JP3852514B2 - 炭酸ジアリールの製造法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、A工程で、一酸化炭素と亜硝酸アルキルを反応させて、第1中間体であるシュウ酸ジアルキルを生成させて分離・回収し、
B工程で、そのシュウ酸ジアルキルとフェノール化合物を反応させて、第2中間体であるシュウ酸ジアリールを生成させて分離・回収し(そして、B工程で生成するアルキルアルコールを回収してA工程の原料として再使用し)、
C工程で、そのシュウ酸ジアリールを脱カルボニル反応させて、炭酸ジアリールと一酸化炭素を生成させて、炭酸ジアリールを分離・回収し、
D工程で、その一酸化炭素を回収して、A工程の原料として再使用するという、工業的に全く新規な製造プロセスによる、炭酸ジフェニル(DPC)等の炭酸ジアリールの製造法に関する。
【0002】
炭酸ジフェニル等の炭酸ジアリールは、ビスフェノールA等のヒドロキシ基を複数有するフェノール化合物と縮重合させて、電気・電子材料、工業材料などとして有用なポリカーボネートを製造するための重要な原料である。
【0003】
【従来の技術】
炭酸ジフェニル(DPC)等の炭酸ジアリールの製造法としては、ホスゲンとフェノール等のフェノール化合物を反応させる方法(ホスゲン法)や、炭酸ジアルキルと該フェノール化合物をエステル交換反応させる方法など(非ホスゲン法)が提案されているが、いずれも工業的には満足できるものではなかった。
【0004】
即ち、前記のホスゲン法では、猛毒のホスゲンを使用しなければならないという問題があり、更に生成する炭酸ジアリール中にホスゲンに由来する塩素化合物が不純物としてかなりの量で混入して、炭酸ジアリール製品からその塩素化合物を除去することが極めて困難であるという問題があった(特公昭58−50977号公報)。
【0005】
非ホスゲン法による代表的な炭酸ジアリールの製造法として、炭酸ジアルキルとフェノール化合物をエステル交換反応させる方法(特開平3−291257号公報、特開平4−211038号公報)が知られていた。
しかし、この方法では、エステル交換反応が中間体として炭酸アルキルアリールを経由する2段階の平衡反応であって、炭酸ジアルキルから炭酸アルキルアリールが生成する1段目の反応の速度が遅いという問題があった。このため、種々の特殊な触媒や、複雑な製造工程及び製造装置が提案されていた(特開平4−235951号公報、特開平4−224547号公報)。
【0006】
更に、非ホスゲン法の一つとして炭酸アルキルアリールを不均化反応させる方法(特開平4−9358号公報)も知られていたが、この方法では、炭酸アルキルアリールが前記のエステル交換反応における中間生成物であることから、他の生成物や原料を含有するエステル交換反応の反応液から炭酸アルキルアリールのみを分離することが極めて困難であり、更に炭酸アルキルアリール自体を工業的に生産して入手することも極めて困難であるという問題があった。
【0007】
その他に、『有機合成化学協会誌、5、報47(1948)』記載の「ジカルボン酸ジフェニルエステルの熱分解について(第2報)」において、シュウ酸ジフェニルを高温で熱分解して炭酸ジフェニルを得たとの報告がある。そして、アメリカ特許第4544507号明細書には、シュウ酸ジエステルをアルカリ金属アルコラート触媒の存在下に溶媒中で50〜150℃に加熱することによって炭酸エステルを製造する方法が開示されている。
しかし、前者の方法では、フェノールや二酸化炭素が副生して目的物の選択率が著しく低いという問題があり、後者の方法では、明細書記載の実施例によれば、シュウ酸ジエステルとしてシュウ酸ジフェニルを用いても主生成物は原料のシュウ酸ジフェニルであるという問題がある。
【0008】
この問題を解決する方法として、シュウ酸ジアリールを有機リン化合物の存在下で脱カルボニル反応させる方法が開示されている(特開平8−333307号公報)。この方法は、炭酸ジアリールを高選択率で製造できるものであるが、工業的に実施するには解決すべき点が残されている。例えば、一酸化炭素からスタートして最後にシュウ酸ジアリールの脱カルボニル反応によって炭酸ジアリールを製造する、工業的に有利なプロセスについては何ら記載されていない。また、このようなプロセスにおいて、原料から目的物に至る各工程の副生物を有効に循環使用できる方法も全く知られていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、公知のホスゲン法又は非ホスゲン法による炭酸ジアリールの製造法における前記のような問題点を解決できる新規な炭酸ジアリールの製造法を提供することを課題とする。
即ち、本発明は、一酸化炭素からスタートして非ホスゲン法で(特に一酸化炭素と亜硝酸アルキルを出発原料として最後にシュウ酸ジアリールの脱カルボニル反応によって)炭酸ジアリールを製造する、工業的に有利なプロセスを提供することを課題とする。そして、各工程の副生物を有効に循環使用できるプロセスを提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決する手段】
本発明の課題は、(A−1)一酸化炭素と亜硝酸アルキルを白金族金属触媒の存在下で反応させてシュウ酸ジアルキルを生成させ、(A−2)A−1工程の生成物をシュウ酸ジアルキルを含有する凝縮液と一酸化窒素を含有する非凝縮ガスに分離し、(A−3−1)A−2工程の非凝縮ガスを分子状酸素及びアルキルアルコールと接触させて非凝縮ガス中の一酸化窒素を亜硝酸アルキルに再生し、(A−3−2)A−3−1工程の再生ガスをA−1工程に循環供給すると共に、(A−4)A−2工程の凝縮液からシュウ酸ジアルキルを分離・回収する工程、
(B−1)A−4工程のシュウ酸ジアルキルとフェノール化合物を触媒存在下で反応させてシュウ酸ジアリールを生成させ、(B−2)そのシュウ酸ジアリールを分離・回収する工程、
(C−1)B−2工程のシュウ酸ジアリールを触媒存在下で脱カルボニル反応させて炭酸ジアリールと一酸化炭素を生成させ、(C−2)その炭酸ジアリールを分離・回収する工程、
(D)C−1工程の一酸化炭素を回収しアルカリ処理して、A−3−1工程に循環供給する工程から成ることを特徴とする炭酸ジアリールの製造法によって解決される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、概略、図1に示すような、一酸化炭素と亜硝酸アルキルを反応させて、第1中間体であるシュウ酸ジアルキルを生成させて分離・回収すると共に、亜硝酸アルキルを再生してシュウ酸ジアルキル生成工程に循環供給するA工程(A−1、A−2、A−3−1、A−3−2、A−4工程)、そのシュウ酸ジアルキルとフェノール化合物を反応させて、第2中間体であるシュウ酸ジアリールを生成させて分離・回収するB工程(B−1、B−2工程)、そのシュウ酸ジアリールを脱カルボニル反応させて、炭酸ジアリールと一酸化炭素を生成させ、炭酸ジアリールを分離・回収するC工程(C−1、C−2工程)、その一酸化炭素を回収しアルカリ処理して、A工程の亜硝酸アルキル再生工程に循環供給するD工程を経る、炭酸ジフェニル(DPC)等の炭酸ジアリールを製造するプロセスに従って行われる。
【0012】
本発明のA工程では、次に示す反応式(1)に従って、一酸化炭素(CO)と亜硝酸アルキル(RONO)からシュウ酸ジアルキル(a)と一酸化窒素が生成する(A−1工程:シュウ酸ジアルキル生成工程)。この一酸化窒素は分子状酸素及びアルキルアルコールと反応させることによって亜硝酸アルキルに再生される(A−3−1工程:亜硝酸アルキル再生工程)。そして、亜硝酸アルキルはA工程のシュウ酸ジアルキル生成の原料としてA工程のシュウ酸ジアルキル生成工程に循環供給されて再使用される(A−3−2工程:再生ガス循環供給工程)。また、生成したシュウ酸ジアルキルは蒸留などにより分離・回収される(A−4工程:シュウ酸ジアルキルの分離・回収工程)。
【0013】
【化1】
【0014】
前記の亜硝酸アルキルは式(1)に示す化学式(RONO)で表すことができ、Rは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6の低級アルキル基を示す。亜硝酸アルキルとしては、亜硝酸メチル、亜硝酸エチル、亜硝酸n−プロピル、亜硝酸i−プロピル、亜硝酸n−ブチル、亜硝酸i−ブチルなどの炭素数1〜4の亜硝酸アルキルが好ましい。
【0015】
本発明のB工程では、次に示す反応式(2)に従って、触媒存在下、シュウ酸ジアルキル(a)とフェノール化合物(b)からエステル交換反応によりシュウ酸アルキルアリール(c−1)が生成し、次いで、反応式(4)に従って、触媒存在下、シュウ酸アルキルアリール(c−1)から不均化反応によりシュウ酸ジアリール(a)とシュウ酸ジアルキル(c−2)が生成する(B−1工程:シュウ酸ジアリール生成工程)。また、B工程では、反応式(4)以外に、反応式(3)に従って、触媒存在下、シュウ酸アルキルアリール(c−1)からエステル交換反応によりシュウ酸ジアリール(c−2)及びアルキルアルコール(d)も生成する。生成したシュウ酸ジアリールは蒸留などにより分離・回収される(B−2工程:シュウ酸ジアリールの分離・回収工程)。
【0016】
【化2】
【0017】
反応式(2)、(3)及び(4)において、Rは前記と同様の炭素数1〜6のアルキル基を示し、Arは置換基を有していてもよいアリール基を示す。この置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜6のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。
【0018】
B工程では、反応式(2)〜(4)の反応が全て起っているが、主として反応式(2)のエステル交換反応及び反応式(4)の不均化反応が起こる。即ち、主として、反応式(2)のエステル交換反応によりシュウ酸アルキルアリール(c−1)とアルキルアルコール(d)が生成し、次いで反応式(4)の不均化反応によりシュウ酸ジアリール(c−2)とシュウ酸ジアルキル(a)が生成する。従って、B工程では、結局、シュウ酸ジアルキルとフェノール化合物からシュウ酸ジアリールとアルキルアルコールが生成することになる。
なお、アルキルアルコールは反応系から抜き出されて、A工程の亜硝酸アルキル再生の原料としてA工程の亜硝酸アルキル再生工程に供給されることが工業的に好ましい。
【0019】
本発明のC工程では、例えば、次に示す反応式(5)に従って、触媒存在下、シュウ酸ジアリール(C−2)から脱カルボニル反応により炭酸ジアリール(e)と一酸化炭素が生成する(C−1工程:炭酸ジアリール生成工程)。そして、生成した炭酸ジアリールは蒸留などにより分離・回収される(C−2工程:炭酸ジアリールの分離精製工程)。なお、反応式(5)におけるArは、反応式(2)〜(4)におけるArと同様である。
【0020】
本発明のD工程では、C工程で生成した一酸化炭素が回収されてアルカリ処理され、A工程のシュウ酸ジアルキル生成の原料としてA工程の亜硝酸アルキル再生工程に循環供給される。
【0021】
【化3】
【0022】
前記の本発明では、例えば、A工程で、一酸化炭素と亜硝酸アルキル(特に亜硝酸メチル)を白金族金属触媒の存在下で気相で反応させて、シュウ酸ジアルキル(特にシュウ酸ジメチル)と一酸化窒素を生成させ、シュウ酸ジアルキルを分離・回収すると共に、一酸化窒素を回収して別に設けられている亜硝酸アルキル再生工程に供給して、再生ガスをシュウ酸ジアルキル生成工程に循環供給し(A工程のシュウ酸ジアルキル生成の原料として再使用し)、
B工程で、そのシュウ酸ジアルキルとフェノール化合物(特にフェノール)をエステル交換触媒の存在下で液相で反応させて、シュウ酸ジアリール(特にシュウ酸ジフェニル)とアルキルアルコール(特にメタノール)を生成させ、シュウ酸ジアリールを分離・回収すると共に、アルキルアルコール(特にメタノール)を回収してA工程の亜硝酸アルキル再生に供給し(A工程の亜硝酸アルキル再生の原料として再使用し)、
C工程で、そのシュウ酸ジアリールを有機リン化合物の存在下で液相で脱カルボニル反応させて、炭酸ジアリール(特に炭酸ジフェニル;DPC)と一酸化炭素を生成させ、炭酸ジアリールを分離・回収し、
前記のD工程で、その一酸化炭素を回収しアルカリ処理して、A工程の原料としてA工程の亜硝酸アルキル再生に循環供給する
ことによって、炭酸ジアリール(特に炭酸ジフェニル;DPC)を製造することが工業的に特に好ましい。
【0023】
次に、A工程について詳しく説明する。
A工程の一酸化炭素と亜硝酸アルキルを反応させてシュウ酸ジアルキルと一酸化窒素を生成させる工程(A−1工程)においては、白金族金属触媒が好適に使用される。
白金族金属触媒としては、白金族金属又はその化合物が挙げられるが、白金族金属化合物は還元されて白金族金属の形態で使用されることが好ましい(特公昭61−6057号公報、特公昭61−26977号公報など)。白金族金属としては、例えば、白金金属、パラジウム金属、ロジウム金属、イリジウム金属などが挙げられ、その化合物としては、例えば、これら金属の無機酸塩(硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等)、ハロゲン化物(塩化物、臭化物等)、有機酸塩(酢酸塩、シュウ酸塩、安息香酸塩等)、錯体などが使用される。白金族金属又はその化合物の中では、パラジウム金属又はその化合物が特に好ましい。
【0024】
パラジウム化合物としては、例えば、パラジウムの無機酸塩(硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、リン酸パラジウム等)、パラジウムのハロゲン化物(塩化パラジウム、臭化パラジウム等)、パラジウムの有機酸塩(酢酸パラジウム、シュウ酸パラジウム、安息香酸パラジウム等)、或いはパラジウムの錯体(トリメチルホスフィン等のアルキルホスフィン類、トリフェニルホスフィン等のアリールホスフィン類、ジエチルフェニルホスフィン等のアルキルアリールホスフィン類又はトリフェニルホスファイト等のアリールホスファイト類などを配位子として有する錯体)などが使用される。
【0025】
白金族金属触媒は、前記の白金族金属又はその化合物が不活性な担体に白金族金属換算で好ましくは0.01〜10重量%、更に好ましくは0.2〜2重量%担持されている固体触媒の形態で使用されることが工業的に好ましい。例えば、パラジウム金属又はその化合物が、活性炭、アルミナ(α−アルミナ等)、シリカ、珪藻土、軽石、ゼオライト、モレキュラーシーブ、スピネルなどの不活性な担体に前記担持量で担持されたものが好ましい。
白金族金属化合物が担体に担持された固体触媒を使用する場合は、担持された白金族金属化合物を、予め水素等の還元性物質で白金族金属に還元して使用するか、又は反応前に反応器内で一酸化炭素等の還元性物質で白金族金属に還元して使用することが好ましい。なお、白金族金属触媒は公知の方法(含浸法、蒸発乾固法など)により調製される。
【0026】
A−1工程で使用される白金族金属触媒には、例えば、鉄又はその化合物を含有させることができる(特開昭59−80630号公報)。
