JP3779912B2 - ボタン穴かがりミシン - Google Patents
ボタン穴かがりミシン Download PDFInfo
- Publication number
- JP3779912B2 JP3779912B2 JP2001353412A JP2001353412A JP3779912B2 JP 3779912 B2 JP3779912 B2 JP 3779912B2 JP 2001353412 A JP2001353412 A JP 2001353412A JP 2001353412 A JP2001353412 A JP 2001353412A JP 3779912 B2 JP3779912 B2 JP 3779912B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- lower thread
- needle
- thread
- looper
- sewing machine
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Classifications
-
- D—TEXTILES; PAPER
- D05—SEWING; EMBROIDERING; TUFTING
- D05B—SEWING
- D05B3/00—Sewing apparatus or machines with mechanism for lateral movement of the needle or the work or both for making ornamental pattern seams, for sewing buttonholes, for reinforcing openings, or for fastening articles, e.g. buttons, by sewing
- D05B3/06—Sewing apparatus or machines with mechanism for lateral movement of the needle or the work or both for making ornamental pattern seams, for sewing buttonholes, for reinforcing openings, or for fastening articles, e.g. buttons, by sewing for sewing buttonholes
- D05B3/08—Sewing apparatus or machines with mechanism for lateral movement of the needle or the work or both for making ornamental pattern seams, for sewing buttonholes, for reinforcing openings, or for fastening articles, e.g. buttons, by sewing for sewing buttonholes for buttonholes with eyelet ends
-
- D—TEXTILES; PAPER
- D05—SEWING; EMBROIDERING; TUFTING
- D05B—SEWING
- D05B19/00—Programme-controlled sewing machines
- D05B19/02—Sewing machines having electronic memory or microprocessor control unit
- D05B19/12—Sewing machines having electronic memory or microprocessor control unit characterised by control of operation of machine
- D05B19/14—Control of needle movement, e.g. varying amplitude or period of needle movement
-
- D—TEXTILES; PAPER
- D05—SEWING; EMBROIDERING; TUFTING
- D05B—SEWING
- D05B3/00—Sewing apparatus or machines with mechanism for lateral movement of the needle or the work or both for making ornamental pattern seams, for sewing buttonholes, for reinforcing openings, or for fastening articles, e.g. buttons, by sewing
- D05B3/02—Sewing apparatus or machines with mechanism for lateral movement of the needle or the work or both for making ornamental pattern seams, for sewing buttonholes, for reinforcing openings, or for fastening articles, e.g. buttons, by sewing with mechanisms for needle-bar movement
-
- D—TEXTILES; PAPER
- D05—SEWING; EMBROIDERING; TUFTING
- D05B—SEWING
- D05B55/00—Needle holders; Needle bars
- D05B55/14—Needle-bar drives
-
- D—TEXTILES; PAPER
- D05—SEWING; EMBROIDERING; TUFTING
- D05B—SEWING
- D05B65/00—Devices for severing the needle or lower thread
- D05B65/02—Devices for severing the needle or lower thread controlled by the sewing mechanisms
-
- D—TEXTILES; PAPER
- D05—SEWING; EMBROIDERING; TUFTING
- D05B—SEWING
- D05B65/00—Devices for severing the needle or lower thread
- D05B65/06—Devices for severing the needle or lower thread and for disposing of the severed thread end ; Catching or wiping devices for the severed thread
-
- D—TEXTILES; PAPER
- D05—SEWING; EMBROIDERING; TUFTING
- D05B—SEWING
- D05B69/00—Driving-gear; Control devices
- D05B69/30—Details
Landscapes
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Textile Engineering (AREA)
- Computer Hardware Design (AREA)
- Microelectronics & Electronic Packaging (AREA)
- Mechanical Engineering (AREA)
- Sewing Machines And Sewing (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボタン穴かがりミシンに関し、特にその下糸の切断及び保持に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動的に、ボタン穴を形成するとともに該穴の周りにかがり縫いを施すボタン穴かがりミシンが知られている。このようなボタン穴かがりミシンでは、上糸が通された縫針を上下動及び揺動させるとともに、縫針の下方に設けられ、下糸が通されたルーパーを動作させ、両者の協働により穴の周りに縫い目を形成するようになっている。
ボタン穴かがりミシンでは、特開平9−225166号公報に記載されているように、かがり縫いの形成後、加工布に連なる下糸(ルーパー糸)を切断し、ルーパー側の糸端を次のかがり縫いまで保持する機構が設けられている。前記公報の鳩目穴かがりミシンでは、針板上に案内溝を形成し、かがり縫いの形成後、針板上の加工布を送ることで、かがり縫いの末端から針板下のルーパーに連なる下糸を前記案内溝内に誘導し、針板後端部の保持部で保持した状態で、かがり縫いの端部で切断する。前記保持部で保持されたルーパー側の糸端は、次の縫製開始時に、かがり縫いの進行により布が送られることに伴い、かがり縫いの中に縫いこまれるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記公報の下糸切り・保持機構には次の問題点があった。
(1)針板上面の加工布の移動により案内溝に下糸を誘導するためには、下糸を切断する前に相当距離加工布を送ることで下糸を長く引き出さなければならない。このように下糸が長く引き出されると、糸を無駄にし、次のかがり縫いで縫い込まなければならない糸端も長くなり、見た目に劣る縫目が形成される。さらには、次のかがり縫いの縫い長さが短い場合には、縫い終わりに糸端がはみ出てしまう可能性もある。
【0004】
(2)前記保持部で保持された下糸は、次のかがり縫いの進行に伴い徐々にかがり縫いの中に縫いこまれ、やがて保持部から外れる。保持部から外れてしまった下糸は、案内溝上にあるとは言え、案内溝の上方が開放されていることから、フリーの状態であり、かがり縫目から外れてしまい易く、外れれば何らかの処理を要する。
また、鳩目穴かがりミシンでは、鳩目部で縫針や針板が同期して旋回するように構成されている。(1)のように縫い込まなければならない糸端が長いと、糸端が旋回部分まで十分に達してしまい、旋回時には生地に対する針板の向きが変わるため、特に縫目から外れやすくなる。
【0005】
(3)針板上の案内溝の位置は、かがり縫いの中に確実に縫いこまれるように糸端を案内するため、ボタン穴に近い針落ち位置である内針とより遠い針落ち位置である外針の間に形成されている。
ところで、ボタン穴かがりミシンでは、上糸と下糸の間に芯糸を通す仕様のものが知られている。かがり縫目の中に芯糸を案内するために針板に形成される芯糸穴は、内針と外針の間に形成される。つまり、芯糸穴は、前記公報における案内溝とほぼ同じ位置に形成することになるので、このような案内溝付の針板は、芯糸を要するかがり縫いに用いることができない。
【0006】
一方、穴かがりミシンの下糸切り装置としては、特開2001−232086号公報に記載されているものも知られている。この装置は、下糸切り装置が加工布を送る布送り台に搭載されており、かがり縫いが終了し、さらに布送り台を一定の原点位置に送った後、かがり縫いの端部であって加工布の直下で下糸を切断するように構成されていた。
しかし、この下糸切り装置は布送り台に固定されているので、かがり縫いの長さが変われば、下糸切り装置を構成する部品の位置調整や交換を要し、非常に面倒であった。逆に言えば、縫い長さを一定にせざるをえなかった。
【0007】
本発明の課題は、下糸の切断・保持機構を有するボタン穴かがりミシンにおいて、切断後にルーパー側に残る下糸の糸端長さをなるべく短くし、次のかがり縫い目に確実に縫いこむことにある。また、下糸切断に関する部品の位置調整や交換を要することなく、多様な縫い長さに対向でき、加えて、芯糸の有無に関係なく部品の共用化を可能とすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、例えば図1〜図8に示すように、
ミシンアーム(アーム部14b)に設けられ、上糸が通された針(縫針18)を支持しながら、上下動し、かつ、針が加工布に形成されるボタン穴に対して遠い外側針落ち位置と近い内側針落ち位置とに交互に針落ちするように、所定の針振り方向に針振り運動を行う針棒(11)と、
ミシンベッド(ベッド部12)に設けられ、少なくとも前記針振り方向に略直交する一方向に加工布を移送する送り手段(布送り台13)と、
ミシンベッドに前記針棒に対向して設けられ、前記針棒と協働して下糸を前記上糸に絡げるルーパー(左ルーパー6、右ルーパー5)を備えるルーパー土台(31)と、
ルーパー土台に、ルーパーの上方に位置するように設けられ、前記内側針落ち位置と前記外側針落ち位置となる2点を含む針穴(32b)が形成されている針板(32)と、
かがり縫いの際に針棒及びルーパー土台を旋回させる旋回手段(旋回機構15)と、
ボタン穴かがり縫いの終了後にルーパーから加工布に連なる下糸を切断する下糸切り手段(下糸切り装置30)と、
前記下糸切り手段による切断前にルーパーに連なる下糸を保持し、切断後においては次のボタン穴かがり縫い時の前記送り手段による加工布の移送により、糸端が縫い目の中に自然に縫い込まれるように保持する下糸保持手段とを備え、
ボタン穴(H)の周囲にかがり縫い目(W)を形成するボタン穴かがりミシン(10)において、
下糸保持手段は、針板の周囲に設けられ、
針板には、針穴から連続して一方向に開口している開口部(32c)が設けられ、
ボタン穴かがり縫いの終了後、下糸の切断前に、ルーパーから針穴を通って加工布に連なる下糸を、前記開口部から導出し前記下糸保持部によって保持されるように誘導する誘導手段を備え、
前記誘導手段は、前記旋回手段と前記送り手段とからなり、ボタン穴かがり縫い後に、前記ルーパーから針穴を通って加工布に連なる下糸を、まず送り手段によって加工布を移送することで針板の開口部に移動させ、次いで、旋回手段によって針板ごとルーパー土台を旋回させることにより針板の外周面に沿って下糸保持手段に誘導することを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、ボタン穴かがり縫いの終了後、ルーパーから針穴を通って加工布に連なる下糸を、誘導手段によって針板の開口部から導出・誘導し、針板の周囲に設けられている下糸保持手段に保持させ、その状態で下糸切り手段によってルーパーと加工布との間で下糸が切断される。
つまり、前記特開平9−225166号公報のように、案内溝に下糸を誘導するために下糸を切断する前に相当距離加工布を送る必要がなく、下糸は針穴から開口部を経て針板の周囲の下糸保持手段まで誘導されるだけであるので、前記公報のように長く引き出されることがない。
したがって、下糸切り手段によって、ルーパーから加工布に連なる下糸を極力短い状態で、切断することが可能になる。つまり、加工布側に残る糸端は、かがり縫い目の終点から針板までの距離程度にでき、また、下糸保持手段に保持される、すなわちルーパー側に残る糸端を、針板までの長さ程度に短くすることができる。よって、次のかがり縫い時に縫いこまれる糸端が短いので見た目が悪くなることはないし、確実に縫いこむことができる。
さらに、下糸の引き出し量が少ないため糸の無駄も少ない。
しかも、請求項1に記載の発明によれば、まず送り手段によって針穴を通っている下糸を開口部まで導き、次いで旋回手段で針板を旋回させて、相対的に針板の外周に沿って下糸を誘導し、下糸保持手段に誘導している。すなわち、誘導手段だけのために新たな機構を設けることなく穴かがりミシンに本来設けられている機構を利用しているので、専用の機構を設けることに比較すれば、コストやスペースを節約することができる。
また、送り手段による送り量を適宜制御することで、下糸の引き出し量を変えることもでき、結果的に、加工布側の下糸残り長さを選択でき、一定にすることも適宜変えることもでき、自由度が高い。
ここで、送りや旋回の動作は、下糸を誘導するためだけに行ってもよい。また、次のボタン穴かがり縫いの開始に向けての動きを利用してもよく、その場合、時間的な点でも下糸の誘導のためだけの動作時間を要さず、効率的である。
【0010】
ここで、送り手段について「少なくとも前記針振り方向に略直交する一方向に加工布を移送する」とは、その他の方向に移動可能に構成されていてもよいという意味である。
また、下糸保持手段は、針板の周囲に設けられていればよく、具体的には針板そのものを変形したり、針板に下糸を挟むことができる板バネ状の部材を取り付けたりしてもよい。
あるいは請求項2のように、針板と、さらに別の部材から構成してもよい。
【0011】
すなわち、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のボタン穴かがりミシンにおいて、
下糸保持手段は、
針板に設けられ、切断された下糸の端部を、次に形成されるかがり縫い目に縫いこまれるように案内する下糸案内部(下糸案内面32f)と、
前記下糸案内部に対して下糸を押え付ける下糸押え部材(下糸押え27)とからなることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、下糸押え部材によって下糸案内部に下糸が押さえつけられることで下糸が挟持されて、次のかがり縫い目の際に下糸案内部によって案内されるので、確実に縫い目に縫いこまれる。さらに、針板を小さく形成すれば、縫い目を形成する位置である針穴と下糸案内部が近くなり、完全に縫い目に縫いこまれるぎりぎりまで糸端を保持し続けることができ、縫い目から外れてしまうことがない。
そのうえ、下糸保持手段が保持に加えて、案内部材も兼ねているので、その分構成が簡素化できる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のボタン穴かがりミシンにおいて、下糸押え部材は、下糸切り手段と共通の駆動手段(上糸切り駆動手段60)によって駆動されて下糸案内部に対して下糸を押し付けることを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、下糸押え部材は、下糸切り手段と共通の駆動手段で駆動されることから、全体の構造を簡素化することができる。加えて、駆動源が同じであることから、下糸押えと下糸切りのタイミングについて一度調節すればほとんどずれることはない。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載のボタン穴かがりミシンにおいて、
ボタン穴かがり縫いの終了後に上糸を切断する上糸切り手段(上糸切り装置7)と、上糸切り手段を駆動する上糸切り駆動手段(60)とを備え、
下糸切り手段と下糸押え部材の少なくとも一方は、上糸切り駆動手段によって駆動されることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、下糸切り手段と下糸押え部材の少なくとも一方は、上糸切り駆動手段によって駆動されることから、全体の構造を簡素化することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれかに記載のボタン穴かがりミシンにおいて、
下糸案内部と下糸押え部材とが下糸を保持するために接近する最小の距離を調整可能な調整手段(ストッパーネジ21及びナット22)を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、調整手段によって下糸案内部と下糸押え部材とが下糸を保持するために接近する最小の距離を調整することができるので、保持する下糸の太さや性質などに合わせて、保持力の適正化を図ることができるので、保持力が弱くて縫い始めに下糸が外れてしまったり、逆に保持力が強すぎて下糸が切れたりすることがない。
また、見方を変えれば、下糸案内部に対して下糸押え部材が接するときの力を調整することができることにもなり、下糸の保持時に、重要な部品である針板に衝撃が加わることを防ぐことができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載のボタン穴かがりミシンにおいて、
下糸保持手段は、針穴内の内側針落ち位置と外側針落ち位置を結ぶ直線の間でこの直線に直交する上下方向の平面にほぼ一致して設けられていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、下糸保持手段は、針穴内の内側針落ち位置と外側針落ち位置を結ぶ直線の間でこの直線に直交する上下方向の平面にほぼ一致して設けられているので、下糸保持手段によって保持された下糸は、かがり縫い目の開始時に内側針落ち位置と外側針落ち位置との間に自然に案内され、確実にかがり縫い目の中に縫いこまれる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載のボタン穴かがりミシンにおいて、
下糸保持手段は針穴の下方に設けられていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、下糸保持手段は、針穴の下方に設けられているので、針板に芯糸を通すための穴を形成することが容易となり、芯糸を要するか否かに関係なく部品を共用化することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載のボタン穴かがりミシンにおいて、
前記下糸切り手段は、下糸保持手段によって下糸が保持された後であって、かつ、送り手段により加工布が移送される前に、下糸を切断することを特徴とする。
請求項8の発明によれば、下糸切り手段が、ルーパーから加工布に連なる下糸を、下糸保持手段によって下糸が保持された後であって、かつ、加工布が移送される前に切断するので、前記特開平9−225166号公報のようにルーパーから加工布に連なる下糸が長く引き出されることがない。したがって、下糸切り手段が、ルーパーから加工布に連なる下糸を極力短い状態で、切断する。つまり、加工布側に残る糸端は、かがり縫い目の終点から針板までの距離程度となり、また、下糸保持手段に保持される、すなわちルーパー側に残る糸端が、針板までの長さ程度に短くなる。よって、次のかがり縫い時に縫いこまれる糸端が短いので見た目が悪くなることはないし、確実に縫いこむことができる。
さらに、下糸の引き出し量が少ないため糸の無駄も少ない。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載のボタン穴かがりミシンにおいて、前記下糸切り手段は、ルーパー土台に設けられていることを特徴とする。
請求項9の発明によれば、下糸切り手段がルーパー土台に設けられているため、切断位置が一定で、下糸切り機構と縫い長さを無関係とすることができ、縫い長さによって下糸切り機構の部品等を調節・交換する必要はないし、縫い長さを一定にせざるをえないといった制約もなく、自由な長さのかがり縫いが可能となる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1に示す本発明の一例であるボタン穴かがりミシン10(以下、単にミシン10とする)は、自動制御により、ボタン穴かがり縫いを行うものである。ミシン10は、パターンを選択することで各種かがり縫い目を形成することができる。ここでは、例えば、図9(b)に示す滴状の鳩目部h1と直線状の直線部h2とからなるボタン穴Hの周囲に、かがり縫い目Wを形成するものとする。かがり縫い目Wは、右側縫い部w1、鳩目部h1周りの鳩目縫い部w2、左側縫い部w3、直線閂止め部w4とからなる。
【0024】
図1のミシン10は、主に、略矩形箱状をなすベッド部12と、ベッド部12の後部に設けられた縦胴部14aと、縦胴部14aから前方に延出して設けられたアーム部14bとを有し、ミシンテーブル(図示せず)上にボトムカバー16を介して載置されている。アーム部14bの前部には、上糸が通される縫針18を下端部に備えた針棒11が、上下動可能で且つ左右方向(図1(a)のX方向)に針振り運動可能に設けられている。
さらに、ミシン10は、オペレータが各種設定を行うための操作パネル90と、ミシン10の一連の縫製動作を制御する制御装置110とを備える(図7参照)。
図示はしないがアーム部14b内には上軸が前後方向に延在して設けられる。一方、ベッド部12内には下軸が前後方向に延在して設けられる。上軸と下軸は、タイミングベルトを介して接続され、主軸モータ81により同期して回転駆動される。
【0025】
前記針棒11は、アーム部14b内の図示しない針棒上下駆動機構および針振り機構を介して上軸に接続されている。なお、針振り機構は、針振り幅が機械的に調節可能な従来のボタン穴かがりミシンの備える周知のものと同様であり説明は省略する。つまり、この実施の形態における振り幅は機械的に調節して予め設定されているものとする。
ベッド部12内には、下糸が通される左ルーパー6及び左ルーパー6を補助する右ルーパー5を有するルーパー土台31が、針棒11に対向するように設けられている。左右ルーパー6、5は、図示しない駆動機構を介して下軸に接続されている。針棒11及びルーパー土台31は従来のミシンと同様に同期して動作し、両者の協働により上糸に下糸を絡めてかがり縫目を形成する。
また、針棒11およびルーパー土台31は、旋回モータ(旋回用のパルスモータ)84とタイミングベルトとを有する旋回機構(旋回手段)15に接続され、同期して垂直な軸回りを中心に回転し、これにより、ボタン穴Hの滴状鳩目部h1の周縁部に放射状の縫い目(鳩目縫い部w2)を形成する。
【0026】
ベッド部12の上面には加工布がセットされる布送り台(送り手段)13が設けられている。この布送り台13の上面には、加工布を、形成されるべきボタン穴の両側で押える布押え2が設けられている。
布送り台13は、全体として薄い矩形上の箱体をなし、ベッド部12内に設けられたX軸モータ82およびY軸モータ83などからなる駆動機構により、CPU113の制御のもとで、左右方向(X方向)および前後方向(Y方向)に移動可能となっている。
【0027】
この布送り台13が所定の原点位置に位置決めされている状態で、その上面に載置された加工布におけるボタン穴の形成予定位置の上下に、固定メス(図示せず)とメス受け台4とが臨むよう設定されている。
メス受け台4は針棒11の後方に設けられ、メス受け台4に対向するようにベッド部12に固定メスが設けられている。メス受け台4は、その上方に設けられている布切りモータ(パルスモータ)85により上下に駆動される。
縫製の際には、まず、原点位置において、布切りモータ85を駆動し、メス受け台4を固定メスに向かって下降させ、メス受け台4と固定メスとの間にセットされた加工布が押し切られ、ボタン穴(ここでは鳩目穴)Hがあけられる。
【0028】
そして、布送り台13は、スタートスイッチ92(図7)の操作により原点位置より前方の縫製開始位置、つまり布送り台13に載置した加工布が縫針18の直下に移動するように、駆動される。ボタン穴H周りのかがり縫いは、右側縫い部w1の下端部から始まり、鳩目縫い部w2を経て、左側縫い部w3まで縫って、最後に直線閂止め縫い部w4の順で縫わる。このような順に縫うために、布送り台13は、Y方向において前記縫製開始位置から移動し始め、ボタン穴Hの頂点(鳩目穴h1の先端部)が縫針18に対応する状態になるまで前方に移動し、その後後方に向かい縫製開始位置とほぼ同じ縫製終了位置に戻ってくるようになっている。
【0029】
縫製が終了すると、布送り台13は縫製終了位置から原点位置に戻るよう制御される。また、本実施の形態では加工布をセットするときは、布送り台13が所定のセット位置に移動するようになっている。
【0030】
ミシン10には、前記ルーパー土台31上に上糸及び下糸をそれぞれ切断する上糸切り装置7及び下糸切り装置30が設けられている。後述するように、ミシン10では、縫製終了後、布送り台13が原点に移動し始める前に、上糸切り装置7によって上糸が切断され、原点に向かう途中位置で、下糸切り装置30によって下糸が切断されるようになっている。
本発明においては、上糸切り装置7については、従来周知の構造から構成されるので、詳細な説明は省略する。ただし、本発明に特徴的である下糸切り装置30は、本実施の形態では上糸切り装置7と共通の駆動源を利用していることから、以下では、まず、上糸切り装置7の駆動機構について説明する。
【0031】
上糸切り手段である上糸切り装置7は、図2に示すように、ルーパー土台31上の上糸切りメス78等と、ベッド部12内において前後方向に各部材を配設してなる上糸切り駆動手段60とから構成される。
上糸切りメス78を作動させる上糸切り作動腕78aは、ルーパー土台31に固定されている取付部材31aに対し、ミシン10の前後方向に平行な軸周りに回動自在であるように、取り付けられている。この上糸切り作動腕78aの上部に上糸切りメス78が固定されている。図2においては、下糸切り装置30は簡略化して示しており、ベッド部12は2点鎖線で概略形状のみ示している。
【0032】
上糸切り作動腕78aには、図示しない作動腕用バネの一端部が掛けられ、該作動腕用バネにより所定方向に回転するように付勢されて、上糸切りメス78が所定の切断待機位置に位置するようになっている。なお、上糸切り作動腕78aの回転支点は、後述の中央回転軸42である。
上糸切り作動腕78aには突部78cが設けられており、突部78cが上糸切り駆動手段60によって下方に押され上糸切り作動腕78aが前記作動腕用バネに抗して前記所定方向とは逆方向に回転することにより、上糸切りメス78が上糸切断動作を行うようになっている。
【0033】
上糸切り駆動手段60は、糸切りシリンダ86と、糸切りリンク61と、糸切り駆動軸64と、糸切り駆動腕69等とから構成されている。
糸切りシリンダ86の基端部は、ベッド部12に対して止めネジ66a、66aによって固定されているシリンダブラケット66に回動自在に支持されている。また糸切りシリンダ86は、その前部に取り付けられているロッド86aを進退させるようになっており、ロッド86aの押出量は、常に一定となっている。
【0034】
ロッド86aの先端部には、シリンダナックル67を介して、回動可能に略T字状に形成された糸切りリンク61の一端部が連結されている。糸切りリンク61の中間部は、回転軸61aによってベッド部12に回動自在に支持されている。一方、ほぼ上下方向に延在している糸切り駆動軸64に、糸切りリンク61の他端部が回動可能に連結されている。糸切り駆動軸64の上端部には糸切り駆動腕69が設けられている。なお、ルーパー台31が180度の回転角度に位置していれば、糸切り駆動腕69と上糸切りメス78の突部78cとが上下に重なり、0度であれば後述の下糸切り装置30の突出ピン26dと糸切り駆動腕69が重なるようになっている。
【0035】
上糸切り駆動手段60によれば、糸切りシリンダ86の駆動力による糸切り駆動軸64の上下動にともなって糸切り駆動腕69が動作する。
即ち、図2に示すように糸切りシリンダ86がOff状態では、ロッド86aが押出され、このとき、糸切り駆動腕69は上死点で止まった状態となっている。一方、糸切りシリンダ86がOnになると、ロッド86aが引き込まれ、糸切りリンク61の反時計方向の回転によって糸切り駆動腕69が下方に移動し、下死点で止まった状態となる。このときルーパー台31が180度の回転位置にあれば、糸切り駆動腕69により前記突部78cが下方に押されて、切断待機位置に位置している上糸切りメス78が作動し、上糸が切断される。再び、糸切りシリンダ86がOffの状態になると、糸切り駆動腕69が上死点へ移動するとともに、前記作動腕用バネの付勢力により、上糸切りメス78が切断待機位置に戻るようになっている。
ルーパー台31が0度の回転位置にあれば、糸切り駆動腕69により下糸切り装置30が駆動されて、下糸切りが行われる。これについては後述する。
【0036】
次に、下糸切り手段である下糸切り装置30について説明する。
まず、図3〜図6に基づいて構成を説明する。下糸切り装置30は、ルーパー土台31上に設けられ、下糸切りメス20や下糸押え27などから構成され、縫製後に針板32の近傍で左ルーパー6と加工布との間で、下糸を切断するものである。左ルーパー6は、図4に示すルーパー取付台6aに固定され、下糸が通されるものである。さらにこのルーパー取付台6aは、図4の紙面に直交する面内において後述する中央回転軸42を支点に揺動可能に構成されている。これにより、左ルーパー6は、縫製中、針板32の下方で所定の往復運動するようになっている。なお、前記右ルーパー5も、左ルーパー6に同期して往復運動し、左ルーパー6に通されている下糸が、縫針18に通されている上糸に絡む動作を補助する。
【0037】
下糸切りメス20は、略カギ型に形成され、その基端部において下糸切りメス腕26に止めネジ41によって固定され、下糸切りメス腕26とともに動作するようになっている。
下糸切りメス20の先端部の一方には、下糸を切断する刃部20aが形成されている。一方、他方は下糸が接触しても切れずに逃げるように磨かれた逃げ部20b(図5)となっている。
【0038】
下糸切りメス腕26は、下糸切りメス20が固定され途中でわずかに屈曲している主部26aと、主部26aから図3の右側に延び、ネジ穴(図示せず)に第1ストッパーネジ33が挿通しているネジ支持部26bと、主部26aから左側に延び、後方に突出している突出ピン26dが固定されているピン支持部26cとから構成される。
【0039】
主部26aの下部は、取付部材31aに回転自在に挿通している中央回転軸42に対して、これを中心に回動するように取り付けられている。
ネジ支持部26bの第1ストッパーネジ33は、ネジ支持部26bのネジ穴に所定量ねじこまれ、その下面部33aはルーパー土台31に当接している。また、ネジ支持部26bの途中には、下糸切りバネ25(図3で一部のみ図示、他は破線で示す)の一端が掛けられ、該下糸切りバネ25の他端はルーパー土台31に掛けられている。下糸切りメス腕26は、常に下糸切りバネ25によって図3の時計方向に付勢されており、初期状態では、第1ストッパーネジ33の下面部33aがルーパー土台31に当接した状態で停止し、下糸切りメス20が縫製を妨害する位置にないよう退避している。すなわち、ネジ支持部26bから下方に突出する第1ストッパーネジ33の高さ(H1)が下糸切りメス腕26の初期位置を決定している。
【0040】
ピン支持部26cの突出ピン26dは、ルーパー土台31の回転位置が0度のときに、前記糸切り駆動腕69と上下に重なる(図4)。
ピン支持部26cには、上下に貫通して第2ストッパーネジ34が所定量ねじこまれ、その下面部34aはピン支持部26cから突出している。下糸切断時、ルーパー土台31の回転位置は0度となり、糸切り駆動腕69の下降により突出ピン26dが押されると、下糸切りメス腕26が、下糸切りバネ25に抗して、図3の反時計方向に駆動される。そのとき、第2ストッパーネジ34の下面部34aがルーパー土台31に当接したところで、それ以上反時計方向に回転することはできない。このようにピン支持部26cから下方に突出する第2ストッパーネジ34の長さが、下糸を確実に切断するために下糸切りメス20が必要距離回転し、しかも、無駄な動きを行わないように、下糸切りメス腕26の動作終点位置を決定している。
【0041】
主部26aの裏面の斜線で示す箇所には、平らな凹みである凹面26eが形成されている。この凹面26eを形成する側面(以下、凹側面)26fは、下糸切りメス腕26の反時計方向の回転時に、これと同軸で回転可能である取付台用ネジ36に当接し、同じ方向に押すようになっている。
【0042】
後述する針板32をはさんで、下糸切りメス20に対向するように下糸押え27が設けられている。下糸押え27は、図6に示すように、その先端部27fに形成された下糸押圧面27aを、針板32の下糸案内面32fに押し付けることで下糸を保持するものである。
下糸押え27は、その中央部分に下糸押えピン28が挿通している。該下糸押えピン28の両端は、下糸押え取付台24に支持され、これにより、下糸押え27は、下糸押え取付台24に対して、下糸押えピン28を中心に回動可能になっている。下糸押え取付台24は、後方から見ると略正方形状で側方から見ると略三角形状に形成されている。
また、下糸押え取付台24の下方には、下糸押え戻しバネ23が設けられ、該下糸押え戻しバネ23は、下糸押え取付台24とルーパー土台31とに接し、両者の間を広げる方向に、つまり、下糸押え取付台24が針板32に向かうように付勢している。
【0043】
下糸押え取付台24の側面には、ネジ穴24aが切られ(図5)、該ネジ穴24aにストッパーネジ21が挿通している。ストッパーネジ21の先端は、取付部材31aの側面31bに当接している。ストッパーネジ21のネジ穴24aに対するねじ込み量を変えることで、下糸押え取付台24の側面31bに対する距離が変わり、これにより、前記先端部27fの針板32に対する距離が中央回転軸42を中心に変わるようになっている。具体的には、下糸押え27の下糸押圧面27aと針板32の下糸案内面32fとが、下糸の太さや性質などに応じて適切な力で下糸を保持する距離になるように、ストッパーネジ21を調整し、その状態でナット22を締めることで、ストッパーネジ21が固定される。すなわち、ストッパーネジ21とナット22により本発明の調整手段が構成される。
【0044】
また、前述のように、下糸押え取付台24及び下糸押え27は、下糸押え戻しバネ23によって、下糸押圧面27aが下糸案内面32fに近づく方向に付勢されている。しかし、ストッパーネジ21が取付部材31aの側面31bに接することで、下糸押え27がそれ以上針板32側に向かうのを防いでいる。つまり、調整手段で調整することで、下糸押え27が針板32に強い衝撃を与えることを防いでいるとも言える。
なお、下糸押圧面27aと下糸案内面32fの距離については、例えば下糸を強く保持したい場合にはほぼ0mmにすればよいし、下糸がかなり太いような場合には、その下糸の太さ分の距離を持たせればよい。
【0045】
下糸押え27は、その先端部27fが、針板32の前記下糸案内面32fに向かうように、途中で屈曲している。先端部27fの詳細は後述する。
下糸押え27の下端部27gは、二股に分かれており逆U字型の開口が形成され、該開口に、ストッパーピン29が通されている(図3及び図4)。ストッパーピン29の頭部は図3に示すように下端部27gに係り、一方その先端は下糸押え取付台24に固定されている。さらに、ストッパーピン29の軸周りには下端部27gの裏側において、下糸押えバネ40が取り付けられている。この下糸押えバネ40によって下糸押え27の下端部27gが後方に揺動することで、針板32の脚部38側の側面32h(図6のドット表示部分)を、先端部27fの三角錐部27cの側面32hに対向する対向面27dが、押圧するようになっている。しかしながら、下端部27gは下糸押えバネ40により押し付けられてストッパーピン29の頭部裏面に当接することから、下糸押え27は、それ以上下端部27gが後方に行くように揺動することができず、対向面27dが側面32hを押しすぎないようになっている。
なお、図11(b)には、側面32hと対向面27dが当接している状態を拡大して示している。
【0046】
下糸押え取付台24の内側は、針板止めネジ37の下方にまで延出し、延出部24cとなっている。延出部24cには、これと重なり、さらに下糸切りメス腕26の主部26aの下部裏側までに及ぶ大きさに形成された平板な下糸押え支点台35が重ねられ、延出部24cと下糸押え支点台35は、取付台用ネジ36によって実質的に一体に固定されている。なお、延出部24cには、取付台用ネジ36を挿通するために縦方向に長孔が形成され、下糸押え支点台35に対して延出部24c(下糸押え取付台24)の高さ位置を調節した状態で、取付台用ネジ36によって固定されるようになっている。
下糸押え支点台35の下部には、前記中央回転軸42が挿通し、下糸押え支点台35及び下糸押え取付台24は、中央回転軸42を中心に回動自在となっている。
前記凹側面26fは、下糸切りメス腕26が反時計方向に回転するときに、下糸押え支点台35及び下糸押え取付台24ごと、取付台用ネジ36を押し、これにより下糸押え取付台24、つまり下糸押え27が中央回転軸42を中心に反時計方向に回動するようになっている。
【0047】
針板32は、図6に示すように、縫針18が挿通する針穴32bを有し、中央にネジ穴38aが形成された脚部38によって支持される。針板32は、ネジ穴38aにおいて針板止めネジ37によって取付部材31aに固定されている。
針穴32bは、かがり縫いの際に針穴32bの中で縫針18が針振りできるように、横長に形成されている。図5に、針穴32b内における針落ち位置を、点P1、点P2によって示している。縫製時に、点P1がボタン穴に近い内側針落ち位置となり、点P2がボタン穴から遠い外側針落ち位置となる(図9(d)参照)。なお、点P1、点P2の針穴32bに対する具体的な位置は適宜変更可能である。
【0048】
針穴32bに連続して、針板32の一部を切り欠くように開口部32cが形成されている。また、図6において針穴32bから左手の周縁部32eはほぼ円弧形状に形成され、その下角部32d(太線で示した部分)は、面取りされ、かつ、研磨されている。後述するように、縫製後の切断前に、下糸は、相対的に開口部32cから出て下角部32dに沿って下糸案内面32fに向かうが、このとき下角部32dが円形で、かつ磨かれているので、下糸が余分に引き出されることなくスムースに移動できる。
【0049】
脚部38において、ネジ穴38aの上方はより幅が狭く形成され、その側面に針板32の下面に連続するように、下糸案内面(下糸案内部)32fが形成されている。この下糸案内面32fは、下糸押え27の先端部27fに形成されている下糸押圧面27aとの間で切断後の下糸を挟持するものである。すなわち、下糸案内面32fと下糸押え27とにより本発明の下糸保持手段が構成される。
下糸案内面32fは、針穴32b内の内側針落ち位置P1と外側針落ち位置P2を結ぶ直線の中間でこの直線に上下方向に直交する平面に設けられている。下糸保持手段に保持された下糸は、前記平面にほぼ一致するようになり、縫製開始時にはかがり縫いの中に自然に縫いこまれるよう案内される。
【0050】
さらに、下糸押え27の先端部27fには、下糸押圧面27aよりも突出するように突出面27bが形成されている。該突出面27bは、脚部38の上部後側に下糸案内面32fと段差をもって形成されている後側面32gと面接触するようになっている。一方、前記したように、先端部27fの上面には、三角錐状の三角錐部27cが形成され、この三角錐部27cの対向面27dは、針板32の周縁部32eの側面32hと接するようになっている。
下糸案内面32fと下糸押圧面27aとの間で下糸を挟持するとき、突出面27bと後側面32g、対向面27dと側面32hそれぞれが接することで、下糸を絶対に逃がさないようになっている。
【0051】
図7に、ミシン10の制御装置110を示した。
図7に示す制御装置110は、ROM(Read Only Memory)111、RAM(random access memory)112、CPU(Central Processing Unit)113、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)115等からなる。
制御装置110にはインターフェース(I/F)114を介して操作パネル90、スタートスイッチ92が接続され、また、主軸モータ81、X軸モータ82、Y軸モータ83、旋回モータ84、布切りモータ85、糸切りシリンダ86等の各種アクチュエータが接続されている。
【0052】
また、インターフェース114と主軸モータ81、X軸モータ82、Y軸モータ83、旋回モータ84、布切りモータ85との間には、各モータを駆動させるための主軸モータ駆動回路81a、X軸モータ駆動回路82a、Y軸モータ駆動回路83a、旋回モータ駆動回路84a、布切りモータ駆動回路85aが介在し、インターフェース114と糸切りシリンダ86との間には糸切りシリンダ駆動電磁弁86aが介在している。
また、制御装置110にはインターフェース114を介してX軸モータ82、Y軸モータ83、旋回モータ84、布切りモータ85のそれぞれの原点位置を検出するためのX軸原点センサ82b、Y軸原点センサ83b、旋回原点センサ84b、布切り原点センサ85bが接続されている。
【0053】
ROM111には、主軸モータ81、X軸モータ82、Y軸モータ83、旋回モータ84、布切りモータ85、糸切りシリンダ86等の各種アクチュエータを制御して穴かがり縫製を行うための制御プログラムや制御データが書き込まれている。
【0054】
EEPROM115は、複数のパターンデータを記憶するとともに、操作パネル90を介してパターンデータの中のデータ項目の値が変更された場合にはその値等も記憶するようになっている。さらにRAM112は、縫製中の各種処理の際に一時的に使用されるメモリエリアとして機能する。パターンデータとは、例えば、縫い長さ、針数等のボタン穴かがり縫いを形成する場合に必要となる一連の設定データを指す。
【0055】
CPU113は、スタートスイッチ92から起動信号が入力されると、ROM111の制御プログラムや制御データにしたがって、布切り、縫製、及び上糸切断・下糸切断処理を含むボタン穴かがり縫いに関する一連の処理を制御する。
すなわち、CPU113は、インターフェース114を介して接続された主軸モータ駆動回路81aにより主軸モータ81の回転を駆動制御する。主軸モータ81は、縫針18を上下に駆動したり左右に針振りさせる上軸や、縫針18と協働して縫い目を形成するルーパー機構を駆動する。
また、CPU113は、インターフェース114を介して接続されたX軸モータ駆動回路82aやY軸モータ駆動回路83aにより、X軸モータ82とY軸モータ83を駆動制御しながら、布送り台13を所定の方向に駆動する。
【0056】
さらに、CPU113は、インターフェース114を介して接続された旋回モータ駆動回路84aにより旋回モータ84を制御駆動する。この旋回モータ84によって縫針18及びルーパー土台31が回転(旋回)運動し、鳩目穴h1の周りに、放射状の縫い目である鳩目縫い目部w2(図9(b)参照)が形成される。
また、CPU113は、インターフェース114を介して接続された布切りモータ駆動回路85aにより布切りモータ85を制御駆動してメス受け台4を上下動する。
さらに、CPU113は、縫製終了後所定のタイミングで、インターフェース114を介して接続された糸切りシリンダ駆動電磁弁86aにより糸切りシリンダ86を駆動させる。
【0057】
上記の一連の処理において、CPU113は、X軸原点センサ82b、Y軸原点センサ83b、旋回原点センサ84b、布切り原点センサ85bそれぞれの状態を検出しながら、X軸モータ82、Y軸モータ83、旋回モータ84、布切りモータ85を駆動することにより、布送り台13の移動位置、針棒11やルーパー土台31の旋回角度、メス受け台4の下降位置などを制御する。
【0058】
次に、上記構成を有するミシン10の動作を下糸切り装置30を中心に、図3、図4及び図8〜図13に基づき説明する。図8及び図9では、加工布S(図4)に形成されたボタン穴Hとかがり縫い目Wと、加工布S下の針板32等の部材を重ねて示している。また、左ルーパー6から導出されている下糸Tは点線及び黒丸で示し、特に黒丸は、針板32とほぼ同じ高さにおける下糸Tの位置を示す。かがり縫い目Wから縫針18に連なる上糸は省略している。
ボタン穴H及びかがり縫い目Wの縫製は、直線閂止め部w4の縫製をもって終了する。このとき、図8(a)に示すように、針板32の針穴32bの長さ方向が直線閂止め部w4の針振り方向に平行するように、ルーパー土台31の回転位置は270度の状態になる。このときの下糸切りメス20、下糸押え27の先端部27f、ルーパー6の針板32に対する位置関係は図示する通りである。これは図3の状態である。針板32の下糸案内面32fと下糸押え27の下糸押圧面27aとは、接した状態とする。
【0059】
次いで、旋回モータ84により旋回機構15を駆動し、ルーパー土台31が時計方向に90度戻り、回転位置は180度になる。このとき、針穴32b内の下糸Tは、開口部32cを後方に見る位置に来る。この180度の回転位置において、糸切りシリンダ86を駆動し上糸切りメス78により上糸が切断される。
次に、Y軸モータ83を駆動することにより、布送り台13を後方に所定距離(針穴32bから開口部32cの入り口までの距離に相当、例えば約4mm)移動させ、図8(c)あるいは図10に示すように、かがり縫い目Wの縫製終了位置に連なる下糸Tも、共に移動し、開口部32cに達する。図10で示すように、下糸切りメス腕26の突出ピン26dは、糸切り駆動腕69に対して全く反対の位置にある。なお、図10〜図12の針板32近傍の白丸は、1つ前の状態のときの下糸Tを示す。
【0060】
この後、ルーパー土台31を0度の回転位置を目指して旋回駆動する。これによって、針板32が時計方向に回転し、開口部32cに達していた下糸Tは、図8(d)及び図11に示すように、針板32の周縁部32eの下角部32dに接触しながら、相対的に反時計方向に誘導されていく。
そして、ついには、図8(e)及び図12に示すように、回転位置は0度となり、下糸Tは、針板32の下糸案内面32fと下糸押え27の下糸押圧面27aとの間に入り込みそうな位置にまで達する。先の図4は、この0度の回転位置の状態であり、糸切り駆動腕69の下方に下糸切りメス腕26の突出ピン26dが位置している。このように、旋回機構15及び布送り台13の動きを利用して、下糸Tを誘導し、これらが本発明の誘導手段となる。
図4の点線A、B、Cはルーパー土台31が回転したときの針板32に対する相対的な下糸Tの動きを示している。すなわち、図8(a)、(b)では、下糸Tは点線Aで示すように針穴32b内にある。次いで、布送り台13の移動後の図8(c)の状態では、点線Bで示すように、開口部32cに達する。さらに、針板32が180度回転することにより、図8(e)の状態になり、このとき図4の点線Cに示すように、下糸切りメス20の揺動経路を遮る。
【0061】
図8(e)の後、糸切りシリンダ86を駆動することで糸切り駆動腕69が下降し、突出ピン26を下方に押す。これにより、下糸切りバネ25の付勢力に抗して、中央回転軸42を中心に下糸切りメス腕26とともに下糸切りメス20が、図3における反時計方向に回動を始める。このとき、下糸切りメス20の逃げ部20bによって下糸Tを切らないように払いながら逃げる。
そして、回動の途中で、下糸切りメス腕26裏側の凹側面26fによって、取付台用ネジ36が押され、下糸押え取付台24と共に下糸押え27も中央回転軸42を中心に同方向に回動していく。これにより、図8(f)に示すように、下糸切りメス20の刃部20aは下糸Tを完全に乗り越え、また、下糸押え27の先端部27fも針板32から少し離れる。下糸押え27と針板32が接する部分で止められていた下糸は、図6に示すように下糸案内面32fと接した状態になる。下糸切りメス腕26(下糸切りメス20)及び下糸押え27の回動動作は、図13に示すように、第2ストッパーネジ34がルーパー土台31に当接した位置で停止する。
【0062】
なお、下糸押え27は、前述のように下糸押えバネ40により先端部27fが針板32に向かうように付勢されてはいるが、あまり行き過ぎないようにストッパーピン29で規制されていることから、先端部27fが、円弧状に形成された周縁部32eの最も張り出した部分を越えてしまわないようになっている。
【0063】
糸切りシリンダ86が元に戻ると糸切り駆動腕69は上方に戻る。これによって、下糸切りメス20と下糸切りメス腕26は下糸切りバネ25の付勢力によって、下糸押え27と下糸押え取付台24は下糸押え戻しバネ23の付勢力によって、復帰動作を開始する。
復帰動作の際、下糸押え27は、下糸押えバネ40により先端部27fが針板32に向かうように付勢されているので、前記三角錐部27cの対向面27dが、針板32の周縁部32eに接しながら移動する。ストッパーネジ21が取付部材31aの側面31bに当接する位置まで下糸押え27が戻ると、下糸案内面32fを横切っている下糸Tを、下糸押圧面27aが押圧し、両者で挟持する。このとき、突出面27bと後側面32g、対向面27dと側面32hのそれぞれも互いに当接し、下糸Tの逃げを許さない。
下糸案内面32fと下糸押圧面27aとで下糸Tを挟持した直後に、下糸切りメス20の刃部20aが下糸Tを切断し、図9(a)に示すように初期位置に戻る。
その後、図9(b)に示すように、布送り台13がX軸パルスモータ82及びY軸パルスモータ83により駆動されて後方の原点位置に戻る。
【0064】
次の縫製が開始する時には、まず、布送り台13の原点位置において布切りモータ85を駆動してボタン穴Hが形成され、次いで、所定の縫製位置まで布送り台13が前方に送られ、図9(c)に示すように、右側縫い部w1から縫い始める。前回の縫製後に切断され保持されていた左ルーパー6に連なる下糸Tは、下糸案内面32fと下糸押圧面27aとにより形成される案内面が針穴32bの内側針落ち位置と外側針落ち位置の間にあるので、針板32が相対的に後方に移動していくことで、図9(d)に示すように、自然とかがり縫いの中に縫いこまれていく。
なお、図9(c)、(d)で、白丸は縫製中の針の位置を示し、左ルーパー6から供給される縫いに使用される下糸は省略している。
【0065】
以上のミシン10によれば、ボタン穴かがり縫いの終了後、左ルーパー6から針穴32bを通って加工布Sに連なる下糸Tを、まず布送り台13によって開口部32cまで導き、次いで旋回機構15で針板32を旋回させて、相対的に針板32外周の下角部32dに沿って、下糸案内面32fに誘導している。下糸切り装置30は、下糸案内面32fと下糸押え27の下糸押圧面27aとで保持された下糸を、加工布が布送り台13により移送される前に、その近傍で切断する。
【0066】
すなわち、下糸Tは針穴32bから開口部32cを経て針板32後部の下糸案内面32fまで誘導されるだけであるので、前記特開平9−225166号公報のように長く引き出されることがない。
したがって、切断後、加工布側に残る糸端は、かがり縫い目の終点から針板32までの距離程度になり、また、下糸保持手段に保持される、すなわち左ルーパー6側に残る糸端を、針板32までの長さ程度で短くすることができる。よって、次のかがり縫い時に縫いこまれる糸端が短いので、見た目が悪くなることはない。
さらに、下糸切り装置30がルーパ土台31に設けられているため、かがり縫いの縫い終わり位置に対して一定の位置で下糸を切断することが可能となる。切断位置がかがり縫いの縫い終わり位置に対して一定の位置であるということは、下糸切り機構と縫い長さは無関係ということであり、縫い長さによって下糸切り機構の部品等を調節・交換する必要はないし、縫い長さを一定にせざるをえないといった制約もなく、自由な長さのかがり縫いが可能となる。
さらに、下糸の引き出し量が少ないため糸の無駄も少ない。
【0067】
糸端が短いことと、下糸押え27の下糸押圧面27aによって下糸案内面32fに下糸が押さえつけられ確実に保持されること、及び下糸案内面32fは、針穴32b内の内側針落ち位置P1と外側針落ち位置P2を結ぶ直線の中間でこの直線に直交する上下方向の平面に設けられていることから、下糸は、次のかがり縫い目の際に確実に案内され、自然にかがり縫い目に縫いこまれる。
さらに、針板32を小さく形成するか、又は、下糸押圧面27a及びこれに対向する下糸案内面32fを、針穴32bの方向に許容される限り長く形成すれば、縫い目を形成する位置である針穴32bと下糸案内面32fが近いことから、糸端が完全に縫いこまれるぎりぎりまで保持し続けることができる。
【0068】
一方、布送り台13による送り量を適宜制御することで、加工布S側の下糸残り長さを選択でき、一定にすることも適宜変えることもでき、自由度が高い。
【0069】
また、穴かがりミシンに本来設けられている布送り台13や旋回機構15を利用して下糸を誘導しているので、誘導専用の機構を設けることに比較すれば、コストやスペースを節約することができる。
【0070】
さらに、切断前に、つまり加工布Sから左ルーパー6まで糸がつながっている自由に動けない状態で、まず下糸が保持されるので、確実に保持することができる。また、保持されて緊張した状態で下糸が切断されるので、確実に下糸を切断することができる。
【0071】
下糸押え27及び下糸切りメス20は、上糸切り駆動手段60と共通の駆動手段で駆動されることから、全体の構造を簡素化することができる。しかも下糸の挟持と下糸切りのタイミングについて、一度調節すれば駆動源が同じであることから、ずれることはほとんどない。
【0072】
また、ストッパーネジ21とナット22からなる調整手段によって、下糸案内面32fに下糸押え27が接近する最小距離を調整することができるので、保持する下糸の太さや性質などに合わせて、保持力の適正化を図ることができ、保持力が弱くて縫い始めに下糸が外れてしまったり、逆に保持力が強すぎて下糸が切れたりすることはない。また、見方を変えれば、下糸案内面32fに対して下糸押え27が接するときの力を調節することができることにもなり、下糸の保持時に、重要な部品である針板32に衝撃が加わることを防ぐことができる。
【0073】
下糸案内面32fは、針穴32bの下方に設けられていることから、針板32における針穴32bとほぼ同じ平面において芯糸を通すための穴を形成することも可能となり、例えば図6の符号Rで示す位置に芯糸を通す穴を形成すればよい。したがって、芯糸を要するか否かに関係なく部品を共用化することができる。
【0074】
また、本発明は、上記実施の形態に限定されない。
たとえば、本実施の形態においては、下糸切り手段をルーパー土台に設け、ルーパーから加工布に連なる糸端を短くすることに加えて、縫い長さによって下糸切り機構の部品等を調節・交換する必要はないように構成しているが、単にルーパーから加工布に連なる糸端を短くするのみであれば、下糸切り手段は、上述の構成に限定されない。すなわち、下糸保持手段が加工布を保持する際に下糸を長く引き出すことなく下糸を保持できるので、下糸切り手段は、たとえば前記特開2001−232086号公報記載のように送り台に固定された下糸切り機構であっても、下糸保持後加工布が移送される前に、下糸切り機構を駆動することで、ルーパーから加工布に連なる糸端を短く切断することが可能となる。
【0075】
また、上記例とは異なる形状の閂止め縫いを形成したり、あるいは閂止め縫いを行わない鳩目穴かがり縫いを行うボタン穴かがりミシンに適用してもよいし、鳩目穴だけでなく眠り穴周りのかがり縫いを行うミシンに適用してもよい。
また、前述では、保持の直後に下糸を切断したが、加工布が移動される前に下糸を切断するようにすれば、保持の直後でなくてもよいことは、もちろんである。
加えて、上記実施の形態では、切断後の下糸を針板の下糸案内面32fと下糸押えの下糸押圧面27aとにより保持するように構成したが、針板の後部に板バネなどからなる保持部材を設けてもよい。このように構成すれば、前記下糸押え27が不要になり、構成をより簡単にできる。
また、針板32の周縁部32eの下角部32dにより下糸を案内するように構成したが、針板32の開口部32cから針板32の外側に導出された下糸を、取付部材31a等のその他の部材に沿って誘導するように構成してもよい。
【0076】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、ボタン穴かがり縫いの終了後、ルーパーから針穴を通って加工布に連なる下糸を、誘導手段によって針板の開口部から導出・誘導し、針板の周囲に設けられている下糸保持手段に保持させ、その状態で下糸切り手段によってルーパーと加工布との間で下糸が切断することが可能となる。
つまり、下糸は針穴から開口部を経て針板の周囲の下糸保持手段まで誘導されるだけであるので、前記特開平9−225166号公報のように長く引き出されることがない。
したがって、下糸切り手段によって、ルーパーから加工布に連なる下糸を極力短い状態で、切断することが可能になる。つまり、加工布側に残る糸端は、かがり縫い目の終点から針板までの距離程度にでき、また、下糸保持手段に保持される、すなわちルーパー側に残る糸端を、針板までの長さ程度で短くすることができる。よって、次のかがり縫い時に縫いこまれる糸端が短いので見た目が悪くなることはないし、確実に縫いこむことができる。
さらに、下糸の引き出し量が少ないため糸の無駄も少ない。
しかも、請求項1に記載の発明によれば、まず送り手段によって針穴を通っている下糸を開口部まで導き、次いで旋回手段で針板を旋回させて、相対的に針板の外周に沿って下糸を誘導し、下糸保持手段に誘導している。すなわち、誘導手段だけのために新たな機構を設けることなく穴かがりミシンに本来設けられている機構を利用しているので、専用の機構を設けることに比較すれば、コストやスペースを節約することができる。
また、送り手段による送り量を適宜制御することで、下糸の引き出し量を変えることもでき、結果的に、加工布側の下糸残り長さを選択でき、一定にすることも適宜変えることもでき、自由度が高い。
【0077】
請求項2に記載の発明によれば、下糸押え部材によって下糸案内部に下糸が押さえつけられることで下糸が挟持されて、次のかがり縫い目の際に下糸案内部によって案内されるので、確実に縫い目に縫いこまれる。さらに、針板を小さく形成すれば、縫い目を形成する位置である針穴と下糸案内部が近くなり、完全に縫い目に縫いこまれるぎりぎりまで糸端を保持し続けることができ、縫い目から外れてしまうことがない。
そのうえ、下糸保持手段が保持に加えて、案内部材も兼ねているので、その分構成が簡素化できる。
【0078】
請求項3に記載の発明によれば、下糸押え部材は、下糸切り手段と共通の駆動手段で駆動されることから、全体の構造を簡素化することができる。加えて、駆動源が同じであることから、下糸押えと下糸切りのタイミングについて一度調節すればほとんどずれることはない。
【0079】
請求項4に記載の発明によれば、下糸切り手段と下糸押え部材の少なくとも一方は、上糸切り駆動手段によって駆動されることから、全体の構造を簡素化することができる。
【0080】
請求項5に記載の発明によれば、調整手段によって下糸案内部と下糸押え部材とが下糸を保持するために接近する最小の距離を調整することができるので、保持する下糸の太さや性質などに合わせて、保持力の適正化を図ることができるので、保持力が弱くて縫い始めに下糸が外れてしまったり、逆に保持力が強すぎて下糸が切れたりすることがない。
また、見方を変えれば、下糸案内部に対して下糸押え部材が接するときの力を調整することができることにもなり、下糸の保持時に、重要な部品である針板に衝撃が加わることを防ぐことができる。
【0082】
請求項6に記載の発明によれば、下糸保持手段は、針穴内の内側針落ち位置と外側針落ち位置を結ぶ直線の間でこの直線に直交する上下方向の平面にほぼ一致して設けられているので、下糸保持手段によって保持された下糸は、かがり縫い目の開始時に内側針落ち位置と外側針落ち位置との間に自然に案内され、確実にかがり縫い目の中に縫いこまれる。
【0083】
請求項7に記載の発明によれば、下糸保持手段は、針穴の下方に設けられているので、針板に芯糸を通すための穴を形成することが容易となり、芯糸を要するか否かに関係なく部品を共用化することができる。
【0084】
請求項8の発明によれば、下糸切り手段が、ルーパーから加工布に連なる下糸を、下糸保持手段によって下糸が保持された後であって、かつ、加工布が移送される前に切断するので、前記特開平9−225166号公報のようにルーパーから加工布に連なる下糸が長く引き出されることがない。したがって、下糸切り手段が、ルーパーから加工布に連なる下糸を極力短い状態で、切断する。つまり、加工布側に残る糸端は、かがり縫い目の終点から針板までの距離程度となり、また、下糸保持手段に保持される、すなわちルーパー側に残る糸端が、針板までの長さ程度に短くなる。よって、次のかがり縫い時に縫いこまれる糸端が短いので見た目が悪くなることはないし、確実に縫いこむことができる。
さらに、下糸の引き出し量が少ないため糸の無駄も少ない。
【0085】
請求項9の発明によれば、下糸切り手段がルーパー土台に設けられているため、切断位置が一定で、下糸切り機構と縫い長さは無関係とすることができ、縫い長さによって下糸切り機構の部品等を調節・交換する必要はないし、縫い長さを一定にせざるをえないといった制約もなく、自由な長さのかがり縫いが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のボタン穴かがりミシンの一例を示すもので、(a)は全体斜視図であり、(b)は一部側面図でありベッド部を破断して示している。
【図2】上糸切り駆動手段の構成を示す平面図である。
【図3】下糸切り装置を正面にした平面図である。
【図4】図3の下糸切り装置を示す側面図である。
【図5】下糸切り装置を示す上からの平面図である。
【図6】針板部材の斜視図である。
【図7】図1のボタン穴かがりミシンの制御ブロック図である。
【図8】図3の下糸切り装置の動作を順を追って示す図である。
【図9】図8の続きを示す図である。
【図10】図8(c)のときの下糸切り装置の詳細を示す上からの平面図である。
【図11】図8(d)のときの下糸切り装置の詳細を示す上からの平面図である。
【図12】図8(e)のときの下糸切り装置の詳細を示す上からの平面図である。
【図13】下糸切断直前に、下糸切り装置の下糸切りメス腕の第2ストッパーピンがルーパー土台に当接した状態を示す。
【符号の説明】
5 右ルーパー
6 左ルーパー
7 上糸切り装置(上糸切り手段)
10 ボタン穴かがりミシン
11 針棒
12 ベッド部(ミシンベッド)
14b アーム部(ミシンアーム)
15 旋回機構(旋回手段)
18 縫針(針)
13 布送り台(送り手段)
20 下糸切りメス
21 ストッパーネジ(調整手段)
22 ナット(調整手段)
24 下糸押え取付台
26 下糸切りメス腕
26d 突出ピン
27 下糸押え(下糸押え部材)
27a 下糸押圧面
30 下糸切り装置
31 ルーパー土台
32 針板
32c 開口部
32d 下角部
32e 周縁部
32f 下糸案内面(下糸案内部)
60 上糸切り駆動手段
69 糸切り駆動腕
86 糸切りシリンダ
78 上糸切りメス
81 主軸モータ
W かがり縫い目
H ボタン穴
Claims (9)
- ミシンアームに設けられ、上糸が通された針を支持しながら、上下動し、かつ、針が加工布に形成されるボタン穴に対して遠い外側針落ち位置と近い内側針落ち位置とに交互に針落ちするように、所定の針振り方向に針振り運動を行う針棒と、
ミシンベッドに設けられ、少なくとも前記針振り方向に略直交する一方向に加工布を移送する送り手段と、
ミシンベッドに前記針棒に対向して設けられ、前記針棒と協働して下糸を前記上糸に絡げるルーパーを備えるルーパー土台と、
ルーパー土台に、ルーパーの上方に位置するように設けられ、前記内側針落ち位置と前記外側針落ち位置となる2点を含む針穴が形成されるとともに、前記針穴から連続して一方向に開口している開口部が設けられている針板と、
かがり縫いの際に針棒及びルーパー土台を旋回させる旋回手段と、
ボタン穴かがり縫いの終了後にルーパーから加工布に連なる下糸を切断する下糸切り手段と、
針板の周囲に設けられ、前記下糸切り手段による切断前にルーパーに連なる下糸を保持し、切断後においては次のボタン穴かがり縫い時の前記送り手段による加工布の移送により、糸端が縫い目の中に自然に縫い込まれるように保持する下糸保持手段と、
ボタン穴かがり縫いの終了後、下糸の切断前に、ルーパーから針穴を通って加工布に連なる下糸を、前記開口部から導出し前記下糸保持部によって保持されるように誘導する誘導手段とを備え、
ボタン穴の周囲にかがり縫い目を形成するボタン穴かがりミシンにおいて、
前記誘導手段は、前記旋回手段と前記送り手段とからなり、ボタン穴かがり縫い後に、前記ルーパーから針穴を通って加工布に連なる下糸を、まず送り手段によって加工布を移送することで針板の開口部に移動させ、次いで、旋回手段によって針板ごとルーパー土台を旋回させることにより針板の外周面に沿って下糸保持手段に誘導することを特徴とするボタン穴かがりミシン。 - 下糸保持手段は、
針板に設けられ、切断された下糸の端部を、次に形成されるかがり縫い目に縫いこまれるように案内する下糸案内部と、
前記下糸案内部に対して下糸を押え付ける下糸押え部材とからなることを特徴とする請求項1に記載のボタン穴かがりミシン。 - 下糸押え部材は、下糸切り手段と共通の駆動手段によって駆動されて下糸案内部に対して下糸を押し付けることを特徴とする請求項2に記載のボタン穴かがりミシン。
- ボタン穴かがり縫いの終了後に上糸を切断する上糸切り手段と、上糸切り手段を駆動する上糸切り駆動手段とを備え、
下糸切り手段と下糸押え部材の少なくとも一方は、上糸切り駆動手段によって駆動されることを特徴とする請求項2または3に記載のボタン穴かがりミシン。 - 下糸案内部と下糸押え部材とが下糸を保持するために接近する最小の距離を調整可能な調整手段を備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のボタン穴かがりミシン。
- 下糸保持手段は、針穴内の内側針落ち位置と外側針落ち位置を結ぶ直線の間でこの直線に直交する上下方向の平面にほぼ一致して設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のボタン穴かがりミシン。
- 下糸保持手段は針穴の下方に設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のボタン穴かがりミシン。
- 前記下糸切り手段は、下糸保持手段によって下糸が保持された後であって、かつ、送り手段により加工布が移送される前に、下糸を切断することを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載のボタン穴かがりミシン。
- 前記下糸切り手段は、ルーパー土台に設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のボタン穴かがりミシン。
Priority Applications (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001353412A JP3779912B2 (ja) | 2001-11-19 | 2001-11-19 | ボタン穴かがりミシン |
CNB021513171A CN100366812C (zh) | 2001-11-19 | 2002-11-15 | 锁扣眼缝纫机 |
KR1020020071676A KR100915282B1 (ko) | 2001-11-19 | 2002-11-18 | 단추구멍내기 재봉기 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001353412A JP3779912B2 (ja) | 2001-11-19 | 2001-11-19 | ボタン穴かがりミシン |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003154184A JP2003154184A (ja) | 2003-05-27 |
JP3779912B2 true JP3779912B2 (ja) | 2006-05-31 |
Family
ID=19165433
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001353412A Expired - Fee Related JP3779912B2 (ja) | 2001-11-19 | 2001-11-19 | ボタン穴かがりミシン |
Country Status (3)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3779912B2 (ja) |
KR (1) | KR100915282B1 (ja) |
CN (1) | CN100366812C (ja) |
Families Citing this family (10)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4702606B2 (ja) * | 2005-05-27 | 2011-06-15 | ブラザー工業株式会社 | 穴かがりミシンのスロートプレート高さ調整機構 |
JP4650169B2 (ja) * | 2005-08-30 | 2011-03-16 | ブラザー工業株式会社 | 鳩目穴かがりミシン |
JP4899792B2 (ja) * | 2006-10-30 | 2012-03-21 | ブラザー工業株式会社 | 鳩目穴かがりミシン及び、鳩目穴かがりミシンプログラム |
JP2010227374A (ja) * | 2009-03-27 | 2010-10-14 | Brother Ind Ltd | ミシン |
JP6031255B2 (ja) | 2011-05-18 | 2016-11-24 | Juki株式会社 | ミシン |
JP5777035B2 (ja) * | 2013-08-08 | 2015-09-09 | ヤマトミシン製造株式会社 | 二重環縫いミシンの糸切り装置及び糸切り方法 |
CN103696164A (zh) * | 2013-12-19 | 2014-04-02 | 吴江市菀坪宝得利缝制设备机械厂 | 一种缝纫机立柱式曲折缝旋梭座 |
CN105113148B (zh) * | 2015-08-18 | 2017-11-14 | 浙江中捷缝纫科技有限公司 | 一种缝纫机的剪线和夹线机构 |
CN105113147B (zh) * | 2015-08-18 | 2017-09-01 | 浙江中捷缝纫科技有限公司 | 一种缝纫机的剪线机构 |
CN105133214B (zh) * | 2015-09-19 | 2017-08-25 | 浙江中捷缝纫科技有限公司 | 一种平缝机的防鸟巢结构 |
Family Cites Families (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0817865B2 (ja) * | 1989-02-14 | 1996-02-28 | ジューキ株式会社 | ミシンの糸切装置 |
JP2722779B2 (ja) * | 1990-05-22 | 1998-03-09 | ブラザー工業株式会社 | 穴かがりミシン |
JP3426709B2 (ja) * | 1994-05-30 | 2003-07-14 | ブラザー工業株式会社 | 鳩目穴かがりミシンの糸切り装置 |
JP3508371B2 (ja) * | 1996-02-27 | 2004-03-22 | ブラザー工業株式会社 | 鳩目穴かがりミシン |
JP4245222B2 (ja) * | 1999-03-24 | 2009-03-25 | Juki株式会社 | ミシンの下糸切断装置 |
JP4686025B2 (ja) * | 1999-12-16 | 2011-05-18 | Juki株式会社 | ミシンの糸切り装置 |
-
2001
- 2001-11-19 JP JP2001353412A patent/JP3779912B2/ja not_active Expired - Fee Related
-
2002
- 2002-11-15 CN CNB021513171A patent/CN100366812C/zh not_active Expired - Lifetime
- 2002-11-18 KR KR1020020071676A patent/KR100915282B1/ko active IP Right Grant
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
CN100366812C (zh) | 2008-02-06 |
KR100915282B1 (ko) | 2009-09-03 |
CN1420224A (zh) | 2003-05-28 |
KR20030041791A (ko) | 2003-05-27 |
JP2003154184A (ja) | 2003-05-27 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3779912B2 (ja) | ボタン穴かがりミシン | |
JP2013116260A (ja) | ミシン | |
JP4799752B2 (ja) | 穴かがりミシン | |
JP4616502B2 (ja) | 穴かがりミシン | |
JP5149557B2 (ja) | 玉縁縫いミシン | |
JP5468236B2 (ja) | 玉縁縫いミシン | |
JP2007252740A (ja) | 穴かがりミシン | |
JP4665619B2 (ja) | ジグザグミシン | |
CN101845725B (zh) | 缝纫机 | |
JP2009207820A (ja) | 穴かがりミシン | |
JP3508371B2 (ja) | 鳩目穴かがりミシン | |
JP4573658B2 (ja) | 玉縁縫いミシン | |
JP2001321589A (ja) | 鳩目穴かがりミシンの糸切り装置 | |
JP2008054965A (ja) | 玉縁縫いミシン | |
JPH04156882A (ja) | ミシンの布送り装置 | |
JP3531524B2 (ja) | ミシンの下糸切断装置 | |
JP5059688B2 (ja) | 玉縁縫いミシン | |
JP2006263185A (ja) | 玉縁縫いミシン | |
JP4737525B2 (ja) | 鳩目穴かがりミシン | |
JP2595691Y2 (ja) | 鳩目穴かがりミシンのメス装置 | |
JPH088780Y2 (ja) | 布ガイド付押えを備えたオーバロックミシン | |
JP3175645U (ja) | 鳩目ボタン穴かがり縫いミシン | |
JP3624467B2 (ja) | ミシン | |
JPH0510796Y2 (ja) | ||
JP4451542B2 (ja) | 鳩目穴かがりミシンの送り制限装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20041118 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20050519 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050607 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20050705 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20060221 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20060303 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 3779912 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090310 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100310 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100310 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110310 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110310 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120310 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120310 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130310 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130310 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140310 Year of fee payment: 8 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |