JP4117543B2 - 衝撃吸収部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、衝撃吸収部材に関し、更に詳細には、車両における車体の前面または後面に位置したバンパービームと、車体の前面または後面に組付けられたバンパーフェースとの間に配設され、当該車両が低剛性の物体に衝突した際の衝撃により変形して、該物体に作用する衝撃を緩和させる合成樹脂製の衝撃吸収部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
乗用車等の車両においては、乗員保護に関する安全対策の確立と同時に、近年に至り歩行者保護に関する安全対策の確立も希求されつつある。すなわち、走行中の車両が誤って歩行者に衝突または接触した場合に、該歩行者の脚部、腰部、胸部および頭部へ加わる衝撃を緩和して負傷度合を軽減するための技術に関し、各自動車メーカーおよび各自動車部品メーカー等において様々な研究・開発が進められている。
【0003】
例えば図11および図12に例示するように、乗用車等の車両10における車体の前側には、該車体の前面に組付けられたバンパーフェース12の内側(裏側)に、該バンパーフェース12で被覆された状態でバンパービーム14が位置している。また図示しないが、車両10における車体の後側にも、バンパーフェースの内側(裏側)に被覆された状態でバンパービームが位置している。すなわち、当該車両10が他の車両や物体等に衝突した際には、変形した前記バンパーフェース12を介して前記バンパービーム14がその衝撃を受け止め、この際に該バンパービーム14が圧潰的に変形して衝突による衝撃吸収を図るようになっている。このバンパービーム14は、従前では金属製(鋼等)のものが主流とされていたが、近年に至っては軽量化や防錆面等で有利とされる合成樹脂製のものに置換されつつあり、インジェクション成形によりリブ構造体として成形されたものや、ブロー成形により中空構造体として成形されたもの等がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたバンパービームや図11に例示したバンパービーム14は、あくまで他の車両や種々の硬質物体(例えばガードレール、ブロック塀等)等の所謂「高剛性重量物体」との衝突を想定して設計されたものであり、このような高剛性重量物体との衝突時に発生する大きい衝撃を受けると適切に圧潰され、衝撃吸収を好適に図り得るようになっている。換言すると、従来のバンパービーム14は、歩行者等の所謂「低剛性軽量物体」との衝突時に発生する衝撃に適応した設計がなされておらず、剛性が高すぎて歩行者保護のためには十分に機能し得なかった。また仮に、歩行者保護にも対応させるべく剛性を適宜低く設計した場合には、バンパービーム14としての本来の機能が低下することとなり、高剛性重量物体との衝突および低剛性軽量物体との衝突の両方に対応させ得るバンパービームの実施は技術的に大きな課題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−237512号公報(第3頁、第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、例えば図13および図14に示すように、歩行者等の低剛性軽量物体との衝突時に好適に圧潰変形する衝撃吸収部材20を別途成形し、この衝撃吸収部材20を前記バンパービーム14とバンパーフェース12との間に配設することで(図では、前記バンパービーム14の外端面に組付けた場合を例示している)、歩行者保護を図るようにした技術が提案されている(図15、図16)。すなわち、高剛性重量物体(他の車両や硬質物体等)との衝突には前記バンパービーム14で対応するようにし、また低剛性軽量物体(歩行者等)との衝突には前記衝撃吸収部材20で対応するようにしたものである。
【0007】
ここで、図13および図14等に例示した従来の衝撃吸収部材20は、例えばポリプロピレン(PP)等の樹脂材料をブロー成形技術を利用してブロー成形した中空構造体であって、全長Lが1200mm、全高Hが125mm、全幅Wが60mm程度の外形サイズとされ、各部の平均的な肉厚tが2mm程度とされている。そして衝撃吸収部材20は、前記バンパービーム14に当接する取付壁部22から適宜間隔に立設された支持壁部24,24と、該取付壁部22の上端および下端から立設された上部壁部26および下部壁部28と、前記支持壁部24,24の先端両側に形成される当接壁部30とを有している。前記各支持壁部24,24は、全体が略平坦な平板状とされると共に水平面に対する傾斜角度Rが約15度に設定されており、前方側が相互近接した所謂「ハ字状」に延在して前記当接壁部30の裏側を支持するようになっている。
