実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置を適用した内燃機関の構成を示す構成図である。図1に於いて、エアクリーナ102は、内燃機関101の吸気管103に設けられ、内燃機関101が吸入する空気を清浄化する。吸気管103に設けられたスロットルバルブ104は、内燃機関101が吸入する空気量を調整する。吸気圧センサ105は、吸気管103内の圧力を検出する。インジェクタ106は、吸気管103に設けられ内燃機関101に吸入する空気に燃料を噴射して混合気を形成する。
排気管107に設置された触媒110は、内燃機関101から排出される排気ガス中に含まれる有害成分であるHC、及びCOを、酸化反応により無害な水(H2O)、二酸化炭素(CO2)に変換し、更に、内燃機関101から排出される排気ガス中に含まれる有害成分であるNOxを、還元反応により無害な窒素(N2)に変換する。触媒110は、吸蔵していた酸素を前述の酸化反応により放出し、又、前述の還元反応により酸素を吸蔵する。
触媒110の上流側で排気管107に設けられた上流側空燃比センサ108は、触媒110の上流側の排気ガスの空燃比を検出する。触媒110の下流側で排気管107に設けられた下流側空燃比センサ109は、触媒110の下流側の排気ガスの空燃比を検出する。
内燃機関101には、内燃機関101が吸入した混合気に火花放電により点火する点火プラグ112が設けられ、この点火プラグ112は、点火コイル111から点火用高電圧が供給されて火花放電を発生する。カム角センサ113は、内燃機関101のカム軸の回転角度を検出する。内燃機関101のカム軸と同期して回転するカム角センサプレート114は、その周面がカム角センサ113に空隙を介して対向しており、周面に形成された突起又は溝がカム角センサ113に近接するとその位置を示す信号をカム角センサから発生させる。
クランク角センサ115は、内燃機関101のクランク軸の位置を検出しその位置を示す信号を発生する。内燃機関101のクランク軸と同期して回転するクランク角センサプレート106は、その周面がクランク角センサ115に空隙を介して対向しており、周面に形成された突起又は溝がクランク角センサ115に近接するとその位置を示す信号をクランク角センサ115から発生させる。ウォータジャケット117は、内部に冷却水が満たされており内燃機関101を冷却する。冷却水の温度を検出する水温センサ118は、ウォータジャケット117内の冷却水の温度を検出する。ECU119は、前述の各種センサからの信号情報に基づいて、各種アクチュエータを駆動し、内燃機関101の運転を制御する。又、ECU119は、図2に示すこの発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置の主要部を構成している。
図2は、この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置の概念構成を示す概念構成図である。図2に於いて、触媒酸素吸蔵量初期化手段1201は、前述の触媒110の触媒劣化診断開始時に触媒酸素吸蔵量を初期化する触媒酸素吸蔵量初期化手段であり、ECU119により構成されている。吸入空気量算出手段1202は、前述の吸気圧センサ105及び吸気温センサ(図示せず)等からの情報に基づいて吸入空気量を算出するもので、ECU119により構成されている。尚、エアフローセンサを備える内燃機関の制御装置に於いては、エアフローセンサが吸入空気量を検出空気量として出力する。
上流空燃比センサ1203は、前述の図1に示す上流側空燃比センサ108である。下流空燃比センサ1204は、前述の図1に示す下流側空燃比センサ109である。触媒酸素吸蔵量算出手段1205は、触媒110内の酸素吸蔵量を算出するもので、ECU119により構成されている。空燃比振幅手段1206は、触媒劣化診断時に中心空燃比を中心として目標空燃比を振動させるための空燃比振幅手段であり、ECU119により構成されている。触媒劣化診断手段1207は、触媒110の劣化状態を診断する触媒劣化診断手段であり、ECU119により構成されている。
以上のように構成されたこの発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置は、燃料噴射制御を行う場合に於いて、触媒110の浄化性能を維持するために、内燃機関の冷機時、高負荷時、高回転時等の一部の運転条件を除き、空燃比(以下、A/Fと称する)をほぼ理論空燃比に維持する制御を行う。上流側空燃比センサ108(図2では1203、以下同様)は、リニア型空燃比センサであり、排気ガス中の残存酸素量に応じたA/Fが、概略「8」〜「23」の間で検出することが可能である。ECU119は、目標A/Fをほぼ理論空燃比に設定し、上流側空燃比センサ108(1203)の出力値である検出A/Fを、目標A/Fに維持するように燃料噴射量を調整する。
触媒110の浄化性能は、触媒酸素吸蔵量(以下、OSCと称する)と相関があり、触媒110の劣化度合いが進行するほど実OSCが低下する傾向にある。触媒劣化診断実施時には、正常であると診断するべき触媒劣化度合いの下限実OSCの範囲内で目標A/Fを振幅制御して、下流側空燃比センサ109(図2では1204、以下同様)の検出値を上流側空燃比センサ108(1203)の検出値と比較することで触媒110の劣化を検出する。
