせた発色団に同様のアクリル酸末端を導入した増感色素においても5%以上の高い変換効率が達成されている(非特許文献3参照)。
しかしクマリン骨格等の吸収波長領域は可視光領域の中で比較的短波長側に寄っているため、この骨格を基に長波長化を図ろうとすれば長鎖の二重結合部位(ポリエン構造)などを導入することになる。長鎖の二重結合部位は活性酸素等に酸化されやすいことや熱安定性が低い等、耐久性の弱い性質を有している。同様の理由で、非特許文献3に記載のポリエン構造を有する増感色素も耐久性に問題があることが予想される。また、増感色素として機能するシアニン系色素等も長鎖二重結合部位を有し、耐久性の弱い色素の一例である。
長鎖二重結合部位等のように耐久性の弱い部位の導入にたよらず、耐久性の強い骨格構造を有し、さらに、安価で枯渇性の原料を使用せず、高い変換効率特性を有した光電変換セルを提供できる増感色素が求められていた。
Nature(第353巻、第737−740頁、1991年) Chem.commun.(第569−570頁、2001年) Chem.commun.(第252−253頁、2003年) 米国特許4927721号明細書 特開2002‐164089号公報 WO 02/11213号パンフレット
本発明の目的はルテニウム等の枯渇性原料を使用せず、耐久性の強い骨格構造を有し、安価で高い変換効率性能を有する色素増感型光電変換セル用の増感色素を提供することである。さらにはこの増感色素を無機半導体多孔質体表面に連結させた光電変換材料、および光電変換材料を電導性表面を有する透明基材の電導面に積層して成る光電変換電極、および光電変換電極を電解質層を介して導電性対極を組み合わせて成る光電変換セルを提供することである。
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の増感色素を透明導電性基板上に積層させた無機酸化物半導体表面に連結させ、良好な光電変換セルを作成することに成功し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示される光電変換用増感色素に関する。
一般式(1)
Figure 0004591667
(式中、Ar1、Ar2フェニレン基を表し、
Xは下記一般式(3)である
Yはアルキル基で置換されても良いジフェニルアミノ基を表す。
Zは下記一般式(2)である
1、R2 水素原子表す
また、R2と−Ar2−Yの位置はいれかわっても良い。)
一般式(3)
Figure 0004591667


