本発明は薄膜トランジスタ(本願ではこれをTFTと略称する)から構成されたCMOS回路を備えた薄膜半導体装置、およびそれを備える液晶表示装置と電子機器に関するものである。更に詳しくは、各薄膜トランジスタの電気的特性をそれぞれ個別的に最適化するための技術に関するものである。
従来液晶表示装置のアクティブマトリクス基板等に利用される薄膜半導体装置はドナー元素やアクセプター元素を高濃度に含むソース・ドレイン領域がゲート電極に対してセルフアライン的に形成されて居る構造を取るのが一般的で有る。
(本願では以下この構造をS/Aと略称する。)例えばシフトレジスタ等の駆動回路をアクティブマトリクス基板上にTFTにて内蔵する場合(これらのTFTを本願ではDr TFTと略称する。)、これらのDr TFTをN型TFTとP型TFTにて相補的に構成するので有るが(本願ではこれをCMOS TFTと略称する)、通常このCMOS TFTはS/A構造とされて居る。またアクティブマトリクス基板の画素領域にも各画素電極のスゥッチング素子としてTFTが形成され(本願ではこれをPi TFTと略称する)、このPi TFTも多くの場S/A構造とされている。
この様に従来の技術ではいずれのTFTもS/A構造を取っている。一方、通常TFTのチャンネル領域の不純物濃度(N型TFTで有ればアクセプターイオン濃度、P型TFTで有ればドナーイオン濃度)は窮めて低い為、LSIで見られたスケーリング則が働かず、斯くして従来のS/A TFTではチャネル長を5μm程度以上と長く取らざろう得なかった。この結果TFTのオン電流を増大し得ず、例えば駆動回路ではその動作の高速化を図れないとの問題点が生じて居た。加えてTFTのチャネル長を短くしえぬが故ゲート容量も減少し得ず、この点からも駆動回路動作の高速化を妨げているとの問題点もある。更に従来のS/A TFTより構成される回路では回路動作が時間と供に劣化し、著しきは僅か数分でその回路動作が停止して仕舞うとの問題(これを本願では回路の信頼性と略称する)が生じて居た。この回路の信頼性は回路規模が大きく成れば成る程、或いは回路構成が複雑に成れば成る程、更には動作速度が速く成れば成る程深刻と化し、それが故従来は高速動作をする高機能回路をTFTにて内蔵し得ないとの課題が有った。
一方、画素領域においても、S/A TFTのオフ電流が大きいため、フリッカや表示むらが発生しやすいとの問題点がある。
そこで本発明は上述の如き諸課題の解決を目差し、その目的とする所はTFTのオン電流を増大し、且つゲート容量を低減させ、もって高速動作可能な回路を構成し得る薄膜半導体装置を提供する事に有る。又本発明の別な目的は信頼性が高い高機能回路を構成し得る薄膜半導体装置を提供する事に有る。更に本発明の別な目的は高性能高機能回路をTFTにて内蔵し、同時に表示品質の優れた液晶表示装置とその製造方法を提供する事に有る。
上記課題を解決する為に、本願ではN型およびP型のTFTによりCMOS構成が取られた薄膜半導体装置(CMOS TFT)に於いて、N型及びP型のTFTはソース・ドレイン領域の内、ゲート電極の端部に対してゲート絶縁膜を介して対峙する部分に低濃度ソース・ドレイン領域を備える構造を取り(以下本願ではこの構造をLDDと略称し、低濃度ソース・ドレイン領域の事をLDD領域と呼ぶ。又LDD構造を取るTFTをLDD TFTと称する。)、このLDD領域のサイズや不純物濃度、更には各TFTのチャンネル長やチャンネル幅、TFTのソース・ドレイン領域やチャンネル領域を構成するシリコン等の半導体膜の膜厚とLDD領域の不純物濃度との関係などを最適化する事を特徴とする。又CMOS TFTから成る駆動回路を基板上に内蔵し、画素領域のスゥッチング素子としてTFTが利用されて居る、所謂アクティブマトリクス基板を用いた液晶表示装置ではPi TFTもDr TFTもいずれもLDD TFTとし、これらのTFT間に於いても前述の関係を最適化する事を特徴とする。更には電子機器に斯様なCMOS TFTや液晶表示装置を用いた事を特徴とする。
本願発明のLDD TFTにてCMOS回路を組んだ場合、上述の最適化が成されて居るが故、LDD領域のシート抵抗(TFT全体で見た時にはLDD領域に起因する寄生抵抗)を最小とし、同時にソース・ドレイン間の降伏電圧(本願ではこれをS/D耐圧と略称する。)とソース・ゲート間の降伏電圧(本願ではこれをS/G耐圧と略称する。)の両者を高められるので有る。こうした結果チャンネル長を短くしたり、或いはゲート絶縁膜を薄くすると云ったスケーリング則のTFTへの適応が可能と成り、オン電流の増大(低寄生抵抗、短チャンネル、薄ゲート絶縁膜)やゲート容量の低減(短チャンネル)が容易に実現し、高速動作する回路が得られるので有る。更にLDD構造はドレイン端での電界強度を緩和する為、トランジスタのオン状態ではインパクト・イオン化に依るトランジスタの劣化を最小限に止め、斯くして回路の信頼性を向上せしめる訳で有る。又オフ状態ではオフリーク電流を最小とする為、回路誤動作の発生を抑制すると供に回路全体の消費電流をも低減するので有る。加えて本願発明のCMOS TFTでは前述の最適化が成された結果、N型TFT及びP型TFTの素子サイズ(チャンネル領域の面積やチャンネル幅が等しい時のチャンネル長)をほぼ等しくした状態で且つ両者のオン電流値を同等とする事が可能で有る。即ち本願発明では電子と正孔との移動度の相違をLDD領域のシート抵抗の相違で相殺してオン電流を同等とするので有る。従ってN型TFTとP型TFTのゲート容量をほぼ同一とした儘両者のオン電流を揃えられ、これが故本願発明に依るCMOS回路はPNのバランス(ゲート容量のバランスとオン抵抗のバランス)が取れ、窮めて安定に且つその能力を最大限発揮して動作するので有る。
さて液晶表示装置のDr TFTとPi TFTとではその作用目的が異なって居る。Dr TFTは上述の如く高機能回路が誤動作する事無く安定的に高速に働き、更に消費電流が低い事が望まれる。一方Pi TFTはDr TFTに比較してオン電流は差程大きな値が求められない反面、オフリーク電流はより確実に低減する事が強く求められる。従って本願発明は斯くたる事情を鑑みDr TFTとPi TFTとで其々独立に前述の諸パラメーターの最適化を施す事を特徴とする。こうする事で高機能高性能回路を内蔵し、美しい画質を表示する液晶表示装置が得られるので有る。
こうしたLDD構造の最適化は通常製造工程を冗長煩雑として仕舞う。そこで本願は第1導電型TFTにLDD領域濃度が異なる二種類のLDD TFTが有る場合、一方のLDD TFTのLDD領域には第2導電型不純物を導入して実質的な第1導電型不純物濃度を低下せしめる事を特徴とする。こうする事に依り例えば液晶表示装置に於いては第1導電型および第2導電型の駆動回路用TFTの製造工程を援用しながら、第1導電型の駆動回路用TFTとは異なる電気的特性をもつ第1導電型画素用TFTを形成する事が可能と成る。即ち製造工程を増やすことなく、TFTの電気的特性を画素領域および駆動回路部毎に最適化出来るので有る。それ故画素部では表示むらやちらつきなどが発生せず、且つ信頼性の高い高速動作駆動回路を内蔵した液晶表示装置を簡便に製造出来る訳で有る。
本願発明は具体的には以下に記すが如き特徴を有する。
(本発明の第1形態)
本発明はN型およびP型の薄膜トランジスタによりCMOS回路が構成された薄膜半導体装置において、前記N型およびP型の薄膜トランジスタは、ソース・ドレイン領域のうち、ゲート電極の端部に対して前記ゲート絶縁膜を介して対峙する部分に低濃度ソース・ドレイン領域を備えるとともに、前記P型の薄膜トランジスタにおける前記低濃度・ドレイン領域の不純物濃度は、前記N型の薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度に比較して高いことを特徴とする。前記P型の薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度は、前記N型の薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度に対して6倍から8倍までの範囲にあることを特徴とする。更には前記P型の薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度は、約1.5×1018cm-3から約3.0×1018cm-3までの範囲にあり、前記N型の薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度は、約0.2×1018cm-3から約0.5×1018cm-3までの範囲にあることを特徴とする。
前記N型およびP型の薄膜トランジスタは低温プロセスにて製造され、前記N型およびP型の薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域を構成する半導体膜の膜厚をtとし、更に前記P型の薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度をCDrPLDDとしたときに、tとCDrPLDDは次式 1.2×1012cm-2≦CDrPLDD・t≦1.8×1013cm-2を満たす範囲にあることを特徴とする。この時tは次式
