以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明のパンツ型使い捨ておむつの一実施形態の斜視図が示されている。図2には、図1に示すおむつを組み立てる前の状態の分解斜視図が示されている。図3(a)及び(b)には、図2における外包材の展開状態の平面図が示されている。図3(a)と図3(b)は同じ図面であり、図面を見やすくすることを目的として符号を分けて示してある。なお以下の説明において、仮想展開図とは、パンツ型おむつをその真横の位置で縦方向に仮想的に切断し展開して得られた図をいう。また仮想縦切断線とは、パンツ型おむつをその真横の位置で縦方向に仮想的に切断するときの線をいう。
本実施形態のおむつ1は、液透過性の表面シート2、液不透過性又は撥水性の裏面シート3及び両シート2、3間に介在配置された液保持性の吸収性コア4を有する実質的に縦長の吸収体本体10と、該吸収体本体10の裏面シート3側に配された外包材11とを備えている。
外包材11は、その両側縁が、長手方向中央部において内方に括れた砂時計形の形状をしており、おむつの輪郭を画成している。これによって外包材11の左右両側部にはレッグホールHが形成される(図2参照)。外包材11はその長手方向において、着用者の腹側に配される腹側部Aと背側に配される背側部Bとその間に位置する股下部Cとに区分される。腹側部A、背側部B及び股下部Cは、展開状態(各部の弾性部材を伸張させ平面状に拡げた状態、図3に示す状態)のおむつ1において、その長手方向(図3の上下方向)の全長を略3等分するように3領域に区分したときの各領域である。図3(a)に示すように、外包材11の長手方向前側部及び後側部それぞれには、左右に延出するフラップ部Fが形成されている。外包材11においては、その腹側部Aのフラップ部Fの両側縁A1,A2と、背側部Bのフラップ部Fの両側縁B1,B2とが互いに接合されて、図1に示すように、おむつ1にウエスト開口部5及び一対のレッグ開口部6が形成されている。また、この接合によって、おむつ1の左右両側縁には一対のサイドシール部Sが形成される。この接合には例えばヒートシール、高周波シール、超音波シール等が用いられる。なお、本実施形態のおむつ1においては、おむつ1の真横にサイドシール部Sが設けられているので、おむつ1をその真横の位置で縦方向に仮想的に切断し展開して得られた仮想展開図の形状は、外包材11の展開図の形状と一致している。また仮想縦切断線は、サイドシール部S上を縦方向に通る線と一致している。
表面シート2及び裏面シート3はそれぞれ矩形状であり、これらと吸収性コア4とが一体化されて縦長の吸収体本体10を形成している。表面シート2及び裏面シート3としては、従来この種のおむつに用いられているものと同様のものを用いることができる。吸収性コア4の詳細については後述する。
図2に示すように、吸収体本体10の長手方向の左右両側には、液抵抗性ないし撥水性で且つ通気性の素材から構成された側方カフス8,8が形成されている。各側方カフス8は、吸収体本体10の長手方向に沿って固定端部及び自由端部を有している。固定端部は、表面シート2に固定されている。一方、自由端部の近傍には、側方カフス弾性部材81が伸張状態で配されている。これにより側方カフス8が起立して、吸収体本体10の幅方向への液の流出が阻止される。
外包材11は、少なくとも二枚の不織布、即ち外層不織布12と該外層不織布12の内面側に配された内層不織布13とを有している。外層不織布12はおむつ1の外面をなし、内層不織布13は外層不織布12の内面側に、ホットメルト粘着剤等の接着剤によって接合されている。外層不織布12と内層不織布13は液の染み出し性を考慮すると共に撥水性であることが好ましい。
外包材11は、吸収体本体10の前後端縁から外方に延出しており、延出した部分が吸収体本体10側に折り返されている。折り返された外包材11は、吸収体本体10の前後端部上(即ち吸収体本体10の前後端部における表面シート2上)を被覆している。
図3(b)に示すように、外包材11における前後端部には、前後端縁に沿って、複数のウエスト部弾性部材51、51がその幅方向に亘り配されている。各ウエスト部弾性部材51、51は、外層不織布12と内層不織布13とによって伸張状態で挟持固定されている。各ウエスト部弾性部材51、51は、おむつ1の腹側部Aの両側縁A1,A2と背側部Bの両側縁B1,B2とを互いに接合させたときに、両弾性部材51、51の端部同士が重なるように配されている。これによって、図1に示すように、おむつ1のウエスト開口部5の付近には実質的に連続したリング状のウエストギャザーが形成される。
図3(b)に示すように、おむつ股下部Cにおける外包材11の両側部には、レッグ開口部の周縁形状に沿った弾性部材が配されていない。即ち、吸収性本体と外包材とからなる従来のパンツ型使い捨ておむつにおいては、外包材11の左右両側の湾曲部に、おむつ腹側部から背側部に亘って実質的に連続するようにレッグ部弾性部材が配されており、該レッグ部弾性部材の収縮によって、おむつ1のレッグ開口部6、6の付近には実質的に連続したリング状のレッグギャザーを形成することが一般的である。しかし、外包材に配した弾性部材によって形成したレッグギャザーは、脚周りにフリルやヒラヒラした部分を形成し、脚周りの外観をすっきりさせるという点からは好ましくない。また、そのようなギャザーは、おむつにズボン等を重ねて履いたときに、着用者に違和感を与えることにもなる。
本おむつ1においては、おむつ股下部Cにおける外包材11の両側部に、レッグ開口部の周縁形状に沿った弾性部材を配さないことで、脚周りの外観を一層すっきりとしたものとでき、また、ズボン等を重ねて履いたときの違和感も防止することができる。
