JP3887845B2 - 水素化反応用触媒、その製造法、及び該触媒を用いた水素化反応方法 - Google Patents
水素化反応用触媒、その製造法、及び該触媒を用いた水素化反応方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々の水素化反応、脱水素化反応、特にエステル類、カルボン酸類の水素化反応方法、並びにそれに用いる触媒、及び該触媒の製造方法に関するものである。さらに具体的には、無水マレイン酸、マレイン酸、無水コハク酸、コハク酸、γ−ブチロラクトン、又はこれらの混合物を原料とし、接触水素化反応により1,4−ブタンジオール及び/又はテトラヒドロフランを製造する方法に関する。1,4−ブタンジオールは、主にポリブチレンテレフタレートやポリウレタン等のプラスチック原料として使用されるほか、ピロリジン、アジピン酸等の製造中間体等としても使用されている。また、テトラヒドロフランは、沸点が低く優れた溶解力をもつため溶媒として使用されるほか、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロチオフェン等の原料として使用されており、非常に有用である。
【0002】
【従来の技術】
炭素質担体に金属を担持して得られる触媒が、水素化能を有することは公知である。しかしながら、通常、炭素質担体は担持する金属の原料となる多くの金属化合物に対して強い吸着特性を有するので、通常用いられる担持方法を採用すると担体の表層部を中心に金属が吸着担持される傾向がある。このような触媒は、担体内部が十分に利用されないため、反応活性が低くなることがある。
【0003】
例えば、米国特許第5,149,680号明細書、及び米国特許第4,659,686号明細書に、活性炭に担持したパラジウム−レニウム触媒を用いてマレイン酸水溶液からテトラヒドロフラン、又はγ−ブチロラクトンを製造する方法が記載されている。しかしながら、これらの明細書には、活性炭における各金属の担持位置に関する記載はなく、触媒の反応効率も低い。また、米国特許第4,659,686号明細書に記載の方法では、反応を行う際に150気圧以上の水素圧力が必要であるという欠点もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高い反応活性が期待できる炭素質担体を用いた水素化反応用触媒、及びその製造方法を提供することにある。
また本発明は、従来、触媒の反応性が低く、比較的高い水素圧の条件下、又は低基質濃度の条件で反応を行う必要があったマレイン酸等のカルボン酸類の水素化反応方法を、より温和な条件で効率よく行う方法を提供するものであり、特に1,4−ブタンジオール及び/又はテトラヒドロフランを効果的に製造する方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、炭素質担体にRuとSn、及びPtを組み合わせた担持成分を有する触媒であって、該触媒が炭素数5以下のカルボン酸、又は炭素数5以下のカルボニル化合物が共存した該担持成分を含有する溶液を炭素質担体に含浸して担持せしめることにより製造する方法に関し、また該製造方法により製造された触媒に関するものである。この製造方法により、担持成分を担体の炭素質担体内部にまで均一に担持することができる。
【0006】
また、本発明は、該触媒の存在下、カルボン酸類を水素と接触させて水素化する方法にも関するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明において、担体として使用される炭素質担体は、活性炭、グラファイト、黒鉛等が挙げられる。これら炭素質担体の形状は、粉末、顆粒、成形いずれからも選択できるが、操作性やろ過性の観点から平均粒径100μm以上の大きさを有するものが好ましい。なお、この担体の形状とは、上記のような炭素質の物質の一次粒子が凝集して形成された粒子のことを示す。
【0008】
本発明では、これら炭素質担体に、周期律表のVIII族金属から選ばれる少なくとも1種の金属を担持成分として担持する。中でも、本発明の水素化反応に使用する場合には、周期律表のVIII族金属の中では、Co,Ni,Ru,Rh,Pd,Pt,Irが水素化活性が高く好ましい。さらにこれらのVIII族金属の少なくとも1種に、IIIa族、IVa族、Va族、VIa族、VIIa族、Ib族、IIb族、IIIb族、IVb族、Vb族、及びVIb族から選ばれる少なくとも1種の元素を組み合わせるのが好ましいが、特にVIIa族のRe、並びにIVb族のGe、Sn、及びPbから選ばれる少なくとも1種の金属を組み合わせたものは、水素化反応活性が高まるので好ましい。さらにエステル類、カルボン酸類の水素化反応では、Ru−Sn、Ru−Sn−Pt,Ru−Sn−Rh、Pd−Re等の組み合わせを担持成分とするのが特に好適である。
【0009】
各担持成分の合計の担持量は担体に対して、金属として通常0.5〜50重量%、好ましくは1〜20重量%の範囲である。
本発明において、担持成分はそれらの金属そのもの、又はその原料となる金属化合物(前駆体)のいずれでもよいが、金属化合物(前駆体)を用いるのが普通である。この金属化合物としては、上記の金属の硝酸、硫酸、塩酸等の鉱酸塩が一般的に使用されるが、酢酸等の有機酸塩、水酸化物、酸化物又は錯塩、さらにはカルボニル錯体やアセチルアセトナ−ト塩に代表されるような有機金属化合物も使用することができる。
【0010】
そして本発明では、この金属化合物を適当な溶媒に溶解し、溶液とする。この時使用される溶媒は、基本的に金属化合物に対して十分な溶解性が有れば良く、特に制限は無いが、具体的には、価格的な視点等から、水もしくはメタノ−ルやエタノ−ル等のアルコ−ル類が好適であり、必要に応じてこれらを混合した混合溶媒でもかまわない。また、溶媒として水を用いた場合には、金属化合物の溶解度を高めるために、塩酸や、硝酸等の酸溶液とすることも可能である。この金属化合物の溶液に、炭素数5以下のカルボン酸、もしくは炭素数5以下のカルボニル化合物を共存させるのが本発明の特徴である。炭素数5以下のカルボン酸としては、酢酸、ギ酸、プロピオン酸などのモノカルボン酸、シュウ酸、マレイン酸等のジカルボン酸等を用いることができる。これらの中では特に価格的な見地から、酢酸、蟻酸、プロピオン酸が好適である。炭素数5以下のカルボニル化合物の中では、ホルムアルデヒドや、アセトン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドの様なモノカルボニル化合物、グリオキザ−ルや、アセチルアセトンの様なジカルボニル化合物等を用いることができる。これらの中では特にアセトン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドが化合物の安定性、価格的な見地から好適である。これらは単独でも、複数使用しても良い。
【0011】
これらのカルボン酸、カルボニル化合物の使用量は、特に上限はなく、場合によってはこのカルボン酸、又はカルボニル化合物をそのまま溶媒として使用することも可能である。逆に少なすぎると十分な効果が得られないことから、通常、金属化合物の溶液の溶媒の重量に対して(複数使用する場合は合計で)0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上使用される。
【0012】
カルボン酸、又はカルボニル化合物の共存下で、炭素質担体に担持成分を担持する方法に関しては特に制限はなく、浸漬法、含浸法などの周知の方法で行うことができる。
担体に複数種の金属の担持成分を担持する順序についても特に制限はなく、全ての担持成分を一度に同時に担持しても、金属種毎に担持成分を個別に担持しても、またはいくつかの担持成分を組み合わせて複数回にわたって担持しても、本発明の効果は達成される。担持成分を個別に担持する場合や、担持成分を組み合わせて複数回に分けて担持する場合には、その都度カルボン酸、又はカルボニル化合物を共存させる方が好ましいが、1回だけ用いて担持しても本発明の効果は得られる。
【0013】
担持成分の溶液を用いて浸漬担持した後には(複数回に渡って浸漬担持する場合にはその都度)、乾燥を行うのが好ましい。その後、必要に応じて焼成、還元処理を行う。焼成処理を行う場合には、通常100〜600℃の温度範囲で行われる。また、還元処理を行う場合には、公知の液相還元法、気相還元法が採用され、気相還元法の場合、通常100〜700℃の温度範囲、好ましくは150〜500℃の範囲で行われる。
【0014】
本発明の水素化反応用触媒は、担持した触媒成分が担体内部に均一に担持されるという特徴を有する。このことは、EPMA(X線マイクロアナライザ−)の線分析を行うことにより確認することができる。測定は、触媒の粒子の最大断面積を与える面の最長径を与える線での線分析を以下の条件で行うものである。なお、この最大断面積を与える面、及び最長径を与える線とは、電子顕微鏡で目視によりその位置を決定するものである。
【0015】
EPMA : JXA−8600M(商品名、日本電子(株)製品)
電子銃加速電圧 : 20kV
照射電流 : 2×10-8A
電子ビ−ム径 : 2μm
計測ステップ : 3μm
計測時間 : 1sec./point
【0016】
上記の測定により、触媒の最長径の断面における、金属種毎に特性X線チャートを得る。得られたチャートのピークの高さ(特性X線強度)は、その測定点におけるその金属の担持量を表すものである。上記条件で測定した線分析結果は、更にその担持状態を数値化するために統計的な数値処理を行う。すなわち、各金属の線分析において、各測定点の強度を、全測定点の強度の平均値で割った値を0.1間隔で度数分布に作成する。これにより、平均強度に対して、何%の強度を持つ測定点が全測定点の何%存在するかが判る。
【0017】
本発明おいては、例えば担持成分にRu、Snを選択した場合、Ruに関しては上記条件での線分析において、Ru平均強度に対して50%未満の強度を持つ測定点が全測定点の35%未満であることが好ましい。さらには25%未満であることがより好ましい。Snに関しては、上記条件での線分析において、Ru平均強度に対して30%未満の強度を持つ測定点が全測定点の20%未満であることが好ましい。さらには15%未満であることがより好ましい。
【0018】
Ru、Snに加えて、例えば、第3担持成分としてPtを添加した場合、上記条件での線分析において、Pt平均強度に対して50%未満の強度を持つ測定点が全測定点の40%未満であることが好ましい。さらには30%未満であることがより好ましい。
このような均一に担持された触媒粒子は、用いる全触媒粒子の中で少なくとも一部存在すれば、その効果が得られる限りにおいて有効であり、通常10%以上、中でも30%以上が該触媒粒子であることが望ましい。
【0019】
この担持成分の前駆体の金属化合物の溶液に、カルボン酸、又はカルボニル化合物を共存させることにより、なぜ担持成分が炭素質担体内部にまで均一に担持されるようになるのか、その機構の詳細は明らかではないが、これらのカルボン酸、又はカルボニル化合物が炭素質担体に強く吸着する特性があることにより、担持成分の前駆体の金属化合物が表面付近にだけ吸着するのを妨げ(競争吸着効果)、その結果担持成分が担体内部にまで浸透し、均一な担持が達成されるものと推測している。
【0020】
本発明による炭素質担体の内部に均一に担持成分を担持した触媒は、水素化反応用触媒として好適に用いられる。例えば、オレフィン、アルキン、カルボニル基、カルボキシル基、ニトリル基等の官能基の水素化反応、還元アミノ化反応、水素化分解反応に適している。中でも特にカルボン酸類を接触水素化する反応に好適に使用される。本発明において、特に該カルボン酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水コハク酸、コハク酸のような炭素数4のジカルボン酸、及びその無水物の他、γ−ブチロラクトンのような炭素数4のカルボン酸の環状エステル、又はこれらの混合物を原料とし、接触水素化反応により1,4−ブタンジオール及び/又はテトラヒドロフランを製造する方法に好適である。
【0021】
1,4−ブタンジオール及び/又はテトラヒドロフランを製造する方法では、反応生成物の分析結果等からみて、(無水)マレイン酸は水素添加されて、(無水)コハク酸となり、次いで、γ−ブチロラクトンとなり、更に最終生成物として、1,4−ブタンジオール及び/又はテトラヒドロフランを生成する反応機構と推測される。従って、これらの化合物のいずれをも反応原料として用いても1,4−ブタンジオール及び/又はテトラヒドロフランを製造することができるし、これらの2種以上の混合物であっても同様である。
【0022】
本発明による炭素質担体の内部に均一に担持成分を担持した触媒を用いて1,4−ブタンジオール及び/又はテトラヒドロフランを製造するには、通常、温度100〜350℃、好ましくは160〜300℃、水素圧10〜300kg/cm2、好ましくは50〜200kg/cm2の条件が採用される。回分反応の場合には、使用される本発明の触媒の量は、無水マレイン酸等の反応原料100重量部に対し0.1〜100重量部であることが望ましいが、反応温度又は反応圧力等の諸条件に応じ、実用的な反応速度が得られる範囲内で任意に選ぶことができる。
【0023】
反応方式は、液相懸濁反応又は固定床反応のいずれであってもよい。また反応は、無溶媒で行ってもよいし、必要に応じて、反応に悪影響を与えない種類の溶媒を使用してもよい。この際使用できる溶媒としては、特に制限されないが、具体的には、水;メタノール、エタノール、オクタノール、ドデカノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;その他、ヘキサン、シクロヘキサン、デカリン等の炭化水素類が挙げられる。
【0024】
なお、反応で生成した1,4−ブタンジオール及び/又はテトラヒドロフランは、蒸留等の公知の方法により分離精製される。また、この分離精製後に残る未反応原料又は反応中間体としてのγ−ブチロラクトン等は、反応原料として再使用することができる。
【0025】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
なお、以下において「%」は「重量%」を示す。
実施例1
<触媒の調製>
100mlのなす型フラスコに、H2PtCl6・6H2O(キシダ化学社製品)を0.96g、5N−HCl水溶液を5.25ml(5.68g)入れて溶解した。この液にSnCl2・2H2O(キシダ化学社製品)を1.01g入れて溶解し、溶解を確認後、RuCl3・3H2O(NEケムキャット社製品)を1.67g入れて完全に溶解させた。この溶液に、酢酸1.45ml(1.52g)を加えて良く攪拌し、均一な溶液とした。この溶液に活性炭(三菱化学(株)製品、商品名:CX−2)を9.06g加えて、よく振とうした。その後、回転減圧乾燥器で60℃、25mmHgの条件下で溶媒の水を除去した後、アルゴン雰囲気下150℃で2時間焼成処理し、次いで水素雰囲気下、450℃で2時間還元処理して、6.1%Ru−3.4%Pt−5%Sn/活性炭(ここに示した「6.1%」等の値は、触媒粒子重量当たりの該当する金属の重量%を示す。以下同様)の触媒を調製した。
この触媒の2つの粒子(AcOH1、AcOH2)のそれぞれについて、最大断面積を与える断面の最長径を与える線でのEPMA(X線マイクロアナライザ−)線分析を行った。
測定は以下の条件で行った。
【0026】
EPMA : JXA−8600M(商品名、日本電子(株)製品)
電子銃加速電圧 : 20kV
照射電流 : 20×10-8A
電子ビ−ム径 : 2μm
計測ステップ : 3μm
計測時間 : 1sec./point
【0027】
この結果を元に、各元素の測定点の強度をその全測定点の強度の平均値で割った値の度数分布をとった結果をヒストグラムとして図1(AcOH1のRuに関するヒストグラム)、図2(AcOH1のSnに関するヒストグラム)、図3(AcOH1のPtに関するヒストグラム)、図4(AcOH2のRuに関するヒストグラム)、図5(AcOH2のSnに関するヒストグラム)、図6(AcOH2のPtに関するヒストグラム)にそれぞれ示す。その結果、各担持成分の分布は、いずれも平均値”1”を中心として正規分布に近い形をしており、また、Ruについては、平均値の50%未満の度数の占める割合は各々全体の11.3%(AcOH1)、及び2.4%(AcOH2)であり、Snについては、平均値の30%未満の度数の占める割合は全体の8.6%(AcOH1)、0.0%(AcOH2)であり、またPtについては、平均値の50%未満の度数の占める割合は全体の13.3%(AcOH1)、及び10.7%(AcOH2)であった。このようにEPMA強度の特に低い部分(平均値に比べ、その量が大幅に少ない部分)はごく少なく、各担持成分が担体内部まで均一に担持されていることが判った。
【0028】
<コハク酸の水素化反応>
容量200mlのオートクレーブに、水25g、コハク酸25gを仕込み、更に上記方法で調製した触媒4.6gを仕込み、室温下攪拌しつつ20kg/cm2の水素を圧入し、240℃まで昇温した。オートクレーブ内温を240℃に維持しつつ、水素を圧入して水素圧を70Kg/cm2まで高め、この圧力で2時間反応を行った。反応終了後、反応液をデカンテ−ションにより触媒と分離し、残った触媒は脱塩水により洗浄した。この触媒に、水25g、コハク酸25gを仕込み2回目の反応を全く同様の手法により行った。
このようにして、計4回の反応を繰り返して行い、反応成績の変化を調べた。反応成績の評価のうち、コハク酸の転化率は酸滴定により求め、反応生成物についてはガスクロマトグラフィーで定量分析を行った。その結果を表1に示した。
【0029】
実施例2
<触媒の調製>
実施例1において、酢酸の代わりにアセトンを2.2ml(1.77g)、5N−HClの使用量を4.47ml(4.84g)とした以外は、同様の方法で触媒を調製した。
この触媒の2つの粒子の最大断面積を与える断面の最長径を与える線におけるEPMA(X線マイクロアナライザ−)線分析をアセトン1, アセトン2について実施例1と同様に行った。
この結果を元に、各元素の測定点の強度をその全測定点の強度の平均値で割った値の度数分布をとった結果を図7(アセトン1のRuに関するヒストグラム)、図8(アセトン1のSnに関するヒストグラム)、図9(アセトン1のPtに関するヒストグラム)、図10(アセトン2のRuに関するヒストグラム)、図11(アセトン2のSnに関するヒストグラム)、図12(アセトン2のPtに関するヒストグラム)に示す。
【0030】
その結果、各担持成分の分布は、平均値”1”を中心とした正規分布に近い形をしており、また、Ruについては、平均値の50%未満の度数の占める割合は全体の12.1%%(アセトン1)、及び5.5%(アセトン2)であり、Snについては、平均値の30%未満の度数の占める割合は全体の14.3%(アセトン1)、6.3%(アセトン2)であり、またPtについては、平均値の50%未満の度数の占める割合は全体の14.0%(アセトン1)、及び7.7%(アセトン2)であった。このようにEPMA強度の特に低い部分(平均値に比べ、その量が大幅に少ない部分)はごく少なく、各担持成分が担体内部まで均一に担持されていることが判った。
【0031】
<コハク酸の水素化反応>
触媒として実施例2の触媒を用いた以外は、実施例1と同様の方法でコハク酸の水素化反応を行った。その結果を表1に示した。
【0032】
比較例1
酢酸を使用せず、5N−HClを6.71ml(7.25g)使用した以外は実施例1と同様の方法で触媒を調製した。
この触媒の2つの粒子S1、S2について、最大断面積を与える断面の最長径を与える線におけるEPMA(X線マイクロアナライザ−)線分析を実施例1と同様に行った。
【0033】
この結果を元に、各元素の測定点の強度をその全測定点の強度の平均値で割った値の度数分布をとった結果をヒストグラムとして図13(S1のRuに関するヒストグラム)、図14(S1のSnに関するヒストグラム)、図15(S1のPtに関するヒストグラム)、図16(S2のRuに関するヒストグラム)、図17(S2のSnに関するヒストグラム)、図18(S2のPtに関するヒストグラム)に示す。
【0034】
その結果、各担持成分の分布は、担持量の少ない部分の存在を示す平均値よりも小さい値を示す部分が多くなっており、各担持成分の担持状態が不均一であることが判った。
具体的には、Ruについては、平均値の50%未満の度数の占める割合は全体の36.3%(S1)、及び55.6%(S2)であり、Snについては、平均値の30%未満の度数の占める割合は全体の20.2%(S1)、38.5%(S2)であり、またPtについては、平均値の50%未満の度数の占める割合は全体の40.1%(S1)、及び57.7%(S2)であった。
この触媒を用い、実施例1と同様の手順でコハク酸の水素添加反応を行った。反応生成物についての分析結果を、表1に示した。
【0035】
実施例3
<触媒の調製>
酢酸の使用量を2.68ml(2.81g)、5N−HClの使用量を4.03ml(4.36g)とした以外は、実施例1と同様の方法で触媒を調製した。<コハク酸の水素化反応>
触媒を実施例3の触媒とした以外は、実施例1と同様の方法でコハク酸の水素化反応を2回行った。その結果を表1に示した。
【0036】
実施例4
<触媒の調製>
酢酸の使用量を4.03ml(4.23g)、5N−HClの使用量を2.68ml(2.90g)とした以外は、実施例1と同様の方法で触媒を調製した。
<コハク酸の水素化反応>
触媒を実施例4の触媒とした以外は、実施例1と同様の方法でコハク酸の水素化反応を2回行った。その結果を表1に示した。
【0037】
【表1】
表1中、略号は以下の意味である。
SA :コハク酸
THF:テトラヒドロフラン
GBL:γ−ブチロラクトン
BDO:1,4−ブタンジオール
また、表1中、添加剤の使用量は、5N−HClの重量に対する添加剤の重量%で示した。また、表1中のk(0-2h.)は、一次速度定数を表し、反応終了後の反応生成物に含まれるカルボニル基の減少量から算出した。実施例、比較例共に、転化率及び選択率からわかるように、1回目の反応において、生成物の量が少なくなっているのは、触媒上に生成物、又は原料の一部が吸着されて検出できなかったためである。
【0038】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、炭素質担体に金属を担体内部まで均一に担持することができる。そして、この触媒を使用することにより、特に無水マレイン酸、マレイン酸、無水コハク酸、コハク酸、γ−ブチロラクトン又はこれらの混合物を原料とした接触水素化反応において、比較的温和な反応条件下で、1,4−ブタンジオール及び/又はテトラヒドロフランを高い効率、かつ高い収率で製造することができ、その工業的利用価値は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の触媒粒子AcOH1のRuに関するヒストグラム
【図2】実施例1の触媒粒子AcOH1のSnに関するヒストグラム
【図3】実施例1の触媒粒子AcOH1のPtに関するヒストグラム
【図4】実施例1の触媒粒子AcOH2のRuに関するヒストグラム
【図5】実施例1の触媒粒子AcOH2のSnに関するヒストグラム
【図6】実施例1の触媒粒子AcOH2のPtに関するヒストグラム
【図7】実施例2の触媒粒子アセトン1のRuに関するヒストグラム
【図8】実施例2の触媒粒子アセトン1のSnに関するヒストグラム
【図9】実施例2の触媒粒子アセトン1のPtに関するヒストグラム
【図10】実施例2の触媒粒子アセトン2のRuに関するヒストグラム
【図11】実施例2の触媒粒子アセトン2のSnに関するヒストグラム
【図12】実施例2の触媒粒子アセトン2のPtに関するヒストグラム
【図13】比較例1の触媒粒子S1のRuに関するヒストグラム
【図14】比較例1の触媒粒子S1のSnに関するヒストグラム
【図15】比較例1の触媒粒子S1のPtに関するヒストグラ
【図16】比較例1の触媒粒子S2のRuに関するヒストグラム
【図17】比較例1の触媒粒子S2のSnに関するヒストグラム
【図18】比較例1の触媒粒子S2のPtに関するヒストグラム
Claims (6)
- 炭素質担体にRuとSn、及びPtを組み合わせた担持成分を有する触媒であって、該触媒が炭素数5以下のカルボン酸、又は炭素数5以下のカルボニル化合物が共存した該担持成分を含有する溶液を炭素質担体に含浸して担持せしめることにより製造された触媒であることを特徴とする水素化反応用触媒。
- 炭素質担体にRuとSn、及びPtを組み合わせた担持成分を有する触媒を製造するにあたり、該触媒が炭素数5以下のカルボン酸、又は炭素数5以下のカルボニル化合物が共存した該担持成分を含有する溶液を炭素質担体に含浸して担持せしめることを特徴とする水素化反応用触媒の製造法。
- 炭素数5以下のカルボン酸として酢酸、ギ酸、またはプロピオン酸を用いる請求項2に記載の水素化反応用触媒の製造法。
- 炭素数5以下のカルボニル化合物としてアセトン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、またはプロピオンアルデヒドを用いる請求項2に記載の水素化反応用触媒の製造法。
- カルボン酸類を水素化反応用触媒の存在下、水素と接触させることによりカルボン酸類を水素化する方法において、該水素化反応用触媒が、請求項2乃至4のいずれかに記載の製造法により製造された触媒であることを特徴とするカルボン酸類の水素化反応方法。
- カルボン酸類が、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水コハク酸、コハク酸、及びγ−ブチロラクトンからなる群から選ばれたものである請求項5に記載のカルボン酸類の水素化反応方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP16942896A JP3887845B2 (ja) | 1996-06-28 | 1996-06-28 | 水素化反応用触媒、その製造法、及び該触媒を用いた水素化反応方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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