JP3818465B2 - インダクタンス素子 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、インダクタンス素子に関し、更に詳しくは、高周波動作する電力伝送用回路、例えばスイッチング電源において、チョークコイルや変成器等として用いるのに適したインダクタンス素子に関わる。
【0002】
【従来の技術】
情報機器、通信機器、計測機器などの電子機器、工作機械などの製造装置の電子回路及び機械的な駆動に用いられる電源装置として、動作周波数の高い高周波スイッチング電源が用いられるようになっている。高周波スイッチング電源では、パルスなどの交流波形を直流波形に変換し、直流安定化出力を得る。交流を直流に変換する手段として一般的にLCフィルタが使用される。LCフィルタを構成するインダクタンス素子の磁芯のための磁性材料としては、フェライト磁性材料、パーマロイなどの結晶系の金属磁性材料及びアモルファス材料が知られている。このうち、結晶系の金属磁性材料及びアモルファス材料でなるインダクタンス素子は、直流重畳特性に優れているが、鉄損特性ではフェライトに劣る。このため、この種のインダクタンス素子の磁芯材料としては、フェライト磁性材料が主に用いられている。
【0003】
ところで、携帯用などのコンピュータなどでは小型・薄型化・軽量化が進んでいるが、一方では高速化や高機能化に対し市場のニーズが強く、回路規模が大きくなり大電流化の傾向にある。従って小型・薄型で、かつ、大電流領域でも使用可能な低損失なインダクタンス素子が必要になっている。
【0004】
従来のこの種のインダクタンス素子は、ギャップのない完全な閉磁路構造の磁芯を用いたギャップなしタイプと、磁芯の一部にギャップを有するギャップ付きタイプの2つが主に用いられていた。
【0005】
しかし、ギャップなしの場合には、直流重畳がかかる高周波スイッチング電源への適用において、容易に磁気飽和を起こしてしまうという問題があった。
【0006】
ギャップ付きインダクタンス素子の場合は、磁気飽和を生じる磁界強度が高く、直流重畳を受けた場合でも、磁芯の磁気飽和を回避することができるが、透磁率μが低くなってしまうため、インダクタンスが小さくなるという問題点を生じる。
【0007】
しかも、ギャップ付きインダクタンス素子の場合、使用する電流の大きさに応じてギャップの大きさを調整する必要があるため、多用途に対して標準化が難しいこと、転用ができないこと、在庫管理が複雑になること、加工コストがかかることなどの生産性低下に結びつく難点を持つ。
【0008】
ギャップ付きインダクタの1つの例として、一対のフェライトカットコアの間に非磁性物を挿入するスペーサ・ギャップと呼ばれる構造も知られている。このタイプのインダクタンス素子では、フェライトカットコアを切削する必要はなく、生産性上は好都合であるが、非磁性物を挿入したギャップ部分で開磁路になり、磁束漏れによるノイズ障害を生じる。
【0009】
また、巻線部は、一般に、ウレタン線などの皮膜付き導線をボビンに巻線して構成される。かかる構成の場合には、構造が複雑なために、実際に巻線に利用されていないデッドスペースが多くなり、磁路長が長くなったり、巻線スペースが充分にとれないという問題を生じる。磁路長が長くなると、インダクタンスが反比例して減少する。また巻線スペースが充分にとれない場合には、巻線インピーダンスが充分に下げられないため、銅損が増加する。しかも前述のように、ギャップ付加、磁路長増大により、インダクタンスが低下すると、より多くの巻線数が必要になり、相乗的に、銅損が増加し、小型化に対する大きな障害になる。
【0010】
上述したように、インダクタンス素子を、高周波動作をするスイッチング電源の電力伝送用回路に用いるには、種々の課題を解決する必要があり、従来知られたインダクタンス素子は、これらの課題解決手段としては、充分ではない。特開平7ー288210号公報は2種類のフェライトコアを用いたインダクタを開示しているが、上述した課題解決手段は開示していない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、大電流下において高いインダクタンスを得ることの可能なインダクタンス素子を提供することである。
【0012】
本発明のもう一つの課題は、小型化及び薄型化されたインダクタンス素子を提供することである。
【0013】