即ち、触媒110が正常であれば、目標A/Fの振幅制御のリーン側では触媒110が吸蔵できる酸素量の範囲内でA/Fが制御されるので、触媒110の下流に酸素が流出することがなく、下流側空燃比センサ109(1204)の検出値はリーン側には振れず、NOxは触媒110内で還元作用により無害化されるので有害ガスが触媒110の下流に流出されることはない。逆に、目標A/Fの振幅制御のリッチ側では触媒110が吸蔵している酸素量を全て使い果たすには至らないので、下流側空燃比センサ109(1204)の検出値はリッチ側に振れることはなく、CO、HCは触媒110内で酸化作用により無害化されるので有害ガスが触媒下流に流出することはない。
触媒110が劣化していれば、目標A/Fの振幅制御のリーン側では触媒が吸蔵できる酸素量を越えてA/Fが制御されるので、触媒110の下流に酸素が流出し、下流側空燃比センサ109(1204)の検出値はリーン側に振れる。逆に、目標A/Fの振幅制御のリッチ側では触媒が吸蔵している酸素量を全て使い果たすので、下流側空燃比センサの検出値はリッチ側に振れる。
このように、正常な触媒の実OSCは、正常であると診断すべき触媒劣化度合いの下限実OSC量、即ち触媒劣化診断時の目標A/Fの振幅狙い値、よりも多いので下流側空燃比センサ109(1204)の出力値はリーン側に振れない。又、劣化した触媒の実OSCは、正常であると診断すべき触媒劣化度合いの下限実OSC量よりも少ないので下流側空燃比センサ109(1204)の出力値はリーン側に振れることとなり、触媒の劣化検出が可能となる。
次に、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置の動作を具体的に説明する。図3は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於いて目標A/Fの算出と触媒劣化診断に関する処理を示すフローチャートである。この図3に示す処理は、所定時間毎(例えば10ms毎)に実行される。
図3に於いて、ステップ201では、触媒劣化診断運転条件が成立したか否かを判定する。触媒劣化診断運転条件とは、触媒劣化診断を誤診断なく診断可能な条件のことであり、内燃機関101が暖機状態であることを判断する水温条件(水温≧80℃)、触媒110が暖機状態と判断できる車速条件(車速≧50km/h)、内燃機関101が定常運転状態であると判断できるスロットル開度変化条件(スロットル開度変化≦0.1V)等であり、その状態が所定時間(例えば、3秒)継続している状態である。又、触媒劣化診断運転条件には、今回のドライビングサイクル(今回キースイッチONから次回キースイッチONまで)間で一度も触媒劣化診断が完了していないこと、及び通常の目標A/Fの振幅制御に於いてリッチ側の制御が完了したこと、が含まれる。
前述のステップ201にて触媒劣化診断運転条件が不成立と判定された場合には、ステップ203に進み、通常の目標A/F算出処理を実施する。続いてステップ204に進み触媒劣化診断処理を実施し、ステップ205にて触媒劣化診断初期設定処理を実施する。尚、その詳細については後述する。
前述のステップ201に於いて触媒劣化診断運転条件が成立と判定されると、ステップ202に進み、触媒劣化診断条件が成立しているか否かの判定を行う。触媒劣化診断条件は、触媒劣化診断運転条件の成立が継続しており、かつ、ステップ206に於ける診断前の目標A/F制御が完了した時点で成立となる。触媒劣化診断条件が成立してからは、触媒劣化診断運転条件が成立している間は触媒劣化診断条件の成立が継続し、成立期間が予め設定された触媒劣化指標値演算が確実に実施できる期間継続すると不成立となる。触媒劣化指標値演算が確実に実施できる期間が正常に完了すれば、劣化指標値演算は完了したと判断する。前述のステップ202にて触媒劣化診断条件が不成立と判定された場合には、ステップ206に進み、診断前の目標A/F処理を実施する。その詳細については後述する。
ステップ202にて触媒劣化診断条件が成立したと判定されれば、ステップ207に進み、触媒劣化診断用の目標A/F処理を実施し、更にステップ208に進んで算出OSC演算処理を実施し、ステップ209にて触媒劣化指標値演算処理を実施する。その詳細については後述する。
触媒110の実OSCは検出できないので、ECU119内で他のパラメータを用いて算出することとなる。以降の説明に於いて、触媒110の実OSCは実OSC、ECU119内で演算するOSCは算出OSCと表現する。
図4は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於いて通常の目標A/Fを算出する処理を示すフローチャートであり、前述の図3に於けるステップ203の詳細である。図4に於いて、ステップ301では振幅カウンタがゼロ以下か否かを判定する。通常の目標A/F制御では、目標中心A/Fに対し、振幅の加算、減算量を設定し、所定時間毎に[目標A/F=目標中心A/F+加算値]、若しくは[目標A/F=目標中心A/F−減算値]の演算を行い、目標A/Fを算出する。目標A/Fを所定時間毎に振動させることで空燃比センサのばらつき等に対する排ガス悪化を低減できると一般的に言われている。
目標中心A/F、減算値及び加算値、振幅カウンタの初期値(振幅の周期時間)は、排気ガス性能が最良となるように予め設定されている。振幅カウンタは、加算値を加算継続する時間、及び減算値を減算継続する時間をカウントするカウンタであり、一定時間毎に加算、減算を繰り返すように構成される。ステップ301での判定の結果、振幅カウンタがゼロよりも大きければステップ303に進み振幅カウンタをカウントダウンする。ステップ301での判定の結果、振幅カウンタがゼロ以下であれば、ステップ302に進み空燃比フィードバック条件が成立した直後か否かを判定する。
