JP3823852B2 - 電子写真感光体の製造方法、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 - Google Patents
電子写真感光体の製造方法、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体の製造方法、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年電子写真感光体は、高速、かつ高印字品質が得られるという利点を有するため、複写機及びレーザービームプリンター等の分野において多く利用されている。これら電子写真装置において用いられる電子写真感光体として、従来からのセレン、セレンーテルル合金、セレンーヒ素合金、硫化カドミウム等無機光導電材料を用いた電子写真感光体に比べ、安価で製造性及び安全性の点で優れた利点を有するフタロシアニン系の顔料等の有機光導電材料を電荷発生物質として含有した電子写真感光体が主流を占める様になってきている。
【0003】
このような感光体の中でも、露光により電荷を発生する電荷発生層と電荷を輸送する電荷輸送層とからなる感光層を有する機能分離型感光体は、感度・帯電性及びその繰り返し安定性等、電子写真特性の点で優れており、種々の構成の提案が成され、実用化されている。
【0004】
この機能分離型感光体の場合、現在ではアルミニウム基材等の導電性支持体層上に下引層を形成し、その後、下引層上に電荷発生層及び電荷輸送層を順次形成する場合が多い。
【0005】
特に、近年、電子写真装置においては、コロトロンに代わりオゾン発生が少ない接触帯電方式の帯電装置が用いられるようになってきている。そして、電子写真装置に搭載されている感光体の感光層における電荷発生物質(顔料)の分散状態が不均一である場合、導電性支持体層の表面に凹凸や汚れがある場合、導電性支持体層上に塗工により形成される下引層や感光層が塗膜むら等により厚さが塗工された領域の全域にわたり均一でない場合、或いは、感光層中に異物が混入している場合等、感光体に局所的な欠陥部位がある場合に、接触帯電時に感光体の欠陥部位に局所的に高電場がかかり、電気的なピンホールを生じ、これが画質欠陥となるという問題があった。
【0006】
また、上記のピンホールリークは、電子写真装置の作動中において、該装置を構成する部材から発生するカーボンファイバーやキャリア粉等の導電性の異物やゴミが感光体に接触又は感光体中に貫入することによっても発生する場合があった。
【0007】
上述した画像の画質欠陥の発生を防止して感光体の繰り返し使用に対する画質の安定性や環境安定性の改善するためには、感光層の性能向上のみならず感光層の下地となる下引層の性能向上も必要とされており、繰り返し使用による電荷蓄積性の少ない下引層の実現が求められている。
【0008】
そのため、導電性支持体層(基材)の欠陥を隠蔽しつつ残留電位の上昇等を改善して安定な電気特性を得るために、導電性微粉末を含有させた層を導電性支持体層上に形成した感光体を形成する方法の検討が行われている。
【0009】
このような方法としては、例えば、アルミニウム基材等の導電性支持体層上に導電性微粉末を含有させた層を形成し、更にこの導電性微粉末を含有させた層上に従来の下引層と同様の構成を有する層を形成した2層構造の下引層を有する感光体を形成する方法が、例えば、特開平3−45961号公報に提案されている。この方法の場合は、導電性微粉末を含有させた層に導電性支持体層の表面の凹凸や汚れ等の欠陥の隠蔽を行わせるとともに電気抵抗の調整を行わせ、従来の下引層と同様の構成を有する層にブロッキング(電荷注入制御)機能を持たせている。
【0010】
また別の方法としては、導電性支持体層上に導電性微粉末を含有させた層のみを下引き層として形成し、この層に上述のブロッキング機能と抵抗調整機能とを両有させた構成を有する感光体を形成する方法があり、例えば、このような感光体及びその製造方法は、特開平9−258469号公報、特開平9−96916号公報及び特開2001−75296号公報に開示されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来の電子写真感光体は、繰返し使用に耐え得る十分な電気特性を得ることが未だ不十分であり、電子写真感光体を繰り返し使用するときに、残留電位の上昇によって画像上に黒点等のかぶりが発生する問題があった。
【0012】
すなわち、上述の特開平3−45961号公報に記載の2層構造の下引層を有する電子写真感光体はリーク耐性に劣るため先に述べたピンホールリークが生じ易く、そのため感光体の帯電性が低下し、繰返し使用にともなって画像濃度が低下する問題があった。更に、この場合、2層構造のため感光体の製造に手間とコストがかかっていた。
【0013】
また、上述の特開平9−258469号公報、特開平9−96916号公報及び特開2001−75296号公報に記載の電子写真感光体は、下引層は単層の構造であるため感光体の製造プロセスを簡略化することができコストも低減できるが、抵抗制御の機能と電荷注入制御の機能を1つの層に合わせて備える必要があり、下引層の構成材料を選択する上での制約があった。
【0014】
また、下引層のリーク耐性を高めてピンホールリークの発生を防止する観点からは、下引層の層厚を厚くすること(以下、厚膜化という)が有効であるが、厚膜化するためには良好な電気特性を得るため下引層の電気抵抗を低減する必要がある。しかし、電気抵抗を低減すると、電荷のブロッキング機能が低下し、カブリ等の画質欠陥の発生を増大させる傾向にある。また、層厚の大きな下引層は形成することが困難となったり、形成後の機械的強度が不十分となるという問題があった。更に、下引層の層厚を大きくすると感光体の感度が低下する問題があった。
【0015】
そのため、これまで酸化チタン粒子などの導電性の金属酸化物粒子を含有させた下引層の層厚は0.01〜20μm程度の範囲にとどまっており、例えば、特開平9−258469号公報、特開平9−96916号公報及び特開2001−75296号公報に記載の電子写真感光体の下引層の層厚は上述の理由から20μmよりも大きくすることは好ましくないとされている。
【0016】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、繰り返し使用に伴う電気特性の低下を十分に防止することのできる高い耐久性と高い解像品質を有する電子写真感光体の製造方法並びにこれにより得られる電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、下引層中の金属酸化物微粒子の分散状態は下引層の膜抵抗に大きな影響を与えており、所望の膜抵抗値を有する良好な電気特性を有する下引層を得るには金属酸化物微粒子の分散状態をコントロールすることが重要であることを見出した。
【0018】
例えば、金属酸化物微粒子を上記の表面処理を行わずに下引層中に分散させる場合、下引層の膜抵抗値は置かれている環境により変動が大きく、例えば、多湿条件下では膜抵抗値の低下が発生し、低湿条件下では膜抵抗値の上昇が発生する。このように、置かれている環境によって下引層の膜抵抗値が大きく変動すると、これを備える電子写真感光体の、画像品質、画質維持性及びリーク耐性に重大な欠陥を与えることになる。
【0019】
更に、本発明者らは、金属酸化物粒子を加水分解性の官能基を有する有機金属化合物により表面処理する際の金属酸化物粒子と表面処理剤となる有機金属化合物との混合比が、下引層中の金属酸化物微粒子の分散状態に大きな影響を及ぼしており、ひいては、下引層の電気特性、これを備える電子写真感光体の電気特性に大きな影響をおよぼしていることを見出した。
【0020】
そして本発明者らは、上記の金属酸化物粒子と有機金属化合物との混合比と電子写真感光体の電気特性とについて、これまで当業者が着目していなかった表面処理後の金属酸化物粒子に対する蛍光X線分析データに着目して検討したところ、表面処理に用いられた有機金属化合物を構成する金属元素の特性X線強度I1と、表面処理された酸化亜鉛粒子を構成する金属元素の特性X線強度I2との比「I1/I2」が特定の範囲の条件を満たす構成を有する酸化亜鉛粒子(表面処理済みのもの)を選択的に用いた場合に、下引層中の酸化亜鉛微粒子の分散状態を容易に向上させることができることを見出した。
そしてこの場合に、下引層の膜抵抗値の環境変動を充分に抑制でき、下引層の電気特性及びこれを備えた電子写真感光体の電気特性を容易かつ再現性よく向上させることができることを本発明者らは見出し、本発明に到達した。
【0021】
すなわち、本発明は、導電性支持体層と、顔料を含む感光層と、導電性支持体層と感光層との間に配置される下引層と、を有しており、かつ、下引層には、加水分解性の官能基を有する有機金属化合物を用いて表面処理された酸化亜鉛粒子が含有されている電子写真感光体の製造方法であって、下記式(1)で表される条件を満たす前記表面処理された酸化亜鉛粒子を用いて下引層を形成すること、を特徴とする電子写真感光体の製造方法を提供する。
1.0×10−6≦(I1/I2)≦1.0×10−3・・・(1)
[式(1)中、
I1は、表面処理された酸化亜鉛粒子に対する蛍光X線分析から得られる有機金属化合物を構成する金属元素の特性X線強度を示し、
I2は、表面処理された酸化亜鉛粒子を構成する金属元素の特性X線強度を示す。]
【0022】
なお、本明細書中では、加水分解性の官能基を有する有機金属化合物(以下、「加水分解性有機金属化合物」という)を用いて表面処理された後の金属酸化物粒子を「金属酸化物粒子A」という。また、金属酸化物粒子Aに対して表面処理される前の金属酸化物粒子を「金属酸化物粒子B」といい、金属酸化物粒子Bは具体的には酸化亜鉛粒子である。従って、金属酸化物粒子Aは、金属酸化物粒子Bの表面の一部又は全部に加水分解性有機金属化合物を原料とする被膜が形成された状態の粒子を示す。そのため、金属酸化物粒子Aに対して行われる蛍光X線分析から得られる金属酸化物粒子Aを構成する全ての金属元素の特性X線には、金属酸化物粒子Bを構成していた金属元素の特性X線と、加水分解性有機金属化合物を構成していた金属元素の特性X線とが含まれる。
【0023】
ここで、本発明において、「特性X線強度I2」とは、金属酸化物粒子Aに対して行われる蛍光X線分析から得られる金属酸化物粒子Aを構成する全ての金属元素の特性X線のうち金属酸化物粒子Bを構成していた金属元素の特性X線の強度を示す。
【0024】
また、本発明において、「特性X線強度I1」とは、金属酸化物粒子Aに対して行われる蛍光X線分析から得られる金属酸化物粒子Aを構成する全ての金属元素の特性X線のうち、加水分解性有機金属化合物を構成していた金属元素の特性X線の強度を示す。なお、加水分解性有機金属化合物を構成する金属元素が複数種ある場合には、各金属元素の特性X線強度の総和が特性X線強度I1となる。また、複数種の加水分解性有機金属化合物を原料とする場合にも各金属酸化物粒子を構成する各金属元素の特性X線強度の総和が特性X線強度I1となる。更に、本発明において、加水分解性有機金属化合物を構成する金属元素にはケイ素も含まれるものとする。
【0025】
本発明の電子写真感光体の製造方法によれば、上述の式(1)の条件は、下引層の電気特性の向上に直接影響する表面処理後の金属酸化物粒子Aの組成及び構造に基づく条件であるので、式(1)の条件を満たす金属酸化物粒子Aのみを選択的に下引層に含有させることにより、下引層中の金属酸化物粒子Aの分散状態を容易且つ充分に均一にすることができる。そのため、繰り返し使用に伴う電荷蓄積性の少ない優れた下引層を構成することができる。更に、この下引層を用いることにより、繰り返し使用に伴う電気特性の低下を十分に防止することのできる高い耐久性と高い解像品質を有する電子写真感光体を容易かつ確実に製造することができる。
【0026】
これまで、金属酸化物Aの表面一部又は全部に形成された被膜の組成や構造は未だ充分に解明されていないため、下引層中に含有させた場合に均一に分散することができる金属酸化物粒子Aの組成や構造を明確に決定できていなかった。そのため、従来の電子写真感光体の製造方法においては、得られた下引層の電気特性及び電子写真感光体の電気特性の結果を金属酸化物Aの製造条件、つまり、金属酸化物粒子Bの表面処理条件(例えば、金属酸化物粒子Bと加水分解性有機金属化合物との混合比等)にフィードバックし、最適の電気特性が得られたときの処理条件を決定していた。
【0027】
