JP4232478B2 - β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性の製造方法に関する。また、本発明は、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を有する蛋白質と異種蛋白質との融合蛋白質に関する。
【0002】
【従来の技術】
種々の単糖がグリコシド結合により連結した糖鎖は、生体内において、細胞内オルガネラ成分、細胞表層成分、分泌糖蛋白質成分などとして存在している。糖鎖の構造は、生物種や組織特異的に異なっているが、同一生物種や同一組織内においても、その発生時期や疾病等によっても異なることから、従来考えられていた蛋白質の熱安定性、親水性、電荷、プロテアーゼ耐性等の蛋白質に対する物理的性質の付与といった機能のみならず、発生・分化、神経系、免疫系、ガンの転移等の細胞間認識に糖鎖が関与していることが明らかになり、医薬品等の種々の分野への応用の観点から、近年、非常に注目されるようになった。
【0003】
糖鎖の合成は、生体内においては糖転移酵素によって担われている。糖転移酵素は、糖ヌクレオチドを糖供与体として、受容体となる糖鎖に糖を転移し、糖鎖の伸長を行う酵素である。糖受容体の糖鎖構造に対する糖転移酵素の特異性は厳密であり、通常、1つのグリコシド結合は対応する1つの糖転移酵素によって形成されると言われている。このような糖転移酵素は、糖鎖研究、特に有用糖鎖の簡便な合成、天然の糖鎖の修飾に利用されるという点で重要な酵素である。しかしながら、天然に存在する糖転移酵素の量は極微量であり、大量且つ安定に供給することは事実上困難であった。
【0004】
GlcNAcβ1,3 Galの糖鎖構造(GlcNAcはN−アセチルグルコサミン、Galはガラクトースを示す。)は、天然の種々のオリゴ糖、糖脂質、糖蛋白質等に見出されている。なかでも、GlcNAcβ1,3 Galの構造を含むラクトサミノグリカンとして、Galβ1,4GlcNAcβ1,3の繰り返し構造を有するポリ−N−アセチルラクトサミンが、哺乳動物の種々のN-結合糖蛋白質(例えば、非特許文献1参照)、O−結合糖蛋白質(例えば、非特許文献2参照)および糖脂質(例えば、非特許文献3参照)に見出されている。ポリ−N−アセチルラクトサミンはIi抗原と密接に関連し(例えば、非特許文献4参照)、ABH型およびルイス型の血液型物質(例えば、非特許文献5参照)、あるいはシアリルルイスX等の糖鎖抗原の前駆体であり(例えば、非特許文献6参照)、細胞の分化や発生との密接な関連が研究されている。一方、Galβ1,4GlcNAcβ1,3Galβ1,4Glcの構造(Glcはグルコースを示す。)を有するラクト−N−ネオテトラース(以下、LNnTとも示す。)は、哺乳動物においては、ネオラクト系糖脂質のコア構造であり、シアル酸、フコース等の種々の糖が結合した数十種類の糖脂質の構造が決定されている(例えば、非特許文献7参照)。
【0005】
このようなGlcNAcβ1,3 Galの糖鎖構造は、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素により合成される。β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素は、種々の哺乳動物細胞組織にその存在が確認されており(例えば、非特許文献8および9参照)、由来により、糖蛋白質あるいは糖脂質の糖鎖に対する基質特異性が異なることが報告されている。上記のβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素の生体内における存在量は極めて少ないことから、GlcNAcβ1,3 Galの構造を有する糖鎖の大量合成に用いるには、遺伝子組換えによるβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素の大量生産による安定した供給が必要とされる。β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素をコードするDNAとしては、抗i抗原を用いた発現クローニングによりヒト由来β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素(iGnT)のcDNAが最初に単離された(例えば、非特許文献10参照)。続いて、β1,3−N−ガラクトース転移酵素と共通のモチーフをコードする、ヒトおよびマウス由来β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素のcDNAが単離されている(例えば、非特許文献11および12参照)。さらには、ラクトシルセラミドに特異的なラット、ヒトおよびマウス由来β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素(Lac3Cer合成酵素)が見出されている(例えば、非特許文献13および14参照)。
上記のβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素をコードするDNAを利用して、形質転換体を作製し、組換えβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素が得られているが(例えば、非特許文献15参照)、安定した供給が可能な大量生産のレベルには至っていない。
【0006】
β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素のような哺乳動物由来の糖転移酵素を哺乳動物細胞において発現させて組換え酵素として得る場合、哺乳動物細胞が本来有する他の糖転移酵素の夾雑活性を完全に除去する必要があり、精製が困難になるという問題点がある。一方、大腸菌で発現させる場合、大腸菌は、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素等のN−アセチルグルコサミン転移酵素のみならず、ガラクトース転移酵素、シアル酸転移酵素、N−アセチルガラクトサミン転移酵素、フコース転移酵素、マンノース転移酵素等の哺乳動物に見られる糖転移酵素の酵素活性をほとんど有していないことから、精製工程が容易になり、得られた組換え酵素は、他の糖転移酵素の夾雑活性を有しない高純度の酵素であるという利点を有する。さらに、コスト面を考慮すれば、組換え蛋白質の大量生産には、大腸菌等の微生物に発現させる方法が有利である。