1×10-6cm≦t≦4.5×10-6cm
を満たす範囲にあることを特徴とする。
前記N型およびP型の薄膜トランジスタは低温プロセスにて製造され、前記N型およびP型の薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域を構成する半導体膜の膜厚をtとし、更に前記N型の薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度をCDrNLDDとしたときに、tとCDrNLDDは次式 2.4×1011cm-2≦CDrNLDD・t≦6.0×1012cm-2を満たす範囲にあることを特徴とする。この時tは次式
1×10-6cm≦t≦4.5×10-6cm
を満たす範囲にあることを特徴とする。
前記N型およびP型の薄膜トランジスタは低温プロセスにて製造され、前記N型の薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度、および前記P型の薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度をそれぞれCDrNLDDとCDrPLDDにて表現した時に、CDrNLDDとCDrPLDDは次式
3 ≦ CDrPLDD/CDrNLDD ≦ 5
を満たす範囲にあることを特徴とする。この時前記N型およびP型の薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域を構成する半導体膜の膜厚をtとしたときに、tは次式
1×10-6cm≦t≦4.5×10-6cm
を満たす範囲にあることを特徴とする。
前記N型およびP型の薄膜トランジスタは低温プロセスにて製造され、前記N型およびP型の薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域を構成する半導体膜の膜厚をtとし、更に前記N型の薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度、および前記P型の薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度をそれぞれCDrNLDDとCDrPLDDにて表現した時に、t及びCDrNLDDとCDrPLDDは次式
1.2×1012cm-2≦CDrPLDD・t≦1.8×1013cm-2 2.4×1011cm-2≦CDrNLDD・t≦6.0×1012cm-2 3 ≦ CDrPLDD/CDrNLDD ≦ 5
を満たす範囲にあることを特徴とする。この時tは次式
1×10-6cm≦t≦4.5×10-6cm
を満たす範囲にあることを特徴とする。
本発明は薄膜半導体装置が形成された基板を構成要素の一部とする電子機器に於いて、該薄膜半導体装置は上述の特徴を備えている事を特徴とする。
(本発明の第2形態)
本発明による液晶表示装置はアクティブマトリクス基板上に、駆動回路部でCMOS回路を構成する第1導電型および第2導電型の駆動回路用薄膜トランジスタと、画素領域に形成された第1導電型の画素用薄膜トランジスタとを有する液晶表示装置において、前記駆動回路用薄膜トランジスタおよび前記画素用薄膜トランジスタは、ソース・ドレイン領域のうち、ゲート電極の端部に対してゲート絶縁膜を介して対峙する部分に低濃度ソース・ドレイン領域を備えるLDD構造を有し、前記第1導電型の画素用薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度は、前記第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度に比較して低いことを特徴とする。この時前記第1導電型はN型であり、前記第2導電型はP型であることを特徴とする。或いは前記第1導電型はP型であり、前記第2導電型はN型であることを特徴とする。
前記P型の駆動回路用薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度は、前記N型の駆動回路用薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度に比較して高いことを特徴とする。この時前記P型の駆動回路用薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度は、前記N型の駆動回路用薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度に対して6倍から8倍までの範囲にあることを特徴とする。
前記N型の駆動回路用薄膜トランジスタのチャネル長およびチャネル幅をそれぞれLDrN およびWDrN とし、前記P型の駆動回路用薄膜トランジスタのチャネル長およびチャネル幅をそれぞれLDrP 、WDrP としたときに、LDrN 、WDrN 、LDrP 、WDrP は、以下の式
0.8≦(LDrN ・WDrN )/(LDrP ・WDrP )≦1.25を満たすことを特徴とする。
(本発明の第3形態)
本発明による液晶表示装置の製造方法はアクティブマトリクス基板上に、駆動回路部でCMOS回路を構成する第1導電型および第2導電型の駆動回路用薄膜トランジスタと、画素領域に形成された第1導電型の画素用薄膜トランジスタとを有する液晶表示装置において、前記駆動回路用薄膜トランジスタおよび前記画素用薄膜トランジスタは、ソース・ドレイン領域のうち、ゲート電極の端部に対してゲート絶縁膜を介して対峙する部分に低濃度ソース・ドレイン領域を備えるLDD構造を有し、前記画素用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域は、前記第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域と同等量の第1導電型の不純物と、該不純物のドーズ量よりも少なくて前記第2導電型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域と同等量の第2の導電型の不純物とが導入されていることにより、前記第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域よりも実質的に低濃度の第1導電型領域になっていることを特徴とする。この時前記第1導電型はN型であり、前記第2導電型はP型であることを特徴とする。或いは前記第1導電型はP型であり、前記第2導電型はN型であることを特徴とする。
前記第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタおよび前記第1導電型の画素用薄膜トランジスタの前記低濃度ソース・ドレイン領域における第1導電型の不純物濃度をNI cm-3とし、前記第2導電型の駆動回路用薄膜トランジスタの前記低濃度ソース・ドレイン領域における第2導電型の不純物濃度をNIIcm-3としたときに、NI 、NIIは、下記の各式
0<NII<NI <10×1018 を満たすことを特徴とする。更にこの時
(NI −NII)≦3×1018
を満たすことを特徴とする。更にNI 、NIIは、下記の各式 0<NII ≦(4×1018)
NII<NI ≦(NII+3×1018)を満たすことを特徴とする。更にNI 、NIIは、下記の各式 0<NII<NI ≦(NII+3×1018) NI ≦(4×1018)
を満たすことを特徴とする。更にNI 、NIIは、下記の各式 0<NII<NI ≦(4×1018) (NI −3×1018)≦NII≦(3×1018)を満たすことを特徴とする。更に前記第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタのチャネル長LDr1をx(μm)とした時に、xとNI 、NIIは下記の各式 0<NII<NI ≦(x×1018)を満たすことを特徴とする。
