JP4232333B2 - 切粉に対する表面潤滑性にすぐれた表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、切粉に対する表面潤滑性にすぐれ、したがって特にステンレス鋼や軟鋼などのきわめて粘性が高く、かつ切粉が切刃表面に溶着し易い難削材の高速切削加工に用いた場合にも、切刃に欠けやチッピング(微小欠け)などの発生なく、すぐれた切削性能を長期に亘って発揮する表面被覆超硬合金製切削工具(以下、被覆超硬工具という)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、切削工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに前記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具などが知られている。
【0003】
さらに、一般に、炭化タングステン基超硬合金基体(以下、超硬基体という)の表面に、
(a)下部層として、0.5〜15μmの平均層厚を有し、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1種または2種以上からなるTi化合物層、
(b)上部層として、1〜15μmの平均層厚を有し、酸化アルミニウム(以下、Al2O3で示す)層、および例えば特開昭57−39168号公報や特開昭61−201778号公報に記載されるAl2O3の素地に酸化ジルコニウム(以下、ZrO2で示す)相が分散分布してなるAl2O3−ZrO2混合層(以下、Al2O3−ZrO2混合層と云う)のいずれか、または両方、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を3〜30μmの全体平均層厚で化学蒸着および/または物理蒸着してなる被覆超硬工具が知られており、この被覆超硬工具が、例えば各種低合金鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に通常の条件で用いられていることも知られている。
【0004】
また、一般に、上記の被覆超硬工具の硬質被覆層を構成するTi化合物層や、Al2O3層およびAl2O3−ZrO2混合層が粒状結晶組織を有し、かつ前記Al2O3層はα型結晶構造をもつものやκ型結晶構造をもつものなどが広く実用に供されることも良く知られており、さらに例えば特開平6−8010号公報や特開平7−328808号公報に記載されるように、前記Ti化合物層を構成するTiCN層を、層自身の靭性向上を目的として、通常の化学蒸着装置にて、反応ガスとして有機炭窒化物を含む混合ガスを使用し、700〜950℃の中温温度域で化学蒸着することにより形成して縦長成長結晶組織をもつようにすることも知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年の切削加工装置のFA化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削工具には1種類の工具できるだけ多くの材種の被削材を切削加工できる汎用性が求められると共に、切削加工も高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆超硬工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での切削加工に用いた場合には問題はないが、これをきわめて粘性の高いステンレス鋼や軟鋼などの被削材の高速切削に用いた場合には、これら被削材の切粉は、硬質被覆層を構成する特にAl2 O3 層 およびAl2O3−ZrO2混合層に対する親和性が高いために、切刃表面に溶着し易く、この溶着現象は切削加工が高速化すればするほど顕著に現れるようになり、この溶着現象が原因で切刃に欠けやチッピングが発生し、この結果比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、特にステンレス鋼や軟鋼などの高速切削加工に用いた場合にも、切刃表面に切粉の溶着し難い被覆超硬工具を開発すべく研究を行った結果、
(a)上記の従来被覆超硬工具の表面に、化学蒸着装置にて、反応ガス組成を、体積%で、
TiCl4:0.2〜10%、
AlCl3:0.05〜1%、
CO2:0.1〜10%、
Ar:5〜60%、
H2:残り、
とし、かつ、
反応雰囲気温度:800〜1100℃、
反応雰囲気圧力:4〜70kPa、
とした条件で表面層を形成し、この表面層を、0.1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Ti1-YAlY)OX 、
で表わした場合、厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、いずれも原子比で
Y:0.02〜0.15、
X:1.2〜1.9、
を満足するTiとAlの複合酸化物層、
で構成すると、このTiとAlの複合酸化物層が上記の従来被覆超硬工具の表面に表面層として化学蒸着または物理蒸着された被覆超硬工具においては、前記表面層が、これに含有するAlの作用で硬質被覆層の上部層を構成するAl2 O3 層 およびAl2O3−ZrO2混合層に強固に密着すると共に、前記表面層自体の被削材、特にステンレス鋼や軟鋼などの粘性の高い難削材に対する親和性がきわめて低く、これは高い発熱を伴う高速切削加工でも変わらないことから、切刃に切粉が溶着することがない、すなわち前記TiとAlの複合酸化物層がすぐれた表面潤滑性を発揮し、この結果切刃に欠けやチッピングの発生がなくなり、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するようになること。
(b)上記(a)の被覆超硬工具の硬質被覆層の表面層を構成するTiとAlの複合酸化物層においては、中間層(従来上部層)を構成するAl2 O3 層 およびAl2O3−ZrO2混合層との界面部ではTiに比して相対的にAlの含有割合を高くすると、前記Al2 O3 層 およびAl2O3−ZrO2混合層との密着性がさらに一段と向上し、一方最表面側では反対にTiに比してAlの含有割合を低くすると、粘性の高い難削材であるステンレス鋼や軟鋼などに対する親和性が著しく低下することから、前記Al2 O3 層 およびAl2O3−ZrO2混合層との界面部ではTiに比して相対的にAlの含有割合を高く、一方最表面側では反対にAlに比してTiの含有割合を高くする成分濃度勾配を厚さ方向に連続的および/または断続的に形成するのが望ましく、これによってTiとAlの複合酸化物層からなる表面層は一段とすぐれた特性、すなわちすぐれた層間密着性と表面潤滑性を発揮するようになること。