鉄又はその化合物としては、金属鉄、鉄(II)化合物又は鉄(III) 化合物が挙げられる。鉄(II)化合物としては、例えば、硫酸第一鉄、硝酸第一鉄、塩化第一鉄、硫酸第一鉄アンモニウム、乳酸第一鉄、水酸化第一鉄等が使用され、鉄(III) 化合物としては、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸第二鉄アンモニウム、乳酸第二鉄、水酸化第二鉄、クエン酸第二鉄等が使用される。鉄又はその化合物は、白金族金属:鉄(原子比)が好ましくは10000:1〜1:4、更に好ましくは5000:1〜1:3の範囲内になるように使用される。なお、鉄又はその化合物を含有する触媒は公知の方法により調製される。
【0027】
A−1工程で使用される一酸化炭素は純粋なものでもよいが、窒素などの不活性ガスで希釈されていてもよく、あるいは少量の水素ガス又はメタンを含んでいてもよい。更に、本発明では、C−1工程で生成する一酸化炭素もA−1工程で使用することができる。C−1工程で生成する一酸化炭素は、反応で消費された一酸化炭素や循環ガスのパージにより失われる一酸化炭素を補うため、D工程でアルカリ処理された後、亜硝酸アルキル再生工程(A−3−1工程)に供給され、A−1工程で再使用される。
【0028】
A−1工程の反応は、例えば、一酸化炭素及び亜硝酸アルキルを含有する原料ガスを白金族金属触媒と気相で接触させることによって行われる(特公昭61−6057号公報、特公昭61−26977号公報など)。このとき、原料ガスと白金族金属触媒との接触時間は10秒以下、更には0.2〜5秒であることが好ましく、反応温度は50〜200℃、更には80〜150℃であることが好ましい。また、反応圧力は常圧〜10kg/cm2 G、更には常圧〜5kg/cm2 Gであることが好ましいが、2〜5kg/cm2 Gの加圧であることが特に好ましい。なお、反応器としては、単管式、又は多管式の熱交換器型反応器が有効である。
【0029】
前記原料ガス中の一酸化炭素の濃度は2〜90容量%の範囲で選ばれる。また、原料ガス中の亜硝酸アルキルの濃度は広い範囲で変えられるが、満足できる反応速度を得るためには、原料ガス中の濃度が1容量%以上となるように亜硝酸アルキルを存在させることが好ましい。原料ガス中の亜硝酸アルキルの濃度は、例えば、5〜30容量%の範囲で選ばれる。
【0030】
A−1工程では、前記のようにして、シュウ酸ジアルキルを含有する生成物(例えば、反応ガス)が得られる。
次いで、この生成物(例えば、反応ガス)は凝縮器に導かれてシュウ酸ジアルキルが凝縮する温度に冷却され、シュウ酸ジアルキルを含有する凝縮液と一酸化窒素を含有する非凝縮ガスに分離される(A−2工程)。このとき、シュウ酸ジアルキルが非凝縮ガスに同伴することを防ぐために、該生成物をアルキルアルコールと接触させながらそのアルコールの沸点以下の温度で冷却して吸収させることが好ましい。例えば、目的物がシュウ酸ジメチルの場合、該生成物100重両部を30〜60℃でメタノール0.001〜0.1容量部と接触させることが好ましい。また、この工程の操作圧力は常圧〜10kg/cm2 G、更には常圧〜5kg/cm2 Gであることが好ましいが、2〜5kg/cm2 Gの加圧であることが特に好ましい。アルキルアルコールとしては、亜硝酸アルキルの構成成分であるアルキルアルコールが使用される。
【0031】
次に、A−2工程の凝縮液からシュウ酸ジアルキルが分離・回収される(A−4工程)。この操作は、凝縮液が目的物のシュウ酸ジアルキルの他に、炭酸ジアルキル、ギ酸アルキル等の副生物を少量含有するため、例えば、凝縮液を蒸留塔に導いて通常の操作で蒸留することによって行われる。分離・回収されたシュウ酸ジアルキルはB工程に供給される。
【0032】
一方、A−2工程の非凝縮ガスは、未反応の一酸化炭素及び亜硝酸アルキル以外に、A−1工程で生成した一酸化窒素を含んでいるので、一酸化窒素を亜硝酸アルキルに再生する工程に導かれる。この亜硝酸アルキルの再生は、非凝縮ガスを再生塔の底部に導いて分子状酸素及びアルキルアルコールと接触させる(一酸化窒素を分子状酸素及び低級アルコールと反応させる)ことによって行われる(A−3−1工程)。そして、再生塔から導出されるガス(再生ガス)がA−1工程に循環供給されて(A−3−2工程)、再使用される。
【0033】
このとき、アルキルアルコールとしては、前記の亜硝酸アルキルの構成成分であるアルキルアルコールが使用されるが、本発明では、B工程のエステル交換反応で反応系から除去されるアルキルアルコールを回収して使用することが好ましい。また、分子状酸素としては、酸素ガス又は空気などが使用される。
なお、再生塔としては、充填塔、気泡塔、スプレー塔、段塔などの通常の気液接触装置が用いられる。
【0034】
前記の亜硝酸アルキルの再生においては、再生ガス中の一酸化窒素の濃度が2〜7容量%になるように反応が制御される。
このため、再生塔に導入される非凝縮ガス中の一酸化窒素1モルに対して、分子状酸素を0.08〜0.2モル供給して、再生の際の圧力におけるアルキルアルコールの沸点以下(例えば、0℃からアルキルアルコールの沸点まで)の温度で、非凝縮ガスと分子状酸素及びアルキルアルコールを接触させることが好ましい。アルキルアルコールの供給量は非凝縮ガス中の一酸化窒素1容量部に対して1〜5容量部であることが好ましく、接触時間は0.5〜20秒が好ましい。また、操作圧力は常圧から10kg/cm2 G、更には常圧から5kg/cm2 Gの範囲が好ましいが、2〜5kg/cm2 Gの範囲であることがより好ましい。
【0035】
本発明では、前記の亜硝酸アルキル再生工程(A−3−1工程)に、後述するD工程より、アルカリ処理された(アルカリ水溶液による洗浄及び/又はアルカリ系吸着剤との接触などが行われた)一酸化炭素が供給される。アルカリ処理された一酸化炭素はA−3−1工程の再生塔の底部に導入されることが好ましい。再生塔の底部には、例えば、前記のA−2工程の非凝縮ガスがA−3−1工程に供給される供給ラインから非凝縮ガスと混合されて導入されてもよく、別途独立して導入されてもよい。A−3−1工程にアルカリ処理された一酸化炭素を供給することにより、A−1工程でのシュウ酸ジアルキルの選択率の低下及び触媒活性の低下を効果的に抑えることができる。
【0036】
A工程が連続プロセスで実施される場合、前記の一酸化炭素の供給により、反応で消費される一酸化炭素や系外に損失する一酸化炭素を有効に補うことができる。また、系外に損失する窒素成分を補うために、A−3−1工程の再生塔の底部に亜硝酸アルキル、窒素酸化物(一酸化窒素、二酸化窒素、三酸化二窒素、四酸化二窒素等)、又は硝酸が導入される。
このようにして、一酸化炭素が補給され(必要に応じて窒素成分も補給され)、再生された亜硝酸アルキルを含有するガス(再生ガス)がA−1工程に循環供給される。
【0037】
次に、B工程について詳しく説明する。
本発明のB工程は、A工程で得られたシュウ酸ジアルキルとフェノール化合物を反応させて、第2中間体であるシュウ酸ジアリールを生成させ(B−1工程)、そのシュウ酸ジアリールを分離・回収してC工程に供給する(B−2工程)ものである。
【0038】
フェノール化合物としては、そのアリール基が、フェニル基又はナフチル基などである化合物が挙げられる。アリール基は同一であっても異なっていもよく、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、炭素数1〜12のアルキル基(メチル基、エチル基等)、炭素数1〜12のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等)、ニトロ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)が挙げられる。これらの置換基を有するアリール基には、o−、m−、p−、n−、i−、s−、t−等の各種異性体が含まれる。フェノール化合物の中では、フェノールが好ましい。
【0039】
B−1工程としては、例えば、触媒存在下、生成するアルキルアルコールを蒸発させて除去しながら、シュウ酸ジアルキルとフェノール化合物とのエステル交換反応を行わせてシュウ酸アルキルアリールを生成させ〔反応式(2)〕、次いで、触媒存在下、シュウ酸ジアルキルを蒸発させて除去しながら、シュウ酸アルキルアリールの不均化反応を主体とする反応を行わせてシュウ酸ジアリールを生成させる〔反応式(4)〕工程を好適に挙げることができる。このB−1工程の反応は液相で行われることが好ましい。
【0040】
前記のB−1工程では、例えば、シュウ酸ジアルキル、フェノール化合物、及び触媒を含む原料を第1反応蒸留塔へ供給して、アルキルアルコールを主成分とする第1蒸気を第1反応蒸留塔の頂部から抜き出しながら、シュウ酸ジアルキルとフェノール化合物とのエステル交換反応を触媒存在下で行わせ、そして、第1反応蒸留塔の底部からエステル交換反応による反応液を抜き出して第2反応蒸留塔へ供給し、シュウ酸ジアルキルを主成分とする第2蒸気を第2反応蒸留塔の頂部から抜き出しながら、前記触媒の存在下でシュウ酸アルキルアリールの不均化反応を行わせることが好ましい。
第2反応蒸留塔の頂部から抜き出された第2蒸気は、必要に応じてアルキルアルコールを留去し、シュウ酸ジアルキルやフェノール化合物を主成分とする留分を第1反応蒸留塔へ供給して再使用することが好ましい。
【0041】
即ち、B−1工程では、第1反応蒸留塔の多数の棚段部分(又は充填材部分)の上部の区域へ、シュウ酸ジアルキル、フェノール化合物、及び触媒をそれぞれ別々に又は混合液で供給して反応を行うことが好ましい。また、前記の第2反応蒸留塔の棚段部分(又は充填材部分)の上部の区域へ、第1反応蒸留塔の底部から抜き出される反応液を供給して反応を行うことが好ましい。
【0042】
前記の第1及び第2反応蒸留塔は多数の棚段を有する蒸留塔からなる反応蒸留塔であるか、又は充填材が上部に充填された反応蒸留塔で、理論段数が少なくとも2段以上、更には5〜100段、特に7〜50段の反応蒸留塔であることが好ましい。多段蒸留塔型の反応蒸留塔としては、例えば、泡鐘トレイ、多孔板トレイ、バブルトレイなどを用いた棚段式蒸留塔形式のもの、或いはラシヒリング、レッシングリング、ポールリングなどの各種充填物を充填した充填式蒸留塔形式のものを使用することができ、更に棚段式及び充填式を併せもつ反応蒸留塔であっても使用することができる。
【0043】
B−1工程の反応が反応液を第1及び第2反応蒸留塔内を流下させながら液相状態で行われる場合には、その反応温度は、各原料及び反応生成物を含有している反応液が溶融する温度以上であって、しかも生成物であるシュウ酸アルキルアリールやシュウ酸ジアリールが熱分解しないような温度であることが好ましい。本発明では、この反応温度は約50〜350℃、更には100〜300℃、特に120〜280℃程度であることが好ましい。
【0044】
B−1工程における反応の圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれであってもよいが、副生物であるアルキルアルコールやシュウ酸ジアルキルを蒸発させることができる温度及び圧力とすることが好ましい。例えば、反応温度が約50〜350℃であれば、反応圧力は0.01mmHg〜100kg/cm2 G、更には0.1mmHg〜50kg/cm2 G程度であることが好ましい。
【0045】
また、B−1工程における反応の時間(多段蒸留塔からなる反応蒸留塔を用いた場合には第1及び第2反応蒸留塔内での反応液の滞留時間)は反応条件や反応蒸留塔の形式及び操作条件などによって異なるが、例えば、反応温度が約50〜350℃であれば、約0.01〜50時間、更には0.02〜10時間、特に0.05〜5時間程度であることが好ましい。
【0046】
また、B−1工程で使用されるシュウ酸ジアルキルとフェノール化合物の割合は触媒の種類や反応条件によって異なるが、フェノール化合物が、例えば、供給されるシュウ酸ジアルキルに対して0.001〜1000倍モル、更には0.1〜100倍モル、特に0.5〜20倍モル程度であることが好ましい。
また、B−1工程で使用される触媒の量は、触媒の種類、反応装置の形式及びサイズ、原料の種類及び組成、更に反応条件によって異なるが、例えば、シュウ酸ジアルキルとフェノール化合物の合計量に対する割合で表して約0.0001〜50重量%、更には0.001〜30重量%、特に0.005〜10重量%程度であることが好ましい。
【0047】
なお、B−1工程で使用される触媒は、例えば、アルカリ金属化合物、カドミウム化合物、ジルコニウム化合物、鉛系化合物、鉄系化合物、銅族化合物、亜鉛系化合物、有機スズ化合物、アルミウムのルイス酸化合物、チタンのルイス酸化合物、及びバナジウムのルイス酸化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の公知の可溶性のエステル交換触媒であることが好ましい。これらエステル交換触媒の中では、アルカリ金属化合物、ジルコニウム化合物、有機スズ化合物、チタンのルイス酸化合物が好ましい。
【0048】
前記のアルカリ金属化合物としては、例えば、炭酸リチウム、ジブチルアミノリチウム、アセチルアセトナトリチウムなどが挙げられ、ジルコニウム化合物としては、例えば、テトラキスアセチルアセトナトジルコニウム、ジルコノセンなどが挙げられる。
前記の有機スズ化合物としては、例えば、Ph4 Snや、Sn(OAc)4 、Bu2 Sn(OAc)2 、Bu3 SnOAc、Ph3 SnOAc等の有機スズアセトキシ化合物や、Sn(OPh)4 、Bu2 Sn(OPh)2 等の有機スズアルコキシ化合物や、Bu2 SnO、Bu2 SnO(OH)、Ph3 SnOH、Bu2 SnCl2 などが挙げられる。また、前記のチタンのルイス酸化合物としては、TiX3 、Ti(OAc)3 、Ti(OBu)3 、Ti(OPh)3 、TiX4 、Ti(OAc)4 、Ti(OBu)4 、Ti(OPh)4 などが挙げられる。但し、Acはアセチル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。
【0049】
B−1工程で反応系外に除去されるアルキルアルコールは、シュウ酸ジアルキル生成のためにA−3−1工程に供給される。例えば、前記の第1反応蒸留塔の頂部から抜き出されるアルキルアルコールを主成分とする第1蒸気を冷却・凝縮して回収されるアルキルアルコールを、前記の亜硝酸アルキル再生に使用されるアルキルアルコールとして、A−3−1工程の再生塔に供給することができる。回収されるアルキルアルコールはアルキルアルコールを主成分としているので、通常はそのままA−3−1工程に供給されるが、フェノール化合物等の不純物を含む場合は、予め蒸留等により精製した後にA−3−1工程に供給することが好ましい。
【0050】
B−1工程で得られる反応液は、原料及び触媒と、反応中間体のシュウ酸アルキルアリール(特にシュウ酸メチルフェニル)及び目的物のシュウ酸ジアリール(特にシュウ酸ジフェニル)や、アルキルアルコール(特にメタノール)及びシュウ酸ジアルキル(特にシュウ酸ジメチル)を主として含有していて、その他の副生物は極めて微量である。このため、例えば、前記の第2反応蒸留塔から得られる反応液から通常の蒸留操作などにより目的物のシュウ酸ジアリールを容易に分離・回収することができる(B−2工程)。
【0051】
この分離・回収の具体例としては、蒸留装置及び/又は蒸発装置で、前記の反応によって得られた反応液を蒸留及び/又は蒸発操作してシュウ酸ジアリールを分離・回収する方法などを挙げることができる。
【0052】
前記の第2反応蒸留塔の底部から抜き出される反応液(缶液)からのシュウ酸ジアリールの分離・回収は、例えば、蒸発器でその反応液の大部分を蒸発させて触媒成分を分離し、その蒸発分を第1蒸留塔へ供給し、第1蒸留塔の頂部から軽質分の蒸気(シュウ酸アルキルアリールとフェノール化合物)を抜き出して凝縮させると共に、第1蒸留塔の底部からシュウ酸ジアリールを主成分とする缶液を抜き出して第2蒸留塔へ供給し、第2蒸留塔の頂部からシュウ酸ジアリールの蒸気を抜き出して回収する方法により行うことができる。
この方法においては、簡略化して第1蒸留塔のみで上記の分離・回収を行うことも可能である。例えば、蒸発器で触媒成分を分離して得られた蒸発分を該蒸留塔へ供給し、その頂部から軽質分の蒸気(シュウ酸アルキルアリールとフェノール化合物)を抜き出すと共に、蒸留塔下部からサイドカットによりシュウ酸ジアリールを回収する方法により行うことができる。
【0053】
また、反応液をまず第1蒸留塔で蒸留して、第1蒸留塔の頂部から軽質分の蒸気(シュウ酸アルキルアリールとフェノール化合物)を抜き出して除去すると共に、第1蒸留塔の底部からシュウ酸ジアリールを主成分とする缶液を抜き出して第2蒸留塔へ供給し、次いで第2蒸留塔の底部から触媒成分を含む缶液を得ると共に、第2蒸留塔の頂部からシュウ酸ジアリールの蒸気を抜き出して回収する方法によって行うこともできる。
【0054】
これらの方法によって回収されるシュウ酸ジアリールは、使用する蒸留塔が段数の比較的低いものであってもかなり高純度で得ることができ、例えば、97.0重量%、更には99.0重量%以上の純度のものを容易に得ることができる。即ち、前記の反応液には、不純物としてフェノール化合物やシュウ酸アルキルアリール等が含有されているが、これらはシュウ酸ジアリールとの沸点差が大きく分離が容易である。分離・回収されたシュウ酸ジアリールをC工程で使用する場合、その純度は97.0重量%以上で充分であるが、特に上記不純物(フェノール化合物、シュウ酸アルキルアリール等)がそれぞれ1.0重量%以下、特に0.5重量%以下、更には0.1重量%以下であることが好ましい。
なお、第1蒸留塔の頂部から回収されたシュウ酸アルキルアリールとフェノール化合物を主成分とする凝縮液は、前記の第2反応蒸留塔へ供給して再使用することが好ましい。
【0055】
次に、C工程について詳しく説明する。
本発明のC工程は、B−2工程で得られたシュウ酸ジアリールを脱カルボニル反応させて、炭酸ジアリールと一酸化炭素を生成させ(C−1工程)、その反応混合物から炭酸ジアリールを分離・回収する(C−2工程)ものである。この脱カルボニル反応は、触媒存在下、液相で行われることが好ましい。
【0056】
脱カルボニル反応が液相で行われる場合、触媒としては、シュウ酸ジアリールの脱カルボニル反応を比較的低温(約100〜350℃)で行うことができ、かつ炭酸ジアリールを高選択率(少なくとも50%以上、特に60〜100%)で得ることができる触媒が好ましい。
【0057】
液相反応で使用される脱カルボニル触媒としては、例えば、有機リン化合物、好ましくは少なくとも1個の炭素−リン結合を有する有機リン化合物からなる触媒が挙げられる。このような有機リン化合物としては、式(w)〜(z)で示されるホスフィン(w)、ホスフィンオキシド(x)、ホスフィンジハライド(y)及びホスホニウム塩(z)から選ばれる少なくとも一種の有機リン化合物からなる触媒を好適に挙げることができる。
【0058】
【化4】
【0059】
〔式中、R1 〜R13は、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数6〜16のアリール基及び炭素数7〜22のアラルキル基から選ばれる少なくとも一種の基を示し、Xは対イオンを形成しうる原子又は原子団を示し、Y1 及びY2 は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子をそれぞれ示す。化合物(w)〜(z)は少なくとも1つが前述の基を有している。〕
【0060】
前記のR1 〜R13で示される基としては、例えば、炭素数1〜16のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基等)、炭素数6〜16のアリール基(フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、メトキシナフチル基、クロロナフチル基等)、炭素数7〜22のアラルキル基(ベンジル基、フェネチル基、4−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、p−メチルフェネチル基等)が挙げられる。
【0061】
前記のアリール基及びアラルキル基は、その芳香環を形成している炭素と直接に結合する置換基として、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜16のアルコキシ基、ニトロ基及びハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)から選ばれる少なくとも1個の置換基を有していてもよい。
【0062】
前記の有機リン化合物(w)〜(z)としては、それぞれが有する基(R1 〜R13)の全てがアリール基であるものが好ましいが、その1〜2個(特に2個)がアリール基であって、残部がアルキル基又はアラルキル基であるものであってもよい。
【0063】
式(w)のR1 〜R3 の全てがアリール基であるホスフィンとしては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリス(4−クロロフェニル)ホスフィン、トリス(4−トリル)ホスフィンが挙げられる。
【0064】
式(x)のR4 〜R6 の全てがアリール基であるホスフィンオキシドとしては、例えば、トリフェニルホスフィンオキシド、トリス(4−クロロフェニル)ホスフィンオキシド、トリス(4−トリル)ホスフィンオキシドが挙げられる。
【0065】
式(y)のR7 〜R9 の全てがアリール基であるホスフィンジハライドとしては、例えば、トリフェニルホスフィンジクロライド、トリフェニルホスフィンジブロマイドが挙げられる。ホスフィンジハライドの中では、トリフェニルホスフィンジクロライド等のトリアリールホスフィンジクロライドが好ましい。
【0066】
式(z)のホスホニウム塩としては、R10〜R13の全てがアリール基であって、しかも対イオンX- がハロゲンイオン、脂肪族カルボン酸イオン又はフルオロボレートイオンなどであるホスホニウム塩が好適であるが、R10〜R13の1〜3個、特に2〜3個がアリール基であって、残部がアラルキル基又はアルキル基であり、更に対イオンX- がハロゲンイオン、脂肪族カルボン酸イオン又はフルオロボレートイオンであるものであってもよい。
【0067】
式(z)のR10〜R13の全てがアリール基であるホスホニウム塩としては、例えば、テトラフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、4−クロロフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、4−クロロフェニルトリフェニルホスホニウムブロマイド、4−エトキシフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、4−エトキシフェニルトリフェニルホスホニウムブロマイド、4−メチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、4−メチルフェニルトリフェニルホスホニウムブロマイド等の、対イオンX- がハロゲンイオンであるホスホニウム塩が挙げられる。
【0068】
前記の有機リン化合物の中では、テトラアリールホスホニウム塩が好ましい。その中ではテトラアリールホスホニウムハライドが更に好ましいが、中でもテトラフェニルホスホニウムクロライド等のテトラアリールホスホニウムクロライドが特に好ましい。
有機リン化合物からなる脱カルボニル触媒は、単独であってもまた二種以上の混合物であってもよく、更に反応液中に均一に溶解及び/又は懸濁されていてもよい。C−1工程で使用される有機リン化合物の量はシュウ酸ジアリールに対して0.001〜50モル%、更には0.01〜20モル%程度であることが好ましい。
【0069】
本発明では、前記の有機リン化合物からなる脱カルボニル触媒には、必要に応じて、無機又は有機のハロゲン化合物系添加剤が少なくとも一種添加されることが好ましい。有機リン化合物として、ホスフィンやホスフィンオキサイドを使用する場合や、ハライド及びハイドロジェンジハライド以外のホスホニウム塩を使用する場合は、このハロゲン化合物系添加剤を添加することが好ましい。添加されるハロゲン化合物系添加剤の量は、有機リン化合物に対して0.01〜150倍モル、更には0.05〜100倍モル程度であることが好ましい。
【0070】
無機ハロゲン化合物系添加剤としては、例えば、アルミニウムのハロゲン化物(塩化アルミニウム、臭化アルミニウム等)、白金族金属のハロゲン化物(塩化白金、塩化ルテニウム、塩化パラジウム等)、リンのハロゲン化物(五塩化リン等)、硫黄のハロゲン化物(塩化チオニル等)、ハロゲン化水素(塩化水素等)、ハロゲン単体(塩素等)が挙げられる。
また、有機ハロゲン化合物系添加剤としては、例えば、飽和炭素にハロゲン原子が結合している構造(C−Hal)や、カルボニル炭素にハロゲン原子が結合している構造(CO−Hal)を有するものなどが好適である。このような有機ハロゲン化合物系添加剤としては、例えば、ハロゲン化アルキル(クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、塩化ブチル等の塩化アルキルなど)、ハロゲン化アラルキル(塩化ベンジル等の塩化アラルキルなど)、ハロゲン置換脂肪族カルボン酸(クロロ酢酸、ブロモ酢酸等)、酸ハロゲン化物(塩化オキサリル、塩化プロピオニル、塩化ベンゾイル等の酸塩化物など)が挙げられる。但し、Halは塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を表す。
【0071】
脱カルボニル反応では、例えば、シュウ酸ジアリールと有機リン化合物を主成分とする触媒(及び必要に応じてハロゲン化合物系添加剤)とを反応器に供給し、発生する一酸化炭素を除去しながら、シュウ酸ジアリールを液相で脱カルボニル反応させて炭酸ジアリールを生成させることが好ましい。このとき、反応温度は100〜450℃、更には160〜400℃、特に180〜350℃であることが好ましい。また、反応圧力は特に制限されるものではなく、例えば、10mmHg〜10kg/cm2 Gの範囲であればよいが、C−1工程で生成する一酸化炭素をD工程を経てA−3−1工程に供給することを考慮すれば、常圧から10kg/cm2 G、更には常圧から5kg/cm2 G、特に2〜5kg/cm2 Gの範囲であることが好ましい。
反応に特別の溶媒は必要とされないが、必要に応じて、ジフェニルエーテル、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリドン等の非プロトン性の溶媒を使用してもよい。
【0072】
C−1工程における反応器としては、触媒存在下で、シュウ酸ジアリールを脱カルボニル反応させて、一酸化炭素と共に炭酸ジアリールを生成させることができるものであれば、どのような形式の反応器でも使用できる。例えば、脱カルボニル反応が液相で行われる場合、1槽又は多槽式の完全混合型反応器(攪拌槽)、塔型反応器などを用いることができる。反応器の材質は脱カルボニル反応における充分な耐熱性があれば特に制限されるものではなく、例えば、ガラス、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム合金、ニッケル合金等が適宜使用される。
【0073】
C−1工程における脱カルボニル反応の反応液には未反応のシュウ酸ジアリールや触媒が含有されているので、この反応液から炭酸ジアリールを分離・回収するには、流下膜式蒸発器、薄膜蒸発器などの蒸発装置で触媒を分離して回収した後、この蒸発分をある程度の理論段数(特に5〜50段)を有する充填塔や棚段塔などの蒸留装置を用いて蒸留する方法が好適に用いられる(C−2工程)。
また、反応液を前記の充填塔や棚段塔などの蒸留装置で蒸留して、塔頂部から炭酸ジアリールを抜き出すと共に、塔底部から未反応のシュウ酸ジアリールや触媒を含有する缶液を抜き出す方法も用いられる。抜き出された缶液は脱カルボニル反応の反応器へ循環供給される。
このようにして、上記の反応液から炭酸ジアリールを分離・回収して高純度の炭酸ジアリールを得ることができる。
【0074】
次に、D工程について詳しく説明する。
本発明では、C−1工程で生成する一酸化炭素が回収されアルカリ処理されて、A−1工程でのシュウ酸ジアルキル生成のためにA−3−1工程に循環供給される(D工程)。このとき、A−3−1工程よりもC−1工程の反応圧力が低い場合は圧縮機で昇圧されて供給される。
【0075】
アルカリ処理は、C−1工程で生成し回収された一酸化炭素をアルカリ水溶液と接触させる方法や、アルカリ系吸着剤と接触させる方法により行われる。これらはそれぞれ単独で行っても組み合わせて行ってもよいが、アルカリ水溶液と接触させる方法が有効である。
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物や炭酸塩が使用されるが、水酸化ナトリウムが好ましい。これらアルカリ金属又はアルカリ土類金属の化合物の濃度は1〜50重量%程度であることが好ましい。また、アルカリ系吸着剤としては、ゼオライト、マグネシア、酸化亜鉛、活性炭や、それらに塩基性のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物(金属を含む)が担持されたものなどが使用される。
【0076】
アルカリ処理の温度は0〜100℃、更には10〜50℃であることが好ましく、そのときの圧力は常圧でも加圧でもよい。また、処理(接触)時間は一酸化炭素中に含まれるハロゲン化合物を効果的に除去できれば特に限定されない。なお、アルカリ処理の装置としては、通常の吸収塔やスクラバーなどの簡単な装置を使用することができる。
【0077】
このアルカリ処理により、C−1工程で生成する一酸化炭素をA−1工程に循環供給した際のA−1工程の白金族金属触媒の活性低下を抑えることができる。また、本発明では、アルカリ処理された一酸化炭素をA−3−1工程の再生塔に循環供給することにより、A−1工程での二酸化炭素の生成を効果的に抑えることができる。なお、アルカリ処理では、C−1工程で生成する一酸化炭素中に含まれるイオン性ハロゲン化合物が効果的に除去される。一酸化炭素中に含まれるイオン性ハロゲン化合物としては、例えば、イオン性塩素化合物(塩化水素、塩素など)が挙げられる。
更に、本発明では、このアルカリ処理により、一酸化炭素中に含まれる微量のフェノールや二酸化炭素を除去することもでき、A−1工程への不純物の混入及び不活性ガスの増加を抑えることができる。
【0078】
また、本発明では、必要に応じて、前記のアルカリ処理の前及び/又は後に、活性炭やアルミナ等の吸着剤による処理を行うことが好ましい。この処理を行うことによって、C−1工程で生成する一酸化炭素から有機物(非イオン性塩素化合物など)を除去してA−1工程のシュウ酸ジメチルを生成する反応への悪影響を防ぐことができる。
【0079】
以上のようにして、シュウ酸ジアリールの脱カルボニル反応で反応系外へ除去される一酸化炭素を回収して、シュウ酸ジアルキルを生成する反応に影響を与える(触媒活性の低下やシュウ酸ジアルキルの選択率の低下を引き起こす)ことなく、シュウ酸ジアルキル生成に再使用することができる。