本発明は上述の液晶表示装置の製造方法において、前記第2導電型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域を形成するための低濃度第2導電型不純物導入工程では、該ソース・ドレイン領域の形成予定領域に加えて前記画素用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の形成予定領域にも低濃度の第2導電型不純物を導入し、しかる後に、前記第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域を形成するための低濃度第1導電型不純物導入工程では、該ソース・ドレイン領域の形成予定領域に加えて前記画素用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の形成予定領域にも前記低濃度第2導電型不純物導入工程における第2導電型不純物のドーズ量よりも大きなドーズ量で第1導電型の不純物を導入し、前記低濃度第2導電型不純物導入工程において第2導電型として形成された前記画素用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の形成予定領域を第1導電型に反転させることによって、前記画素用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域を形成することを特徴とする。或いは前記第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域を形成するための低濃度第1導電型不純物導入工程では、該ソース・ドレイン領域の形成予定領域に加えて前記画素用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の形成予定領域にも低濃度の第1導電型不純物を導入し、しかる後に、前記第2導電型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域を形成するための低濃度第2導電型不純物導入工程では、該ソース・ドレイン領域の形成予定領域に加えて前記画素用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の形成予定領域にも前記低濃度第1導電型不純物導入工程における第1導電型不純物のドーズ量よりも小さなドーズ量の第2導電型不純物を導入し、前記低濃度第1導電型不純物導入工程において形成された前記画素用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の形成予定領域における不純物濃度を実質的に低濃度化することによって、前記画素用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域を形成することを特徴とする。
本発明によれば、LDD構造による効果に加えて、画素用TFTのオフ電流の一層の低減と、駆動回路用TFTのオン電流の一層の増大、駆動回路用TFTのオン電流やゲート容量バランスの確保などを達成できる。それ故、表示むらなどが発生せず、かつ、駆動回路部の動作速度がさらに高い液晶表示装置を実現できる。
(本発明の第4形態)
本発明による液晶表示装置はアクティブマトリクス基板上に、駆動回路部に形成されCMOS回路を構成する第1導電型および第2導電型の駆動回路用薄膜トランジスタと、画素領域に形成された第1導電型の画素用薄膜トランジスタとを有する液晶表示装置において、前記第1導電型の画素用薄膜トランジスタ、前記第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタ、および前記第2導電型の駆動回路用薄膜トランジスタは、ソース・ドレイン領域のうち、ゲート電極の端部に対してゲート絶縁膜を介して対峙する部分に低濃度ソース・ドレイン領域を備えるLDD構造を有し、前記第1導電型の画素用薄膜トランジスタの前記低濃度ソース・ドレイン領域の長さは、前記第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタの前記低濃度ソース・ドレイン領域の長さより長いことを特徴とする。この時前記第1導電型はN型であり、前記第2導電型はP型であることを特徴とする。或いは前記第1導電型はP型であり、前記第2導電型はN型であることを特徴とする。
前記P型の駆動回路用薄膜トランジスタの前記低濃度ソース・ドレイン領域の長さは、前記N型の駆動回路用薄膜トランジスタの前記低濃度ソース・ドレイン領域の長さより短いことを特徴とする。前記N型の駆動回路用薄膜トランジスタの前記低濃度ソース・ドレイン領域の長さは、前記P型の駆動回路用薄膜トランジスタの前記低濃度ソース・ドレイン領域の長さに対して1.5倍から3倍までの範囲にあることを特徴とする。
前記N型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の長さおよび幅をそれぞれLDrNLDD、WDrNLDDとし、前記P型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の長さおよび幅をそれぞれLDrPLDD、WDrPLDDとしたときに、LDrNLDD、WDrNLDD、LDrPLDD、WDrPLDDは、以下の式 1.5<(LDrNLDD/WDrNLDD)/(LDrPLDD/WDrPLDD)<3.0を満たすことを特徴とする。
これらの液晶表示装置に於いて、前記N型の駆動回路用薄膜トランジスタのチャネル長およびチャネル幅をそれぞれLDrN およびWDrN とし、前記P型の駆動回路用薄膜トランジスタのチャネル長およびチャネル幅をそれぞれLDrP 、WDrP としたときに、LDrN 、WDrN 、LDrP 、WDrP は、以下の式 0.8≦(LDrN ・WDrN )/(LDrP ・WDrP )≦1.25を満たすことを特徴とする。
(本発明の第5形態)
本発明による液晶表示装置はアクティブマトリクス基板上に、駆動回路部に形成されCMOS回路を構成する第1導電型および第2導電型の駆動回路用薄膜トランジスタと、画素領域に形成された第1導電型の画素用薄膜トランジスタとを有する液晶表示装置において、前記第1導電型の画素用薄膜トランジスタ、前記第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタ、および前記第2導電型の駆動回路用薄膜トランジスタは、ソース・ドレイン領域のうち、ゲート電極の端部に対してゲート絶縁膜を介して対峙する部分に低濃度ソース・ドレイン領域を備えるLDD構造を有し、前記第1導電型の画素用薄膜トランジスタの前記低濃度ソース・ドレイン領域の長さは、前記第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタの前記低濃度ソース・ドレイン領域の長さより長く、前記第1導電型の画素用薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度は、前記第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度に比較して低いことを特徴とする。この時前記第1導電型はN型であり、前記第2導電型はP型であることを特徴とする。或いは前記第1導電型はP型であり、前記第2導電型はN型であることを特徴とする。
前記P型の駆動回路用薄膜トランジスタの前記低濃度ソース・ドレイン領域の長さは、前記N型の駆動回路用薄膜トランジスタの前記低濃度ソース・ドレイン領域の長さより短いことを特徴とする。この時前記N型の駆動回路用薄膜トランジスタの前記低濃度ソース・ドレイン領域の長さは、前記P型の駆動回路用薄膜トランジスタの前記低濃度ソース・ドレイン領域の長さに対して1.5倍から3倍までの範囲にあることを特徴とする。
前記P型の駆動回路用薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度は、前記N型の駆動回路用薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度に比較して高いことを特徴とする。この時前記P型の駆動回路用薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度は、前記N型の駆動回路用薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度に対して6倍から8倍までの範囲にあることを特徴とする。
前記N型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の長さおよび幅をそれぞれLDrNLDD、WDrNLDDとし、前記P型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の長さおよび幅をそれぞれLDrPLDD、WDrPLDDとしたときに、LDrNLDD、WDrNLDD、LDrPLDD、WDrPLDDは、以下の式 1.5<(LDrNLDD/WDrNLDD)/(LDrPLDD/WDrPLDD)<3.0を満たすことを特徴とする。
前記N型の駆動回路用薄膜トランジスタのチャネル長およびチャネル幅をそれぞれLDrN およびWDrN とし、前記P型の駆動回路用薄膜トランジスタのチャネル長およびチャネル幅をそれぞれLDrP 、WDrP としたときに、LDrN 、WDrN 、LDrP 、WDrP は、以下の式
0.8≦(LDrN ・WDrN )/(LDrP ・WDrP )≦1.25を満たすことを特徴とする。
(本発明の第6形態)
本発明はN型およびP型の薄膜トランジスタによりCMOS回路が構成された薄膜半導体装置において、前記N型の薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の長さおよび幅をそれぞれLDrNLDD、WDrNLDDとし、前記P型の薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の長さおよび幅をそれぞれLDrPLDD、WDrPLDDとしたときに、LDrNLDD、WDrNLDD、LDrPLDD、WDrPLDDは、以下の式 (LDrNLDD/WDrNLDD)≧(LDrPLDD/WDrPLDD)を満たすことを特徴とする。或いは薄膜半導体装置が形成された基板を構成要素の一部とする電子機器に於いて、該薄膜半導体装置は前述に記載されて居る物で有る事を特徴とする。
本発明による液晶表示装置はアクティブマトリクス基板上に、駆動回路部でCMOS回路を構成する第1導電型および第2導電型の駆動回路用薄膜トランジスタと、画素領域に形成された第1導電型の画素用薄膜トランジスタとを有する液晶表示装置において、前記駆動回路用薄膜トランジスタおよび前記画素用薄膜トランジスタは、ソース・ドレイン領域のうち、ゲート電極の端部に対してゲート絶縁膜を介して対峙する部分に低濃度ソース・ドレイン領域を備えるLDD構造を有し、前記第1導電型の画素用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の長さおよび幅をそれぞれLPiILDD、WPiILDDとし、前記第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の長さおよび幅をそれぞれLDrILDD、WDrILDDとしたときに、LPiILDD、WPiILDD、LDrILDD、WDrILDDは、以下の式
(LPiILDD/WPiILDD)≧(LDrILDD/WDrILDD)を満たすことを特徴とする。
本発明に依る電子機器は(本発明の第2の形態)から(本発明の第6の形態)に記載の液晶表示装置を備えた事を特徴とする。
発明の実施の形態
以下図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
なお、以下に説明する
(本発明の第4形態)は主として請求項1から請求項2に関する。
(本発明の第5形態)は主として請求項3から請求項6に関する。
但し本発明はこれら各発明の形態に記載される構成に限定されるものでなく、各発明の形態に記載の構成同士を適宜組み合わせてもよいことは勿論である。
なお以下に説明する発明の形態の多くは駆動回路内蔵型のアクティブマトリクス基板を用いた液晶表示装置に関する物で有る為、各発明の形態を詳述する前にアクティブマトリクス基板の構成を簡単に説明しておく。
まず駆動回路内蔵型のアクティブマトリクス基板の基本構成を図2を用いて説明する。駆動回路内蔵型のアクティブマトリクス基板は表示画素領域81とデータードライバ部82や走査ドライバ部83などから成る内蔵駆動回路部とから基本的に構成される。表示画素領域81は信号線90や走査線91で区画形成された画素領域を有し、そこには画素用TFT92を介して画像信号が入力される液晶セルの液晶容量94が存在する。データードライバ部82は信号線90を介して表示画素領域に接続し、例えばシフトレジスタ84やレベルシフタ85、ビデオライン87、アナログスイッチ86などから構成される。一方走査ドライバ部83は走査線91を介して表示画素領域に接続し、シフトレジスタ88やレベルシフタ89などから構成される。シフトレジスタ84や88と云った内蔵駆動回路の多くは図2(b)に示すインバータを基本構成要素としており、これらインバータはN型のTFTn1とP型TFTp1とによってCMOS構成が取られている。結局駆動回路内蔵型アクティブマトリクス基板上には少なくとも3つタイプのTFTが形成されるのが一般で有る。即ち画素TFT92と駆動回路に用いられるN型TFTと矢張り駆動回路に用いられるP型TFTである。これらを図1に模式的に示す。なお図1では層間絶縁膜のコンタクトホールやそこを介してソース・ドレイン領域に電気的に接続する電極などを省略してある。図1の左側に表されているのは画素用TFT10で有り、ここでは例としてN型として有る。無論これはP型で有っても構わないし、CMOS TFTで有っても良い。中央に表されているのはN型の駆動回路用TFT20であり、右側に表されているのがP型の駆動回路用TFT30である。これらのTFTのうちN型の駆動回路用TFT20とP型の駆動回路用TFT30はCMOS構成を取り、前述の如く駆動回路のインバータなどを構成するので有る。
本発明のアクティブマトリクス基板1では、N型の画素用TFT10はソース・ドレイン領域11、12のうち、ゲート電極15に対してゲート絶縁膜14を介して対峙する部分に低濃度ソース・ドレイン領域111、121を備えるLDD構造を有している。従ってオフリーク電流が小さいため、表示むらやフリッカなどの発生を防止することができ、表示品質は可成り向上して居る。
更にN型の駆動回路用TFT20とP型の駆動回路用TFT30もソース・ドレイン領域21、22、31、32のうち、ゲート電極25、35に対してゲート絶縁膜24、34を介して対峙する部分に低濃度ソース・ドレイン領域211、221、311、321を備えるLDD構造を有している。
このようなLDD構造のTFTに関し、チャネル幅Wが10μmのTFTにおけるドレイン耐圧(S/D耐圧)のチャネル長依存性を図3に示す。図3(a)は実線L21でLDD構造のN型のTFTにおけるドレイン耐圧のチャネル長依存性を示し、実線L23でセルフアライン構造のN型のTFTにおけるドレイン耐圧のチャネル長依存性を示している。又図3(b)は実線L22でLDD構造のP型のTFTにおけるドレイン耐圧のチャネル長依存性を示し、実線L24でセルフアライン構造のP型のTFTにおけるドレイン耐圧のチャネル長依存性を示している。これらの図が明瞭に示す様に、LDD構造のTFTはチャネル長をセルフアライン構造のTFTの約1/2まで短くしても十分なドレイン耐圧を有するので有る。例えばP型のLDD TFTでは1.5μm程度迄、又N型のLDD TFTでは2.5μm程度まで短チャネル長化が可能である。従ってこれらのLDD TFTで構成された駆動回路は短チャネル化に依りゲート容量を大幅に低減させ、同時にオン電流をも増大し得る。斯くして駆動周波数が上がったり、或いは電源電圧(Vdd)を下げる事ができ、アクティブマトリクス基板の特性向上に大きく寄与するので有る。
(本発明の第1形態)
(第1形態に係る各TFTの構成)
ここでは単純にN型の駆動回路用TFT20とP型の駆動回路用TFT30をLDD構造にしただけでは良好なCMOS TFTは得られ無い事を説明した後、本発明の第1形態を詳述する。一般にP型の駆動回路用TFT30のオン電流はN型の駆動回路用TFT20のオン電流に比して数十パーセント程度小さい。
これは正孔の移動度が電子の移動度の凡2/3程度で有る事に起因している。この事情は当然CMOS LDD TFTでも同様に成り立っている。即ちCMOS回路を構成するN型の駆動回路用TFT20とP型の駆動回路用TFT30をLDD構造にて同一素子サイズおよび同一製造条件にて形成すると、図4に示すが如くP型のLDD TFTのオン電流(図4に点線L2で示す。)はN型のLDD TFTのオン電流(図4に実線L1で示す。)に比較して小さく成って仕舞う。この様にP型およびN型のTFTの間でオン電流のバランスが悪いと、オン時またはオフ時のタイミングがずれ、回路の動作速度を抑制したり、誤動作の原因となるので有る。これに対してオン電流のバランスを取るためにチャンネル長などの素子サイズを変えると今度はP型およびN型TFT間のゲート容量バランスが崩れ、矢張り回路の動作速度を抑制したり、或いは誤動作の原因となって仕舞い良好なCMOS TFTは得られないので有る。
そこで本発明はN型の駆動回路用TFT20とP型の駆動回路用TFT30の間でソース領域21、31、やドレイン領域22、32、およびチャネル形成領域23、33の長さや幅などを略同一寸法としてレイアウト上の対称性を確保し、その上で更にオン電流のバランスを向上させるので有る。これはP型LDD TFTのLDD領域に於ける不純物濃度をN型LDD TFTのそれに比較して高くする事で達成されるので有る。具体的にはN型の駆動回路用TFT20では低濃度ソース・ドレイン領域211、221の不純物濃度を約0.2×1018cm-3から約0.5×1018cm-3までの範囲に設定してあるのに対して、P型の駆動回路用TFT30では低濃度ソース・ドレイン領域311、321の不純物濃度を約1.5×1018cm-3から約3.0×1018cm-3までの範囲に設定してある。すなわちP型のTFT30における低濃度ソース・ドレイン領域311、321の不純物濃度をN型の駆動回路用TFT20における低濃度ソース・ドレイン領域211、221の不純物濃度に対して約6倍から約8倍までの範囲に設定してある。
