JP4527944B2 - 無鉛性カチオン電着塗料組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被塗物に外観不良を生じ難い、高つきまわり性の無鉛性カチオン電着塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
電着塗装は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、自動車車体等の大型で複雑な形状を有し、高い防錆性が要求される被塗物の下塗り塗装方法として汎用されている。また、他の塗装方法と比較して、塗料の使用効率が極めて高いことから経済的であり、工業的な塗装方法として広く普及している。カチオン電着塗装は、カチオン電着塗料中に被塗物を陰極として浸漬させ、電圧を印加することにより行なわれる。
【0003】
これまで電着塗料には、塗膜の耐食性を改良するため、鉛が添加されてきた。近年、鉛が環境に対して悪影響を与えることから、電着塗料に使用する鉛を削減することが要求されている。
【0004】
カチオン電着塗装の過程における塗膜の析出は電気化学的な反応によるものであり、電圧の印加により、被塗物表面に塗膜が析出する。析出した塗膜は絶縁性を有するので、塗装過程において、塗膜の析出が進行して析出膜の増加するのに従い、塗膜の電気抵抗は大きくなる。
【0005】
その結果、当該部位への塗料の析出は低下し、代わって、未析出部位への塗膜の析出が始まる。このようにして、順次被着部分に塗料固形分が被着して塗装を完成させる。本明細書中、被塗物の未着部位に塗膜が順次形成される性質をつきまわり性という。
【0006】
カチオン電着塗装においては、上述したように被塗物表面に絶縁性の塗膜が順次形成されていくので理論的には無限のつきまわり性を有しており、被塗物の全ての部分に均一に塗膜を形成することができるはずである。
【0007】
しかしながら、被塗物の未着部位においては、被着部位と比較して浴中で印加される電圧が弱くなるため塗料固形分が着き難く、電着塗料のつきまわり性が必ずしも充分ではなく、膜厚のムラが生じる。
【0008】
カチオン電着塗装は、通常は下塗り塗装に使用され、防錆等を主目的として行なわれることから、複雑な構造を有する被塗物であっても、すべての部位でその塗膜の膜厚を所定値以上にする必要がある。そのために膜厚にムラがあると、厚い部分は塗り過ぎであり、塗料が過剰に使用されていることになる。従って、塗料の使用量を減少させるためには、電着塗料のつきまわり性を向上する必要がある。
【0009】
つきまわり性低下の要因としては、形成させる塗膜中に、塗料に含まれているイオン性基、水和官能基等が残存し、これらが電荷移動媒体となることによって塗膜の電気抵抗値を下げてしまうことが考えられる。従って、カチオン電着塗装において、高いつきまわり性を実現するためには、このような要因を除去して塗膜の電気抵抗値を上げる必要がある。
【0010】
つきまわり性低下の他の要因は、バインダー樹脂の析出性が低いことが考えられる。被塗物の未着部位に印加される電圧は弱く、被塗物の当該部位に塗料固形分が析出し難くなるのである。この場合、塗料エマルションから被塗物ヘのバインダー樹脂の析出性を高めることができれば、被塗物の未着部位に印加される弱い電圧によっても塗料固形分が析出し、被塗物の全ての部分に均一に塗膜が形成されることとなる。
【0011】
しかしながら、高いつきまわり性を実現するために単に塗膜の電気抵抗値を上げたのでは、得られた電着塗膜にピンホールが発生しやすく、外観不良が生じやすい。この外観不良は、カチオン電着塗装時の被塗物側で発生する水素ガス中で火花放電が生じるために発生すると考えられている。このようなピンホールは当業者に「ガスピン」と呼ばれている。ガスピンの発生は塗膜の外観悪化の原因となるため、発生を抑制することが好ましい。
【0012】
従来、つきまわり性、耐ガスピン性、及びハジキ性等に優れるカチオン電着塗料組成物として、中和剤として含まれる有機酸の総量を特定する等を行なったカチオン電着塗料組成物が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0013】
【特許文献1】
特開2002−060680号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、高つきまわり性であっても塗膜にガスピンが生じ難い、つまり耐ガスピン性である、無鉛性カチオン電着塗料組成物を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
水性媒体、水性媒体中に分散するか又は溶解した、バインダー樹脂、中和酸、有機溶媒、顔料および金属触媒、を含有する無鉛性カチオン電着塗料組成物であって、
被塗物に対して厚さ20μmに電着された電着塗膜の膜抵抗が1000〜2500kΩ・cm2であって、
塗料組成物の電導度が1500〜2000μS/cmであって、かつ電着塗装における最小析出pHが11.90〜12.00である、
無鉛性カチオン電着塗料組成物を提供するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0016】
上記の無鉛性カチオン電着塗料組成物は更に、上記バインダー樹脂が、100gに含まれるスルホニウム塩基のミリ当量数が7〜45であるスルホニウム変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂、およびブロックポリイソシアネート硬化剤を含み、スルホニウム変性エポキシ樹脂とアミン変性エポキシ樹脂との質量比が25/75〜50/50であり、
上記中和酸の量がバインダー樹脂固形分100gに対して10〜25mg当量であり、
塗料組成物中に含まれる顔料と樹脂固形分との質量比(P/V)が1/4〜1/3である、
無鉛性カチオン電着塗料組成物であることが好ましい。
【0017】
上記の無鉛性カチオン電着塗料組成物は更に、硬化塗膜とした場合にその拡散パラメータの平方根が2.5〜3.2である、無鉛性カチオン電着塗料組成物であることが好ましい。
【0018】
上記の無鉛性カチオン電着塗料組成物は、ケイ酸化合物を1質量%含有するアルカリ性水溶液に溶出したケイ酸イオンの平衡濃度が50〜3000ppmであるケイ酸化合物を含むのが好ましい。
【0019】
ここで「無鉛性」とは、実質上鉛化合物もしくは鉛イオンを含まないことをいい、環境に悪影響を与えるような量で鉛を含まないことを意味する。具体的には、カチオン電着浴中の鉛化合物濃度が50ppm、好ましくは20ppmを超える量で含まないことをいう。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明で使用されるカチオン電着塗料組成物は、水性媒体、水性媒体中に分散するか又は溶解した、バインダー樹脂、中和酸、有機溶媒、顔料、金属触媒等添加剤を含有する。バインダー樹脂は、スルホニウム変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂、ブロックポリイソシアネート硬化剤とを含む。水性媒体としては、イオン交換水等が一般に用いられる。