【0007】
大腸菌における発現系において、目的とする遺伝子を大量に発現させ、且つ発現産物の精製を容易にする方法として、例えば、目的蛋白質をグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白質として発現させる方法がある。この方法では、GSTとの融合蛋白質はグルタチオンをリガンドとするアフィニティカラムクロマトグラフィーにより、容易に精製することができる。しかしながら、哺乳動物由来の糖転移酵素の発現にこの方法を用いた場合、発現した蛋白質の多くが不溶性の封入体(inclusion body)として存在することが多く、精製に際して可溶化・再生(renaturation)の工程を必要とするので、必ずしも効率的な発現系とは言えなかった。このような理由から、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素を大量且つ安定に供給することは事実上困難であった。
【0008】
【非特許文献1】
Eur. J. Biochem., 92, 289-300 1978
【非特許文献2】
Biochem. Biophys. Res. Commun., 110, 424-431, 1983
【非特許文献3】
Eur. J. Biochem., 71, 9-18, 1976
【非特許文献4】
FEBS Lett., 104, 135-140, 1979
【非特許文献5】
Semin. Hematol., 18, 39-62, 1981
【非特許文献6】
J. Biol. Chem., 259, 10925-10935, 1984
【非特許文献7】
Methods Enzymol., 50, 236-250, 1972
【非特許文献8】
J. Biol. Chem., 258, 3435-3437,
【非特許文献9】
1983; Carbohydr. Res., 120, 251-268, 1983
【非特許文献10】
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 14294-14299, 1997
【非特許文献11】
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, 406-411, 1999
【非特許文献12】
J. Biol. Chem., 276, 3498-3507, 2001
【非特許文献13】
J. Biol. Chem., 276, 22032-22040, 2001
【非特許文献14】
J. Biol. Chem., 276, 30261-32069, 2001
【非特許文献15】
Glycobiology, 9, 1123, 1999
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の実状を鑑みてなされたものであり、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素遺伝子を用いてβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素を大量に生産する方法を開発することにより、糖鎖工学用試薬、糖鎖合成、糖鎖構造解析等に、安価且つ安定供給可能な当該酵素を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段および発明の実施の形態】
本発明者らは、上述したような事情に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素をコードするDNAを単離し、本DNAがβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素を発現することを見出した。さらに、遺伝子組換え技術により、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素を糖結合性蛋白質との融合蛋白質として宿主に発現させると、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素を可溶性蛋白質として得ることができ、容易に精製することが可能であり、得られた融合蛋白質がβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素の活性を有していることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)下記(a)または(b)に示すDNA:
(a)配列番号:1に記載の塩基配列の塩基番号52〜1242の塩基配列を含むDNA
(b)(a)の配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA、
(2)下記(a)または(b)に示す、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を有する蛋白質:
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質
(b)(a)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる蛋白質、
(3)上記(2)記載の蛋白質をコードするDNA、
(4)上記(1)または(3)記載のDNAに相補的なRNA、
(5)上記(1)または(3)記載のDNAを含む組換えベクター、
(6)上記(5)記載の組換えベクターにより宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体、
