JP3931269B2 - 歯車装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、たとえば自動変速機に使用される遊星歯車装置などのように、軸部により回転支持された歯車を有する歯車装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば遊星歯車式自動変速機においては、複数の遊星歯車が遊星枠に固定された軸部に転がり軸受を介して回転支持されており、通常、動作時に回転部分に潤滑油が供給されている。ところが、一連の動作時において、潤滑油切れが発生し、とくに遊星歯車を回転支持する軸部が摩耗するという問題がある。
【0003】
上記のような遊星歯車装置以外でも、歯車が軸部により回転支持されている歯車装置には、同様の問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の目的は、上記の問題を解決し、歯車を回転支持する軸部の摩耗を防止して、耐久性を向上させることができる歯車装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
この発明による歯車装置は、針状ころ軸受を介して、上記針状ころ軸受のころと接触する軸部に回転支持された歯車を有する歯車装置において、上記針状ころ軸受のころと接触する上記軸部の表面に、硬質カーボン膜またはダイヤモンドライクカーボン膜からなる耐摩耗膜が形成され、上記耐摩耗膜の表面に、付着させて乾燥させることにより形成した流動性を有するゲル状のフッ素系潤滑剤からなる潤滑薄膜が形成されており、上記フッ素系潤滑剤は、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、スルフォン基またはエステル基から選ばれる官能基を備えたポリフルオロアルキル重合体の1種または2種以上であることを特徴とするものである。
【0007】
潤滑油切れが発生しても、針状ころ軸受のころと接触する軸部の表面に付着させて乾燥させることにより形成した流動性を有する上記のゲル状のフッ素系潤滑剤からなる潤滑薄膜により、潤滑が補助され、また、硬質カーボン膜またはダイヤモンドライクカーボン膜からなる耐摩耗膜により、歯車を回転支持する針状ころ軸受のころと軸部の母材同志の直接接触が防止されるため、軸部の摩耗が防止されて、歯車装置の耐久性が向上する。
【0008】
すなわち、この発明の歯車装置によれば、上記のように、針状ころ軸受のころと接触する軸部の表面に付着させて乾燥させることにより形成した流動性を有する上記のゲル状のフッ素系潤滑剤からなる潤滑薄膜により潤滑を補助するとともに、硬質カーボン膜またはダイヤモンドライクカーボン膜からなる耐摩耗膜により歯車を回転支持する軸部の摩耗を防止して、歯車装置の耐久性を向上させることができる。
【0009】
官能基を有する含フッ素重合体であるポリフルオロアルキル重合体からなる流動性を有するゲル状の潤滑薄膜は、潤滑性が高く、従来の固体潤滑剤のコーティング膜などとは異なり、剥離や欠落が生じにくく、それ自体の発塵量も少ない。すなわち、発塵性および潤滑性の両方について優れていて、膜切れを起こさない。そして、潤滑油切れが発生しても、針状ころ軸受のころと軸部表面の耐摩耗膜が、官能基を有する含フッ素重合体からなる潤滑薄膜を介して摺接することになり、この潤滑薄膜は上記のように潤滑性と発塵性に優れていて膜切れを起こさないものであるから、これにより針状ころ軸受のころと軸部との間の潤滑が確保される。また、仮に潤滑薄膜に部分的な膜切れが発生した場合でも、耐摩耗膜により針状ころ軸受のころと軸部の母材同志の直接接触が防止されるため、軸部の摩耗が防止され、耐久性が向上する。すなわち、潤滑油切れが発生しても、針状ころ軸受のころと軸部との間の潤滑を確保して、軸部の摩耗を防止でき、耐久性を向上することができる。
【0010】