本発明の更にもう一つの課題は、生産性が高く、コストダウンに寄与し得るインダクタンス素子を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するため、本発明に係るインダクタンス素子は、第1の磁芯と、第2の磁芯と、少なくとも1つの導体とを含む。
【0015】
前記第1の磁芯及び前記第2の磁芯は、磁気特性が互いに異なり、少なくとも一面が互いに面接触して組み合わされている。前記第1の磁芯及び第2の磁芯の少なくとも一方は、接触面に、少なくとも1つの溝を有し、前記溝は両端が磁芯側面で開口している。
【0016】
前記導体は、前記溝内に設置され、前記第1の磁芯及び第2の磁芯によって包囲され、前記溝の外部に導出された両端に外部との接続部分となる端子部を有する。
【0017】
上述したように、本発明に係るインダクタンス素子において、第1の磁芯及び第2の磁芯は、磁気特性が互いに異なるから、他の磁気特性を互いに補完するインダクタンス素子を得ることができる。例えば第1の磁芯に透磁率μが高く、高周波における鉄損が少ないフェライト磁芯を使用し、第2の磁芯に直流重畳特性の優れた金属系の磁芯を使用し、透磁率μ、高周波損失及び直流重畳特性の優れたインダクタンス素子を得ることができる。
【0018】
第1の磁芯及び第2の磁芯の少なくとも一方は、接触面に少なくとも1つの溝を有し、導体が溝内に設置されているから、導体の断面積を溝の断面積に対応した大きさまで拡大し、導体の銅損を低減することができる。
【0019】
第1の磁芯及び第2の磁芯は、少なくとも一面が互いに面接触して組み合わされてされ、導体は、溝内に設置され、複合磁芯によって包囲されているから、最短の磁路長を構成でき、高いインダクタンス値が得られる。
【0020】
しかも、第1の磁芯及び第2の磁芯は、少なくとも一面が互いに面接触して組み合わされているから、磁気回路が閉磁路構成になり、漏れ磁束によるノイズ障害を回避することができる。また、第1の磁芯及び第2の磁芯の間に、実質的な磁気ギャップが生じないから、磁気ギャップによる透磁率μの低下を回避できる。
【0021】
導体は、溝の外部に導出された両端に、外部との接続部分となる端子部を有するから、端子部を通して、外部回路に接続できると共に、複数のインダクタンス素子を用い、その端子部の接続選択により、直列回路、並列回路またはこれらの組み合わせ回路等、多様な回路構成を実現することができる。
【0022】
更に、本発明では、金型やエッチングによって予め形成された導体を、溝にはめ込むだけなので、巻線を必要とせず、組み立て作業は至って簡単である。しかもボビンを使用しない上に、またギャップを設ける必要がないので切削加工が不要になる。従って制作コストが低減でき、標準化も容易になり、生産性向上が可能になる。また複数のインダクタンス・セルを構成した場合には、個々のインダクタンス・セルを、独立的に使用できるため、任意に直列接続や並列接続が可能になり、応用範囲が広がる。
【0023】
【実施例】
図1は本発明に係るインダクタンス素子の平面図、図2は図1の2ー2線に沿った断面図、図3は図1及び図2に示したインダクタンス素子の分解斜視図である。図示するように、本発明に係るインダクタンス素子は、第1の磁芯1と、第2の磁芯2と、少なくとも1つの導体3とを含む。第1の磁芯1及び第2の磁芯2は、磁気特性が互いに異なり、少なくとも一面が互いに面接触して組み合わされている。第1の磁芯及び第2の磁芯のうち、第1の磁芯1は、接触面に、少なくとも1つの溝11を有する。溝11は両端が磁芯側面で開口している。
【0024】
導体3は、溝11の内部に設置され、主要部300が第1の磁芯1及び第2の磁芯2によって包囲され、溝11の外部に導出された両端に外部との接続部分となる端子部301、302を有する。
【0025】
第1の磁芯1は、透磁率μが高く、高周波における鉄損の少ない磁性材料、例えばフェライトを使用する。第2の磁芯2は、透磁率μが第1の磁芯1のそれよりも低いが、飽和磁束密度Bsが第1の磁芯1のそれよりも高く、直流重畳特性に優れた磁性材料、例えば金属系の磁性材料を使用する。
【0026】
第1の磁芯1を、フェライト磁性材料等で構成した場合、金型成形工程を採用することができるので、この際に、溝11を同時に形成することができる。
【0027】
導体3は、銅損を小さくするため、平角線などの低インピーダンスの金属材料を用いて構成することが望ましい。溝11は、導体3を設置するための必要最小限の大きさに設計されている。導体3は、第1の磁芯1もしくは第2の磁芯と絶縁をとるための電気絶縁手段を備えることができる。