【0021】
スルホニウム変性エポキシ樹脂
本発明で用いられる無鉛性カチオン電着塗料組成物には、スルホニウム変性エポキシ樹脂が含まれる。スルホニウム変性エポキシ樹脂とは、エポキシ樹脂にスルフィド化合物及び中和酸を反応させてそのエポキシ基が開環されると同時にスルホニウム塩基が導入された樹脂をいう。このスルホニウム変性エポキシ樹脂は、例えば、特開平6−128351号公報、特開平7−206968号公報などに記載されているような従来公知のものであってよい。スルホニウム変性エポキシ樹脂は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環をスルフィド化合物及び中和酸で開環して製造される。
【0022】
エポキシ樹脂と反応させるスルフィド化合物は、エポキシ基と反応し、かつ妨害基を含まない全てのスルフィド化合物が含まれる。尚、エポキシ樹脂とスルフィド化合物との反応は中和酸の存在下で行う必要があり、その結果、エポキシ樹脂にスルホニウム基が導入される。
【0023】
スルフィド化合物の具体例としては、脂肪族スルフィド、脂肪族−芳香族混合スルフィド、アラルキルスルフィドまたは環状スルフィドであり得る。使用しうるスルフィド化合物の例には、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、エチルフェニルスルフィド、テトラメチレンスルフィド、ペンタメチレンスルフィド等が挙げられる。
【0024】
特に好ましいスルフィド化合物は、式
【化1】
HO−R−S−R'−OH
[式中、R及びR'はそれぞれ独立して炭素数2〜8の直鎖又は分枝鎖アルキレン基である。]
で表されるチオジアルコールである。かかるスルホニウム変性エポキシ樹脂は電着開始直後の短時間(約10秒間)塗膜抵抗の形成を遅くする機能を有し、かつバインダー樹脂に水分散安定性を付与する。
【0025】
チオジアルコールの例には、チオジエタノール、チオジプロパノール、チオジブタノール、1−(2−ヒドロキシエチルチオ)−2−プロパノール、1−(2−ヒドロキシエチルチオ)−2,3−プロパンジオール、1−(2−ヒドロキシエチルチオ)−2−ブタノ−ル、及び1−(2−ヒドロキシエチルチオ)−3−ブトキシ−1−プロパノールなどがある。最も好ましくは、スルフィド化合物は、1−(2−ヒドロキシエチルチオ)−2−プロパノールである。
【0026】
アミン変性エポキシ樹脂
本発明で用いられる無鉛性カチオン電着塗料組成物には、アミンで変性されたビスフェノール型エポキシ樹脂が含まれる。このアミン変性エポキシ樹脂は、例えば、特開昭54−4978号、同昭56−34186号などに記載されているような従来公知のものでよい。アミン変性エポキシ樹脂は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環をアミンで開環して製造される。
【0027】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例はビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。前者の市販品としてはエピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3000〜4000)などがあり、後者の市販品としてはエピコート807、(同、エポキシ当量170)などがある。
【0028】
特開平5−306327号公報第0004段落の式、化3に記載のような、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂をアミン変性エポキシ樹脂に用いてもよい。耐熱性及び耐食性に優れた塗膜が得られるからである。
【0029】
エポキシ樹脂にオキサゾリドン環を導入する方法としては、例えば、メタノールのような低級アルコールでブロックされたブロックポリイソシアネートとポリエポキシドを塩基性触媒の存在下で加熱保温し、副生する低級アルコールを系内より留去することで得られる。
【0030】
特に好ましいエポキシ樹脂はオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂である。耐熱性及び耐食性に優れ、更に耐衝撃性にも優れた塗膜が得られるからである。
【0031】
二官能エポキシ樹脂とモノアルコールでブロックしたジイソシアネート(すなわち、ビスウレタン)とを反応させるとオキサゾリドン環を含有するエポキシ樹脂が得られることは公知である。このオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の具体例及び製造方法は、例えば、特開2000−128959号公報第0012〜0047段落に記載されている。
【0032】
これらのエポキシ樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、および単官能性のアルキルフェノールのような適当な樹脂で変性しても良い。また、エポキシ樹脂はエポキシ基とジオール又はジカルボン酸との反応を利用して鎖延長することができる。
【0033】
カチオン性基を導入し得る活性水素化合物としては1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩が含まれる。かかるアミンの中でも2級アミンが特に好ましい。エポキシ樹脂と2級アミンを反応させると、3級アミノ基を有するアミン変性エポキシ樹脂が得られる。
【0034】
アミンの具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミンがある。アミン類は複数のものを併用して用いてもよい。
【0035】
ブロックイソシアネート硬化剤
本発明のブロックイソシアネート硬化剤で使用するポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれのものであってもよい。
【0036】
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4´−ジイソシアネート、及び1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、ビューレット及び/又はイソシアヌレート変性物);等があげられる。これらは、単独で、または2種以上併用することができる。
【0037】
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーもブロックイソシアネート硬化剤に使用してよい。
【0038】
ブロック剤は、ポリイソシアネート基に付加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得るものである。
【0039】
ブロック剤としては、ε−カプロラクタムやブチルセロソルブ等通常使用されるものを用いることができる。しかしながら、これらの内、揮発性のブロック剤はHAPsの対象として規制されているものが多く、使用量は必要最小限とすることが好ましい。
【0040】