おむつ1においては、おむつ1の腹側部A及び背側部Bそれぞれにおけるウエスト開口部5とレッグ開口部6との間に、おむつ1の幅方向に延びる弾性部材が多数配されている。弾性部材が配されることによって、図3(b)に示すように、ウエスト開口部5とレッグ開口部6との間にはおむつ1の幅方向に延在する第1領域71と第2領域72とが形成されている。第1領域71には第1弾性部材71aが配されており、第2領域72には第2弾性部材72aが配されている。第1領域71はウエスト開口部5とレッグ開口部6との間に位置し、第2領域72は第1領域71とレッグ開口部との間に位置している。
第1弾性部材71a及び第2弾性部材72aは何れも外層不織布12と内層不織布13とによって伸張状態で挟持固定されている。第1弾性部材71aは、おむつ1の腹側部Aの両側縁A1,A2と背側部Bの両側縁B1,B2とを互いに接合させたときに、腹側部Aの第1弾性部材71aと背側部Bの第1弾性部材71aとの端部同士が重なるように配されている。第2弾性部材72aについても同様である。これによって、図1に示すように、おむつ1の腹側部A及び背側部(図示せず)における第1領域71及び第2領域72にはギャザーがそれぞれ形成される。
第1弾性部材71a及び第2弾性部材72aは何れも、おむつ1の左右両側縁(即ち外包材11の左右両側縁)と吸収性コア4の左右両側縁との間に亘って延在している。そして、吸収性コア4が存在している部位には、第1弾性部材71a及び第2弾性部材72aは何れも実質的に存在していない。その結果、第1領域71及び第2領域72に形成されるギャザーは、おむつ1の左右両側縁と吸収性コア4の左右両側縁との間に位置しており、吸収性コア4が存在する位置にはギャザーが実質的に形成されていない。
本実施形態のおむつ1における各弾性部材としてはそれぞれ、天然ゴム、ポリウレタン系樹脂、発泡ウレタン系樹脂、伸縮性不織布又はホットメルト系伸縮部材等の伸縮性素材を糸状(糸ゴム)、帯状(平ゴム)、ネット状(網状)又はフィルム状に形成したものが好ましく用いられる。
図3(a)に示すように、本実施形態のおむつ1においては、先に述べた仮想展開図、即ち本実施形態のおむつ1における外包材11の展開図の前側部において、仮想縦切断線、即ちサイドシール部上を通る縦線S1とこれに交差するレッグホールとのなす角θ1が90度未満になっている。即ち、おむつ1の腹側部A(外包材11の展開図の前側部)におけるレッグホールの形状は、内方にえぐれた凹形状になっている。この角度は、50〜85度であることが好ましい。一方、外包材11の展開図の後側部においては、サイドシール部上を通る縦線S2の下端部の位置P1、及び長手方向中央線Uとレッグホールとの交点の位置P2を結ぶ直線P1−P2よりも、レッグホールが外方に向けて凸形状となっている。
このように、本実施形態のおむつ1においては、腹側部Aのレッグホールが内方にえぐれた凹形状になっていると共に、展開図の後側部のレッグホールが外方に向けた凸形状になっている。このような特異な形状のレッグホールは、着用者の鼠蹊部に極めて良好にフィットする。その結果、着用状態におけるおむつ1の外観が極めて良好になる。特に、おむつ1の股下部Cが外観上すっきりとしたものとなる。また、着用者の足回りに隙間が生じることが防止されるので、おむつ1のレッグホールに弾性部材を配した場合、その締め付け力を低減することができる。また、おむつ1の着用中に着用者の動作等に起因するおむつ1のずれ落ちや、レッグホール後側部のずれ上がりによる臀部露出が起こりづらくなる。特におむつ1の股下部Cのだぶつきが起こりづらい。おむつ1のレッグホールの締め付け力を低減できることと、ずれ落ちやずれ上がりが起こりにくくなることに起因して、着用者の動作が妨げられにくくもなる。
なお、展開図の後側部のレッグホールが外方に向けた凸形状になっているとは、図3(a)に示す形状のみならず、全体が凸形状でなく、部分的に凸形状部を有するもの、例えば図5(a)ないし(c)に示す形状も含まれる趣旨である。
レッグホールを着用者の鼠蹊部に一層良好にフィットさせる観点から、外包材11の展開図の後側部において、図3(a)に示すように、凸形状部における直線P1−P2とレッグホールとの距離が最も大きくなる該直線P1−P2上での位置(図中、P3で示す)を、該直線P1−P2の中点(図中、P4で示す)よりも、外包材11の展開図の中央側に位置させている。つまり、凸状形状になっているレッグホールの頂点が、おむつ股下部C寄りの位置にあることで、レッグホールを着用者の鼠蹊部に一層良好にフィットさせることができる。
同様に、レッグホールを着用者の鼠蹊部に一層良好にフィットさせる観点から、図3(a)に示すように、凸形状部における直線P1−P2とレッグホールとの距離が最も大きくなる該直線P1−P2上での位置P3と、直線P1−P2の中点P4との距離を0〜50mmに設定している。この距離は、0〜30mm、特に0〜20mmであることが好ましい。
レッグホールを着用者の鼠蹊部に良好にフィットさせるためには、おむつ1の腹側部Aと背側部Bとのバランスも重要である。詳細には、図3(a)に示すように、外包材11の展開図の前側部におけるサイドシール部上を通る縦線S1の下端部から、該展開図における最小幅部までの長さT1と、外包材11の展開図の後側部におけるサイドシール部上を通る縦線S2の下端部から、該展開図における最小幅部までの長さT2との比、即ちT1:T2を25:75〜40:60に設定している。この比はT1:T2=30:70〜35:65であることが好ましい。T1とT2の比がこの範囲外であると、鼠蹊部の立体形状に沿うようにレッグホールが鼠蹊部にフィットしなくなり、おむつと着用者の身体との間に隙間が生じることを防止するためには、過度の締め付け力を有した弾性部材をおむつに配置する必要が生じると共に、着用状態でのおむつの外観が低下してしまう。なお最小幅部が一カ所に定まらず、最小幅部が同幅で長手方向に延びているときには、その同幅の部分の長手方向1/2の長さの位置を最小幅部と定義する。
着用者が動いてもレッグホールの位置が着用者の鼠蹊部に適正にフィットするようにするためには、外包材11の展開図の後側部において、レッグホールの周縁部が、該周縁部に対して直交する方向に伸縮可能になされていることが有利であることを本発明者らは知見した。この目的のために、図3(a)に示すように、後側部のレッグホールの周縁部における外層不織布と内層不織布との間に弾性部材Eを配して、当該部位に伸縮性を付与することが好ましい。この場合、弾性部材Eの配列方向は、外包材11の展開図における幅方向中心線Vとのなす角θ2が好ましくは10〜90度、更に好ましくは30〜60度となるような方向とする。これによって、着用者が動いても当該部位が脚の動きに伴う皮膚の伸縮に追従して柔軟に伸縮するため、該部位のたぶつきや、該部位のずれ上がりによる臀部露出等を防止することができる。その結果、着用状態でのおむつ1の着用感や外観が一層向上する。
着用状態でのおむつの外観を一層向上させる観点から、図3(a)に示すように、外包材11の展開状態において、前側部におけるサイドシール部上を通る縦線S1の下端部と、後側部におけるサイドシール部上を通る縦線S2の下端部との間の距離Mを210〜280mmとすることが好ましい(以下、この距離のことを下端間距離という)。この下端間距離Mの値は、着用者の体型に対して最適化された値であり、従来のパンツ型おむつにおける下端間距離よりも短い値であることによって特徴付けられる。下端間距離Mは、パンツ型おむつにおいて、着用者の股間部に位置する部分の長さ若しくは面積を表す尺度になるものである。詳細には、下端間距離Mの長いパンツ型おむつでは、着用者の股間部に位置する部分の長さが長く若しくは面積が広くなり、下端間距離Mの短いおむつではその逆となる。そして本実施形態のおむつ1においては、下端間距離Mを着用者の体型に対して最適化した結果、従来のパンツ型おむつに比較して短くし、おむつ1のうち、着用者の股間部に位置する部分の長さが従来より短く、若しくは面積が従来よりも狭くなしている。その結果、おむつ1の吸収性コア4のうち、着用者の股間部に存在する部分が少なくなり、おむつ1の股下部Cのだぶつきが少なく、外観上すっきりとしたものとなる。そのため、着用者の動作、特に足の動きが妨げられにくくもなる。また、おむつの着用中に着用者の動作等に起因するおむつのずれ落ちが起こりづらい。その結果、尿や便の漏れも起こりづらい。また、おむつの上にオーバーパンツやズボンをはかせる際も、はかせやすく、はかせた後の外観もすっきりしている。
おむつ1の股下部Cの外観を一層すっきりとさせる観点から、おむつ1における下端間距離Mを230〜270mm、特に230〜260mmとすることが好ましい。
着用者の股間部に適正な量(長さ若しくは面積)の吸収性コア4を存在させて、おむつ股下部Cの外観を向上させるためには、下端間距離Mのみならず、おむつ股下部Cにおける幅方向の寸法も重要である。おむつ股下部Cの寸法が大きすぎると、股下部Cが着用者の股間部に適切にフィットしなくなり、だぶつきが生じてしまう。この観点から、本実施形態においては、おむつ股下部Cの最小幅部の幅、即ち展開状態の外包材11の長手方向中央部における最小幅部の幅N(図3(a)参照)を50〜150mmに設定することが好ましい。
前記の最小幅部の幅Nは、従来のパンツ型おむつに比較して短いものである。つまり、本実施形態のおむつ1においては、着用者の股間部に存在する吸収性コア4の寸法が、その長手方向及び幅方向の何れにおいても、従来のパンツ型おむつに比較して短くなっている。おむつ股下部Cの外観を一層向上させる観点から、前記の最小幅部の幅Nは60〜140mm、特に60〜120mmであることが好ましい。
本実施形態のおむつ1においては、先に説明した第1領域71におけるおむつ1の着用時の圧力を好ましくは1.1〜2.5kPa、更に好ましくは1.1〜2.0kPa、一層好ましくは1.2〜1.8kPaとなすことで、おむつ1のずれ落ちを防止し、着用状態でのおむつ1の外観を一層向上させることができる。第1領域71は、おむつ1を着用したときに着用者の腸骨稜から上前腸骨棘にかけての部位(以下、腸骨領域ともいう)に当接する部位に好ましくは形成されている。腸骨稜及び上前腸骨棘は解剖学の用語である。腸骨稜とは図7において9aで示される部位であり、上前腸骨棘とは同図において9bで示される部位である。従来、パンツ型おむつの着用中のずれ落ちを防止するためには、特に幼児用のパンツ型使い捨ておむつの着用中のずれ落ちを防止するためには、ウエスト開口部に配設する弾性部材の締め付け圧を高くして、該ウエスト開口部によってパンツ型おむつを着用者の身体に密着させることが有効であると考えられてきた。しかし本発明者らの検討の結果、パンツ型おむつの着用中のずれ落ちを効果的に防止するためには、ウエスト開口部の締め付け圧を高くするよりも、着用者の腸骨領域に対応するおむつの部位の締め付け圧を従来よりも高めることが有効であることが見出された。この理由は、着用者、特に幼児は、その身体的な特徴として腹まわりが張り出しているので、当該張り出している腹まわりに当接するウエスト開口部の締め付け圧を高くすると、その締め付け圧が高い故にウエスト開口部が次第に絞り込まれて、腹まわりが細くなる部位にまで該ウエスト開口部がずれ下がってくるからである。
第1領域71におけるおむつ1の着用時の圧力は、例えば第1弾性部材71aの素材や太さ、伸長率、或いは配設間隔を調整することでコントロールすることができる。
第1領域71におけるおむつ1の着用時の圧力は、周長が500mmの円筒におむつ1を装着し、装着圧測定装置((株)エイエムアイ・テクノ製の接触圧測定器(AMI3037−2))によって測定される。具体的な測定法は以下の通りである。
〔第1領域71の圧力の測定方法〕
φ=15mmのエアパックを用い、ウエスト開口部の先端部にエアパックの中心が位置するようにセットし、装着圧(P1)を測定する。エアパックをセットするおむつ幅方向の位置は、おむつの左右両側縁と吸収性コア4の左右両側縁とのほぼ中心とする。続いておむつ1の長さ方向に5mmエアパックの中心を移動させ装着圧(P2)を測定する。同様に5mm間隔で測定を行い、P3,P4,P5,・・・,Pnを得る。P1ないしPnの測定は外包材11におけるウエスト開口部からレッグ開口部までの左右両側部どうしが互いに接合されている範囲にわたって行う。P1ないしPnは腹側部において、左右2点ずつ計4点測定を行う。これらの平均値を腹側部の装着圧とする。同様に背側部においても、計4点測定を行い、平均値を背側部の装着圧とする。P1からPnの値において1.1〜2.5kPaに連続的に該当する部位間の距離を第1領域71の幅とする。例えば、P3からP6までが該当する場合、領域の幅=(6−3)×5=15mmとする。またその時の第1領域71の中心は測定点3と測定点6の中点とする。
円筒の周長を500mmとした理由は、本実施形態のおむつ1を着用する主たる対象者である幼児の腹まわりの長さの平均がおおよそ500mmであることによる。なお、ここで言う腹まわりの長さは、幼児の姿勢が変化した時の腹まわりの周長の変化を考慮し、立位および座位で測定した腹まわりの平均値である。
着用者の腸骨稜から上前腸骨棘にかけての部位には一定の幅があり、当該幅の範囲内でおむつ1の第1領域71を当該部位に固定することで、おむつ1のずれ落ちを効果的に防止することができる。この観点から、本実施形態のおむつ1においては、図3(b)に示すように、第1領域71の幅(つまり、おむつ1の長手方向に沿う第1領域71の長さ)W1を12〜35mmとすることが好ましい。この幅Wが20〜35mm、特に25〜30mmであると、おむつ1のずれ落ちを一層効果的に防止することができ、また着用状態でのおむつ1の外観やおむつ1の装着操作(はかせやすさ等)を一層向上させることができる。
おむつ1を着用した状態で、第1領域71が着用者の腸骨稜から上前腸骨棘にかけての部位に当接するようにするためには、おむつ1の寸法と着用者の体格との関係も重要である。例えばパンツ型おむつの主たる着用対象者である幼児を考えた場合、おむつ1の展開状態において、腹側部Aの第1領域71の中心位置(おむつ1の長手方向に沿う中心位置)とおむつ1の長手方向中心線CLとの間の距離K1を180〜230mmとし、且つおむつ1の展開状態において、背側部Bの第1領域71の中心位置(おむつ1の長手方向に沿う中心位置)とおむつ1の長手方向中心線CLとの間の距離K2を180〜230mmとすることで、第1領域71を着用者の腸骨領域に首尾良く当接させることができる。この値はパンツおむつの主たる着用対象者である幼児約350人の身体計測を実施して決定されたものである。具体的には図8に示すように、上前腸骨棘の水平位置高さにある腹側部左右中心点を上前腸骨棘高前中心とし、背側部を上前腸骨棘高後中心とすると、上前腸骨棘高前中心から股下を経由し上前腸骨棘高後中心までの長さを上前腸骨棘高前後長とし、この上前腸骨棘高前後長におむつの材料による厚み等を考慮した必要長を加えて得られた数値を二分したものである。当該距離K1およびK2を185〜220mm、特に195〜215mmとすることで、第1領域71を着用者の腸骨領域に一層首尾良く当接させることができる。
本実施形態のおむつ1における締め付け力は、主として、第1領域71に配された第1弾性部材71aを利用することが好ましい。換言すれば、従来のパンツ型おむつと異なり、ウエスト開口部5に配された弾性部材による締め付け力を、着用者の身体におむつ1を固定するための主たる手段として用いる必要はない。逆にウエスト開口部5の締め付け力を高くしてしまうと、おむつ1のずれ落ちが助長されてしまうことが本発明者らによって確認されている。この観点から、本実施形態のおむつ1においては、おむつ着用時のウエスト開口部5の圧力を、従来のパンツ型おむつのそれよりも低い値である0.3〜1.2kPaとなすことが好ましい。この圧力は、おむつ着用時の第1領域71の圧力よりも低いことが好ましい。また、おむつ着用時のウエスト開口部5の圧力を前記範囲内とすることで、おむつ1の着用時にウエスト開口部5を拡開しやすくなり、装着操作を行いやすくなるという利点もある。0.3kPa未満であると、装着する前のおむつ1の自然長が大きくなり、衣服として見たときの見映えが悪い等の不具合が生じることがある。
おむつ着用時のウエスト開口部5の圧力が、更に好ましくは0.4〜1.2kPa、一層好ましくは0.4〜0.8kPaとなされていると、おむつ1のずれ落ちを一層効果的に防止することができる。ウエスト開口部5の圧力は、先に述べた第1領域71の圧力と同様の方法によって測定することができる。即ち、おむつ1のウエスト開口部5に周長500mmの円筒を挿入(装着)し、ウエスト開口部の先端部よりおむつ長手方向に15mmの位置に装着圧測定装置のエアパックの中心を位置させ装着圧を測定する。測定は円周方向に50mm間隔にて10点行い、その平均値をもってウエスト開口部の圧力とする。図9(a)及び(b)に示すように、腹側部Aの両側縁A1,A2が、背側部Bの両側縁B1’,B2’と接合されておらず、両側縁B1’,B2’よりも長手方向内方の位置であるB1,B2において接合されている場合においては、腹側と背側とが重なっている領域のうち、最も端部寄りの位置をもってウエスト開口部とする。ウエスト開口部5の圧力は、例えばウエスト部弾性部材51の素材、太さや伸長率、或いは配設間隔を調整することでコントロールすることができる。尚、ウエスト開口部5の圧力が第1領域71の圧力の範囲に入る場合は、当該位置は第1領域71に含まれるものとする。
更に本実施形態のおむつ1においては、おむつ着用時の、第1領域71とレッグ開口部6との間に位置する第2領域72の圧力が好ましくは0.2〜0.8kPa、更に好ましくは0.3〜0.6kPaになされている。これによって、おむつ1を着用者の身体に適度な圧力で密着させることができ、液漏れを効果的に防止することができる。第2領域72は、おむつ1を着用した場合に、着用者の腸骨領域の下側の領域(下腹部)に当接する。図3(b)に示すように、第2領域72の幅(つまり、おむつ1の長手方向に沿う第2領域72の長さ)W2は40〜70mm、特に45〜65mmであることが好ましい。
本おむつ1における吸収性コア4は、図8に示すように、おむつの股下部Cにおいて、中央吸収体4bと該中央吸収体4bの両側方に位置する一対のサイド吸収体4a,4cとに分離している。おむつの股下部Cにおいて、各吸収体4a,4b,4cは長手方向に延びている。これら3つの吸収体は、それら全体がティッシュペーパー(図示せず)によって包まれて、一体としての吸収性コア4を構成している。左右両側のサイド吸収体4a,4cは、吸収性コア4の長手方向におけるそれぞれの両端部において中央の吸収体4bと連続している。吸収性コア4は、その下面が外包材(図示せず)又はそれに固定された裏面シート3に接着固定されているが、この場合、吸収性本体10における、内部にサイド吸収体4a,4cが配された部分は、外包材に固定されておらず、外包材から離間可能になされている。一方、吸収性本体10における、内部に中央吸収体4bが配されている部分は、外包材11に固定されている。このような構成になっていることに起因して、おむつの着用中は、吸収性コア4の幅方向に加わる体圧によって、吸収性本体10における、内部にサイド吸収体4a,4cが配された部分(吸収性本体の側部)が外包材から離間して立ち上がる。吸収性本体の側部の立ち上がり性を向上させることを目的に、一対のサイド吸収体4a,4cそれぞれの外縁部(吸収性コア4の幅方向外方側の縁部)近傍に弾性部材が配置されていることが好ましい。その結果、吸収性コア4の実質的な幅は中央吸収体4bの幅に近づく。要するに、おむつの着用前の吸収性コア4の幅は大きいものの、着用中の吸収性コア4の幅は小さくなって、吸収性コア4が着用者の股間部に適切にフィットするようになる。これと共に、サイド吸収体4a,4cの存在によって、吸収性コア4全体としての吸収容量は十分に確保される。このような理由により、本実施形態のおむつにおいては、着用者の股間部に存在する吸収性コア4の量が少なくなっても、吸収容量の低下が防止される。
更に、おむつの股下部Cにおける吸収性コア4を、中央吸収体4bとサイド吸収体4a,4cとに分離することにより、吸収性コア4や吸収性本体10の両側部が、股間部においてヨレ曲がったり、肌から離れたりすることなく、着用者の鼠蹊部に良好にフィットし易くなる。これにより、着用者の脚周りの外観を一層良好なものとでき、また、オーバーパンツやズボンを重ねてはいたときもゴワゴワ感が一層低減される。尚、前記線CL上において測定した中央吸収体の幅は、20〜90mmが好ましく、20〜80mmであることが更に好ましく、30〜70mmであることが一層好ましい。また、おむつ1の装着前の吸収性コア4の幅(左右の分割体が離間する前の幅)は50〜150mmに設定されることが好ましい。股下における吸収性能の観点より、60〜150mmであることが更に好ましく、70〜140mmであることが一層好ましい。
本おむつ1においては、吸収性コア4として、親水性を有する長繊維のウエブを含み、該長繊維は40〜90%の捲縮率を有し且つ該吸収性コアの平面方向に配向しているものを用いている。以下、この構成を具備する吸収性コアを長繊維吸収性コアともいう。
長繊維吸収性コアを用いることにより、従来の吸収体と同程度の吸収容量を保ちつつ、薄型化及び低坪量化することができるので、装着観が全体的にすっきりしていて特に股間部がもたつく事がない。更に薄いので携帯にも便利である。また、着用者が激しい動作を行っても吸収体の構造が破壊されないので、ヨレずに吸収性が維持され、パットスタビリティーも良好である。
以下、本発明において好ましく用いられる長繊維吸収性コアの例について説明する。
図9は、長繊維吸収性コアの一例を示す模式断面図である。図9に示す長繊維吸収性コア101は、主として長繊維のウエブ(以下、ウエブという)102及び高吸収性ポリマーの散布層(以下、ポリマー層という)103を備えている。長繊維吸収性コア101はウエブ102を複数備えており、ウエブ102,102間にポリマー層103が位置している。ウエブの層数は3層以上とすることもできる。
親水性を有する長繊維には、本来的に親水性を有する長繊維、及び本来的には親水性を有さないが、親水化処理が施されることによって親水性が付与された長繊維の双方が包含される。好ましい長繊維は本来的に親水性を有する長繊維であり、特にアセテートやレーヨンの長繊維が好ましい。とりわけアセテートは湿潤しても嵩高性が保持されるので特に好ましい。
長繊維としては捲縮しているものを用いる。長繊維はその捲縮率(JIS L0208)が40〜90%であり、好ましくは50〜80%である。捲縮した長繊維からウエブを形成することで、該ウエブ中に高吸収性ポリマーを安定的に且つ多量に埋没担持することが容易となる。捲縮を有さないか、又は捲縮の程度が小さい長繊維のみからウエブを構成し、これを吸収体として用いると、高吸収性ポリマーを多量に用いた場合にその極端な移動や脱落が起こりやすい。逆に捲縮率が高すぎる長繊維を用いると、長繊維間に高吸収性ポリマーを入り込ませるのが容易でなく、やはり高吸収性ポリマーを多量に用いた場合にその極端な移動や脱落が起こりやすい。長繊維を捲縮させる手段に特に制限はない。また、捲縮は二次元的でもよく或いは三次元的でもよい。捲縮率は、長繊維を引き伸ばしたときの長さAと、元の長繊維の長さBとの差の、伸ばしたときの長さAに対する百分率で定義され、以下の式から算出される。
捲縮率=(A−B)/A × 100 (%)
元の長繊維の長さとは、長繊維が自然状態において、長繊維の両端部を直線で結んだ長さをいう。自然状態とは、長繊維の一方の端部を水平な板に固定し、繊維の自重で下方に垂らした状態をいう。長繊維を引き伸ばした時の長さとは、長繊維の捲縮がなくなるまで伸ばした時の最小荷重時の長さをいう。長繊維の捲縮率は前述の通りであり、捲縮数は1cm当たり2〜25個、特に4〜20個、とりわけ10〜20個であることが好ましい。
埋没担持とは、高吸収性ポリマーが、捲縮した長繊維によって形成される空間内に入り込んで、着用者の激しい動作によっても該ポリマーの極端な移動や脱落が起こりにくくなっている状態を言う。このとき、長繊維は高吸収性ポリマーに絡みつき、あるいは引っ掛かりを生じ、あるいはまた、高吸収ポリマーは自身の粘着性により長繊維に付着している。長繊維が形成する空間は、外部から応力を受けても変形しやすく、また、長繊維全体で応力を吸収することができるので、空間が破壊されるのを防いでいる。高吸収性ポリマーは、その一部がウエブ102中に埋没担持されている。長繊維吸収性コア101の製造条件によっては高吸収性ポリマーのほぼ全部がウエブ102中に均一に埋没担持される場合もある。
長繊維の繊維径に特に制限はない。一般に1.0〜7.8dtex、特に1.7〜5.6dtexの長繊維を用いることが好ましい。長繊維吸収性コアにおける長繊維とは、繊維長をJIS L1015の平均繊維長測定方法(C法)で測定した場合、好ましくは70mm以上、更に好ましくは80mm以上、一層好ましくは100mm以上である繊維のことをいう。ただし、測定対象とするウエブの全長が100mm未満である場合には、当該ウエブ中の繊維の好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上、一層好ましくは80%以上がウエブ全長にわたって延びている場合に、当該ウエブの繊維は長繊維であるとする。長繊維吸収性コアにおける長繊維は一般に連続フィラメントと呼ばれるものである。また、連続フィラメントの束が一方向に配向したものは一般にトウと呼ばれている。従って、長繊維吸収性コアにおける長繊維とは、連続フィラメントを含む概念のものである。また長繊維が配向したウエブとは、連続フィラメントのトウ層を含む概念のものである。
ウエブ中に埋没担持される高吸収性ポリマーとしては、一般に粒子状のものが用いられるが、繊維状のものでも良い。粒子状の高吸収性ポリマーを用いる場合、その形状が不定形タイプ、塊状タイプ又は俵状タイプである場合には、ウエブに対して同量以上、10倍以下の坪量で埋没担持させることができる。また、球粒凝集タイプや球状タイプの場合には、ウエブに対して同量以上、5倍以下の坪量で埋没担持させることができる。これらの粒子形状は、特に高吸収量と薄型化を両立させたい場合は前者を、風合い(高吸収性ポリマーのしゃり感の低減)を重視する場合は後者を選択することが望ましい。高吸収性ポリマーは、ウエブ102,2間に層状に散布されている。高吸収性ポリマーは、その一部がウエブ102中に埋没担持されている。長繊維吸収性コア101の製造条件によっては高吸収性ポリマーのほぼ全部がウエブ102中に均一に埋没担持される場合もある。「均一」とは、長繊維吸収性コア101の厚み方向あるいは幅方向において、高吸収性ポリマーが完全に一様に配されている場合、及び長繊維吸収性コア101の一部を取り出した時に、高吸収性ポリマーの存在量のばらつきが、坪量で2倍以内の分布を持つ場合をいう。このようなばらつきは、使い捨ておむつを製造する上で、まれに高吸収性ポリマーが過剰に供給され、部分的に散布量が極端に高い部分が生じることに起因して生ずるものである。つまり前記の「均一」は、不可避的にばらつきが生ずる場合を包含するものであり、意図的にばらつきが生じるように高吸収性ポリマーを分布させた場合は含まれない。
先に述べた通り、長繊維は捲縮を有するものであるから、粒子を保持し得る多数の空間を有している。その空間内に高吸収性ポリマーが保持される。その結果、多量の高吸収性ポリマーを散布してもその極端な移動や脱落が起こりにくくなる。また着用者が激しい動作を行っても長繊維吸収性コア101の構造が破壊されにくくなる。使用する高吸収性ポリマーによって、捲縮率や使用する長繊維の量を適宜調節する。以上の構造を有する長繊維吸収性コア101は、薄型で低坪量のものとなる。
高吸収性ポリマーは、捲縮した長繊維によって形成される空間内に安定的に保持されるので、長繊維吸収性コア101は高吸収性ポリマーを多量に保持することができる。具体的には、長繊維吸収性コア101全体で見たとき、好ましくは高吸収性ポリマーの坪量が長繊維の坪量以上、更に好ましくは2倍以上、更に好ましくは3倍以上である。ウエブへの高吸収性ポリマーの埋没担持性が十分でない時は、ホットメルト粘着剤、各種バインダー(例えばアクリル系エマルジョン粘着剤など)、カルボキシメチルセルロースやエチルセルロースなどの糖誘導体、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂等をウエブに適宜添加できる。さらに、凹凸加工や植毛を施したシートなどを併用しても良い。
図9に示す長繊維吸収性コア101においては、ウエブ102を構成する長繊維が、長繊維吸収性コア101の平面方向に一方向に配向している。長繊維が一方向に配向していることに起因して、長繊維吸収性コア101に液が吸収されると、該液は長繊維の配向方向へ優先的に拡散する。逆に、長繊維の配向方向と直交する方向への拡散は抑制される。長繊維が使い捨ておむつの幅方向に配向している場合には、おむつの前部からの液漏れ(前漏れ)が効果的に防止される。幅方向には防漏カフ6又はレッグ部弾性部材81により液漏れ防止性を向上させている。
長繊維の配向の程度は、配向度で表して1.2以上、特に1.4以上であることが好ましい。本実施形態において配向度はKANZAKI社のMicrowave molecular orientation analyzerMOA−2001Aを用いて測定する。サンプルサイズは長手方向100mm、幅50mmとし、3点の平均値を配向度とする。サンプルサイズがこの大きさに満たない場合は、複数のサンプルを互いに重ならないように配して測定する。
前漏れを一層防止する手段の一つとして、直線的な長繊維のウエブを用いることが挙げられる。かかる長繊維は、捲縮を有する長繊維のウエブに比較して、長繊維の配向方向への液の拡散性に優れているからである。この観点から、複数のウエブ102のうちの少なくとも一層における一部分の捲縮した長繊維を引き伸ばして直線的な状態にしておくことが好ましい。例えば長繊維吸収性コア101が2層のウエブ102を有する場合、表面シート側のウエブ102の一部分、例えば長手方向中央部に位置する捲縮長繊維を引き伸ばして直線的な状態にすることで、排泄された液を吸収体の横方向へ優先的に導くことができる。或いは、捲縮した長繊維からなるウエブ102に加えて、捲縮を有さない親水性長繊維のウエブを更に用いても同様の効果を得ることができる。例えば、捲縮した長繊維からなるウエブ102を2層用い、上側の層の上に、ポリマー層を介して捲縮を有さない長繊維からなるウエブを配することができる。
長繊維がおむつの長手方向(おむつ前後方向)に配向している場合には、おむつの側部からの液漏れ(横漏れ)が効果的に防止される。この場合においても、吸収性本体5の前後端を撥水性を有するシート11が覆うように接着されているので、より液漏れが防止されている。また、防漏カフを吸収性本体5の前後端に配することで液漏れを防止することもできる。
長繊維吸収性コア101においては、高吸収性ポリマーが捲縮した長繊維によって形成される空間内に保持されているので、該ポリマーの極端な移動や脱落が起こりにくく、また着用者の激しい動作によっても長繊維吸収性コア101の破壊が起こりにくくなっている。これらの効果を一層顕著なものとするために、及び高吸収性ポリマーどうしが擦れ合うときに生じる「シャリ感」を低減させるために、長繊維吸収性コア101においては重なり合うウエブ102,102どうしが接着されている。この場合、先に述べた長繊維の配向方向への液の優先的な拡散が阻害されないようにするために、重なり合うウエブ102,102どうしは散点状に接着されている。散点状に接着されているとは、接着点の形状が大きな異方性を有しておらず、且つそのような接着点がウエブ102の平面方向全域に亘って均一に分散していることをいう。典型的な接着態様としては、重なり合うウエブ102,102どうしがドット状の多数の小さな接着点によって接着されている態様が挙げられる。散点状の接着には例えばホットメルト粘着剤をスプレー方式で塗工する方法が挙げられる。スプレー方式としては、スロットスプレー法、カーテンスプレー法、メルトブローン法、スパイラルスプレー法等が挙げられる。なお、このような塗工方法を用いると、ウエブ102どうしが接着することはもちろんのこと、ウエブ102と高吸収性ポリマーの一部も接着する場合がある。
長繊維吸収性コア101は、ウエブ102及びポリマー層103の積層体のみから構成されていてもよく、或いは該積層体が、例えばティッシュペーパーなどの紙や不織布によって包まれていてもよい。また、ウエブ102及びポリマー層103の積層体の上面及び下面にそれぞれに乾式パルプシートや、フラッフパルプの積繊層が配されていてもよく、更にそれら全体がティッシュペーパーなどの紙や不織布によって包まれていてもよい。長繊維吸収性コア101は、該長繊維吸収性コア101がどのような形態である場合でもその厚みが好ましくは10mm以下、更に好ましくは5mm以下である。
次に、上述した長繊維吸収性コア101の好ましい製造方法について説明する。先ず、先に述べた捲縮率を有する長繊維のウエブを用意する。このウエブを所定手段によって開繊する。開繊には例えば圧縮空気を利用した空気開繊装置を用いることができる。次に、開繊された長繊維からなるウエブ102を所定の長さに引き伸ばす。この場合、長繊維を完全に引き伸ばすことを要せず、高吸収性ポリマーがウエブ102内に安定的に埋没保持される程度に引き伸ばせば足りる。
長繊維を引き伸ばした状態下に、ホットメルト粘着剤などの各種接着剤をウエブ102にロールコーター方式やスクリーン印刷方式等の接触方式やスプレー方式等の非接触方式により塗工する。塗工には、非接触で各パターンの切り替えが容易で接着剤の量を調整可能なスプレー方式の塗工が好ましく、散点状の接着を首尾良く行い得るスプレー塗工を用いることが好ましい。スプレー方式としては、スロットスプレー法、カーテンスプレー法、メルトブローン法、スパイラルスプレー法等が挙げられる。接着剤の塗工は、ウエブ間での液の透過が妨げられない程度の低量であることが好ましい。この観点から、接着剤の塗工量は、3〜30g/m2、特に5〜15g/m2であることが好ましい。
接着剤の塗工完了後に、ウエブ102上に高吸収性ポリマーを層状に散布する。散布完了後に別途用意しておいたウエブ102を重ね合わせる。次いで長繊維の引き伸ばし状態を解除する。これによって引き伸ばされていた長繊維が収縮する。その結果、高吸収性ポリマーは長繊維の収縮によって形成された空間内に保持される。このようにして、ウエブ102中に高吸収性ポリマーが埋没担持される。これによって2つのウエブ102どうしが散点状に接着される。
別法として、ウエブ102上に高吸収性ポリマーが散布された後、該ウエブ102の引き伸ばし状態を解除し収縮させて得られた中間体を複数用意しておき、最後に該中間体を重ね合わせることで長繊維吸収性コア101を得ることもできる。なおこの場合には、長繊維吸収性コア101の最上層にポリマー層103が位置することになるので、高吸収性ポリマーの極端な移動や脱落が懸念されるが、ティッシュペーパーや不織布等を用いて長繊維吸収性コア101の全体を包むことでそのような不都合を回避することができる。
長繊維吸収性コアの他の例を、図10〜図12を参照しながら説明する。図10〜図12に示す長繊維吸収性コアについて特に説明しない点については、図9に示した長繊維吸収性コアに関して詳述した説明が適宜適用される。また、図10〜図12において、図9と同じ部材に同じ符号を付してある。図10〜図12においては、各図の上側が肌当接面側、下側が非肌当接面側である。
図10(a)に示す長繊維吸収性コア101は、単層のウエブ102から構成されている。そしてウエブ102中に高吸収性ポリマーが均一に埋没担持されている。図10(b)及び(c)に示す長繊維吸収性コア101も図10(a)に示す長繊維吸収性コア101と同様に単層のウエブ102から構成されているが、高吸収性ポリマーがウエブ102の厚さ方向に関して肌当接面側又は非肌当接面側に偏倚して埋没担持されている。
図11(a)に示す長繊維吸収性コア101は、フラッフパルプの積繊層104上にウエブ102を重ねた構造を有している。ウエブ102中には高吸収性ポリマーが埋没担持されている。図11(b)に示す長繊維吸収性コア101は、フラッフパルプの積繊層4上にウエブ102を重ねてなる積層体105を複数積層した構造を有している。図11(c)に示す長繊維吸収性コア101は、図11(a)に示す長繊維吸収性コア101において、フラッフパルプの積繊層4中に高吸収性ポリマーを混合させたものである。図に示すまでもなく当業者であれば明らかなように、図11(c)に示す長繊維吸収性コア101を用いて、図11(b)に示すような積層体を構成することも可能であり、更に図11(a)と図11(c)に示す吸収体を用いて、図11(b)に示すような積層体を構成することもまた可能である。図11(d)に示す長繊維吸収性コア101は、図11(c)に示す吸収体においてフラッフパルプの積繊層4とウエブ102との積層関係を上下逆転させたものである。
図12(a)及び(b)に示す長繊維吸収性コア101は、フラッフパルプの積繊層104の上下にウエブ102,102がそれぞれ配された構造を有している。図12(a)に示す吸収体では、各ウエブ102においては、高吸収性ポリマーが、ウエブ102の肌非対向面側に偏倚して埋没担持されている。一方、図12(b)に示す吸収体では、上側のウエブ102においては、高吸収性ポリマーが、ウエブ102の肌非対向面側に偏倚して埋没担持されているのに対して、下側のウエブ102においては、高吸収性ポリマーが、ウエブ102の肌対向面側に偏倚して埋没担持されている。図12(c)に示す長繊維吸収性コア101は、高吸収性ポリマーが埋没担持されているウエブ102の下側に、高吸収性ポリマーを含まない親水性を有する長繊維のウエブ106が配置された構造を有している。
ウエブ内には高吸収性ポリマーのほかに、他の粒子、例えば、活性炭やシリカ、アルミナ、酸化チタン、各種粘度鉱物(ゼオライト、セピオライト、ベントナイト、カンクリナイト等)等の有機、無機粒子(消臭剤や抗菌剤)を共存させることができる。また、ウエブの形態保持性を向上させて、ウエブの圧縮回復性を高め、またウエブのよれを起こりにくくし、更にウエブの搬送性を良好にすることを目的として、ウエブを構成する長繊維どうしを接合することが好ましい。また、ウエブの形態保持性を向上させるための別法として、ウエブの上下に紙や不織布などのシート材料を重ね合わせ、ウエブとシート材料とを接着剤によって接合するか、又は熱融着する方法が挙げられる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明の範囲はかかる実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、サイドシール部Sがおむつ1の真横に位置している実施形態のものであるから、仮想展開図と外包材11の展開図とが一致しているが、本発明は、サイドシール部がおむつの真横よりも前側又は後ろ側に偏倚しているおむつ(例えば冒頭に述べた特許文献1に記載のおむつ)にも同様に適用することができる。
また前記実施形態のおむつ1においては、おむつ股下部Cにおいて吸収性コア4が分轄されていたが、吸収性コア4は、そのように分轄されていないものであっても良い。また、吸収性コアは、その全体が長繊維吸収性コアからなることが好ましいが、その一部をパルプ繊維の積繊物やパルプ繊維と高吸収性ポリマーとの混合積繊物から構成されていても良い。