(式中、nは0〜3の整数である。)
般式(2)
Figure 0004591667

(式中、R3は、カルボン酸基、またはホスホン酸基を表し、R 4 はシアノ基を表し、R 5 は水素原子を表す。また、R3とR4の位置はいれかわっても良い。)
また、本発明は、上記増感色素と、無機半導体多孔質体とを連結させてなる光電変換材料に関する。
また、本発明は、上記光電変換材料を透明電極に積層させてなる光電変換電極に関する。
また、本発明は、上記光電変換電極、電解質層、および導電性対極を含んでなる光電変換セルに関する。
本発明において一般式(1)の増感色素を用い、枯渇性のない材料でかつ高い光電変換効率を有する光電変換セルを提供することができた。また、一般式(1)の増感色素と併用増感色素を組み合わせることにより各々の色素を単独で用いるより太陽光に対して幅広い波長領域で光電変換機能を発現でき、高効率な光電変換材料、光電変換電極および光電変換セルを作成することができた。さらに、色素にポリエン構造を有しないため、電池製造時の劣化を防ぐことができ、また、光劣化や熱劣化等が起きにくく電池の長期安定性に高い効果が確認された。
以下、詳細にわたって本発明を説明する。まずはじめに、本発明の光機能材料は、一般式(1)で表される化合物であることが挙げられる。
本発明において光機能材料とは光を吸収することによって新たに増感効果、発熱効果、発色効果、退色効果、蓄光効果、相変化効果、光電変換効果、光磁気効果、光触媒効果、光変調効果、光記録効果、ラジカル発生効果等の機能を発現する材料、あるいは逆にこれらの効果を受けて発光機能を有する材料のことをさす。当該光機能材料は、例として光電変換材料、発光材料、光記録材料、画像形成材料、フォトクロミック材料、エレクトロルミネッセンス材料、光導電材料、二色性材料、ラジカル発生材料、酸発生材料、塩基発生材料、蓄光材料、非線形光学材料、第2高調波発生材料、第3高調波発生材料、感光材料、光吸収材料、近赤外吸収材料、フォトケミカルホールバーニング材料、光センシング材料、光マーキング材料、光化学治療用増感材料、光相変化記録材料、光焼結記録材料、光磁気記録材料、光線力学療法用色素、光触媒水分解用増感色素および光電変換用増感色素等に幅広く用いることができる。
本明細書においては一般式(1)で表される光機能材料を主として光電変換用増感色素として用いるので、この材料を主として光電変換用増感色素あるいは増感色素として呼称するが、前記の幅広い応用を否定するものではない。
色素増感型太陽電池の動作機構としては、太陽光を吸収した増感色素が光励起された後、励起状態の増感色素から酸化チタン等の無機半導体の伝導帯へ電子が注入される過程と、無機半導体に電子を注入して酸化された増感色素へ、ヨウ素をはじめとするレドックス系からの電子注入による還元からなる。
したがって、光電変換用増感色素に必要な機能としては、色素が広い吸収領域を有して太陽光の発光を効率的に吸収できることや、酸化チタン等の無機半導体に効率よく電荷を注入できることが挙げられる。
一般式(1)の増感色素は、Ar1、Ar2フェニレン基であり、Xは一般式(3)で表わされる基であるため、これらの部位をもって増感色素の吸収領域を調節し広域化することが可能である。従来の増感色素は、主にシアニン系色素やChem.commun.第252−253頁、2003年に記載されているようなポリエン構造を用いて色素の吸収領域を広域化している。この手法を用いた場合、ポリエン構造は活性酸素による酸化を受けやすかったり、光劣化を起こしやすい。また、熱安定性が低いことも懸念される。一般式(1)の増感色素では、二重結合部位は必ず、アリーレンもしくはヘテロアリーレンで挟まれた構造を有し、ポリエン構造をとることはないためこのような問題を解決することができる。
また、一般式(1)の増感色素は、Z中にカルボン酸基、またはホスホン酸基を含んでいて、酸化チタン等の無機半導体表面へエステル結合等を介して結合することができるため、酸化チタン等の無機半導体への電子注入が効率的に起こる。
また、Zが一般式(2)の構造をとると、第一に、カルボン酸基、またはホスホン酸基と電子吸引性基とが同一炭素上に位置することでこの部位が非常に強いアクセプターとなり、第二にこの強いアクセプターが二重結合を介してXと結合しているため、励起電子が色素骨格のπ共役系を通って酸化チタン等の無機半導体へ非常に効率的に注入される。このような効果はZが一般式(2)の構造をとってはじめて達成できるものである。
ここでいう色素骨格とは、太陽光の発光スペクトルの一部または全体を吸収できるのに十分なだけのπ共役系を有している構造をいう。具体的には、400−1200nm程度の波長領域に吸収を有している構造のことをいう。すなわち、一般式(1)の構造の化合物では、−Ar2=Ar1−X−部位がπ共役系を形成しており、この条件を満たしているため、これを色素骨格と見なすことができる。
さらに、一般式(1)中のYがアルキル基で置換されても良いジフェニルアミノ基である場合、Yはドナー性の有機残基となり、酸性基もしくは酸性基誘導体残基を含む残基Z(アクセプター部位)と色素骨格−X−Ar1=Ar2−を介して結合することにより、分子全体でドナーアクセプター系を構築するため、分子の吸収領域の更なる広域化ができる。このようにドナーとアクセプターが分子の両極に配されている構造では酸化チタン等の無機半導体への電子注入の効率化が達成される。
また、一般式(1)の化学構造の特徴としては、Z−X−Ar1からなるアクセプター部位と、Ar2−Yからなるドナー部位を、R1、R2の結合する二重結合が分割し、かつπ共役系でつなぐ構造をとっている。この構造は、基底状態では電子がドナー側に局在化し、励起状態では電子がアクセプター側に局在化する構造をより取りやすくするため、アクセプターから酸化チタン等の無機半導体への電子注入を非常に効果的に行なうことができる。
すなわち、一般式(1)の構造は、高い光電変換効率と高い安定性を達成しうる構造であることがいえる。
次に、一般式(1)中の各官能基の説明をする。
一般式(1)中のXは、前述のように、一般式(3)である
次に一般式(1)の中のAr1、Ar2は、フェニレン基を表す
次に、一般式(1)中のYは、アルキル基で置換されても良いジフェニルアミノ基を表す。ここで、アルキル基としては、炭素数1〜30の置換基を有しても良い直鎖、分岐及び環状の炭化水素基があげられる。
Yがアルキル基で置換されても良いジフェニルアミノ基である場合、−Ar2−Yは安定性を有したドナーとなり、増感色素の吸収領域を広域化させることができ、かつ、R1、R2の結合する二重結合を介して、Z−X−Ar1部位(アクセプター)とπ共役系を構築することができるからである。色素骨格全体がπ共役系でつながっていることは酸化チタン等の無機半導体へ電子注入を効果的に行なうためには、重要である。また、色素骨格から酸化チタンへの結合部位である酸性の置換基までがすべてπ共役系でつながっていることが特に好ましい。
次に、一般式(1)中のR1、R2について説明する。R1、R2水素原子表す。
次に、一般式(1)の中のZについて説明する。
Zは一般式(2)である。
上記にあげたZは前述のように一般式(2)で表される構造であ
ここで、R3カルボン酸基、またはホスホン酸基を表し、R4シアノ基を表し、R5は水素原を表す。
さて、当該発明の化合物は、二重結合を有するため、シス体、トランス体などの構造異性体を種々とりえるが、特に限定されず、いずれも光電変換用増感色素としては、良好に使用することができる。さらに、置換基等に二重結合を有した場合にも同様のことがいえる。
以下、X−Ar1−、−Ar2−Y示す
表(1)はX−Ar1あるが、Xが非対称の場合、Zと結合する側にZを記載してある。


Figure 0004591667
Figure 0004591667

表(2)は−Ar2−Yの代表例である。
Figure 0004591667



Figure 0004591667
表(3)に本発明の光電変換用増感色素として用いることができる化合物の代表例を示すが、本発明は、なんらこれらに限定されるものではない。


