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JP4022955B2 - 炭酸ジアリールエステルの製造法 - Google Patents

炭酸ジアリールエステルの製造法 Download PDF

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JP4022955B2 JP26200397A JP26200397A JP4022955B2 JP 4022955 B2 JP4022955 B2 JP 4022955B2 JP 26200397 A JP26200397 A JP 26200397A JP 26200397 A JP26200397 A JP 26200397A JP 4022955 B2 JP4022955 B2 JP 4022955B2
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圭吾 西平
秀二 田中
勝正 原田
良二 杉瀬
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、第1工程で、一酸化炭素と亜硝酸アルキルエステル及び/又は低級アルコール(以下、低級アルキルアルコールを意味する)とを反応させて、第1中間体であるシュウ酸ジアルキルエステルを生成させ、
第2工程で、そのシュウ酸ジアルキルエステルとフェノール化合物(以下,アリールアルコールを意味する)とを反応させて、第2中間体であるシュウ酸ジアリールエステルを生成させ(そして、第2工程で副生する低級アルコールを回収して、第1工程の原料として再使用し)、
第3工程で、そのシュウ酸ジアリールエステルを脱CO反応させて、炭酸ジアリールエステルと副生物の一酸化炭素を生成させる(そして、第3工程で副生する一酸化炭素を回収して第1工程に供給し、第1工程の原料として再使用する)という、
工業的に全く新規な製造プロセスによる、炭酸ジフェニルエステル等の炭酸ジアリールエステルの製造法に関する。
【0002】
前記の炭酸ジフェニルエステル(DPC)などの炭酸ジアリールエステルは、ビスフェノールA等のヒドロキシ基を複数有するフェノール化合物と縮重合させて、電気・電子材料、工業材料などとして有用なポリカーボネートを製造するための重要な原料である。
【0003】
【従来の技術】
炭酸ジフェニルエステル(DPC)等の炭酸ジアリールエステルの製造法としては、ホスゲンとフェノール等のフェノール化合物とを使用して直接製造する方法や、種々の公知の方法で得られた炭酸ジアルキルエステルからエステル交換反応により製造する方法や、その他に種々の方法が提案されていたが、それらは必ずしも工業的に満足すべきものではなかった。
【0004】
即ち、ホスゲン法による炭酸ジアリールエステルの製造法では、猛毒のホスゲンを使用するためにその毒性が極めて問題であり、更に生成する炭酸ジアリールエステル中にはホスゲンに由来する塩素化合物が不純物としてかなりの含有量で混入しており、炭酸ジアリールエステル製品からその塩素化合物を除去することは極めて困難であるという問題があった(特公昭58−50977号公報)。
【0005】
非ホスゲン法による代表的な炭酸ジアリールエステルの製造法としては、炭酸ジアルキルエステルとフェノール化合物とをエステル交換反応させて炭酸ジアリールエステルを製造する方法(特開平3−291257号公報、特開平4−211038号公報)、或いは炭酸アルキルアリールエステルの不均化反応により炭酸ジアルキルエステルと炭酸ジアリールエステルとを製造する方法(特開平4−9358号公報)などが知られていた。
【0006】
しかし、炭酸ジアルキルエステルのエステル交換反応による方法では、エステル交換反応が中間体として炭酸アルキルアリールエステルを経由する2段階の平衡反応であって、炭酸ジアルキルエステルから炭酸アルキルアリールエステルが生成する1段目の反応の速度が遅いという問題があった。このため、種々の特殊な触媒や、複雑な製造工程及び製造装置が提案されていた(特開平4−235951号公報、特開平4−224547号公報)。
【0007】
また、炭酸アルキルアリールエステルの不均化反応による方法は、炭酸アルキルアリールエステルが前記のエステル交換反応における中間生成物であり、他の生成物と原料とを含有するエステル交換反応の混合液(反応液)から炭酸アルキルアリールエステルのみを単離することが極めて困難であり、また炭酸アルキルアリールエステル自体を工業的に生産して入手することも極めて困難であるので、工業的な製造法として満足できるものではなかった。
【0008】
一方、シュウ酸ジアリールエステルの製造法としては、シュウ酸とフェノール類とを、有機溶剤中、エステル化触媒の存在下で100〜130℃に加熱して直接エステル化反応させてシュウ酸ジアリールエステルを製造する方法(特公昭52−43826号公報)、シュウ酸ジアルキルエステルと炭酸ジアリールエステルとをエステル交換反応させてシュウ酸ジアリールエステルを製造する方法(特公昭56−8019号公報、特開昭49−42621号公報)、あるいはシュウ酸ジアルキルエステルと低級脂肪酸アリールエステルとをエステル交換反応させてシュウ酸ジアリールエステルを製造する方法(特公昭56−2541号公報、特公昭57−47658号公報)が知られていた。
【0009】
しかし、シュウ酸とフェノール類とを直接エステル化してシュウ酸ジアリールエステルを製造する方法は、反応速度が極めて遅いため、反応に長時間を要するという問題があり、工業的な見地から満足すべき方法ではなかった。
また、シュウ酸ジアルキルエステルと炭酸ジアリールエステル又は低級脂肪酸アリールエステルとをエステル交換反応させてシュウ酸ジアリールエステルを製造する方法は、目的物の他に種々の副生物がかなり多量に生成することから、シュウ酸ジアリールエステルを単離するために極めて煩雑又は複雑な精製工程が必要であるという問題があった。更に、前述のように炭酸ジアリールエステル自体が工業的に製造することが容易ではなく入手することが困難であるために、必ずしも工業的に満足すべき方法ではなかった。
【0010】
シュウ酸ジアリールエステルの脱CO反応について、『有機合成化学、5、報47(1948)』記載の「ジカルボン酸ジフェニルエステルの熱分解について(第2報)」において、シュウ酸ジフェニルエステルを高温で熱分解して炭酸ジフェニルエステルを得たとの報告がある。
しかし、この報告には、シュウ酸ジアリールエステルの製造法として無水シュウ酸、石炭酸及びオキシ塩化燐の混合物を加熱して製造する方法が記載されているのみであり、本発明のような、シュウ酸ジアルキルエステルとフェノール化合物とを反応させてシュウ酸ジアリールエステルを製造する方法、及びそのシュウ酸ジアリールエステルを脱CO反応させて炭酸ジアリールエステルを製造する方法については全く記載されていない。
【0011】
アメリカ特許第4,544,507号明細書には、シュウ酸ジエステルを、溶媒中、アルカリ金属アルコラート触媒の存在下で50〜150℃に加熱することによって炭酸エステルを製造する方法が開示されているが、シュウ酸ジエステルとしてシュウ酸ジフェニルエステルを用いた場合には、主生成物はシュウ酸ジフェニルエステルであったとの実施態様が示されているに過ぎない(炭酸ジフェニルエステルが生成したとの記載はない)。
そして、このアメリカ特許明細書には、シュウ酸ジアルキルエステルからシュウ酸ジアリールエステルを製造する方法は具体的に記載されておらず、更に、本発明のような、シュウ酸ジアルキルエステルとフェノール化合物とを反応させてシュウ酸ジアリールエステルを製造する方法、及びそのシュウ酸ジアリールエステルを脱CO反応させて炭酸ジアリールエステルを製造する方法については示唆するものさえ記載されていない。
【0012】
一酸化炭素と亜硝酸アルキルエステル又は低級アルコールとからシュウ酸ジアルキルエステルを製造する方法は、特公昭56−12624号公報、特公昭56−28903号公報、特公昭57−30094号公報、特公昭61−6057号公報などに開示されている。