ステップ302にて空燃比フィードバック条件が成立した直後ではないと判定した場合は、ステップ304に進み、今までリッチ側の制御である[目標A/F=目標中心A/F−減算値]としていた場合は、リーン側の制御である[目標A/F=目標中心A/F+加算値]とし、リーン側の制御である[目標A/F=目標中心A/F+加算値]としていた場合は、リッチ側の制御である[目標A/F=目標中心A/F−減算値]として、リッチ、リーンを反転する。次にステップ310にて振幅カウンタにカウントする値を設定する。
ステップ302にて空燃比フィードバック条件が成立した直後であると判定した場合は、ステップ305に進み、リッチ側の制御である[目標A/F=目標中心A/F−減算値]として、ステップ306に進み振幅カウンタにカウントする値を設定する。尚、ステップ305に於いてリッチ側の制御を実施するのは、触媒110の浄化率特性によりリッチ側へ空燃比がオーバーする方が、リーン側にオーバーする場合に比べて有害ガスの浄化率低下が小さく、有害排ガスの大気への排出が抑制できるためである。
通常の目標A/Fで燃料噴射量制御を実施している場合には、算出OSCは使用しないので、ステップ307で算出OSCをゼロにしておく。使用しないためにゼロにしておくのであり、この実施の形態1に於いては、特にゼロにしないことによる弊害はない。次に、ステップ308ではフラグF1をゼロにし、ステップ309でフラグF2をゼロにする。フラグF1は、診断前の目標A/Fの算出時に振幅時間をコントロールするためのフラグであり、フラグF2は、触媒劣化診断用の目標A/Fの初回算出時にリッチ側の制御から開始するようにコントロールするためのフラグである。
図5は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於いて触媒劣化診断前に算出OSCをゼロにするための制御を示すフローチャートであり、前述の図3に於けるステップ206の詳細である。図5に於いて、算出OSCは、触媒110が酸素を全て排出した状態が「0」gで、酸素を吸蔵すると正の値をとるが、この実施の形態1では演算の容易性から、正常と診断すべき触媒劣化度の下限の実OSCの1/2をゼロとして、ゼロを中心にプラス、マイナスの表現で相対的な算出OSCとして取り扱う。
先ず、ステップ401に於いて[目標A/F=目標中心A/F+加算値]としてリーン側の制御とする。ステップ402にてフラグ[F1=0]か否かを判定し、フラグF1がゼロであれば、ステップ403に進み振幅カウンタでカウントする初期値を通常目標A/F制御時の1/2の時間を設定し、ステップ404にてフラグF1に「1」を設定する。次に、ステップ405で振幅カウンタがゼロ以下であるか否かを判定し、ゼロ以下でなければステップ407に進んで振幅カウンタをカウントダウンする。ステップ405で振幅カウンタがゼロ以下であれば、ステップ406に進んで触媒劣化診断条件が成立したとする。ステップ408では算出OSCをゼロに初期化する。
図6は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置の動作を説明する説明図である。図6に於いて、横軸は時間である。又、図に於いて、(a)は触媒劣化診断運転条件、(b)は触媒劣化診断条件、(c)は上流側A/F、(d)はOSC(触媒酸素吸蔵量)、(e)は上流側空燃比センサ108(1203)の出力電圧値(図6には、「フロントO2電圧値」と表示している)、(f)は触媒正常時に於ける下流側空燃比センサ109(1204)の出力電圧値(図6には、「リアO2電圧値」と表示している)、(g)は触媒劣化時に於ける下流側空燃比センサ109(1204)の出力電圧値(図6には、「リアO2電圧値」と表示している)を、夫々示している。
図6に於いて、時点A以前(図に於いてAより左側)が通常の目標A/F制御を行っている状態である。上流側空燃比センサ108(1203)で検出されるフロントA/Fに対する目標A/F(破線で示される)がリーン側からリッチ側に変化する直前に実OSC及び算出OSCが最大になり、上流側空燃比センサ108(1203)で検出されるフロントA/Fの目標A/Fがリッチ側からリーン側に変化する直前に実OSCおよび算出OSCが最小になる。またリッチ側及びリーン側の夫々の中間点で実OSC及び算出OSCがゼロとなる。触媒劣化診断を実施する前に、通常の目標A/Fにより通常の周期の1/2だけリーン側の制御を実施する(図6に示す時点A〜Bの間)ことで、実OSCをゼロにすることができる。
図7は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける触媒劣化診断用の目標A/F算出処理を示すフローチャートであり、前述の図3に於けるステップ207の詳細を示す。図7に於いて、先ず、ステップ501により算出OSCが上限OSC以上であるか否かを判定する。上限OSCは、正常判定すべき劣化度合いの下限の触媒が有する実OSC最大量の1/2の値が設定されている。この値より小さい実OSC量の触媒では、内燃機関の排気ガスにより触媒に流入する酸素が触媒の酸素吸蔵量をオーバーするため、酸素が触媒下流に流出し下流側空燃比センサの出力値に現れるため、触媒が劣化しているとして検出できる。
算出OSCは、図3のステップ208で算出される。その算出方法については後述する。ステップ501にて算出OSCが上限OSC以上であると判定すると、ステップ503に進み、リーン側制御である[目標A/F=劣化診断用目標中心A/F+劣化診断用加算値]からリッチ側制御である[目標A/F=劣化診断用目標中心A/F−劣化診断用減算値]に目標A/Fを変更する。劣化診断用目標中心A/Fは、通常制御時の目標中心A/Fと同じでも良い。劣化診断用加算値は、通常での加算値よりも大きい値に設定する。劣化診断用減算値は、通常時の減算値よりも大きい値(振幅を大きくする)に設定する。これは、通常時は劣化と診断すべき触媒に於いても極力有害排ガスを大気に放出するのを防ぐために、触媒での浄化率を考慮しつつ振幅は小さく設定するべきであるためである。