Figure 0004591667
また、一般式(1)で表される化合物は、Zが一般式(2)で表される場合、式(1)に示すような方法で合成することができる。
式(1)
Figure 0004591667
式(1)中、触媒としては、ピペリジン、酢酸アンモニウム等を用いることができるが、特にこれに限定されず、例えば、Organic Reactions Volume15 Chapter2に記載の触媒を使用することができる。
また、式(1)中の溶媒としては、エタノール、テトラヒドロフラン等を用いることができるが、特にこれに限定されず、Organic Reactions Volume15 Chapter2に記載の溶媒を使用することができる。
さらに、反応が進行しにくい場合には、溶媒を用いず反応させることが有効な場合もある。
また、通常、反応温度は室温でかまわないが、必要に応じて加熱して反応させることもできる。
3カルボン酸基、またはホスホン酸基を表すが、カルボン酸基、またはホスホン酸基のエステル誘導体残基等を用いると合成反応が進行しやすい。例えば、酸性基としてカルボン酸を合成したい場合は、そのエステル誘導体残基を最初に合成し、これを適当な条件で加水分解すると所望の化合物が高収率で得られる。

本発明に係る光電変換用増感色素は、上記の本発明に係る光機能材料の1種以上を含むものであるが、一般式(1)等の光機能材料がカバーしきれない領域の太陽光吸収を補うために、1種以上の他の光機能材料を併せて含むことができる。つまり、一般式(1)等で表される増感色素を単独で、または複数種を組み合わせて用いるほか、1種以上の他の増感色素と組み合わせて用いることができる。本発明に係る光電変換用増感色素を他の増感色素と組み合わせる場合の両者の配合比は、特に限定はされないが、本発明にかかる光電変換用増感色素1モルに対し、他の増感色素を0.01〜100モルとすることが好ましく、0.1〜10モルとすることがより好ましい。
他の増感色素としては、たとえば、アゾ系色素、キナクリドン系色素、ジケトピロロピロール系色素、スクワリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、クロロフィル系色素、ルテニウム錯体系色素、インジゴ系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、およびそれらの誘導体が挙げられる。
これらの増感色素は、その構造中に、無機半導体表面に連結することができるような官能基を有していることが望ましい。その理由としては、光励起された色素の励起電子を無機半導体の伝導帯に迅速に伝えることができることが挙げられる。ここでいう官能基としては、カルボキシル基、ヒドロキシ基、ヒドロキサム酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、および、ボロン酸基等が挙げられるが、無機半導体表面に増感色素を連結し、色素の励起電子を無機半導体の伝導帯に迅速に伝える役割を有する置換基であれば、これらに限定はされない。
以下に、上述の本発明に係る光電変換用増感色素を用いて得られる本発明に係る光電変換材料、光電変換電極、および光電変換セルについて、増感色素以外の材料を含めて説明する。
1.光電変換材料
上述の光電変換用増感色素を、連結基を介して無機半導体表面に連結することによって、無機半導体が増感された光電変換材料、すなわち、無機半導体と、この無機半導体に連結された増感色素とを含む光電変換材料が得られる。ここで、連結とは、無機半導体と増感色素が化学的あるいは物理的に結合していることを意味し、たとえば両者が吸着により結合していることも含んでいる。また、本明細書では、連結基、アンカー基、吸着基は、いずれも、同等の機能を有する基を表す語として用いられている。
(無機半導体)
無機半導体は一般に、一部の領域の光に対して光電変換機能を有しているが、この表面に増感色素を連結することによって、可視光および/または近赤外光領域までの光電変換が可能となる。無機半導体の材質としては、主に無機酸化物が用いられるが、増感色素を連結することによって光電変換機能を有する無機半導体であれば、これに限らない。
たとえば、無機酸化物ではない無機半導体としては、シリコン、ゲルマニウム、III族‐V族系半導体、金属カルコゲニド等が挙げられる。
無機酸化物半導体としては、酸化チタン、酸化スズ、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化ストロンチウム、酸化タンタル、酸化アンチモン、酸化ランタノイド、酸化イットリウム、酸化バナジウム等を挙げることができるが、表面に増感色素を連結することによって可視光および/または近赤外光領域までの光電変換が可能となるものであれば、これらに限定されない。無機酸化物半導体の表面が増感色素によって増感されるためには、無機酸化物の伝導帯が増感色素の光励起順位から電子を受け取りやすい位置に存在することが望ましい。このため、無機酸化物半導体のなかでも、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ等が特に好ましく用いられる。さらに、価格や環境衛生性等の点からは、酸化チタンが特に好ましく用いられる。
これらの無機半導体は、上述したなかから一種を用いるほか、複数種を選択して組み合わせて用いることもできる。
(無機半導体の多孔質化)