この発明による歯車装置は、また、針状ころ軸受を介して、上記針状ころ軸受のころと接触する軸部に回転支持された歯車を有する歯車装置において、上記針状ころ軸受のころと接触する上記軸部の表面に、硬質カーボン膜またはダイヤモンドライクカーボン膜からなる耐摩耗膜が形成され、上記耐摩耗膜の表面に、付着させて乾燥させることにより形成した流動性を有するゲル状のフッ素系潤滑剤からなる潤滑薄膜が形成されており、上記フッ素系潤滑剤は、パーフルオロポリエーテルまたはその誘導体との混合物であることを特徴とするものである。
【0011】
この場合も、上記同様、針状ころ軸受のころと接触する軸部の表面に付着させて乾燥させることにより形成した流動性を有する上記のゲル状のフッ素系潤滑剤からなる潤滑薄膜により潤滑を補助するとともに、硬質カーボン膜またはダイヤモンドライクカーボン膜からなる耐摩耗膜により歯車を回転支持する軸部の摩耗を防止して、歯車装置の耐久性を向上させることができる。
【0012】
また、潤滑薄膜を構成する流動性を有するゲル状のフッ素系潤滑剤が、パーフルオロポリエーテルまたはその誘導体との混合物であるから、発塵性と潤滑性の両方について優れた潤滑薄膜を得ることができる。
【0013】
上記の官能基を有する含フッ素重合体からなる潤滑薄膜の膜厚は、0.2μm以下でその近傍に設定されるのが好ましい。この場合、潤滑薄膜は、パーフルオロポリエーテル(PFPE)またはその誘導体との混合物を希釈溶媒で0.25質量%にまで希釈した潤滑油により形成することができる。
【0014】
このようにすると、潤滑薄膜の発塵性と潤滑性の両方について優れた結果が得られる。この潤滑薄膜の膜厚については、潤滑薄膜を形成するベースとなる潤滑油を特定すれば、容易に設定できるようになる。
この発明による歯車装置は、また、針状ころ軸受を介して、上記針状ころ軸受のころと接触する軸部に回転支持された歯車を有する歯車装置において、上記針状ころ軸受のころと接触する上記軸部の表面に、硬質カーボン膜またはダイヤモンドライクカーボン膜からなる耐摩耗膜が形成され、上記耐摩耗膜の表面に、付着させて硬化させることにより形成した固体状のフッ素系潤滑剤からなる潤滑薄膜が形成されており、上記フッ素系潤滑剤は、上記固体状のフッ素系潤滑剤の内部において流動可能なイソシアネート官能基付き含フッ素重合体と結合しない官能基なし含フッ素重合体が混合している含フッ素ポリウレタン高分子化合物であることを特徴とするものである。
上記固体状のフッ素系潤滑剤に混合している流動可能な官能基なし含フッ素重合体は、たとえば官能基なしのパーフルオロポリエーテルなどの含フッ素重合体とするのが好ましい。
この場合も、上記同様、針状ころ軸受のころと接触する軸部の表面に付着させて硬化させることにより形成した上記の固体状のフッ素系潤滑剤からなる潤滑薄膜により潤滑を補助するとともに、硬質カーボン膜またはダイヤモンドライクカーボン膜からなる耐摩耗膜により歯車を回転支持する軸部の摩耗を防止して、歯車装置の耐久性を向上させることができる。
また、上記固体状のフッ素系潤滑剤に混合している流動可能な官能基なし含フッ素重合体が、潤滑薄膜の表面から滲み出て潤滑作用に寄与するので、潤滑性を一層向上することができる。この官能基なし含フッ素重合体は、イソシアネート官能基付き含フッ素重合体と結合しないので、これが、固体状の潤滑薄膜の内部において流動可能となり、潤滑薄膜表面から滲み出るなどして潤滑作用を発揮することになる。
【0015】
含フッ素ポリウレタン高分子化合物からなる上記固体状の潤滑薄膜は、たとえば、分子間がウレタン結合した3次元の網状組織を有している。
【0016】
含フッ素ポリウレタン高分子化合物からなる固体状の潤滑薄膜は、発塵性および潤滑性について優れていて、膜切れを起こさない。したがって、前記の官能基を有する含フッ素重合体からなる潤滑薄膜と同様の作用効果が奏される。とくに、この固体状の潤滑薄膜は、分子間が密に詰まった均質な構造であるので、潤滑作用が長期的に継続する。
【0017】
この発明による歯車装置は、また、針状ころ軸受を介して、上記針状ころ軸受のころと接触する軸部に回転支持された歯車を有する歯車装置において、上記針状ころ軸受のころと接触する上記軸部の表面に、硬質カーボン膜またはダイヤモンドライクカーボン膜からなる耐摩耗膜が形成され、上記耐摩耗膜の表面に、付着させて硬化させることにより形成した固体状のフッ素系潤滑剤からなる潤滑薄膜が形成されており、上記フッ素系潤滑剤は、上記固体状のフッ素系潤滑剤の内部において流動可能なイソシアネート官能基付き含フッ素重合体と結合しない官能基なし含フッ素重合体が混合しているものであって、−C X F 2X −O−という一般式(Xは1〜4の整数)で示される単位を主要構造単位とし、前記の化学式21、22、23、24の少なくとも1つの官能基を備えるものであることを特徴とするものである。
【0018】
この場合も、上記同様、針状ころ軸受のころと接触する軸部の表面に付着させて硬化させることにより形成した上記の固体状のフッ素系潤滑剤からなる潤滑薄膜により潤滑を補助するとともに、硬質カーボン膜またはダイヤモンドライクカーボン膜からなる耐摩耗膜により歯車を回転支持する軸部の摩耗を防止して、歯車装置の耐久性を向上させることができ、また、上記固体状のフッ素系潤滑剤に混合している流動可能な官能基なし含フッ素重合体が、潤滑薄膜の表面から滲み出て潤滑作用に寄与するので、潤滑性を一層向上することができる。
【0019】
硬質カーボン膜またはダイヤモンドライクカーボン膜からなる耐摩耗膜は、上記のゲル状の潤滑薄膜あるいは固体状の潤滑薄膜とのぬれ性が高く、したがって、高速回転時においても、潤滑薄膜の部分的な膜切れが発生しにくく、潤滑薄膜により針状ころ軸受のころと軸部との間の潤滑が確保される。
【0020】
【発明の実施形態】
以下、図面を参照して、この発明を自動変速機の遊星歯車装置に適用した実施形態について説明する。
なお、この発明の実施形態について説明する前に、図1および図2を参照して、この発明が適用される遊星歯車装置の1例(参考例)について説明する。
【0021】
図1は遊星歯車装置の要部を示し、図2はさらにその一部を詳細に示している。
【0022】
図1に示すように、歯車装置は、相対的に回転しうるように同軸に配置された太陽歯車(1)、内歯歯車(2)および遊星枠(3)ならびに遊星枠(3)に取り付けられて両歯車(1)(2)とかみ合う複数の遊星歯車(4)を備えている。図2に詳細に示すように、各遊星歯車(4)は、遊星枠(3)に固定された軸部(5)に針状ころ軸受(6)を介して回転支持されている。
【0023】
図2に詳細に示すように、軸部(6)の表面のうち、少なくとも軸受(6)のころと接触する部分に、耐摩耗膜(7)が形成されている。
【0024】
歯車装置には、動作時に、公知の適宜な手段により、回転部分に潤滑油が供給されている。動作中に潤滑油切れが発生しても、耐摩耗膜(7)により、軸受(6)と軸部(5)の母材同志の直接接触が防止されるため、軸部(6)の摩耗が防止されて、歯車装置の耐久性が向上する。
【0025】
耐摩耗膜(7)は、たとえばDLC膜(ダイヤモンドライクカーボン(Diamond Like Carbon)膜)からなる。耐摩耗膜(7)を構成するDLC膜は、たとえば化学蒸着(CVD)法、プラズマCVD法、イオンビーム形成法、イオン蒸着法などにより形成することができる。
【0026】
CVD法でDLC膜を形成する場合は、たとえばCH4などの炭素源またはこれに水素などを混合した混合ガスに、必要に応じてキャリアガスとして適量の不活性ガスを加え、これを1〜10−3Torr程度で、200〜1100℃程度に加熱された対象部品である軸部(5)に対して流通する。このとき、軸部(5)に適宜マスキングを施しておく。これにより、軸部(5)の必要部位に炭素が付着されてDLC膜が生成されることになる。このとき、DLC膜の膜厚は、たとえば0.1〜1μm程度に管理され、また、表面粗さは、Ra(中心線平均粗さ)で0.01μm以下に管理される。
【0027】
とくに、母材である軸部(5)を鋼材とする場合には、母材そのものに含まれる炭素に対して上述したDLC膜の炭素が結合することになり、そのために、DLC膜の母材に対する密着性がきわめて高くなる。しかも、DLC膜を構成する炭素原子相互の結合力が強いので、DLC膜の摩耗や損傷が発生しにくくなる。
【0028】
図3は、この発明の実施形態であって、軸部(5)の表面部を示している。
【0029】
この実施形態の場合、軸部(5)の表面の少なくとも軸受(6)のころと接触する部分に、前記参考例の場合と同様の耐摩耗膜(7)が形成され、さらにその表面に、フッ素系潤滑剤からなる潤滑薄膜(8)が形成されている。図3には軸部(5)の表面部だけが示されているが、他は前記参考例の場合と同様である。
【0030】
歯車装置の動作中に潤滑油切れが発生しても、潤滑薄膜(8)により、潤滑が補助され、また、耐摩耗膜(7)により、軸受(6)と軸部(5)の母材同志の直接接触が防止されため、軸部(5)の摩耗が防止されて、歯車装置の耐久性が向上する。
【0031】
潤滑薄膜(8)は、たとえば、官能基を有する含フッ素重合体からなる潤滑薄膜である。この官能基付きの含フッ素重合体としては、フルオロポリエーテル重合体またはポリフルオロアルキル重合体が好ましい。フルオロポリエーテル重合体は、
−CXF2X−O−という一般式(Xは1〜4の整数)で示される単位を主要構造単位とし、いずれも平均分子量が1000〜50000の重合体とするものが挙げられる。ポリフルオロアルキル重合体としては、次の化学式1に示すものが挙げられる。また、前述の官能基は、金属に対して親和性の高いもの(たとえばエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、スルフォン基またはエステル基など)が好ましく、たとえば次の化学式2、3に示すものが挙げられる。このような含フッ素重合体は、単独で用いるか、または2種以上を併用してもよい。その場合は、より耐摩耗性の優れた薄膜が得られるように、組み合わされた基が互いに反応して重合体をより高分子量化させるように配慮するのが望ましい。
【0032】
【化1】
【化2】
【化3】
前述の官能基付きの含フッ素重合体として、より詳しくは、PFPE(パーフルオロポリエーテル)あるいはその誘導体との混合物、具体的には、たとえばモンテカチーニ社の商品名フォンブリン(FONBLIN)Yスタンダード、フォンブリンエマルジョン(FE20、EM04など)またはフォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z DEAL、FONBLIN Z DIAC、FONBLIN Z DISOC、FONBLIN Z DOL、FONBLIN Z DOLTX2000、FONBLIN Z TETRAOLなど)が好適に用いられる。ここに例示したものは、いずれも濃度が濃く、金属に対する親和性がきわめて悪いので、そのままでは膜状に付着させることが困難である。そのため、潤滑薄膜(8)は、下記のような方法で形成するのが好ましい。
【0033】
次に、上記の潤滑薄膜(8)の形成方法の1例を説明する。
【0034】
(a1) 前述のように耐摩耗膜(7)を形成した軸部(5)に適宜マスキングを施し、用意した溶液中に軸部(5)を浸漬して、軸部(5)の耐摩耗膜(7)の表面に液状膜を付着させる(付着処理)。この溶液の付着は、スプレーを用いて行うこともできる。ここで用意する溶液は、たとえばフォンブリンエマルジョンFE20(フォンブリン濃度20質量%)を適当な希釈溶媒でフォンブリン濃度を0.25質量%にまで希釈したものである。なお、上記の希釈溶媒は、メタノール溶液、アルコール溶液や水などの揮発性のものとすることができる。
【0035】
(a2) 液状膜を付着した軸部(5)全体を40〜50℃で約3分間加熱し、液状膜に含まれる溶媒を除去する(乾燥処理)。
【0036】
(a3) この後、歯車装置の使用環境での雰囲気温度を考慮して、たとえば80〜300℃で1〜20時間加熱する(仕上げ乾燥処理)。これにより、歯車装置の動作時に溶媒や油成分などの不要な発塵がない流動性を有する潤滑薄膜(8)が得られる。
【0037】
上記の方法によれば、軸部(5)の耐摩耗膜(7)の表面に潤滑薄膜(8)を好適な膜厚で形成することができる。なお、(a1)および(a2)の処理は、必要に応じて数回繰り返すようにしてもよく、最終的には潤滑薄膜(8)の膜厚を0.2μm以下に設定する。ただし、使用潤滑油の性状、薄膜の形成方法や生成後の膜厚などは、適宜に設定すればよい。
【0038】
官能基を有する含フッ素重合体からなるゲル状の潤滑薄膜(8)は、前述のように、流動性を有し、発塵性および潤滑性の両方について優れていて、膜切れを起こさない。
【0039】
歯車装置の動作中に潤滑油切れが発生しても、軸受(6)と軸部(5)が、官能基を有する含フッ素重合体からなる潤滑薄膜(8)を介して摺接することになり、この潤滑薄膜(8)は上記のように潤滑性と発塵性に優れていて膜切れを起こさないものであるから、これにより軸受(6)と軸部(5)との間の潤滑が確保される。また、仮に潤滑薄膜(8)に部分的な膜切れが発生した場合でも、耐摩耗膜(7)により軸受(6)と軸部(5)との直接接触が防止されるため、軸部(5)における摩耗の発生が防止され、歯車装置の耐久性が向上する。また、DLC膜よりなる耐摩耗膜(7)は、官能基を有する含フッ素重合体からなる潤滑薄膜(8)とのぬれ性が高く、したがって、高速回転時においても、潤滑薄膜(8)の部分的な膜切れが発生しにくく、潤滑薄膜(8)により軸受(6)と軸部(5)との間の潤滑が確保される。
【0040】
潤滑薄膜(8)は、次のような固体状の潤滑薄膜であってもよい。図4は、固体状の潤滑薄膜の構造を模式的に表わした構造図である。
【0041】
この固体状の潤滑薄膜(8)は、含フッ素ポリウレタン高分子化合物からなる。含フッ素ポリウレタン高分子化合物は、−CXF2X−O−という一般式(Xは1〜4の整数)で示される単位を主要構造単位とし、いずれも平均分子量が数百万以上で硬化反応により分子間がウレタン結合した3次元の網状構造を有している。3次元の網状構造とは、化学構造上の表現であって、膜の断面が網状になっているのではなく、分子間が網のように連続してつながって密に詰まった均質な構造になっていることを意味している。このような化合物としては、次の化学式4に示すような末端がイソシフネートの官能基付き含フッ素重合体を用いて、化学構造を変化させたものとすることができる。上記の末端がイソシアネートの官能基付き含フッ素重合体としては、PFPEの誘導体、具体的には、たとえばモンテカチーニ社の商品名フォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z DISOC)が好適に用いられる。
【0042】
【化4】
次に、上記の固体状の潤滑薄膜(8)の形成方法の1例を説明する。
【0043】
(b1) 固体状の潤滑薄膜(8)を得るための溶液を用意し、この溶液を用いて、前記同様に、軸部(5)の耐摩耗膜(7)の表面に液状膜を付着させる(付着処理)。ここで用意する溶液は、末端がイソシアネートの官能基付き含フッ素重合体〔フォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z DISOC)〕を希釈溶液(フッ素系溶剤SV90D)で含フッ素重合体の濃度を1質量%にまで希釈したものである。
【0044】
(b2) 液状膜を付着した軸部(5)を40〜50℃で約1分間加熱し、液状膜に含まれる溶媒を除去する(乾燥処理)。この時点では、液状膜のままであり、流動性を有している。
【0045】
(b3) この後、軸部(5)をたとえば80〜200℃で1〜20時間、加熱する(硬化処理)。これにより、液状膜の化学構造が変化することにより硬化反応して固体状の潤滑薄膜(8)が得られる。ちなみに、この硬化処理では、液状膜に存在している官能基付き含フッ素重合体の個々について、次の化学式5〜8に示すような4種の硬化反応でもって末端のイソシアネート(NCO)が消失し、各官能基付き含フッ素重合体が互いにウレタン結合することにより3次元の網状構造となる。ウレタン結合は、化学式5、6に示すような硬化反応でもって、図4(a)に模式的に示すように直線的に架橋するとともに、化学式7、8に示すような硬化反応でもって、図4(b)に模式的に示すように3次元方向で架橋する。なお、図4では、下記の化学式9に示すように、上記化学式4を簡略化して模式的に表わしている。
【0046】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
上記の方法によれば、軸部(5)の耐摩耗膜(7)の表面に固体状の潤滑薄膜(8)を好適な膜厚で形成することができる。なお、(b1)および(b2)の処理は必要に応じて数回繰り返すようにしてもよく、最終的には、潤滑薄膜(8)の膜厚をたとえば0.2μm以下に設定する。
【0047】
ここで、(b1)で用意した溶液を濃縮乾燥しただけの状態(流動性がある状態)と、(b1)で用意した溶液を試料に付着して硬化した状態とについて、その性状を分析したので、その結果について説明する。
【0048】
前者は、FT−IR法(フーリエ変換−赤外分析、液膜法)で分析した。その結果は、フッ素系のピーク以外にNH(3300cm−1)、N=C=O(2279cm−1)、
N(H)C=O(1712cm−1、1546cm−1)、ベンゼン(1600cm−1)などのピークが見られ、ベンゼン環、ウレタン結合、イソシアネートが官能基として存在していることが確認できた。ここでは、薄膜と厚膜との場合についてそれぞれ調べているが、膜厚に関係なく分析が行えた。後者は、FT−IR法(フーリエ変換−赤外分析、高感度反射法)で分析した。その結果は、ベンゼン環やウレタン結合のピークが見られるが、イソシアネートのピークが見られなかった。これらの結果に基づき、上記化学式5〜8に示す硬化反応による官能基の化学構造変化が確認された。
【0049】
上記の固体状の潤滑薄膜(8)は、それ自体が3次元の網状構造をもって、被覆対象上に緻密に被覆されるとともに自己潤滑性を有するため、さらに一層長期にわたって優れた潤滑特性を発揮できるようになる。
【0050】
この実施形態において、上記(b3)の硬化処理については、加熱に代えて、紫外線、赤外線、γ線、電子線などの電磁波(光)のエネルギを利用することもできる。また、(b2)の乾燥処理は、省略してもよい。
【0051】
上記の固体状の潤滑薄膜(8)の場合、含フッ素ポリウレタン高分子化合物中に、フルオロポリエーテルなどの含フッ素重合体を流動可能に分散添加した構造とすることもできる。この場合、具体的には、前記形成方法の(b1)の付着処理において、用意する溶液を、末端がイソシアネートの官能基付き含フッ素重合体〔たとえば商品名フォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z DISOCなど)〕と、含フッ素重合体として官能基なし含フッ素重合体〔たとえば商品名フォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z-60など)〕とを所定の割合で混合したものとすればよい。この場合は、(b3)の硬化処理において、官能基なし含フッ素重合体が、官能基付き含フッ素重合体と結合しないので、これが、固体状の潤滑薄膜(8)の内部において流動可能となり、潤滑薄膜(8)表面から滲み出るなどして潤滑作用を発揮することになる。なお、含フッ素重合体としては、前述の官能基なし含フッ素重合体に限定されず、化学式10、11、12に示すような官能基付き含フッ素重合体とすることができる。