すなわち、従来の電子写真感光体の製造方法では、金属酸化物粒子Bの表面処理条件をコントロールするのみであったので、下引層に含有させたときに良好に分散する金属酸化物粒子Aを選択的に得ることができず、所望の電気特性を有する下引層及び電子写真感光体を再現性よく製造することができなかった。
【0028】
これに対して、本発明では、式(1)の条件に基づいて金属酸化物粒子Aを選択して使用するため、下引層に含有させたときの金属酸化物粒子Aの分散状態を直接コントロールして、良好な状態にすることができるので、従来よりも所望の電気特性を有する下引層及び電子写真感光体を再現性よく確実に製造することができる。
【0029】
また、金属酸化物粒子Aの蛍光X線分析は比較的容易にでき、式(1)の条件を満たす金属酸化物粒子Aを選択して使用することも容易にできるので、電子写真感光体の製造方法によれば、所望の電気特性を有する下引層及び電子写真感光体を容易に製造することができる。
【0030】
更に、本発明の製造方法により得られる電子写真感光体は、金属酸化物微粒子Aが下引層中に均一に分散させており、下引層の膜抵抗値の環境変動を充分に抑制できるため、下引層を容易に厚膜化することができる。例えば、下引層の層厚を例えば15μm以上に調節して形成することができる。このような厚膜化により、下引層のリーク耐性を高めてピンホールリークの発生を有効に抑制することが容易にできる。また、このような厚膜化により、電子写真感光体を使用中に異物が感光層に付着しても、これが下引層を貫いて導電性支持体層にまで混入することを有効に防止することができる。従って、このような下引層を容易に厚膜化することができるという観点からも、本発明の製造方法によれば、繰り返し使用に伴う電気特性の低下を充分に防止することのできる高い耐久性と高い解像品質を有する電子写真感光体を得ることができる。
【0031】
ここで、本発明において、I1/I2が1.0×10-6未満となると、下引層から感光層(電荷発生層)への電荷注入を抑制できなくなるためカブリなどの画質欠陥の発生を防止できなくなる。一方、I1/I2が1.0×10-3を超えると、下引層の抵抗値が高くなりすぎるため、下引層の残留電位の上昇を充分に防止できなくなる。
【0032】
また、本発明は、導電性支持体層と、顔料を含む感光層と、導電性支持体層と感光層との間に配置される下引層と、を有する電子写真感光体であって、下引層には、加水分解性の官能基を有する有機金属化合物を用いて表面処理された酸化亜鉛粒子が含有されており、表面処理された酸化亜鉛粒子が、下記式(1)で表される条件を満たしていること、を特徴とする電子写真感光体を提供する。
1.0×10−6≦(I1/I2)≦1.0×10−3・・・(1)
[式(1)中、
I1は、表面処理された酸化亜鉛粒子に対する蛍光X線分析から得られる有機金属化合物を構成する金属元素の特性X線強度を示し、
I2は、表面処理された酸化亜鉛粒子を構成する金属元素の特性X線強度を示す。]
【0033】
本発明の電子写真感光体は、先に述べた本発明の製造方法により製造されるため、繰り返し使用に伴う電気特性の低下を十分に防止することのできる高い耐久性と高い解像品質を有する。
【0034】
更に、本発明は、上述の本発明の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、クリーニング手段又は除電手段の少なくとも一つの手段とを一体に有し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジを提供する。
【0035】
これにより、本発明のプロセスカートリッジは、繰り返し使用するときに画像上に黒点等のかぶりが発生してしまうことなく高い解像品質を得ることができる。
【0036】
更に、本発明は、上述の本発明の電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電手段により帯電される電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とする電子写真装置を提供する。
【0037】
これにより、本発明の電子写真装置は、繰り返し使用するときにコピー画像上に黒点等のかぶりが発生してしまうことなく高い解像品質を長期間維持することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を付することとする。
【0039】
なお、本発明の電子写真感光体の製造方法は、電子写真感光体の下引層を形成する工程において、金属酸化物粒子Bに表面処理した後、得られる金属酸化物粒子Aのうちの式(1)の件を満たす金属酸化物粒子Aを選択的に使用すればよく、下引層以外の電子写真感光体の他の構成要素の製造工程における手順やその際の条件は特に限定されず、例えば、公知の技術を用いることができる。そのため、本発明の電子写真感光体の製造方法の好適な実施形態については、その腰部となる下引層の形成工程の説明を以下の本発明の電子写真感光体の各実施形態の下引層の説明において行うこととする。
【0040】
[第一実施形態]
図1は、本発明の電子写真感光体の第一実施形態を示す断面図である。図1に示すように、電子写真感光体100は、導電性支持体層3と、下引層4と、感光層6とから構成されている。この電子写真感光体100は、先に述べた本発明の電子写真感光体の製造方法により製造されるものである。
【0041】
導電性支持体層3は、導電性を有していれば特に限定されるものはなく、例えば、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、ニッケル等の金属ドラムを使用することができる。また、ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に、アルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン・ニッケルークロム・ステンレス鋼・銅ーインジウム等の金属を蒸着することによって導電処理したドラム状・シート状・プレート状のもの使用できる。
【0042】
更には、ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に、酸化インジウム・酸化錫などの導電性金属化合物を蒸着するか、又は金属箔をラミネートすることによって導電処理したドラム状・シート状・プレート状の物のもの使用できる。また、この他にも、カーボンブラック・酸化インジウム・酸化錫ー酸化アンチモン粉・金属粉・沃化銅等をバインダー樹脂に分散し、ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に塗布することによって導電処理したドラム状・シート状・プレート状の物なども使用することができる。
【0043】
ここで、金属パイプ基材を導電性支持体層3として用いる場合、その表面は素管のままであっても、事前に鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング、着色処理などの処理を行なうことが好ましい。表面処理を行ない基材表面を粗面化することによりレーザービームのような可干渉光源を用いた場合に発生しうる感光体内での干渉光による木目状の濃度斑を防止することができる。
【0044】
下引層4は、先に述べたように、加水分解性有機金属化合物を用いて金属酸化物粒子Bを表面処理することにより得られた金属酸化物粒子Aと、バインダー樹脂とを含んでいる。そして、下引層4は、感光層6の帯電時において、導電性支持体層3から感光層6への電荷の注入を阻止する機能を有する。また、この下引層4は、感光層6を導電性支持体層3に対して一体的に接着保持せしめる接着層としても機能する。更に、この下引層4は、導電性支持体層3の光反射を防止する機能を有する。
【0045】
下引層4の層厚は可能な限り厚い方が外部からの貫入物質の効果を阻止しやすくなりリーク耐性が向上する一方、層厚が、例えば、10μm以下のような薄膜では十分なリーク耐性を有しない。先に述べたように、本発明の製造方法によれば下引層4を容易に厚膜化することができる。下引層4のリーク耐性を高めてピンホールリークの発生を効果的に防止する観点から、下引層4の層厚は15〜50μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。
ここで、下引層4の層厚が50μmを超えると、金属酸化物粒子等の含有物質の分散性を良好に保つことが困難となり、残留電荷の増加による画質低下が生じる傾向が大きくなる。またこの場合、層厚を均一にすることも困難となる傾向が大きくなり、製造コストも増大するおそれがある。
【0046】
但し、十分なリーク耐性を有しており上述のリーク欠陥の発生が懸念されないような場合には、下引層の層厚は15μmより薄く設定することが可能であり、この場合には0.1μm程度の薄膜まで適用可能である。
【0047】
また、本発明の電子写真感光体の下引層に使用されるバインダー樹脂は、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などを用いることができる。
中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく用いられる。なお、金属酸化物微粒子Bとバインダ樹脂との配合比率は所望の電子写真感光体の特性を得られる範囲で任意に設定できる。
【0048】
下引層4の電気抵抗値は104〜1013Ωcmであることが好ましく、108〜1013Ωcmであることがより好ましく、109〜1012Ωcmであることが更に好ましい。抵抗値が104Ωcm未満であると、十分なリーク耐性を得ることが困難となる傾向が大きくなり、1013Ωcmを超えると、残留電位上昇を引き起こしてしまう傾向が大きくなる。下引層4の電気抵抗値は金属酸化物粒子A自体の電気抵抗値とその添加量を変化させること、金属酸化物粒子Aのバインダー樹脂中への分散状態を変化させることで制御することができる。
【0049】
金属酸化物粒子Bは、酸化錫、酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の粒子であることが好ましい。
【0050】
金属酸化物粒子Bの粒径は、平均粒子径が100nm以下がであることが好ましい。なお、ここでいう粒径とは、平均1次粒径を意味する。金属酸化物粒子Bとしては、粉体抵抗値が102〜1011Ωcmであるものが利用可能であるが、下引層4の優れたリーク耐性を得る観点から、特に、粉体抵抗値が104〜1010Ω・cmであるものが好ましい。102Ωcm未満であると、十分なリーク耐性が得られず、1011Ωcmを超えると残留電位の上昇がおこる傾向が大きくなる。
【0051】
また、金属酸化物微粒子Bの比表面積は電子写真特性に大きく影響するため、金属酸化物微粒子Bの比表面積は10m2/g以上であることが好ましい。比表面積値が10m2/g未満であると、下引層4の帯電性の低下を招きやすくなる傾向が大きくなる。
【0052】
使用環境における温度や湿度の変動による下引層4の電気抵抗値の変動を抑制する観点から、金属酸化物粒子Bは加水分解性有機金属化合物で表面処理され、金属酸化物粒子Aとされている。表面処理により金属酸化物粒子Aとすることにより、下引層4の電気抵抗に大きな影響を与える金属酸化物粒子の分散状態を上述の好適な電気抵抗値を得るのに適した状態に容易にコントロールすることができる。
【0053】
ここで、表面処理とは、金属酸化物粒子Bの表面に加水分解性有機金属化合物を吸着させ、そこで加水分解性有機金属化合物の加水分解性を有する基を加水分解反応させる処理を示す。また、加水分解性有機金属化合物を用いた金属酸化物粒子Bの表面処理は、金属酸化物微粒子Bの全体を覆う処理でもよく、一部分を覆う処理でもよい。
【0054】
本発明において、加水分解性有機金属化合物としては、下記一般式(I)で表されものが好ましい。
RpMYq …(I)
【0055】
ただし、式(II)中、Rは有機基、Mは金属元素またはケイ素、Yは加水分解性の官能基を示し、p、qはそれぞれ1〜4の整数を示し、pとqとの総和はMの原子価に相当する。
【0056】
有機基Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアルール基、トリル基等のアルカリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアリールアルケニル基、スチリル基等のアリールアルケニル基、フリル基、チエニル基、ピロジニル基、イミダゾリル基等の複素環残基等の有機化合物残基であれば特に限定されるものではない。加水分解性有機金属化合物中の有機基Rは、上記の有機化合物残基の中から選択される1種でもよく、2種以上であってもよい。
【0057】