ステップ501で算出OSCが上限OSC未満であると判定し、ステップ502に進むと、算出OSCが下限OSC以下であるか否かを判定する。ステップ502に於いて算出OSCが下限OSC以下であると判定すると、ステップ504に進みリッチ側制御である[目標A/F=劣化診断用目標中心A/F−劣化診断用減算値]からリーン側制御である[目標A/F=劣化診断用目標中心A/F+劣化診断用加算値]に目標A/Fを変更する。
ステップ502にて算出OSCが下限OSCより大きいと判定すると、ステップ505に進みフラグF2がゼロであるかを判定し、フラグF2がゼロであると判定すると、ステップ506に於いてリッチ側制御である[目標A/F=劣化診断用目標中心A/F−劣化診断用減算値]とし、ステップ507に進んでフラグF2を「1」にする。フラグF2は、触媒劣化診断条件成立直後の最初の触媒劣化診断用の目標A/F算出時には必ずリッチ制御側から実施するようにコントロールするためのフラグである。触媒劣化診断条件が不成立となった場合にはフラグF2はゼロクリア(図4に於けるステップ309)され、触媒劣化診断条件成立直後のリッチ側制御完了後にフラグF2を「1」にセットすることで実現する。次に、ステップ508でフラグF1を「0」にする。
このように、触媒劣化診断用の目標A/Fを算出し、実A/Fを目標A/Fにフィードバック制御することで、算出OSCが上限OSC及び下限OSCの範囲内になるように燃料噴射量をコントロールする。
図8は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける算出OSCの算出処理を示すフローチャートであり、前述の図3に於けるステップ208の詳細である。図8に於いて、ステップ601では上流側空燃比センサ108(1203)で検出したA/F値が劣化診断用目標中心A/Fを最初にリーン側からリッチ側に横切ったか否かを判定する。その判定の結果、検出したA/F値が劣化診断用目標中心A/Fを最初にリーン側からリッチ側に横切った場合は、ステップ602に進み算出OSCを「0」にする。次にステップ603に進む。
ステップ603では、算出OSCを、上流側空燃比センサ108(1203)で検出したA/Fと吸気管圧力センサ105で検出した吸気管圧力値、吸気温センサで検出した吸気温等の情報に基づいて算出した吸入空気量から積算算出する。即ち、[算出OSC=算出OSC+(A/F−中心A/F)/中心A/F×吸入空気量×0.23×0.01]の式に基づいて行なう。中心A/Fは、劣化診断用目標中心A/Fである。前述の図3に於けるステップ206では、上流側空燃比センサ108(1203)で検出したA/Fにより算出OSCをゼロに初期化するため、算出OSCと実OSCを一致した値にすることが可能となる。
ステップ603に於ける算出OSCの算出は、図6に於ける時点Cのポイントで行われる。この算出OSCは、触媒劣化診断条件成立時期間では、図8のステップ603で演算されるので、図6の(d)に示すOSCの実線になるが、それ以外では「0」に設定される(図4のステップ307、図5のステップ408)ため、図6の(d)に示すOSCの一点鎖線になる。
図9は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける触媒劣化診断を実施するための触媒劣化指標値演算の処理を示すスローチャートであり、前述の図3に於けるステップ209の詳細である。図9に於いて、先ず、ステップ701に於いて、上流側空燃比センサ108(1203)の出力値である図6の(c)に示すフロントA/Fを、λO2センサ相当の電圧値、即ち図6の(e)に示すフロントO2電圧値に変換する。下流側空燃比センサ109(1204)はλO2センサであり、下流側空燃比センサ109(1204)の出力値から算出した指標と上流側空燃比センサ108(1203)の出力値から算出した指標との相関性で触媒劣化診断を実施するため、上流側空燃比センサ108(1203)の出力値をλO2センサ相当に変換するのである。
次に、ステップ702では、上流側空燃比センサ108(1203)の出力値から変換したフロントO2電圧値に基づいて、一次フィルタ演算によりフロントO2電圧フィルタ値を算出する。ステップ703では、下流側空燃比センサ109(1204)の出力電圧値に基づいて、一次フィルタ演算によりリアO2電圧フィルタ値を算出する。
次に、ステップ704に於いて、フロントO2電圧フィルタ値が所定値以上か否かを判定する。その所定値は、例えばA/Fが理論空燃比よりもリッチ側であるか、リーン側であるかによりλO2センサ出力値が反転する0.45Vである。ステップ704での判定の結果、フロントO2電圧フィルタ値が所定値以上であれば、ステップ705に進みフロントO2電圧フィルタ値はリッチ出力であると判定する。ステップ704での判定の結果、フロントO2電圧フィルタ値が所定値未満である場合は、ステップ706に進んでフロントO2電圧フィルタ値はリーン出力であると判定する。
ステップ707では、リアO2電圧フィルタ値が所定値以上か否かを判定する。その所定値は、例えばA/Fが理論空燃比よりもリッチ側であるか、リーン側であるかによりλO2センサ出力値が反転する0.45Vである。ステップ707での判定の結果、リアO2電圧フィルタ値が所定値以上であれば、ステップ708に進みリアO2電圧フィルタ値はリッチ出力であると判定する。ステップ707での判定の結果、リアO2電圧フィルタ値が所定値未満である場合は、ステップ709に進み、リアO2電圧フィルタ値はリーン出力であると判定する。
次に、ステップ710に於いて、フロントO2電圧フィルタ値がリーンからリッチに反転したか否かを判定する。ステップ710での判定の結果、フロントO2電圧フィルタ値がリーンからリッチに反転したのであれば、ステップ711に進みフロントO2電圧値の振幅最大値を「0」とする。ステップ710での判定の結果、フロントO2電圧フィルタ値がリーンからリッチに反転したのでなければ、ステップ712に進み、フロントO2電圧値の振幅最大値を更新する。この更新は、ステップ712に[FO2振幅最大値=max(FO2振幅最大値(n-1)、FO2電圧フィルタ値)]と表示しており、FO2振幅最
大値(n-1)とFO2電圧フィルタ値とのうちの大きい方を取る。
次にステップ713に進み、フロントO2電圧フィルタ値がリッチからリーンに反転したか否かを判定する。ステップ713での判定結果が、フロントO2電圧フィルタ値がリッチからリーンに反転したのであれば、ステップ714に進みフロントO2電圧値の振幅最小値を最大値とする。ステップ713での判定結果が、フロントO2電圧フィルタ値がリッチからリーンに反転したのでなければ、ステップ715に進みフロントO2電圧値の振幅最小値を更新する。この更新は、ステップ715に[FO2振幅最小値=min(FO2振幅最小値(n-1)、FO2電圧フィルタ値)]と表示しており、FO2振幅最小値(n-1)とFO2電圧フィルタ値とのうちの小さい方を取る。
次にステップ716に於いて、リアO2電圧フィルタ値がリーンからリッチに反転したか否かを判定する。ステップ716での判定の結果、リアO2電圧フィルタ値がリーンからリッチに反転したのであれば、ステップ717に進み、リアO2電圧値の振幅最大値を「0」とする。ステップ716での判定の結果、リアO2電圧フィルタ値がリーンからリッチに反転したのでなければ、ステップ718に進み、リアO2電圧値の振幅最大値を更新する。この更新は、ステップ718に[RO2振幅最大値=max(RO2振幅最大値(n-1)、RO2電圧フィルタ値)]と表示しており、RO2振幅最大値(n-1)とRO2電圧フィルタ値とのうち大きい方を取る。
ステップ719では、リアO2電圧フィルタ値がリッチからリーンに反転したか否かを判定する。ステップ719での判定の結果、リアO2電圧フィルタ値がリッチからリーンに反転したのであれば、ステップ720に進み、リアO2電圧値の振幅最小値を最大値とする。ステップ719での判定の結果、リアO2電圧フィルタ値がリッチからリーンに反転したのでなければ、ステップ721に進み、リアO2電圧値の振幅最小値を更新する。この更新は、ステップ721に[RO2振幅最小値=min(RO2振幅最小値(n-1)、
RO2電圧フィルタ値)]と表示しており、RO2振幅最小値(n-1)とRO2電圧フィル
タ値とのうちの小さい方を取る。
次に、ステップ722ではフロントO2電圧値の偏差積分値を算出する。この算出は、[FO2電圧偏差積分値=FO2電圧偏差積分値(n-1)+|FO2電圧フィルタ値−FO
2電圧値|]として行なう。ステップ723に進むと、リアO2電圧値の偏差積分値を算出する。この算出は、[RO2電圧偏差積分値=RO2電圧偏差積分値(n-1)+|RO2
電圧フィルタ値−RO2電圧値|]として行なう。
次に、ステップ724に進み、フロントO2電圧値がリッチからリーンもしくはリーンからリッチに反転したか否かを判定し、反転していれば、ステップ725に進みフロントO2電圧値の振幅積算値を算出する。この算出は、[FO2電圧振幅積算値=FO2電圧振幅積算値(n-1)+|FO2振幅最大値−FO2振幅最小値|]として行なう。次にステ
ップ726に進み、リアO2電圧値の振幅積算値を算出する。この算出は、[RO2電圧振幅積算値=RO2電圧振幅積算値(n-1)+|RO2振幅最大値−RO2振幅最小値|]
として行なう。
図10は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける触媒劣化診断を実施する処理を示すフローチャートであり、図3のステップ204の詳細である。図10に於いて、ステップ801では、触媒劣化指標値であるフロントO2電圧値の偏差積分値、リアO2電圧値の偏差積分値、フロントO2電圧値の振幅積算値、リアO2電圧値の振幅積算値の演算が実施され完了しているか否かの判定を行う。前述の図9での処理が正常に完了し、触媒劣化指標値である前述のフロントO2電圧値の偏差積分値、リアO2電圧値の偏差積分値、フロントO2電圧値の振幅積算値、リアO2電圧値の振幅積算値の4つの値が正常に演算されていれば、触媒劣化指標値の演算が完了したと判断される。
ステップ801での判定の結果、前述の4つの触媒劣化指標値の演算が完了していれば、ステップ802に進み、電圧偏差積分比を算出する。この算出は、[電圧偏差積分比=RO2電圧偏差積分値/FO2電圧偏差積分値]として行なう、次に、ステップ803にて振幅積算比を算出する。この算出は、[振幅積算比=RO2電圧振幅積算値/FO2電圧振幅積算値]として行なう。
次にステップ804に進み、触媒劣化診断値を算出する。この算出は、[触媒劣化診断値=電圧偏差積分比×振幅積算比]として行なう。ステップ805では、触媒劣化診断値が判定値である所定値以上であるか否かを判定し、その判定の結果、所定値以上であればステップ807に進んで触媒が劣化しており故障と判定する。ステップ805での判定の結果、所定値未満であれば、ステップ806に進んで、触媒は劣化しておらず正常と判定する。次にステップ808に進んで、触媒劣化診断が完了したとしてこの処理を終了する。
図11は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける触媒劣化診断値の初期値設定のルーチンを示すフローチャートであり、前述の図3のステップ205の詳細である。触媒劣化診断の初期値設定の処理は、図示しないECUの電源投入時に起動される処理でも実施されるが、図3のステップ205での処理、即ち図11に示す処理は、触媒劣化診断指標値演算が最後まで完了せずに途中で中断された場合に於いて、触媒劣化指標値演算を次回やり直すときに正常に演算されるように初期化するものである。
図11に於いて、ステップ901では触媒劣化診断を未完了とする。次に、ステップ902に進み、触媒劣化診断条件を不成立とする。ステップ903でフロントO2電圧値の偏差積分値を「0」にする。次に、ステップ904に於いてリアO2電圧値の偏差積分値を「0」とする。更にステップ905ではフロントO2電圧値の振幅積算値を「0」とする。次にステップ906ではリアO2電圧値の振幅積算値を「0」とする。ステップ907に進むと電圧偏差積分比を「0」とする。更にステップ908で振幅積算比を「0」とし、ステップ909で触媒劣化診断値を「0」とする。以上が、触媒劣化診断値の初期値設定の処理である。
次に、前述の図6を用いて動作を説明する。図6は、前述したように横軸を時間として前述の夫々のフラグ、信号形態を示したものである。図6に於いて、時点A以前(左側)では、触媒劣化診断運転条件が不成立の状態であり、(c)に示すフロントA/Fは、通常目標A/Fの算出処理で算出された目標A/Fに対し、上流側空燃比センサ108(1203)で検出したA/F値が一致するようにフィードバック制御されている。時点Aで触媒劣化診断運転条件が成立すると、診断前の目標A/Fの算出により、通常の目標A/Fの1/2の時間だけ目標A/Fをリーン側に制御する(時点A−B間)。
時点Bで診断前の目標A/F制御が終了すると、時点Bでは触媒劣化診断条件が成立し、触媒劣化診断用の目標A/F算出制御に移行する。時点Cは、触媒劣化診断条件が成立してから最初にフロントA/F値が目標A/Fの中心A/Fをリーン側からリッチ側に横切った時点であり、この時点で算出OSCを「0」にリセットする。時点Dである触媒劣化診断条件が不成立となるまでは、触媒劣化診断用の目標A/FによりA/Fのフィードバック制御を実施する。時点D以降は、通常の目標A/F制御に戻る。
図6の(e)に示すフロントO2電圧値は、前述したように、フロントA/FからλO2センサでの電圧値相当に変換した値である。下流側空燃比センサ109(1204)がλO2センサを使用しており、上流側空燃比センサ108(1203)と下流側空燃比センサ109(1204)の出力値から算出した触媒劣化診断値を比較して触媒劣化診断を行うために、上流側空燃比センサ108(1203)の出力A/FをλO2センサ相当に変換する。
上流側空燃比センサ108(1203)で検出されるA/Fが同じであっても、下流側空燃比センサ109(1204)の出力電圧値は触媒劣化状態によって異なる。触媒110が正常時は、触媒の実OSCが多く、触媒内の酸素量が実OSCの範囲内で増減し、触媒下流への酸素過剰によるO2、NOxの流出、酸素不足によるCO、HCの流出はないため、下流側空燃比センサ109(1204)の出力波形としては振幅が小さい状態となる(図6の(f)に示すリアO2電圧値(触媒正常時))。
触媒110の劣化度合いが進むと、触媒の実OSCが減少し、触媒内の酸素量が実OSCの範囲を越えて増減するため、触媒下流へ酸素過剰によりO2、NOxが流出し、酸素不足によりCO、HCが流出することで、下流側空燃比センサ109(1204)の出力波形の振幅が大きくり、上流側空燃比センサ電圧値と波形が近くなる(図6の(g)に示すリアO2電圧値(触媒劣化時))。
電圧偏差積分比は、上流側空燃比センサ、下流側空燃比センサのそれぞれの出力電圧値(図6の破線)と出力電圧フィルタ値(図6の実線)の差を積分した値(図6のフロントO2電圧値、リアO2電圧値の網掛け部分)の比率であり、触媒が劣化する程、下流側空燃比センサ出力値の振幅は大きくなり上流側空燃比センサ出力値に近くなるため、電圧偏差積分値=RO2電圧偏差積分値/FO2電圧偏差積分値として算出した値は、大きくなる。(図6のリアO2の振幅面積である網掛け部分が、触媒正常時よりも触媒劣化時の方が大きくなっている。)
振幅積算比は、上流側空燃比センサ108(1203)、下流側空燃比センサ109(1204)の夫々の出力電圧フィルタ値(図6の(e)、(f)、(g)の実線)の最大値と最小値の差の積算値の比率であり、触媒110が劣化する程、下流側空燃比センサ109(1204)の出力値の振幅は大きくなり上流側空燃比センサ108(1203)の出力値に近くなるため、[振幅積算値=RO2電圧振幅積算値/FO2電圧振幅積算値]として算出した値は、大きくなる。つまり、図6の(g)に示す触媒劣化時のリアO2電圧値の振幅が、(f)に示す触媒正常時のそれよりも大きくなる。
よって、[触媒劣化診断値=電圧偏差積分比×振幅積算比]として算出される値は、触媒劣化時ほど大きく、この値を予め触媒劣化と診断すべき値を確認して設定した所定値と比較することで触媒劣化の診断が可能となる。
以上述べたこの発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置の動作と比較するため、前述の従来の装置の動作を図13により説明する。図13は、従来の装置の動作を説明する説明図で、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)は、夫々図6の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)に対応している。前述の従来の装置では、通常A/F制御時の算出OSCは、正常と診断すべき触媒劣化度の下限の実OSCの1/2とみなすとしている。現在装着されている触媒が、正常と診断すべき劣化度合いの下限の触媒であれば、装着されている触媒の実OSCの最大値は、上限OSCと同じである。この触媒は、触媒劣化診断では、正常と診断されなければならない。