しかし、これらの公知文献には、本発明のような、シュウ酸ジアルキルエステルとフェノール化合物とを反応させてシュウ酸ジアリールエステルを製造する方法、及びシュウ酸ジアリールエステルを脱CO反応させて炭酸ジフェニルエステルを製造する方法については何ら記載されていない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、公知のホスゲン法又は非ホスゲン法による炭酸ジアリールエステルの製造法における問題点を解決することができる、新規な炭酸ジアリールエステルの製造法について鋭意研究した結果、一酸化炭素と亜硝酸アルキルエステル及び/又は低級アルコールとから得られるシュウ酸ジアルキルエステルとフェノール化合物とを反応させることによりシュウ酸ジフェニルエステル等のシュウ酸ジアリールエステルを容易に製造できること、及びそのシュウ酸ジアリールエステルを脱CO反応させることによって炭酸ジフェニルエステル等の炭酸ジアリールエステルを容易に製造できることを見い出した。
本発明の製造法は、一酸化炭素と亜硝酸アルキルエステル又は低級アルコールとを出発原料として、非ホスゲン法で炭酸ジフェニルエステル等の炭酸ジアリールエステルを工業的に製造できる新規なプロセスを初めて提供するものである。
【0014】
【課題を解決する手段】
本願の第1の発明は、第1工程で、一酸化炭素と亜硝酸アルキルエステルとを反応させて、第1中間体であるシュウ酸ジアルキルエステルを生成させ、第2工程で、そのシュウ酸ジアルキルエステルとフェノール化合物(アリールアルコール)とを反応させて、第2中間体であるシュウ酸ジアリールエステルを生成させ、第3工程で、そのシュウ酸ジアリールエステルを脱CO反応させて、炭酸ジアリールエステルと一酸化炭素を生成させると共に、第2工程で副生する低級アルコール(低級アルキルアルコール)を回収し、その低級アルコールを第1工程で回収される一酸化窒素及び分子状酸素と反応させて亜硝酸アルキルエステルを生成させ、その亜硝酸アルキルエステルを第1工程に供給することを特徴とする炭酸ジアリールエステルの製造法に関する。
【0015】
第2の発明は、第1工程で、一酸化炭素と亜硝酸アルキルエステルとを白金族金属系触媒の存在下で反応させて、シュウ酸ジアルキルエステルを生成させ、第2工程で、そのシュウ酸ジアルキルエステルとフェノール化合物(アリールアルコール)とを触媒の存在下で反応させて、シュウ酸ジアリールエステルを生成させると共に、副生する低級アルコール(低級アルキルアルコール)を回収してシュウ酸ジアルキルエステルの製造のために第1工程に供給し、第3工程で、第2工程で得られたシュウ酸ジアリールエステルを脱CO反応させて、炭酸ジアリールエステルと一酸化炭素を生成させることを特徴とする炭酸ジアリールエステルの製造法に関する。
【0016】
そして、第3の発明は、第1及び第2の発明の第3工程において生成した炭酸ジアリールエステルを回収すると共に、副生した一酸化炭素を回収してシュウ酸ジアルキルエステルの製造のために第1工程へ供給することを特徴とする前記発明と同様の炭酸ジアリールエステルの製造法に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明は、概略、図1(及び図2)に示すような、一酸化炭素と亜硝酸アルキルエステル及び/又は低級アルコールとからシュウ酸ジアルキルエステルを生成させる第1工程、そのシュウ酸ジアルキルエステルからシュウ酸ジアリールエステルを生成させる第2工程、及びそのシュウ酸ジアリールエステルから炭酸ジアリールエステルと一酸化炭素を生成させる第3工程を経る、炭酸ジフェニルエステル(DPC)等の炭酸ジアリールエステルを製造するプロセスに従って行われる。
【0018】
本発明では、例えば、
第1工程で、一酸化炭素と亜硝酸アルキルエステル(特に亜硝酸メチル)とを白金族金属系触媒の存在下で気相又は液相で反応させて、シュウ酸ジアルキルエステル(特にシュウ酸ジメチルエステル)と一酸化窒素を生成させ、シュウ酸ジアルキルエステルを回収すると共に、一酸化窒素を回収して別に設けられている亜硝酸アルキルエステルの再生工程に供給し、
第2工程で、そのシュウ酸ジアルキルエステルとフェノール化合物(特にフェノール)とをエステル交換触媒の存在下で液相で反応させて、シュウ酸ジアリールエステル(特にシュウ酸ジフェニルエステル)と低級アルコール(特にメタノール)を生成させ、シュウ酸ジアリールエステルを回収すると共に、低級アルコール(特にメタノール)を回収して前記の亜硝酸アルキルエステルの再生工程に供給し(第1工程の原料として再使用し)、
第3工程で、そのシュウ酸ジアリールエステルを脱CO触媒の存在下で液相又は気相で脱CO反応させて炭酸ジアリールエステル(特に炭酸ジフェニルエステル;DPC)と一酸化炭素を生成させ、炭酸ジアリールエステルを回収すると共に、一酸化炭素を回収して第1工程の原料として第1工程に供給することによって、炭酸ジアリールエステル(特に炭酸ジフェニルエステル;DPC)を製造する方法が工業的に好適に行われる(図2参照)。
【0019】
本発明の第1工程では、一酸化炭素と亜硝酸アルキルエステルとを白金族金属系触媒の存在下で気相で反応させて、シュウ酸ジアルキルエステルと一酸化窒素を生成させることが工業的に特に好ましい。
そして、第1工程の反応において、一酸化炭素と亜硝酸アルキルエステルとを反応させた際に副生する一酸化窒素を分子状酸素及び低級アルコールと反応させて亜硝酸アルキルエステルに再生し、その再生された亜硝酸アルキルエステルを第1工程の原料の供給ラインへ供給して第1工程の反応に再利用することが工業的に特に好ましい(図2参照)。
【0020】
本発明の第1工程では、例えば、次に示す反応式(1)又は(2)に従って、白金族金属触媒の存在下、一酸化炭素(CO)と亜硝酸アルキルエステル(RONO)又は低級アルコール(ROH)とからシュウ酸ジアルキルエステル(a)が生成する。
【0021】
【化1】
Figure 0004022955
【0022】
前記の亜硝酸アルキルエステルは式(1)に示す化学式(RONO)で表すことができ、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6の低級アルキル基である。亜硝酸アルキルエステルとしては、亜硝酸メチルエステル、亜硝酸エチルエステル、亜硝酸n−プロピルエステル、亜硝酸i−プロピルエステル、亜硝酸n−ブチルエステル、亜硝酸i−ブチルエステルなどの炭素数1〜4の亜硝酸アルキルエステルが好適に挙げられる。
【0023】
前記の低級アルコールは、式(2)に示す化学式(ROH;Rは前記と同様)で表すことができる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノールなどの炭素数1〜4の脂肪族アルコールが好適に挙げられる。
【0024】
本発明の第2工程では、次に示す反応式(3)及び(4)に従って、エステル交換触媒の存在下、シュウ酸ジアルキルエステル(a)とフェノール化合物(b)からエステル交換反応によりシュウ酸アルキルアリールエステル(c−1)、シュウ酸ジアリールエステル(c−2)及び低級アルコール(d)が生成する。
また、第2工程では、反応式(4)以外に反応式(5)に従って、エステル交換触媒の存在下、シュウ酸アルキルアリールエステル(c−1)から不均化反応によりシュウ酸ジアリールエステル(a)及びシュウ酸ジアルキルエステル(c−2)が生成する(不均化反応はエステル交換反応の1種でもある)。このエステル交換反応及び不均化反応は液相で行うことが好ましい。
【0025】
【化2】
Figure 0004022955
【0026】
反応式(3)、(4)及び(5)において、Rは前記と同様の炭素数1〜6のアルキル基を示し、Arは置換基を有していてもよいアリール基を示す。この置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜6のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。