ケイ酸化合物
本発明で用いられる無鉛性カチオン電着塗料組成物には、必要に応じてケイ酸化合物が含まれる。ここでケイ酸化合物とは、アルカリ性水溶液中でケイ酸イオンを溶出する化合物、具体的には、ケイ酸化合物1質量%含有アルカリ性水溶液中に溶出したケイ酸イオンの平衡濃度50ppm〜3000ppm、好ましくは100ppm以上を有する化合物をいう。カチオン電着塗料組成物にこのようなケイ酸化合物を含有させることにより、強アルカリ条件下で腐食されやすい性質を有する被塗物に適した無鉛性カチオン電着塗料組成物を提供することができる。この溶出するケイ酸イオンの平衡濃度が50ppm未満であると、十分な耐食効果が得られず、より低い場合はより顕著となる。
【0041】
ケイ酸を含む化合物には、一般的に塗料に含有される顔料に分類されるものもあるが、本発明のケイ酸化合物は上記範囲の溶出平衡濃度を有するものをいい、それ以外のものは顔料に分類される。即ち、上記範囲の溶出平衡濃度を有しない顔料は本発明でいうケイ酸化合物には含まれない。本発明で用いるケイ酸化合物の例としては、ケイ酸亜鉛、ケイ酸カルシウム、シリカなどが挙げられる。ここで一般にシリカは二酸化ケイ素を主成分とする固体状物質をいうが、ケイ酸を溶出する能力はシリカの形状等により異なり得ると考えられる。本発明においては、ケイ酸化合物として多孔質であるシリカ粒子を使用することが好ましい。シリカ粒子が多孔質であることによってその内部表面が大きくなり、その結果、シリカ粒子からケイ酸イオンが多く溶出すると考えられるためである。多孔質であるシリカ粒子として、いわゆる湿式法を用いてケイ酸ソーダと酸とを混合することにより得られる、富士シリシア化学株式会社から市販されているサイリシアが挙げられる。
【0042】
ケイ酸化合物は、固体状物質で後述する顔料の一部を構成するとも考えることができる。その場合、後述する顔料の一部が本発明のケイ酸化合物と置きかえられるものと考えることができる。従って、上記ケイ酸化合物は、顔料に対して1〜60質量%、さらには5〜30質量%となる量で塗料に含有させるのが好ましい。顔料に対して60質量%を超えて塗料に含有させることは、分散ペーストの安定性が不良となる欠点を有することとなる。逆に、顔料に対して1質量%より少ない量で塗料に含有させるのでは、ケイ酸化合物による効果(耐食効果)が不十分となる。本発明のケイ酸化合物を顔料の一部と考えないで、添加剤として捉えることも可能であり、その場合電着塗料中における含有量は、塗料の樹脂固形分100質量部に対し、0.5〜20質量部、好ましくは1.5〜10質量部、より好ましくは3〜6質量部である。添加量の多い場合と少ない場合の欠点は前述の顔料の一部と考える場合と同じである。但し、添加剤として考える場合は、顔料の添加量が必然的に少なくなる。
【0043】
顔料
本発明の電着塗料組成物には通常用いられる顔料を含有させてもよい。本明細書でいう「顔料」には、前述のケイ酸化合物は含まれない。他方、例えばクレーやタルクなどはケイ酸を含むが、これらは溶出平衡濃度が所定範囲を満足しないので、顔料として扱う。使用し得る顔料の例としては、チタンホワイト、カーボンブラック及びベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム及びリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料等が挙げられる。
【0044】
顔料の量は、塗料組成物中に含まれる顔料と樹脂固形分との質量比(P/V)が1/4以下になる量とする。塗料組成物中の顔料の量が樹脂固形分との質量比1/3を越えると塗料固形分の析出性が低下するため、つきまわり性が低下する。塗料組成物中に含まれる顔料と樹脂固形分との質量比(P/V)1/4〜1/3が好ましい。
【0045】
顔料分散ペースト
顔料を電着塗料の成分として用いる場合、一般に顔料を予め高濃度で水性媒体に分散させてペースト状にする。顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。
【0046】
顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂分散物と共に水性媒体中に分散させて調製する。顔料分散樹脂分散物とは、顔料分散樹脂を水性媒体中に分散させたものである。顔料分散樹脂としては、一般に、カチオン性又はノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基及び/又は3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のようなカチオン性重合体を用いる。水性媒体としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。
【0047】
本発明においてケイ酸化合物を用いる場合、顔料と共にケイ酸化合物も分散ペーストとするのが好ましい。一般に、顔料分散樹脂は、顔料(必要に応じてケイ酸化合物を含めてもよい。以下顔料等という。)100質量部に対して固形分比20〜100質量部の量で用いる。顔料分散樹脂分散物と顔料等とを混合した後、その混合物中の顔料等の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミル等の通常の分散装置を用いて分散させて、顔料分散ペーストを得る。
【0048】
金属触媒
本発明の無鉛性カチオン電着塗料組成物には塗膜の耐食性を改良するための触媒として、金属触媒を金属イオンとして含有させてもよい。金属イオンとしては、セリウムイオン、ビスマスイオン、銅イオン、亜鉛イオンが好ましい。これらは適当な酸と組み合わせた塩や金属イオンを含有する顔料からの溶出物として電着塗料組成物に含まれる。酸としては、スルホニウム変性エポキシ樹脂およびアミン変性エポキシ樹脂を中和するための中和酸として後に説明する塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸のいずれかであればよい。好ましい酸は酢酸である。
【0049】
電着塗料組成物
本発明の無鉛性カチオン電着塗料組成物は、上に述べた金属触媒、スルホニウム変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、及び顔料分散ペーストを水性媒体中に分散することによって調製される。また、通常、水性媒体にはスルホニウム変性エポキシ樹脂およびアミン変性エポキシ樹脂を中和して、バインダー樹脂エマルションの分散性を向上させるために中和酸を含有させる。中和酸は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。
【0050】
本発明で使用される電着塗料組成物では、スルホニウム変性エポキシ樹脂の合計100gに含まれるスルホニウム塩基のミリ当量数は7〜45、好ましくは10〜35とする。スルホニウム塩基のミリ当量数が7ミリ当量未満であるとスルホニウム変性エポキシ樹脂の親水性が不充分となり、塗料の分散安定性が維持できないこととなり、45ミリ当量を超えると塗料のつきまわり性が劣ることとなる。
【0051】
塗料組成物に含有させる中和酸の量が多くなると、スルホニウム変性エポキシ樹脂およびアミン変性エポキシ樹脂の中和率が高くなり、バインダー樹脂粒子の水性媒体に対する親和性が高くなり、分散安定性が増加する。このことは、電着塗装時に被塗物に対してバインダー樹脂が析出し難い特性を意味し、塗料固形分の析出性は低下する。
【0052】
逆に、塗料組成物に含有させる中和酸の量が少ないと、スルホニウム変性エポキシ樹脂およびアミン変性エポキシ樹脂の中和率が低くなり、バインダー樹脂粒子の水性媒体に対する親和性が低くなり、分散安定性が減少する。このことは、塗装時に被塗物に対してバインダー樹脂が析出し易い特性を意味し、塗料固形分の析出性は増大する。
【0053】
従って、電着塗料のつきまわり性を改良するためには、塗料組成物に含有させる中和酸の量を減らして、スルホニウム変性エポキシ樹脂およびアミン変性エポキシ樹脂の中和率を低レベルに抑えることが好ましい。
【0054】
具体的には、中和酸の量は、スルホニウム変性エポキシ樹脂およびアミン変性エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂固形分100gに対して10〜25mg当量、好ましくは15〜20mg当量とする。中和酸の量が10mg当量未満であると水への親和性が十分でなく水への分散ができないか、著しく安定性に欠ける状態となり、25mg当量を越えると析出に要する電気量が増加し、塗料固形分の析出性が低下し、つきまわり性が劣る状態となる。
【0055】
なお、本明細書中において「中和酸の量」とは、スルホニウム変性エポキシ樹脂およびアミン変性エポキシ樹脂を中和するのに用いた酸の量であって、塗料組成物に含まれているバインダー樹脂固形分100gに対するmg当量数で表わし、MEQ(A)と表示する。
【0056】
スルホニウム変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂、及び硬化剤としてブロックイソシアネートを配合し、水性媒体にこれらを分散させる方法については、スルホニウム変性エポキシ樹脂およびアミン変性エポキシ樹脂それぞれ、又はいずれかひとつにブロックイソシアネートを溶液状態で混合し、それぞれをエマルションとし、その後それぞれのエマルションを混合してよく、又はスルホニウム変性エポキシ樹脂およびアミン変性エポキシ樹脂を予め溶液状態で混合しておき、これにブロックイソシアネートを加えた混合溶液を、エマルションにしてもよい。
【0057】
ブロックイソシアネート硬化剤の量は、硬化時にスルホニウム変性エポキシ樹脂およびアミン変性エポキシ樹脂中の1級、2級アミノ基、水酸基、等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分でなければならず、一般にスルホニウム変性エポキシ樹脂およびアミン変性エポキシ樹脂の合計と、ブロックイソシアネート硬化剤との固形分質量比(エポキシ樹脂/硬化剤)で表して一般に90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35の範囲である。
【0058】
スルホニウム変性エポキシ樹脂とアミン変性エポキシ樹脂との混合割合は、質量比で、25/75〜50/50、好ましくは40/60〜50/50の範囲である。スルホニウム変性エポキシ樹脂の質量比が上記混合割合25/75を下まわると塗料の耐ガスピン性が劣ることとなり、上記混合割合50/50を超えると、塗膜の外観不良が解消され難くなる。
【0059】
塗料組成物は、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジブチルスズオキサイドのようなスズ化合物や、通常のウレタン開裂触媒を含むことができる。但し本発明のカチオン電着塗料組成物は鉛を実質的に含まないため、その量は樹脂固形分の0.1〜5質量%とすることが好ましい。
【0060】
有機溶媒はスルホニウム変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、顔料分散樹脂等の樹脂成分を合成する際に溶剤として必ず必要であり、完全に除去するには煩雑な操作を必要とする。また、バインダー樹脂に有機溶媒が含まれていると造膜時の塗膜の流動性が改良され、塗膜の平滑性が向上する。
【0061】
塗料組成物に通常含まれる有機溶媒としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。
【0062】
塗料組成物は、上記のほかに、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などの常用の塗料用添加剤を含むことができる。
【0063】
本発明の無鉛性カチオン電着塗料組成物の電導度は1500〜2000μS/cmが好ましい。1500未満だとつきまわり性が低下し、2000を超えると塗膜表面の外観が悪化することとなる。電導度は、市販の導電率計を使用して測定することができる。
【0064】
本発明の無鉛性カチオン電着塗料組成物は被塗物に電着塗装され、電着塗膜(未硬化)を形成する。被塗物としては導電性のあるものであれば特に限定されず、例えば、鉄板、鋼板、アルミニウム板及びこれらを表面処理したもの、これらの成型物等を挙げることができる。
【0065】
電着塗装は、被塗物を陰極として陽極との間に、通常、50〜450Vの電圧を印加して行う。印加電圧が50V未満であると電着が不充分となり、450Vを超えると、塗膜が破壊され異常外観となる。電着塗装時、塗料組成物の浴液温度は、通常10〜45℃に調節される。
【0066】
本発明の電着塗料組成物は、電着塗装における最小析出pHが11.90〜12.00である必要がある。11.90未満だと電着浴の安定性が低下し、12.00を超えるとつきまわり性が低下する。ここで最小析出pHとは、カチオン電着塗装において、バインダー樹脂が析出するために必要とされる水酸化物イオン濃度に基づくpHをいう。
【0067】
上記の最小析出pHは、定電流電着塗装、すなわち電流密度(mA/cm2)を一定にした電着塗装、における電着挙動により求めることができる。定電流電着塗装において、被電着塗装面での樹脂の析出が始まると、その樹脂の析出による電気抵抗の増大に依存して、より高い印加電圧が必要となる。ここで、電気抵抗が増大するまでの通電時間から、樹脂が析出するために必要とされる水酸化物イオン濃度(COH−)を下記式により求めることができる。
【数1】
COH−(mmol/L)=[2×電流密度(mA/cm2)×√誘電時間]/[F√π√D]
F:ファラデー定数 96486.7
D:イオン拡散係数 OH−=5×10−5
【0068】
最小析出pHは下記式により求めることができる。
【数2】
最小析出pH=14−log10(1/COH−)
【0069】
また、最小析出pHにおける印加電圧と通電時間との関係を示すグラフを図1に示す。
【0070】