従来技術では、通常の目標A/Fの制御状態では算出OSCは常に「0」としているため、触媒の実OSCを「0」にする制御を行うことなく、どの時点から触媒劣化診断用の目標A/F制御に切り替えても良い。図13の時点Aで触媒劣化診断運転条件及び触媒劣化診断条件が成立し、触媒劣化診断用の目標A/F制御に移行する。時点Aでは、通常の目標A/F制御でのリーン状態でかつリッチ側への移行の直前にあり、触媒の実OSCは通常時の目標A/Fでのフィードバックの範囲内で50%(1/2)よりも大きく、かつ最大値となる(図13のOSCの実線)。
一方、算出OSC(図13のOSCの破線)は、通常のフィードバックを実行している状態では「0」とみなすため、触媒劣化診断開始時点Aでも「0」となっており、実OSCと算出OSCがずれた状態にある。
この状態から触媒劣化診断用の目標A/F制御を開始すると、算出OSCは上限OSCと下限OSCの範囲内にあるが、実OSCは触媒劣化診断開始時点で増加側にずれていたことにより、図13の丸1に示す部分が、上限OSCを越えることとなる。
上限OSCを越えた部分では触媒で吸蔵しきれない排ガス中の酸素はそのまま触媒の下流側に流出され、下流側空燃比センサ電圧値のリーン側の出力値の変動が図13の丸2に示すように増加するので正常であると診断すべき触媒が装着されているのもかかわらず、劣化していると誤診断されることとなる。
図13の時点Aでの実OSCのずれが減少側にずれていた場合においても、下流側空燃比センサの出力値がリッチ側への変動増加となるため、実OSCが増加側へずれていた上記説明の場合と同様に触媒が劣化したと誤診断されることとなる。
次に、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置と、前述の従来の装置とを、触媒劣化診断値の演算に沿って更に詳細に説明する。この発明の実施の形態1に於ける図6で示される状態と、従来の装置に於ける図13で示される状態に対し、触媒劣化診断値を算出する。
ここで、触媒劣化診断値と比較する所定値(判定値)は0.3に設定する。
この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける図6の触媒正常時では、
電圧偏差積分比=RO2電圧偏差積分値/FO2電圧偏差積分値
=15.38/43.61=0.353
振幅積算比 =RO2電圧振幅積算値/FO2電圧振幅積算値
=2.4/6.4=0.375
触媒劣化診断値=電圧偏差積分比×振幅積算比
=0.353×0.375=0.132
となり、触媒劣化診断値<0.3であるため正常と判定される。
リアO2電圧偏差積分値は、10ms毎にリアO2電圧フィルタ値とリアO2電圧値の偏差を加算していった値であり、図6の(f)に示すリアO2電圧値(触媒正常時)の網掛け部分の面積に相当する。
フロントO2電圧偏差積分値は、10ms毎にフロントO2電圧フィルタ値とフロントO2電圧値の偏差を加算していった値であり、図6の(e)に示すフロントO2電圧値の網掛け部分の面積に相当する。
RO2電圧振幅積算値は、RO2電圧値がリッチ及びリーン反転する毎にリッチ側最大値とリーン側最小値の差分を算出し、累積した値であり、RO2電圧最大値=0.65、RO2電圧最小値=0.35で、リッチ、リーンの反転が8回あるので|0.65−0.35|×8=2.4となる。
フロントO2電圧振幅積算値は、(e)に示すフロントO2電圧値がリッチ及びリーン反転する毎にリッチ側最大値とリーン側最小値の差分を算出し、累積した値であり、[フロントO2電圧最大値=0.9]、[フロントFO2電圧最小値=0.1]で、リッチ、リーンの反転が8回あるので[|0.9−0.1|×8=6.4]となる。
図6に於ける触媒劣化時では、
電圧偏差積分比 =25.64/43.61=0.588
振幅積算比 =4.0/6.4=0.625
触媒劣化診断値 =0.588×0.625=0.368
となり、触媒劣化診断値≧0.3であるため劣化と診断される。
リアO2電圧偏差積分値は、10ms毎にリアO2電圧フィルタ値とリアO2電圧値の偏差を加算していった値であり、図6の(f)に示すリアO2電圧値(触媒正常時)の網掛け部分の面積に相当する。
フロントO2電圧偏差積分値は、10ms毎にフロントO2電圧フィルタ値とフロントO2電圧値の偏差を加算していった値であり、図6の(e)に示すフロントO2電圧値の網掛け部分の面積に相当する。
リアO2電圧振幅積算値は、リアO2電圧値がリッチ及びリーン反転する毎にリッチ側最大値とリーン側最小値の差分を算出し、累積した値であり、[リアO2電圧最大値=0.75]、[リアO2電圧最小値=0.25]で、リッチ、リーンの反転が8回あるので[|0.75−0.25|×8=4.0]となる。
フロントO2電圧振幅積算値は、フロントO2電圧値がリッチ及びリーン反転する毎にリッチ側最大値とリーン側最小値の差分を算出し、累積した値であり、[フロントO2電圧最大値=0.9]、[フロントO2電圧最小値=0.1]で、リッチ、リーンの反転が8回あるので[|0.9−0.1|×8=6.4]となる。
これに対し、従来の装置に於ける図13の触媒正常時では、
電圧偏差積分比 =23.43/43.61=0.537
振幅積算比 =3.76/6.4=0.588
触媒劣化診断値 =0.537×0.588=0.316
となり、触媒劣化診断値≧0.3であるため劣化と診断され、誤診断となる。
リアO2電圧偏差積分値は、10ms毎にリアO2電圧フィルタ値とリアO2電圧値の偏差を加算していった値であり、図13の(f)に示すリアO2電圧値(触媒正常時)の網掛け部分の面積に相当する。