【0028】
図4は図1〜図3に示したインダクタンス素子の電気的等価回路図であり、導体3の端子部301と端子部302との間でインダクタンスLが得られる。
【0029】
上述したように、本発明に係るインダクタンス素子において、第1の磁芯1及び第2の磁芯2は、磁気特性が互いに異なるから、他の磁気特性を互いに補完するインダクタンス素子を得ることができる。例えば第1の磁芯1に透磁率μが高く、かつ、高周波における鉄損が少ないフェライト磁性材料を使用し、第2の磁芯2に直流重畳特性の優れた金属系磁性材料を使用し、透磁率μが高く、高周波損失が小さく、しかも直流重畳特性に優れたインダクタンス素子を得ることができる。
【0030】
本発明の上述した利点について、従来の磁芯構造と対比して、更に詳しく説明する。図26はカットコアと呼ばれるフェライト磁芯を用いた従来のインダクタンス素子の断面図である。図26において、ほぼ同じ断面E形状の2個のフェライト磁芯40、41を上下方向から組み合わせ、中央脚部にコイル42を巻いてある。コイル42は、通常、絶縁樹脂で構成したボビン43に巻かれている。図26に示す従来例では、フェライト磁芯40、41が密着して組み合わされ、ギャップのない磁気回路が構成されている。
【0031】
図27はインダクタンス素子の別の従来例を示す図である。この従来例では、中脚部にギャップを構成する空隙44が設けられている。
【0032】
図28はインダクタンス素子の更に別の従来例を示す図である。フェライト磁芯40および41の間にギャップを構成する非磁性絶縁物44を挿入してある。このような構造は、スペーサ・ギャップと呼ばれる。図26〜図28の何れの従来例においても、コイル42には、一般に、ウレタン線などの皮膜付導線が使用される。
【0033】
図29は横軸に磁界の強さH、縦軸に磁束密度Bをとった折線近似のBH曲線を示しており、B=μHの関係から曲線の傾斜が透磁率μを表す。インダクタンス素子のインダクタンスLは透磁率μに比例する。またBsは飽和磁束密度であり、この値を越えると透磁率μが激減し、飽和状態に達する。
【0034】
横軸の磁界の強さは
H=N・I/Le
で表される。ここでNは巻線数、Iは電流、Leは磁路長を表す。すなわち磁界の強さは、流れる電流に比例する。
【0035】
図29の曲線aは図26に示した「ギャップなし」のインダクタンス素子の一般的特性傾向を示すBH曲線である。曲線aに示すように、ギャップなしの場合、磁界の強さが磁界強度H1以下のときに透磁率μが大きく、高いインダクタンスを得ることができる。しかし、磁気飽和を生じる磁界強度H1が小さいため、わずかな直流重畳がかかるだけで、磁界強度H1を越えて飽和領域に至ってしまう。従って、このタイプのインダクタンス素子は、直流重畳がかかる用途、例えばスイッチング電源のLCフィルタには適さない。
【0036】
図29の曲線bは図26または図27に示された「ギャップあり」のインダクタンス素子の一般的特性傾向を示すBH曲線である。フェライト磁芯40、41にギャップを設けると、図29の曲線bのように、磁気飽和を起こす磁界強度が、曲線aの場合の磁界強度H1よりも大きな磁界強度H2の点まで改善される。しかし、BH曲線の傾きが緩やかになって、透磁率μが下がり、インダクタンスが低下する。このように、ギャップを設けて磁気飽和を生じる磁界強度を高くし、直流重畳特性を改善しようとすると、インダクタンスが低下してしまうため、従来の一般的な磁芯構造では、直流重畳特性を改善しながら、大きなインダクタンスを得ることが、非常に困難であった。
【0037】
これに対して、本発明においては、異なった磁気特性を有する第1の磁芯1と第2の磁芯2を併用することにより、相互補完に適した特性の組み合わせを実現し、直流重畳特性に優れ、かつ、インダクタンスの大きなインダクタンス素子を得ることができる。
【0038】
更に、本発明において、導体3を、第1の磁芯1と第2の磁芯2で囲むことによって最短の磁路長を構成でき、高いインダクタンス特性が得られる。図26〜図28に示した従来構造の場合、ボビン43に皮膜付導線でなるコイル42を巻線する構造を有するので、実際に巻線に利用されていないデッドスペースが多くなり、磁路長が長くなったり、巻線スペースが充分にとれないという問題を生じる。インダクタンス素子のインダクタンスLは
L=N2・μ・S/Le