電着過程は、カチオン電着塗料組成物に被塗物を浸漬する過程、及び、上記被塗物を陰極として陽極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる過程、から構成される。また、電圧を印加する時間は、電着条件によって異なるが、一般には、2〜4分とすることができる。本明細書中「電着塗膜」とは、上記の、被膜を析出させる過程後であって、焼付硬化前の、電着塗装後の未硬化の塗膜をいう。
【0071】
電着塗膜の膜厚は、好ましくは5〜25μm、より好ましくは20μmとする。膜厚が5μm未満であると、防錆性が不充分であり、25μmを超えると、塗料の浪費につながる。また、電着塗膜の膜抵抗は膜厚20μmにおいて1000〜2500kΩ・cm2であることが好ましい。塗膜の膜抵抗が1000kΩ・cm2未満であると十分な電気抵抗が得られていない状態であり、つきまわり性に劣る状態となり、2500kΩ・cm2を越えると塗膜外観が著しく劣ることとなる。塗膜の膜抵抗は、より好ましくは1100〜1500kΩ・cm2である。
【0072】
電着塗膜の膜抵抗は、析出膜の電荷移動媒体量や粘性を制御することにより調節できる。
【0073】
上述のようにして得られる電着塗膜を、電着過程の終了後、そのまま又は水洗した後、120〜260℃、好ましくは140〜220℃で、10〜30分間焼き付けることにより硬化させる。本明細書中において、この焼付硬化後の塗膜を「硬化塗膜」という。
【0074】
本発明のカチオン電着塗料組成物で得た硬化塗膜の拡散パラメータの平方根(√Tc)は2.5〜3.2、好ましくは2.7〜3.0である。拡散パラメータ(Tc)は塗膜中に溶液が浸透して拡散する程度を示す指標であり、硬化塗膜の架橋密度に関係する特性値である。硬化塗膜の架橋密度が高い場合は、拡散パラメータ(Tc)の値が大きくなる。
【0075】
硬化塗膜の拡散パラメータ(Tc)の値が大きい場合、つまり硬化塗膜の架橋密度が高い場合は、泥、汚れなどに含まれるNa+、Cl−、及びSO4 2−等の電解質の、硬化塗膜内部への拡散性が低くなる。すなわち、被塗物を腐食する物質の硬化塗膜透過性が低くなり、その結果、泥などの付着に起因する被塗物の腐蝕を防ぐ効果が高い硬化塗膜となる。
【0076】
硬化塗膜の拡散パラメータ(Tc)は以下のようにして測定される。まず電着塗装した塗装板の塗膜面を溶液に浸し、塗装板と溶液との間に直流電圧をかける。電気抵抗を経時的に測定すると、ある時点で抵抗が著しく低下する。これは、溶液が電気分解してイオンとなり、そのイオンが塗膜の表層から塗膜を通過して被塗物まで拡散した状態であることを示す。この電圧の印加から抵抗が低下するまでの時間を拡散パラメータ(Tc)という。
【0077】
拡散パラメータの測定方法は、川井均、山本隆、尼子宏、「色材」、47(1974)第396頁左欄下から第24行〜第398頁左欄第12行に記載されている。本文献の当該部分は本明細書に援用する。
【0078】
拡散パラメータの測定において、本発明では、被塗物として亜鉛鋼板を用い、これに7μmの厚さに電着塗装し、150℃で25分間乾燥させた塗装板を試料として用いる。また、容量比1/3で混合した水/メタノールを溶液として用いる。
【0079】
図2に示すように塗装板100の塗膜101上にシリコンゴムパッキング102、102’を介して白金のリング状電極103、及びテフロン( 登録商標 )リング104を固定する。この装置を空気恒温層に入れ、±0.1℃以内の精度で28℃に温調する。
【0080】
被塗物105と白金電極103との間に直流電圧を加え、リング内に容量比1/3で混合した水/メタノールを入れ、この時点からの電流変化をケースレー社製610℃エレクトロメーター106で測定し、記録計107で記録する。塗装板の表面温度は、銅−コンスタンタン熱電対(PHILIPS,PR6452A)(非表示)を貼り付けて測定する。
【0081】
塗膜の比抵抗(Ω・cm)を時間(min)に対して表したプロットにおいて、傾斜が最初に変化する時間がTcとなる。
【0082】
【実施例】
以下の実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
【0083】
製造例1
ブロックイソシアネート硬化剤の製造
ジフェニルメタンジイソシアネート1250部およびメチルイソブチルケトン(以下「MIBK」という。)266.4部を反応容器に仕込み、これを80℃まで加熱した後、ジブチルスズジラウレート2.5部を加えた。ここに、ε−カプロラクタム226部をブチルセロソルブ944部に溶解させたものを80℃で2時間かけて滴下した。さらに100℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、MIBK336.1部を加えてブロックイソシアネート硬化剤を得た。
【0084】
製造例2
スルホニウム変性エポキシ樹脂の製造
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計および滴下漏斗を装備したフラスコに、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(質量比=8/2)87部、MIBK85部およびジブチルスズジラウレート0.1部を仕込んだ。反応混合物を攪拌下、メタノール32部を滴下した。反応は、室温から始め、発熱により60℃まで昇温した。反応は主に、60〜65℃の範囲で行い、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで継続した。
【0085】
次に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから既知の方法で合成したエポキシ当量188のエポキシ樹脂550部を反応混合物に加えて、125℃まで昇温した。その後、ベンジルジメチルアミン1.0部を加え、エポキシ当量330になるまで130℃で反応させた。
【0086】
続いて、ビスフェノールA100部及びオクチル酸36部を加えて120℃で反応させたところ、エポキシ当量は1030となった。その後MIBK107部を加え反応混合物を冷却し、SHP−100(1−(2―ヒドロキシエチルチオ)−2−プロパノール、三洋化成製)52部、イオン交換水21部、88%乳酸39部を加え、80℃で反応させた。反応は酸価が5を下回るまで継続し、3級スルホニウム塩基を有するエポキシ樹脂(樹脂固形分80%)を得た。
【0087】
得られた樹脂に製造例1で得られたブロックイソシアネート硬化剤と固形分比で60/40で均一になるように混合した。その後、イオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のブロックイソシアネート含有のスルホニウム変性エポキシ樹脂エマルションを得た。またこのエマルションの樹脂固形分100g当たりの塩基のミリ当量は10であった。
【0088】
製造例3
アミン変性エポキシ樹脂の製造
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計および滴下漏斗を装備したフラスコに、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(質量比=8/2)87部、MIBK85部およびジブチルスズジラウレート0.1部を仕込んだ。反応混合物を攪拌下、メタノール32部を滴下した。反応は、室温から始め、発熱により60℃まで昇温した。反応は主に、60〜65℃の範囲で行い、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで継続した。