一方、N型の画素用TFT10は、N型の駆動回路用TFT20と同時に形成されるため、その低濃度ソース・ドレイン領域111、121の不純物濃度は、N型の駆動回路用TFT20と同じく、約0.2×1018cm-3から約0.5×1018cm-3までの範囲である。
なお、N型の画素用TFT10、およびN型の駆動回路用TFT20のソース領域11、21、およびドレイン領域12、22のうち、低濃度ソース・ドレイン領域111、121、211、221を除く領域は、不純物濃度が約0.5×1020cm-3の高濃度ソース・ドレイン領域112、122、212、222である。また、P型の駆動回路用TFT30のソース領域31およびドレイン領域32のうち、低濃度ソース・ドレイン領域311、321を除く領域は、不純物濃度が約2.0×1020cm-3の高濃度ソース・ドレイン領域312、322である。これらの高濃度領域に対して、各TFTに対する信号線や画素電極などの電極(図示せず。)が、層間絶縁膜4のコンタクトホールを介して電気的に接続している。
(第1形態に係る各TFTのオン・オフリーク電流特性)
このように構成した各TFTに関し、図5には実線L3でN型の画素用トランジスタ10、およびN型の駆動回路用TFT20のオン・オフリーク電流特性を示し、点線L4でP型の駆動回路用TFT30のオン・オフリーク電流特性を示してある。図5からわかるように、P型の駆動回路用TFT30では、低濃度ソース・ドレイン領域311、321の不純物濃度がN型のTFT(N型の画素用トランジスタ10および駆動回路用TFT20)のそれに比較して高いので、正孔の移動度が電子の移動度に比して小さくても、P型の駆動回路用TFT30のオン電流特性は、N型の駆動回路用TFT20と同等のレベルまで改善されている。それ故、シフトレジスタにおける動作条件に充分なマージンを確保できるので、オン電流のアンバランスに起因する誤動作が発生しない。しかも、P型のTFTとN型のTFTとの間では、素子サイズがほぼ同じであるため、ゲート容量もほぼ同等である。また、N型の駆動回路用TFT20、およびN型の駆動回路用TFT30では、オフリーク電流が小さいので、オフリーク電流に起因する誤動作が発生しないとともに、CMOS回路の電源端子間を貫通する電流が小さい。
また、N型の画素用TFT10でも、オフリーク電流が小さいので、表示むらやフリッカなどが発生しない。また、オフ電流が小さいと、保持特性が向上するので、コントラストが向上するなどの利点もある。
(実施例1:第1形態に係る各TFTの製造方法)
このようなLDD構造のTFTは、以下の方法により製造できる。なお、以下の説明において、不純物濃度は、いずれも活性化アニール後の不純物濃度で表してある。
まず、図6(a)に示すように、石英基板などの絶縁基板2の表面に、LPCVD法またはプラズマCVD法などを用いて半導体膜3(ポリシリコン薄膜)を形成する。また、アモルファスのシリコン薄膜を形成した後、レーザアニール法または固相成長法によりポリシリコン薄膜を形成する方法もある。
次に、図6(b)に示すように、半導体膜3をフォトリソグラフィ法によってパタニングして、それを島状の半導体膜11a、21a、31aにする。
次に、図6(c)に示すように、島状の半導体膜11a、21a、31aに対して、熱酸化法、TEOS−CVD法、LPCVD法、プラズマCVD法、HTO法などにより、厚さが約1200オングストロームのシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜14、24、34を形成する(ゲート絶縁膜形成工程)。
次に、図6(d)に示すように、ゲート絶縁膜14、24、34の表面に、ドープドシリコンやシリサイド膜などからなるゲート電極15、25、35を形成する。
次に、図7(a)に示すように、絶縁基板2の全面を覆うようにして、LPCVD法、APCVD法、プラズマCVD法、O3 TEOS法、O2 TEOS法などにより、厚さが1000オングストローム〜3000オングストロームのシリコン酸化膜からなる第1の層間絶縁膜41を形成する。その結果、ゲート電極15、25、35の端部では、ゲート電極15、25、35の厚さに相当する分だけ、第1の層間絶縁膜41が厚くなる。たとえば、ゲート電極15、25、35の厚さが約5000オングストローム、ゲート絶縁膜14、24、34の厚さが約1200オングストローム、第1の層間絶縁41の厚さが約2000オングストロームであれば、第1の層間絶縁41のうち、ゲート電極端から1μm程離れた位置では厚さが3200オングストロームであり、ゲート電極15、25、35付近では、厚さが約8200オングストロームである。かかる厚さの差を利用して、以降の工程において、LDD構造のTFTを形成する。
まず、図7(b)に示すように、絶縁基板2の表面側のうち、画素用TFT10の形成予定領域と、N型の駆動回路用TFT20の形成予定領域をレジストマスク51で覆う。この状態で、アクセプタ型の不純物、たとえばボロンイオンを2.0×1015cm-2のドーズ量でイオン注入して、ゲート電極35に対して自己整合的にソース領域31、およびドレイン領域32を形成する(P型の不純物導入工程)。なお、不純物導入方法としては、その他にも、イオンドーピング法、プラズマドーピング法、レーザドーピング法などがある。
その結果、不純物が導入されなかった部分がチャネル形成領域33となる。但し、ソース領域31、およびドレイン領域32のうち、ゲート電極35の端部に対峙する部分では、そこを覆う第1の層間絶縁膜41が厚いため、その他の部分よりも、実際の不純物導入量が2桁ほど低い。従って、ソース領域31およびドレイン領域32では、ゲート電極35の端部に対峙する部分に不純物濃度が約2.0×1018cm-3の低濃度ソース・ドレイン領域311、321が形成される。一方、そこを除く高濃度ソース・ドレイン領域312、322の不純物濃度は、約2.0×1020cm-3となる。このようにして、P型の駆動回路用TFT30が形成される。しかる後に、レジストマスク51を除去する。
次に、図7(c)に示すように、P型の駆動回路用TFT30の形成領域をレジストマスク52で覆う。この状態で、ドナー型の不純物、たとえばリンイオンを0.5×1015cm-2のドーズ量でイオン注入して、ゲート電極15、25に対して自己整合的にソース領域11、21、およびドレイン領域12、22を形成する(N型の不純物導入工程)。
その結果、不純物が導入されなかった部分がチャネル形成領域13、23となる。但し、ソース領域11、21、およびドレイン領域12、22のうち、ゲート電極15、25の端部に対峙する部分では、そこを覆う第1の層間絶縁膜41が厚いため、その他の部分よりも、実際の不純物導入量が2桁ほど低い。従って、ソース領域11、21、およびドレイン領域12、22では、ゲート電極15、25の端部に対峙する部分に不純物濃度が約0.5×1018cm-3の低濃度ソース・ドレイン領域111、121、211、221が形成される。一方、そこを除く高濃度ソース・ドレイン領域112、122、212、222の不純物濃度は、約0.5×1020cm-3である。このようにして、画素用TFT10、およびN型の駆動回路用TFT20が形成される。しかる後に、レジストマスク52を除去する。
次に、図7(d)に示すように、第1の層間絶縁膜41の表面に第2の層間絶縁膜42を形成した後に、活性化のためのアニールを行なうと、図1に示すアクティブマトリクス基板1が形成される。ここで、第1の層間絶縁膜41と第2の層間絶縁膜42との総膜厚は、約1.5μm〜約2.0μmである。なお、各TFTに対しては、第1および第2の層間絶縁膜41、42からなる層間絶縁膜4にコンタクトホールを形成した後、所定の電極(信号線および画素電極)を形成する。
このような方法で形成すれば、少ない工程数でLDD構造のTFTを形成できるので、オフリーク電流を簡単に低減することができる。しかも、不純物導入工程で、ソース領域11、21、31、およびドレイン領域12、22、32を形成する際のドーズ量を制御するだけで、オン電流のバランスを確保できる。
(実施例2:第1形態に係る各TFTの別の製造方法)
また、図1に示す構造のTFTは、以下の方法でも製造できる。
なお、以下に説明する方法でも、前記の製造方法と図6(a)〜(d)に示す工程が共通しているので、これらの工程の説明を省略し、図6(d)に示す工程の後に行なう工程のみを説明する。
まず、図8(a)に示すように、ゲート電極15、25、35を形成した後、P型の駆動回路用TFT30の形成予定領域をレジストマスク53で覆った状態で、画素用TFT10およびN型の駆動回路用TFT20の形成予定領域に対して、ドナー型の不純物、たとえば、リンイオンを約0.5×1013cm-2のドーズ量でイオン注入し、ゲート電極15、25に対して自己整合的に不純物濃度が約0.5×1018cm-3の低濃度のソース・ドレイン領域11b、12b、21b、22bを形成する。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル形成領域13、23となる。しかる後に、レジストマスク53を除去する。
次に、図8(b)に示すように、P型の駆動回路用TFT30の形成予定領域に加えて、画素用TFT10およびN型の駆動回路用TFT20のゲート電極15、25をも広めに覆うレジストマスク54を形成した後、ドナー型の不純物、たとえばリンイオンを0.5×1015cm-2のドーズ量でイオン注入する。ここで、レジストマスク54の端部と、ゲート電極15、25の端部との距離は、0.5μm〜2.0μm程度が適している。その結果、低濃度のソース・ドレイン領域11b、12b、21b、22bには、不純物濃度が0.5×1020cm-3の高濃度ソース・ドレイン領域112、122、212、222が形成される。
一方、低濃度のソース・ドレイン領域11b、12b、21b、22bのうち、レジストマスク54で覆われていた部分は、そのまま不純物濃度が約0.5×1018cm-3の低濃度ソース・ドレイン領域111、121、211、221となる。このようにして、画素用TFT10およびN型の駆動回路用TFT20が形成される。しかる後に、レジストマスク54を除去する。
次に、図8(c)に示すように、画素用TFT10およびN型の駆動回路用TFT20をレジストマスク55で覆った状態で、P型の駆動回路用TFT30の形成予定領域に対して、アクセプター型の不純物、たとえばボロンイオンを約2.0×1013cm-2のドーズ量でイオン注入して、ゲート電極35に対して自己整合的に不純物濃度が約2.0×1018cm-3の低濃度のソース・ドレイン領域31b、32bを形成する。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル形成領域33となる。しかる後に、レジストマスク55を除去する。
次に、図8(d)に示すように、画素用TFT10およびN型の駆動回路用TFT20に加えて、P型の駆動回路用TFT30のゲート電極35をも広めに覆うレジストマスク56を形成した後、アクセプター型の不純物、たとえばボロンイオンを2.0×1015cm-2のドーズ量でイオン注入する。ここで、レジストマスク56の端部と、ゲート電極35の端部との距離は、0.5μm〜2.0μm程度が適している。その結果、低濃度のソース・ドレイン領域31b、32bには、不純物濃度が2.0×1020cm-3の高濃度ソース・ドレイン領域312、322が形成される。一方、低濃度のソース・ドレイン領域31、32のうち、レジストマスク56で覆われていた部分は、そのまま不純物濃度が約2.0×1018cm-3の低濃度ソース・ドレイン領域311、321となる。このようにして、P型の駆動回路用TFT30を形成する。
かかる製造方法の他にも、ゲート電極15、25、35の側面に異方性エッチングでサイドウォールを残し、このサイドウォールを用いてLDD構造のTFTを製造する方法もある。
(第1形態に於けるLDD濃度)
前述の実施例2ではTFTをアクティブマトリクス基板1の画素用TFTおよび駆動回路用TFTとして用いたときに、素子サイズを変えることなく、オン電流のバランスの悪さに起因する誤動作の発生を確実に防止しながら、オフリーク電流に起因するフリッカーの発生や無駄な電流の消費を確実に防止するという観点から、P型の駆動回路用TFT30の低濃度ソース・ドレイン領域311、321の不純物濃度を約2.0×1018cm-3に設定し、画素用TFT10およびN型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域111、121、211、221の不純物濃度を約0.5×1018cm-3に設定したが、P型のTFTの低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度が約1.5×1018cm-3から約3.0×1018cm-3までの範囲で、N型のTFTの低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度が約0.2×1018cm-3から約0.5×1018cm-3までの範囲にあればよいことを、図9および図10を参照して説明する。
図9には、LDD構造のN型のTFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度とオン電流との関係を実線L5で示し、LDD構造のP型のTFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度とオン電流との関係を実線L6で示してある。ここで、チャネルは、W/Lが10/10(μm)であり、ドレイン−ソース電圧は、5vであり、ゲート電圧は、10vである。これらの検討結果から、駆動回路のTFTに一般的に必要とされる2×10-5 A以上のオン電流を確保するには、N型のTFTでは、低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度が約0.2×1018cm-3以上であり、P型のTFTでは、低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度が約1.5×1018cm-3以上である。
一方、図10には、LDD構造のN型のTFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度とオフリーク電流との関係を実線L7で示し、LDD構造のP型のTFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度とオン電流との関係を実線L8で示してある。ここで、チャネルは、W/Lが10/10(μm)であり、ドレイン−ソース電圧は、5vであり、ゲート電圧は、0vである。
これらの検討結果から、一般的な駆動回路においてオフリーク電流をその上限とされる1×10-13 A以下のレベルとなるのは、N型のTFTでは、低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度が約1.3×1019cm-3以下であり、P型のTFTでは、低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度が約3.0×1018cm-3以下である。
従って、P型のTFTでは、低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度を約1.5×1018cm-3から約3.0×1018cm-3までの範囲とすれば、そのオン電流特性およびオフリーク特性は、駆動回路用として充分なレベルとなる。一方、N型のTFTでは、低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度を約1.5×1018cm-3から約3.0×1018cm-3までの範囲としたP型のTFTと同じオン電流レベルとするには、低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度を約0.2×1018cm-3から約1.3×1019cm-3までの範囲のうち、約0.2×1018cm-3から約0.5×1018cm-3までの範囲とすればよい。このように設定した不純物濃度範囲では、オン電流のバランスを向上できるだけでなく、N型のTFTのオフリーク電流のレベルを約1×10-14 A以下にできるので、画素用TFTとして用いたときには充分な保持特性を発揮するという利点がある。
さらに、図9に示す検討結果からすれば、各種薄膜半導体装置におけるCMOS回路において、ゲート容量などのバランスを崩すことなく、オン電流のバランスを確保するという観点だけからすれば、P型のTFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度をN型のTFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度に対して高くすればよく、より正確にオン電流のバランスを確保する観点からすれば、6倍から8倍までの範囲とすればよい。
なお本発明のCMOS TFTの応用例としては、液晶表示装置の他にも、密着型イメージセンサやSRAM(static Random Access Memories)など、薄膜半導体装置が形成された基板を構成要素の一部とする電子機器がある。
(低温プロセスLDD TFTに於ける発明形態)
次に低温プロセスで製造された薄膜トランジスタに関する第1の発明形態を説明する。ここで低温プロセスとはTFTを作成する際の工程最高温度が、レーザー照射とか急速熱処理(RTA)と云った局所加熱を除いて600℃程度以下であるTFTの製造方法を示す。低温プロセスでは1000℃程度の熱酸化法を使用しない為、半導体膜はレーザー照射やRTAにて改質し、絶縁膜はCVD法やPVD法などで形成される。発明人がこうした低温プロセスにて製造されたTFTについて繰り返し実験を行った結果によれば、各TFTの低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度は、以下のように設定したときに、各TFTの電気的特性を最適化できる。
まず、各LDD TFTの低濃度ソース・ドレイン領域を構成しているシリコンなどの半導体膜の膜厚をt(cm)とし、P型の駆動回路用TFT30における低濃度ソース・ドレイン領域311、321の不純物濃度をCDrPLDD(cm-3)としたときに、t、CDrPLDDは、以下の各式
1×10-6cm≦t≦4.5×10-6cm
1.2×1012cm-2≦CDrPLDD・t≦1.8×1013cm-2を満たすように設定する。同様にN型の駆動回路用TFT20における低濃度ソース・ドレイン領域211、221の不純物濃度をCDrNLDD(cm-3)としたときに、t、CDrNLDDは、以下の各式
1×10-6cm≦t≦4.5×10-6cm
2.4×1011cm-2≦CDrNLDD・t≦6.0×1012cm-2を満たすように設定する。或いはt、CDrNLDD、CDrPLDDは、以下の各式 1×10-6cm≦t≦4.5×10-6cm
3 ≦ CDrPLDD/CDrNLDD ≦ 5
を満たすように設定する。
たとえば、各LDD TFTの半導体膜の膜厚を40nmとした場合には、N型の駆動回路用TFT20における低濃度ソース・ドレイン領域211、221、およびP型の駆動回路用TFT30における低濃度ソース・ドレイン領域311、321において、以下のように不純物濃度の範囲を設定する。
3.0×1017cm-3≦CDrPLDD≦4.5×1018cm-3 6.0×1016cm-3≦CDrNLDD≦1.5×1018cm-3 このように設定すれば、低温プロセスで形成したシリコン膜からTFTを形成した場合においても、N型の駆動回路用TFT20とP型の駆動回路用TFT30との間におけるオン電流のバランスを確保できるので有る。これは低温プロセスでは工程最高温度が600℃程度で有る為、LDD領域に注入したドナーやアクセプターの活性化率が低い事に起因して居る。膜厚が45nm程度以上有れば活性化は比較的楽に成る為、
1.2×1012cm-2≦CDrPLDD・t≦1.8×1013cm-2 2.4×1011cm-2≦CDrNLDD・t≦6.0×1012cm-2 3 ≦ CDrPLDD/CDrNLDD ≦ 5
これら各条件は膜厚に係わり無く成り立つ事と成る。
(本発明に係わるレイアウト)
本願の総ての発明に係わるトランジスタのレイアウトに関して説明する。
各LDD TFTのレイアウトについては、N型の駆動回路用TFT20とP型の駆動回路用TFT30との間におけるゲート容量のバランスを確保するという観点からは、以下のように構成すればよい。すなわち、図11にN型のTFT、およびP型のTFTの平面形状を模倣式に表し、N型のTFT(N型の駆動回路用TFT20)のチャネル長およびチャネル幅をそれぞれLDrN およびWDrN とし、前記P型の駆動回路用TFTのチャネル長およびチャネル幅をそれぞれLDrP 、WDrP としたときに、LDrN 、WDrN 、LDrP 、WDrP は、以下の式 LDrN ・WDrN =LDrP ・WDrP を満たすのが理想で有る。こうするとTFTのゲート容量は等しくなり、その上でオン電流値をP型TFTとN型TFTで同等に成る様に本願発明に従って調整すればゲート容量もオン電流も同時にバランスを取る事が出来る訳で有る。また、理想的とは言えぬがLDrN 、WDrN 、LDrP 、WDrP が以下の式 0.8≦(LDrN ・WDrN )/(LDrP ・WDrP )≦1.25を満たす範囲内であれば、ゲート容量のバランスを確保できる。たとえば、レイアウト面から、WDrN とWDrP とを等しくする必要がある場合には、LDrN とLDrP が以下の式
0.8≦ LDrN/LDrP ≦1.25
を満たすように設定する。
更に図11に示すように、N型の画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121の長さおよび幅をそれぞれLPiNLDD、WPiNLDDとし、N型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221の長さおよび幅をそれぞれLDrNLDD、WDrNLDDとし、P型の駆動回路用TFT30の低濃度ソース・ドレイン領域311、321の長さおよび幅をそれぞれLDrPLDD、WDrPLDDとしたときに、LPiNLDD、WPiNLDD、LDrNLDD、WDrNLDDを、以下の式 (LPiNLDD/WPiNLDD)≧(LDrNLDD/WDrNLDD)を満たすように設定してもよい。すなわち、N型の画素用TFT10における低濃度ソース・ドレイン領域111、121の抵抗値を高めに設定し、N型の駆動回路用TFT20における低濃度ソース・ドレイン領域211、221の抵抗値を低めに設定してもよい。このように構成すれば、不純物濃度の面からCMOS回路における電気的特性を向上しながら、レイアウトの面から、画素用TFTのオフリーク電流を低減し、かつ、駆動回路用TFTにおけるオン電流の増大を図ることができる。
(本発明の第2形態)
(第2形態に係る各TFTの構成)
本発明の各LDD TFTの基本的な構成は第1形態と同様であるため、図1を参照して説明するとともに、対応する機能を有する部分については同じ符合を付してそれらの詳細な説明を省略する。
本発明でも図1に示すように、N型の画素用TFT10、N型の駆動回路TFT20、およびP型の駆動回路TFT30では、ソース領域11、21、31、およびドレイン領域12、22、32において、ゲート電極15、25、35の端部に対してゲート絶縁膜14、24、34を介して対峙する部分に低濃度ソース・ドレイン領域111、121、211、221、311、321が形成されており、いずれのTFTもLDD構造になっている。
本発明では図12に実線L11で示すように、N型の駆動回路用TFT20のオン電流を大きくするために、低濃度ソース・ドレイン領域211、221の不純物濃度を高濃度側にシフトさせたときに、N型の画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121でも、不純物濃度が高濃度側にシフトし、オフリーク電流が増大してしまうことを防止することを目的としている。逆にいえば、N型の画素用TFT10において、図12に一点鎖線L12で示すように、オフリーク電流を小さくしたとき、N型の駆動回路用TFT20において、オン電流が小さくなることを防止することを目的とする。
本発明の液晶表示装置はアクティブマトリクス基板上に、駆動回路部でCMOS回路を構成する第1導電型および第2導電型の駆動回路用薄膜トランジスタと、画素領域に形成された第1導電型の画素用薄膜トランジスタとを有し、駆動回路用薄膜トランジスタおよび前記画素用薄膜トランジスタは、ソース・ドレイン領域のうち、ゲート電極の端部に対してゲート絶縁膜を介して対峙する部分に低濃度ソース・ドレイン領域を備えるLDD構造を有し、第1導電型の画素用薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度は、第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタにおける前記低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度に比較して低く成っている。たとえば第1導電型をN型とすると、図1に示すN型の画素用TFT10における低濃度ソース・ドレイン領域111、121の不純物濃度はN型の駆動回路用TFT20における低濃度ソース・ドレイン領域211、221の不純物濃度に比較して低く設定してある。すなわち、N型の画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121における不純物濃度は、約0.4×1018cm-3であるのに対し、N型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221における不純物濃度は、約0.7×1018cm-3である。無論第1導電型がP型で有っても同様で有る。
また、本発明ではP型の駆動回路用TFT30の低濃度ソース・ドレイン領域311、321における不純物濃度を、N型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221における不純物濃度に対して高く設定してある。たとえば、N型の駆動回路用TFT20では、低濃度ソース・ドレイン領域211、221の不純物濃度を約0.7×1018cm-3に設定してあるのに対して、P型の駆動回路用TFT30では、低濃度ソース・ドレイン領域311、321の不純物濃度を約5.0×1018cm-3に設定してある。すなわち、P型の駆動回路用TFT30における低濃度ソース・ドレイン領域311、321の不純物濃度をN型の駆動回路用TFT20における低濃度ソース・ドレイン領域211、221の不純物濃度に対して約6倍から約8倍までの範囲に設定してある。