上記の無機半導体は、多孔質化して、無機半導体多孔質体として使用することが好ましい。無機半導体多孔質体は、多量の増感色素をその表面に連結し、高効率な光電変換能力を有することができるように、多孔質化による広い表面積を有しているからである。多孔質化の方法としては、粒子径が数ナノメートルから数十ナノメートルの、酸化チタン等の無機酸化物粒子をペースト化した後に焼結する方法が広く知られているが、多孔質化して広い表面積が得られる方法であればこれに限られない。
無機酸化物粒子のペースト化方法、無機半導体多孔質体の好ましい膜厚および無機半導体多孔質体表面への増感色素の連結方法等については、後述する。
2.光電変換電極
上記光電変換材料を透明電極上に積層することによって、光電変換電極、すなわち、透明電極とこの透明電極上に積層された光電変換材料を含む光電変換電極が形成される。透明電極は、通常、透明基材の表面に形成される導電層であり、つまり、導電性表面を有する透明基材の導電面を意味する。
(導電性表面)
用いられる導電性表面(透明電極)としては、太陽光の可視から近赤外領域に対して光吸収が少ない導電材料なら特に限定されないが、ITO(インジウム−スズ酸化物)、酸化スズ(フッ素等がドープされたものを含む)、酸化亜鉛等の導電性の良好な金属酸化物が好適である。基板(導電性表面を有する透明基材)のシート抵抗(表面抵抗)はできるだけ低いほうが好ましく、具体的には20Ω/□(Ω/sq.)以下であることが好ましいので、導電層はそれに応じた厚みを有していることが好ましい。
(透明基材)
用いられる透明基材としては、太陽光の可視から近赤外領域に対して光吸収が少ない材料であれば特に限定されない。石英、並ガラス、BK7、鉛ガラス等のガラス基材;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラート、ポリプロピレン、テトラアセチルセルロース、シンジオクタチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステルスルフォン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ、塩化ビニル等の樹脂基材等を用いることができる。
(積層方法)
導電性表面を有する透明基材の導電面に光電変換材料を積層する方法としては、たとえば、導電面にペースト化した無機酸化物粒子を塗布後、乾燥または焼結させて無機酸化物半導体多孔質体を形成し、これを透明基材ごと、増感色素を溶解させた溶液中に浸すことにより、無機酸化物半導体の多孔質表面と増感色素のアンカー基の親和性を利用して、増感色素をその多孔質表面に結合させる方法が、一般的方法として挙げられるが、この方法に限定されることはない。
無機酸化物粒子をペースト化させるには、無機酸化物粒子を水または適当な有機溶剤中に分散させればよい。均質で表面積が大きい無機多孔質体として積層させるには、分散性の良いペーストを調製することが大切なので、必要に応じて、硝酸やアセチルアセトン等の酸やポリエチレングリコール、トリトンX−100等の分散剤をペースト成分に混合し、ペイントシェーカー等を用いてペースト化することが好ましい。
ペーストを透明基材の導電面に塗布する方法としては、スピンコーターによる塗布方法やスクリーン印刷法、スキージを用いた塗布方法、ディップ法、吹き付け法、ローラー法等が用いられる。塗布された無機酸化物ペーストは、乾燥または焼成によりペースト中の揮発成分が除去されて、透明基材の導電面上に、無機酸化物半導体多孔質体を形成する。乾燥または焼成の条件としては、たとえば400〜500℃の温度で30分〜1時間程度の熱エネルギーを与える方法が一般的であるが、透明基材の導電面に密着性を有し、太陽光照射時に良好な起電力が得られる乾燥または焼成方法である限り、これに限定されることはない。
増感色素を溶解させた溶液を作るためには、溶剤として、エタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶剤;クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;炭酸ジエチル、炭酸プロピレン等の炭酸エステル系溶剤;ヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3‐ジメチルイミダゾリノン、Nメチルピロリドン、水等を用いることができるが、これらに限られない。溶液の濃度は、特に限定はされないが、0.01〜10mmol/L程度であることが好ましい。
増感色素を溶解させた溶液中への無機半導体多孔質体の浸漬条件は、特に限定はされず、望ましい光電変換効率が得られるように適宜設定すればよいが、一般に、1〜60時間程度、室温〜80℃程度であることが好ましい。
透明基材の導電面上に形成される無機半導体多孔質体の膜厚は、0.5〜200μm程度であることが望ましい。膜厚がこの範囲未満であると、有効な変換効率が得られない恐れがある。一方、膜厚がこの範囲より厚い場合は、成膜時に割れや剥がれが生じるなど、膜の作成が困難になるとともに、無機半導体多孔質体表層と導電面との距離が長くなるために発生電荷が導電面に有効に伝えられなくなって、良好な変換効率が得られにくくなる恐れがある。
3.光電変換セル
以上のようにして得られる光電変換電極を、電解質層を介して導電性対極を組み合わせることによって光電変換セル、すなわち、光電変換電極と、電解質層と、導電性対極とを含む光電変換セルを形成することができる。
(電解質層)
電解質層は、電解質、媒体、および添加物を含んで構成されることが好ましい。ここで、電解質としては、I2とヨウ化物(例としてLiI、NaI、KI、CsI、MgI2、CaI2、CuI、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等)の混合物、Br2と臭化物(例としてLiBr等)の混合物、有機溶融塩化合物等を用いることができるが、この限りではない。ここでいう有機溶融塩化合物とは、有機カチオンと無機または有機アニオンからなるイオン対化合物であって、融点が室温以下であるものを指す。
具体的に有機溶融塩化合物を構成する有機カチオンとしては、芳香族系カチオン類として、たとえば、N−メチル−N’−エチルイミダゾリウムカチオン、N−メチル−N’−n−プロピルイミダゾリウムカチオン、N−メチル−N’−n−ヘキシルイミダゾリウムカチオン等のN−アルキル−N’−アルキルイミダゾリウムカチオン類;N−ヘキシルピリジニウムカチオン、N−ブチルピリジニウムカチオン等のN−アルキルピリジニウムカチオン類が挙げられる。脂肪族カチオン類として、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムカチオン等の脂肪族系カチオン類、N,N−メチルピロリジニウム等の環状脂肪族カチオン類が挙げられる。
有機溶融塩化合物を構成する無機または有機アニオンとしては、たとえば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、六フッ化リンイオン、四フッ化ホウ素イオン、三フッ化メタンスルホン酸塩、過塩素酸イオン、次塩素酸イオン、塩素酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等の無機アニオン類;ビス(トリフロロメチルスルホニル)イミド等のアミド、イミド系アニオン類が挙げられる。
有機溶融塩のその他の例としては、Inorganic Chemistry、35巻、1168〜1178頁、1996年に記載のものが挙げられる。
以上に挙げたヨウ化物、臭化物等は、単独で、または複数種を組み合わせて用いることができる。なかでも、I2とヨウ化物の組み合わせ、たとえばI2とLiI、ピリジニウムヨーダイド、またはイミダゾリウムヨーダイド等を混合した電解質が好ましく用いられるが、これらに限定されることはない。
好ましい電解質濃度は、媒体中にI2が0.01〜0.5Mであり、ヨウ化物および/または臭化物等(複数種の場合はそれらの混合物)が0.1〜15M以下である。
電解質層に用いられる媒体は、良好なイオン伝導性を発現できる化合物であることが望ましい。液状の媒体としては、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物;エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテルなどの鎖状エーテル類;メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類;アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物;3−メチル−2−オキサゾリジノンなどの複素環化合物;ジメチルスルホキシド、スルホランなど非プロトン極性物質、水などを用いることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて用いられる。
固体状(ゲル状を含む)の媒体を用いる目的で、液状媒体にポリマーを含ませることもできる。この場合、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン等のポリマーを上記液状媒体中に添加したり、エチレン性不飽和基を有した多官能性モノマーを上記液状媒体中で重合させたりして、媒体を固体状にすることができる。
電解質層としてはこの他、CuI、CuSCN(これらの化合物は液状媒体を必要としないp型半導体であり電解質として作用する。)等やNature、395巻、583〜585頁(1998年10月8日)(その開示内容は引用によりここに援用される。)記載の2,2',7,7'‐テトラキス(N, N‐ジ‐p‐メトキシフェニルアミン)‐9,9'‐スピロビフルオレンのような正孔輸送材料を用いることができる。
電解質層には、光電変換セルの耐久性や電気的出力を向上させることを目的として各種添加物を加えることもできる。たとえば、耐久性向上を目的としてヨウ化マグネシウム等の無機塩類を添加してもよいし、出力向上を目的としてt-ブチルピリジン、2-ピコリン、2,6-ルチジン等のアミン類;デオキシコール酸等のステロイド類;グルコース、グルコサミン、グルクロン酸等の単糖類およびそれらの糖アルコール類;マルトース等の二糖類;ラフィノース等の直鎖状オリゴ糖類;シクロデキストリン等の環状オリゴ糖類;ラクトオリゴ糖等の加水分解オリゴ糖類、を添加することもできる。
これら添加剤と上述の増感色素を併用することで、本発明の効果をより効果的に引き出すことができる。
形成される電解質層の厚みは、特に限定されないが、導電性対極と色素の吸着した無機半導体層とが直接接触しないような最小の厚みとすることが好ましい。具体的には、0.1〜100μm程度であることが好ましい。
(導電性対極)
導電性対極は、光電変換セルの正極として機能するものである。対極に用いられる導電性の材料としては、金属(白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、金属酸化物(ITO(インジウム‐スズ酸化物)、酸化スズ(フッ素等がドープされた物を含む)、酸化亜鉛等)、または炭素等が挙げられる。対極の膜厚は、特に制限はないが、5nm以上10μm以下であることが好ましい。