(7)上記(1)または(3)記載のDNAあるいは上記(4)記載のRNAあるいは上記(5)記載のベクターを用いて宿主細胞を形質転換し、該形質転換体を培養し、該形質転換体からβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素を採取することを特徴とする、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素の製造方法、
(8)異種蛋白質と下記(a)または(b)に示すβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を有する蛋白質とを含み、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を有する融合蛋白質:
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質
(b)(a)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる蛋白質、
(9)該β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を有する蛋白質の膜貫通領域の一部または全部が欠失したものである上記(8)記載の融合蛋白質、
(10)異種蛋白質が糖結合性蛋白質である上記(8)または(9)記載の融合蛋白質、
(11)糖結合性蛋白質がマルトース結合性蛋白質である上記(10)記載の融合蛋白質、
(12)上記(8)ないし(11)のいずれか1つに記載の融合蛋白質をコードするDNA、
(13)上記(12)記載のDNAを含む組換えベクター、
(14)上記(13)記載の組換えベクターにより宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体、
(15)上記(12)記載のDNAあるいは上記(13)記載のベクターを用いて宿主細胞を形質転換し、該形質転換体を培養し、該形質転換体からβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を有する融合蛋白質を採取することを特徴とする、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を有する融合蛋白質の製造方法、
(16)得られる融合蛋白質において該β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を有する蛋白質の膜貫通領域の一部または全部が欠失したものである上記(15)記載の融合蛋白質の製造方法、ならびに
(17)糖結合性蛋白質がマルトース結合性蛋白質である上記(15)または(16)記載の融合蛋白質の製造方法
を提供するものである。
【0012】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の1の態様において、配列番号:1に記載の塩基配列の塩基番号52〜1242の塩基配列を含む新規DNAが提供される。このDNAは、配列番号:2(アミノ酸1〜397)で示される本発明の新規β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素をコードするものである。したがって、新規β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素は、典型的には、配列番号:2で示されるアミノ酸配列からなる。
【0013】
配列番号:1に記載の塩基配列の塩基番号52〜1242の塩基配列を含むDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAも、上記(a)と同様の構造、機能等を有していると考えられることから、上記(a)に代えて上記(b)のDNAを用いることができる。ストリンジェントな条件とは、6X SSC、5X Denhardt's reagentおよび0.5% SDS、100μg/ml サケ精子DNAを含む溶液中で42℃にてハイブリダイダイズさせる条件が例示される。
【0014】
上記のDNAは、例えば、実施例に示すように、既知のヒトあるいはマウス由来のβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素cDNAの塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、ブタ組織由来のcDNAから、PCRによりクローニングすることができる。また、ブタ組織から抽出したトータルRNAあるいはポリ(A)+RNAからPCRにより、上記のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、クローニングすることもできる。
【0015】
本発明はもう1つの態様において、配列番号:2のアミノ酸配列(アミノ酸1〜397)からなる新規ブタ由来β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素を提供する。上記のごとく、典型的には、本酵素は配列番号:2で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質であるが、配列番号:2のアミノ酸配列において1個または数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる変異蛋白質であってもよい。ただし、かかる変異蛋白であっても、配列番号:2で示されるアミノ酸配列からなる新規β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素と実質的に同じ活性を有している。本明細書において、本発明のβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素および実質的に同じ活性を有する変異蛋白をまとめてβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素と称することがある。
【0016】