【0008】
ところで本願出願人は、欧州実験車両委員会(EEVC;European Enhanced Vehicle-Safety Committee)における歩行者保護試験法検討ワーキンググループ(Working group 17)が提案している「バンパー評価試験」に基いて、前述した形状を有する衝撃吸収部材20に関するバンパー評価試験(コンピュータ解析)を行なった。図17〜図19は、このバンパー評価試験により得られた前記衝撃吸収部材20の変形過程を概略的に示した説明断面図である。すなわち前記衝撃吸収部材20は、歩行者の脚部を模擬した脚部インパクタ(重量13.4kg)50の衝突による衝撃力が前記当接壁部30に作用し始めた時点では、図17に示すように、該当接壁部30、上部壁部26および下部壁部28、支持壁部24,24の夫々に対して、同図に矢印表示した方向へ応力が作用するようになる。
【0009】
従って、脚部インパクタ50の衝突による衝撃吸収部材20の変形初期段階では、図18に示すように、上部壁部26は上方へ湾曲変形すると共に、下部壁部28は下方へ湾曲変形するようになる。一方、内側上部に位置する支持壁部24にあっては、その前側部位が上方へ変位すると共に後側部位が下方へ変位するので、所謂「S字形」に湾曲変形するようになる。また、内側下部に位置する支持壁部24にあっては、その前側部位が下方へ変位すると共に後側部位が上方へ変位するので、これも同様に所謂「S字形」に湾曲変形するようになる。このため、衝突が進んだ変形最終段階における各々の支持壁部24,24は、図19に示すように、取付壁部22および当接壁部30との間において、少なくとも2箇所の折曲ポイントP,Pで折れ曲がりつつ押し潰されるようになる。
【0010】
そして、歩行者との衝突により圧潰変形した衝撃吸収部材20は、図20に拡大して示すようにラインPL,PLの部位において、衝突方向に沿って当接壁部30、三つ折り状に折曲変形した支持壁部24および取付壁部22により、板厚2mmの板が4枚重なり合った状態となった。すなわち板厚=2mmであるから、重なり厚み寸法Dは2×4=8mmと比較的大きくなり、圧潰変形可能量(有効ストローク)が小さくなる欠点があった。殊に前記支持壁部24は、前記折曲ラインP,Pで綺麗に折曲変形する訳ではなく、不規則に湾曲したり皺が形成されつつ変形するため、重なり厚み寸法Dは実際には10〜20mm程度とかなり大きくなっていた。
【0011】
従って、前記全幅Wを小さく設定した場合には容易に底付き現象が起こってしまうため、衝撃吸収部材に要求される衝撃吸収性能(前記脚部インパクタ50を40km/hの速度で衝突させた際に、該脚部インパクタ50に設けたセンサーで測定される衝突減速度の最大値が「1500m/sec2以下」)が得られなく不都合が発生してしまう。このため従来の衝撃吸収部材20では、所要の衝撃吸収性能を確保するために全幅Wの寸法を大きく設定することで対応していたが、これでは該衝撃吸収部材20の外形サイズが大型化してしまい、前記バンパーフェース12のデザイン形状が制約されると共に、車両の前部または後部のデザイン形状に影響を及ぼすものとなっていた。
【0012】
【発明の目的】
本発明は、前述した課題を好適に解決するべく提案されたもので、低剛性の物体との衝突による圧潰変形時に、衝突方向の重なり厚み寸法が可能な限り小さくなるようにすることで、成形時における全幅寸法を小さく設定して小型化および省スペース化を図り得るようにした衝撃吸収部材を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決して、所期の目的を達成するため本発明は、車両における車体の前面または後面に位置したバンパービームと、車体の前面または後面に組付けられたバンパーフェースとの間に配設され、当該車両が物体に衝突した際の衝撃により変形して、該物体に作用する衝撃を緩和させる合成樹脂製の衝撃吸収部材において、
前記衝撃吸収部材は、前記バンパービームに当接する取付壁部から先端側が相互に近接したハ字状に対向するよう立設された支持壁部と、前記支持壁部の先端両側に形成される当接壁部とを有する中空体として構成され、
前記支持壁部を挟んだ前記一方の当接壁部の端縁部を、該支持壁部の先端部に連接すると共に、
前記支持壁部を挟んだ前記他方の当接壁部の端縁部を、該支持壁部の先端から取付壁部側に離間した側面部に連接し、
前記他方の当接壁部の前記支持壁部に隣接した部位に、Lクランク状に屈曲する2つの屈曲部を形成し、支持壁部の長手方向に沿って延在する凹部を前記バンパーフェース側に設けたことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る衝撃吸収部材につき、好適な実施例を挙げ、添付図面を参照しながら以下説明する。
【0015】
図1は、好適実施例に係る衝撃吸収部材を一部省略して示した概略斜視図であり、図2は図1のII−II線断面図である。本実施例の衝撃吸収部材40は、図13および図14に示した従来の衝撃吸収部材20と基本的構成が同一であって、車両10における車体の前面または後面に位置した前記バンパービーム14と、車体の前面または後面に配設されたバンパーフェース12との間に配設され、当該車両10が例えば歩行者等に代表される低剛性の物体に衝突した際の衝撃により圧潰的に変形し、これにより該歩行者に作用する衝撃を緩和させて歩行者保護を図り得るようになっている。なお実施例では、前記バンパービーム14の前面側に衝撃吸収部材40を組付けた場合を例示しており、該衝撃吸収部材40とバンパーフェース12との間には適宜の空間が画成されている。
【0016】
実施例の衝撃吸収部材40は、例えばポリプロピレン(PP)等の樹脂材料をブロー成形技術を利用してブロー成形した中空構造体であって、全長Lが1200mm、全高Hが125mm、全幅Wが40mm程度の外形サイズとされ、肉厚tは何れの部位でも概ね2mm程度とされている。なお実施例では、車体の前面に配設したバンパービーム14に組付ける場合につき例示し、車体の後面に配設したバンパービームに組付ける場合については省略する。
【0017】
実施例の衝撃吸収部材40は、前記バンパービーム14に当接する取付壁部22から適宜間隔に立設された支持壁部24,24と、該取付壁部22の上端および下端から立設された上部壁部26および下部壁部28と、前記支持壁部24,24の先端両側に形成される当接壁部30(30A,30B)とを有している。前記各支持壁部24,24は、全体が略平坦な平板状とされると共に水平面に対する傾斜角度Rが約15度に設定されており、前方側が相互近接した所謂「ハ字状」に形成されている。これにより実施例の衝撃吸収部材40は、後方へ開口した裏側凹部を中央に有すると共にその上側および下側に相互分離した2つの内部空間を有する中空構造体として構成され、取付壁部22,22を前記バンパービーム14に密着させた状態で該バンパービーム14に固定される。
【0018】
そして実施例の衝撃吸収部材40は、前記各々の支持壁部24,24と、該支持壁部24,24の先端両側(上側および下側)に位置する前記当接壁部30(30A,30B)の接合形態を、次のように設定してある。先ず、図示上側の支持壁部24においては、該支持壁部24の先端下側に位置する一方の当接壁部(第1当接壁部とする)30Aの端縁部を、該支持壁部24の先端部32に連接すると共に、該支持壁部24の先端上側に位置する他方の当接壁部(第2当接壁部とする)30Bの端縁部を、該支持壁部24の先端から適宜離間させた側面部34に連接してある。すなわち、支持壁部24の上側に位置する第2当接壁部30Bにおいては、該支持壁部24に隣接した下縁部位に、略Lクランク状に屈曲する2つの屈曲部36,36が形成されており、これにより当該第2当接壁部30Bの端縁部が支持壁部24の前記側面部34に連接されるようになると共に、衝撃吸収部材40の前面側には第1凹部42が長手方向に延在形成されている。
【0019】
一方、図示下側の支持壁部24においては、該支持壁部24の先端上側に位置する一方の当接壁部(第1当接壁部)30Aの端縁部を、該支持壁部24の先端部32に連接すると共に、該支持壁部24の先端下側に位置する他方の当接壁部(第2当接壁部とする)30Bの端縁部を、該支持壁部24の先端部から適宜離間させた側面部34に連接してある。すなわち、支持壁部24の下側に位置する第2当接壁部30Bにおいては、該支持壁部24に隣接した上縁部位に、略Lクランク状に屈曲する2つの屈曲部36,36が形成されており、これにより当該第2当接壁部30Bの端縁部が支持壁部24の前記側面部34に連接されるようになると共に、衝撃吸収部材40の前面側には第2凹部44が長手方向に延在形成されている。従って衝撃吸収部材40の前面側には、上下に所要間隔をおいて前記第1凹部42および第2凹部44が横方向へ平行に延在形成されており、この結果として、各々の凹部42,44の間に前記第1当接壁部30Aが形成され、第1凹部42の上側および第2凹部44の下側に前記第2当接壁部30B,30Bが夫々形成されている。
【0020】
ここで、全高H=125mm、全幅W=40mm、板厚t=2mmで材質がポリプロピレンであることを前提とした場合、前記支持壁部24,24および第1凹部42、第2凹部44に関連する諸寸法は次のような根拠に基いて設定されている。先ず、前記支持壁部24,24の後部間隔(後側凹部の開口幅)Aは、少なくとも前記第2当接壁部30Bとの接合部から後側に延在する該支持壁部24の後側部分24aの延在幅Sより大きく設定する必要があり、望ましくは全幅Wと略同等程度に設定される。これは、前記第1凹部42および第2凹部44の深さBの設定にも関連することであるが、衝突による衝撃を受けて前記後側部分24aが相互近接するように折曲変形した際に、両支持壁部24,24同士が接触して干渉し合うことが回避されるようにすることで、衝突減速度の急激な上昇を防止する必要があるためである。
【0021】
また、前記第1および第2の各凹部42,44における深さBは、全幅W=40mmとした場合、5〜15mm程度に設定することが望ましい。すなわち、深さBを5mm以下に設定した場合には、▲1▼支持壁部24,24における前記後側部分24aが、図18および図19に示した如く従来の衝撃吸収部材20の支持壁部24と同じようにS字形に折曲変形して、圧潰変形時における重なり厚み寸法Dが何等小さくならない、▲2▼当該凹部42,44の周辺の剛性が高くなるために衝突初期段階における衝突減速度の数値が高まってしまう、等の不都合が発生する虞があるためである。一方、深さBを15mm以上に設定した場合には、第2当接壁部30Bとの接合部から前側に延在する前側部分24bおよび前記後側部分24aの両方において支持壁部24の折曲変形が発生するようになるため、圧潰変形時における重なり厚み寸法Dがむしろ大きくなる不都合が発生するためである。
【0022】
更に、前記第1凹部42および第2凹部44における開口幅Cは、5〜10mm程度に設定することが望ましい。すなわち、開口幅Cを5mm以下に設定した場合には、これに伴って該凹部42,44を形成するためにブロー成形型(図示せず)に設けた凸部の突出幅が小さくなり、強度不足による該凸部の破損が懸念されるためである。一方、開口幅Cを10mm以上に設定した場合には、凹部42,44の底部分において第1当接壁部30Aおよび第2当接壁部30Bが変形し易くなり、これら第2当接壁部30Bの剛性が低下する虞があるためである。
【0023】
次に、前記EEVC/WG17が提案しているバンパー評価試験に準じて、前述のように構成された実施例の衝撃吸収部材40に関するバンパー評価試験(コンピュータ解析)を行なった際の圧潰変形態様につき説明する。図3は、バンパービーム14に装着した実施例の衝撃吸収部材40に、評価試験機の脚部インパクタ50を衝突させ、当該衝撃吸収部材40のバンパー評価試験を実際に行なう状態を示した説明斜視図であり、図4は図3のIII−III線断面図である。そして図5〜図7は、バンパー評価試験(コンピュータ解析)により得られた衝撃吸収部材40の変形過程を経時的に概略図示した説明断面図である。
【0024】
歩行者の脚部を模擬した脚部インパクタ50の衝突による衝撃力が前記第1当接壁部30Aおよび第2当接壁部30Bに作用し始めると、前記第1当接壁部30Aおよび第2当接壁部30B、上部壁部26および下部壁部28、各々の支持壁部24,24には、図5に矢印表示した方向へ応力が作用するようになる。
【0025】
従って、脚部インパクタ50の衝突による衝撃吸収部材40の変形初期段階では、図6に示すように、上部壁部26は上方へ湾曲変形すると共に、下部壁部28は下方へ湾曲変形するようになる。一方、内側上部に位置する支持壁部24にあっては、側面部34に連接された上側の前記第2当接壁部30Bが所謂「つっかい棒」として機能するため、前記後側部分24aを中心として下方への変形が許容されることとなり、全体的に下方へ変形して所謂「く字形」に湾曲変形するようになる。また、内側下部に位置する支持壁部24にあっては、側面部34に連接した下側の前記第2当接壁部30Bが同様に所謂「つっかい棒」として機能するため、前記後側部分24aを中心として上方への変形が許容されることとなり、全体的に上方へ変形して所謂「く字形」に湾曲変形するようになる。
【0026】
これにより衝突が進んだ変形最終段階になると、図7に示すように、内側上部に位置する支持壁部24は、下方へ変位して1箇所の折曲ポイントPで二つ折り状に折れ曲がりつつ押し潰される。一方、内側下部に位置する支持壁部24も、上方へ変位して1箇所の折曲ポイントPで二つ折り状に折り曲がりつつ押し潰される。すなわち、何れの支持壁部24,24も、前記取付壁部22,22が存在しない前記裏側凹部の側へ変位するようになる。しかも前述したように、後側部分24aの延在幅S<後部間隔A≦全幅Wの関係となっているため、各々の支持壁部24,24が近接するように折れ曲がったとしても、相互に接触して干渉することはない。従って、衝突終了段階において、両支持壁部24,24同士が接触して衝突減速度が急激に上昇することはない。
【0027】
そして、歩行者との衝突により圧潰変形した衝撃吸収部材40は、図8に拡大して示すようにラインPL,PLの部位において、衝突方向に沿って当接壁部30、二つ折り状に折曲変形した支持壁部24により、板厚2mmの板が3枚重なり合った状態となり、重なり厚み寸法Dは6mm程度となる。殊に各々の支持壁部24,24は、1箇所の折曲ポイントPに応力が集中するようになるため、比較的綺麗に折れ曲がって密着状態に折り畳まれるようになるから、重なり厚み寸法Dは6mmより極端に大きくはならない。従って、圧潰変形可能量を大きく確保することができ、前記全幅Wを小さく設定したとしても衝突時に底付き現象が起こり難くなる。
【0028】
そして、実施例の衝撃吸収部材40に対して本願出願人が実施したバンパー評価試験では、前述したように、全幅W=40mm(図12に示した従来の衝撃吸収部材20では全幅W=60mm)に設定したにも拘らず、脚部インパクタ50に設けたセンサーによる衝突減速度の測定値が目標値とされる「1500m/sec2以下」)となった。すなわち実施例の衝撃吸収部材40は、図14に示した従来の衝撃吸収部材20よりも全幅Wを20mm小さくしたにも拘らず、要求される衝撃吸収性能を得ることができることが確認された。
【0029】
このように実施例の衝撃吸収部材40は、歩行者等の低剛性の物体が前記各当接壁部30A,30Bに衝突した際に、前記第2当接壁部30B,30Bにより対応の支持壁部24,24の折曲方向を制御することにより、圧潰変形時における衝突方向の重なり厚み寸法Dを最小になし得る。このため、衝突前の全幅Wを従来より小さく設定したとしても圧潰変形時の有効ストロークを大きく確保することができ、この全幅Wを小さく設定したとしても所要の衝撃吸収性能を確保することが可能となるから、外形サイズ(殊に全幅W)の小型化を図り得る。これにより、実施例の衝撃吸収部材40が配設される部位(前記バンパーフェース12とバンパービーム14との間)の省スペース化が図られ、該バンパーフェース12のデザインの自由度が高められ、更には車両の前部または後部のデザイン形状の自由度が高められる。
【0030】
なお本願の衝撃吸収部材は、前記実施例に例示した形状に限定されるものではなく、例えば図9および図10に示した形状としても実施例のものと同様の効果が期待できる。図9に例示した変更例の衝撃吸収部材40では、図示上側の支持壁部24においては、該支持壁部24の先端下側に位置する第1当接壁部(一方の当接壁部)30Aの端縁部を、該支持壁部24の先端から適宜離間させた側面部34に連接すると共に、該支持壁部24の先端上側に位置する第2当接壁部(他方の当接壁部)30Bの端縁部を、該支持壁部24の先端部32に連接してある。すなわち、支持壁部24の下側に位置する第1当接壁部30Aにおいては、該支持壁部24に隣接した上縁部位に、略Lクランク状に屈曲する2つの屈曲部36,36が形成されており、これにより当該第1当接壁部30Aの端縁部が支持壁部24の側面部34に連接されるようになると共に、衝撃吸収部材40の前面側には第1凹部42が長手方向に延在形成されている。
【0031】
また図示下側の支持壁部24においては、該支持壁部24の先端上側に位置する第1当接壁部(一方の当接壁部)30Aの端縁部を、該支持壁部24の先端から適宜離間させた側面部34に連接すると共に、該支持壁部24の先端下側に位置する第2当接壁部(他方の当接壁部)30Bの端縁部を、該支持壁部24の先端部34に連接してある。すなわち、支持壁部24の上側に位置する第1当接壁部30Aにおいては、該支持壁部24に隣接した下縁部位に、略Lクランク状に屈曲する2つの屈曲部36,36が形成されており、これにより当該第1当接壁部30Aの端縁部が支持壁部24の側面部34に連接されるようになると共に、衝撃吸収部材40の前面側には第2凹部44が長手方向に延在形成されている。
【0032】
一方、図10に例示した別変更例の衝撃吸収部材40では、図示上側の支持壁部24においては、図2に示した実施例の衝撃吸収部材40と同様に、該支持壁部24の先端下側に位置する第1当接壁部(一方の当接壁部)30Aの端縁部を、該支持壁部24の先端部34に連接すると共に、該支持壁部24の先端上側に位置する第2当接壁部(他方の当接壁部)30Bの端縁部を、該支持壁部24の先端から適宜離間させた側面部34に連接してある。すなわち、支持壁部24の上側に位置する第2当接壁部30Bにおいては、該支持壁部24に隣接した下縁部位に、略Lクランク状に屈曲する2つの屈曲部36,36が形成されており、これにより当該第2当接壁部30Bの端縁部が支持壁部24の側面部34に連接されるようになると共に、衝撃吸収部材40の前面側には第1凹部42が長手方向に延在形成されている。
【0033】
また図示下側の支持壁部24においては、図9に示した変更例の衝撃吸収部材40と同様に、該支持壁部24の先端上側に位置する第1当接壁部(一方の当接壁部)30Aの端縁部を該支持壁部24の先端から適宜離間させた側面部34に連接すると共に、該支持壁部24の先端下側に位置する第2当接壁部(他方の当接壁部)30Bの端縁部を該支持壁部24の先端部32に連接してある。すなわち、支持壁部24の上側に位置する第1当接壁部30Aにおいては、該支持壁部24に隣接した下縁部位に、略Lクランク状に屈曲する2つの屈曲部36,36が形成されており、これにより当該第1当接壁部30Aの端縁部が支持壁部24の側面部34に連接されるようになると共に、衝撃吸収部材40の前面側には第2凹部44が長手方向に延在形成されている。
【0034】
なお前記実施例では、前記バンパービーム14と前記バンパーフェース12との間に衝撃吸収部材40を配設するに際し、該バンパービーム14の前面側に当該衝撃吸収部材40を組付ける配設例を例示した。しかしながら前記衝撃吸収部材40は、前記バンパーフェース12の裏面側に前記当接壁部30(30A,30B)を密着させた状態で組付けることで、バンパービーム14とバンパーフェース12との間に配設するようにしてもよい。更には、適宜の取付部材で固定することで、前記バンパービーム14およびバンパーフェース12の何れにも接触しない状態で、両者14,12の間に配設するようにしてもよい。
【0035】
なお、前記実施例および各変更例に例示の衝撃吸収部材40は、従来の衝撃吸収部材20と同様にブロー成形技術により一体的に成形されるので、成形コストが格別嵩むこともない。
【0036】
また、前記実施例および各変更例に例示の衝撃吸収部材40は、前記ポリプロピレンから成形されるものに限定されるものではなく、これ以外にポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ABS等の各種樹脂素材から成形されたものも実施可能である。
【0037】
そして前記実施例では、車両10の車体前面に配設したバンパービーム14に取付ける衝撃吸収部材40を例示したが、本願が対象とする衝撃吸収部材は、車体の後面に配設したバンパービームに取付けて使用に供されるものも含まれる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明に係る衝撃吸収部材によれば、物体が当接壁部に衝突した際に、凹部を設けた他方の当接壁部によって対応の支持壁部の折曲方向を制御でき、衝撃吸収部材の圧潰変形時における衝突方向の重なり厚みを小さくし得る。このため、衝突前の全幅を従来より小さく設定したとしても圧潰変形時の有効ストロークを大きく確保することができ、この全幅を小さく設定したとしても所要の衝撃吸収性能を確保することが可能となるから、外形サイズの小型化を図り得る利点がある。これにより、衝撃吸収部材が配設されるバンパービームとバンパーフェースとの間の省スペース化が図られ、車両の前部または後部のデザイン形状の自由度が高められる等の有益な効果を奏する。
また、衝突による衝撃を受けて両支持壁部の後側部分が相互近接するように折曲変形した際に、これら支持壁部同士が接触して干渉することが回避されるので、衝突終了段階において衝突減速度の急激な上昇を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】好適実施例に係る衝撃吸収部材を一部省略して示した概略斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1に示した衝撃吸収部材をバンパービームに装着したもとで、脚部インパクタを該衝撃吸収部材に衝突させてバンパー評価試験を実施する状態を示した説明斜視図である。
【図4】図3のIII−III線断面図である。
【図5】脚部インパクタが実施例の衝撃吸収部材に衝突し始めた際に、該衝撃吸収部材の各部分に作用する応力を矢印表示した説明断面図である。
【図6】脚部インパクタの衝突による実施例の衝撃吸収部材の変形初期段階を示した説明断面図である。
【図7】脚部インパクタの衝突による実施例の衝撃吸収部材の変形最終段階を示した説明断面図である。
【図8】図7の要部拡大断面図である。
【図9】変更例に係る衝撃吸収部材の側断面図である。
【図10】別変更例に係る衝撃吸収部材の側断面図である。
【図11】車体前面にバンパービームを設けた従来の車両の概略斜視図である。
【図12】図11のX−X線断面図である。
【図13】従来の衝撃吸収部材を一部省略して示した概略斜視図である。
【図14】図13のY−Y線断面図である。
【図15】図13に示した衝撃吸収部材をバンパービームに装着したもとで、脚部インパクタを該衝撃吸収部材に衝突させてバンパー評価試験を実施する状態を示した説明斜視図である。
【図16】図15のZ−Z線断面図である。
【図17】脚部インパクタが従来の衝撃吸収部材に衝突し始めた際に、該衝撃吸収部材の各部分に作用する応力を矢印表示した説明断面図である。
【図18】脚部インパクタの衝突による従来の衝撃吸収部材の変形初期段階を示した説明断面図である。
【図19】脚部インパクタの衝突による従来の衝撃吸収部材の変形最終段階を示した説明断面図である。
【図20】図19の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
12 バンパーフェース
14 バンパービーム
22 取付壁部
24 支持壁部
24A 後側部分
30A 一方の当接壁部
30B 他方の当接壁部
32 先端部
34 側面部
36 屈曲部
42 第1凹部 ( 凹部 )
44 第2凹部 ( 凹部 )
A 間隔
S 延在幅
Claims (2)
- 車両における車体の前面または後面に位置したバンパービーム(14)と、車体の前面または後面に組付けられたバンパーフェース(12)との間に配設され、当該車両が物体に衝突した際の衝撃により変形して、該物体に作用する衝撃を緩和させる合成樹脂製の衝撃吸収部材において、
前記衝撃吸収部材は、前記バンパービーム(14)に当接する取付壁部(22)から先端側が相互に近接したハ字状に対向するよう立設された支持壁部(24,24)と、前記支持壁部(24)の先端両側に形成される当接壁部(30/30A,30B)とを有する中空体として構成され、
前記支持壁部 (24,24) を挟んだ前記一方の当接壁部(30A/30B)の端縁部を、該支持壁部(24)の先端部(32)に連接すると共に、
前記支持壁部 (24,24) を挟んだ前記他方の当接壁部(30B/30A)の端縁部を、該支持壁部(24)の先端から取付壁部 (22) 側に離間した側面部(34)に連接し、
前記他方の当接壁部 (30B/30A) の前記支持壁部 (24,24) に隣接した部位に、Lクランク状に屈曲する2つの屈曲部 (36,36) を形成し、支持壁部 (24,24) の長手方向に沿って延在する凹部 (42,44) を前記バンパーフェース (12) 側に設けた
ことを特徴とする衝撃吸収部材。 - 対向立設された前記一対の支持壁部 (24,24) における前記バンパービーム (14) 側の後端の間隔 (A) は、該支持壁部 (24) における前記他方の当接壁部 (30B/30A) と前記側面部 (34) との接合位置からバンパービーム (14) 側に延在する後側部分 (24a) の延在幅 (S) より大きくなっている請求項1記載の衝撃吸収部材。
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