JP3797165B2 - 面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼入れ性と深絞り性に優れ、引張特性の面内異方性が小さい加工用高炭素鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から高炭素鋼板は、ワッシャー、チェーン部品をはじめとした機械構造用部品などに使用されている。このような高炭素鋼板には、高い焼入れ性が要求され、最近では焼入れ後の硬さの向上のみならず、焼入れ作業の低コスト化の観点から、低温短時間での焼入れ性が望まれている。また、近年、部品の一体成形化が進みつつあり、円筒形状の部品においては更なる深絞り性への要求が高まっている。
【0003】
一方、高炭素冷延鋼板は、低炭素鋼に比べて一般に硬質なため成形性に劣るだけでなく、熱間圧延、焼鈍および冷間圧延に起因して、機械的性質の面内異方性を生じるため、従来から鋳造、鍛造で製造されている高い寸法精度が要求されるギア部品への適用は困難であった。
【0004】
そのため、焼入れ性および深絞り性を向上させること、および成形性に対する機械的性質の面内異方性を小さくすることが大きな課題であった。そこで、これまでに、高炭素鋼板において焼入れ性や深絞り性を向上させ、あるいは機械的性質の面内異方性を小さくするため、以下の技術が提案されている。
【0005】
(1)特開平5−9588号公報(以下、従来技術1という)
この公報には、熱間圧延後の鋼帯を10℃/sec以上の冷却速度で20〜500℃の温度範囲に冷却し、微細パーライトとし、その後再加熱を行い巻取って炭化物の球状化を促進し、高炭素鋼板の焼入れ性を高める技術が記載されている。
【0006】
(2)材料とプロセス、Vol.1(1988)、p.1729(以下、従来技術2という)
一般に0.65%もの高濃度の炭素を含有し、組織がフェライト/セメンタイト組織を呈する鋼板(S65C)では、低炭素鋼板に比べて成形性が低い。この文献には、熱間圧延後、冷間圧延(冷延率50%)および650℃で24hrのバッチ焼鈍を施し、さらに二次冷間圧延(冷延率65%)および680℃で24hrのバッチ焼鈍を行うことにより、引張強度が低下し、r値と伸びが向上し、かつr値の面内異方性も低炭素鋼板と同等となる高炭素冷延鋼板の製造方法について開示されている。
【0007】
(3)特開平10−152757号公報(以下、従来技術3という)
この公報には、高炭素鋼板の機械的性質の異方性の原因は圧延方向に細長く展伸した硫化物系非金属介在物の存在であるとし、C、Si、Mn、P、Cr、Ni、Mo、V、Ti、Alを規制するとともに、S含有量を重量で0.002%以下まで低減させ、介在物の圧延方向の平均長さを6μm以下とし、圧延方向の長さが4μm以下の介在物の個数を全介在物個数の80%以上とすることにより、衝撃値と全伸びについて圧延方向に直交する方向の機械的性質に対する圧延方向の機械的性質の比で0.9〜1.0の範囲になるように面内異方性を小さくした高炭素鋼板を製造することが記載されている。
【0008】
(4)特開平6−271935号公報(以下、従来技術4という)この公報には、C、Si、Mn、Cr、Mo、Ni、B、Alを特定した高炭素鋼板を熱間圧延する際に、熱間仕上げ温度をAr3変態点以上とし、熱間圧延終了から巻取りまでを30℃/sec以上で冷却し、550〜700℃の温度域で巻取るとともに、脱スケールし、その後、600〜680℃の温度で焼鈍し、40%以上の圧下率で冷間圧延し、さらに600〜680℃の温度で焼鈍した後、調圧することにより、焼入れ、焼戻し等の熱処理時に寸法変化異方性の小さい高炭素冷延鋼板を製造することが記載されている。
【0009】
(5)特開2000−328172号公報(以下、従来技術5という)
この公報には、C、Si、Mn、sol.Al、Nを規制し、また、2≦sol.Al/N≦20とし、鋼中炭化物の平均粒径が0.5μm以上で球状化率≧90%とし、また、集合組織を規制して、平均r値≧0.80、面内異方性指数Δrが±0.20以内を満足する深絞り面内異方性の小さい高炭素冷延鋼板の製造方法が記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来技術は以下の問題点を有している。
【0011】
従来技術1では、熱間圧延後の鋼帯をそのまま巻取って冷却するため、再加熱を行っても、炭化物の球状化のための保持時間が通常の球状化焼鈍時間に比べて極めて短く、炭化物の球状化率はまだ低いレベルにあるため、十分な焼入れ性が得られない場合がある。また、急冷後の再加熱には通電加熱設備が必要であり、製造コストが膨大となる。
【0012】
従来技術2では、フェライト/セメンタイト組織を有するS65Cについては、r値の平均値は1.3程度と高いものの、圧延方向に対し0°方向(L方向)、45°方向(S方向)、90°方向(C方向)のそれぞれの方向についてのr値であるr0、r45、r90からΔr=(r0+r90−2×r45)/4で規定されるr値の面内異方性指数Δrが−0.47であり、r値の面内の異方性は非常に大きい。また、冷間圧延−焼鈍プロセスを2回も行うため、製造コストが高くなるという問題点を有している。
【0013】
一方、黒鉛化した高炭素鋼板については、r値がさらに向上し、Δrは0.34と小さくなってはいるが、依然としてr値の面内異方性は大きい。また、黒鉛はオーステナイト中への溶解速度が遅いため、焼入れ性は著しく低下する。
【0014】
従来技術3では、衝撃値と全伸びに対する面内異方性について考慮しているだけであり、鋼板の成形性の重要な指標となるr値の面内異方性については検討されていない。
【0015】
従来技術4では、焼入れ焼戻し等の熱処理時に寸法変化が小さい高炭素鋼板の製造方法が記載されているが、成形性に対する面内異方性に関しては検討されていない。
【0016】
従来技術5では、集合組織を制御することにより平均r値を向上させるとともに、Δrを低減させているが、加工性向上のため、炭化物の平均粒径を0.5μm以上に粗大化させている。このため、高炭素鋼板として重要な焼入れ性は十分に得られない。また、伸びも33%程度であり、複雑な形状の部品の一体成形を行う場合、延性不足による割れが発生するため、加工性も十分とは言えない。
【0017】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、例えば円盤加工や円筒成形され、高い寸法精度が要求されるとともに、その後焼入れ焼戻し等の熱処理が施される部品にも適合可能な高炭素鋼板、すなわち、焼入れ性および深絞り性に優れ、かつ成形性に大きな影響を及ぼす引張特性に対する面内異方性の小さい高炭素鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、質量%で、C:0.2%〜1.5%、Si:0.10%〜0.35%、Mn:0.1%〜0.9%、P:0.03%以下、S:0.035%以下、Cu:0.03%以下、Ni:0.025%以下、Cr:0.3%以下,残部Feおよび不可避的不純物からなる成分系を有する高炭素鋼板であって、炭化物平均粒径が0.5μm未満、さらにr値の面内異方性指数Δrが−0.15超〜0.15未満であり、平均r値が1.0以上であることを特徴とする面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板である。ただし、Δrと平均r値は次の式で表される。
【0019】
Δr=(r0−2r45+r90)/4 (1)
平均r値=(r0+2r45+r90)/4 (2)
ここで、r0、r45、r90は、それぞれ、圧延方向に対し、0°方向(L方向)、45°方向(S方向)、90°方向(C方向)のr値を示す。
【0020】
本発明は、JIS G4051(機械構造用炭素鋼)、JIS G 4401(炭素工具鋼鋼材)、又はJIS G 4802(ばね用冷間圧延鋼帯)で規定される成分系を基本とし、かつC量が0.2%以上の成分系を有する高炭素冷延鋼板について、焼入れ性および深絞り性、ならびに引張特性の面内異方性が良好になる条件について検討を重ねた結果なされたものである。その過程で、熱間圧延、その後の冷却および巻取、冷間圧延および焼鈍等の製造条件を適正に制御すること、かつ鋼板中における炭化物の存在状態を適切に調整することが有効であることが見出された。
【0021】
また、このようにして、Δrを−0.15超〜0.15未満、平均r値を1.0以上とすることにより、円筒形状の部品の成形および高い寸法精度が要求される部品に、高炭素鋼板を適用できることが確認された。以下、個々の限定理由について説明する。
【0022】
化学成分:上記所定範囲内のC、Si、Mn、P、S、Cu、Ni、Cr
この発明の鋼の化学成分は、JIS G4051(機械構造用炭素鋼)、JIS G 4401(炭素工具鋼鋼材)、JIS G 4802(ばね用冷間圧延鋼帯)で規定される成分系を基本とするもので、発明範囲外では、これらのJIS規定を満足することができない。従って、各元素の含有量を上記の範囲内、即ち、質量%で、C:0.2%〜1.5%、Si:0.10%〜0.35%、Mn:0.1%〜0.9%、P:0.03%以下、S:0.035%以下、Cu:0.03%以下、Ni:0.025%以下、Cr:0.3%以下、残部Feおよび不可避的不純物とする。
【0023】
炭化物平均粒径:0.5μm未満
炭化物の形態は焼入れ性に大きく影響し、球状化した炭化物においては平均粒径で決定される。炭化物平均粒径が0.5μm以上に粗大化すると、高周波焼入れ等の短時間焼入れにおいて十分な焼入れ性が得られない。従って、炭化物平均粒径は0.5μm未満とする。
【0024】
面内異方性指数Δr:−0.15超〜0.15未満
r値の面内異方性指数Δrの絶対値|Δr|を小さくすることにより、円筒形状の部品を均一に成形することができる。この|Δr|が0.15以上となると、ギア部品等の高い寸法精度が要求される部品への適用は困難となる。従って、|Δr|を0.15未満、即ちΔrを−0.15超〜0.15未満の範囲内とする。
【0025】
平均r値:1.0以上
平均r値を高くすることにより、円筒形状の部品の成形において、成形高さを大きくとることができ、プレス成形の回数を削減することができる。平均r値が1.0未満では、十分な成形高さが得られず、円筒形状の部品への適用は困難となる。従って、平均r値を1.0以上とする。
【0026】
上記の面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板を得ることが可能な製造方法の発明は次のようになる。その発明は、上記の発明の成分系を有する高炭素鋼を、熱間圧延により体積率20%以上のベイナイト相を有する組織に組織制御し、この熱延鋼板を冷間圧延し、球状化焼鈍により、上記発明の範囲の炭化物平均粒径、Δr、および平均r値とすること、即ち、炭化物平均粒径を0.5μm未満、さらにr値の面内異方性指数Δrを−0.15超〜0.15未満、平均r値を1.0以上とすることを特徴とする面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板の製造方法である。
【0027】
この発明において、体積率20%以上のベイナイト相を有する組織とする代りに、体積率70%以上のベイナイト相を有する組織とすることを特徴とする面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板の製造方法とすることもできる。
【0028】
これらの発明は、球状化焼鈍前の熱延鋼板の段階でベイナイト相を有する組織とすることにより、球状化焼鈍後に好ましい特性が得られるという知見に基づきなされた。
【0029】
熱延鋼板の組織におけるベイナイト相の体積率が20%を超えると、球状化焼鈍時に炭化物が微細に球状化され、焼入性が高くなる。一方、ベイナイト相の体積率が20%以下では、この効果が顕著ではない。従って、ベイナイト相の体積率を20%を超える値に制御する。また、[111]結晶方位の集積を促進し、低い冷圧率でΔr値が低減するとともに平均r値が向上する。
【0030】
さらに、ベイナイト相の体積率を70%以上とすることにより、球状化焼鈍後の炭化物が、一層微細化するのみならず、フェライト粒が均一に成長するので、極めて高い焼入性と延性を有する鋼板が得られ、同時に平均r値もさらに向上する。従って、ベイナイト相の体積率を好ましくは70%を超える値に制御する。
【0031】
この製造方法の発明において、さらに、仕上温度(Ar3変態点−20℃)以上で熱間圧延を行った後、120℃/秒を超える冷却速度で冷却終了温度620℃以下まで急冷し、次いで巻取温度550℃未満で巻取り、得られた熱延鋼板を酸洗後、圧下率30%以上の冷間圧延を行い、焼鈍温度640℃以上720℃以下で焼鈍することを特徴とする面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板の製造方法とすることもできる。
【0032】
これらの発明において、冷却終了温度を550℃以下、巻取温度を500℃以下とすることを特徴とする面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板の製造方法とすることもできる。
【0033】
さらに、これらの発明において、酸洗後の熱延鋼板を、焼鈍温度580℃以上680℃以下で焼鈍することを特徴とする面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板の製造方法とすることもできる。
【0034】
これらの発明は、前述の熱延鋼板および冷延鋼板の組織を得ることが可能な製造条件について検討した結果なされたものであり、以下、その詳細を説明する。
【0035】
仕上温度: (Ar3変態点-20℃)以上
熱間圧延の仕上温度が(Ar3変態点-20℃)未満では、一部でフェライト変態が進行するためベイナイト相が十分に得られず、フェライト+パーライト+ベイナイトの混合組織となる。そのため、球状化焼鈍の際、フェライト粒が粒成長しにくくなり、高い延性が得られないとともに、[111]結晶方位の集積も十分に得られず、平均r値も向上しない。また、体積率20%を超えるベイナイト相が得られなくなり、球状化焼鈍後も炭化物が均一分散せず、焼入性が低下する。従って、仕上温度を(Ar3変態点-20℃)以上とする。
【0036】
圧延後の冷却条件: 冷却速度>120℃/秒
本発明では、変態後のフェライト相体積率の低減を図るため、圧延後の急冷(冷却)が必要である。冷却方法が徐冷であると、オーステナイトの過冷度が小さく初析フェライトが生成する。冷却速度が120℃/秒以下の場合、初析フェライトの生成が顕著となるため、体積率20%を超えるベイナイト相が得られなくなり、焼入性が低下するとともに、上記と同様、高い延性が得られず、r値も向上しない。従って、圧延後の冷却速度を120℃/秒を超える速度とする。なお、仕上圧延後、0.1秒を超え1.0秒未満の時間内で急冷を開始することもできる。
【0037】
冷却終了温度: 620℃以下
圧延後の急冷を終了する冷却終了温度が620℃より高い場合、巻取りまでの冷却(徐冷)中あるいは巻取り後にフェライトが生成するとともに、パーライトのラメラ間隔が粗大化し、ベイナイト相の体積率が20%以下に低下する。そのため、球状化焼鈍後に均一分散した微細炭化物が得られなくなり焼入性が低下するとともに、上記と同様、高い延性が得られず、r値も向上しない。従って、圧延後の急冷(冷却)の冷却終了温度を620℃以下とする。
【0038】
さらに、冷却終了温度を550℃以下にすることで、ベイナイト相の体積率を70%以上となる。その結果、球状化焼鈍の際、炭化物が一層微細に球状化して、焼入性が向上するとともに、フェライト粒が均一に成長して延性が向上する。また、それに伴い[111]結晶方位の集積を促進し、低い冷圧率でΔr値が低減するとともに平均r値が向上する。
【0039】
巻取温度: 550℃未満
急冷後の巻取においては、巻取温度が550℃を超えると初析フェライトが生じるとともに、パーライトのラメラ間隔が大きくなり、体積率20%を超えるベイナイト相が得られなくなる。そのため、焼鈍後の炭化物が粗大化して焼入性が劣化するとともに、十分な延性が得られず加工性が低下し、Δr値が大きくなり、平均r値が低下する。従って、巻取温度を550℃未満とする。
【0040】
さらに、巻取温度を500℃以下とすることにより、ベイナイト相の体積率が70%以上となり、パーライトのラメラ間隔が小さくなる。その結果、冷間圧延+焼鈍後の炭化物の分散状態が一層均一微細化し、極めて優れた焼入性および加工性が得られ、同時に、低い冷圧率でΔr値が低減するとともに平均r値が向上する。なお、巻取温度の下限は特に規定しないが、低温になるほど鋼板の形状が劣化するため、200℃以上とすることが好ましい。
【0041】
中間焼鈍温度: 580℃以上680℃以下
極めて延性が高く優れた加工性の鋼板を得るために、冷間圧延前に熱延鋼板の焼鈍(中間焼鈍)を行うことが好ましい。これは、炭化物の極微細球状化を行うことにより、冷間圧延後の焼鈍(最終焼鈍)における炭化物の均一微細化と同時にフェライト粒を均一かつ十分に粒成長させることができる。その結果、高い焼入性と延性を確保し、[111]結晶方位の集積を促進し、低い冷圧率でΔr値が低減するとともに平均r値が向上する。
【0042】
中間焼鈍温度については、580℃未満の場合、焼入性、Δrおよび平均r値については上記の効果が多少得られるものの、炭化物の極微細球状化は不十分となり、最終焼鈍後に極めて高い延性は得られない。一方、中間焼鈍温度が680℃を超える場合、最終焼鈍後には炭化物平均粒径が0.5μm以上に粗大化するため焼入れ性が低下し、さらに平均r値が上昇せず、Δrは大きくなる。従って、冷間圧延前に熱延鋼板の焼鈍(中間焼鈍)を行う場合は、焼鈍温度を580℃以上680℃以下の範囲内とする。
【0043】
冷間圧延: 圧下率30%以上
冷間圧延時の圧下率は、30%未満であると未再結晶部が残るとともに炭化物の球状化が不十分となり、延性と平均r値が低下し、Δr値が増加する。従って、冷間圧延時の圧下率は30%以上とする。上限は特に規定しないが、圧延機への負荷を考慮して80%以下とすることが好ましい。
【0044】
最終焼鈍温度: 640℃以上720℃以下
冷間圧延後の最終焼鈍の焼鈍温度は、焼入れ性、延性、平均r値、およびΔr値の観点から適性に制御すべき重要な条件である。最終焼鈍温度が640℃未満の場合、炭化物の球状化およびフェライト粒の粒成長が共に不十分となるため延性が低い。また、中間焼鈍を行った場合でも、フェライト粒が十分に粒成長しないため十分な延性が得られない。さらに、[111]結晶方位の集積も不十分となり、高い平均r値が得られず、Δr値が増大する。
【0045】
一方、焼鈍温度が720℃を超える場合、炭化物平均粒径が0.5μm以上に粗大化するため焼入れ性が低下し、さらにAc1変態点を超えた場合平均r値が低下し、Δr値は大きくなる。従って、最終焼鈍温度は、640℃以上720℃以下の範囲内とする。
【0046】
【発明の実施の形態】
本発明の実施に当っては、素材鋼は、例えば転炉、電気炉等により溶製される。鋼の成分系としては、前述のJIS規格に基づき選定すればよいが、それ以外の成分系でも、本発明の効果を損なわない限り必要に応じて添加してもよい。例えばBの添加により、本発明の面内異方性を損なうことなく、焼入れ性をさらに向上させることができる。鋼片の製造は造塊-分塊圧延法、連続鋳造法、薄スラブ鋳造法、ストリップ鋳造法等のいずれの方法でもよい。
【0047】
熱間圧延プロセスは、スラブを加熱後に圧延する方法、連続鋳造後短時間の加熱処理を施す方法、またはこの加熱工程を省略して直ちに圧延する方法のいずれでもよい。なお、優れた表面品質を付与するためには、一次スケールのみならず熱間圧延中に生成する二次スケールについても十分に除去することが好ましい。また、熱間圧延中においては、バーヒーター等により加熱を行ってもよい。
【0048】
また、熱間圧延後あるいは冷間圧延前後に行われる焼鈍については、連続焼鈍、箱焼鈍のいずれでもよく、その後必要に応じて調質圧延を行う。
【0049】
【実施例】
[S35C相当]
JIS G4051のS35C相当の成分系(質量%で、C:0.35%、Si:0.21%、Mn:0.74%、P:0.015%、S:0.005%、Al:0.031%)のスラブを連続鋳造により製造し、このスラブを1100℃に加熱した後、表1に示す条件で熱間圧延および冷間圧延、焼鈍を行い、板厚1.0mmの鋼板を作製した。
【0050】
【表1】
【0051】
これらの試料について、以下のようにして熱延板段階でのベイナイト相の体積率測定、炭化物粒径測定および粒度分布測定、引張試験、焼入れ試験を行った。
【0052】
(1) ベイナイト相の体積率の測定
サンプルの板厚断面を研磨・腐食後、走査型電子顕微鏡にてベイナイト相の体積率の測定を行った。
【0053】
(2) 炭化物粒径測定
サンプルの板厚断面を研磨・腐食後、走査型電子顕微鏡にてミクロ組織を撮影し、2500μm2の範囲から炭化物の粒径および粒度分布の測定を行った。
【0054】
(3) 引張強度
圧延方向に対し0°方向(L方向)、45°方向(S方向)、90°方向(C方向)に沿ってJIS5号試験片を採取し、引張速度10mm/minで引張試験を行い、各方向の引張特性を測定し、面内異方性を前述の式(1)および(2)を用いて算出した。
【0055】
(4) 焼入れ試験
上記鋼板を50×100mmの大きさに切断後、加熱炉で820℃に昇温し、10秒保持後に約20℃の油中へ焼入れした。焼入れ後の試験片の表面における硬さをロックウェルCスケール(HRC)で10点測定し、焼入れ性を評価した。評価は平均硬さで行った。焼入れ性の評価については、硬さ(HRC)50以上を合格とした。以上の試験の結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
この表2より、発明例の鋼板No.1〜5ではElが34%以上、平均r値は1.20以上、Δr値は±0.15以内、焼入れ後の硬さ(HRC)は50以上であり優れた特性を示している。比較例では、鋼板No.6〜9は熱延鋼板の組織のベイナイト相が体積率20%以下であり、鋼板No.10は中間焼鈍温度が高すぎたため、いずれも炭化物平均粒径が0.5μm以上となっており、焼入れ後の硬さ(HRC)が50に到達していない。鋼板No.8〜12は、製造条件の一部が本発明範囲外であり、Δr値が±0.15を超えており、平均r値も発明例に比べて低目である。
【0058】
[S65C相当]
JIS G4802のS65C−CSP相当の成分系(質量%で、C:0.65%、Si:0.20%、Mn:0.76%、P:0.013%、S:0.003%、Al:0.022%)のスラブを連続鋳造により製造し、このスラブを1100℃に加熱した後、表3に示す条件で熱間圧延、冷間圧延、焼鈍を行い、板厚1.0mmの鋼板を作製した。
【0059】
【表3】
【0060】
これらの試料について、実施例1と同様にして、熱延板段階でのベイナイト相の体積率測定、炭化物粒径測定、粒度分布測定、引張試験、焼入れ試験を行った。焼入れ性の評価については、硬さ(HRC)60以上を合格とした。以上の結果を表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
表4において、鋼板No.13〜17は、製造条件が本発明の範囲内であり、熱延板段階でのベイナイト相の体積率が20%超、炭化物の粒径が0.5μm未満の本発明例である。本発明例では、Elが32%以上、平均r値は1.20以上、Δr値は±0.15以内、焼入れ後の硬さ(HRC)は60以上であり優れた特性を示している。
【0063】
鋼板No.18〜24は比較例であり、鋼板No.18〜21は熱延板段階でのベイナイト相の体積率が20%超、炭化物の粒径が0.5μm以上で本発明の範囲外である。そのため、焼入れ後の硬さ(HRC)が目標の60に到達していない。鋼板No.18,20〜24は、製造条件の一部が本発明範囲外であり、Δr値が±0.15を超えており、平均r値も発明例に比べて低目である。
【0064】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、焼入れ性、延性、および深絞り性に優れ、かつ成形性に大きな影響を及ぼす深絞り性の面内異方性が小さい高炭素鋼板を得ることができる。したがって、本発明によって得られた高炭素鋼板は、高い寸法精度が要求されるギア部品等に供することができる。また、本発明を適用することにより、ギア部品等を製造するに際して、鋼板の一体成形および焼入れ焼戻し処理により製造することができ、従来の鋳造鍛造プロセスに比べて、安価に製造することが可能となる。
Claims (6)
- 質量%で、C:0.2%〜1.5%、Si:0.10%〜0.35%、Mn:0.1%〜0.9%、P:0.03%以下、S:0.035%以下、Cu:0.03%以下、Ni:0.025%以下、Cr:0.3%以下,残部Feおよび不可避的不純物からなる成分系を有する高炭素鋼板であって、炭化物平均粒径が0.5μm未満、さらにr値の面内異方性指数Δrが−0.15超〜0.15未満であり、平均r値が1.0以上であることを特徴とする面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板。ただし、Δrと平均r値は次の式で表される。
Δr=(r0−2r45+r90)/4
平均r値=(r0+2r45+r90)/4
ここで、r0、r45、r90は、それぞれ、圧延方向に対し、0°方向(L方向)、45°方向(S方向)、90°方向(C方向)のr値を示す。 - 請求項1記載の成分系を有する高炭素鋼を、熱間圧延により体積率20%以上のベイナイト相を有する組織に組織制御し、この熱延鋼板を冷間圧延し、球状化焼鈍により、請求項1記載の範囲内の炭化物平均粒径、r値の面内異方性指数Δr、および平均r値とすることを特徴とする面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板の製造方法。
- 仕上温度(Ar3変態点−20℃)以上で熱間圧延を行った後、120℃/秒を超える冷却速度で冷却終了温度620℃以下まで急冷し、次いで巻取温度550℃未満で巻取り、得られた熱延鋼板を酸洗後、圧下率30%以上の冷間圧延を行い、焼鈍温度640℃以上720℃以下で焼鈍することを特徴とする請求項2記載の面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板の製造方法。
- 請求項2記載の面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板の製造方法において、体積率20%以上のベイナイト相を有する組織に代えて、体積率70%以上のベイナイト相を有する組織とすることを特徴とする面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板の製造方法。
- 仕上温度(Ar3変態点−20℃)以上で熱間圧延を行った後、120℃/秒を超える冷却速度で冷却終了温度550℃以下まで急冷し、次いで巻取温度500℃以下で巻取り、酸洗後、圧下率30%以上の冷間圧延を行い、焼鈍温度640℃以上720℃以下で焼鈍することを特徴とする請求項4記載の面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板の製造方法。
- 酸洗後の熱延鋼板を焼鈍温度580℃以上680℃以下で焼鈍することを特徴とする請求項2ないし請求項5記載の面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板の製造方法。
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