(組み立て方)
上記光電変換電極と導電性対極を、電解質層を介して組み合わせることによって、光電変換セルを形成する。必要に応じて、電解質層の漏れや揮発を防ぐために、光電変換セルの周囲に封止を行う。封止には、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、ガラスフリット等を封止材料として用いることができる。光電変換セルは、必要に応じて、小面積の光電変換セルを連結させて作ることができる。たとえば、光電変換セルを直列に組み合わせることによって、起電圧を高くすることができる。
以下に実施例を具体的に示すが本発明は以下に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、数字は重量基準を表す。
はじめに、実施例に先立って本発明の光電変換用増感色素の合成例を述べる。
合成例1 化合物(4)の合成方法
4−ブロモベンシルブロミド25.0g(100mmol)と亜リン酸トリエチル19.9g(120mmol)を乾燥窒素下で100℃加熱攪拌した。約4時間の反応後、容器を減圧してさらに120℃で1時間攪拌し、未反応の亜リン酸トリエチルを除くと30.6g(収率100%)で(4−ブロモベンジル)−ホスホン酸ジエチルが得られた。次に得られた(4−ブロモベンジル)−ホスホン酸ジエチルを12.3g(40mmol)と4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド10.9g(40mmol)、dryDMF150mlを300mlフラスコにいれ、窒素気流下で溶解攪拌した。ここにt-ブトキシカリウム9.0g(80mmol)のDMF(100ml)懸濁液をゆっくりと滴下した。その後終夜で攪拌して、反応液に水をゆっくり滴下した。析出した結晶を濾過乾燥すると16.0gの{4−[2−(4−ブロモ−フェニル)−ビニル]−フェニル}−ジフェニルアミンが得られた(収率94%)。得られた{4−[2−(4−ブロモ−フェニル)−ビニル]−フェニル}−ジフェニルアミン、9.0g(21mmol)とdryTHF50mlを入れ窒素気流下でice−salt浴にて冷却した。(−15℃)ここにn−BuLiのペンタン溶液(2.59M)を9.4mlゆっくりと滴下し、そのまま1時間攪拌した。ここにTHFに溶解したN−ホルミルピペリジン2.75g(24mmol)を滴下した。反応液をゆっくりと室温に戻し、さらに2時間攪拌したのち、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え攪拌した後、トルエン50ml×2抽出した。飽和食塩水と水でよく洗い、有機層をMgSO4で乾燥後、溶媒をエバポレートし、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(溶離液トルエン)し、4−[2−(4−ジフェニルアミノ−フェニル)−ビニル]−ベンズアルデヒドを3.2g(収率40%)得た。得られた4−[2−(4−ジフェニルアミノ−フェニル)−ビニル]−ベンズアルデヒド1.0g(2.7mmol)とシアノ酢酸エチル0.3g(2.7mmol)をTHF10mlに溶解し、ピペリジン5滴を加えて2時間攪拌した。析出した固体をろ別し、アルコールで洗浄すると、2−シアノ−3−{4−[2−(4−ジフェニルアミノ−p−フェニル)−ビニル]−フェニル}−アクリル酸エチル1.2g(収率99%)が得られた。得られた2−シアノ−3−{4−[2−(4−ジフェニルアミノ−p−フェニル)−ビニル]−フェニル}−アクリル酸エチル0.9gをTHFと水酸化ナトリウム水溶液で処理して加水分解すると、2−シアノ−3−{4−[2−(4−ジフェニルアミノ−p−フェニル)−ビニル]−フェニル}−アクリル酸{化合物(4)}が0.8g(収率93%)得られた。マススペクトル、NMRスペクトル、IRスペクトル、元素分析により、化合物(4)の構造を確認した。
合成例2 化合物(21)の合成方法
合成例1で得られた{4−[2‐(4−ブロモ−フェニル)−ビニル]−フェニル}−ジフェニルアミンを5.4g(12.5mmol)と2−チオフェンボロン酸2.4g(18.8mmol)フッ化カリウム2.4g(41mmol)、トリス−ジベンジリデンアセトンパラジウム70mg、トリス−t−ブチルホスフィン80mgをdryTHF100mlに溶解し、窒素気流下、室温にて3時間攪拌した。反応液にトルエン100mlを加えて攪拌後、不溶物をろ過し、濾液をエバポレートする。得られた固体をアルコール/トルエンにて再結晶すると、ジフェニル−[4−[2−[4−チオフェン−2−イル−フェニル]−ビニル]−フェニル]−アミン4.6g(収率85%)が得られた。次に得られたジフェニル−[4−[2−[4−チオフェン−2−イル−フェニル]−ビニル]−フェニル]−アミン1.6g(3.7mmol)をdryTHF40mlに溶解し、窒素気流下で−78℃に冷却し、ここにn−BuLiのペンタン溶液(1.6M)を2.4mlゆっくりと滴下した。そのまま1時間攪拌後、ジメチルホルムアミド0.8gを滴下し、攪拌1時間を行なった。反応液をゆっくりと室温に戻し、さらに2時間攪拌したのち、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え攪拌した後、トルエン50ml×2抽出した。飽和食塩水と水でよく洗い、有機層をMgSO4で乾燥後、溶媒をエバポレートし、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(溶離液トルエン)し、5−[4−[2−[4−ジフェニルアミノフェニル−フェニル]−ビニル]−フェニル]−チオフェン−2−カルボアルデヒド1.6g(収率94%)が得られた。得られた5−[4−[2−[4−ジフェニルアミノフェニル−フェニル]−ビニル]−フェニル]−チオフェン−2−カルボアルデヒドを合成例1と同様の反応(シアノ酢酸エチルとの縮合及び加水分解)を行い、化合物(21)を得た。マススペクトル、NMRスペクトル、IRスペクトル、元素分析により、化合物(21)の構造を確認した。