【0027】
本発明の第2工程では、反応式(3)〜(5)の反応が全て起っているが、主として反応式(3)のエステル交換反応及び反応式(5)の不均化反応(エステル交換反応の1種でもある)が起こる。即ち、主として、反応式(3)のエステル交換反応によりシュウ酸アルキルアリールエステル(c−1)及び低級アルコール(d)が生成し、次いで反応式(5)の不均化反応(エステル交換反応の1種でもある)によりシュウ酸ジアリールエステル(c−2)とシュウ酸ジアルキルエステル(a)が生成する。従って、第2工程では、結局、シュウ酸ジアルキルエステルとフェノール化合物からシュウ酸ジアリールエステルと低級アルコールが生成することになる。
【0028】
本発明の第3工程では、例えば、次に示す反応式(6)に従って、必要であれば脱CO触媒の存在下、シュウ酸ジアリールエステル(C−2)から脱CO反応により炭酸ジアリールエステル(e)と一酸化炭素が生成する。この脱CO反応は液相で行うことが好ましい。なお、反応式(6)におけるArは、反応式(3)〜(5)におけるArと同様である。
【0029】
【化3】
Figure 0004022955
【0030】
第1工程について更に詳しく説明する。
第1工程で使用される白金族金属系触媒としては、白金族金属又はその塩類が挙げられる(特公昭56−28903号公報、特公昭56−28904号公報、特公昭61−6057号公報、特公昭61−26977号公報など)。
白金族金属としては、白金金属、パラジウム金属、ロジウム金属、イリジウム金属等が挙げられ、その塩類としては、これら金属の無機酸塩(硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等)、ハロゲン化物(塩化物、臭化物等)、有機酸塩(酢酸塩、シュウ酸塩、安息香酸塩等)、錯体などが挙げられる。
【0031】
白金族金属又はその塩類の中では、パラジウム金属又はその塩類が特に好ましい。パラジウムの塩類としては、パラジウムの無機酸塩(硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、リン酸パラジウム等)、パラジウムのハロゲン化物(塩化パラジウム、臭化パラジウム等)、パラジウムの有機酸塩(酢酸パラジウム、シュウ酸パラジウム、安息香酸パラジウム等)、或いはパラジウムの錯体(トリメチルホスフィン等のアルキルホスフィン類、トリフェニルホスフィン等のアリールホスフィン類、ジエチルフェニルホスフィン等のアルキルアリールホスフィン類又はトリフェニルホスファイト等のアリールホスファイト類などを配位子として有する錯体)などが具体的に挙げられる。
【0032】
前記の白金族金属系触媒は、白金族金属又はその塩類が不活性な担体に白金族金属換算で通常0.01〜10重量%、特に0.2〜2重量%担持されている固体触媒の形態で使用されることが工業的に好ましい。例えば、パラジウム金属又はその塩類が活性炭、アルミナ(γ−アルミナ、α−アルミナ等)、シリカ、珪藻土、軽石、ゼオライト、モレキュラーシーブ、スピネルなどの不活性な担体に担持されたものが好ましい。白金族金属の塩類が担体に担持された固体触媒を使用する場合は、白金族金属の塩類を、触媒調製の際に水素等の還元性物質で白金族金属に還元するか、又は反応前に反応器内でCO等の還元性物質で白金族金属に還元して使用することが好ましい。なお、白金族金属系触媒は公知の方法により調製される。
【0033】
第1工程で使用される白金族金属系触媒には、例えば、鉄又はその化合物を含有させることができる(特開昭59−80630号公報)。
鉄又はその化合物としては、金属鉄、鉄(II)化合物又は鉄(III) 化合物が用いられる。鉄(II)化合物の具体例としては、硫酸第一鉄、硝酸第一鉄、塩化第一鉄、硫酸第一鉄アンモニウム、乳酸第一鉄、水酸化第一鉄等が挙げられ、鉄(III) 化合物の具体例としては、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸第二鉄アンモニウム、乳酸第二鉄、水酸化第二鉄、クエン酸第二鉄等が挙げられる。鉄又はその化合物は、白金族金属に対する金属原子比(白金族金属:Fe)が10000:1〜1:4、好ましくは5000:1〜1:3の範囲内になるように使用される。なお、鉄又はその化合物を含有触媒は公知の方法により調製される。
【0034】
第1工程で使用される一酸化炭素は純粋なものでもよいが、例えば、窒素のような不活性ガスで希釈されていてもよく、あるいは少量の水素ガス又はメタンを含んでいてもよい。更に、本発明では、第3工程で生成する一酸化炭素も第1工程で好適に使用することができる。例えば、第1工程が気相連続プロセスで行われる場合、この第3工程で生成する一酸化炭素は、反応で消費された一酸化炭素を補うため、後述する再生ガスに混合して第1工程に供給される。
【0035】
第1工程の反応が気相で行われる場合、その反応は、一酸化炭素及び亜硝酸アルキルエステルを含有する原料ガスを白金族金属系触媒と気相で接触させることによって行われる(特公昭61−6057号公報、特公昭61−26977号公報など)。このとき、原料ガスと白金族金属系触媒との接触時間は10秒以下、特に0.2〜5秒であることが好ましく、反応温度は50〜200℃、特に80〜150℃であることが好ましい。反応圧力は、常圧ないし10kg/cm2 G、特に常圧ないし5kg/cm2 Gの範囲であることが好ましい。なお、反応器としては、単管式あるいは多管式熱交換型反応器が有効である。
【0036】
前記の原料ガス中の一酸化炭素の濃度は2〜90容量%の範囲で選ばれる。また、原料ガス中の亜硝酸アルキルエステルの濃度は広い範囲で変えられるが、満足すべき反応速度を得るためには、原料ガス中の濃度が1容量%以上となるように亜硝酸アルキルエステルを存在させることが好ましく、例えば、5〜30容量%の範囲で選ばれる。
【0037】
前記の気相反応によって、シュウ酸ジアルキルエステルを含有する反応生成物が得られる。この反応生成物は、例えば、凝縮器に導かれて冷却され、凝縮液と非凝縮ガスに分離されるが、このときシュウ酸ジアルキルエステルが非凝縮ガスに同伴することを防ぐために、反応生成物を低級アルコールに接触させながら冷却・凝縮することが好ましい。
凝縮液は、目的物のシュウ酸ジアルキルエステルの他に、炭酸ジアルキルエステル、ギ酸アルキルエステル等の副生物を少量含有しているが、公知のように蒸留などの簡単な操作によって、精製されたシュウ酸ジアルキルエステルを容易に回収することができる。回収されたシュウ酸ジアルキルエステルは第2工程に供給される。
【0038】
一方、非凝縮ガスは、未反応の一酸化炭素及び亜硝酸アルキルエステル以外に、前記の反応で生成した一酸化窒素を含んでいるので、この一酸化窒素を亜硝酸アルキルエステルに再生して、第1工程に供給することが工業的に好ましい(特公昭61−6057号公報、特公昭61−26977号公報など)。
この再生は、例えば、非凝縮ガスを再生塔へ導いて、非凝縮ガス中の一酸化窒素を分子状酸素及び低級アルコールと接触させることによって行われる。
このとき、低級アルコールとしては、前記の亜硝酸アルキルエステルの構成成分である低級アルコールが使用されるが、本発明では、第2工程のエステル交換反応で反応系から除去される低級アルコールを回収して使用することが特に好ましい。また、分子状酸素としては、酸素ガス又は空気などが使用される。
なお、再生塔としては、充填塔、気泡塔、スプレー塔、段塔などの通常の気液接触装置が用いられる。
【0039】
前記の再生においては、再生塔から導出されるガス(再生ガス)中の一酸化窒素の濃度が2〜7容量%になるように、即ち、該ガス中に二酸化窒素及び酸素が実質的に含まれないように反応が制御される。