また、加水分解性の官能基Yとしては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等のエーテル基、アセトキシ基、プロピオニルアキシ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、ベンゾイルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、ベンジルオキシカルボニル基等のエステル基、塩素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0058】
更に、Mとしては、アルカリ金属以外であれば特に制限されるものではなく、珪素、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、インジウム、錫、白金等の金属が挙げられる。
【0059】
そして、上記の有機基Rや加水分解性の官能基Yを有する加水分解性有機金属化合物としては、上記の有機基や加水分解性の官能基を置換したシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤及び有機ジルコニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。そして、これらの加水分解性有機金属化合物は単独または2種以上混合して用いることができる。
【0060】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0061】
チタネート系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、ビス(ジオクチルピロホフェート)、イソプロピルトリ(N―アミノエチルーアミノエチル)チタネート等が挙げられる。
【0062】
アルミネート系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルイニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0063】
また、上記の加水分解性有機金属化合物の中ではシランカップリング剤を用いることが好ましく、メルカプト基を有するシランカップリング剤を用いることがより好ましく、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましく用いられる。
【0064】
また、加水分解性有機金属化合物の使用量は先に述べたように、式(1)の件を満たす金属酸化物粒子Aを得ることが可能な量を、表面処理に使用する加水分解性有機金属化合物や金属酸化物粒子Bなどの組み合わせ、表面処理反応の温度、表面処理に使用する装置や調製する金属酸化物粒子Aのスケールなどの表面処理条件に合わせて最適化して設定する。
【0065】
次に、金属酸化物粒子Bの表面処理方法について説明する。加水分解性有機金属化合物による金属酸化物粒子Bの表面処理の方法は特に限定されず、例えば、乾式法、湿式法、気相法など公知の方法を使用してよい。
【0066】
なお、本発明においては、例えば、金属酸化物粒子Bを表面処理した後、得られる金属酸化物粒子Aの中から、式(1)の件を満たす金属酸化物粒子Aを分離してもよいが、例えば、可能な場合には、式(1)の件を満たす金属酸化物粒子Aを得るための再現性の良い金属酸化物粒子Bの表面処理条件を容易に最適化して予め把握しておくことができる場合には、その最適化した金属酸化物粒子Bの表面処理条件により得られた金属酸化物粒子Aの全てを下引層の形成に使用してもよい。
【0067】
例えば、乾式法に基づいて表面処理を行う場合の手順の一例を説明する。先ず、表面処理前に金属酸化物粒子Bを100〜150℃の温度で予備乾燥し、表面吸着水を除去する。この表面吸着水を処理前に除去することによって、金属酸化物粒子B表面に均一に加水分解性有機金属化合物を吸着させることができる。このとき、金属酸化物粒子Bはせん断力の大きなミキサで攪拌しながら予備乾燥させてもよい。
【0068】
次に、加水分解性有機金属化合物を金属酸化物粒子Bの表面に吸着させる。このとき、金属酸化物粒子Bをせん断力の大きなミキサで攪拌しながら、加水分解性有機金属化合物を乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させるか、あるいは、加水分解性有機金属化合物を溶剤(有機溶媒、水等)に溶解させた液を乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させる。これにより、金属酸化物粒子Bの表面に加水分解性有機金属化合物が均一吸着させられる。
【0069】
加水分解性有機金属化合物を金属酸化物粒子Bの表面に吸着させる際の温度は、50℃以上の温度で行われることが好ましい。また、溶剤を使用する場合には溶剤の沸点付近の温度で行うことが好ましい。
【0070】
そして、その後、100℃以上の温度で焼き付け処理を行う。これにより、加水分解性有機金属化合物の加水分解反応を十分に進行させることができる。焼き付け処理は150〜250℃の温度で行うことが好ましい。150℃未満であると、十分に加水分解性有機金属化合物の加水分解反応を十分に進行させることができなくなるおそれがある。250℃を超えると加水分解性有機金属化合物の分解が起こるおそれがある。
【0071】
次に、必要に応じて、表面処理後の金属酸化物粒子Aを粉砕する。これにより、金属酸化物粒子Aの凝集体を粉砕することができるので、下引層4中における金属酸化物粒子の分散性を向上させることができる。
【0072】
次に、湿式法に基づいて表面処理を行う場合の手順の一例を説明する。先ず、金属酸化物微粒子Bを溶剤中に、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミルなどを用いて分散させ、次に、これに加水分解性有機金属化合物を含む液を添加して攪拌し、表面処理反応を進行させる。その後、この液から蒸留により溶剤を留去する。また、溶剤除去後に得られる固形物をさらに100℃以上で焼き付けを行ってもよい。また、乾式法と同様にこの湿式法においても、表面処理前に金属酸化物微粒子Bの表面吸着水を除去してもよい。この表面吸着水除去方法としては、乾式法と同様に加熱乾燥による除去の他に、表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法等が挙げられる。
【0073】
下引層4には、その電気特性の向上、使用環境における形状安定性の向上、画質向上のために、他の添加物を含有させることができる。
【0074】
例えば、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物、2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3',5,5'テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物等の公知の材料を含有させることができる。
【0075】
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0076】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。なお、これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。
【0077】
また、接触帯電時の電流リークの一因となる、外部からの導電性粉等の異物が感光体を貫くことを防止し、耐久性の高い下引層4を形成する観点から、下引層4の硬度を高くすることが有効であり、硬度の指標として下引層4のビッカース硬度を30以上好ましくは35以上とすることが好ましい。
【0078】
また、モアレ像防止の観点から、下引層4の表面粗さは、使用される露光用レーザー波長λとした場合に、1/4n(nは上層の屈折率)〜λに調整されていることが好ましい。なお、ここでいう表面とは、下引層4の感光層6の側の表面である。また、この表面粗さ調整のために下引層4中に樹脂粒子を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)の粒子等を用いることができる。
【0079】
更に、表面粗さ調整のために下引層4の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等を用いることもできる。
【0080】
次に下引層4の形成方法(下引層4の形成工程)について説明する。この下引層4は、上述の金属酸化物粒子Bを少なくとも1種以上の加水分解性金属化合物を用いて表面処理した後にえられる金属酸化物Aのうち、式(1)の条件を満たす粒子を先に述べたバインダー樹脂中に分散させて得られる塗布液を導電性支持体層3上に塗布することにより形成することができる。
【0081】
下引層4の形成用の塗布液を調整するための溶媒としては公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択することができる。
【0082】
例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いることができる。
【0083】
また、これらの分散に用いる溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤としてバインダー樹脂を溶かす事ができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
【0084】
金属酸化物粒子Aをバインダー樹脂中に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの方法を用いることができる。さらにこの下引層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0085】
次に、感光層6について説明する。図1に示すように、感光層6は電荷発生層1と電荷輸送層2とから構成されている。
【0086】
電荷発生層1に含有される顔料(電荷発生物質)は特に限定されず、公知の顔料を使用することができる。
【0087】
赤外光を利用する感光体では、例えば、フタロシアニン顔料、スクアリリウム顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン顔料、ジチオケトピロロピロール顔料を使用することができる。また、可視光レーザを利用する感光体では、例えば、縮合多環顔料、ビスアゾ顔料、ペリレン顔料、トリゴナルセレン、色素増感した金属酸化物等を使用することができる。
【0088】
上述した顔料の中では、優れた画像を得られることから、フタロシアニン系顔料を使用することが好ましい。これにより、特に高感度で、繰り返し使用しても良好な画質を安定して得ることのできる電子写真感光体を構成することが容易にできる。
【0089】
フタロシアニン顔料は一般に数種の結晶型を有しており、目的にあった感度が得られる結晶型であるならば、これらのいずれの結晶型でも用いることができる。特に、フタロシアニン顔料の中でも下記式(1)〜(6)に示されるフタロシアニン顔料が好ましく用いられる。
【0090】
【化1】
【0091】
上記の式(1)〜(6)中、クロロガリウムフタロシアニンとしては、Cukα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の値が7.4°,16.6°,25.5°,28.3°である位置に回折ピークを少なくとも有するものが好ましい。また、チタニルフタロシアニンとしては、Cukα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の値が9.6°,24.1°,27.3°である位置に回折ピークを少なくとも有し、最大ピークを27.3°に有するものが好ましい。
【0092】
また、下記式(1)〜(6)に示されるフタロシアニン顔料以外に、式(4)の配位中心となるGaに結合しているCl原子を−OH基に置換したヒドロキシガリウムフタロシアニンも好ましい。このようなヒドロキシガリウムフタロシアニンとしては、Cukα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の値が7.5°,9.9°,12.5°,16.3°,18.6°, 25.1°,28.1°である位置に回折ピークを少なくとも有するものが好ましい。
【0093】