フロントO2電圧偏差積分値は、10ms毎にフロントO2電圧フィルタ値とフロントO2電圧値の偏差を加算していった値であり、図13の(e)に示すフロントO2電圧値の網掛け部分の面積に相当する。
リアO2電圧振幅積算値は、リアO2電圧値がリッチ及びリーン反転する毎にリッチ側最大値とリーン側最小値の差分を算出し、累積した値であり、[リアO2電圧最大値=0.62]、[リアO2電圧最小値=0.15]で、リッチ、リーンの反転が8回あるので[|0.62−0.15|×8=3.76]となる。
フロントO2電圧振幅積算値は、フロントO2電圧値がリッチ及びリーン反転する毎にリッチ側最大値とリーン側最小値の差分を算出し、累積した値であり、[フロントO2電圧最大値=0.9、FO2電圧最小値=0.1]で、リッチ、リーンの反転が8回あるので[|0.9−0.1|×8=6.4]となる。
このように、従来システムでは通常の目標A/F制御を行っている状態での算出OSCを50%(1/2)とみなしていることにより、触媒劣化診断時に算出OSCと触媒の実OSCにずれが生じることとなり、正常と診断すべき触媒が装着された状態であっても劣化と誤診断されることがあるが、本実施の形態によればそのような誤診断の発生はなく、精度の良い触媒劣化診断が可能となる。
以上述べたこの発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置によれば、触媒劣化診断開始前に、図3のステップ206に示すように診断前の目標A/Fでの制御を実施し、触媒劣化診断開始時の触媒の実OSC量を正常状態と診断すべき触媒の下限OSC量の1/2にコントロールしてから触媒劣化診断を開始することで、触媒劣化診断時に触媒の実OSC量を越えることがなくなり、触媒劣化診断精度が向上するとともに、触媒劣化診断時の排ガス性能の悪化を防止することが可能となる。
又、触媒劣化診断用の目標A/F制御に移行する前に、図5のステップ403にて振幅カウンタを通常時の振幅時間の1/2に設定することで、触媒劣化診断開始前に触媒の実OSC量を正常状態と診断すべき触媒の下限OSC量の1/2にコントロールし、触媒劣化診断開始時に触媒の実OSC量がずれていたことによる触媒劣化診断の診断精度の悪化と、触媒劣化診断時の排ガス性能の悪化を防止することが可能となる。
更に、触媒劣化診断をリッチ制御側から行うために、触媒劣化診断開始前の制御をリーン側にすることで触媒劣化診断時の過剰なリッチ制御がなくなり、触媒劣化診断精度の向上および触媒劣化診断時の排ガス悪化を防止することが可能となる。
更に、触媒劣化診断用の目標A/Fの算出を最初に実行する場合には、図7のステップ506にてリッチ側での制御し、リーン側では触媒浄化率が急に低下することで、有害ガス(NOx)が急に増大するが、リッチ側では触媒浄化率の低下はリーン側に比べて緩やかなので、有害ガス(HC、CO)の増加が急には発生せずに、触媒劣化診断に移行できるので、排ガス悪化を防止することが可能となる。
又、算出OSCの算出開始時には、図8のステップ602により「0」にリセットして、正常状態と診断すべき触媒の下限OSC量の1/2にすることで、触媒の実OSC量とECU内での算出OSCを一致させるので、触媒の実OSC量と算出OSCの誤差による触媒劣化診断精度の悪化を防止することが可能となる。
更に、図8のステップ601のようにA/Fが中心A/Fをリーン側からリッチ側に横切った時点で算出OSCをゼロにリセットして算出OSCの演算を開始することで、触媒に供給される酸素量がA/Fで決まるため、触媒の実OSCと算出OSCを精度良く一致させることができ、さらなる触媒劣化診断精度の向上が可能となる。
実施の形態2.
図12は、この発明の実施の形態2による内燃機関の制御装置の診断前目標A/Fの処理を示すフローチャートである。実施の形態2での前述の図3の処理は、この実施の形態2に於いても同様である。前述の実施の形態1では図3のステップ206の詳細が図5での処理であるが、この実施の形態2では図3のステップ206の詳細が図12となる。その他の詳細の処理については、実施の形態1と同様である。以下の説明では、実施の形態1の場合の処理の異なる図12についてのみ説明する。
図12に示すフローチャートの処理は、実施の形態1に於ける図5の処理に置き換わる処理であり、触媒劣化診断前に実施する目標A/Fの演算処理である。実施の形態1の場合と同一の処理については同一符号でステップを記載しており、そのステップとの説明は省略する。
図12に於いて、ステップ1001では、リーン側への目標A/F値を通常の1/2とする。例えば、目標中心A/Fが「14.5」、加算値が「0.1」としてリーン側の目標A/Fが「14.6」(=14.5+0.1)の場合、ステップ1001では「14.55」(=14.5+0.05)となる。次に、ステップ402での判定の結果、F1=0の場合は、ステップ1002に進み、振幅カウンタに値をセットして、目標A/Fが通常よりもリーン度合いが1/2である状態を通常と同じ時間実施することで、算出OSCを「0」に制御するものである。
前述の実施の形態1での動作説明に於ける図6では、時点Aから時点Bの間の診断前目標A/Fは、通常目標A/F値の1/2時間であるが、この実施の形態2では、時点Aから時点Bの時間は通常の目標A/F値の場合と同じであるが、リーン側に設定している目標A/F値が1/2となるため、実施の形態1と同様の効果が得られる。
このように、この発明の実施の形態2による内燃機関の制御装置によれば、触媒劣化開始前に通常よりもリーン度合いが1/2の目標A/F値を通常と同じ時間設定しても、通常目標A/F値を1/2時間設定するのと同様に、触媒の実OSC量を正常状態と診断すべき触媒の実OSC量の1/2に制御することが可能であり、触媒劣化診断精度の向上を図ることができる。