このため、再生塔に導入される前記の非凝縮ガス中の一酸化窒素1モルに対して、分子状酸素を0.08〜0.2モル供給して、再生の際の圧力における低級アルコールの沸点以下(例えば、0℃から低級アルコールの沸点まで)の温度で、一酸化窒素を分子状酸素及び低級アルコールと接触させることが好ましい。低級アルコールの供給量は前記の非凝縮ガス中の一酸化窒素1容量部に対して2〜5容量部であることが好ましく、接触時間は0.5〜20秒が好ましい。なお、第1工程が連続プロセスで実施される場合は、系外に損失する窒素分を補うために、再生塔に亜硝酸アルキルエステル、窒素酸化物(一酸化窒素、二酸化窒素、三酸化二窒素、四酸化二窒素等)又は硝酸が導入される。
このようにして、一酸化窒素の濃度が2〜7容量%で、実質的に二酸化窒素と酸素を含有しない、再生された亜硝酸アルキルエステルを含有するガス(再生ガス)が第1工程に供給される。このとき、反応で消費された一酸化炭素を補うため、第3工程で生成する一酸化炭素が回収されて再生ガスに混合される。
【0040】
第1工程の反応が液相で行われる場合、その反応は、一酸化炭素と酸素を含有するガスと、白金族金属系触媒を含有する低級アルコールと亜硝酸アルキルエステルの混合液とを液相で加圧接触させることによって行われる(特公昭56−28903号公報、特公昭56−28904号公報など)。
このとき、接触時間は5〜60分であることが好ましく、反応温度は40〜200℃、特に60〜150℃であることが好ましく、反応圧力は5〜250kg/cm2 G、特に10〜200kg/cm2 Gであることが好ましい。
なお、反応器としては、中空筒状塔、充填塔、棚段塔などが有効である。
【0041】
液相反応の場合、一酸化炭素と酸素は、酸素1容量%当たり、一酸化炭素が5〜80容量%になるように供給され、亜硝酸エステルは混合液中に8〜50重量%であるように供給される。白金族金属系触媒は、気相反応と同様に、活性炭、アルミナ(γ−アルミナ、α−アルミナ等)、シリカ等の担体に担持されて使用されることが好ましく、前記の混合液に対して、白金族金属換算で0.1重量ppm〜2重量%、特に10〜200重量ppm使用されることが好ましい。
【0042】
液相反応で得られる反応液は、目的物のシュウ酸ジアルキルエステルの他に、水、炭酸ジアルキルエステル、ギ酸アルキルエステル等の副生物を含有しているため、公知のように、脱水塔で蒸留により水が除去された後、蒸留などの操作によってシュウ酸ジアルキルエステルが回収される。
【0043】
次に、第2工程について更に詳しく説明する。
本発明の第2工程は、第1工程で得られたシュウ酸ジアルキルエステルとフェノール化合物とを反応させて、第2中間体であるシュウ酸ジアリールエステルを生成させる工程である。そして、シュウ酸ジアリールエステルが回収されて第3工程に供給される。
【0044】
第2工程としては、例えば、エステル交換触媒の存在下、生成する低級アルコールを蒸発させて除去しながら、シュウ酸ジアルキルエステルとフェノール化合物とのエステル交換反応を行わせてシュウ酸アルキルアリールエステルを生成させ〔反応式(3)〕、次いで、エステル交換触媒の存在下、シュウ酸ジアルキルエステルを蒸発させて除去しながら、シュウ酸アルキルアリールエステルの不均化反応を主体とするエステル交換反応を行わせてシュウ酸ジアリールエステルを生成させ〔反応式(5)〕、最後にシュウ酸ジアリールエステルを回収する工程を挙げることができる。
また、エステル交換触媒の存在下、生成する低級アルコールを反応系外へ除去しながら、シュウ酸ジアルキルエステルとフェノール化合物とのエステル交換反応及びシュウ酸アルキルアリールエステルとフェノール化合物とのエステル交換反応を行わせてシュウ酸ジアリールエステルを生成させ〔反応式(3)、(4)〕、シュウ酸ジアリールエステルを回収する工程を挙げることもできる。
【0045】
前記の第2工程では、例えば、シュウ酸ジアルキルエステル、フェノール化合物及びエステル交換触媒を含む原料を第1反応蒸留塔へ供給して、低級アルコールを主成分とする第1蒸気を第1反応蒸留塔の頂部から抜き出しながら、シュウ酸ジアルキルエステルとフェノール化合物とのエステル交換反応を前記触媒の存在下で行わせ、そして、第1反応蒸留塔の底部からエステル交換反応による反応液を抜き出して第2反応蒸留塔へ供給し、シュウ酸ジアルキルエステル及び/又は低級アルコールを主成分とする第2蒸気を第2反応蒸留塔の頂部から抜き出しながら、前記触媒の存在下でシュウ酸アルキルアリールエステルの不均化反応及び/又はフェノール化合物とのエステル交換反応を行わせることが好ましい。
第2反応蒸留塔の頂部から抜き出された第2蒸気は、必要に応じて低級アルコールを留去し、シュウ酸ジアルキルエステルやフェノール化合物を主成分とする留分を第1反応蒸留塔へ供給して再使用することが好ましい。
【0046】
即ち、第2工程では、後述するような第1反応蒸留塔の多数の棚段部分(又は充填材部分)の上部の区域へ、シュウ酸ジアルキルエステル、フェノール化合物及びエステル交換触媒をそれぞれ別々に又は混合液で供給して反応を行うことが好ましい。また、前記の第2反応蒸留塔の棚段部分(又は充填材部分)の上部の区域へ、第1反応蒸留塔の底部から抜き出される反応液を供給して反応を行うことが好ましい。
【0047】
前記の第1及び第2反応蒸留塔は多数の棚段を有する蒸留塔からなる反応蒸留塔であるか、又は充填材が上部に充填された反応蒸留塔で、理論段数が少なくとも2段以上、特に5〜100段、更には7〜50段の反応蒸留塔であることが好ましい。
多段蒸留塔型の反応蒸留塔としては、例えば、泡鐘トレイ、多孔板トレイ、バブルトレイなどを用いた棚段式蒸留塔形式のもの、或いはラシヒリング、レッシングリング、ポールリングなどの各種充填物を充填した充填式蒸留塔形式のものを使用することができ、更に棚段式及び充填式を併せもつ反応蒸留塔であっても使用することができる。
【0048】
第2工程における反応が反応液を第1及び第2反応蒸留塔内を流下させながら液相状態で行われる場合には、その反応温度は、各原料及び反応生成物を含有している反応液が溶融する温度以上であって、しかも生成物であるシュウ酸アルキルアリールエステル及びシュウ酸ジアリールエステルが熱分解しないような温度であることが好ましい。本発明では、この反応温度は約50〜350℃、特に100〜300℃、更には120〜280℃程度であることが好ましい。
【0049】
第2工程における反応の反応圧力は減圧、常圧、加圧のいずれであってもよいが、副生物である低級アルコールやシュウ酸ジアルキルエステルを蒸発させることができる温度及び圧力とすることが好ましい。例えば、反応温度が約50〜350℃であれば、反応圧力は0.01mmHg〜100kg/cm2 G、特に0.1mmHg〜50kg/cm2 G程度であることが好ましい。
【0050】
また、第2工程における反応の反応時間(多段蒸留塔からなる反応蒸留塔を用いた場合には第1及び第2反応蒸留塔内での反応液の滞留時間)は反応条件や反応蒸留塔の形式及び操作条件などによって異なるが、例えば、反応温度が約50〜350℃であれば、約0.01〜50時間、特に0.02〜10時間、更には0.05〜5時間程度であることが好ましい。
【0051】
また、第2工程の反応で使用されるシュウ酸ジアルキルエステルとフェノール化合物の割合は触媒の種類ならびに反応条件によって異なるが、フェノール化合物が、例えば、供給される原料中のシュウ酸ジアルキルエステルに対して0.001〜1000倍モル、特に0.1〜100倍モル、更には0.5〜20倍モル程度であることが好ましい。
また、第2工程の反応で使用されるエステル交換触媒の量は、触媒の種類、反応装置の形式及びサイズ、原料の種類及び組成、更に反応条件によって異なるが、例えば、シュウ酸ジアルキルエステルとフェノール化合物の合計量に対する割合で表して約0.0001〜50重量%、特に0.001〜30重量%、更には0.005〜10重量%程度であることが好ましい。
【0052】