更に、このような顔料は、公知の方法で製造される顔料結晶を、自動乳鉢、遊星ミル、振動ミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、ニーダー等で機械的に乾式粉砕するか、乾式粉砕後、溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、ニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行うことによって製造することができる。
【0094】
上記の湿式粉砕処理において使用される溶剤としては、芳香族類(トルエン、クロロベンゼン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等)、脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等)、エステル類(酢酸エステル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、さらには数種の混合系、水とこれら有機溶剤の混合系が挙げられる。
【0095】
また、この溶剤は、顔料結晶に対して、1〜200質量部、好ましくは10〜100質量部の範囲で使用する。更に、処理温度は、0℃〜溶剤の沸点、好ましくは10〜60℃の範囲で行う。また、粉砕の際に食塩、ぼう硝等の磨砕助剤を用いることもできる。
【0096】
そして磨砕助剤は顔料に対し0.5〜20倍、好ましくは1〜10倍用いればよい。また、公知の方法で製造される顔料結晶を、アシッドペースティングあるいはアシッドペースティングと前述したような乾式粉砕あるいは湿式粉砕を組み合わせることにより、結晶制御することもできる。
【0097】
アシッドペースティングに用いる酸としては、硫酸が好ましく、濃度(質量パーセント濃度)70〜100%、好ましくは95〜100%のものが使用され、溶解温度は、−20〜100℃好ましくは−20〜60℃の範囲に設定される。濃硫酸の量は、顔料結晶の重量に対して、1〜100倍、好ましくは3〜50倍の範囲に設定される。析出させる溶剤としては、水あるいは、水と有機溶剤の混合溶剤、アンモニア水等が任意の量で用いられる。析出させる温度については特に制限はないが、発熱を防ぐために、氷等で冷却することが好ましい。
【0098】
また、顔料の含有量は、電荷発生層1の全質量に対して、10〜90質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましい。顔料の含有量がそれぞれ上記の数値範囲の下限値未満となると、十分な感度が得られにくくなる。一方、顔料の含有量がそれぞれ上記の数値範囲の上限値を超えると、帯電性の低下、感度の低下などの弊害が発生する傾向が大きくなる。
【0099】
電荷発生層1に含有されるバインダー樹脂は、絶縁性樹脂であれば特に限定されるものではなく、広範な絶縁性樹脂から選択して使用することができる。例えば、好ましいバインダー樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂をあげることができる。
【0100】
電荷発生層1用のバインダー樹脂としては、顔料の分散性の観点から、特にポリビニルアセタール樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が好ましく用いられる。なお、上記のバインダー樹脂は、単独あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0101】
また、顔料とバインダー樹脂との配合比(質量比)は、電荷発生層1の場合、10:1〜1:10の範囲が好ましい。顔料の質量に対してバインダー樹脂の質量が上記の配合比で示される値未満となると、成膜性が悪くなる等の弊害が発生する傾向が大きくなる。一方、顔料の質量に対してバインダー樹脂の質量が上記の配合比で示される値を超えると、膜中の含有量が相対的に少なくなるため十分な感度が得られなくなる傾向が大きくなる。
【0102】
更に、電荷発生層1を形成するための塗布液に含まれる有機溶剤は、バインダー樹脂を溶かす事ができる溶剤であり、かつ、顔料(電荷発生物質)の結晶型を変化させる影響を及ぼさないものであれば特に限定されるものではなく、公知の有機溶剤を使用することができる。
【0103】
例えば、アルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択することができる。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いることができる。そして、これらの有機溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0104】
この電荷発生層1には、その電気特性の向上、画質向上などのために下引層4の説明において記載したものと同じ他の添加剤を添加することもできる。
【0105】
更に、電荷発生層1の層厚は、良好な電気特性と画質を与えるために、0.05〜5μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましい。電荷発生層1の厚みが0.05μm未満であると、十分な感度を与えることができない。一方、電荷発生層1の厚みが5μmを超えると、帯電性の不良などの弊害を生じさせ易い。
【0106】
電荷発生層1は、顔料(電荷発生物質)、有機溶剤、バインダー樹脂、添加剤(例えば、顔料の分散助剤等)等を混合して塗布液を調製し、これを下引層4上に塗布して更に乾燥させることにより形成することができる。また、電荷発生層1は、電荷発生物質を下引層4上に真空蒸着することによっても形成することができる。
【0107】
電荷発生層1の形成用の塗布液を調製するには、顔料、バインダー樹脂、有機溶剤、その他の添加剤(例えば、顔料の分散助剤等)等とともに混合する。顔料を液中に高分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの分散方法を用いることができる。
【0108】
更に、成膜性の観点から、電荷発生層1を形成するための塗布液に含まれる顔料などの分散粒子の粒子径は、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましく、0.15μm以下であることが更に好ましい。分散粒子の粒子径が0.5μmを超えると、電荷発生層1の成膜性が悪くなり、画質欠陥を生じ易い。
【0109】
電荷発生層1の形成用の塗布液を下引層4上に塗布する場合の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0110】
次に電荷輸送層2について説明する。電荷輸送層2に含有される電荷輸送物質は、特に限定されるものではなく、公知の物質を使用することができる。
【0111】
例えば、2,5-ビス(p-ジエチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5-トリフェニル-ピラゾリン、1-[ピリジル-(2)]-3-(p-ジエチルアミノスチリル)-5-(p-ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(P-メチル)フェニルアミン、N,N’-ビス(3,4-ジメチルフェニル)ビフェニル-4-アミン、ジベンジルアニリン、9,9-ジメチル-N,N’-ジ(p-トリル)フルオレノン-2-アミン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3-(4’ジメチルアミノフェニル)-5,6-ジ-(4’-メトキシフェニル)-1,2,4-トリアジン等の1,2,4-トリアジン誘導体、4-ジエチルアミノベンズアルデヒド-1,1-ジフェニルヒドラゾン、4-ジフェニルアミノベンズアルデヒド-1,1-ジフェニルヒドラゾン、[p-(ジエチルアミノ)フェニル](1-ナフチル)フェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2-フェニル-4-スチリル-キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6-ヒドロキシ-2,3-ジ(p-メトキシフェニル)-ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p-(2,2-ジフェニルビニル)-N,N’-ジフェニルアニリン等のα-スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N-エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ-N-ビニルカルバゾール及びその誘導体等の正孔輸送物質、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物、2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3',5,5'テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送物質等が挙げられる。
【0112】
更には、電荷輸送物質は、以上例示した化合物の基本構造を主鎖又は側鎖に有する重合体等も挙げられる。そして、これらの電荷輸送材料は、1種又は2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0113】
また、電荷輸送層2に含有されるバインダー樹脂は特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができるが、電機絶縁性のフィルムを形成することが可能な樹脂が好ましい。
【0114】
例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンーブタジエン共重合体、塩化ビニリデンーアクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂。シリコン−アルキッド樹脂、フェノールーホルムアルデヒド樹脂、スチレンーアルキッド樹脂、ポリ−N−カルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、カルボキシーメチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーワックス、ポリウレタン等が挙げられる。
【0115】
そして、これらのバインダー樹脂は、単独又は2種類以上混合して用いることができる。特に、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂が電荷輸送物質との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で優れているので好ましく用いられる。
【0116】
また、バインダー樹脂と電荷輸送物質との配合比(質量比)は電気特性低下、膜強度低下に考慮しつつ任意に設定することができる。この電荷輸送層2の層厚は5〜50μmであることが好ましく、10〜35μmであることがより好ましい。が適当である。
【0117】
電荷輸送層2は、電荷輸送物質、有機溶剤、バインダー樹脂等を混合して塗布液を調製し、これを電荷発生層1上に塗布して更に乾燥させることにより形成することができる。
【0118】
電荷輸送層2の形成用の塗布液を調製するには、電荷輸送物質、有機溶剤、バインダー樹脂等とともに混合する。電荷輸送物質を液中に高分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの分散方法を用いることができる。
【0119】
更に、成膜性の観点から、電荷輸送層2を形成するための塗布液に含まれる顔料などの分散粒子の粒子径は、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましく、0.15μm以下であることが更に好ましい。分散粒子の粒子径が0.5μmを超えると、電荷輸送層2の成膜性が悪くなり、画質欠陥を生じ易い。
【0120】
更に、電荷輸送層2の形成用の塗布液に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0121】
電荷輸送層2の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0122】
[第二実施形態]
図2は、本発明の電子写真感光体の第二実施形態を示す断面図である。図2に示す電子写真感光体110は、感光層6を単層構造とした以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。