【0052】
【化10】
【化11】
【化12】
耐摩耗膜(7)は、硬質カーボン膜により形成されてもよい。そうしても、上記と同様の作用効果が奏される。
【0053】
遊星歯車装置の各部の構成は、上記実施形態のものに限らず、適宜変更可能である。
【0054】
また、この発明は、自動変速機以外の歯車装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、この発明が適用される自動変速機の遊星歯車装置の要部の正面図である。
【図2】 図2は、図1の遊星歯車の部分を拡大して示す縦断面図である。
【図3】 図3は、この発明の実施形態を示す軸部表面部の拡大断面図である。
【図4】 図4は、潤滑薄膜を構成する固体状の潤滑薄膜の構造を模式的に表わした構造図である。
【符号の説明】
(4) 遊星歯車
(5) 軸部
(7) 耐摩耗膜
(8) 潤滑薄膜
Claims (4)
- 針状ころ軸受を介して、上記針状ころ軸受のころと接触する軸部に回転支持された歯車を有する歯車装置において、
上記針状ころ軸受のころと接触する上記軸部の表面に、硬質カーボン膜またはダイヤモンドライクカーボン膜からなる耐摩耗膜が形成され、上記耐摩耗膜の表面に、付着させて乾燥させることにより形成した流動性を有するゲル状のフッ素系潤滑剤からなる潤滑薄膜が形成されており、上記フッ素系潤滑剤は、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、スルフォン基またはエステル基から選ばれる官能基を備えたポリフルオロアルキル重合体の1種または2種以上であることを特徴とする歯車装置。 - 針状ころ軸受を介して、上記針状ころ軸受のころと接触する軸部に回転支持された歯車を有する歯車装置において、
上記針状ころ軸受のころと接触する上記軸部の表面に、硬質カーボン膜またはダイヤモンドライクカーボン膜からなる耐摩耗膜が形成され、上記耐摩耗膜の表面に、付着させて乾燥させることにより形成した流動性を有するゲル状のフッ素系潤滑剤からなる潤滑薄膜が形成されており、上記フッ素系潤滑剤は、パーフルオロポリエーテルまたはその誘導体との混合物であることを特徴とする歯車装置。 - 針状ころ軸受を介して、上記針状ころ軸受のころと接触する軸部に回転支持された歯車を有する歯車装置において、
上記針状ころ軸受のころと接触する上記軸部の表面に、硬質カーボン膜またはダイヤモンドライクカーボン膜からなる耐摩耗膜が形成され、上記耐摩耗膜の表面に、付着させて硬化させることにより形成した固体状のフッ素系潤滑剤からなる潤滑薄膜が形成されており、上記フッ素系潤滑剤は、上記固体状のフッ素系潤滑剤の内部において流動可能なイソシアネート官能基付き含フッ素重合体と結合しない官能基なし含フッ素重合体が混合している含フッ素ポリウレタン高分子化合物であることを特徴とする歯車装置。 - 針状ころ軸受を介して、上記針状ころ軸受のころと接触する軸部に回転支持された歯車を有する歯車装置において、
上記針状ころ軸受のころと接触する上記軸部の表面に、硬質カーボン膜またはダイヤモンドライクカーボン膜からなる耐摩耗膜が形成され、上記耐摩耗膜の表面に、付着させて硬化させることにより形成した固体状のフッ素系潤滑剤からなる潤滑薄膜が形成されており、上記フッ素系潤滑剤は、上記固体状のフッ素系潤滑剤の内部において流動可能なイソシアネート官能基付き含フッ素重合体と結合しない官能基なし含フッ素重合体が混合しているものであって、−CXF2X−O−という一般式(Xは1〜4の整数)で示される単位を主要構造単位とし、以下の化学式21、22、23、24の少なくとも1つの官能基を備えるものであることを特徴とする歯車装置。
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