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JP4010023B2 - 軟窒化非調質クランク軸およびその製造方法 - Google Patents

軟窒化非調質クランク軸およびその製造方法 Download PDF

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JP4010023B2 JP22149297A JP22149297A JP4010023B2 JP 4010023 B2 JP4010023 B2 JP 4010023B2 JP 22149297 A JP22149297 A JP 22149297A JP 22149297 A JP22149297 A JP 22149297A JP 4010023 B2 JP4010023 B2 JP 4010023B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鍛造後の「焼入れ焼もどし」や「焼ならし」などの調質処理を行わずに軟窒化処理を施しても、高い疲労強度および優れた曲げ矯正性をもつ鋼を素材とする軟窒化非調質クランク軸、およびそのクランク軸を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高い疲労強度が要求される自動車用等のクランク軸では、鍛造および機械加工の後に高周波焼入れや軟窒化処理などの表面処理を行うことが多い。軟窒化処理は、疲労強度向上の点では高周波焼入れに若干劣るものの、表面に硬質の化合物層が生成し、耐焼付き性や耐かじり性を向上させるという点では著しく優れるため、軟窒化処理を施したクランク軸(以下「軟窒化クランク軸」と記す)も広く使用されている。
【0003】
図1は、従来の調質鋼および後述する本発明のクランク軸の素材となる鋼(以下、これを便宜的に「本発明鋼」という)を使用する軟窒化クランク軸の製造法を比較した工程の略図である。ここで(a)は従来鋼を、また(b)は本発明鋼を素材とした場合の製品までの工程を示す。
【0004】
近年、図1(b)に示すように、コスト削減や生産リードタイムの縮小のために調質処理を省略して鍛造のままで製品化する、いわゆる「非調質化」が多くの自動車部品に対して検討されており、軟窒化クランク軸でも同様である。しかしながら、調質処理を省略することによって劣化する性能があり、このために非調質化ができない部品がある。
【0005】
まず第一に、鍛造後に調質処理を行わずに軟窒化処理を施した部品(以下「非調質軟窒化鋼部品」と呼ぶ)の疲労限度は、同一組成の鋼を鍛造後に調質処理してから軟窒化処理を施した部品(以下「調質軟窒化鋼部品」と呼ぶ)のそれよりも低い。
【0006】
第二に、非調質軟窒化鋼部品では軟窒化処理後の曲げ矯正時に大きな亀裂を生じる。軟窒化処理によって生じた変形は、逆方向の曲げ変形を加えることによって矯正するが、その曲げにより非調質軟窒化鋼部品に亀裂が発生する限界のひずみ量(以下「曲げ矯正可能ひずみ量」と呼ぶ)は、調質軟窒化鋼のそれよりも小さい。一般に、曲げ矯正可能ひずみ量が小さいほど、その部分が自動車に組み込まれて使用されたとき、部品の疲労限度が低下する。
【0007】
上記のように、非調質軟窒化鋼部品は、曲げ矯正可能ひずみ量が調質軟窒化鋼部品に比べ小さいので、軟窒化処理によるひずみが大きい場合に曲げ矯正を行うクランクシャフトには使用できない。
【0008】
非調質鋼は、1100℃以上に加熱した後、1000℃以上で鍛造を終了し放冷したままなので、その組織は巨大な旧オーステナイト粒界に沿った薄いネット状フェライトとその残りの部分のパーライトから構成される。それに比べて調質鋼の組織は、微細なオーステナイトから変態した、 (a)微細なフェライトとパーライトの混合組織(焼準の場合)、または (b)きわめて微細なラスと炭化物からなるマルテンサイトまたはベイナイト(焼入れ焼戻しの場合)、のいずれかである。また非調質鋼のフェライト体積率は、焼準した鋼のそれに比較して小さい。これは、非調質鋼のオーステナイト粒径が大きい分だけ焼入れ性が大きく、それだけフェライト変態が抑制されることを反映するものである。