なお、第2工程で使用される触媒(エステル交換触媒)は、例えば、アルカリ金属化合物、カドミウム化合物、ジルコニウム化合物、鉛系化合物、鉄系化合物、銅族化合物、亜鉛系化合物、有機スズ化合物、アルミウムのルイス酸化合物、チタンのルイス酸化合物、及びバナジウムのルイス酸化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の公知の可溶性のエステル交換触媒であることが好ましい。エステル交換触媒の中では、アルカリ金属化合物、ジルコニウム化合物、有機スズ化合物、チタンのルイス酸化合物が好ましい。
【0053】
前記のアルカリ金属化合物としては、例えば、炭酸リチウム、ジブチルアミノリチウム、アセチルアセトナトリチウムなどが挙げられ、ジルコニウム化合物としては、例えば、テトラキスアセチルアセトナトジルコニウム、ジルコノセンなどが挙げられる。前記の有機スズ化合物としては、例えば、Ph4 Snや、Sn(OAc)4 、Bu2 Sn(OAc)2 、Bu3 SnOAc、Ph3 SnOAc等の有機スズアセトキシ錯体や、Sn(OPh)4 、Bu2 Sn(OPh)2 等の有機スズアルコキシ錯体や、Bu2 SnO、Bu2 SnO(OH)、Ph3 SnOH、Bu2 SnCl2 などが挙げられる。また、前記のチタンのルイス酸化合物としては、TiX3 、Ti(OAc)3 、Ti(OBu)3 、Ti(OPh)3 、TiX4 、Ti(OAc)4 、Ti(OBu)4 、Ti(OPh)4 などが挙げられる。但し、Acはアセチル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。
【0054】
第2工程で反応系外に除去される低級アルコールは、シュウ酸ジアルキルエステルの製造のために第1工程に供給される。例えば、前記の第1反応蒸留塔の頂部から抜き出される低級アルコールを主成分とする第1蒸気を冷却・凝縮して回収される低級アルコールを、前記の亜硝酸アルキルエステルの再生で使用される低級アルコールとして、第1工程の再生塔に供給することができる。回収される低級アルコールは低級アルコールを主成分としているので、通常そのまま第1工程に供給されるが、フェノール化合物等の不純物を含む場合は、予め蒸留等により精製した後に第1工程に供給することが好ましい。
【0055】
第2工程の反応で得られる反応液は、原料及び触媒と、反応中間体のシュウ酸アルキルアリールエステル(特にシュウ酸メチルフェニルエステル)及び目的物のシュウ酸ジアリールエステル(特にシュウ酸ジフェニルエステル)と、副生物の低級アルコール(特にメタノール;前記エステル交換反応の副生物)及びシュウ酸ジアルキルエステル(特にシュウ酸ジメチルエステル;前記不均化反応の副生物)を主として含有していて、その他の副生物は極めて微量である。このため、例えば、前記の第2反応蒸留塔から得られる反応液から通常の蒸留操作などにより目的物のシュウ酸ジアリールエステルを容易に回収することができる。
【0056】
この回収の具体例としては、例えば、蒸留装置及び/又は蒸発装置で、前記の反応によって得られた反応液を蒸留及び/又は蒸発操作してシュウ酸ジアリールエステルを分離して回収するか、あるいはシュウ酸ジアリールエステルとフェノール化合物の結晶性付加物(例えば、シュウ酸ジフェニルエステル1モルとフェノール2モルの結晶性付加物など)を反応液から析出させる晶析法によって結晶性付加物を分離して回収し、次いで該結晶性付加物からフェノール化合物を蒸発・除去してシュウ酸ジアリールエステルを回収する方法を挙げることができる。
【0057】
前記の第2反応蒸留塔の底部から抜き出される反応液(缶液)の精製は、例えば、蒸発器でその反応液の大部分を蒸発させて触媒成分を分離し、その蒸発分を第1蒸留塔へ供給し、第1蒸留塔の頂部から軽質分の蒸気(シュウ酸アルキルアリールエステルとフェノール化合物)を抜き出して凝縮させると共に、第1蒸留塔の底部からシュウ酸ジアリールエステルを主成分とする缶液を抜き出して第2蒸留塔へ供給し、第2蒸留塔の頂部からシュウ酸ジアリールエステルの蒸気を抜き出して回収する方法により行うことができる。
この方法においては、簡略化して第1蒸留塔のみで上記の精製を行うことも可能である。例えば、蒸発器で触媒成分を分離して得られた蒸発分を該蒸留塔へ供給し、その頂部から軽質分の蒸気(シュウ酸アルキルアリールエステルとフェノール化合物)を抜き出すと共に、蒸留塔下部からサイドカットによりシュウ酸ジアリールエステルを回収する方法により行うことができる。
【0058】
また、反応液をまず第1蒸留塔で蒸留して、第1蒸留塔の頂部から軽質分の蒸気(シュウ酸アルキルアリールエステルとフェノール化合物)を抜き出して除去すると共に、第1蒸留塔の底部からシュウ酸ジアリールエステルを主成分とする缶液を抜き出して第2蒸留塔へ供給し、次いで第2蒸留塔の底部から触媒成分を含む缶液を得ると共に、第2蒸留塔の頂部からシュウ酸ジアリールエステルの蒸気を抜き出して回収する方法によって行うこともできる。
【0059】
これらの方法によって回収されるシュウ酸ジアリールエステルは、使用する蒸留塔が段数の比較的低いものであっても、かなり高い純度で得ることができ、例えば、97.0重量%、更には99.0重量%以上の純度のものを容易に得ることができる。即ち、前記の反応液には、不純物としてフェノール化合物、シュウ酸アルキルアリールエステル等が含有されているが、これらはシュウ酸ジアリールエステルとの沸点差が大きく分離が容易である。
回収されたシュウ酸ジアリールエステルを第3工程で使用する場合、その純度は97.0重量%以上で充分であるが、特に上記不純物(フェノール化合物、シュウ酸アルキルアリールエステル等)がそれぞれ1.0重量%以下、特に0.5重量%以下、更には0.1重量%以下であることが好ましい。
なお、第1蒸留塔の頂部から回収されたシュウ酸アルキルアリールエステルとフェノール化合物を主成分とする凝縮液は、前記の第2反応蒸留塔へ供給して再使用することが好ましい。
【0060】
次に、第3工程について更に詳しく説明する。
本発明の第3工程は、第2工程で得られたシュウ酸ジアリールエステルを脱CO反応させて、炭酸ジアリールエステルと一酸化炭素を生成させ、その反応混合物から炭酸ジアリールエステルを回収すると共に、一酸化炭素を回収して第1工程へ供給する工程である。この脱CO反応は、触媒の存在下、液相又は気相、好ましくは液相で行われる。
【0061】
脱CO反応が液相で行われる場合、触媒としては、シュウ酸ジアリールエステルの脱CO反応を比較的低温(約100〜350℃)で行うことができ、かつ炭酸ジアリールエステルを高い選択率(少なくとも50モル%以上、特に60〜100モル%)で得ることができる触媒が好ましい。
液相反応で使用される脱CO触媒としては、例えば、有機リン化合物、好ましくは少なくとも1個の炭素−リン結合を有する有機リン化合物からなる触媒が挙げられる。このような有機リン化合物としては、一般式(w)〜(z)で示されるホスフィン(w)、ホスフィンオキシド(x)、ホスフィンジハライド(y)及びホスホニウム塩(z)から選ばれる少なくとも一種の有機リン化合物からなる触媒を好適に挙げることができる。
【0062】
【化4】
Figure 0004022955
【0063】
〔式中、R1 〜R13は、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数6〜16のアリール基及び炭素数7〜22のアラルキル基から選ばれる少なくとも一種の基を示し、Xは対イオンを形成しうる原子又は原子団を示し、Y1 及びY2 は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子をそれぞれ示す。化合物(w)〜(z)は少なくとも1つが前述の基を有している。〕
【0064】
前記のR1 〜R13で示される基としては、例えば、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基等の炭素数1〜16のアルキル基、
フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、メトキシナフチル基、クロロナフチル基等の炭素数6〜16のアリール基、
ベンジル基、フェネチル基、4−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、p−メチルフェネチル基等の炭素数7〜22のアラルキル基を挙げることができる。
【0065】
前記のアリール基及びアラルキル基は、その芳香環を形成している炭素と直接に結合する置換基として、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜16のアルコキシ基、ニトロ基及びハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)から選ばれる少なくとも1個の置換基を有していてもよい。
【0066】
前記の有機リン化合物(w)〜(z)としては、それぞれが有する基(R1 〜R13)の全てがアリール基であるものが好ましいが、その1〜2個(特に2個)がアリール基であって、残部がアルキル基又はアラルキル基であるものであってもよい。
【0067】
一般式(w)のR1 〜R3 の全てがアリール基であるホスフィンとしては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリス(4−クロロフェニル)ホスフィン、トリス(4−トリル)ホスフィン、α−ナフチル(フェニル)−4−メトキシフェニルホスフィンが挙げられる。
一般式(w)のR1 〜R3 の2個がアリール基であるホスフィンとしては、例えば、メチルジフェニルホスフィン、メチル(4−メトキシフェニル)フェニルホスフィンが挙げられる。
【0068】
一般式(x)のR4 〜R6 の全てがアリール基であるホスフィンオキシドとしては、例えば、トリフェニルホスフィンオキシド、トリス(4−クロロフェニル)ホスフィンオキシド、トリス(4−トリル)ホスフィンオキシド、α−ナフチル(フェニル)−4−メトキシフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。
一般式(x)のR4 〜R6 の2個がアリール基であるホスフィンオキシドとしては、例えば、メチルジフェニルホスフィンオキシド、メチル(4−メトキシフェニル)フェニルホスフィンオキシドが挙げられる。
【0069】
一般式(y)のR7 〜R9 の全てがアリール基であるホスフィンジハライドとしては、例えば、トリフェニルホスフィンジクロライド、トリフェニルホスフィンジブロマイド、トリフェニルホスフィンジヨーダイドが挙げられる。
【0070】
一般式(z)のホスホニウム塩としては、R10〜R13の全てがアリール基であって、しかも対イオンX- がハロゲンイオン、脂肪族カルボン酸イオン又はフルオロボレートイオンなどであるホスホニウム塩が好適であるが、R10〜R13の1〜3個、特に2〜3個がアリール基であって、残部がアラルキル基又はアルキル基であり、更に対イオンX- がハロゲンイオン、脂肪族カルボン酸イオン又はフルオロボレートイオンであるものであってもよい。
【0071】
一般式(z)のR10〜R13の全てがアリール基であるホスホニウム塩としては、例えば、
テトラフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムヨーダイド、4−クロロフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、4−クロロフェニルトリフェニルホスホニウムブロマイド、4−クロロフェニルトリフェニルホスホニウムヨーダイド、4−エトキシフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、4−エトキシフェニルトリフェニルホスホニウムブロマイド、4−エトキシフェニルトリフェニルホスホニウムヨーダイド、4−メチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、4−メチルフェニルトリフェニルホスホニウムブロマイド、4−メチルフェニルトリフェニルホスホニウムヨーダイド、9−フルオレニルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、9−フルオレニルフェニルトリフェニルホスホニウムブロマイド等の、対イオンX- がハロゲンイオンであるホスホニウム塩、
テトラフェニルホスホニウムアセテート、4−クロロフェニルトリフェニルホスホニウムアセテート、4−エトキシフェニルトリフェニルホスホニウムアセテート、4−メチルフェニルトリフェニルホスホニウムアセテート等の、対イオンX- が脂肪族カルボン酸イオンであるホスホニウム塩、
テトラフェニルホスホニウムフルオロボレート、4−クロロフェニルトリフェニルホスホニウムフルオロボレート、4−エトキシフェニルトリフェニルホスホニウムフルオロボレート、4−メチルフェニルトリフェニルホスホニウムフルオロボレート等の、対イオンX- がフルオロボレートイオンであるホスホニウム塩が挙げられる。
【0072】
前記の有機リン化合物からなる脱CO反応用の触媒は、単独であってもまた二種以上の混合物であってもよく、更に反応液中に均一に溶解及び/又は懸濁されていてもよい。第3工程で使用される有機リン化合物の量はシュウ酸ジアリールエステルに対して0.001〜50モル%、特に0.01〜20モル%程度であることが好ましい。
【0073】
前記の有機リン化合物からなる脱CO反応用の触媒には、無機ハロゲン化合物及び有機ハロゲン化合物から選ばれる少なくとも一種のハロゲン化合物が併用されてもよい。併用されるハロゲン化合物の量は、有機リン化合物に対して0.01〜150倍モル、特に0.1〜100倍モル程度であることが好ましい。
無機ハロゲン化合物としては、アルミニウムのハロゲン化物(塩化アルミニウム、臭化アルミニウム等)、白金族金属のハロゲン化物(塩化白金、塩化ルテニウム、塩化パラジウム等)、リンのハロゲン化物(五塩化リン等)、硫黄のハロゲン化物(塩化チオニル等)、ハロゲン化水素(塩化水素等)、ハロゲン単体(塩素等)などが挙げられる。
また、有機ハロゲン化合物としては、ハロゲン化アルキル(クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、塩化ブチル等)、ハロゲン化アラルキル(塩化ベンジル等)、ハロゲン置換脂肪族カルボン酸(クロロ酢酸、ブロモ酢酸等)、酸ハロゲン化物(塩化オキサリル、塩化プロピオニル、塩化ベンゾイル等)などが挙げられる。有機ハロゲン化合物としては、このように、飽和炭素にハロゲン原子が結合している構造(C−Hal)や、カルボニル炭素にハロゲン原子が結合している構造(−CO−Hal)を有するものが好適である。但し、Halは塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を表す。
【0074】
液相脱CO反応では、例えば、シュウ酸ジアリールエステルと有機リン化合物を主成分とする触媒とを反応装置(反応器)に供給し、100〜450℃、特に160〜400℃、更には180〜350℃の反応温度で、発生する一酸化炭素を除去しながら、シュウ酸ジアリールエステルを液相で脱CO反応させて炭酸ジアリールエステルを生成させることが好ましい。
この場合、反応圧力は特に制限されるものではなく、例えば10mmHg〜10kg/cm2 Gの範囲であればよい。また、特別の溶媒は必要とされないが、必要に応じて、ジフェニルエーテル、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリドン等の非プロトン性の溶媒を使用してもよい。
【0075】
脱CO反応は、必要であれば触媒の存在下に、気相で行うこともできる。
脱CO反応が気相で行われる場合、触媒としては、シュウ酸ジアリールエステルの脱CO反応を比較的低温(約200〜600℃)で行うことができ、かつ炭酸ジアリールエステルを高い選択率(少なくとも50モル%以上、特に60〜100モル%)で得ることができる触媒が好ましい。