で表される。ここでNは巻数、Sは磁芯の断面積、Leは磁芯の磁路長である。この式に示す通り、磁路長Leが長くなると、インダクタンスLが反比例して減少することになってしまう。
【0039】
また巻線スペースが充分にとれない場合には、巻線のインピーダンスが充分に下げられないため、銅損が増加する。しかも、ギャップ付加、磁路長増大により、インダクタンスが低下すると、より多くの巻線数が必要になり、相乗的に銅損が増加すし、小型化に対する大きな障害になる。
【0040】
これに対して、本発明の場合、前述したように、最短の磁路長を構成でき、高いインダクタンス特性が得られる。このため、本発明に係るインダクタンス素子を、高周波スイッチング電源のLCフィルタ等に用いた場合、リップル電圧を低減させることができる。
【0041】
図5は図1〜図4に示した本発明に係るインダクタンス素子を用いたLCフィルタ回路、図6は図5においてパルス電圧Einを入力として、直流出力電圧Eoを得る場合の波形を示す図である。△Eoは直流出力電圧Eoに含まれるリップル電圧を示し、Tは周期、τはパルス電圧のオン時間である。コンデンサC1のインピーダンスをZcとし、インダクタンス素子のインダクタンスをLとすると、リップル電圧△Eoは、
ΔEo=Ein・τ・Zc/L
で表される。この式によれば、リップル電圧△EoはインダクタンスLに反比例するから、リップル電圧△Eoを低減するには、インダクタンスLを大きくしなければならない。本発明によれば、上述したように、高いインダクタンスが得られるから、リップル電圧△Eoを低減することができる。インダクタンスLが小さい場合には、リップル電圧△Eoを低減するために、動作周波数を上げる必要を生じ、効率の低下、ノイズの増加及び部品コスト増加などを伴う。
【0042】
更に、本発明において、第1の磁芯1は接触面に溝11を有し、導体3が溝11内に設置されているから、導体3の断面積を溝11の断面積に対応した大きさまで拡大し、導体3の銅損を低減することができる。
【0043】
しかも、第1の磁芯1及び第2の磁芯2は、少なくとも一面が互いに面接触して組み合わされているから、磁気回路が閉磁路構成になり、漏れ磁束によるノイズ障害を確実に回避することができる。また、第1の磁芯1及び第2の磁芯2には、実質的な磁気ギャップが生じないから、磁気ギャップによる透磁率μの低下を回避できる。
【0044】
本発明では、金型やエッチングによって予め形成された導体3を、溝11にはめ込むだけなので、巻線を必要とせず、組み立て作業は至って簡単である。しかもボビンを使用しない上に、またギャップを設ける必要がないので切削加工が不要になる。従って制作コストが低減でき、標準化も容易になり生産上の問題が解決可能になる。また複数のインダクタンス・セルを構成した場合には個々のインダクタンス・セルは独立的に使用できるため任意に直列接続や並列接続が可能になり、応用範囲が広がる。
【0045】
導体3を囲む磁芯は、第1の磁芯1及び第2の磁芯2の2種類に限る必要はなく、更に多くの磁芯で構成し、高性能化することもできる。
【0046】
図7は本発明に係るインダクタンス素子の別の実施例を示す平面図、図8は図7の8ー8線に沿った断面図である。この実施例では、第1の磁芯1及び第2の磁芯2を、テープ5によって結合した構造となっている。このほか、金属バンド等を用いて締めつけてもよい。
【0047】
本発明において、導体3は、溝11の外部に導出された両端に、外部との接続部分となる端子部301、302を有するから、端子部301、302を通して、外部回路に接続できると共に、複数のインダクタンス素子を用い、その端子部301、302の接続選択により、直列回路、並列回路またはこれらの組み合わせ回路等、多様な回路構成を実現することができる。
【0048】
図9は複数個nのインダクタンス素子61〜6nを回路基板7上で並列接続した例を示し、図10はその電気的等価回路図を示している。図9に示した実施例では、任意の複数個nのインダクタンス素子61〜6nを、回路基板7上に配置し、回路基板7上に形成された導体パターン81、82にインダクタンス素子の端子部301、302を半田等の手段によって接続固定してある。これにより、図10に示すように、インダクタンス素子61〜6nを並列接続した回路構成が得られる。
【0049】
図11は複数個n=3のインダクタンス素子61、62、63を回路基板7上で直列接続した例を示し、図12はその電気的等価回路図を示している。図11に示した実施例では、回路基板7上に形成された導体パターン81〜84に、インダクタンス素子61〜6nの端子部301、302を半田等の手段によって接続固定してある。これにより、図10に示すように、インダクタンス素子61〜6nを直列接続した回路構成が得られる。図示は省略するが、直並列接続であっても、容易に実現できる。
【0050】
図13は本発明に係るインダクタンス素子の別の実施例を示す平面図、図14は図13に示したインダクタンス素子の正面図、図15は図13及び図14に示したインダクタンス素子の電気的等価回路図である。この実施例では、第1の磁芯1に設けられた溝11に複数の導体31、32、33を設置してある。溝11内の導体31〜33の周りには絶縁樹脂9が充填されている。導体31〜33の個数は用途に応じて任意に設定できる。
【0051】
図16は図13及び図14に示したインダクタンス素子をプリント基板7の上に実装した状態を示す平面図、図17は図16の電気的等価回路図である。導体31〜33は、導体パターン83及び84により、同一方向の電流Ioが流れるように接続されている。導体パターン83及び84はインダクタンス素子の下側を通って導かれている。
【0052】
導体31〜33によるターン数をN(=3)とし、磁芯1、2の断面積をSとし、磁芯1、2による磁路長をLeとすると、インダクタンスLは、前述したようにL=N2・μ・S/Leで表されるから、図13、図14に示したインダクタンス素子を、図16及び図17に示すように結線することにより、大きなインダクタンスを得ることができる。また、導体31〜33は互いに絶縁された構造になっているので、インダクタだけでなく、変成器としても使用可能である。
【0053】
図18は本発明に係るインダクタンス素子の別の実施例を示す正面図である。この実施例では、第1の磁芯1に、互いにほぼ平行となる複数の溝11、12、13を備え、溝11、12、13のそれぞれに導体31、32、33を配置してある。溝11、12、13の内部には絶縁樹脂91〜93が充填されている。この実施例によれば、溝11、12、13に設置された導体31、32、33により、最短の平均磁路長でなるインダクタンス・セルL1、L2、L3を構成できる。図18に示したインダクタンス素子は図15に示した電気的等価回路によって表現できる。
【0054】
図19は図18に示したインダクタンス素子をプリント基板7上に実装した平面図、図20は図19の回路接続を示す電気回路図である。導体31〜33は、回路基板7上に形成された導体パターン83、84によって直列に接続されており、導体31〜33によるインダクタンスL1、L2、L3を直列接続したインダクタンス回路が形成されている(図20参照)。この接続によって、インダクタンスL1、L2、L3を加算したインダクタンス(L1+L2+L3)を持つインダクタンス素子が構成できる。
【0055】
図21は図13〜図18に示したインダクタンス素子をプリント基板7上に実装した別の例における平面図、図22は図21の回路接続を示す電気回路図である。導体31〜33は、回路基板7上に形成された導体パターン81、82によって並列に接続されている。このようにインダクタンス・セルを単独・直列・並列など、自由に使用できるので多くの用途に対応できる。
【0056】
図23は本発明に係るインダクタンス素子の別の実施例を示す分解斜視図、図24は図23に示したインダクタンス素子の部分組立を示す斜視図である。この実施例では、第1の磁芯1は一面に複数の溝11〜15を有しており、導体3は、溝11〜15のそれぞれに挿入される導体片31〜35の両端を、横枠36、37によって結合した連続体となっている。横枠36、37には端子部301、302が設けられている。この実施例に示すインダクタンス素子は、図22に示すような等価回路を構成する。
【0057】
図25は本発明に係るインダクタンス素子の別の実施例を示す分解斜視図である。この実施例では、第1の磁芯1は一面に複数の溝11〜15を有しており、導体3は、溝11〜15のそれぞれに挿入される導体片31〜35を、順次に直列に接続した連続体となっている。端子部301、302は、連続体の両端に備えられている。この実施例に示すインダクタンス素子は、図20に示すような等価回路を構成する。
【0058】
図23〜図25に示すインダクタンス素子は、予め、金型やエッチングなどで構成した導体3を、第1の磁芯1にはめ込むだけで、磁気回路が簡単、かつ、安価に構成できるという利点を生じる。