合成例3 化合物(37)の合成方法
合成例1で得られた4−[2−(4−ジフェニルアミノ−フェニル)−ビニル]−ベンズアルデヒドにシアノ酢酸エチルの代わりにシアノメチルホスホン酸ジエチルを反応させた以外は合成例1と同様の反応を行い、化合物(37)を全収率15%で得た。マススペクトル、NMRスペクトル、IRスペクトル、元素分析により、化合物(37)の構造を確認した。
次に、光電変換用増感色素の評価方法として、増感色素を用いて光電変換セルを組み立て、光電変換セルの変換効率を測定する方法について、光電変換セルの試験サンプルを表した図1を参照しつつ説明する。
透明電極
フッ素ドープ型酸化スズ層(透明電極層)付ガラス基板3(旭ガラス社製、タイプU−TCO)を使用した。
導電性対極
フッ素ドープ型酸化スズ層付ガラス基板3(旭ガラス社製、タイプU−TCO)の導電層上に、スパッタリング法により白金層(白金電極層)(厚み150nm)を積層した導電性対極4を用いた。
酸化チタンペーストの調製
下記の処方でジルコニアビーズと混合し、ペイントシェーカーを用いて分散して酸化チタンペーストを得た(「部」は重量部をあらわす)。
酸化チタン(日本アエロジル社製 P25 粒子径 21nm) 6 部
水(硝酸添加でpH2に調整) 14 部
アセチルアセトン 0.6 部
界面活性剤(ICN社製 Triton X−100) 0.04 部
PEG‐#500,000 0.3 部
酸化チタン多孔質層の作成
透明電極の導電面(透明電極層3)に厚さ60μmのメンディングテープを張り、1cm角のテープを除去することでマスクを作り、空いた部分に上記酸化チタンペーストを数滴たらした後に、スキージで余分なペーストを除去した。風乾後、全てのマスクを除去し、450℃のオーブンで1時間焼成して、有効面積1cm2の酸化チタン多孔質層を有する酸化チタン電極を得た。
増感色素の吸着
光電変換用増感色素をテトラヒドロフラン:アセトニトリル=1:1(体積比)に溶解(濃度0.6mmol/L)し、メンブランフィルターで不溶分を除去し、この色素溶液に上記酸化チタン電極を浸し、室温で24時間放置した。浸漬時間は、実際にセルを作成して変換効率を求め、その変換効率が最大となるように設定した。
着色した電極表面を、溶解に使用した溶剤およびアルコールで洗浄した後、4‐t‐ブチルピリジンの2mol%アルコール溶液に30分浸した後、乾燥させて、増感色素の吸着した酸化チタン多孔質層1を有する光電変換電極を得た。
電解質溶液の調製
下記処方の電解質溶液を調製した。溶媒にはメトキシアセトニトリルを用いた。
LiI 0.1M
2 0.05M
4‐t‐ブチルピリジン 0.5M
1‐プロピル‐2,3‐ジメチルイミダゾリウムヨージド 0.6M
光電変換セルの組み立て
図1に示すように、光電変換セルの試験サンプルを組み立てた。すなわち、上記のようにして光電変換用増感色素を吸着させた酸化チタン多孔質層1が形成された上記透明電極(フッ素ドープ型酸化スズ層付ガラス基板3)と、フッ素ドープ型酸化スズ層付ガラス基板の導電層上に白金層が積層された導電性対極4とを、樹脂フィルム製スペーサー6(三井・デュポンポリケミカル社製「ハイミラン」フィルム(25μm厚))を挟んで固定し、その空隙に上記電解質溶液を注入して電解質溶液層2を形成した。ガラス基板3及び白金対極層には、それぞれ変換効率測定用の導線7を固定した。
変換効率の測定方法
ORIEL社製ソーラーシュミレーター(#8116)をエアマスフィルターと組み合わせ、光量計で100mW/cm2 の光量に調整して測定用光源とし、光電変換セルの試験サンプルに光照射をしながら、KEITHLEY MODEL2400ソースメーターを使用してI‐Vカーブ特性を測定した。変換効率ηは、I‐Vカーブ特性測定から得られたVoc(開放電圧値)、Isc(短絡電流値)、ff(フィルファクター値)を用いて下記式により算出した。
Figure 0004591667
実施例1−7 比較例1‐2
表3、表4に記載の化合物(4、21、22、37、40)、及び、Ru色素(A)、WO 02/11213号パンフレットに記載の化合物(B)を増感色素として用い、セルを組み立て評価を行なった。また、作成セルをエポキシ樹脂型接着剤にて封止して寿命測定を行った。
Figure 0004591667
Figure 0004591667
得られた結果を表5にまとめた。
Figure 0004591667
a)光電変換電極を作成し、これを蛍光灯下3000luxの条件で24時間照射した後、セルを組み立て、変換効率を測定し、光暴露保存安定性を調べた。
b)光暴露を行なわない光電変換電極をエポキシ樹脂で封止して、100時間擬似太陽光を照射した場合の光電変換効率。
図1は、光電変換セル試験サンプルを表す。
符号の説明
1.酸化チタン多孔質層(光電変換用増感色素が吸着済)
2.電解質溶液層
3.透明電極層(フッ素ドープ型酸化スズ)
4.Pt電極層
5.ガラス基盤
6.樹脂フィルム製スペーサー
7.変換効率測定用導線

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)で示される光電変換用増感色素
    一般式(1)
    Figure 0004591667


    (式中、Ar1、Ar2フェニレン基を表し、
    Xは下記一般式(3)である
    Yはアルキル基で置換されても良いジフェニルアミノ基を表す。
    Zは下記一般式(2)である
    1、R2 水素原子表す
    また、R2と−Ar2−Yの位置はいれかわっても良い。)
    一般式(3)
    Figure 0004591667


    (式中、nは0〜3の整数である。)
    一般式(2)
    Figure 0004591667


    (式中、R 3 は、カルボン酸基、またはホスホン酸基を表し、R 4 はシアノ基を表し、R 5 は水素原子を表す。また、R 3 とR 4 の位置はいれかわっても良い。)
  2. 請求項記載の増感色素と、無機半導体多孔質体とを連結させてなる光電変換材料。
  3. 請求項記載の光電変換材料を透明電極に積層させてなる光電変換電極。
  4. 請求項記載の光電変換電極、電解質層、および導電性対極を含んでなる光電変換セル。
JP2004235051A 2003-08-27 2004-08-12 光機能材料 Expired - Fee Related JP4591667B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004235051A JP4591667B2 (ja) 2003-08-27 2004-08-12 光機能材料

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003302361 2003-08-27
JP2004235051A JP4591667B2 (ja) 2003-08-27 2004-08-12 光機能材料

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005097561A JP2005097561A (ja) 2005-04-14
JP4591667B2 true JP4591667B2 (ja) 2010-12-01

Family

ID=34467197

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004235051A Expired - Fee Related JP4591667B2 (ja) 2003-08-27 2004-08-12 光機能材料

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4591667B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104538475A (zh) * 2012-06-11 2015-04-22 合肥工业大学 一种储能光电cigs太阳能电池的制备方法

Families Citing this family (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006120939A1 (ja) 2005-05-13 2006-11-16 Agc Seimi Chemical Co., Ltd. 新規アミノ基含有複素環誘導体および該複素環誘導体を含有する光電変換用増感色素
GB2432717A (en) 2005-11-25 2007-05-30 Seiko Epson Corp Metal oxide electrochemical cell
GB2432719A (en) 2005-11-25 2007-05-30 Seiko Epson Corp Electrochemical cell using metal oxide dispersion
JP5280853B2 (ja) * 2006-11-07 2013-09-04 Agcセイミケミカル株式会社 新規アミノ基含有芳香族化合物および該芳香族化合物を含有する光電変換用増感色素
JP5167636B2 (ja) * 2006-12-21 2013-03-21 セイコーエプソン株式会社 光電変換素子および電子機器
CN101735638A (zh) * 2008-11-25 2010-06-16 乐金显示有限公司 用于染料敏化太阳能电池的染料以及包括其的太阳能电池
JP2013535086A (ja) * 2010-06-29 2013-09-09 ディエナモ アクティエボラーグ 高効率色素増感太陽電池
JP5740984B2 (ja) * 2010-07-09 2015-07-01 東洋インキScホールディングス株式会社 光機能材料
JP2012174348A (ja) * 2011-02-17 2012-09-10 Nissan Chem Ind Ltd 色素増感太陽電池用色素及び色素増感太陽電池
CN102212274A (zh) * 2011-04-11 2011-10-12 天津理工大学 一种三苯胺-苯基类有机染料及其应用
JP7476544B2 (ja) * 2020-01-30 2024-05-01 日本ゼオン株式会社 色素増感型太陽電池用色素液および色素増感型太陽電池用光電極の製造方法

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CH674596A5 (ja) * 1988-02-12 1990-06-15 Sulzer Ag
CA2417502C (en) * 2000-07-27 2012-01-10 Nippon Kayaku Kabushiki Kaisha Dye-sensitized photoelectric conversion device
JP5142307B2 (ja) * 2000-11-28 2013-02-13 独立行政法人産業技術総合研究所 有機色素を光増感剤とする半導体薄膜電極、光電変換素子

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104538475A (zh) * 2012-06-11 2015-04-22 合肥工业大学 一种储能光电cigs太阳能电池的制备方法
CN104538475B (zh) * 2012-06-11 2016-06-29 合肥工业大学 一种储能光电cigs太阳能电池的制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005097561A (ja) 2005-04-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN102138249B (zh) 光电器件
JP4341621B2 (ja) 光機能材料
JP5925541B2 (ja) 光電変換素子用金属錯体色素、光電変換素子、色素増感太陽電池、色素増感太陽電池用色素吸着組成液、色素増感太陽電池用半導体電極および色素増感太陽電池の製造方法
JP2007246885A (ja) 光機能材料
JP4423857B2 (ja) 光機能材料
WO2012060346A1 (ja) 光電気素子、光電気素子の製造方法、及び光増感剤
JP4591667B2 (ja) 光機能材料
JP4442105B2 (ja) 光機能材料
JP5630156B2 (ja) インダノン誘導体とその色素増感型太陽電池用色材としての利用
JP2008174734A (ja) 化合物、光電変換素子及び光電気化学電池
JP2003157914A (ja) 光電変換素子、光電変換素子の製造方法、及び光電池
JP4111360B2 (ja) ゲル電解質、光電気化学電池用ゲル電解質および光電気化学電池
JP2008226505A (ja) フェナントロチオフェン系化合物、および、その用途、ならびに製造方法
JP2014172835A (ja) 光機能材料及び光電変換用増感色素
JP2011026389A (ja) 光機能材料
JP5740984B2 (ja) 光機能材料
JP2011001474A (ja) 光機能材料
JP2012131906A (ja) 色素および色素増感太陽電池
JP2012077268A (ja) 光電変換素子及び光電変換素子用色素、並びに、化合物
JP2004292743A (ja) 光機能材料
JP2007131767A (ja) 光機能材料
JP2005264025A (ja) 光機能材料
KR101135475B1 (ko) 광전 변환 소자용 전해질 조성물 및 이를 사용하여 제조된 광전 변환 소자
JP2007084684A (ja) 光機能材料
JP2006169272A (ja) 光機能材料

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070607

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100518

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100716

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100818

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100831

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130924

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4591667

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130924

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees