近年、例えば、パーソナル・コンピュータや携帯情報端末機といった各種情報処理端末装置やその周辺機器を相互にワイヤレス接続するための無線通信技術が開発されており、代表的なものとしては、いわゆるIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11方式に準拠した無線LANが普及しつつある。
IEEE802.11方式の無線LANでは、データリンク層の分散制御又は集中制御などのプロトコルに関するメディア・アクセス制御(Media Access Control;MAC)方式の技術として、ポーリングによってメディア・アクセス制御を行なうコンテンション・フリー区間と、キャリア・センスによってメディア・アクセス制御を行なうコンテンション区間が規格化されている。このうち、キャリア・センスを行なうコンテンション区間が広く利用されている。
このコンテンション区間としては、いわゆるイーサネット(登録商標)で用いられている自律分散制御方式を踏襲したCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式が規格化されている。CSMA/CA方式は、概略的には、データの送信を試みようとする通信局が、他の通信局が送信しているデータと衝突しないように、事前にキャリア・センスを行なうことによって通信チャネルの使用状況を確認し、その帯域が未使用であればデータを送信する一方で、その帯域が使用中であればアイドル状態となるまでデータの送信を延期する技術である。IEEE802.11方式の無線LANでは、いわゆるBSS(Basic Service Set)の概念に基づくネットワーキングの方法として、制御局としてのアクセス・ポイント(Access Point:AP)が存在して当該アクセス・ポイントの電波到達範囲内に存在する複数の端末(Station:STA)を制御するインフラストラクチャ・モードと、アクセス・ポイントが存在せずに複数の端末が自律分散制御的に動作するアドホック・モードとが規定されているが、アクセス・ポイントも、複数の端末も、このCSMA/CA方式に準拠した手順を踏むことによって通信を行なうことになる。
ここで、IEEE802.11方式の無線LANにおける具体的な通信動作について説明する。
まず、インフラストラクチャ・モード時における動作について説明する。
インフラストラクチャ・モードのBSSにおいては、システム内にコーディーションを行なうアクセス・ポイントが必須である。インフラストラクチャ・モードでは、例えば図19に示すように、アクセス・ポイントSTA0の電波到達範囲をBSSとしてまとめ、いわゆるセルラー・システムにおけるセルに相当するものを構成する。これにより、アクセス・ポイントSTA0の電波到達範囲に属する端末STA1、STA2は、当該BSSのメンバとしてネットワークに参入する。そして、アクセス・ポイントSTA0は、所定の時間間隔でビーコンと称される制御信号を送信する。そして、各端末STA1、STA2は、このビーコン信号を受信することにより、アクセス・ポイントSTA0が近隣に存在することを認識し、当該アクセス・ポイントSTA0との間でコネクションの確立を行なう。
アクセス・ポイントSTA0は、上述したように、所定の時間間隔でビーコン信号を送信するが、次回のビーコン信号の送信時刻は、ターゲットビーコン送信時刻(Target Beacon Transmit Time:TBTT)という当該ビーコン信号内に記述されるパラメータを用いて定められる。各端末STA1、STA2は、ビーコン信号を受信してTBTTを参照することにより、次回のビーコン信号の送信時刻を把握することができる。これにより、各端末STA1、STA2は、例えば受信の必要がない場合には、次回又は複数回先のTBTTまで受信機の電源を落とし、スリープ状態に移行することもできる。
次に、アドホック・モード時における動作について説明する。
アドホック・モードでは、各端末は、他端末との間で所定のネゴシエーションを行なうことにより、自律的にIBSS(Independent BSS)を定義する。アドホック・モードでは、例えば図20に示すように、各端末STA1、STA2は、IBSSが定義されると、ネゴシエーションの末に、所定の時間間隔毎にTBTTを定める。そして、各端末STA1,STA2は、自己が有するクロックを参照することによって時間がTBTTになったことを認識すると、一様乱数で決定される時間の遅延後、他端末がビーコン信号を送信していないことを認識した場合には、ビーコン信号を送信する。
なお、IBSSにおいても、各端末STA1、STA2は、必要に応じて、次回又は複数回先のTBTTまで送受信機の電源を落とし、スリープ状態に移行することができる。IEEE802.11方式においては、IBSSでスリープ・モードが適用されている場合には、TBTTから所定の時間帯をATIM(Announcement Traffic Indication Message)ウィンドウとして定義している。
IBSSに属するすべての端末は、ATIMウィンドウの時間帯においては受信機を動作させており、この時間帯であれば、基本的にはスリープ・モードで動作している場合であっても受信を行なうことが可能である。各端末は、任意の端末宛の送信すべきデータを保有している場合には、このATIMウィンドウの時間帯においてビーコン信号が送信された後に、当該任意の端末宛にATIMパケットを送信することにより、当該任意の端末に対して送信すべきデータを保有している旨を通知する。そして、ATIMパケットを受信した端末は、当該ATIMパケットを送信した端末からの受信を終了するまで、受信機を動作させることになる。
ここで、ATIMウィンドウを利用した通信動作について、図21を参照しながら具体的に説明する。図21に示す例では、3つの端末STA1、STA2、STA3がIBSSに存在している。この場合、各端末STA1、STA2、STA3は、時間がTBTTになると、一様乱数で決定される時間にわたってメディア状態を監視しながら、データの衝突回避のために設けられるバックオフのタマを動作させる。図示の例では、端末STA1のタイマが最も早くカウントを終了し、当該端末STA1がビーコン信号を送信した場合について示している。この場合、それ以外の端末STA2、STA3は、端末STA1がビーコン信号を送信したことを認識したため、ビーコン信号を送信することはない。
ここで、端末STA1が端末STA2を宛先とするデータを保有しており、且つ端末STA2が端末STA3を宛先とするデータを保有しているものとする。この場合、まず、端末STA1及びSTA2はそれぞれ、ビーコン信号の送受信を終了すると、再度一様乱数で決定される時間にわたってメディア状態を監視しながら、バックオフのタイマを動作させる。ここで、端末STA2のタイマが最も早くカウントを終了したものとすると、当該端末STA2は、ATIMパケットを端末STA3に対して送信する。これに応じて、端末STA3は、ATIMパケットを受信すると、所定の時間SIFS(Short Inter Frame Space)だけ経過した後に、いわゆるACK(Acknowledgement)信号を送信する。そして、端末STA3からのACK信号の送信が終了すると、端末STA1は、さらに一様乱数で決定される時間にわたってメディア状態を監視しながら、バックオフのタイマを動作させ、このタイマに設定された時間が経過すると、ATIMパケットを端末STA2に対して送信する。これに応じて、端末STA2は、ATIMパケットを受信すると、所定の時間SIFS後に、ACK信号を送信する。
IEEE802.11方式の無線LANにおいては、このようなATIMパケット及びACKパケットの送受信がATIMウィンドウの時間帯内で行なわれると、その後の区間においても、端末STA3は、端末STA2からのデータを受信するために受信機を動作させ、端末STA2は、端末STA1からのデータを受信するために受信機を動作させることになる。そして、ATIMウィンドウの時間帯内でATIMパケットを受信しなかった端末や送信すべきデータを保有していない端末は、次回のTBTTまで送受信機の電源を落とし、消費電力の削減を図ることができる。
なお、このような無線通信を行なう際のアクセス制御に関する技術としては、例えば特許文献1に記載された技術がある。同文献には、親機の電波状況問い合わせに応答して、子機が親機の制御信号送信タイミング間における他の親機の制御信号電波の有無を検出し、その電波有無情報を親機へ報告する技術が開示されている。そして、同文献には、他の親機の制御信号電波が存在する場合には、親機は、その送信タイミングと自局の送信タイミングとの時間差を検出し、検出された時間差が予め定められた値以下であるときに、当該親機の制御信号送信タイミングを変更する技術が開示されている。
ところで、IEEE802.11方式の無線LANにおいては、いわゆる5.2GHz帯や2.4GHz帯といった免許不要バンドを用いている。これらの帯域は、さらに複数の帯域に分割されており、各通信局は、この分割された帯域のうちの1つを用いて通信を行なう。例えば、IEEE802.11aでは、5.2GHzの帯域を20MHzずつの4つの帯域に分割しており、無線通信を行なう端末は、この分割された帯域のうちの1つを通信チャネルとして選択することになる。
ここで、IEEE802.11方式の無線LANでは、上述したように、CSMA方式に準拠した手順を踏むことによって空いている通信チャネルを確認した上で通信を開始することから、無線通信を行なう端末間は、同一の通信チャネルを使用している必要がある。したがって、無線LANにおいては、帯域が分割されて複数の通信チャネルが用意されているにもかかわらず、実際に信号の伝送に使用される通信チャネルは、実質的に1チャネル分のみである。
また、これらの帯域は、免許不要バンドであることから、方式の異なる無線LANが同一の通信チャネルを使用している状況も起こり得る。このような場合、自システムの通信チャネルを変更することで、他システムからの干渉を回避することができるが、これを実現するためには、他システムの存在を検出する必要がある。
なお、このような複数のシステムが存在する状況下で、他システムからの干渉を回避すべく空いている通信チャネルを選択する技術としては、例えば特許文献2に記載された技術がある。
特許文献2には、親局が立ち上がり時に使用可能な全無線チャネルの電波状況を判断して最適チャネルを決定するとともに、定期的に自ネットワークの送信を停止させて、子局が分散して近隣の電波状態を監視することにより、周囲状況の変化に対して最適チャネルを選択する技術が開示されている。
ここで、無線LANとは異なる無線通信システムとして、いわゆるPDC(Personal Digital Cellular)といった携帯電話システムがある。これら携帯電話システムにおいては、端末の制御情報を基地局で集中的に管理し、端末毎に通信時間や通信チャネルを制御する。
このような携帯電話システムや、IEEE802.11方式の無線LANにおけるインフラストラクチャ・モードのような集中制御方式を採用するシステムにおいては、集中制御を行なう基地局やアクセス・ポイントの負担が大きく、大規模のシステムとなり、システム構築に要するコストも高くなる。また、このような集中制御方式を採用するシステムにおいては、ネットワークの構築も容易には行なうことができないという問題がある。
これに対し、IEEE802.11方式の無線LANにおけるアドホック・モードのような自律分散制御方式を採用するシステムであれば、各端末が独自に周辺の状況を判断し、ネットワークを容易に拡張していくことができる。
しかしながら、上述した特許文献2に記載された技術をはじめとする通信チャネルの選択に関する従来の技術は、基地局やアクセス・ポイントなどによる集中制御方式を想定したものであり、自律分散制御方式を採用するシステムには適用することができない。
このように、自律分散制御方式を採用するシステムにおいては、CSMA方式のようなキャリア・センスによるアクセス制御方式を用いつつ、複数の通信チャネルを同時に使用することはできず、必然的に、通信容量に限界があるという問題がある。
本発明は、上述したような技術的課題を勘案したものであり、その主な目的は、自律分散制御方式を採用して無線通信を行なう際に、キャリア・センスによるアクセス制御方式を用いつつ、複数の通信チャネルを同時に使用することを可能とし、通信容量の増大を図ることができる、優れた通信システム及び通信方法、並びに通信装置及び通信制御方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することにある。
本発明の第1の側面は、複数の通信局がそれぞれ自律分散制御的に動作し、複数の通信チャネルを利用してネットワークを形成する通信システムであって、
各通信局はそれぞれ、少なくともビーコン信号の送受信時刻に関する時刻情報と、使用する通信チャネルに関する通信チャネル情報とを管理し、
ビーコン信号又はデータの送信を試みようとする送信通信局は、前記時刻情報及び前記通信チャネル情報に基づいて使用する通信チャネルを切り替え、ビーコン信号又はデータの送信し、
ビーコン信号又はデータの受信を試みようとする受信通信局は、前記時刻情報及び前記通信チャネル情報に基づいて使用する通信チャネルを切り替え、ビーコン信号又はデータを受信する、
ことを特徴とする通信システムである。
但し、ここで言う「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことを言い、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない。
本発明に係る通信システムにおいては、複数の通信チャネルに分散して通信を行なうことができることから、通信容量の増大化が望めるとともに、通信チャネル毎の干渉状況に応じて通信チャネルを切り替えることができる。また、本発明に係る通信システムにおいては、複数の通信チャネルを使用しつつも自律分散制御によってネットワークを形成することができることから、容易にネットワークを形成することができ、低コスト化も実現することができる。
ここで、ビーコン信号には、当該ビーコン信号を送信する無線通信局が把握している時刻情報及び通信チャネル情報が記述されている。したがって、新規にネットワークに参入する無線通信局は、他の無線通信局から受信したビーコン信号に記述されている時刻情報及び通信チャネル情報に基づいて、他の無線通信局の状況を適切に把握し、他の無線通信局が通信を行なっている時刻と通信チャネルを把握することができる。
そして、新規にネットワークに参入する無線通信局は、把握した時刻情報及び通信チャネル情報に基づいて、自己が送信するビーコン信号の送信時刻と使用する通信チャネルとを決定する。
具体的には、新規にネットワークに参入する無線通信局は、他の無線通信局から受信したビーコン信号に記述されている時刻情報及び通信チャネル情報をすべて重ね合わせて、他の通信局において既に使用されている時間帯に関する周辺局使用時間帯情報を作成する。そして、作成した周辺局使用時間帯情報に基づいて、自己が送信するビーコン信号の送信時刻と使用する通信チャネルを決定する。
これにより、本発明に係る通信システムにおいては、他の無線通信局がビーコン信号を受信している時刻及び通信チャネルで、ビーコン信号を送信してしまう事態を回避することができる。
また、新規にネットワークに参入する無線通信局は、作成した周辺局使用時間帯情報に基づいて、ビーコン信号が送受信される間隔が最大である時刻を、自己がビーコン信号を送信する送信時刻として選択する。さらに、新規にネットワークに参入する無線通信局は、作成した周辺局使用時間帯情報を通信チャネル毎の周辺局使用時間帯情報に分割し、選択したビーコン信号の送信時刻を通信チャネル毎に評価し、ビーコン信号が送受信される間隔が最大である通信チャネルを、自己がビーコン信号を送信する通信チャネルとして選択する。
これにより、本発明に係る通信システムにおいては、各無線通信局によるビーコン信号の送受信をできる限り分散させることができ、次回のビーコン信号までの時間を互いに最大化することができる。したがって、本発明に係る通信システムにおいては、各無線通信局に対して通信時間を公平に分割することができ、最も通信容量が大きくなる通信チャネルを割り当てることが可能となる。
さらに、複数の無線通信局は、それぞれ、送信予定の通信チャネルでの他の無線通信局のビーコン信号の送受信時刻に関する時刻情報と、送信先の無線通信局の他の通信チャネルでのビーコン信号の送受信時刻に関する時刻情報とに基づいて、データを送信することができる最大の時間である最大送信可能時間を把握した後、データの送信を試みる。
これにより、本発明に係る通信システムにおいては、送信予定の通信チャネルの空き時間を適切に把握することができ、空き時刻まで送信を試みることが可能となることから、通信チャネルを最大限利用することが可能となる。
さらにまた、複数の無線通信局は、それぞれ、送受信するパケットに設けられるプリアンブルを他システムで用いられるプリアンブルと共通とし、プリアンブル以降の情報が誤ることで他システムのパケットが発生したことを検出し、他システムのパケットの発生の頻度に基づいて、使用している通信チャネルを変更する。
これにより、本発明に係る通信システムにおいては、他システムからの干渉を検出することができ、干渉の少ない他の通信チャネルへ回避することができる。この結果、データの衝突が少なくなり、スループットの向上を図ることが可能となる。
また、複数の無線通信局は、それぞれ、他システムのパケットの発生の頻度とともに、各通信チャネルでの受信時間もあわせて記録し、受信時間が所定時間を超過した場合には、そのときの誤り数を通信チャネルの変更の判断に用いる有効値として更新する。
これにより、本発明に係る通信システムにおいては、他システムの干渉状況を通信チャネル間で公平に比較することが可能となる。また、本発明に係る通信システムにおいては、通信チャネルの変更の判断に用いる材料の更新を継続して行なうことから、干渉状況の変化を適切に考慮することが可能となる。
さらに、データを受信する無線通信局は、干渉を検出した場合には、干渉が生じている通信チャネルを使用してデータを送信してくる無線通信局に対して、ビーコン信号の送信時刻及び使用する通信チャネルの変更を要求する。
このように、本発明に係る通信システムにおいては、受信側で干渉を検出することにより、受信状況の悪い通信チャネルの使用を避け、より良好な通信チャネルに適切に変更することができる。
さらにまた、データを送信する無線通信局は、干渉を検出した場合には、データを受信する無線通信局からの応答がない回数を測定し、その頻度が所定値を超過した場合には、ビーコン信号の送信時刻及び使用する通信チャネルを変更する。
このように、本発明に係る通信システムにおいては、送信側で干渉を検出することにより、送信側で送信先の受信状況の劣化を認識することができ、自己の判断で自発的に通信チャネルを適切に変更することができる。
また、本発明の第2の側面は、複数の通信局がそれぞれ自律分散制御的に動作し、複数の通信チャネルを利用してネットワークを形成する通信方法であって、
各通信局はそれぞれ、少なくともビーコン信号の送受信時刻に関する時刻情報と、使用する通信チャネルに関する通信チャネル情報とを管理し、
ビーコン信号又はデータの送信を試みようとする送信通信局は、前記時刻情報及び前記通信チャネル情報に基づいて使用する通信チャネルを切り替え、ビーコン信号又はデータの送信し、
ビーコン信号又はデータの受信を試みようとする受信通信局は、前記時刻情報及び前記通信チャネル情報に基づいて使用する通信チャネルを切り替え、ビーコン信号又はデータを受信する、
ことを特徴とする通信方法である。
このような本発明に係る通信方法においては、複数の通信チャネルに分散して通信を行なうことが可能となることから、通信容量の増大化が望めるとともに、通信チャネル毎の干渉状況に応じて通信チャネルを切り替えることが可能となる。また、本発明に係る通信方法においては、複数の通信チャネルを使用しつつも自律分散制御によってネットワークを容易に形成することが可能となり、低コスト化も実現することが可能となる。
また、本発明の第3の側面は、複数の通信チャネルが用意された通信環境下で自律分散的にネットワーク動作を行なう通信装置であって、
通信チャネル上で無線データを送受信する通信手段と、
利用する通信チャネルを設定し、前記通信手段におけるデータ送受信を制御する通信制御手段と、
ビーコン信号を生成するビーコン生成手段と、
周辺局から受信したビーコン信号を解析するビーコン解析手段を備え、
前記通信制御手段は、
少なくともビーコン信号の送受信時刻に関する時刻情報と、使用する通信チャネルに関する通信チャネル情報とを管理し、
ビーコン信号又はデータの送信時には、前記時刻情報及び前記通信チャネル情報に基づいて使用する通信チャネルを切り替え、ビーコン信号又はデータの送信を試み、
ビーコン信号又はデータの受信時には、前記時刻情報及び前記通信チャネル情報に基づいて使用する通信チャネルを切り替え、ビーコン信号又はデータを受信する、
ことを特徴とする通信装置である。
このような本発明に係る通信装置は、データの送信を試みようとする際に、ビーコン信号の送受信時刻に関する時刻情報と、使用する通信チャネルに関する通信チャネル情報とに基づいて、使用する通信チャネルを切り替え、ビーコン信号を送信して通信を試みることにより、ビーコン信号を送信しても他のビーコン信号と衝突することがなくなる。したがって、本発明に係る通信装置を適用したシステムにおいては、キャリア・センスによるアクセス制御方式を用いた場合であっても、空間的に重複している複数の通信チャネルが同時に使用される状況を構築することが可能となり、実質的に使用できる通信容量の増大を図ることが可能となる。また、本発明に係る通信装置は、複数の通信チャネルを使用しつつも自律分散制御によってネットワークを容易に形成することが可能となり、低コスト化も実現したシステムの構築が可能となる。
また、本発明の第4の側面は、複数の通信チャネルが用意された通信環境下で自律分散的なネットワーク動作を行なうための処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、