【0059】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(a)大電流下において高いインダクタンスを得ることの可能なインダクタンス素子を提供することができる。
(b)小型化及び薄型化されたインダクタンス素子を提供することができる。
(c)生産性が高く、コストダウンに寄与し得るインダクタンス素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に係るインダクタンス素子の平面図である。
【図2】図1の2ー2線に沿った断面図である。
【図3】図1及び図2に示したインダクタンス素子の分解斜視図である。
【図4】図1〜図3に示したインダクタンス素子の電気的等価回路図であり
【図5】図1〜図4に示した本発明に係るインダクタンス素子を用いたLCフィルタ回路図である。
【図6】図5においてパルス電圧を入力として、直流出力電圧を得る場合の波形を示す図である。
【図7】本発明に係るインダクタンス素子の別の実施例を示す平面図である。
【図8】図7の8ー8線に沿った断面図である。
【図9】複数個のインダクタンス素子を回路基板上で並列接続した実施例を示す図である。
【図10】図9に示した実施例の電気的等価回路図である。
【図11】複数のインダクタンス素子を回路基板上で並列接続した実施例を示す図である。
【図12】図11に示した実施例の電気的等価回路図を示している。
【図13】本発明に係るインダクタンス素子の別の実施例を示す平面図である。
【図14】図13に示したインダクタンス素子の正面図である。
【図15】図13及び図14に示したインダクタンス素子の電気的等価回路図である。
【図16】図13及び図14に示したインダクタンス素子をプリント基板上に実装した状態を示す平面図である。
【図17】図16の電気的等価回路図である。
【図18】本発明に係るインダクタンス素子の別の実施例を示す正面図である。
【図19】図18に示したインダクタンス素子をプリント基板上に実装した平面図である。
【図20】図19の回路接続を示す電気回路図である。
【図21】図13〜図18に示したインダクタンス素子をプリント基板上に実装した別の例における平面図である。
【図22】図21の回路接続を示す電気回路図である。
【図23】本発明に係るインダクタンス素子の別の実施例を示す分解斜視図である。
【図24】図23に示したインダクタンス素子の部分組立を示す斜視図である。
【図25】本発明に係るインダクタンス素子の別の実施例を示す分解斜視図である。
【図26】従来のインダクタンス素子の断面図である。
【図27】インダクタンス素子の別の従来例を示す図である。
【図28】インダクタンス素子の更に別の従来例を示す図である
【図29】折線近似のBH曲線を示す図である。
【符号の説明】
1 第1の磁芯
2 第2の磁芯
3 導体
Claims (2)
- 第1の磁芯と、第2の磁芯と、少なくとも1つの導体とを含むインダクタ素子であって、
前記第1の磁芯及び前記第2の磁芯は、磁気特性が互いに異なり、少なくとも一面が互いに面接触して組み合わされており、
前記第1の磁芯及び第2の磁芯の少なくとも一方は、接触面に、少なくとも2つの溝を有しており、前記溝は、それぞれ、一定の方向に延び、かつ、互いに間隔を隔てており、
前記導体は、2つの横枠と、少なくとも2つの導体片とを含む連続体でなり、外部との接続部分となる端子部を有しており、
前記導体片は、それぞれ、別個の前記溝内に設置され、前記第1の磁芯及び第2の磁芯によって包囲され、両端が前記横枠に接続されて並列回路を構成しており、
前記端子部は、前記横枠を介して前記導体片に接続されている、
インダクタンス素子。 - 第1の磁芯と、第2の磁芯と、少なくとも1つの導体とを含むインダクタ素子であって、
前記第1の磁芯及び前記第2の磁芯は、磁気特性が互いに異なり、少なくとも一面が互いに面接触して組み合わされており、
前記第1の磁芯及び第2の磁芯の少なくとも一方は、接触面に、少なくとも3つの溝を有しており、前記溝は、それぞれ、一定の方向に延び、かつ、互いに間隔を隔てており、
前記導体は、直列回路を構成するように互いに接続された少なくとも3つの導体片を含む連続体でなり、前記導体片は、それぞれ、別個の前記溝内に設置され、前記第1の磁芯及び第2の磁芯によって包囲されている、
インダクタンス素子。
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