【0123】
図2に示す感光層6は、図1に示した電荷発生層1と電荷輸送層2に含有される電荷発生物質と電荷輸送物質をはじめとする物質を合わせて含有する層である。
【0124】
感光層6がこのように単層型の場合には、顔料の含有量は、感光層6の全質量に対して、0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。また、顔料の含有量が上記の数値範囲の下限値未満となると、十分な感度が得られにくくなる。一方、顔料の含有量が上記の数値範囲の上限値を超えると、帯電性の低下、感度の低下などの弊害が発生する傾向が大きくなる。
【0125】
また、このように感光層6が単層型の場合、バインダー樹脂としては、正孔輸送性材料との相溶性の観点から、特にポリカーボネート樹脂及びメタクリル樹脂が好ましく用いられる。更に、これらの樹脂のポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシランなどの有機光導電性ポリマーの中から選択して使用してもよい。なお、上記のバインダー樹脂は、単独あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0126】
この感光層6も、上述した電荷輸送物質、上述した電荷輸送物質、上述した有機溶剤、バインダー樹脂等を混合して塗布液を調製し、上述と同様の方法により導電性支持体層3上に塗布して更に乾燥させることにより形成することができる。
【0127】
[第三実施形態]
図3は、本発明の電子写真感光体の第三実施形態を示す断面図である。図3に示す電子写真感光体120は、感光層6上に保護層5を備えること以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。
【0128】
保護層5は、電子写真感光体120の帯電時の電荷輸送層2の化学的変化を防止したり、感光層6の機械的強度をさらに改善する為に用いられる。この保護層5は、導電性材料を適当なバインダー樹脂中に含有させた塗布液を感光層6上に塗布することにより形成される。
【0129】
この導電性材料は特に限定されるものではなく、例えば、N,N'-ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジアミン等の芳香族アミン化合物、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫とアンチモン、硫酸バリウムと酸化アンチモンとの固溶体の担体、上記金属酸化物の混合物、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を混合したもの、或いは、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を被覆したものが挙げられる。
【0130】
この保護層5に用いるバインダー樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の公知の樹脂が用いられる。また、これらは必要に応じて互いに架橋させて使用することもできる。
【0131】
保護層5の厚みは1〜20μmであることが好ましく、2〜10μmであることがより好ましい。この保護層5を形成するための塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0132】
また、保護層5を形成するための塗布液に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができるが、できるだけこの塗布液が塗布される感光層6を溶解しにくい溶剤を用いることが好ましい。
【0133】
[第四実施形態]
図4は、本発明の電子写真感光体の第二実施形態を示す断面図である。図4に示す電子写真感光体130は、感光層6を単層構造とし、感光層6上に保護層5を備える以外は図2に示した電子写真感光体110と同様の構成を有する。
【0134】
[第五実施形態]
図5は、本発明の電子写真感光体の第五実施形態を示す断面図である。図5に示す電子写真感光体140は、感光層6と下引層4との間に中間層42を備える以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。この中間層42は、感光体140の電気特性の向上、画質の向上、感光層6の接着性向上のために設けられている。
【0135】
この中間層42の構成材料は特に限定されず、合成樹脂、有機物質或いは無機物質の粉末、電子輸送性物質等から任意に選択することができる。
【0136】
中間層42の合成樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子樹脂化合物、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
【0137】
そして、これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。更にこれらの中でも、ジルコニウムキレート化合物、シランカップリング剤は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れている。
【0138】
上記のシランカップリング剤の例としてはビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0139】
これらの中でも特に好ましく用いられるシリコン化合物としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシシラン)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0140】
ジルコニウムキレート化合物としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0141】
チタニウムキレート化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0142】
アルミニウムキレート化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0143】
中間層42中には、電気特性の向上や光散乱性の向上などの目的により、各種の有機化合物の微粉末もしくは無機化合物の微粉末を添加することができる。特に、酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料やアルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料やテフロン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子などが有効である。
【0144】
添加微粉末の粒径は0.01〜2μmのものが用いられる。微粉末は必要に応じて添加されるが、その添加量は中間層42の固形分の総質量に対して、質量比で10〜90質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましい。
【0145】
また、中間層42中には、先に説明した電子輸送性物質、電子輸送性顔料等を含有させることも低残留電位化や環境安定性の観点から有効である。更に、中間層42の厚みは0.01〜30μmであることが好ましく、0.05〜25μmであることがより好ましい。
【0146】
また、中間層42を形成するための塗布液の調製する際に、微粉末状の物質を添加する場合には樹脂成分を溶解した溶液中に添加して分散処理が行われる。この分散処理方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの方法を用いることができる。
【0147】
更に、この中間層42は導電性支持体層3上に中間層42を形成するための塗布液を塗布し、乾燥させることにより形成することができる。このときの塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0148】
[第六実施形態]
図6は、本発明の電子写真感光体の第六実施形態を示す断面図である。図6に示す電子写真感光体150は、感光層6を単層構造とし、感光層6と下引層4との間に中間層42を備える以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。
【0149】
そして、中間層42は、上述の図5に示した感光体140と同様の構成を有する。
【0150】
[第七実施形態]
図7は、本発明の電子写真感光体の第七実施形態を示す断面図である。
【0151】
図7に示す電子写真感光体160は、感光層6上に保護層5を設け、感光層6と下引層4との間に中間層42を備える以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。
【0152】
そして、中間層42は、上述の図5に示した感光体140の中間層42と同様の構成を有する。また、保護層5も上述の図3に示した感光体120の保護層5と同様の構成を有する。
【0153】
[第八実施形態]
図8は、本発明の電子写真感光体の第七実施形態を示す断面図である。
【0154】
図8に示す電子写真感光体170は、感光層6上に保護層5を設け、感光層6を単層構造とし、感光層6と下引層4との間に中間層42を備える以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。
【0155】
そして、中間層42は、上述の図5に示した感光体140の中間層42と同様の構成を有する。また、保護層5も上述の図3に示した感光体120の保護層5と同様の構成を有する。更に、感光層6も上述の図2(b)に示した感光体110の感光層6と同様の構成を有する。
【0156】
以上、本発明の電子写真感光体の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明の電子写真感光体は上記実施形態に限定されるものではない。
【0157】
例えば、本発明の電子写真感光体の感光層には、図1、図3及び図5に示した感光体100、120及び130のように2層からなる構成の場合、図2、図2(b)及び図6に示した感光体110、130及び150のように単層構造の場合の何れにおいても、電子写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光・熱による感光体の劣化を防止する目的で、酸化防止剤・光安定剤・熱安定剤などの添加剤を添加してもよい。
【0158】
例えば、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。
【0159】
酸化防止剤の具体的な化合物例として、フェノール系酸化防止剤では2,6-ジ-t-ブチル-4-メチル フェノール、スチレン化フェノール、n-オクタデシル-3-(3',5'-ジ-t-ブチル 4'-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、2,2'-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチル フェノール)、2-t-ブチル-6-(3'-t-ブチル-5'-メチル-2'-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニル アクリレート、4,4'-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチル-フェノール)、4,4'-チオ-ビス-(3-メチル 6-t-ブチルフェノール)、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル ベンジル)イソシアヌレート、テトラキス-[メチレン-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシ-フェニル)プロピオネート]-メタン、3,9-ビス[2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチル フェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチル エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0160】