気相反応で使用される脱CO触媒としては、例えば、アルカリ土類金属の酸化物からなる触媒が挙げられる。
アルカリ土類金属の酸化物としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属の酸化物や、これらアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、硝酸塩又は硫酸塩を必要であれば酸素存在下で加熱処理して得られるものなどを好適に挙げることができる。アルカリ土類金属の酸化物は、粉末、粒状もしくは成型体で、そのまま又は担体(アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライト等)に担持された状態で使用される。
【0076】
気相脱CO反応では、例えば、触媒が充填された反応器に、シュウ酸ジアリールエステル及び窒素ガス等の不活性ガスを含有する原料ガスを10〜10000hr-1、好ましくは50〜5000hr-1の空間速度で供給し、200〜600℃、特に300〜500℃の反応温度で、シュウ酸ジアリールエステルを気相で脱CO反応させて炭酸ジアリールエステルを生成させることが好ましい。反応圧力は気相で反応を行うことができれば特に制限されないが、通常は常圧もしくは減圧下で反応を行うことが好ましい。
なお、シュウ酸ジアリールエステルは、固体状態、溶融状態又は溶媒に溶解された溶液状態のものを気化器又は気化層等で気化させて、窒素ガス等の不活性ガスと共に反応器に導入される。
【0077】
第3工程における反応装置(反応器)としては、必要であれば触媒の存在下で、シュウ酸ジアリールエステルを脱CO反応させて、COガスと共に炭酸ジアリールエステルを生成させることができるものであれば、どのような形式の反応器でも使用することができる。
この反応器としては、脱CO反応が液相で行われる場合は、1槽又は多槽式の完全混合型反応器(攪拌槽)、塔型反応器などを用いることができ、脱CO反応が気相で行われる場合は、単管式又は多管式の熱交換式管型反応器などを用いることができる。反応器の材質は脱CO反応における充分な耐熱性があれば特に制限されるものではなく、例えば、ガラス、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム合金、ニッケル合金等が適宜使用される。
【0078】
第3工程における液相脱CO反応では、得られる反応液に未反応のシュウ酸ジアリールエステル及び脱CO触媒が含有されているので、この反応液から炭酸ジアリールエステルを回収するには、蒸発器、薄膜蒸発器などの蒸発装置で触媒を分離して回収した後、この蒸発留分をある程度の理論段数(特に5〜50段)を有する充填塔や棚段塔などの蒸留装置を用いて蒸留する一般的に用いられる方法が好適に用いられる。
また、反応液を前記の充填塔や棚段塔などの蒸留装置で蒸留して、塔頂部から炭酸ジアリールエステルを抜き出すと共に、塔底部から未反応のシュウ酸ジアリールエステルや脱CO触媒を含有する缶液を抜き出す方法も用いられる。抜き出された缶液は脱CO反応の反応器へ循環供給される。
このようにして、上記の反応液から炭酸ジアリールエステルを回収して高純度の炭酸ジアリールエステルを得ることができる。
気相脱CO反応で反応器から導出される反応ガスを凝縮させて得られる反応液には未反応のシュウ酸ジアリールエステル等が含有されているが、上記のような充填塔や多段蒸留塔を用いて蒸留する一般的な方法により、反応液から炭酸ジアリールエステルを容易に回収することができる。
【0079】
なお、第3工程で生成する一酸化炭素は、前記のようにシュウ酸ジアルキルエステルの製造のために第1工程に供給されて再使用される。この一酸化炭素は、ほぼ100%の純度であるので、特に精製することなく第1工程に供給することができるが、第3工程の触媒種や反応条件により、フェノール、二酸化炭素、塩化水素等の不純物が含有される場合は、吸収塔やスクラバーなどの簡単な精製装置を通した後に第1工程に供給される。なお、第1工程よりも第3工程の反応圧力が低い場合は圧縮機で昇圧されて供給される。
【0080】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、分析はガスクロマトグラフィーにより行った。
実施例1
〔シュウ酸ジメチルエステルの製造〕
内径27.1mm、高さ500mmチューブよりなるステンレス製反応器に、直径5mm、長さ3mmのペレット状α−アルミナにパラジウムが0.5重量%担持された固体触媒を充填した。反応器のシェル側に熱水を通して触媒層の温度を103〜115℃に保持した後、触媒層の上部から、ダイアフラム式ガス循環ポンプにより、予め熱交換器で90℃に予熱した原料ガス(組成:一酸化炭素22.0容量%、亜硝酸メチル10.0容量%、一酸化窒素4.0容量%、メタノール5.2容量%、二酸化炭素1.7容量%、窒素57.1容量%)を、1.15Nm3 /hr、2kg/cm2 Gで供給して、シュウ酸ジメチルエステルを製造した。
【0081】
触媒層を通過したガスを、ラシヒリングを充填した、内径43mm、高さ1000mmの気液接触吸収塔の塔底に導いて、その塔頂から導入したメタノール0.42L/hrと約35℃(塔頂温度30℃、塔底温度40℃)で向流接触させた。そして、塔底から、凝縮液(組成:シュウ酸ジメチルエステル42.6重量%、炭酸ジメチルエステル1.8重量%、ギ酸メチル0.03重量%、メタノール42.6重量%)0.3kg/hrを得て、塔頂から、非凝縮ガス(組成:一酸化炭素16.2容量%、亜硝酸メチル4.9容量%、一酸化窒素8.1容量%、メタノール15.9容量%、二酸化炭素1.8容量%、窒素53.1容量%)1.23Nm3 /hrを得た。
【0082】
この非凝縮ガスに酸素13.8NL/hr及び一酸化窒素0.5NL/hrを混合した混合ガスを、内径83mm、高さ1000mmの気液接触式再生塔の塔底に導いて、その塔頂から導入したメタノール0.33L/hrと塔頂温度30℃、塔底温度40℃で向流接触させ、ガス中の一酸化窒素を亜硝酸メチルに再生した。再生塔の塔頂から導出された再生ガス(組成:一酸化炭素18.2容量%、亜硝酸メチル10.4容量%、一酸化窒素4.2容量%、メタノール5.4容量%、二酸化炭素2.0容量%、窒素53.0容量%)1.1Nm3 /hrは、前記循環ポンプに導いて2.1kg/cm2 Gに昇圧し、一酸化炭素49NL/hr(2.1kg/cm2 G)を補給した後、前記反応器に供給した。
再生塔の塔底から導出された、5.7重量%の水を含有するメタノール0.48L/hrは、蒸留により水を除去した後、再生塔におけるメタノール源として再使用した。
【0083】
一方、前記の凝縮液は、その50時間分を、内径150mm、高さ7500mmの蒸留塔(塔底部容量100L)でバッチ蒸留した(塔底温度140℃、圧力350mmHg)。そして、純度99.9重量%のシュウ酸ジメルエステル5.8kgを得た。
【0084】
実施例2
〔シュウ酸ジフェニルエステルの製造〕
実施例1で得られたシュウ酸ジメチルエステルを用いて、以下のようにシュウ酸ジフェニルエステルを製造した。
1L容のボトムフラスコを備えた、内径32mm、50段のオールダーショーの上から12段目に、フェノール54.1重量%、シュウ酸ジメチルエステル45.3重量%、テトラフェノキシチタン0.5重量%を含有する溶液を600ml/hrで供給すると共に、ボトムフラスコをマントルヒーターで190℃に加熱し、塔頂部からの蒸気を冷却器で凝縮して還流比2で抜き出しながら、エステル交換反応を行った。
塔の状態が安定した時点で(供給を開始して4時間後)、塔底液の組成は、シュウ酸ジフェニルエステル6.23重量%、シュウ酸メチルフェニルエステル29.95重量%、シュウ酸ジメチルエステル23.88重量%、フェノール39.41重量%であり、その抜き出し量は約603g/hrであった。また、このとき、塔頂からは、メタノール99.7重量%、シュウ酸ジメチルエステル0.3重量%の組成の液を約44g/hrで抜き出した。
【0085】
このエステル交換反応の塔底液を、前記と同様のオールダーショーの上から12段目に、200mmHgの減圧下、600ml/hrで供給すると共に、ボトムフラスコをマントルヒーターで200℃に加熱し、塔頂部からの蒸気を冷却器で凝縮して、還流することなく抜き出しながら、不均化反応を行った。
塔の状態が安定した時点で(供給を開始して4時間後)、塔底液の組成は、シュウ酸ジフェニルエステル65.27重量%、シュウ酸メチルフェニルエステル18.43重量%、シュウ酸ジメチルエステル1.02重量%、フェノール13.93重量%であり、その抜き出し量は約258g/hrであった。また、このとき、塔頂からは、メタノール1.57重量%、シュウ酸ジメチルエステル2.97重量%、フェノール48.51重量%、シュウ酸メチルフェニルエステル2.97重量%シュウ酸ジフェニルエステル0.42重量%の組成の液を約371g/hrで抜き出した。
【0086】
この不均化反応の塔底液を、伝熱面積0.1m2 の回転薄膜式蒸発器に、15mmHgの減圧下、200ml/hrで供給すると共に、蒸発器を熱媒で200℃に加熱して、シュウ酸ジメチルエステル、フェノール、シュウ酸メチルフェニルエステル及びシュウ酸ジフェニルエステルを連続で蒸発させた。得られた蒸気を、5×5mmのヘリパックを充填した、内径30mm、長さ2mのガラス製蒸留塔の上から80cmの位置に供給して、連続蒸留を行った。そして、蒸留塔の塔頂部から、シュウ酸ジメチルエステル3.05重量%、フェノール41.73重量%、シュウ酸メチルフェニルエステル55.21重量%の組成の液を約68ml/hrで抜き出し、塔底から40cm上の位置より、純度99.9重量%のシュウ酸ジフェニルエステルを約120g/hrで抜き出した。不純物としては、フェノールが0.04重量%、シュウ酸メチルフェニルエステルが0.05重量%であった。また、蒸発器の底部からは約2.5重量%(金属換算)のチタンを含む液を約14g/hrで抜き出した。
【0087】
実施例3
〔炭酸ジフェニルエステルの製造〕
実施例2で得られたシュウ酸ジフェニルエステルを用いて、以下のように炭酸ジフェニルエステルを製造した。
シュウ酸ジフェニルエステルにテトラフェニルホスホニウムクロライドを1モル%加え、150℃に加熱して溶解した。この液を、温度計、攪拌機及びオーバーフロー管を備えた内容積1Lのガラス製反応器2個を連結した装置に、定量ポンプを用いて300mL/hrで供給すると共に、2個の反応器をマントルヒーターで加熱して230℃に保持してシュウ酸ジフェニルエステルの脱カルボニル反応を行った。なお、各反応器のオーバーフロー位置は600mLとした。
供給開始20時間後、第2反応器のオーバーフロー液(脱CO反応の反応液)の組成は、シュウ酸ジフェニルエステル14.6重量%、炭酸ジフェニルエステル84.0重量%、フェノール0.08重量%であり、その量は約270mL/hrであった。また、各反応器から発生するガスの組成は一酸化炭素約100%であり、その量は25NL/hrであった。
【0088】
この脱CO反応の反応液を、実施例2と同様の回転薄膜式蒸発器に20mmHgの減圧下、250ml/hrで供給すると共に、蒸発器を熱媒で200℃に加熱してテトラフェニルホスホニウムクロライドを分離した。得られた留出液(組成:炭酸ジフェニルエステル92.2重量%、シュウ酸ジフェニルエステル7.7重量%)を、実施例2と同様のガラス製蒸留塔に供給して連続蒸留し(塔頂圧力20torr、還流比2)、純度99.9%の炭酸ジフェニルエステル約220ml/hrで得た。
【0089】
実施例4
〔シュウ酸ジメチルエステルの製造〕
実施例1の再生ガスに補給する一酸化炭素として、実施例3の脱CO反応で発生した一酸化炭素25NL/hrをダイアフラム式圧縮機で2.1kg/cm2 Gまで昇圧して、一酸化炭素24NL/hr(2.1kg/cm2 G)と共に再生ガスに補給したほかは、実施例1と同様にシュウ酸ジメチルエステルを製造した。その結果は実施例1と全く同様であった。
【0090】
実施例5
〔シュウ酸ジメチルエステルの製造〕
実施例1の再生塔に供給するメタノールとして、実施例2のエステル交換反応で塔頂から抜き出された液(組成:メタノール99.7重量%、シュウ酸ジメチルエステル0.3重量%)を蓄積して、その0.33L/hrを再生塔の塔頂から供給したほかは、実施例1と同様にシュウ酸ジメチルエステルを製造した。その結果は実施例1と全く同様であった。
【0091】
【発明の効果】
本発明の、一酸化炭素と亜硝酸アルキルエステル及び/又は低級アルコールとを出発原料としてシュウ酸ジアルキルエステルを生成させ、そのシュウ酸ジアルキルエステルとフェノール化合物とを反応させてシュウ酸ジアリールエステルを生成させ、そしてそのシュウ酸ジアリールエステルを脱CO反応させて、炭酸ジアリールエステルと一酸化炭素とを生成させる方法により、公知のホスゲン法又は非ホスゲン法による炭酸ジアリールエステルの製造法における問題点を解決できる、全く新規な炭酸ジアリールエステルの製造法を提供することができる。また、本発明は、シュウ酸ジアルキルエステルとフェノール化合物との反応で反応系外へ除去される低級アルコールを回収してシュウ酸ジアルキルエステルを生成させる反応のために再使用でき、更にシュウ酸ジアリールエステルの脱CO反応で反応系外へ除去される一酸化炭素も回収してシュウ酸ジアルキルエステルを生成させる反応のために再使用することができるので、工業的に優れた炭酸ジアリールエステルの製造法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造プロセスを概略示す図である。
【図2】本発明のジフェニルカーボネート(DPC)製造プロセスの一例を示す図である。

Claims (6)

  1. 第1工程で、一酸化炭素と亜硝酸アルキルエステルとを反応させてシュウ酸ジアルキルエステルを生成させ、
    第2工程で、そのシュウ酸ジアルキルエステルとアリールアルコールとを反応させてシュウ酸ジアリールエステルを生成させ、
    第3工程で、そのシュウ酸ジアリールエステルを脱CO反応させて炭酸ジアリールエステルと一酸化炭素を生成させると共に、
    第2工程で副生する低級アルキルアルコールを回収し、その低級アルキルアルコールを第1工程で回収される一酸化窒素及び分子状酸素と反応させて亜硝酸アルキルエステルを生成させ、その亜硝酸アルキルエステルを第1工程に供給することを特徴とする炭酸ジアリールエステルの製造法。
  2. 第1工程で、一酸化炭素と亜硝酸アルキルエステルとを白金族金属系触媒の存在下で反応させてシュウ酸ジアルキルエステルを生成させることを特徴とする請求項1記載の炭酸ジアリールエステルの製造法。
  3. 第2工程の反応において、副生する低級アルキルアルコールを反応系外へ除去しながら、シュウ酸ジアルキルエステルとアリールアルコールとを触媒の存在下でエステル交換反応させてシュウ酸アルキルアリールエステルを生成させ、次いで、副生するシュウ酸ジアルキルエステルを反応系外ヘ除去しながら、そのシュウ酸アルキルアリールエステルを触媒の存在下で不均化反応させてシュウ酸ジアリールエステルを生成させることを特徴とする請求項1記載の炭酸ジアリールエステルの製造法。
  4. 第3工程で生成する炭酸ジアリールエステルを回収すると共に、第3工程で副生する一酸化炭素を回収して第1工程に供給することを特徴とする請求項1記載の炭酸ジアリールエステルの製造法。
  5. アリールアルコールがフェノールであることを特徴とする請求項1記載の炭酸ジアリールエステルの製造法。
  6. 脱CO反応を有機リン化合物の存在下で液相で行うことを特徴とする請求項1記載の炭酸ジアリールエステルの製造法。
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