【0009】
これまでにも非調質軟窒化鋼部品の疲労限度および曲げ矯正性を同時に改善する試みはなされたことはあるが、十分に目的を達成した例はない。例えば、析出硬化元素を高濃度に添加することによって、鍛造のままで、調質処理も軟窒化処理も施さずに高い疲労限度を得るという発明がなされている。特開平7−102340号公報および特開平4−193931号公報などにそのような発明が開示されている。
【0010】
また、特開平8−144018号公報には窒化後の硬さのみを考慮した発明が開示されている。これらの発明の鋼は、いずれも強力な析出硬化元素であるバナジウム(V)を高濃度に含有する鋼であり、高価である。また、耐焼付き性などが問題になる場合は、これらの高V鋼に軟窒化処理を施さなければならないが、高V鋼の軟窒化処理後の曲げ矯正性はきわめて劣る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、調質処理を行わないで軟窒化処理を施しても、繰り返し曲げにより、あるいは曲げ矯正時に応力・ひずみが集中するフィレットのR部の疲労限度が高く、かつ、曲げ矯正時に発生する亀裂が実際上問題とならない程度にまで小さいか、あるいは亀裂が発生する限界のひずみ量が高い軟窒化非調質クランク軸とその製造方法を提供することにある。
【0012】
具体的には、焼準処理を行った代表的なJISのS48C鋼製の軟窒化調質クランク軸以上の性能、即ち、高い疲労限度および曲げ矯正性(曲げ矯正可能ひずみ量)を同時に満足する性能、を持つクランク軸およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、次の(1) および(2) のクランク軸、ならびに(3) のその製造方法にある。
【0014】
(1) 重量%で、C:0.25〜0.35%、Si:0.05〜1.50%、Mn:0.80〜1.20%、Ti:0.005 〜0.03%、Al:0.0005〜0.01%、N:0.010 〜0.030 %、S: 0.10%以下、Ca:0.0030以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物から成り、不純物としてのPが0.03%以下、Crが0.15%以下、Vが0.02%以下である鋼から製造され軟窒化処理されている非調質クランク軸。
【0015】
(2) 上記(1) の成分に加えて、さらに0.05〜0.20%のPbを含有する鋼から製造され、軟窒化処理されている非調質クランク軸。
【0016】
(3) 上記(1) または(2) に記載の化学組成の鋼をクランク軸に鍛造した後、自然放冷し、その後は熱処理をすることなく機械加工および軟窒化処理を施すことを特徴とする軟窒化非調質クランク軸の製造方法。
【0017】
なお、上記(3) の方法における軟窒化処理は、次の条件で行うのが望ましい。
【0018】
窒化ガス雰囲気・・・・RXガス:アンモニア= 0.8〜1.2 の雰囲気
窒化処理温度 ・・・・570 〜600 ℃
窒化処理時間 ・・・・60〜120 分
窒化処理後の冷却・・・油冷
【0019】
【発明の実施の形態】
一般に、窒化処理によって形成される窒化層は、最表面の化合物層とその下の拡散層とからなる。非調質軟窒化鋼部品で疲労破壊が発生する起点は、拡散層内あるいは拡散層と母材の境界部であり、また曲げ矯正で問題となる亀裂は拡散層での亀裂である。即ち、疲労破壊および曲げ矯正時の割れを支配するのは拡散層の性質である。そこで、以下の説明で「表面」というときは、化合物層を除いた拡散層の表面側を意味するものとする。
【0020】
従来の非調質軟窒化鋼部品の疲労限度が低い原因は、次のように考えられる。
【0021】
非調質軟窒化鋼部品では、拡散層と母材部の境界付近には引張応力が残留する。
【0022】
疲労限度の改善のためには、この引張残留応力を減少させるか、さらに望ましくは圧縮残留応力とすることが必要である。
【0023】
非調質軟窒化鋼部品では、素材が析出硬化元素を含まない鋼であっても、硬さは表面で著しく高くなり、内部に向かって急勾配で低下する。このために、表面には高い圧縮残留応力が発生するものの、境界付近ではそれと均衡する引張残留応力が生じるものと推測される。
【0024】
非調質軟窒化鋼部品において、表面のみ硬さが著しく高く、かつ硬化層深さが小さいということは、非調質軟窒化鋼部品では外部から入った窒素が内部に入りにくく表面にとどまっていることを意味する。亀裂起点となる境界部の高い引張残留応力を低減するには、内部にまで窒素原子を拡散させることによって、硬さ勾配をなだらかにして、硬さを奥まで分布させることが必要である。
【0025】
窒素の拡散速度はフェライト中では大きく、パーライト中では層状セメンタイトに拡散を阻害されるために著しく小さい。非調質鋼ではフェライトが旧オーステナイト粒界に薄く集中しているために、窒素の内部への拡散はそのフェライトを通ってしかできない。これに対して、焼準処理を行った組織では微細なフェライトが粒界に限らず組織全体に分布しているので、組織全体にわたって拡散経路が存在する。このために、調質鋼では窒化処理を施すと表面から内部にまで緩やかな硬度分布ができるものと推定される。更に、非調質鋼の組織が粗いこと自体も、疲労限度を低下させる要因として挙げられる。
【0026】
次に、曲げ矯正による亀裂の発生およびその大きさについて述べる。
【0027】
鋼の表面硬さが高いほど曲げ矯正の際、亀裂を生じやすく、亀裂長さは大きくなる。しかし、亀裂長さは表面硬さだけでは一義的に決まらない。また、亀裂はパーライト粒を一単位として進展する。したがって、パーライト粒が小さいほど小さくなる傾向がある。
【0028】
以上の事実および推測をまとめると、(a)非調質鋼の組織自体が前記の問題点の解決を困難にしている、(b)窒化処理後の表面硬さを上昇させる元素の使用は好ましくない、という結論が得られる。
【0029】
そこで、組織等を改善する具体的な方法を確認するために、本発明者らは以下に述べる実験を行った。
【0030】
0.30%のCを含有する中炭素鋼を基本組成として、各種元素の含有量を変えた24鋼種を素材として、図2に示すクランク軸を模擬した試験体1を作製し、軟窒化処理後の疲労試験および曲げ試験を行った。表1に24種類の素材鋼の化学組成を示す。
【0031】
表1の最上欄の鋼No. X1が基本組成である。それに対応して鋼No. X2以下の鋼はC、Mn、Cr、Ti、NおよびVの影響を知るため、これらの含有量を変化させた組成の鋼である。これらの実験室溶製による素材棒鋼を1200℃に加熱して熱間鍛造し、自然空冷し、調質処理を行うことなく、図2に示した試験体に加工し、ガス軟窒化処理 (RXガス:NH3 =1:1の雰囲気中で 585℃に1.5 時間保持した後に油冷) を施した。なお、比較のために、クランク軸用として一般に用いられるS48C鋼を鍛造した後、焼準処理 (860 ℃に再加熱し15分間保持後に空冷) を行い、同じ窒化処理を施した後に、同じ試験を行った。
【0032】
【表1】
Figure 0004010023
【0033】
疲労試験は室温大気中、試験片のジャーナル部2の端部およびピン部3の中央部を支持した3点曲げにて荷重制御両振りにて繰返し速度5Hzで実施し、破断繰返し数が107 回となる応力振幅を疲労限度と定義した。
【0034】
ここで応力は、疲労亀裂が発生するピン部フィレットR部(図2に符号4で示す)での応力(長さ1mmのひずみゲージにより測定、算出)である。一方、曲げ矯正性は、同じ試験体による静的曲げ試験により評価した。疲労試験時にひずみゲージを貼付した場所と同一の場所にひずみゲージを貼付し、室温大気中にて曲げを負荷し、ひずみゲージの断線を亀裂の発生と見なし、その時のひずみ量を曲げ矯正可能ひずみ量とした。曲げ矯正可能ひずみ量はばらつきが大きいため、1鋼種につき4個の試験片による試験を行いその平均値で評価した。
【0035】
図3に疲労限度および曲げ矯正可能ひずみ量に及ぼすC、Mn、Crの影響(図3 (a))およびTi、N、Vの影響(図3(b)) を示す。 (a)図の左端に前記のS48Cの焼準材の疲労限度および曲げ矯正可能ひずみ量を目安として示す。
【0036】
上記の試験結果および組織の観察から次のような対策が前記の目的達成に有効であることが確認された。
【0037】
▲1▼微量Tiによる鍛造加熱時のオーステナイト粒成長の抑制
▲2▼C含有量低減によるフェライトの粒内粒界にわたる均一分布化
▲3▼Ti含有量の適正化による固溶窒素量の確保
▲4▼V、Crの制限による窒化後の表面硬さの抑制
本発明は、上記の基本的な知見と、各合金成分および不純物の作用ならびに軟窒化処理の条件に関する詳細な検討とを総合してなされたものである。
【0038】
I.本発明の軟窒化非調質クランク軸について
本発明の軟窒化クランク軸の素材となる鋼(本発明鋼)の各構成元素の作用および各元素の含有量を限定した理由は次のとおりである (成分含有量の%は全て重量%である) 。
【0039】
C:0.25〜0.35%
Cは、引張り強度を確保するのに有効な元素であり、そのためには0.25%以上の含有量が必要である。図3に示すように、0.25%未満では疲労限度も低い。しかし、0.35%を超える過大な含有量になると、粒内からフェライトが発生しにくくなり、非調質鋼の組織を調質鋼のそれに近づけることができなくなる。その結果として、図3に示したように曲げ矯正性が低下するので上限は0.35%以下とする。
【0040】
Si:0.05〜1.50%
Siは溶製時の脱酸剤として必要であり、その効果を得るには少なくとも0.05%が必要である。しかし、Si含有量が過剰になると鍛造時の脱炭を促すので含有量の上限は 1.50 %とした。
【0041】
Mn:0.80〜1.20%
Mnは、図3にも示すように疲労限度向上のために効果的な元素である。その効果を確実に得るためには、下限を0.80%としなければならない。しかし、過剰な添加はパーライト体積率を増加させるため曲げ矯正性が低下する。従って、Mn含有量の適正範囲は0.80〜1.20%である。
【0042】
Ti:0.005 〜0.03%
微量のTiは、鍛造に先立つ加熱時のオーステナイト粒も成長を抑制することにより、フェライトパーライト組織を微細化する。その結果、非調質鋼の組織を焼準鋼のそれに近づけることができ、曲げ矯正時に発生する亀裂を小さくすることができる。フェライト体積率が高い成分系では微細化により曲げ矯正性への寄与は小さいが、本発明鋼の組成範囲内でも高C−高Mnの成分系では、Ti添加は曲げ矯正性改善に寄与する。この効果を得るためには 0.005%以上が必要である。一方、Tiの含有量が0.03%を超えると鋼中の固溶Nが減少し、図3に示すように疲労限度が低下する。従って、Ti含有量の適正範囲は 0.005〜0.03%である。
【0043】
Al:0.0005〜0.01%
Alも溶製時の脱酸剤として必要であり、その効果を得るには少なくとも0.0005%が必要である。しかし、Alが過剰になると硬質の介在物が増えて、鋼の耐久性および被削性がともに低下する。従って、Alの含有は0.01%までに抑えるべきである。
【0044】
N:0.010 〜0.030 %
図3からも明らかなように、Nは疲労限度向上に有効な元素である。この効果を得るためには 0.010%以上は必要である。しかしながら 0.030%を超えて含有してもその効果は飽和するとともに曲げ矯正性が低下するので、0.010 〜0.030 %とする。
【0045】
S:0.10%以下
Sは、積極的に添加しなくてもよい。即ち、その含有量は不可避不純物の範囲でもよい。しかし、Sには被削性の向上の効果があるので、積極的に添加してもよい。その効果を得るには、含有量を0.04%以上とするのが望ましい。ただし、Sが0.10%を超えると連続鋳造スラブに欠陥を生じるから、上限は0.10%とする。
【0046】
Ca:0.0030%以下
Caも、Sと同様に、積極的に添加しなくてもよい。従って、その含有量は不可避不純物の範囲でもよい。しかし、Caは、被削性向上を狙う場合に積極的に添加することができる成分である。被削性の向上に効果があるCaは 0.0003 %以上であるから、添加する場合は、これ以上の含有量を確保するのが望ましい。一方、Caが0.0030%を超えると鋼中への大型介在物の混入が避けられない。従って、Caを添加する場合でも、その含有量は0.0030%までにとどめるべきである。
【0047】
本発明のクランク軸の素材鋼の一つは、上記の成分の外、残部がFeと不可避不純物からなるものである。他の一つは、特に良好な被削性を重視したもので、前記の成分に加えて、次のPbを含有する鋼である。
【0048】
Pb:0.05〜0.20%
Pbの添加による非削性の向上効果は、その含有量が0.05%以上のときに顕著になる。しかし、Pbが過剰になると鋼中の介在物が多くなり疲労限度が著しく低下する。従って、Pbを添加する場合は、その含有量は0.03〜0.20%とすべきである。なお、前述のSおよびCaを積極的に添加した上で、さらにPbを添加すれば、これらの元素の複合効果によって、被削性向上の効果が著しく大きくなる。
【0049】
本発明鋼は、次に述べるP、CrおよびVを不純物として抑制することにも大きな特徴がある。
【0050】
P:0.03%以下
Pは、鋼の衝撃値および破壊靱性値を低下させるので、可及的に少ないことが望ましい。ただし、ごく少量の含有量ではその影響は小さい上、Pを極低レベルに下げるには精錬コストが嵩むので 0.03 %を許容上限値とした。
【0051】
Cr:0.15%以下
図3に示したとおり、Crは疲労限界の向上には効果があるが、曲げ矯正性を劣化させる。これはCrが窒化処理により窒化物を生成し硬さを高めるからである。
【0052】
従って、本発明鋼では、Crの積極的な添加はせず、不純物としてその上限を0.15%に抑える。0.15%までは弊害が比較的小さく、またCrの含有量を極端に低くするには精錬コストが大幅に増大するので、0.15%までの含有量は許容することとした。この上限値以下で、できるだけ少ない方がよい。
【0053】
V:0.02%以下
図3からも明らかなように、VもCrと同様に窒化処理後の表面硬さを上昇させ、曲げ矯正性を著しく低下させる。従って、Vは不可避不純物として混入する以上に添加しない。不可避不純物としても0.020 %以下としなければならない。
【0054】
II.本発明の軟窒化非調質クランク軸の製造方法について
本発明の軟窒化非調質クランク軸は次に述べる方法で製造することができる。
【0055】
即ち、前記組成の素材 (本発明鋼) を加熱し、鍛造加工を行い目的の形状とする。この時の加熱温度は、低ければ低いほど好ましいが、低温鍛造には大きなプレス能力が必要となるため、一般的な条件として1200℃を標準とし、プレスの能力に応じて1150〜1250℃の範囲で決める。鍛造後は、製造コストの点から自然放冷 (空冷) とする。ただし、製造時間短縮のために送風等による強制空冷を行ってもなんら問題はない。
【0056】
目的とする形状に整えた後に、一般に行われる焼準または焼入れ焼もどしなどの調質処理を行うことなく、軟窒化処理を施す。軟窒化条件は、RXガス:アンモニア=0.8 〜1.2 の雰囲気で、温度 570〜600 ℃、時間60〜120 分とし、その後は直接油冷する。ここでガス組成比、環境温度および時間を上記のように定めるのは、耐焼付き性の改善のための適正な化合物層と十分な深さの拡散層を得るためである。
【0057】
【実施例1】
表2は、試験に供した本発明鋼10種類、比較鋼13種類、およびS48C相当鋼2種類の化学組成を示す一覧表である。これらの鋼を各 150kg、大気中溶解炉で溶製した後に、1200℃まで加熱し、図2に示した形状および寸法のクランク形の試験体に熱間鍛造し放冷した。その後若干の機械加工を行い、軟窒化処理を施した。
【0058】
ガス軟窒化は、ガス比をRXガス:NH3 =1:1とし、その雰囲気中で試験片を 585℃に加熱し、90分保持した後、150 ℃の油中に油冷した。窒化した各試験体をそのまま各試験に供した。
【0059】
疲労試験は前述のとおりで、破断繰り返し数が107 回となる応力振幅を疲労限度と定義した。一方、曲げ矯正性も前述した方法と同様の方法で評価した。非削性についても全ての鋼に対して工具寿命の試験を行った。被削性の評価は、S48C鋼にPbを0.05%添加した鋼 (表2の No.Z25) に調質処理を施したものを基準とする相対比較によって行った。
【0060】
【表2】
Figure 0004010023
【0061】