ヒンダードアミン系化合物としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-[2-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-4-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、8-ベンジル-7,7,9,9-テトラメチル-3-オクチル-1,3,8-トリアザスピロ[4,5]ウンデカン-2,4-ジオン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイミル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,3,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、N,N'-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6,-ペンタメチル-4ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物などが挙げられる。
【0161】
有機イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリル-3,3'-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3'-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3'-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス-(β-ラウリル-チオプロピオネート)、ジトリデシル-3,3'-チオジプロピオネート、2-メルカプト ベンズイミダゾールなどが挙げられる。有機燐系酸化防止剤としてトリスノニルフェニル フォスフィート、トリフェニル フォスフィート、トリス(2,4-ジ-t-ブチル フェニル)-フォスフィートなどが挙げられる。
【0162】
有機硫黄系および有機燐系酸化防止剤は2次酸化防止剤と言われフェノール系あるいはアミン系などの1次酸化防止剤と併用することにより相乗効果を得ることができる。
【0163】
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系などの誘導体が挙げられる。例えば、ベンゾフェノン系光安定剤としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシ ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシ ベンゾフェノン、2,2'-ジ-ヒドロキシ-4-メトキシ ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0164】
ベンゾトリアゾール系系光安定剤としては、2-(-2'-ヒドロキシ-5'メチル フェニル-)-ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-3'-(3'',4'',5'',6''-テトラ-ヒドロフタルイミド-メチル)-5'-メチルフェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(-2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル 5'-メチルフェニル-)-5-クロロ ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル 5'-メチルフェニル-)-5-クロロ ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-t-ブチルフェニル-)-ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチル フェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ 3',5'-ジ-t-アミル フェニル-)-ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0165】
その他の化合物としては、2,4,ジ-t-ブチルフェニル 3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシベンゾエート、ニッケル ジブチル-ジチオカルバメートなどがある。
【0166】
また、感光層6には、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として少なくとも1種の電子受容性物質を含有させることができる。
【0167】
使用可能な電子受容性物質としては、例えば無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o-ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o-ニトロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、フタル酸などが挙げられる。
【0168】
これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、−Cl,−CN,−NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましく用いられる。更に、本発明の感光層形成用塗布液には、塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを微量添加することもできる。
【0169】
以上説明した本発明の本発明の電子写真感光体は、近赤外光もしくは可視光に発光するレーザービームプリンター、デイジタル複写機、LEDプリンター、レーザーファクシミリなどの電子写真装置や、このような電子写真装置に備えれられるプロセスカートリッジに搭載することができる。また、本発明の電子写真感光体は一成分系、二成分系の正規現像剤あるいは反転現像剤とも合わせて用いることができる。また本発明の電子写真感光体は帯電ローラーや帯電ブラシを用いた接触帯電方式の電子写真装置に搭載されても電流リークの発生が少ない良好な特性が得られる。
【0170】
次に、本発明の本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジについて説明する。
【0171】
図9は、本発明の電子写真装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。図9に示す電子写真装置200は、電子写真感光体7と、電子写真感光体7をコロナ放電方式により帯電させるコロトロンやスコロトロンなどの帯電手段8と、帯電手段8に接続された電源9と、帯電手段8により帯電される電子写真感光体7を露光して静電潜像を形成する露光手段10と、露光手段10により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段11と、現像手段11により形成されたトナー像を被転写媒体に転写する転写手段12と、クリーニング装置13と、除電器14と、定着装置15とを備える。
【0172】
また、図10は、図9に示す本発明の電子写真装置の別の実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【0173】
図10に示す電子写真装置210は、電子写真感光体7を接触方式により帯電させる帯電手段8を備えていること以外は、図9に示した電子写真装置200と同様の構成を有する。特に、直流電圧に交流電圧を重畳した接触式の帯電手段を採用する電子写真装置においては、優れた耐摩耗性を有するため、好ましく使用できる。なお、この場合には、除電器14が設けられていないものもある。
【0174】
帯電手段(帯電用部材)8は、感光体7の表面に接触するように配置され、感光体に電圧を均一に印加し、感光体表面を所定の電位に帯電させるものである。帯電手段8にはアルミニウム、鉄、銅などの金属、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子材料、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、フッソゴム、スチレンーブタジエンゴム、ブタジエンゴム等のエラストマー材料にカーボンブラック、沃化銅、沃化銀、硫化亜鉛、炭化けい素、金属酸化物などの金属酸化物粒子を分散したものなどを用いることができる。
【0175】
この金属酸化物の例としてはZnO、SnO2、TiO2、In2O3、MoO3等、あるいはこれらの複合酸化物が挙げられる。また、帯電手段8にはエラストマー材料中に過塩素酸塩を含有させて導電性を付与したものを使用しても良い。
【0176】
更に、帯電手段8にはその表面に被覆層を設けてもよい。被覆層を形成する材料としては、N-アルコキシメチル化ナイロン、セルロース樹脂、ビニルピリジン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、メラミン等が単独、あるいは併用して用いられる。また、エマルジョン樹脂系材料、たとえば、アクリル樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョン、ポリウレタン、特にソープフリーのエマルジョン重合により合成されたエマルジョン樹脂を用いることも出来る。
【0177】
これらの樹脂にはさらに抵抗率を調整するために、導電剤粒子を分散してもよいし、劣化を防止するために酸化防止剤を含有させることもできる。また、被覆層を形成する時の成膜性を向上させるために、エマルジョン樹脂にレベリング剤または界面活性剤を含有させることもできる。また、この接触帯電用部材の形状としては、ローラー型、ブレード型、ベルト型、ブラシ型、などが挙げられる。
【0178】
さらに、帯電手段8の電気抵抗値は、好ましくは102〜1014Ωcm、さらに好ましくは102〜1012Ωcmの範囲が良い。また、この接触帯電用部材への印加電圧は、直流、交流いずれも用いることができる。又、直流+交流の形で印加することもできる。
【0179】
図11は図9に示す本発明の電子写真装置の更に別の実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。図11に示す電子写真装置220は中間転写方式の電子写真装置であり、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401dが中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。
【0180】
ここで、電子写真装置220に搭載されている電子写真感光体401a〜401dは、それぞれ本発明の電子写真感光体である。例えば、先に述べた電子写真感光体100、電子写真感光体110、電子写真感光体120、電子写真感光体130、電子写真感光体140、電子写真感光体150、電子写真感光体160、電子写真感光体170のいずれかが搭載されていてもよい。
【0181】
電子写真感光体1a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール402a〜402d、現像装置404a〜404d、1次転写ロール410a〜410d、クリーニングブレード15a〜15dが配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれにはトナーカートリッジ405a〜405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール410a〜410dはそれぞれ中間転写体9を介して電子写真感光体1a〜401dに当接している。
【0182】
更に、ハウジング400内の所定の位置にはレーザ光源(露光手段)403が配置されており、レーザ光源403から出射されたレーザー光を帯電後の電子写真感光体1a〜401dの表面に照射することが可能となっている。これにより、電子写真感光体1a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
【0183】
中間転写ベルト409は駆動ロール406、バックアップロール408及びテンションロール407により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写体9を介してバックアップロール408と当接するように配置されている。バックアップロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409はクリーニングブレード14により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0184】
また、ハウジング400内の所定の位置にはトレイ(被転写媒体トレイ)411が設けられており、トレイ411内の紙などの被転写媒体が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。
【0185】
更に、図12は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。プロセスカートリッジ300は、電子写真感光体7とともに、帯電手段8、現像手段11、クリーニング装置(クリーニング手段)13、露光のための開口部18、及び除電器14を取り付けレール16を用いて組み合せ、そして一体化したものである。
【0186】
そして、このプロセスカートリッジ300は、転写手段12と、定着装置15と、図示しない他の構成部分とからなる電子写真装置本体に対して着脱自在としたものであり、電子写真装置本体とともに電子写真装置を構成するものである。
【0187】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0188】
以下に示す手順により図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例6の電子写真感光体を作製した。
【0189】
なお、各電子写真感光体の下引層を作製する際、金属酸化物粒子Aの蛍光X線分析は蛍光X線分析装置(商品名:システム3370E,理学電気社製)を用いて以下の条件で行った。すなわち、X線源のターゲット:Rh,X線源への印加電圧:50kV,電流値:50mAとし、光学系の分光結晶には、測定対象となる金属酸化物粒子A中の検出元素の種類に応じてLiF,TAP,PET,Geを使用した。また、検出器はシンチレーションカウンターとフォトカウンターを用いた。更に、分光器の走査はスキップスキャン法を用い、1ステップあたり0.05度の角度に設定して特性X線強度の測定を行った。
【0190】
また、金属酸化物粒子B或いは金属酸化物粒子Aの比表面積の測定は、流動式比表面積自動測定装置フローソーブII2300型(島津製作所社製)を用い、測定対象となる金属酸化物粒子200mgを200℃、30分脱ガス処理を行った後、BET1点法にて比表面積値を測定した。
【0191】
(実施例1)
以下の手順にて図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する感光体を作製した。
【0192】
酸化スズ(商品名:S1,三菱マテリアル製,比表面積:50m2/g):100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(商品名:A1100,日本ユニカー社製):15質量部を添加し、5時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、100℃で2時間焼き付けを行った。
【0193】
得られた表面処理後の酸化スズに対して上述の蛍光X線分析をおこなった結果、「Siの特性X線強度I1/Snの特性X線強度I2」は2.0×10-4であった。また、表面処理後の酸化スズの比表面積は60m2/gであった。
【0194】
次に、表面処理後の酸化スズ:35質量部と、硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175,住友バイエルンウレタン社製) :15質量部と、ブチラール樹脂 BM-1 (積水化学社製):6質量部と、メチルエチルケトン:44質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。
【0195】
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005質量部と、シリコーンオイルSH29PA(東レダウコーニングシリコーン社製):0.01質量部とを添加し、下引層用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径30mm、長さ340mm、厚さ1mmのアルミニウム基材(導電性支持体層)上に塗布し、160℃、100分の乾燥硬化を行い厚さ20μmの下引層を形成した。
【0196】
次に、下引層上に2層構造の感光層を形成した。まず、電荷発生物質としてのCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.4゜,16.6゜,25.5゜,28.3゜の位置に回折ピークを有する塩化ガリウムフタロシアニン:15質量部、バインダー樹脂となる塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10質量部、n-ブチルアセテート:300質量部からなる混合物を、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。
【0197】
得られた分散液を電荷発生層形成用の塗布液として下引層上に浸漬塗布し、乾燥して、層厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0198】
さらに、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-[1、1']ビフェニル-4,4'-ジアミン:4質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量4万):6質量部とをクロロベンゼン:80質量部に加えて溶解した。得られた分散液を電荷輸送層形成用の塗布液として電荷発生層上に浸漬塗布し、130℃、40分の乾燥を行うことにより層厚が25μmの電荷輸送層を形成した。
【0199】
(実施例2)
以下の手順にて図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する感光体を作製した。
【0200】
酸化チタン(商品名:TAF500J,富士チタン社製,比表面積:18m2/g):100質量部をミキサ中で攪拌しながら、これにトルエン10質量部とシランカップリング剤(商品名:KBM503,信越化学社製):2質量部との混合液を添加し、10分間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、170℃で2時間焼き付けを行った。
【0201】
得られた表面処理後の酸化チタンに対して上述の蛍光X線分析をおこなった結果、「Siの特性X線強度I1/Tiの特性X線強度I2」は2.0×10-4であった。また、表面処理後の酸化スズの比表面積は20m2/gであった。
【0202】
次に、表面処理後の酸化チタン:50質量部と、硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175,住友バイエルンウレタン社製) :15質量部と、ブチラール樹脂 BM-1 (積水化学社製):6質量部と、メチルエチルケトン:60質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間の分散を行い分散液を得た。
【0203】
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005質量部と、シリコーンオイルSH29PA(東レダウコーニングシリコーン社製):0.01質量部とを添加し、下引層用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径30mm、長さ340mm、厚さ1mmのアルミニウム基材(導電性支持体層)上に塗布し、160℃、100分の乾燥硬化を行い厚さ20μmの下引層を形成した。
【0204】
次に、実施例1と同様の手順で電荷発生層と電荷輸送層とを順次形成し、電子写真感光体を作製した。
【0205】
(実施例3)
以下の手順にて図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する感光体を作製した。
【0206】
酸化亜鉛(平均粒子径70nm,テイカ社製試作品,比表面積:15m2/g):100質量部をトルエン500質量部と撹拌混合し、これにシランカップリング剤(商品名:KBM603,信越化学社製):1.5質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、150℃で2時間焼き付けを行った。
【0207】
得られた表面処理後の酸化亜鉛に対して上述の蛍光X線分析をおこなった結果、「Siの特性X線強度I1/Znの特性X線強度I2」は1.5×10-5であった。また、表面処理後の酸化スズの比表面積は15m2/gであった。
【0208】
次に、表面処理後の酸化亜鉛:60質量部と、硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175,住友バイエルンウレタン社製) :15質量部と、ブチラール樹脂 BM-1 (積水化学社製):15質量部と、メチルエチルケトン:85質量部とを混合した。得られた液:8質量部とメチルエチルケトン:25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。
【0209】
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005質量部と、シリコーンオイルSH29PA(東レダウコーニングシリコーン社製):0.01質量部とを添加し、下引層用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径30mm、長さ340mm、厚さ1mmのアルミニウム基材(導電性支持体層)上に塗布し、160℃、100分の乾燥硬化を行い厚さ20μmの下引層を形成した。
【0210】
次に、下引層上に2層構造の感光層を形成した。まず、電荷発生物質としてのCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン:15質量部、バインダー樹脂となる塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10質量部、n-ブチルアセテート:300質量部からなる混合物を、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。
【0211】
得られた分散液を電荷発生層形成用の塗布液として下引層上に浸漬塗布し、乾燥して、層厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。次に、実施例1と同様の手順で電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製した。
【0212】
(実施例4)
以下の手順にて図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する感光体を作製した。
【0213】
酸化亜鉛(商品名:MZ300,テイカ社製,比表面積:40m2/g):100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、これにシランカップリング剤(商品名:KBM403,信越化学社製):5質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、150℃で2時間焼き付けを行った。
【0214】
得られた表面処理後の酸化亜鉛に対して上述の蛍光X線分析をおこなった結果、「Siの特性X線強度I1/Znの特性X線強度I2」は5.0×10-5であった。また、表面処理後の酸化スズの比表面積は30m2/gであった。
【0215】
次に、表面処理後の酸化亜鉛:60質量部と、硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175,住友バイエルンウレタン社製) :15質量部と、ブチラール樹脂 BM-1 (積水化学社製):15質量部と、メチルエチルケトン:85質量部とを混合した。得られた液:38質量部とメチルエチルケトン:25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。
【0216】
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005質量部と、シリコーンオイルSH29PA(東レダウコーニングシリコーン社製):0.01質量部とを添加し、下引層用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径30mm、長さ340mm、厚さ1mmのアルミニウム基材(導電性支持体層)上に塗布し、160℃、100分の乾燥硬化を行い厚さ20μmの下引層を形成した。
【0217】
次に、下引層上に2層構造の感光層を形成した。まず、電荷発生物質としてのCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも27.3゜の位置に回折ピークを有するオキシチタニルフタロシアニン:15質量部、バインダー樹脂となる塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10質量部、n-ブチルアセテート:300質量部からなる混合物を、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。
【0218】
得られた分散液を電荷発生層形成用の塗布液として下引層上に浸漬塗布し、乾燥して、層厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。次に、実施例1と同様の手順で電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製した。
【0219】
(比較例1)
実施例1で用いた金属酸化物微粒子を表面処理しないで使用したこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0220】
(比較例2)
実施例2で用いた金属酸化物微粒子を表面処理しないで使用したこと以外は、実施例2と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0221】
(比較例3)
実施例3で用いた金属酸化物微粒子を表面処理しないで使用したこと以外は、実施例3と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0222】
(比較例4)
実施例4で用いた金属酸化物微粒子を表面処理しないで使用したこと以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0223】
(比較例5)
実施例3で用いたシランカップリング剤(商品名:KBM503,信越化学社製)の添加量を30質量部にかえたこと以外は、実施例3と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0224】
得られた表面処理後の酸化亜鉛に対して上述の蛍光X線分析をおこなった結果、「Siの特性X線強度I1/Znの特性X線強度I2」は2.0×10-3であった。また、表面処理後の酸化スズの比表面積は15m2/gであった。
【0225】
(比較例6)
実施例4で用いたシランカップリング剤(商品名:KBM503,信越化学社製)の添加量を0.05質量部にかえたこと以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0226】
得られた表面処理後の酸化亜鉛に対して上述の蛍光X線分析をおこなった結果、「Siの特性X線強度I1/Znの特性X線強度I2」は5.0×10-8であった。また、表面処理後の酸化スズの比表面積は30m2/gであった。
【0227】
[電子写真感光体の電子写真特性評価試験]
(1)使用初期の特性評価(初期電位測定)
実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例6の電子写真感光体を図9と同様の構造を有するレーザープリンタ−スキャナー(商品名:XP-15の改造機、富士ゼロックス社製)に搭載し、それぞれの電子写真感光体の電子写真特性を以下のように評価した。
【0228】
常温常湿(20℃、40%RH)環境下、グリッド印加電圧−700Vのスコロトロン帯電器で各電子写真感光体を帯電させたときの各電子写真感光体の表面の電位A[V]を測定した。次に、780nmの半導体レーザーを用いて、帯電させてから1秒後の各電子写真感光体に10mJ/m2の光を照射して放電を行わせ、このときの各電子写真感光体の表面の電位B[V]を測定した。続いて、放電させてから3秒後各電子写真感光体に50mJ/m2の赤色LED光を照射して除電を行い、このときの各電子写真感光体の表面の電位C[V]を測定した。
【0229】
ここで、電位Aの値が高いほど、電子写真感光体の受容電位が高いので、コントラストを高く取ることができることになる。また、電位Bの値が低いほど高感度な電子写真感光体であることになる。更に、電位Cの値が低いほど残留電位が少なく、画像メモリーやいわゆるかぶりが少ない電子写真感光体と評価される。これらの結果を表1に示す。
【0230】
(2)繰り返し使用後の特性評価
上記の操作を1万回繰り返し、帯電、露光後の電位A〜電位Cの測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0231】
(3)使用環境の変化に対する安定性評価
上記の操作を低温低湿(10℃、15%RH)、高温高湿(28℃、85%RH)の2つの異なる環境下で行い、帯電、露光後の電位A〜電位Cの測定を行った。そして、これらの異なる環境間での電位A〜電位Cの値の変動量(ΔA、ΔB、ΔC)を測定し、使用環境の変化に対する各電子写真感光体の安定性評価を行った。これらの結果を表1に示す。
【0232】
(4)1万枚プリント後の画質評価
実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例6の電子写真感光体を図11と同様の構造を有する接触帯電装置、中間転写装置を有するフルカラープリンター(商品名:Docu Print C620、富士ゼロックス社製)に搭載し、1万枚の紙への連続プリントテストを行った。
【0233】
そして、1万枚プリント後の画質を、「異常なし」;良好な画質が得られた、「全面かぶり発生」;紙面全体に微細な黒点がみられる、「黒点発生」;紙面に大きな黒点がみられる、とした評価基準のもとで評価した。これらの結果を表1に示す。
【0234】
【表1】
【0235】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電子写真感光体の製造方法によれば、繰り返し使用に伴う電気特性の低下を十分に防止することのできる高い耐久性と高い解像品質を得ることができる電子写真感光体を提供することができる。そして、このような電子写真感光体を備えることにより、長期にわたり繰り返し使用しても高い解像品質を得ることのできるプロセスカートリッジ並びに電子写真装置を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の第一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の第二実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の第三実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の電子写真感光体の第四実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の電子写真感光体の第五実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明の電子写真感光体の第六実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明の電子写真感光体の第七実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明の電子写真感光体の第八実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明の電子写真装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図10】図9に示す本発明の電子写真装置の別の実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図11】図9に示す本発明の電子写真装置の更に別の実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図12】本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
1…電荷発生層、3…導電性支持体層、4…下引層、5…保護層、6…感光層、7…電子写真感光体、8…帯電手段、9…電源、10…露光手段、11…現像手段、12…転写手段、13…クリーニング装置、14…除電器、16…取り付けレール、18…露光のための開口部、42…中間層、100,110,120,130,140,150,160,170…電子写真感光体、200…電子写真装置、210…電子写真装置、300…プロセスカートリッジ、400・・・ハウジング、401a〜401d・・・電子写真感光体、402a〜402d・・・帯電ロール、403・・・レーザ光源(露光装置)、404a〜404d・・・現像装置、405a〜405d・・・トナーカートリッジ、406・・・駆動ロール、407・・・テンションロール、408・・・バックアップロール、409・・・中間転写ベルト、410a〜410d・・・1次転写ロール、411・・・トレイ(被転写体トレイ)、412・・・移送ロール、413・・・2次転写ロール、414・・・定着ロール。
Claims (7)
- 導電性支持体層と、顔料を含む感光層と、前記導電性支持体層と前記感光層との間に配置される下引層と、を有しており、かつ、前記下引層には、加水分解性の官能基を有する有機金属化合物を用いて表面処理された酸化亜鉛粒子が含有されている電子写真感光体の製造方法であって、
下記式(1)で表される条件を満たす前記表面処理された酸化亜鉛粒子を用いて前記下引層を形成すること、
を特徴とする電子写真感光体の製造方法。
1.0×10−6≦(I1/I2)≦1.0×10−3…(1)
[式(1)中、
I1は、前記表面処理された酸化亜鉛粒子に対する蛍光X線分析から得られる前記有機金属化合物を構成する金属元素の特性X線強度を示し、
I2は、前記表面処理された酸化亜鉛粒子を構成する亜鉛の特性X線強度を示す。] - 前記下引層の層厚を15〜50μmに調節することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 導電性支持体層と、顔料を含む感光層と、前記導電性支持体層と前記感光層との間に配置される下引層と、を有する電子写真感光体であって、
前記下引層には、加水分解性の官能基を有する有機金属化合物を用いて表面処理された酸化亜鉛粒子が含有されており、
前記表面処理された酸化亜鉛粒子が、下記式(1)で表される条件を満たしていること、
を特徴とする電子写真感光体。
1.0×10−6≦(I1/I2)≦1.0×10−3・・・(1)
[式(1)中、
I1は、前記表面処理された酸化亜鉛粒子に対する蛍光X線分析から得られる前記有機金属化合物を構成する金属元素の特性X線強度を示し、
I2は、前記表面処理された酸化亜鉛粒子を構成する亜鉛の特性X線強度を示す。] - 前記下引層の層厚が15〜50μmであることを特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体。
- 請求項3又は4に記載の電子写真感光体と、
帯電手段、現像手段、クリーニング手段又は除電手段の少なくとも一つの手段とを一体に有し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。 - 請求項3又は4に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段により帯電される前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、
を備えることを特徴とする電子写真装置。 - 前記転写手段の転写方式が、前記トナー像を中間転写体に1次転写し、該中間転写体上の1次転写像を前記被転写媒体に2次転写する中間転写方式であることを特徴とする特徴とする請求項6に記載の電子写真装置。
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