以上(a)および(b)に示される研究結果を得たのである。
【0007】
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、超硬基体の表面に、
(a)下部層として、0.5〜15μmの平均層厚を有し、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1種または2種以上からなるTi化合物層、
(b)中間層として、1〜15μmの平均層厚を有する、Al2O3層および/またはAl2O3−ZrO2混合層、
(c)表面層として、0.1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Ti1-YAlY)OX 、
で表わした場合、厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、いずれも原子比で
Y:0.02〜0.15、
X:1.2〜1.9、
を満足するTiとAlの複合酸化物層、
以上(a)〜(c)で構成された硬質被覆層を3〜30μmの全体平均層厚で化学蒸着および/または物理蒸着してなる、切粉に対する表面潤滑性にすぐれた被覆超硬工具に特徴を有するものである。
【0008】
この発明の被覆超硬工具において、表面層を構成するTiとAlの複合酸化物層における酸素(O)の(Ti+Al)に対する割合(X値)を原子比で1.2〜1.9としたのは、その値が1.2未満では所望のすぐれた表面潤滑性を確保することができず、一方その値が1.9を越えると、層中に気孔が形成され易くなり、健全な表面層の安定的形成が難しくなるという理由によるものであり、望ましくは1.2〜1.7とするのがよい。
また、上記表面層の厚さ方向中心部におけるAlのTiとの合量に占める割合(Y値)を原子比で0.02〜0.15としたのは、TiとAlの含有割合が厚さ方向に同じである場合、その値が0.02未満では、Al2O3層およびAl2O3−ZrO2混合層に対して十分な密着性を確保することができず、一方その値が0.15を越えると、被削材との親和性が増すようになって、表面潤滑性に低下傾向が現われるようになるという理由によるものであり、望ましくは0.02〜0.1とするのがよい。
さらに、上記TiとAlの複合酸化物層からなる表面層においては、上記の通りAl2O3層およびAl2O3−ZrO2混合層との界面部では相対的にAlの含有割合を高く、一方最表面側では相対的にTiの含有割合を高くすれば密着性と表面潤滑性が一段と向上したものになるのであるから、厚さ方向中心部における0.02〜0.15のY値を中心として、これより下側は相対的にY値を高く、上側は相対的にY値を低くした成分濃度勾配を厚さ方向に連続的および/または断続的に形成するのが望ましい。
【0009】
また、上記表面層の平均層厚を、0.1〜5μmとしたのは、その平均層厚が0.1μm未満では、所望の表面潤滑性を確保することができず、一方この表面潤滑性付与作用は5μmの平均層厚で十分満足に行うことができるという理由にもとづくものであり、下部層および中間層の平均層厚をそれぞれ0.5〜15μmおよび1〜15μmとしたのは、前者の下部層(Ti化合物層)の平均層厚が0.5μm未満になると、切刃にチッピングが発生し易くなり、一方後者の中間層(Al2O3層およびAl2O3−ZrO2混合層)の平均層厚が1μm未満になると、特に切刃の逃げ面摩耗の進行が促進するようになり、また前者の平均層厚が15μmを越えると、耐摩耗性が急激に低下するようになり、一方後者の平均層厚が15μmを越えると、切刃にチッピングが発生し易くなるという理由によるものである。
さらに、硬質被覆層の平均層厚を3〜30μmとしたのは、その層厚が3μmでは所望のすぐれた耐摩耗性を確保することができず、一方その層厚が30μmを越えると、切刃に欠けやチッピングが発生し易くなるという理由によるものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の被覆超硬工具を実施例により具体的に説明する。
(実施例1)
原料粉末として、いずれも0.5〜4μmの範囲内の所定の平均粒径を有するWC粉末、(Ti,W)C(重量比で、以下同じ、TiC/WC=30/70)粉末、(Ti,W)CN(TiC/TiN/WC=24/20/56)粉末、(Ta,Nb)C(TaC/NbC=90/10)粉末、Cr3C2粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPa(1ton/cm2 )の圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Pa(0.05torr)の真空中、1410℃に1時間保持の条件で真空焼結することによりISO・CNMG120408に規定するスローアウエイチップ形状をもった超硬基体(チップ)A〜Fをそれぞれ製造した。
【0011】
ついで、これらの超硬基体(チップ)A〜Fの表面に、ホーニングを施した状態で、通常の化学蒸着装置を用い、表2、3(表2中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものである)に示される条件にて、表4に示される組成および目標層厚のTi化合物層(下部層)、Al2O3層および/またはAl2O3−ZrO2混合層(中間層)、およびTiとAlの複合酸化物層(表面層)からなる硬質被覆層を形成することにより、図1(a)に概略斜視図で、同(b)に概略縦断面図で示される形状を有する本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬合金製スローアウエイチップ(以下、本発明被覆超硬チップと云う)1〜10をそれぞれ製造した。
【0012】
また、比較の目的で、表5に示される通り、上記表面層としてのTiとAlの複合酸化物層を形成しない以外は同一の条件で同じく従来被覆超硬工具としての従来表面被覆超硬合金製スローアウエイチップ(以下、従来被覆超硬チップと云う)1〜10をそれぞれ製造した。
【0013】
この結果得られた本発明被覆超硬チップ1〜10の表面層について、その厚さ方向中央部の酸素含有割合(X値)およびAl含有割合(Y値)をオージェ分光分析装置を用いて測定したところ、表3に示される目標値と実質的に同じ値を示した。
また、上記の本発明被覆超硬チップ1〜10および従来被覆超硬チップ1〜10の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも表4、5に示される目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
なお、上記の目標値と実測値の関係は以下の実施例2、3でも同じ結果を示した。
【0014】
つぎに、上記本発明被覆超硬チップ1〜10および従来被覆超硬チップ1〜10について、これを工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SUS304の丸棒、
切削速度:300m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.2mm/rev.、
切削時間:10分、
の条件でのステンレス鋼の乾式高速連続旋削加工試験、
被削材:JIS・SUS304の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:200m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.17mm/rev.、
切削時間:3分、
の条件でのステンレス鋼の乾式高速断続旋削加工試験、さらに、
被削材:JIS・S15Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:300m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.3mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件での軟鋼の乾式高速断続旋削加工試験を行い、いずれの旋削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】
【表4】
【0019】
【表5】
【0020】
【表6】
【0021】
(実施例2)
原料粉末として、平均粒径:5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μmのNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μmのCr3C2粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0μmの(Ti,W)C粉末、同1.8μmのCo粉末、および同1.2μmの炭素(C)粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表7に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、直径が8mm、13mm、および26mmの3種の超硬基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記の3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、表7に示される組合せで、切刃部の直径×長さがそれぞれ6mm×13mm、10mm×22mm、および20mm×45mmの寸法をもった超硬基体(エンドミル)a〜hをそれぞれ製造した。
【0022】
ついで、これらの超硬基体(エンドミル)a〜hの表面に、ホーニングを施した状態で、通常の化学蒸着装置を用い、同じく表2、3に示される条件にて、表8に示される組成および目標層厚のTi化合物層(下部層)、Al2O3層および/またはAl2O3−ZrO2混合層(中間層)、およびTiとAlの複合酸化物層(表面層)からなる硬質被覆層を形成することにより、図2(a)に概略正面図で、同(b)に切刃部の概略横断面図で示される形状を有する本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬合金製エンドミル(以下、本発明被覆超硬エンドミルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
【0023】
また、比較の目的で、表9に示される通り、上記表面層としてのTiとAlの複合酸化物層を形成しない以外は同一の条件で従来被覆超硬工具としての従来表面被覆超硬合金製エンドミル(以下、従来被覆超硬エンドミルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
【0024】
つぎに、上記本発明被覆超硬エンドミル1〜8および従来被覆超硬エンドミル1〜8のうち、本発明被覆超硬エンドミル1〜3および従来被覆超硬エンドミル1〜3については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SUS304の板材、
切削速度:60m/min.、
溝深さ(切り込み):3mm、
テーブル送り:250mm/分、
の条件でのステンレス鋼の湿式高速溝切削加工試験(水溶性切削油使用)、本発明被覆超硬エンドミル4〜6および従来被覆超硬エンドミル4〜6については、被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S150板材、
切削速度:80m/min.、
溝深さ(切り込み):6mm、
テーブル送り:500mm/分、
の条件での軟鋼の乾式高速溝切削加工試験、本発明被覆超硬エンドミル7,8および従来被覆超硬エンドミル7,8については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SUS304の板材、
切削速度:70m/min.、
溝深さ(切り込み):15mm、
テーブル送り:250mm/分、
の条件でのステンレス鋼の湿式高速溝切削加工試験(水溶性切削油使用)、
をそれぞれ行い、いずれの溝切削加工試験でも切刃部先端面の直径が使用寿命の目安とされる0.2mm減少するまでの切削溝長を測定した。この測定結果を表8、9にそれぞれ示した。
【0025】
【表7】
【0026】
【表8】
【0027】
【表9】
【0028】
(実施例3)
上記の実施例2で製造した直径が8mm(超硬基体a〜c形成用)、13mm(超硬基体d〜f形成用)、および26mm(超硬基体g、h形成用)の3種の丸棒焼結体を用い、この3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さがそれぞれ4mm×13mm(超硬基体a‘〜c’)、8mm×22mm(超硬基体d‘〜f’)、および16mm×45mm(超硬基体g‘、h’)の寸法をもった超硬基体(ドリル)a‘〜h’をそれぞれ製造した。
【0029】
ついで、これらの超硬基体(ドリル)a‘〜h’の表面に、ホーニングを施した状態で、通常の化学蒸着装置を用い、同じく表2、3に示される条件にて、表10に示される組成および目標層厚のTi化合物層(下部層)、Al2O3層および/またはAl2O3−ZrO2混合層(中間層)、およびTiとAlの複合酸化物層(表面層)からなる硬質被覆層を形成することにより、図3(a)に概略正面図で、同(b)に溝形成部の概略横断面図で示される形状を有する本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬合金製ドリル(以下、本発明被覆超硬ドリルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
【0030】
また、比較の目的で、表11に示される通り、上記表面層としてのTiとAlの複合酸化物層を形成しない以外は同一の条件で従来被覆超硬工具としての従来表面被覆超硬合金製ドリル(以下、従来被覆超硬ドリルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
【0031】
つぎに、上記本発明被覆超硬ドリル1〜8および従来被覆超硬ドリル1〜8のうち、本発明被覆超硬ドリル1〜3および従来被覆超硬ドリル1〜3については、
被削材:平面寸法:100mm×250厚さ:50mmのJIS・SUS304板材、
切削速度:25m/min.、
送り:0.15mm/rev、
の条件でのステンレス鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験、本発明被覆超硬ドリル4〜6および従来被覆超硬ドリル4〜6については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SUS304の板材、
切削速度:30m/min.、
送り:0.17mm/rev、
の条件でのステンレス鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験、本発明被覆超硬ドリル7,8および従来被覆超硬ドリル7,8については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S15Cの板材、
切削速度:70m/min.、
送り:0.4mm/rev、
の条件での軟鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験、
をそれぞれ行い、いずれの湿式(水溶性切削油使用)高速穴あけ切削加工試験でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表10、11にそれぞれ示した。
【0032】
【表10】
【0033】
【表11】
【0034】
【発明の効果】
表4〜11に示される結果から、硬質被覆層の表面層としてTiとAlの複合酸化物層が存在する本発明被覆超硬工具は、いずれも高い発熱を伴うステンレス鋼や軟鋼の高速切削に用いても、前記TiとAlの複合酸化物層が同じく硬質被覆層の中間層を構成するAl2O3層およびAl2O3−ZrO2混合層に対して強固に密着し、かつ高温加熱の切粉に対して著しく低い親和性を示し、切粉が前記表面層に溶着することがなく、切刃は常にすぐれた表面潤滑性を維持することから、切刃への切粉溶着が原因のチッピングや欠けが切刃に発生することがなく、すぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、前記TiとAlの複合酸化物層の形成のない従来被覆超硬工具においては、切粉が硬質被覆層に溶着し易く、これが原因で硬質被覆層が局部的に剥がし取られることから、切刃にチッピングや欠けが発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆超硬工具は、各種の鋼や鋳鉄などの通常の条件での切削加工は勿論のこと、特に粘性が高く、切粉が切刃表面に溶着し易いステンレス鋼や軟鋼などの高速切削加工でも切粉に対してすぐれた表面潤滑性を発揮し、汎用性のある切削性能を示すものであるから、切削加工装置のFA化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は被覆超硬チップの概略斜視図、(b)は被覆超硬チップの概略縦断面図である。
【図2】(a)は被覆超硬エンドミル概略正面図、(b)は同切刃部の概略横断面図である。
【図3】(a)は被覆超硬ドリルの概略正面図、(b)は同溝形成部の概略横断面図である。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金基体の表面に、
(a)下部層として、0.5〜15μmの平均層厚を有し、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上の複層からなるTi化合物層、
(b)中間層として、1〜15μmの平均層厚を有する、酸化アルミニウム層および/または酸化アルミニウムの素地に酸化ジルコニウム相が分散分布してなる酸化アルミニウム−酸化ジルコニウム混合層、
(c)表面層として、0.1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Ti1-YAlY)OX 、
で表わした場合、厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、いずれも原子比で
Y:0.02〜0.15、
X:1.2〜1.9、
を満足するTiとAlの複合酸化物層、
以上(a)〜(c)で構成された硬質被覆層を3〜30μmの全体平均層厚で化学蒸着および/または物理蒸着してなる、切粉に対する表面潤滑性にすぐれた表面被覆超硬合金製切削工具。
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