ビーコン信号を生成するビーコン生成ステップと、
周辺局から受信したビーコン信号を解析するビーコン解析ステップと、
少なくともビーコン信号の送受信時刻に関する時刻情報と、使用する通信チャネルに関する通信チャネル情報とを管理するステップと、
ビーコン信号又はデータの送信時において、前記時刻情報及び前記通信チャネル情報に基づいて使用する通信チャネルを切り替え、ビーコン信号又はデータの送信を試みるステップと、
ビーコン信号又はデータの受信時において、前記時刻情報及び前記通信チャネル情報に基づいて使用する通信チャネルを切り替え、ビーコン信号又はデータを受信するステップと、
を具備することを特徴とするコンピュータ・プログラムである。
本発明の第4の側面に係るコンピュータ・プログラムは、コンピュータ・システム上で所定の処理を実現するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムを定義したものである。換言すれば、本発明の第4の側面に係るコンピュータ・プログラムをコンピュータ・システムにインストールすることによってコンピュータ・システム上では協働的作用が発揮され、通信装置として動作する。このような通信装置を複数起動して無線ネットワークを構築することによって、本発明の第1の側面に係る通信システムと同様の作用効果を得ることができる。
本発明によれば、自律分散制御的に動作して複数の通信チャネルを有する無線ネットワークを形成する各端末が、ビーコン信号の送受信時刻に関する時刻情報と使用する通信チャネルに関する通信チャネル情報とを保有し、これら情報に基づいて、ビーコン信号を所定の時間間隔で定期的に送信することにより、キャリア・センスによるアクセス制御を行ないつつ、複数の通信チャネルを同時に使用することができ、低コストの下に、通信容量を極めて増大させるとともに干渉のある通信チャネルを避けて通信を行なうことができる無線ネットワークを構築することができる。
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
この実施の形態に係るネットワークでは、アクセス・ポイント(Access Point:AP)が存在せず、無線通信局としての複数の端末(Station;STA)はそれぞれ自律分散的に動作して無線ネットワークを形成するモードで動作し、所定の時間間隔で定期的にビーコン信号を送信している。そして、この通信システムにおいては、キャリア・センスによるアクセス制御を行なういわゆるCSMA(Carrier Sense Multiple Access)方式を用いつつ、複数の通信チャネルを同時に使用することを可能とする。各通信局は、少なくとも、当該ビーコン信号の送受信時刻に関する時刻情報と、使用する通信チャネルに関する通信チャネル情報を保有し、データの送信を試みようとするときには、これら情報に基づいて使用する通信チャネルを切り替え、ビーコン信号を送信して通信を試みる。
図1には、本実施形態に係る通信システムにおいて端末動作を行なう無線通信装置の構成を模式的に示している。図1に示すように、各端末は、通信手段として、アンテナ11が共用器12を介して送信処理部14と受信処理部13とに接続されるとともに、送信処理部14及び受信処理部13がベースバンド部15に接続されて構成される。
送信処理部14は、ベースバンド部15から供給されたベースバンド信号に対してA/D変換や変調等の各種処理を施し、さらに例えばRF(RadioFrequency)信号に変換した上で、このRF信号を共用器12へと供給する。なお、この送信処理部14における送信処理方式としては、無線LANに適用可能な比較的近距離の通信に適した各種方式を適用することができ、具体的には、いわゆるUWB(Ultra Wideband)方式、直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:OFDM)方式、又はCDMA(Code Division Multiple Access)方式などを適用することができる。一方、受信処理部13は、受信した信号をRF信号に変換し、さらにD/A変換や復調等の各種処理を施して得られたベースバンド信号を制御手段であるベースバンド部15へと供給する。
ベースバンド部15は、インターフェース部16と、メディア・アクセス制御(Media Access Control:MAC)部17と、データリンク制御(Data Link Control:DLC)部18などを有し、例えばビーコン信号を作成するといったように、この通信システムに実装されるメディア・アクセス制御方式における各層での処理を実行する。このとき、ベースバンド部15は、少なくとも、ビーコン信号の送受信時刻に関する時刻情報と、使用する通信チャネルに関する通信チャネル情報とを保有し、これら時刻情報及び通信チャネル情報に基づいて使用する通信チャネルを切り替える。
このような端末によってネットワークが形成される通信システムにて送受信されるパケットは、例えば図2に示すようなフォーマットからなる。図示の通り、パケットは、プリアンブル、ヘディング領域、及びペイロード部からなる。
プリアンブルは、当該パケットの先頭に設けられ、固有のワードで構成される。このプリアンブルは、当該パケットの存在を知らしめる目的で設けられるもの
である。
ヘディング領域は、プリアンブルの直後に設けられ、当該パケットの属性、データ長、及び送信電力を示す情報の他、物理レイヤがマルチ伝送レートモードである場合にはペイロード部伝送レートを示す情報を記述する。このヘディング領域は、送信される際に、ペイロード部に比べて所要SNR(Signal to Noise Ratio)が数dB程度低くて済むように伝送速度が落とされる。なお、このヘディング領域は、ペイロード部に格納されるいわゆるMACヘッダとは異なるものである。
ペイロード部は、同図において、PSDU(PHY Service Data Unit)と記載されているものであり、ヘディング領域の直後に設けられる。このペイロード部は、制御信号やデータといった当該パケットによって送信すべき実体的な情報を記述する。このペイロード部は、MACヘッダとMSDU(MAC Service Data Unit)とから構成され、MSDUに上位レイヤから渡されたデータ列が記述される。
さて、各端末間で送受信されるビーコン信号は、ペイロード部に格納され、ヘディング領域に当該パケットがビーコン信号である旨が記述される。図3には、ビーコン信号のフォーマット例を示している。図示のビーコン信号は、少なくとも、当該パケットを送信する端末のMACアドレスを記述するMACアドレス(TX.ADDR)フィールドと、連続的にビーコン信号が衝突するのを回避する目的でビーコン信号の送信タイミングをターゲットビーコン送信時刻(Target Beacon Transmit Time:TBTT)から故意にずらす際のオフセット値を記述するオフセットインディケータ(TBTT Offset Indicator:TOI)フィールドと、近隣ビーコンのオフセット情報(Neighboring Beacon Offset Information:NBOI)フィールドと、トラフィックインディケーションマップ(Traffic Indication Map:TIM)フィールドと、ページング(Paging:PAGE)フィールドとから構成され、その他のフィールド(ETC)も設けている。