【0089】
次に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから既知の方法で合成したエポキシ当量188のエポキシ樹脂650部を反応混合物に加えて、125℃まで昇温した。その後、ベンジルジメチルアミン1.0部を加え、エポキシ当量300になるまで130℃で反応させた。
【0090】
続いて、ビスフェノールA165部及びオクチル酸29部を加えて120℃で反応させたところ、エポキシ当量は1160となった。その後MIBK107部を加え反応混合物を冷却し、ジエタノールアミン85部を加え、110℃で2時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分80%となるまで希釈し、3級アミノ塩基を有するエポキシ樹脂(樹脂固形分80%)を得た。
【0091】
得られた樹脂に製造例1で得られたブロックイソシアネート硬化剤と固形分比で60/40で均一になるように混合した。その後、樹脂固形分100g当たり酸のミリ当量数が25になるようギ酸を加え、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のブロックイソシアネート含有のアミン変性エポキシ樹脂エマルションを得た。
【0092】
製造例4
アミン変性エポキシ樹脂の製造
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計および滴下漏斗を装備したフラスコに、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(質量比=8/2)87部、MIBK85部およびジブチルスズジラウレート0.1部を仕込んだ。反応混合物を攪拌下、メタノール32部を滴下した。反応は、室温から始め、発熱により60℃まで昇温した。反応は主に、60〜65℃の範囲で行い、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで継続した。
【0093】
次に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから既知の方法で合成したエポキシ当量188のエポキシ樹脂492部を反応混合物に加えて、125℃まで昇温した。その後、ベンジルジメチルアミン1.0部を加え、エポキシ当量360になるまで130℃で反応させた。
【0094】
続いて、ビスフェノールA70部及びオクチル酸29部を加えて120℃で反応させたところ、エポキシ当量は850となった。その後MIBK107部を加え反応混合物を冷却し、メチルエタノールアミン48部およびジエチレントリアミンをケチミン化したもの70部を加え、110℃で2時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分80%となるまで希釈し、3級アミノ塩基を有するエポキシ樹脂(樹脂固形分80%)を得た。
【0095】
得られた樹脂に製造例1で得られたブロックイソシアネート硬化剤と固形分比で60/40で均一になるように混合した。その後、樹脂固形分100g当たり酸のミリ当量数が25になるようギ酸を加え、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のブロックイソシアネート含有のアミン変性エポキシ樹脂エマルションを得た。
【0096】
製造例5
アミン変性エポキシ樹脂の製造
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計および滴下漏斗を装備したフラスコに、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(質量比=8/2)87部、MIBK85部およびジブチルスズジラウレート0.1部を仕込んだ。反応混合物を攪拌下、メタノール32部を滴下した。反応は、室温から始め、発熱により60℃まで昇温した。反応は主に、60〜65℃の範囲で行い、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで継続した。
【0097】
次に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから既知の方法で合成したエポキシ当量188のエポキシ樹脂834部を反応混合物に加えて、125℃まで昇温した。その後、ベンジルジメチルアミン1.0部を加え、エポキシ当量270になるまで130℃で反応させた。
【0098】
続いて、ビスフェノールA194部及びオクチル酸29部を加えて120℃で反応させたところ、エポキシ当量は1540となった。その後MIBK107部を加え反応混合物を冷却し、ジエタノールアミン85部を加え、110℃で2時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分80%となるまで希釈し、3級アミノ塩基を有するエポキシ樹脂(樹脂固形分80%)を得た。
【0099】
得られた樹脂に製造例1で得られたブロックイソシアネート硬化剤と固形分比で60/40で均一になるように混合した。その後、樹脂固形分100g当たり酸のミリ当量数が25になるようギ酸を加え、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のブロックイソシアネート含有のアミン変性エポキシ樹脂エマルションを得た。
【0100】
製造例6
顔料分散樹脂分散物の製造
まず、攪拌装置、冷却管、窒素導入管、温度計を装備した反応容器に、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す)222.0部を入れ、MIBK39.1部で希釈した後、ここへジブチルスズジラウリート0.2部を加えた。その後、これを50℃に昇温した後、2−エチルヘキサノール131.5部を攪拌下、乾燥窒素雰囲気中で2時間かけて滴下した。適宜、冷却することにより、反応温度を50℃に維持した。その結果、2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(樹脂固形分90.0%)が得られた。
【0101】
次いで適当な反応容器に、ジメチルエタノール87.2部、75%乳酸水溶液117.6部およびエチレングリコールモノブチルエーテル39.2部を順に加え、65℃で約半時間攪拌して、4級化剤を調製した。
【0102】
次に、エポン(EPON)829(シェル・ケミカル・カンパニー社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量193〜203)710.0部とビスフェノールA289.6部とを適当な反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、150〜160℃に加熱したところ初期発熱反応が生じた。反応混合物を150〜160℃で約1時間反応させて、次いで、120℃に冷却した後、先に調整した2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(MIBK溶液)498.8部を加えた。