表3に、疲労、曲げおよび非削性の各試験の結果を示す。同表から明らかなように、本発明の軟窒化非調質クランク軸(本発明例)は、疲労限度および曲げ矯正可能ひずみ量の両方において、目標値(No.Z24のS48C鋼を素材とする軟窒化調質クランク軸の性能。即ち、疲労限度が 60kgf/mm2、曲げ矯正可能ひずみ量が 3.5%) を達成している。それに対して比較例の中には目標値の疲労限度と曲げ矯正可能ひずみ量を同時に達成するものは存在しない。
【0062】
表3の被削性は、S48CにPbを添加した No.Z25と同等以上の工具寿命となったものを良好として○印を付し、これより工具寿命の短いものを×としてある。本発明例のうちPbを添加したものは、疲労限度と曲げ矯正性を同時に満たしたうえで良好な被削性をもつことがわかる。
【0063】
【表3】
Figure 0004010023
【0064】
図4には、表1に示したX1の鋼を素材として作製した試験片を用いて、疲労限度に及ぼす軟窒化処理の温度と処理時間の影響を調べた結果を示す。なお、窒化処理のガス組成は前記のとおりである。図示のとおり、目標の疲労限度(S48Cを素材とする軟窒化調質クランク軸の疲労限度) を得るためには、処理温度は 570℃以上、処理時間は60分以上が必要である。また処理温度 600℃以上、処理時間 120分でその効果はほぼ飽和している。
【0065】
【発明の効果】
本発明の軟窒化非調質クランク軸は、熱間鍛造後、調質処理を行わずに軟窒化窒化処理を施しても、素材鋼の組織改善効果により、従来の調質処理を行った軟窒化クランク軸と同等以上の優れた疲労限度および曲げ矯正性を確保できる。このクランク軸を製造する本発明方法は、調質処理の工程が不用なものであるから、大きなコスト削減と製造時間短縮の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1の (a)は従来の軟窒化クランク軸(調質材)の製造工程、(b) は本発明の軟窒化クランク軸(非調質材)の製造工程をそれぞれ示す図である。
【図2】図2は、疲労試験および曲げ試験に供したクランク軸を模擬した試験体の形状を示す図面で、 (a)が正面図、(b) が側面図である。
【図3】図3は、疲労限度および曲げ矯正可能ひずみ量に及ぼすC、Mn、Cr、V、Ti、およびNの影響を示す図面である。
【図4】図4は、疲労限度および曲げ矯正可能ひずみ量に及ぼす軟窒化処理の温度と処理時間の影響を示す図である。

Claims (4)

  1. 重量%で、C:0.25〜0.35%、Si:0.05〜1.50%、Mn:0.80〜1.20%、Ti:0.005 〜0.03%、Al:0.0005〜0.01%、N:0.010 〜0.030 %、S: 0.10%以下、Ca:0.0030以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物から成り、不純物としてのPが0.03%以下、Crが0.15%以下、Vが0.02%以下である鋼から製造され軟窒化処理されている非調質クランク軸。
  2. 重量%で、C:0.25〜0.35%、Si:0.05〜1.50%、Mn:0.80〜1.20%、Ti:0.005 〜0.03%、Al:0.0005〜0.01%、N:0.010 〜0.030 %、S: 0.10%以下、Ca:0.0030以下、およびPb:0.05〜0.20%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物から成り、不純物としてのPが0.03%以下、Crが0.15%以下、Vが0.02%以下である鋼から製造され軟窒化処理されている非調質クランク軸。
  3. 請求項1または2に記載の組成の鋼をクランク軸に鍛造した後、自然放冷し、その後は熱処理をすることなく機械加工および軟窒化処理を施すことを特徴とする軟窒化非調質クランク軸の製造方法。
  4. 軟窒化処理をRXガス:アンモニア= 0.8〜1.2 の雰囲気で、570 〜600 ℃にて60〜120 分加熱し、その後油冷する方法で行う請求項3に記載の軟窒化非調質クランク軸の製造方法。
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