本発明のβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素は後で説明するように組換え法により製造することができる。さらに、当業者に公知の方法、例えば部位特異的突然変異誘発法等を用いて本発明のβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素中の所望位置のアミノ酸を変化させることもでき、かくして変異β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素を得ることもできる。
【0017】
本発明において製造されるβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素は、糖鎖の非還元末端に存在するガラクトース残基にβ1,3結合によりN−アセチルグルコサミンを転移する活性を有するものが好ましい。また、Galβ1,4GlcNAcβ1,3Galβ1,4Glcの非還元末端に存在するガラクトース残基もしくは(Galβ1,4GlcNAcβ1,3)nの繰り返し構造を有するポリーN−アセチルラクトサミンにβ1,3結合によりN−アセチルグルコサミンを転移する活性を有するものが好ましい。
【0018】
N−アセチルグルコサミン転移酵素活性は、例えば、N−アセチルグルコサミン供与体としてウリジンー5’―ジホスホーN−アセチルグルコサミン(以下、UDP-GlcNAcと略することがある)を用い、LNnTへのN−アセチルグルコサミンの転移反応を利用した活性測定法により測定できる。
【0019】
本発明は、もう1つの態様において、上記β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素あるいはその変異蛋白をコードするDNAを提供する。本明細書において、上記β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素あるいはその変異蛋白をコードするDNAをまとめて本発明のβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素コードするDNAと称することがある。当業者は公知の方法を用いて本発明のβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素コードするDNA中の所望位置のヌクレオチドを変化させることができ、かかるDNAは変異β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素をコードするものである。また、元々変異したβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素を有する個体から変異β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素および/または変異β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素をコードするDNAを得ることもできる。
【0020】
本発明はさらなる態様において、上記DNAに対して相補的なRNAも提供する。
【0021】
さらに本発明は、もう1つの態様において、上記DNAを含む組換えベクターを提供する。
【0022】
本発明の組換えベクターは、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞、植物細胞等において、前記のDNAを発現させるためのベクターであり、特に限定されない。具体的には、形質転換する宿主に応じて、様々なものが使用できる。例えば、大腸菌では、pMAL系、pUC19、pBluescriptII、pET系等、酵母では、pYEUra3TM等、昆虫細胞では、pBLUE Bac4等、動物細胞では、pSVK3等、植物細胞では、pBI121等が挙げられる。
【0023】
上記宿主細胞に前記DNAまたはRNAを導入して本発明のβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素あるいはその変異蛋白を発現する形質転換体を作製することができる。かかる形質転換体は、前記組換えベクターにより形質転換されて作製されたものである。形質転換の宿主は、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞、植物細胞等が例示される。形質転換体は、公知のコンピテント細胞、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等を用いて、細胞に組換えベクターを導入することによって作製される。
【0024】
本発明はさらなる態様において、本発明のβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素をコードするDNAあるいはそれらに相補的なRNAあるいは本発明のβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素をコードするDNAを担持するベクターを用いて宿主細胞を形質転換し、該形質転換体を培養し、該形質転換体からβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素を採取することを特徴とする、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素の製造方法を提供する。上記形質転換体を適切な条件下で培養・増殖させて本発明のβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素あるいはその変異蛋白を生成せしめ、これを適当な単離・精製手段により培地から取り出すことができる。
形質転換体の培養ならびに生成蛋白の単離・精製等の詳細については、後述する本発明の融合蛋白質の製造に関する説明を参照すれば当業者に明らかである。
【0025】
本発明は、もう1つの態様において、上記のβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素と異種蛋白質との融合蛋白質を提供する。本発明の融合蛋白は本発明のβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素と実質的に同じ活性を有している。本発明のβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素の活性およびその測定方法については前記したとおりである。かかる融合蛋白において、本発明のβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素部分は実質的に同じ活性を有する変異蛋白であってもよく、該変異蛋白については前記説明を参照のこと。
【0026】
前記融合蛋白質の異種蛋白質としては、マルトース結合性蛋白質(以下、MBPと示すこともある。)等の糖結合性蛋白質、GST、His、FLAG、Protein A等が例示される。
【0027】
本発明において、糖結合性蛋白質とは、糖もしくは糖残基を有する少糖類及び多糖類に対して高い親和性を保持する蛋白質である。該糖結合性蛋白質は、いかなる生物種に由来するものでもよい。具体的には、マルトース結合性蛋白質、セルロース結合性蛋白質、キチン結合性蛋白質、各種レクチン等が例示される。なかでも、マルトース結合性蛋白質(MBP)は、以下の点から、特に好ましい。MBPをコードするDNAを含む発現ベクターを用いて大腸菌で発現させることにより、inclusion bodyの形成が低減し、大量の可溶性の融合蛋白質を容易に得ることができる。目的の融合蛋白質は、マルトース結合性蛋白質と特異的に結合する各種糖残基を含むリガンドを結合した不溶性担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより容易に精製することができる。さらに、このような担体に結合させた融合蛋白質は、高純度の固定化酵素としても利用可能である。
【0028】
MBPは、マルトース又はマルトース残基を有する少糖類(例えば、マルトトリオース等)もしくは多糖類(例えば、アミロース等)に対して特異的親和性を有する部位を有していれば、必ずしもその全配列を含む必要はなく、該配列の一部を含むものであってもよい。したがって、公知のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された配列からなり、マルトース又はマルトース残基を有する少糖類(例えば、マルトトリオース等)もしくは多糖類(例えば、アミロース等)に対して特異的親和性を有する部位を有する蛋白質も、本発明におけるMBPに含めることができる。
【0029】
また、本発明はさらなる態様において、上記融合蛋白をコードするDNA、かかるDNAを含む組換えベクター、ならびにかかる組換えベクターにより宿主を形質転換して得られる形質転換体を提供する。
【0030】
本発明において、MBPをコードするDNAは、マルトース又はマルトース残基を有する少糖類もしくは多糖類に対して特異的親和性を有する翻訳産物をコードする限り、必ずしもコード領域の全てを含む必要はなく、該コード領域の一部を含むものであってもよい。その由来は特に限定されるものではないが、pMAL-p2、pMAL-c2(いずれも、New England Biolabs社製)等のpMAL系ベクターに由来するものが挙げられる。
【0031】
本発明において、上記の融合蛋白質をコードするDNAは、異種蛋白質をコードするDNAと、N−アセチルグルコサミン転移酵素をコードするDNAを、結果的に上記の性質を有する融合蛋白質として翻訳されるように、イン・フレームに連結したキメラDNAである。
【0032】
また本発明の融合蛋白質において、本発明のβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素のアミノ酸配列の膜貫通領域の一部または全部が欠失されていることも、膜蛋白質であるβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素を、精製工程において取扱いの容易な可溶性画分の蛋白質として発現させることが可能になるという点から好ましい。
したがって、本発明は、本発明のβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素のアミノ酸配列の膜貫通領域の一部または全部が欠失されている融合蛋白質ならびにそれをコードするDNAも包含する。
【0033】
上記の融合蛋白質の製造方法としては、組換え法が一般的であり、これについて以下に説明する。
上記の融合蛋白質をコードするDNAを含む組換えベクターは、N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を有する融合蛋白質として翻訳されるように、前記のDNAを発現させるためのベクターであり、特に限定されない。具体的には、形質転換する宿主に応じて、様々なものが使用できる。例えば、N−アセチルグルコサミン転移酵素をコードするcDNAをpMAL-p2に挿入することにより、目的の組換えベクターを得ることができる。
【0034】
前記の組換えベクターは、上記の糖結合性蛋白質−N−アセチルグルコサミン転移酵素をコードするキメラDNAが、大腸菌で機能し得るプロモーターの制御下におかれた、任意の発現ベクターである。該プロモーター領域には、RNAポリメラーゼの結合位置を決定するコンセンサス配列である−35領域及び−10領域が含まれる。所望の組換え蛋白質を大量に発現させる系として、誘導酵素のプロモーター領域を使用することがより好ましい。このようなプロモーター領域として、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、lppプロモーター、tacプロモーター等が挙げられる。これらのプロモーター領域は、リプレッサー蛋白質が結合するオペレーターをさらに含む。誘導物質(例えば、lacプロモーターではラクトースやIPTG)を添加するとリプレッサー蛋白質のオペレーターへの結合が抑制され、プロモーターの制御下におかれた遺伝子が大量に発現する。また、該組換えベクターは、翻訳開始コドンの上流にコンセンサスなShine-Dalgarno(SD)配列を含む。さらに、該発現ベクターは、糖結合性蛋白質−N−アセチルグルコサミン転移酵素をコードするキメラDNAの下流に転写終結シグナル、すなわちターミネーター領域を含有する。ターミネーター領域としては、通常使用されている天然又は合成のターミネーターを用いることができる。本発明の組換えベクターは、上記のプロモーター領域及びターミネーター領域に加えて、宿主大腸菌内で自律複製し得る複製起点を含む必要がある。このような複製起点としては、ColEl ori、M13 ori等が挙げられる。