【0103】
反応混合物を110〜120℃に約1時間保ち、次いで、エチレングリコールモノブチルエーテル463.4部を加え、混合物を85〜95℃に冷却し、均一化した後、先に調製した4級化剤196.7部を加えた。酸価が1となるまで反応混合物を85〜95℃に保持した後、脱イオン水964部を加えて、エポキシ−ビスフェノールA樹脂において4級化を終了させ、4級アンモニウム塩部分を有する顔料分散樹脂分散物を得た(樹脂固形分50%)。
【0104】
製造例7、8
顔料分散ペーストの製造
サンドグラインドミルに製造例6で得た顔料分散樹脂分散物を120部、カーボンブラック2.0部、表1に記載の焼成カオリンおよびケイ酸化合物100.0部、二酸化チタン80.0部、リンモリブデン酸アルミニウム18.0部およびイオン交換水221.7部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料ペーストを得た(固形分48%)。尚、焼成カオリンとケイ酸化合物との質量比は、各製造例において表1に示すように変化させた。
【表1】
ケイ酸化合物:シリカ粒子 富士シリシア化学株式会社製サイリシア
【0105】
表1で用いたケイ酸化合物(シリカ粒子)1質量%をpH12のアルカリ水溶液中に添加し、50℃、3日後の溶出したケイ酸イオンの平衡濃度を測定したところ、85ppmであった。
【0106】
実施例1
製造例2で得られたスルホニウム変性エポキシ樹脂エマルションと製造例3で得られたアミン変性エポキシ樹脂エマルションとを混合して、樹脂固形分比25/75とし、次いで製造例7で得られた顔料分散ペーストを混合した。さらにジブチルスズオキサイドを樹脂固形分に対し1質量%分とイオン交換水を加えて、固形分が20%のカチオン電着塗料組成物を得た。得られた電着塗料組成物のMEQ(A)(中和酸の量:塗料組成物に含まれているバインダー樹脂固形分100gに対するmg当量数)は19.5であり、塗料組成物中に含まれる顔料と樹脂固形分との質量比(P/V)は1/4であった。
【0107】
このように調製したカチオン電着塗料組成物のつきまわり性、耐ガスピン性を評価した。評価結果を表2に示した。
【0108】
実施例2
製造例2で得られたスルホニウム変性エポキシ樹脂エマルションと製造例3で得られたアミン変性エポキシ樹脂エマルションとを混合して、樹脂固形分比50/50とし、次いで製造例7で得られた顔料分散ペーストを混合した。さらにジブチルスズオキサイドを樹脂固形分に対し1質量%分とイオン交換水を加えて、固形分が20%のカチオン電着塗料組成物を得た。得られた電着塗料組成物のMEQ(A)は21.9であり、P/Vは1/4であった。こうして得た電着塗料組成物を、実施例1と同様にして評価した。結果については、表2に示した。
【0109】
実施例3
製造例2で得られたスルホニウム変性エポキシ樹脂エマルションと製造例3で得られたアミン変性エポキシ樹脂エマルションとを混合して、樹脂固形分比50/50とし、次いで製造例8で得られた顔料分散ペーストを混合した。さらにジブチルスズオキサイドを樹脂固形分に対し1質量%分とイオン交換水を加えて、固形分が20%のカチオン電着塗料組成物を得た。得られた電着塗料組成物のMEQ(A)は22.6であり、P/Vは1/4であった。こうして得た電着塗料組成物を、実施例1と同様にして評価した。結果については、表2に示した。
【0110】
実施例4
製造例2で得られたスルホニウム変性エポキシ樹脂エマルションと製造例3で得られたアミン変性エポキシ樹脂エマルションとを混合して、樹脂固形分比50/50とし、次いで製造例7で得られた顔料分散ペーストを混合した。さらにジブチルスズオキサイドを樹脂固形分に対し1質量%分とイオン交換水を加えて、固形分が20%のカチオン電着塗料組成物を得た。得られた電着塗料組成物のMEQ(A)は21.8であり、P/Vは1/3であった。こうして得た電着塗料組成物を、実施例1と同様にして評価した。結果については、表2に示した。
【0111】
実施例5
製造例2で得られたスルホニウム変性エポキシ樹脂エマルションと製造例3で得られたアミン変性エポキシ樹脂エマルションとを混合して、樹脂固形分比50/50とし、次いで製造例7で得られた顔料分散ペーストを混合した。さらにジブチルスズオキサイドを樹脂固形分に対し1質量%分とイオン交換水を加えて、固形分が20%のカチオン電着塗料組成物を得た。得られた電着塗料組成物のMEQ(A)は14.4であり、P/Vは1/4であった。こうして得た電着塗料組成物を、実施例1と同様にして評価した。結果については、表2に示した。
【0112】
実施例6
製造例2で得られたスルホニウム変性エポキシ樹脂エマルションと製造例3で得られたアミン変性エポキシ樹脂エマルションとを混合して、樹脂固形分比50/50とし、次いで製造例7で得られた顔料分散ペーストを混合した。さらにジブチルスズオキサイドを樹脂固形分に対し1質量%分とイオン交換水と酢酸を加えて、固形分が20%のカチオン電着塗料組成物を得た。得られた電着塗料組成物のMEQ(A)は25.5であり、P/Vは1/4であった。こうして得た電着塗料組成物を、40℃で撹拌して塗料に含まれるエチレングリコールモノブチルエーテルを半分まで削減した。これを実施例1と同様にして評価した。結果については、表2に示した。
【0113】
比較例1
製造例4で得られたアミン変性エポキシ樹脂エマルションに、製造例7で得られた顔料分散ペーストを混合した。さらにジブチルスズオキサイドを樹脂固形分に対し1質量%分とイオン交換水を加えて、固形分が20%のカチオン電着塗料組成物を得た。得られた電着塗料組成物のMEQ(A)は30であり、P/Vは1/4であった。こうして得た電着塗料組成物を、実施例1と同様にして評価した。結果については、表3に示した。
【0114】
比較例2
製造例5で得られたアミン変性エポキシ樹脂エマルションに、製造例7で得られた顔料分散ペーストを混合した。さらにジブチルスズオキサイドを樹脂固形分に対し1質量%分とイオン交換水を加えて、固形分が20%のカチオン電着塗料組成物を得た。得られた電着塗料組成物のMEQ(A)は22であり、P/Vは1/4であった。こうして得た電着塗料組成物を、実施例1と同様にして評価した。結果については、表3に示した。
【0115】
比較例3
製造例2で得られたスルホニウム変性エポキシ樹脂エマルションと製造例3で得られたアミン変性エポキシ樹脂エマルションとを混合して、樹脂固形分比10/90とし、次いで製造例7で得られた顔料分散ペーストを混合した。さらにジブチルスズオキサイドを樹脂固形分に対し1質量%分とイオン交換水を加えて、固形分が20%のカチオン電着塗料組成物を得た。得られた電着塗料組成物のMEQ(A)は21.5であり、P/Vは1/4であった。こうして得た電着塗料組成物を、実施例1と同様にして評価した。結果については、表3に示した。
【0116】