【0080】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、分析はガスクロマトグラフィーにより行った。また、シュウ酸ジメチル(DMO)の空時収量(STY:g/L・hr)及び選択率(%)は下式により求めた。但し、Lはリットルを示す。
【0081】
【数1】
【0082】
【数2】
(式中、aはシュウ酸ジメチル、bは炭酸ジメチル、cは二酸化炭素の生成モル数をそれぞれ表す。)
【0083】
実施例1
〔シュウ酸ジメチルの製造1〕
内径27.1mm、高さ500mmチューブよりなるステンレス製反応器に、ペレット状α−アルミナ(直径5mm、長さ3mm)にパラジウム(金属)が0.5重量%担持された固体触媒を充填した。次いで、反応器のシェル側に熱水を通して触媒層の温度を103〜115℃に保持した後、触媒層の上部から、ダイアフラム式ガス循環ポンプにより、予め熱交換器で90℃に予熱した原料ガス(組成:一酸化炭素22.0容量%、亜硝酸メチル10.0容量%、一酸化窒素4.0容量%、メタノール5.2容量%、二酸化炭素1.7容量%、窒素57.1容量%)を、1.15Nm3 /hr、2kg/cm2 Gで供給して、シュウ酸ジメチルを製造した。
【0084】
触媒層を通過したガス(反応器出ガス)を、ラシヒリングを充填した気液接触吸収塔(内径43mm、高さ1000mm)の塔底に導いて、その塔頂から導入したメタノール0.42L/hrと約35℃(塔頂温度30℃、塔底温度40℃)で接触させた。そして、塔底から、凝縮液(組成:シュウ酸ジメチル42.6重量%、炭酸ジメチル1.8重量%、ギ酸メチル0.03重量%、メタノール42.6重量%)0.3kg/hrを得て、塔頂から、非凝縮ガス(組成:一酸化炭素16.2容量%、亜硝酸メチル4.9容量%、一酸化窒素8.1容量%、メタノール15.9容量%、二酸化炭素1.8容量%、窒素53.1容量%)1.23Nm3 /hrを得た。シュウ酸ジメチルの空時収量(STY)は450g/L・hr、選択率は96.3%であった。
【0085】
この非凝縮ガスに酸素13.8NL/hr及び一酸化窒素0.5NL/hrを混合したガスを、気液接触式再生塔(内径83mm、高さ1000mm)の塔底に導いて、その塔頂から導入したメタノール0.33L/hrと塔頂温度30℃、塔底温度40℃で接触させ、ガス中の一酸化窒素を亜硝酸メチルに再生した。再生塔の塔頂から導出された再生ガス(組成:一酸化炭素18.2容量%、亜硝酸メチル10.4容量%、一酸化窒素4.2容量%、メタノール5.4容量%、二酸化炭素2.0容量%、窒素53.0容量%)1.1Nm3 /hrは、前記循環ポンプに導いて2.1kg/cm2 Gに昇圧し、一酸化炭素49NL/hr(2.1kg/cm2 G)を補給した後、前記反応器に供給した。その結果、反応成績は長時間(200時間以上)安定していた。
再生塔の塔底から導出された、5.7重量%の水を含有するメタノール0.48L/hrは、蒸留により水を除去した後、再生塔におけるメタノール源として再使用した。
【0086】
一方、前記の凝縮液は、その50時間分を貯蔵して、蒸留塔(内径150mm、高さ7500mm、塔底部容量100L)でバッチ蒸留した(塔底温度140℃、圧力350mmHg)。そして、純度99.9重量%のシュウ酸ジメチル5.8kgを得た。
【0087】
〔シュウ酸ジフェニルの製造〕
前記のシュウ酸ジメチルの製造1で得られたシュウ酸ジメチルを用いて、以下のようにシュウ酸ジフェニルを製造した。
1L容のボトムフラスコを備えたオールダーショー(内径32mm、50段)の上から12段目に、フェノール54.1重量%、シュウ酸ジメチル45.3重量%、テトラフェノキシチタン0.5重量%を含有する溶液を600ml/hrで供給すると共に、ボトムフラスコをマントルヒーターで190℃に加熱し、塔頂部からの蒸気を冷却器で凝縮して還流比2で抜き出しながら、エステル交換反応を行った。
塔の状態が安定した時点で(供給を開始して4時間後)、塔底液の組成は、シュウ酸ジフェニル6.23重量%、シュウ酸メチルフェニル29.95重量%、シュウ酸ジメチル23.88重量%、フェノール39.41重量%であり、その抜き出し量は約603g/hrであった。このとき、塔頂からは、メタノール99.7重量%、シュウ酸ジメチル0.3重量%の組成の液を約44g/hrで抜き出した。
【0088】
このエステル交換反応の塔底液を、前記と同様のオールダーショーの上から12段目に、200mmHgの減圧下、600ml/hrで供給すると共に、ボトムフラスコをマントルヒーターで200℃に加熱し、塔頂部からの蒸気を冷却器で凝縮して還流することなく抜き出しながら、不均化反応を行った。
塔の状態が安定した時点で(供給を開始して4時間後)、塔底液の組成は、シュウ酸ジフェニル65.27重量%、シュウ酸メチルフェニル18.43重量%、シュウ酸ジメチル1.02重量%、フェノール13.93重量%であり、その抜き出し量は約258g/hrであった。このとき、塔頂からは、メタノール1.57重量%、シュウ酸ジメチル2.97重量%、フェノール48.51重量%、シュウ酸メチルフェニル2.97重量%、シュウ酸ジフェニル0.42重量%の組成の液を約371g/hrで抜き出した。
【0089】
この不均化反応の塔底液を、回転薄膜式蒸発器(伝熱面積0.1m2 )に、15mmHgの減圧下、200ml/hrで供給すると共に、蒸発器を熱媒で200℃に加熱して、シュウ酸ジメチル、フェノール、シュウ酸メチルフェニル、及びシュウ酸ジフェニルを連続で蒸発させた。得られた蒸気を、5×5mmのヘリパックを充填したガラス製蒸留塔(内径30mm、長さ2m)の上から80cmの位置に供給して、連続蒸留を行った。そして、蒸留塔の塔頂部から、シュウ酸ジメチル3.05重量%、フェノール41.73重量%、シュウ酸メチルフェニル55.21重量%の組成の液を約68ml/hrで抜き出し、塔底から40cm上の位置より、純度99.9重量%のシュウ酸ジフェニルを約120g/hrで抜き出した。不純物としては、フェノールが0.04重量%、シュウ酸メチルフェニルが0.05重量%であった。また、蒸発器の底部からは約2.5重量%(金属換算)のチタンを含む液を約14g/hrで抜き出した。
【0090】
〔炭酸ジフェニルの製造〕
前記のシュウ酸ジフェニルの製造で得られたシュウ酸ジフェニルを用いて、以下のように炭酸ジフェニルを製造した。
シュウ酸ジフェニルにテトラフェニルホスホニウムクロライドを1.5モル%加え、150℃に加熱して溶解した。この液を、温度計、攪拌機、及びオーバーフロー管を備えたガラス製反応器(内容積1L)2個を連結した装置に、定量ポンプを用いて300mL/hrで供給すると共に、2個の反応器をマントルヒーターで加熱して230℃に保持してシュウ酸ジフェニルの脱カルボニル反応を行った。なお、各反応器のオーバーフロー位置は600mLとした。
供給開始20時間後、第2反応器のオーバーフロー液(脱カルボニル反応の反応液)の組成は、シュウ酸ジフェニル14.6重量%、炭酸ジフェニル85.1重量%であり、その量は約270mL/hrであった。また、各反応器から発生するガスの組成は一酸化炭素約100%であり、その量は25NL/hrであった。但し、このガスには不純物としてイオン性塩素化合物が200容量ppm、非イオン性塩素化合物が120容量ppm含まれていた。
【0091】
脱カルボニル反応の反応液を、前記のシュウ酸ジフェニルの製造と同様の回転薄膜式蒸発器に、20mmHgの減圧下、250ml/hrで供給すると共に、蒸発器を熱媒で200℃に加熱してテトラフェニルホスホニウムクロライドを分離した。得られた留出液(組成:炭酸ジフェニル92.2重量%、シュウ酸ジフェニル7.7重量%)を、前記のシュウ酸ジフェニルの製造と同様のガラス製蒸留塔に供給して連続蒸留し(塔頂圧力20torr、還流比2)、純度99.9%の炭酸ジフェニル約220ml/hrで得た。
【0092】
〔シュウ酸ジメチルの製造2〕
前記の炭酸ジフェニルの製造(脱カルボニル反応)で発生した一酸化炭素25NL/hrをダイアフラム式圧縮機で2.1kg/cm2 Gまで昇圧した後、5mmラシヒリングを30cm充填した充填塔(内径32mm、高さ450mm)の下部に供給した。塔の上部からは5重量%水酸化ナトリウム水溶液を200ml/hrで供給してガスと接触させた。次いで、塔頂から導出された一酸化炭素25NL/hr(2.1kg/cm2 G)を前記のシュウ酸ジメチルの製造1の気液接触式再生塔の塔底に供給したほかは、前記のシュウ酸ジメチルの製造1と同様にシュウ酸ジメチルを製造した。但し、一酸化炭素24NL/hr(2.1kg/cm2 G)は再生塔から導出される再生ガスに補給した。
その結果、前記のシュウ酸ジメチルの製造1と同様の反応成績で長時間(200時間以上)シュウ酸ジメチルを製造することができた。
【0093】
比較例1
〔シュウ酸ジメチルの製造〕
実施例1の脱カルボニル反応で発生した一酸化炭素25NL/hrをダイアフラム式圧縮機で2.1kg/cm2 Gまで昇圧して、一酸化炭素24NL/hr(2.1kg/cm2 G)と共に再生塔から導出される再生ガスに補給したほかは、実施例1(シュウ酸ジメチルの製造1)と同様にシュウ酸ジメチルを製造した。
その結果、脱カルボニル反応で発生した一酸化炭素の供給を開始して初期(50時間程度)は実施例1(シュウ酸ジメチルの製造1)と同様の反応成績であったが、それ以降徐々に活性が低下し、シュウ酸ジメチルの選択率も低下した。即ち、供給開始50時間後はシュウ酸ジメチルのSTYが450g/L・hr、選択率が96.3%であったが、200時間後はSTYが320g/L・hr、選択率が93.7%になった。
【0094】
比較例2
〔シュウ酸ジメチルの製造〕
実施例1の脱カルボニル反応で発生した一酸化炭素25NL/hrをダイアフラム式圧縮機で2.1kg/cm2 Gまで昇圧した後、5mmラシヒリングを30cm充填した充填塔(内径32mm、高さ450mm)の下部に供給した。塔の上部からは5重量%水酸化ナトリウム水溶液を200ml/hrで供給してガスと接触させた。次いで、塔頂から導出された一酸化炭素25NL/hr(2.1kg/cm2 G)を、一酸化炭素24NL/hr(2.1kg/cm2 G)と共に再生塔から導出される再生ガスに補給したほかは、実施例1(シュウ酸ジメチルの製造1)と同様にシュウ酸ジメチルを製造した。
その結果、脱カルボニル反応で発生した一酸化炭素の供給を開始した当初から二酸化炭素の生成が増え、シュウ酸ジメチルの選択率も93.6%に低下した。シュウ酸ジメチルのSTYは435g/L・hrで若干低下したが長時間維持された。
【0095】
実施例2
〔シュウ酸ジメチルの製造〕
実施例1のシュウ酸ジフェニルの製造(エステル交換反応)で塔頂から抜き出された液(組成:メタノール99.7重量%、シュウ酸ジメチル0.3重量%)を蓄積して、その0.33L/hrを再生塔の塔頂から供給したほかは、実施例1(シュウ酸ジメチルの製造2)と同様にシュウ酸ジメチルを製造した。その結果は実施例1(シュウ酸ジメチルの製造2)と全く同様であった。
【0096】
【発明の効果】
本発明の、一酸化炭素と亜硝酸アルキルを出発原料として、亜硝酸アルキルを再生しながら、シュウ酸ジアルキルを生成させ、そのシュウ酸ジアルキルとフェノール化合物を反応させてシュウ酸ジアリールを生成させ、そしてそのシュウ酸ジアリールを脱カルボニル反応させて、炭酸ジアリールと一酸化炭素を生成させると共に、一酸化炭素をシュウ酸ジアルキル生成に再使用する方法により、公知のホスゲン法又は非ホスゲン法による炭酸ジアリールの製造法における問題点を解決できる、全く新規な炭酸ジアリールの製造法を提供することができる。また、本発明は、シュウ酸ジアリールの脱カルボニル反応で反応系外へ除去される一酸化炭素を回収して、白金族金属触媒の活性の低下やシュウ酸ジアルキルの選択率の低下を引き起こすことなく、シュウ酸ジアルキル生成に再使用することができ、更にシュウ酸ジアルキルとフェノール化合物の反応で反応系外へ除去されるアルキルアルコールも回収して亜硝酸アルキル再生に再使用できるので、工業的に非常に優れた炭酸ジアリールの製造法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造プロセスの概略を示す図で、亜硝酸アルキルとして亜硝酸メチルを使用し、フェノール化合物としてフェノールを使用したものである。
図中、A−1工程はシュウ酸ジアルキル生成工程、A−2工程はA−1工程の生成物の分離工程、A−3−1工程は亜硝酸アルキル再生工程、A−3−2工程は再生ガス循環供給工程、A−4工程はシュウ酸ジアルキルの分離・回収工程、B−1工程はシュウ酸ジアリール生成工程、B−2工程はシュウ酸ジアリールの分離・回収工程、C−1工程は炭酸ジアリール生成工程、C−2工程は炭酸ジアリールの分離・回収工程、D工程は一酸化炭素のアルカリ処理及び循環供給工程を表す。また、MNは亜硝酸メチル、DMOはシュウ酸ジメチル、PhOHはフェノール、DPOはシュウ酸ジフェニル、DPCは炭酸ジフェニルを表す。
Claims (8)
- (A−1)一酸化炭素と亜硝酸アルキルを白金族金属触媒の存在下で反応させてシュウ酸ジアルキルを生成させ、(A−2)A−1工程の生成物をシュウ酸ジアルキルを含有する凝縮液と一酸化窒素を含有する非凝縮ガスに分離し、(A−3−1)A−2工程の非凝縮ガスを分子状酸素及びアルキルアルコールと接触させて非凝縮ガス中の一酸化窒素を亜硝酸アルキルに再生し、(A−3−2)A−3−1工程の再生ガスをA−1工程に循環供給すると共に、(A−4)A−2工程の凝縮液からシュウ酸ジアルキルを分離・回収する工程、
(B−1)A−4工程のシュウ酸ジアルキルとフェノール化合物を触媒存在下で反応させてシュウ酸ジアリールを生成させ、(B−2)そのシュウ酸ジアリールを分離・回収する工程、
(C−1)B−2工程のシュウ酸ジアリールを触媒存在下で脱カルボニル反応させて炭酸ジアリールと一酸化炭素を生成させ、(C−2)その炭酸ジアリールを分離・回収する工程、
(D)C−1工程の一酸化炭素を回収しアルカリ処理して、A−3−1工程に循環供給する工程から成ることを特徴とする炭酸ジアリールの製造法。 - B−1工程において、生成するアルキルアルコールを除去しながら、シュウ酸ジアルキルとフェノール化合物を触媒存在下でエステル交換反応させて、シュウ酸アルキルアリールを生成させ、次いで、生成するシュウ酸ジアルキルを除去しながら、そのシュウ酸アルキルアリールを触媒存在下で不均化反応させて、シュウ酸ジアリールを生成させることを特徴とする請求項1記載の炭酸ジアリールの製造法。
- B−1工程で生成するアルキルアルコールを回収し、そのアルキルアルコールをA−3−1工程に供給することを特徴とする請求項1記載の炭酸ジアリールの製造法。
- C−1工程の反応を有機リン化合物の存在下で行うことを特徴とする請求項1記載の炭酸ジアリールの製造法。
- C−1工程の反応をハロゲン化合物系添加剤を添加して行うことを特徴とする請求項1記載の炭酸ジアリールの製造法。
- C−1工程、D工程、A−1工程、A−2工程、A−3−1工程、及びA−3−2工程を加圧下で行うことを特徴とする請求項1記載の炭酸ジアリールの製造法。
- 亜硝酸アルキルが亜硝酸メチルであることを特徴とする請求項1記載の炭酸ジアリールの製造法。
- フェノール化合物がフェノールであることを特徴とする請求項1記載の炭酸ジアリールの製造法。
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