JP4172291B2 - 有機ケイ素化合物の製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘキサフルオロカルビノール基を有するトリアルコキシシランの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェノール基又はカテコール基を有するアルコキシシランとして、各種の化合物が知られている。これらのアルコキシシランから調製される有機ケイ素樹脂は、優れたアルカリ可溶性を発現し、樹脂添加剤、電子材料、各種反応基材として使われている〔特許文献1、特許文献2〕。しかし、これらの樹脂は、フェニル基を有するために、UV光を吸収し、透明性、耐候性、微細加工等の点で問題があった。
最近、フェニル基を有しない各種のアルカリ可溶性樹脂が開発され、カルボキシル基が導入された有機ケイ素樹脂が報告されている〔特許文献3〕。
しかし、これらカルボキシル基を有する有機ケイ素樹脂では、フェノール基に匹敵する優れたアルカリ可溶性を発現させることは困難であり、アルカリ可溶性の向上が望まれていた。そこで、フェノールと同程度のpKa(9.82)をもち、優れたアルカリ可溶性を発現する官能基として、ヘキサフルオロカルビノール基が注目されるようになった。
【0003】
これまでに、ヘキサフルオロカルビノール基を有機基で保護したトリクロロシランが知られている〔特許文献4〕。この化合物を得る反応は、有機基で保護したヘキサフルオロカルビノール基と炭素炭素不飽和基を有する化合物及びトリクロロシランを反応原料とするヒドロシリレーション反応である。この反応において、ヘキサフルオロカルビノール基を有機基で保護した原料を用いるのは、もう一方の反応原料であるクロロシランのクロロシリル基とヘキサフルオロカルビノール基が反応してしまうのを防ぐためである。
トリクロロシランを反応原料とする上記の製造方法では、ヒドロシリレーション反応後、ヘキサフルオロカルビノール基の脱保護工程を実施することによりはじめてヘキサフルオロカルビノール基を有する化合物が得られ、製造工程が複雑になるという問題点があった。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−179795号公報
【特許文献2】
、特開2002−338583号公報
【特許文献3】
特開2001−005185号公報
【特許文献4】
特開2002−55456号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ヘキサフルオロカルビノール基を有する有機ケイ素化合物を、複雑な製造工程を経ることなく、工業的規模で容易に製造することができる方法を提供することを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、トリアルコキシシランを原料に用いた場合、アルコキシシリル基とヘキサフルオロカルビノール基は反応しないため、一段階反応でヘキサフルオロカルビノール基を有するトリアルコキシシランを製造することができることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、下記化合物(1)とトリアルコキシシランとをハイドロシリレーション反応させることにより、下記化合物(2)を得ることを特徴とする有機ケイ素化合物の製造方法である。
【0008】
【化3】
【0009】
【化4】
(式中、Rは炭素数1から3のアルコキシ基である)
【0010】
以下、本発明について詳述する。
本発明により得られる有機ケイ素化合物(以下、HFC有機ケイ素化合物)において、Rは炭素数1から3のアルコキシ基である。Rの好ましい具体例として、メトキシ基、エトキシ基及びプロピルオキシ基があり、プロピルオキシ基は直鎖状でも分岐状でも差し支えない。その中でも、原料が得易く、合成が容易なことから、一般にRについてはエトキシ基が好ましい。
HFC有機ケイ素化合物の好ましい具体例は、以下の構造式で示される化合物(3)である。
【0011】
【化5】
【0012】
HFC有機ケイ素化合物は、上記化合物(1)とトリアルコキシシランとをヒドロシリレーション反応させることにより得られる。
これらの原料化合物の好ましい反応仕込み比は、トリアルコキシシランが上記化合物(1)に対して10〜20モル%過剰となる比である。
上記化合物(3)を製造する場合、化合物(1)をトリエトキシシランと反応させる。この反応は、通常、触媒の存在下で行われる。好ましい触媒としては、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金等の第8属から第10属金属の単体、有機金属錯体、金属塩、金属酸化物等があり、通常、白金系の触媒が使用される。
好ましい白金系触媒としては、塩化白金酸六水和物(H2PtCl6・6H2O)、cis-PtCl2(PhCN)2、白金カーボン、ジビニルテトラメチルジシロキサンが配位した白金錯体(PtDVTMDS)等が例示される。なお、Phはフェニル基を表わす。触媒の好ましい添加量は、化合物(1)の量に対して、0.1〜1,000ppmである。
また、反応温度は、反応系外部からの加熱操作およびトリエトキシシランの供給速度に依存するため、一概に決められないが、通常、反応温度を室温〜110℃の範囲に保持することで、ヒドロシリレーション反応を円滑に進行させることができる。反応終了後、溶媒および揮発成分を減圧下留去し、減圧蒸留により精留することにより化合物(3)を得る。
HFC有機ケイ素化合物は、クロロシラン類を用いて容易に官能基を導入することができ、有機合成中間体としても有用である。好ましいクロロシラン類として、トリメチルクロロシラン等がある。クロロシラン類との反応に用いる好ましい塩基として、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウム等がある。好ましい溶媒として、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、THF等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム、ピリジン、DMF及びDMSO等の極性溶媒がある。
【0013】
【実施例】
以下、本発明を参考例および実施例によって具体的に説明する。
[実施例1]
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた反応器を乾燥窒素雰囲気下にして、化合物(1)50.0g(240mmol)、トリエトキシシラン47.3g(288mmol)を仕込み、系内を攪拌させながらオイルバスで加熱した。内温度が80℃に達したところで、白金触媒であるPtDVTMDSのキシレン溶液(124μl,0.012mmol)を加えた。触媒滴下後、7時間、80℃で攪拌放置した。その後、減圧下、揮発成分を留去し、減圧蒸留にて目的化合物を精製した(68.3g, 76%)。
この液体について270MHzの1H-NMRの測定を行ったところ、第1図のスペクトルを得た。δ値とその帰属は第1表のとおりであった。これにより得られた液体は、ヘキサフルオロカルビノール基を有するトリアルコキシシラン(3)であることが確認できた。
【0014】
【化6】
【0015】
【表1】
【0016】
【化7】
【0017】
参考例
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた反応器を乾燥窒素雰囲気下にして、化合物(3)41.3g(111mmol)、トリメチルクロロシラン13.2g(122mmol )、塩化メチレン100gを仕込み、系内を攪拌させながらトリエチルアミン12.3g(122mmol)をゆっくり滴下した。室温で24時間攪拌させ、生じた塩をろ別し、溶媒を減圧下留去し、無色透明の液体を得た(44.4g, 90%)。
この液体について270MHzの1H-NMRの測定を行ったところ、δ値とその帰属は第2表のとおりであった。これにより得られた液体は、トリメチルシリル基で保護されたヘキサフルオロカルビノール基を有するトリアルコキシシラン(4)であることが確認できた。
【0018】
【化8】
【0019】
【表2】
【0020】
【化9】
【0021】
【発明の効果】
本発明によって、ヘキサフルオロカルビノール基を有するトリアルコキシシランを一段階反応で得ることができる。
本発明の製造方法は、ヘキサフルオロカルビノール基を有するトリアルコキシシランの工業的製法として有用である。
HFC有機ケイ素化合物は、ケイ素原子に結合した加水分解性のトリアルコキシ基が存在するため、他の有機ケイ素化合物(ポリマーを含む)との反応によりシロキサン結合を形成したり、無機化合物中のシラノール基とカップリング反応させることができる。また、3官能性アルコキシシランであるため、架橋反応を利用することにより、シリコーンレジン、シルセスキオキサンを構築することができる。一方、ヘキサフルオロカルビノール基は優れたアルカリ水溶性基として機能する。
HFC有機ケイ素化合物は、有機合成の中間原料、ポリマー樹脂の合成原料、ポリマーの改質剤、無機化合物の表面処理剤、各種材料カップリング剤として有用である。
【0022】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施例1で得られた生成物の1H-NMRスペクトルである。
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