実施例および比較例で得られたカチオン電着塗料組成物を電着塗装して得られた電着塗膜および硬化塗膜について、以下の方法により評価を行なった。
【0117】
<つきまわり性>
実施例および比較例によって得られたカチオン電着塗料組成物を使用して、図3に示す測定装置によりつきまわり性を測定した。導電性の電着塗装容器201(内径105mm、高さ370mm)に、調製した電着塗料207 3リットルを入れ、スターラー205で撹拌した。評価板203(寸法15mm×400mm、厚さ0.7mm)としてリン酸亜鉛処理鋼板(JIS G 3141 SPCC−SDのサーフダインSD−2500処理)を用いた。電着塗装容器201に、両端開放形状のパイプ202(内径17.5mm、長さ375mm、肉厚1.8mm)を配置し、評価板203をそのパイプの中に、パイプと接触しないように配置した。評価板203とパイプ202について、電着塗料に30cm浸漬した。
【0118】
電着塗装容器201を正極、上記評価板203を陰極として電圧を印加して塗装した。塗装は、印加開始から30秒間かけて200Vの電圧に昇圧し、その後、150秒間所定の電圧を維持することにより行った。この時の浴温は28℃に調節した。塗装後の評価板は、水洗した後、150℃で25分間焼き付けし、評価板の膜厚を測定した。評価板上の膜厚が6μmである位置に記しを付け、その記し位置の、評価板底面部からの距離(cm)を測定した。評価板の塗装塗膜は、一般に、底面部(パイプ入口部分)が厚く、そこから離れるほど薄くなるため、6μmの位置が底面部から離れているほど、つきまわり性が良好であるといえる。
【0119】
評価基準
○:評価板上の膜厚が6μmである位置の、評価板底面部からの距離が18cm以上30cm未満である。
△:評価板上の膜厚が6μmである位置の、評価板底面部からの距離が15cm以上18cm未満である。
×:評価板上の膜厚が6μmである位置の、評価板底面部からの距離が15cm未満である。
【0120】
<電導度>
実施例および比較例によって得られたカチオン電着塗料組成物200mlを含む電着浴において、25℃で、導電率計(東亜電波工業(株)社製 CM−305)を用いて電導度を測定した。
【0121】
<電着塗膜の膜抵抗>
カチオン電着塗料組成物を含む電着浴に、リン酸亜鉛処理鋼板(JIS G 3141 SPCC−SDのサーフダインSD−2500処理)(寸法:70mm×150mm、厚さ0.7mm)を電着塗料に10cm浸漬した。この鋼板に電圧を印加し、30秒間かけて200Vの電圧に昇圧し、150秒間電着した。浴温28℃における塗膜厚20μmの塗装電圧および電着終了時の残余電流を測定して、塗膜抵抗値(kΩ・cm2)を算出した。
【0122】
<耐ガスピン性>
カチオン電着塗料組成物を含む電着浴に、化成処理を行なった合金化溶融亜鉛めっき鋼板(寸法:70mm×150mm、厚さ0.7mm)を浸した。この鋼板に電圧を印加し、30秒間かけて200Vの電圧に昇圧し、150秒間電着した。この時の浴温は28℃に調節した。その後、水洗し、150℃で25分間焼き付けて、硬化塗膜を得た。得られた塗膜の塗面状態を目視観察した。塗膜異常が認められない場合を○とし、それ以外を×とした。
○:ガスピンなし
×:ガスピンあり
【0123】
<拡散パラメータ>
リン酸亜鉛処理鋼板(JIS G 3141 SPCC−SDのサーフダインSD−2500処理)を用いて、上述の方法により測定した。なお、本明細書では拡散パラメータの平方根(√Tc)で記載する。
【0124】
<最小析出pH>
実施例および比較例によって得られたカチオン電着塗料組成物4 lを含む電着浴において、リン酸亜鉛処理鋼板(JIS G 3141 SPCC−SDのサーフダインSD−2500処理)に塗装面積が50mm×50mmとなるようにマスキングを行ない、電流密度1mA/cm2で28℃で定電流電着塗装を行なった。上述の方法により、最小析出pHを求めた。
【0125】
【表2】
【表3】
【0126】
以上の結果より、バインダー樹脂として所定量のスルホニウム変性エポキシ樹脂を含有するカチオン電着塗料組成物は、スルホニウム変性エポキシ樹脂の含有量が少ないカチオン電着塗料組成物と比較して、つきまわり性および耐ガスピン性が優れていることが確認された。
【0127】
【発明の効果】
本発明により、高つきまわり性であっても塗膜にガスピンが生じ難い、つまり耐ガスピン性である、無鉛性カチオン電着塗料組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 最小析出pHにおける印加電圧と通電時間との関係を示すグラフである。
【図2】 塗膜の拡散パラメータの測定方法の一態様を示す模式断面図である。
【図3】 つきまわり性測定装置の概要を示す模式図である。
【符号の説明】
100…塗装板、
101…塗膜、
102、102’…シリコンゴムパッキング、
103…白金のリング状電極、
104…テフロン( 登録商標 )リング、
105…被塗物、
106…エレクトロメーター、
107…記録計、
201…電着塗装容器、
202…パイプ、
203…評価板、
204…液面、
205…スターラー、
206…電源、
207…電着塗料。
Claims (4)
- 水性媒体、水性媒体中に分散するか又は溶解した、バインダー樹脂、中和酸、有機溶媒、顔料、金属触媒、およびケイ酸化合物を含有する無鉛性カチオン電着塗料組成物であって、
被塗物に対して厚さ20μmに電着された電着塗膜の膜抵抗が1000〜2500kΩ・cm2であって、
塗料組成物の電導度が1500〜2000μS/cmであって、かつ電着塗装における最小析出pHが11.90〜12.00であり、
前記バインダー樹脂が、スルホニウム変性エポキシ樹脂、ビスフェノール型アミン変性エポキシ樹脂、およびブロックポリイソシアネート硬化剤を含み、
スルホニウム変性エポキシ樹脂とビスフェノール型アミン変性エポキシ樹脂との質量比が25/75〜50/50であり、
塗料組成物中に含まれる顔料と樹脂固形分との質量比(P/V)が1/4〜1/3であり、前記ケイ酸化合物は、ケイ酸化合物を1質量%含有するアルカリ性水溶液に溶出したケイ酸イオンの平衡濃度が50〜3000ppmである多孔質シリカ粒子であり、塗料の樹脂固形分100質量部に対し、0.5〜20質量部含有する、
無鉛性カチオン電着塗料組成物。 - 前記バインダー樹脂が、100gに含まれるスルホニウム塩基のミリ当量数が7〜45であるスルホニウム変性エポキシ樹脂、ビスフェノール型アミン変性エポキシ樹脂、およびブロックポリイソシアネート硬化剤を含み、
前記中和酸の量がバインダー樹脂固形分100gに対して10〜25mg当量である、
請求項1記載の無鉛性カチオン電着塗料組成物。 - 硬化塗膜とした場合にその拡散パラメータの平方根が2.5〜3.2である、請求項1記載の無鉛性カチオン電着塗料組成物。
- 前記ビスフェノール型アミン変性エポキシ樹脂は、オキサゾリドン環含有ビスフェノール型エポキシ樹脂からなる、請求項1〜3いずれか1つに記載の無鉛性カチオン電着塗料組成物。
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