【0035】
形質転換体は、公知の方法を用いて前記組換えベクターにより形質転換されて作製されたものを包含する。形質転換の宿主は、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞、植物細胞等が例示される(上記参照)。なかでも、大腸菌が特に好ましい。大腸菌の場合、その菌株は特に限定されず、例えば、市販のXL1-Blue株、BL-21株、JM107株、TB1株、JM109株、C600株、DH5α株、HB101株等が挙げられる。
【0036】
本発明は、もう1つの態様において、上記融合蛋白質をコードするDNAあるいは上記融合蛋白質をコードするDNAを担持するベクターを用いて宿主細胞を形質転換し、該形質転換体を培養し、該形質転換体からβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を有する融合蛋白質を採取することを特徴とする、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を有する融合蛋白質の製造方法を提供する。形質転換の宿主は、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞、植物細胞等が例示される。形質転換体は、公知のコンピテント細胞、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等を用いて、細胞に組換えベクターを導入することによって作製される。
【0037】
例えば、上述のpMAL−p2から得られた組換えベクターにより形質転換した大腸菌JM109株を用いる場合、用いられる培地としては、炭素源としてグルコース、フルクトース、グリセロール、スターチなどの炭水化物を含有するものである。また無機もしくは有機窒素源(例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、カゼインの加水分解物、酵母抽出物、ポリペプトン、バクトトリプトン、ビーフ抽出物等)を含んでいてもよい。これらの炭素源及び窒素源は、純粋な形で使用する必要はなく、純度の低いものも微量の生育因子や無機栄養素を豊富に含んでいるので有利である。さらに所望により、他の栄養源(例えば、無機塩(例えば、二リン酸ナトリウム又は二リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム)、ビタミン類(例えば、ビタミンB1)、抗生物質(例えば、アンピシリン、カナマイシン)など)を培地中に添加してもよい。
【0038】
形質転換体の培養は、通常pH5.5〜8.5、好適には6〜8、通常18〜40℃、好適には20〜35℃で1〜150時間行われるが、これらは培養条件及び培養規模により適宜変更することができる。
【0039】
融合蛋白質の発現が、誘導蛋白質遺伝子のプロモーター系により制御される場合、誘導物質は培養開始時から添加しておいてもよいが、対数増殖期初期に添加するのがより好ましい。誘導物質の添加時期や添加濃度は、培養条件、培養規模、誘導物質の種類等によって適宜変更することができる。
【0040】
本発明の方法では、融合蛋白質の精製は、該融合蛋白質の存在する画分を、その糖結合性蛋白質と特異的に結合する各種糖残基を含むリガンドを結合した不溶性担体を用いたアフィニティクロマトグラフィに供することにより達成することができる。また。リガンドとして該糖結合性蛋白質に特異的な抗体(モノクロナール抗体もしくはポリクロナール抗体)を用いてもよい。精製方法としては、例えば、硫酸アンモニウムによる塩析、遠心分離、透析、限外濾過、イオン交換カラムクロマトグラフィー、疎水カラムクロマトグラフィー、ゲル濾過カラムクロマトグラフィー、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、電気泳動法等が挙げられ、これらを組み合わせることにより、該融合蛋白質を精製することができる。
【0041】
上記方法で得られる融合蛋白質において該β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を有する蛋白質の膜貫通領域の一部または全部が欠失していてもよい。
また、上記方法で得られる融合蛋白質において糖結合性蛋白質がマルトース結合性蛋白質であるのが好ましい。
【0042】
【実施例】
以下、実施例を挙げることにより、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は実施例に特に限定されるものではない。
【0043】
実施例1:β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素 cDNAのクローニング
ブタ肝臓トータルRNA(フナコシ)から、PolyATract mRNA Isolation SystemIV(Promega社)を用い、mRNAを抽出した。得られたmRNAを鋳型として、cDNA Synthesis Kit(Stratagene社)を用い、添付のプロトコルに従い、cDNAを調製した。
続いて、β1,3−ガラクトース転移酵素と共通のモチーフをコードする、ヒトおよびマウス由来β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素cDNA(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, 406-411, 1999)の相同性を基に、数種類のPCRプライマーを作製した。これらのPCRプライマーを用いて、KOD Dash DNAポリメラーゼ(東洋紡績製)を用いて、上記のcDNAを鋳型としてPCR(96℃・120秒の変性の後、94℃・30秒、60℃・2秒、74℃・60秒を30サイクル)を行った。このPCR反応液を1.5%アガロース電気泳動に供し、増幅断片を得た。PCR産物を精製し、DNAシーケンサーABI PRISM310 Genetic Analyzer(PE Appplied Biosystems社)により配列を決定した。その結果、5'プライマー(5'-ATCCTGATGATGGCAAATGTCTTC-3'(配列番号:3))および3'プライマー(5'-ATCAAATGTCCTGAAGCCTTTGTG-3'(配列番号:4))を用いたPCRの結果、ヒトおよびマウス由来β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素cDNAと相同性の高い配列が得られた。次に、LA PCR in vitro Cloning Kit(寶酒造製)を用い、5’上流側および3’下流側の未知領域の増幅を行い、単一のORFを有するcDNA配列を得た。尚、DNAポリメラーゼによるミスリーディングを補正するため、複数のクローンから配列を決定した。
【0044】
実施例2:β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素のCOS−1細胞における発現
上述のクローニングで得られた単一のORFを含むcDNA断片をPCRで増幅した。PCRプライマーは、KpnI部位を有する5'プライマー(5'-GGGGTACCGAAATGAGTGTTGGACCTC-3'(配列番号:5))およびXbaI部位を有するプライマー(5'-GCTCTAGACTTAGAGGCCCTCAAATGGACACT-3'(配列番号:6))を用いた。これらのPCRプライマーを用いて、KOD Plus DNAポリメラーゼを用いて、上記のcDNAを鋳型としてPCR(94℃・120秒の熱変性の後、94℃・15秒、60℃・30秒、68℃・90秒を30サイクル)を行った。得られた増幅断片を発現ベクターpSVK3の制限酵素切断部位に挿入し、発現プラスミドpSVK3-β1,3-GnTを作製した。ジーンパルサー(Bio-Rad社)を用いたエレクトロポレーションにより、発現プラスミドpSVK3-β1,3-GnTをCOS-1細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を48時間培養した後、遠心分離により回収し、超音波破砕機で破砕した。得られた破砕物を遠心し、上清を粗抽出液として回収した。
上記粗抽出液を用いて、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性の確認を行った。活性測定の基質には、公知の方法(J. Biochem., 105, 547-555, 1989)により、2−アミノピリジンで蛍光標識したオリゴ糖鎖(PA化糖鎖)を用いた。受容体基質には、PA化ラクト−N−ネオテトラオース(Galβ1,4GlcNAcβ1,3Galβ1,4Glc -PA)を用いた。また、PA化para-ラクトーN―ネオヘキサオース(Galβ1,4GlcNAcβ1,3Galβ1,4GlcNAcβ1,3Galβ1,4Glc-PA)をβガラクトシダーゼで処理して末端のガラクトース残基を除去して得られたPA化5糖(GlcNAcβ1,3Galβ1,4GlcNAcβ1,3Galβ1,4Glc-PA)を生成物の標準品として用いた。糖供与体としてUDP-GlcNAcを用い、これを加えない系を対照とした。100mM HEPES-NaOH緩衝液(pH7.0)、15mM MnCl2、20mM UDP-GlcNAc、0.1mM LNnT-PAおよび上記酵素液を含む反応液10μlを37℃にて12時間反応させた。反応液を3分間煮沸することにより反応を停止させた後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供した。コントロールとしてmock pSVK3を導入したCOS−1細胞の破砕物のβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を測定した。発現プラスミドpSVK3-β1,3-GnTを導入されたCOS−1細胞粗抽出液のHPLCの結果は図1に示す通りである。図1より明らかなように、糖供与体が共存する場合にのみ、反応生成物のピークが確認された。反応時間の経過と共に、そのピーク強度が強くなることも確認された。コントロールでは、反応生成物のピークはほとんど検出されなかったのに対し、該β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素遺伝子を含む発現プラスミドを導入されたCOS−1細胞では16.8pmol/h/mg蛋白質の活性値を示した。この結果から、上述のクローニングで得られた遺伝子はβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素をコードするcDNAであることが示された。
【0045】
実施例3:β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素の大腸菌における発現N−アセチルグルコサミン転移酵素の膜貫通領域を含むN末端側のアミノ酸(配列番号:2のアミノ酸番号1から55まで)を欠損させたcDNA断片をPCRで増幅した。PCRプライマーは、BamHI切断部位を有する5'プライマー(5'-CCGGATCCAAGGCATATTGGAACAGG-3'(配列番号:7))およびXbaI切断部位を有する3'プライマー(5'-CGTCTAGACTTAGAGGCCCTCAAATGGACACT-3'(配列番号:8))を用いた。これらのPCRプライマーを用いて、KOD Plus DNAポリメラーゼを用いて、上記のcDNAを鋳型としてPCR(94℃・15秒、55℃・30秒、68℃・90秒を30サイクル)を行った。得られた増幅断片を発現ベクターpMAL-p2の制限酵素切断部位に挿入し、発現プラスミドpMAL-p2-β1,3-GnTを作製した。
発現プラスミドpMAL-p2-β1,3-GnTを有する大腸菌JM109をアンピシリン(50μg/ml)および0.2%グルコースを含むLB培地10ml中にて、37℃で終夜培養を行い、さらにこの培養液250μlを、同培地25mlに接種して37℃、3時間の培養を行い、25℃に温度を下げた後、イソプロピルチオ−β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度0.3mMとなるように加えて、組換え蛋白質の発現誘導を行った。菌体を遠心分離により集め、200mM NaCl、1mM 2−メルカプトエタノールを含む20mM トリス緩衝液(pH7.5)で懸濁し、超音波処理により菌体を破砕した。懸濁液を遠心分離し、上清を無細胞抽出液として回収した。この無細胞抽出液のウエスタンブロッティングを抗MBPウサギ抗血清を用いて行った結果、MBPとβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素の融合蛋白質と推定される分子量約85,000のバンドが検出された(図2)。
【0046】
上記無細胞抽出液を、Amylose resin column(New England Biolab社)を用いて精製し、得られた溶出画分について、実施例2と同様に、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を測定した。
【0047】
HPLCの結果は図3に示す通りである。図3より明らかなように、糖供与体が共存する場合にのみ、反応生成物のピークが確認された。反応時間の経過と共に、そのピーク強度が強くなることも確認された。したがって、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を確認することができた。
【0048】
【発明の効果】
上述したように、本発明により、新規ブタβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素およびその組換え法による製造方法が提供される。また、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を有する蛋白質と異種蛋白質との融合蛋白質およびその製造方法が提供される。本発明の方法は組換え法によるので、糖鎖工学用試薬、糖鎖合成、糖鎖構造解析等に有用な酵素を大量に得ることができる。
【0049】
【配列表フリーテキスト】
SEQ ID NO. 1
A nucleotide sequence encoding the novel beta-1,3-N-acetylglucosaminyltransferase.
SEQ ID NO.2
An amino acid sequence of the novel beta-1,3-N-acetylglucosaminyltransferase.
SEQ ID NO.3
A primer for amplifying beta-1,3-N-acetylglucosaminyltransferase cDNA.SEQ ID NO.4
A primer for amplifying beta-1,3-N-acetylglucosaminyltransferase cDNA.SEQ ID NO.5
A primer for amplifying beta-1,3-N-acetylglucosaminyltransferase cDNA.SEQ ID NO.6
A primer for amplifying beta-1,3-N-acetylglucosaminyltransferase cDNA.SEQ ID NO.7
A primer for amplifying beta-1,3-N-acetylglucosaminyltransferase cDNA.SEQ ID NO.8
A primer for amplifying beta-1,3-N-acetylglucosaminyltransferase cDNA.
【0050】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1はHPLCにより、COS-1細胞において発現させたβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素の活性を確認した結果を示す。
【図2】 図2は、発現プラスミドpMAL-p2-β1,3-GnTを有する大腸菌JM109株の無細胞抽出液のウエスタンブロッティングの結果を示す。レーン1、2、3および4は、IPTGの添加による発現誘導開始0、3、7および20時間後の無細胞抽出液の結果をそれぞれ示す。
【図3】 図3はHPLCにより、大腸菌JM109株において発現させたβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素の活性を確認した結果を示す。
Claims (4)
- マルトース結合性蛋白質と配列番号:2に記載のアミノ酸配列のうちアミノ酸番号1から55までを欠損させたβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を有する融合蛋白質をコードするDNAを含む組換えベクターを用いて宿主細胞を形質転換し、該形質転換体を培養し、該形質転換体から該β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を有する融合蛋白質を採取することを特徴とする、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を有する融合蛋白質の製造方法。
- 該β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を有する融合蛋白質が可溶性タンパク質として得られるものである、請求項1記載の方法。
- 該宿主細胞が大腸菌である、請求項1または2記載の方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の方法により得られる、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を有する融合蛋白質。
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