NBOIフィールドには、後に詳述するが、当該ビーコン信号を送信する端末が受信可能なビーコン信号の位置(受信時刻)を当該端末のビーコン信号の位置からの相対位置で表した情報と、通信チャネルに関する周波数情報とが記述される。
また、TIMフィールドには、当該ビーコン信号を送信する端末が、現在、どの通信局宛てのデータを保有しているかを示す報知情報が記述される。データを受信すべき端末は、このTIMを参照することにより、受信を行なう必要があることを認識することができる。
さらに、ページング・フィールドには、TIMに記述されている受信端末のうち、後述する優先期間においてデータの送信を予定している受信端末が記述される。このページング・フィールドで指定された端末は、優先期間での受信に備えることができる。
本実施形態に係る通信システムにおいては、各端末間でこのようなパケットに格納されたビーコン信号の送受信を行なう。
ここで、各端末には、例えば図4に示すように、ビーコン信号を送信した後の所定の時間において、優先的に通信を行なうことが可能となる優先期間(Transmission Guaranteed Period:TGP)が割り当てられる。なお、この優先期間は、同図に示すように、ビーコン信号の送信直後から開始されるものに限定されず、例えば、ビーコン信号の送信時刻から相対位置(時刻)で当該優先期間の開始時刻を設定してもよく、また、TBTTからの時間で当該優先期間の開始時刻を設定してもよい。
これにより、通信システムにおいては、例えば図5に示すように、複数の端末から順次ビーコン信号が送信され、優先期間TGPが割り当てられる。なお、同図に示す例では、優先期間以外の期間については、FAP(Fairly Access Period)と定義している。すなわち、通信システムに3つの端末STA0、STA1、STA2が存在する場合には、端末STA0がビーコン信号を送信すると、当該端末STA0に優先期間TGP0が割り当てられ、TGP0として割り当てられた時間が経過すると、次の端末STA1がビーコン信号を送信するまで、期間FAP0となる。同様に、期間FAP0が経過すると、端末STA1がビーコン信号を送信し、当該端末STA1に優先期間TGP1が割り当てられ、TGP1として割り当てられた時間が経過すると、次の端末STA2がビーコン信号を送信するまで、期間FAP1となる。そして、期間FAP1が経過すると、端末STA2がビーコン信号を送信し、当該端末STA2に優先期間TGP2が割り当てられ、TGP2として割り当てられた時間が経過すると、端末STA0がビーコン信号を送信するまで、期間FAP2となる。
本実施形態に係る通信システムでは、各端末は、自己がビーコン信号を送信してから自己が次回ビーコン信号を送信するまでの長い周期の中での相対的な時刻で、ビーコン信号の送信時刻を把握する。そして、各端末は、送信可能な時刻になると、他端末に対してビーコン信号を送信することになる。
さて、このような用途に用いられるビーコン信号には、上述したように、NBOIフィールドに、当該ビーコン信号の送受信時刻に関する相対時刻情報と、端末が使用する通信チャネルに関する通信チャネル情報とが記述されている。新規にネットワークに参入する端末(以下、新規参入端末という)は、各通信チャネルについて、1周期以上分のビーコン信号を周辺局から受信し、各ビーコン信号のNBOIフィールドをそれぞれ参照することにより、例えば図6(A)に示すように、受信可能なビーコン信号の送受信時刻に関する相対時刻情報と、当該ビーコン信号が送信される通信チャネルの通信チャネル情報とを把握する。なお、図6(A)においては、CH1乃至CH4の4つの通信チャネルが存在する場合を示し、“B”で示す部分がビーコン信号を受信した相対時刻を示しており、“0”で示す部分が先に図5に示した優先期間以外の期間FAPを示している。したがって、図6においては、通信チャネルCH1では7時刻目にビーコン信号を受信し、通信チャネルCH2では1時刻目及び5時刻目にビーコン信号を受信し、通信チャネルCH3では3時刻目にビーコン信号を受信し、通信チャネルCH4では6時刻目にビーコン信号を受信した旨を示している。
各端末は、新規にネットワークに参入する際に、これら複数の通信チャネルについて把握した情報の論理和をとることにより、例えば図6(B)に示すような情報をNBOIフィールドに記述する情報として保有する。すなわち、図6(A)に示した各通信チャネルについての相対時刻情報を把握した新規参入端末は、この相対時刻情報の論理和をとり、図6(B)に示すように、1時刻目では通信チャネルCH2を用いてビーコン信号が送受信され、3時刻目では通信チャネルCH3を用いてビーコン信号が送受信され、5時刻目では通信チャネルCH2を用いてビーコン信号が送受信され、6時刻目では通信チャネルCH4を用いてビーコン信号が送受信され、7時刻目では通信チャネルCH1を用いてビーコン信号が送受信された旨を示す情報を保有する。
そして、新規参入端末は、自己が送信するビーコン信号の送信時刻と使用する通信チャネルを決定する。すなわち、受信したビーコン信号には、当該ビーコン信号を送信した端末が把握しているビーコン信号の送受信時刻に関する相対時刻情報と使用する通信チャネルに関する通信チャネル情報とが記述されていることから、新規参入端末は、これらの情報に基づいて、自己が送信するビーコン信号の送信時刻と使用する通信チャネルを決定し、自己が保有する図6(B)に示したような情報を更新する。
具体的には、新規参入端末は、図7に示すような一連の工程を経ることにより、自己が送信するビーコン信号の送信時刻と使用する通信チャネルの周波数とを決定する。
まず、新規参入端末は、同図に示すように、ステップS1において、隣接ノード、すなわち、周辺の他端末からのビーコン信号を受信することにより、当該他端末が把握しているビーコン信号を送受信する相対時刻情報と、使用する通信チャネルに関する通信チャネル情報とをすべて重ね合わせて論理和をとり、他の通信局において既に使用されている時間帯に関する周辺局使用時間帯情報を作成する。なお、ここでは、説明の便宜上、新規参入端末は、図8(A)に示すように、1時刻目では通信チャネルCH2を用いてビーコン信号が送受信され、3時刻目では通信チャネルCH3を用いてビーコン信号が送受信され、5時刻目では通信チャネルCH2を用いてビーコン信号が送受信され、6時刻目では通信チャネルCH1を用いてビーコン信号が送受信されることを示す周辺局使用時間帯情報を作成したものとする。
続いて、新規参入端末は、ステップS2において、作成した周辺局使用時間帯情報に基づいて、ビーコン信号が送受信される間隔が最大である位置(相対時刻)を選択する。これは、すべての通信チャネルについての情報の論理和をとった結果、ビーコン信号が送受信されていない位置であれば、ビーコン信号を送信しても他のビーコン信号と衝突することはなく、また、ビーコン信号の送受信はできる限り分散させた方が望ましいことから、間隔が最大である位置を選択することにより、次回のビーコン信号までの時間が互いに最大化され、通信時間を公平に分割することができる、という考えに基づくものである。具体的には、新規参入端末は、図8(A)に示した周辺局使用時間帯情報の場合には、7時刻目から8時刻目までが、ビーコン信号が送受信される間隔が最大であることから、同図(B)中太線部で示すように、8時刻目を選択する。
続いて、新規参入端末は、ステップS3において、ステップS1にて作成したすべての通信チャネルにおいて論理和をとった周辺局使用時間帯情報を通信チャネル毎の周辺局使用時間帯情報に分割し、選択したビーコン信号の送信時刻を通信チャネル毎に評価する。そして、新規参入端末は、ステップS4において、すべての通信チャネルについての評価を行なったか否かを判定する。
ここで、新規参入端末は、すべての通信チャネルについての評価を行なっていない場合には、ステップS3からの処理を繰り返す。一方、すべての通信チャネルについての評価を行なった場合には、ステップS5へと処理を移行し、評価結果に基づいて、ビーコン信号が送受信される間隔が最大である通信チャネルを選択し、一連の処理を終了する。
具体的には、新規参入端末は、図8(A)に示した周辺局使用時間帯情報を通信チャネル毎に分割し、同図(C)に示すように、通信チャネルCH1では6時刻目にビーコン信号が送受信され、通信チャネルCH2では1時刻目及び5時刻目にビーコン信号が送受信され、通信チャネルCH3では3時刻目にビーコン信号が送受信され、通信チャネルCH4ではビーコン信号が送受信されないことを示す、4つの論理和からなる周辺局使用時間帯情報を作成する。そして、新規参入端末は、通信チャネル毎の評価の結果、ステップS2にて選択した8時刻目については、通信チャネルCH4の間隔が最大であることから、同図(C)中太線部で示すように、当該通信チャネルCH4を選択する。
新規参入端末は、このような一連の工程を経ることにより、最適なビーコン信号の送信時刻と使用する通信チャネルの周波数とを決定することができる。
次に、通信システムにおいて、通信局が予約通信を行なうことが許容されている場合において、通信時間帯及び通信チャネルを予約して通信をする動作について説明する。予約による通信は、図9に示すようなマルチホップ・リンクにおいて、信号衝突の抑制が可能になり、通信容量を増大させる効果を期待することができる。
マルチホップ・リンクでは、通信局には、お互いの存在を知らない隠れ端末が存在する。図9に示す例では、例えばSta1とSta3は隠れ端末の関係にある。しかし、Sta1がSta2との通信のための通信時間帯及び通信チャネルの予約をする場合には、隠れ端末であり通信ができないSta3の送信時間帯及びチャネルと重ならないように配慮する必要がある。そこで、ここでも上記ビーコン信号送受信時刻の決定、報知と同様にして、NBOIを利用する。
このような場合、各端末は、ビーコン送受信時刻のみでなく、予約した時間帯や通信チャネルもNBOIに記載して、ビーコンで報知する。そして、通信チャネルを予約する場合には、隣接端末のNBOI情報から空き時間帯を探し、予約したらNBOIに記載する。
通信局が予約通信を行なう場合の動作手順について具体的に説明する。ここでは、図9において、Sta1がSta2への送信のための予約をする場合を考える。
Sta1は、隣接端末a、b、cからのビーコン信号を受信し、それぞれから得られたNBOIをチャネル毎に重ね合わせる。この結果、図10に示す2段目の隣接予約情報の結果を得ることができる。これは、Sta1の各通信チャネルにおける空き時間帯の情報である。
さらに、この結果に予約通信による送信先となるSta2のNBOIを重ね合わせた結果、図10の最下段に示す結果を得ることができる。これは、Sta1からSta2への通信予約が可能な空き時間帯の情報を通信チャネル毎に示したものとなる。Sta1は、この結果を基にして、所望の長さの予約が確保できる時間帯及び通信チャネルを選択する。図示の例では、2スロット連続する時間帯を確保したいとすると、CH3のみが該当するため、CH3の最後の2スロットをSta1からSta2への通信予約時間帯とする。予約の通信チャネル選択の基準としては、チャネル毎の干渉情報などを考慮することも考えられる。そして、Sta1は、予約通信に関する情報をビーコンにおいて報知するNBOIに記載する。
以上の動作により、Sta1は、Sta2のNBOIを利用することで、実質的に隠れ端末のSta3の予約情報を知ることができ、自律分散の無線通信システムにおいても重複しない時間帯及び通信チャネルにおいて、Sta2との通信予約をすることが可能となる。
図11には、通信局が予約通信を行なうことが許容されている場合において、新規参入端末が、自己が送信するビーコン信号の送信時刻と使用する通信チャネルを決定する際の一連の工程をフローチャートの形式で示している。
まず、通信局は、隣接端末から受信したビーコンの通信予定時間帯情報をチャネル別に重ね合わせる(ステップS11)。これによって、各通信チャネルにおける空き時間帯の情報を得る。
さらに通信予約相手端末の全通信チャネルにおける通信予定時間帯情報を、上記のチャネル別の空き時間帯情報に重ね合わせる(ステップS12)。これによって、通信予約相手端末への通信予約が可能な空き時間帯の情報を通信チャネル毎に得ることができる。
そして、空きスロット間隔が最大となる時間帯及びその通信チャネルを、通信予約相手端末に対して予約通信を行なう時間帯及び通信チャネルとして選択する(ステップS13)。
このような手順により通信予約相手端末に対する予約通信の時間帯及び通信チャネルを決定することにより、通信局は、自律分散の無線通信システムにおいても重複しない時間帯及び通信チャネルにおいて、通信予約を行なうことが可能となる。
次に、通信局が、自局のビーコン信号を送信する相対時刻と使用する通信チャネルとを決定した各端末間でデータを送受信する動作について説明する。
各端末は、他の端末がビーコン信号を送信する相対時刻と通信チャネルの周波数とを把握していることから、その時刻になったときに通信チャネルを切り替え、送信されたビーコン信号を受信する。通信システムにおいては、先に図4及び図5に示したように、ビーコン信号の送信後の所定時間が優先期間となることから、当該ビーコン信号で指定された端末間との優先的なデータの送受信が可能となる。
通信システムにおいては、基本的には、各端末がCSMA方式に準拠した手順を踏むことによってアクセスを開始するが、優先期間が割り当てられた端末(以下、優先端末という)ではキャリア・センスを行なう時間(IFS:Inter Frame Space)を短くすることにより、当該優先端末に対して優先権が与えられる。一方、優先権が与えられなかった端末は、通常の時間IFSにわたるキャリア・センスを用いて、ビーコン信号を送信した端末へのアクセスを試みる。
通信システムにおいては、同時刻において優先端末が使用する通信チャネルのビーコン信号を受信することができない端末や、アクセスの必要がないために敢えてビーコン信号を受信しない端末は、この時刻で他の通信チャネルでの通常の時間IFSにわたるキャリア・センスを用いた通信を行なうことができる。すなわち、優先端末が使用する通信チャネルとは異なる他の通信チャネルについては、長い時間にわたる通常のキャリア・センスを用いて優先順位が低い端末が使用することができる。これにより、空間的に重複している複数の通信チャネルが同時に使用される状況を構築することができる。
また、通信システムにおいては、各端末は、送信時に、その時刻及び使用する通信チャネルの周波数で、他端末がビーコン信号を受信していないことを確認する必要がある。そのため、各端末は、他端末がそれぞれ保有するビーコン信号の送受信時刻情報及び通信チャネル情報に基づいて、送信を行なう通信チャネルの情報のみを用い、ビーコン信号の送受信が予定されている時刻を把握する。さらに、各端末は、送信先の端末のビーコン信号の送受信時刻情報に基づいて、送信先の端末が使用する通信チャネルの周波数を切り替える時刻を把握する。これにより、各端末は、これらの結果得られた空き時刻まで、送信を試みることが可能となる。
このような動作を具体的に説明するために、図12に示すように、互いに隣接する端末まで電波が到達するように構成された4つの端末STA1、STA2、STA3、STA4が存在する状況を考える。すなわち、端末STA1は、端末STA2及びSTA3とデータの送受信を行なうことができ、端末STA2は、端末STA1とデータの送受信を行なうことができ、端末STA3は、端末STA1及びSTA4とデータの送受信を行なうことができ、端末STA4は、端末STA3とデータの送受信を行なうことができるものとする。
このような状況下で、図13に示すように、時刻T1において、端末STA2が通信チャネルCH1を用いて端末STA1に対してデータを送信するとともに、これを端末STA1が受信し、また、次の時刻T2において、端末STA3が通信チャネルCH2を用いて端末STA4に対してデータを送信するとともに、これを端末STA4が受信するような状況を考える。なお、同図においては、“B”で示す部分がビーコン信号を送受信する時刻を示しており、このうち、斜線部で示すビーコン信号は、送信側であることを示している。さらに、同図においては、“Tx”で示す部分がデータを送信していることを示し、“Rx”で示す部分がデータを受信していることを示している。
また、各端末は、ビーコン信号の送受信時刻情報及び通信チャネル情報として、図14に示すような情報を把握しているものとする。すなわち、端末STA2は、同図(A)に示すように、時刻T1において通信チャネルCH1を使用し、端末STA1は、同図(B)に示すように、時刻T1において通信チャネルCH1を使用するとともに、時刻T2において通信チャネルCH2に切り替えて使用する。また、端末STA3は、時刻T2において通信チャネルCH2を使用し、端末STA4は、時刻T2において通信チャネルCH2を使用するものとする。
ここで、端末STA2に着目する。端末STA2は、自己に関するビーコン信号の送受信時刻情報及び通信チャネル情報として、同図(A)に示す情報を保有する際には、データを送信し続けてしまうことになり、帯域を無駄に使用してしまうことになる。
そこで、端末STA2は、ネットワークへの新規参入時に取得した他端末に関するビーコン信号の時刻情報及び通信チャネル情報から、自己が使用する通信チャネルの情報を取り出して論理和をとり、さらに、送信先の端末STA1の他の通信チャネルでの時刻情報についても論理和をとる。これにより、端末STA2は、図15(A)に示すような情報を得ることができる。すなわち、端末STA2は、端末STA1が時刻T2において通信チャネルをCH1からCH2に切り替えることを把握することにより、端末STA1に対するデータの送信を無駄に継続してしまう事態を回避することができる。
同様に、端末STA3について着目すると、当該端末STA3は、端末STA1及びSTA4に関する情報を用いて、同図(B)に示すような情報を得ることができ、時刻T1から時刻T2までの期間では、端末STA4との間で通信チャネルCH2を用いて通信を行なってもよいことを把握することができる。
このように、通信システムにおいては、各端末は、送信予定の通信チャネルでの周辺端末のビーコン信号の送受信時刻情報と、送信先の端末の他の通信チャネルでのビーコン信号の送受信時刻情報とに基づいて、送信先の端末が使用する通信チャネルの周波数を切り替える時刻を把握することにより、データを送信することができる最大の時間である最大送信可能時間を把握し、その後、データの送信を試みる。これにより、各端末は、得られた空き時刻まで、送信を試みることが可能となり、通信チャネルを最大限利用することが可能となる。
最後に、このようなデータの送受信を行なう通信システムにおいて、干渉チャネルを回避する対策について説明する。
通信システムにおいては、誤りが多い場合や、信号の復調はできないが受信信号レベルが大きい場合などには、そのとき使用している通信チャネルに干渉があると考え、自端末及び他端末が使用する通信チャネルの周波数を変更する。
ここで、通信システムにおいては、同じ周波数帯域を使用する他システムの存在を以下のようにして検出する。
IEEE802.11方式などの無線LANで送受信されるパケットの先頭には、図2及び図3を参照しながら既に説明したように、プリアンブルが設けられる。本実施形態では、自システムで用いるプリアンブルを他システムで用いられるプリアンブルと共通とする。この場合、パケットの発生についてはプリアンブルによって検出することができたにもかかわらず、プリアンブル以降の情報が誤った場合には、各端末は、当該情報は他システムのパケットであったものと判断することができる。
各端末は、このようにして他システムのパケット発生回数を測定し、その頻度を検出する。
また、各通信チャネルでの受信時間は均等ではないことから、各端末は、例えば図16に示すように、他システムのパケット発生回数(データ誤り数)とともに、各通信チャネルでの受信時間(待ち受け時間)も併せて記録する。そして、各端末は、受信時間が所定時間を超過した場合には、そのときのデータ誤り数を通信チャネルの変更の判断に用いる有効値として用いる。なお、同図においては、待ち受け時間が“100”となったときに有効データ誤り数としている。
より具体的には、各端末は、図17に示す一連の工程を経ることにより、データ誤り数及び受信時間に基づいて、他システムの存在を検出する。
まず、各端末は、同図に示すように、ステップS21において、データ誤り数と、各通信チャネルでの受信時間をカウントし、ステップS22において、所定時間だけ受信したか否かを判定する。
ここで、各端末は、所定時間だけ受信していないものと判定した場合には、ステップS21からの処理を繰り返す。一方、所定時間だけ受信したものと判定した場合には、ステップS23において、該当する通信チャネルでのデータ誤り数を有効値として更新して記録する。
そして、各端末は、ステップS24において、該当する通信チャネルでのデータ誤り数と受信時間とを記録するカウンタをリセットし、再度ステップS21からの処理を繰り返す。
各端末は、このような一連の工程を経ることにより、データ誤り数及び受信時間について、同一測定時間での比較と、一定時間毎の更新とを行なうことができ、他システムの存在を検出することができる。
そして、各端末は、これら検出した他システムからの干渉も含めて何らかの干渉が大きいものと判断した場合には、使用している通信チャネルを変更する。
ここで、干渉の検出が受信側で行なわれた場合には、当該受信端末は、干渉が生じている通信チャネルを使用してデータを送信してくる送信端末に対し、通信チャネルを変更するように要求メッセージを送信する。そして、送信端末は、この要求メッセージを受信すると、現在のビーコン信号の送信時刻及び通信チャネルの使用を中止し、図7を参照しながら既に説明したと同様のネットワークへの新規参入時における手順を踏むことにより、他の通信チャネルにビーコン信号の送信時刻を変更する。
具体的には、通信システムにおいては、受信端末と送信端末との間で図18に示すような一連の工程を協調して行なうことにより、ビーコン信号の送信時刻及び使用する通信チャネルを変更する。
まず、受信端末は、同図に示すように、ステップS31において、データ誤り数が所定の閾値を超えているか否かを判定することにより、干渉が生じているか否かを判定する。
ここで、受信端末は、干渉が生じていないものと判定した場合には、測定を継続する。一方、干渉が生じているものと判定した場合には、上述した要求メッセージを送信端末に対して送信する。
これに応じて、送信端末は、要求メッセージを受信すると、ステップS32において、ビーコン信号を送信することが可能な空き送信時刻と通信チャネルとを選択する。この処理は、先に図7に示した処理手順に従って行なえばよい。
続いて、送信端末は、選択された通信チャネルが、ステップS33において、現在使用している通信チャネルと同じ通信チャネルであるか否かを判定する。
ここで、送信端末は、選択された通信チャネルが同じ通信チャネルでないものと判定した場合には、ビーコン信号の送信時刻及び使用する通信チャネルを変更し、受信端末からの要求メッセージがあるまで、変更した送信時刻及び通信チャネルを使用した通信を継続する。
一方、送信端末は、選択された通信チャネルが同じ通信チャネルであるものと判定した場合には、ステップS34において、選択された送信時刻のビーコン信号を除外してビーコン信号の送信時刻及び使用する通信チャネルを変更せず、再度ステップS32へと移行し、新たな送信時刻と通信チャネルとを選択する。
通信システムにおいては、受信端末が干渉を検出した場合には、当該受信端末と送信端末との間でこのような一連の工程を行なうことにより、ビーコン信号の送信時刻及び使用する通信チャネルを変更し、干渉を回避することができる。
なお、通信システムにおいては、このような方式とは別に、送信側で干渉の検出を行なうことも考えられる。この場合、送信端末は、受信端末からの応答の有無に基づいて、通信チャネルを変更する。
IEEE802.11方式などの無線LANにおいては、いわゆる隠れ端末問題を解決するために、いわゆるRTS(Request To Send)信号及びCTS(Clear To Send)信号を用いた制御が存在し、また、データを受信した端末はACK(Acknowledgement)信号を返信する。すなわち、IEEE802.11方式などの無線LANにおいては、RTS信号やデータを送信するのに応じて、CTS信号やACK信号による応答がある。
しかしながら、IEEE802.11方式等の無線LANにおいては、使用する通信チャネルに干渉があり、通信品質が悪い場合には、これらの応答が送信側に到達しない事態を生じる。
そこで、送信端末は、このような応答がない回数を測定し、その頻度を検出する。そして、送信端末は、その頻度が所定値を超過した場合には、図7を参照しながら既に説明したと同様のネットワークへの新規参入時における手順を踏むことにより、ビーコン信号の送信時刻及び使用する通信チャネルを変更する。
このように、送信端末が干渉を検出した場合にも、ビーコン信号の送信時刻及び使用する通信チャネルを変更し、干渉を回避することができる。
以上説明したように、本発明の実施の形態として示した通信システムは、複数の端末が自律分散制御的に動作する際に、各端末が、ビーコン信号の送受信時刻に関する時刻情報と使用する通信チャネルに関する通信チャネル情報とを保有し、これら情報に基づいて、ビーコン信号を所定の時間間隔で定期的に送信することにより、キャリア・センスによるアクセス制御を行ないつつ、複数の通信チャネルを同時に使用することができ、低コストの下に、通信容量を極めて増大させることができるネットワークの構築を容易に行なうことができる。
このとき、ビーコン信号には、当該ビーコン信号を送信する端末が把握している時刻情報及び周波数情報が記述されている。そして、新規参入端末が、他端末から受信したビーコン信号に記述されている時刻情報及び周波数情報に基づいて、受信可能なビーコン信号の時刻情報と、当該ビーコン信号が送信される通信チャネルとを把握することから、他端末の状況を適切に把握することができる。
そして、この通信システムにおいては、新規参入端末が、把握した時刻情報及び通信チャネル情報に基づいて、自己が送信するビーコン信号の送信時刻と使用する通信チャネルの周波数とを決定することにより、他端末がビーコン信号を受信している時刻及び通信チャネルで、ビーコン信号を送信してしまう事態を回避することができる。
また、この通信システムにおいては、新規参入端末が、他端末から受信したビーコン信号に記述されている時刻情報及び周波数情報をすべて重ね合わせて作成した周辺局使用時間帯情報に基づいて、ビーコン信号が送受信される間隔が最大である時刻を、自己がビーコン信号を送信する送信時刻として選択するとともに、作成した周辺局使用時間帯情報を通信チャネル毎の周辺局使用時間帯情報に分割し、選択したビーコン信号の送信時刻を通信チャネル毎に評価し、ビーコン信号が送受信される間隔が最大である通信チャネルを、自己がビーコン信号を送信する通信チャネルとして選択することにより、各端末によるビーコン信号の送受信をできる限り分散させることができ、次回のビーコン信号までの時間を互いに最大化することができる。したがって、この通信システムにおいては、各端末に対して通信時間を公平に分割することができ、最も通信容量が大きくなる通信チャネルを割り当てることが可能となる。
さらに、この通信システムにおいては、各端末が送信予定の通信チャネルでの他端末のビーコン信号の送受信時刻に関する時刻情報と、送信先の端末の他の通信チャネルでのビーコン信号の送受信時刻に関する時刻情報とに基づいて、データを送信することができる最大の時間である最大送信可能時間を把握した後、データの送信を試みることから、送信予定の通信チャネルの空き時間を適切に把握することができ、空き時刻まで送信を試みることが可能となり、通信チャネルを最大限利用することが可能となる。
さらにまた、この通信システムにおいては、送受信するパケットに設けられるプリアンブルを他システムで用いられるプリアンブルと共通とし、各端末が、プリアンブル以降の情報が誤ることで他システムのパケットが発生したことを検出し、他システムのパケットの発生の頻度に基づいて、使用している通信チャネルを変更することにより、他システムからの干渉を検出することができ、干渉の少ない他の通信チャネルへ回避することができる。したがって、この通信システムにおいては、データの衝突が少なくなり、スループットの向上を図ることが可能となる。
また、この通信システムにおいては、各端末が、他システムのパケットの発生の頻度とともに、各通信チャネルでの受信時間も併せて記録し、受信時間が所定時間を超過した場合には、そのときの誤り数を通信チャネルの変更の判断に用いる有効値として更新することにより、他システムの干渉状況を通信チャネル間で公平に比較することが可能となり、通信チャネルの変更の判断に用いる材料の更新を継続して行なうことから、干渉状況の変化を適切に考慮することが可能となる。
さらに、この通信システムにおいては、受信側で干渉を検出した場合には、干渉が生じている通信チャネルを使用してデータを送信してくる送信端末に対して、ビーコン信号の送信時刻及び使用する通信チャネルの変更を要求することができ、受信状況の悪い通信チャネルの使用を避け、より良好な通信チャネルに適切に変更することができる。
さらにまた、この通信システムにおいては、送信側で干渉を検出した場合には、データを受信する受信端末からの応答がない回数を測定し、その頻度が所定値を超過した場合には、ビーコン信号の送信時刻及び使用する通信チャネルを変更することにより、送信側で送信先の受信状況の劣化を認識することができ、自己の判断で自発的に通信チャネルを適切に変更することができる。