なお、N型の画素用TFT10、N型の駆動回路用TFT20、およびP型の駆動回路用TFT30のソース領域11、21、31、およびドレイン領域12、22、32のうち、低濃度ソース・ドレイン領域111、121、211、221、311、321を除く領域は、不純物濃度が約1.0×1019cm-3以上の高濃度ソース・ドレイン領域112、122、212、222、312、322である。本発明に於いても先のレイアウトの特徴は無論適応される。
(第2形態に係る各TFTのオン・オフリーク電流特性)
このように構成したTFTのオン・オフリーク電流特性では、図9に示すように駆動回路用TFTに於いては低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度を高くした分だけ、オン電流を増大させることができる。また、図10に示すように画素用TFTでは低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度を低くした分だけ、オフリーク電流を低減することができるといえる。さらに、CMOS回路において、ゲート容量などのバランスを崩すことなく、オン電流のバランスを確保するという観点から、P型のTFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度をN型のTFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度に対して約6倍から約8倍までの範囲設定してある。それ故本発明のアクティブマトリクス基板1では、まず、いずれのTFTをもLDD構造としたことに加えて、N型の駆動回路用TFT20は低濃度ソース・ドレイン領域211、221の不純物濃度が約0.7×1018cm-3まで高濃度側に設定されているので、図12に実線L11で示すようにオン電流が大きく、その一方N型の画素用TFT10は低濃度ソース領域111および低濃度ドレイン領域121の不純物濃度が約0.4×1018cm-3まで低濃度側に設定されているので、図12に一点鎖線L12で示すようにオフリーク電流が小さい。しかも、P型の駆動回路用TFT30は、低濃度ソース領域311および低濃度ドレイン領域321における不純物濃度が約5.0×1018cm-3までN型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース領域211および低濃度ドレイン領域221における不純物濃度よりも高濃度側に設定してあるので、図12に点線L13で示すようにオン電流がN型の駆動回路用TFT20のオン電流と同等のレベルまで改善されている。それ故、シフトレジスタの動作条件に充分なマージンを確保でき、オン電流のアンバランスに起因する誤動作が発生しない。しかもP型のTFTとN型のTFTとの間では素子サイズを略同等としてあるため、ゲート容量も略同等である。
(実施例3:第2形態に係るLDD TFTの製造方法)
このような構造のTFTは、たとえば、以下の方法により製造できる。なお、以下の説明において、不純物濃度は、いずれも活性化アニール後の不純物濃度で表してある。但し、半導体膜を形成してからゲート電極および層間絶縁膜を形成するまでの工程は、実施例1において、図4(a)〜図5(b)を参照して説明した工程と同様である。また、それ以降の工程も、基本的には同じである。従って、図13(a)に示すように、層間絶縁膜41を形成した以降の工程についてのみ説明するとともに、それ以降の工程についても、詳細な説明を省略する。なお、本例でも、層間絶縁膜41は、ゲート電極15、25、35の端部では、ゲート電極15、25、35の厚さに相当する分だけ厚く、かかる厚さの差を利用して、以降の工程において、LDD構造のTFTを形成する。
まず、図13(b)に示すように、絶縁基板2の表面側のうち、画素用TFT10の形成予定領域と、N型の駆動回路用TFT20の形成予定領域をレジストマスク51Aで覆う。この状態で、アクセプタ型の不純物、たとえばボロンイオンを5.0×1015cm-2のドーズ量でイオン注入して、ゲート電極35に対して自己整合的にソース領域31、およびドレイン領域32を形成する(P型の不純物導入工程)。
その結果、不純物が導入されなかった部分がチャネル形成領域33となる。但し、ソース領域31およびドレイン領域32のうち、ゲート電極35の端部に対峙する部分では、そこを覆う層間絶縁膜41が厚いため、その他の部分よりも、実際の不純物導入量が2桁ほど低い。従って、ソース領域31およびドレイン領域32では、ゲート電極35の端部に対峙する部分に不純物濃度が約5.0×1018cm-3の低濃度ソース・ドレイン領域311、321が形成される一方、そこを除く部分は、不純物濃度が約5.0×1020cm-3の高濃度ソース・ドレイン領域312、322となる。このようにして、P型の駆動回路用TFT30が形成される。しかる後に、レジストマスク51Aを除去する。
次に、図13(c)に示すように、N型の画素用TFT10の形成領域およびP型の駆動回路用TFT30の形成領域をレジストマスク52Aで覆う。この状態で、ドナー型の不純物、たとえばリンイオンを0.7×1015cm-2のドーズ量でイオン注入して、ゲート電極25に対して自己整合的にソース領域21およびドレイン領域22を形成する(N型の不純物導入工程)。
その結果、不純物が導入されなかった部分がチャネル形成領域23となる。但し、ソース領域21およびドレイン領域22のうち、ゲート電極25の端部に対峙する部分では、そこを覆う層間絶縁膜41が厚いため、その他の部分よりも、実際の不純物導入量が2桁ほど低い。従って、ソース領域21およびドレイン領域22では、ゲート電極25の端部に対峙する部分に不純物濃度が約0.7×1018cm-3の低濃度ソース・ドレイン領域211、221が形成される一方、そこを除く部分は、不純物濃度が約0.7×1020cm-3の高濃度ソース・ドレイン領域212、222となる。このようにして、N型の駆動回路用TFT20が形成される。しかる後に、レジストマスク52Aを除去する。
次に、図13(d)に示すように、N型の駆動回路用TFT20の形成領域およびP型の駆動回路用TFT30の形成領域をレジストマスク53Aで覆う。この状態で、ドナー型の不純物、たとえばリンイオンを0.4×1015cm-2のドーズ量でイオン注入して、ゲート電極15に対して自己整合的にソース領域11およびドレイン領域12を形成する(N型の不純物導入工程)。
その結果、不純物が導入されなかった部分がチャネル形成領域13となる。但し、ソース領域11およびドレイン領域12のうち、ゲート電極15の端部に対峙する部分では、そこを覆う層間絶縁膜41が厚いため、その他の部分よりも、実際の不純物導入量が2桁ほど低い。従って、ソース領域11およびドレイン領域12では、ゲート電極15の端部に対峙する部分に不純物濃度が約0.4×1018cm-3の低濃度ソース・ドレイン領域111、121が形成される一方、そこを除く部分は、不純物濃度が約0.4×1020cm-3の高濃度ソース・ドレイン領域112、122となる。このようにして、N型の画素用TFT10が形成される。
このような方法で形成すれば、最小限の工程数で、かつ、各不純物導入工程におけるドーズ量を制御するだけで、各TFTのオン電流・オフ電流特性を最適化できる。なお、上記の製造方法における工程順序は、図13(b)、(c)、(d)で示す工程の間で入れ換えてもよい。
(実施例4:第2形態に係るLDD TFTの別の製造方法)
また、本例のTFTは、以下の方法でも製造できる。
なお、以下に説明する方法では、半導体膜を形成してからゲート電極形成するまでの工程は、実施例1において、図4(a)〜図4(d)を参照して説明した工程と同様である。従って、図14(a)に示すように、ゲート電極15、25、35を形成した以降の工程について説明する。
まず、図14(a)に示すように、ゲート電極15、25、35を形成した以降、P型の駆動回路用TFT30の形成予定領域をレジストマスク54Aで覆った状態で、画素用TFT10およびN型の駆動回路用TFT20の形成予定領域に対して、ドナー型の不純物、たとえば、リンイオンを約0.4×1013cm-2のドーズ量でイオン注入し、ゲート電極15、25に対して自己整合的に不純物濃度が約0.4×1018cm-3の低濃度のソース・ドレイン領域11b、12b、21b、22bを形成する。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル形成領域13、23となる。しかる後に、レジストマスク54Aを除去する。
次に、図14(b)に示すように、N型の画素用TFT10およびP型の駆動回路用TFT30の形成予定領域をレジストマスク55Aで覆った状態で、N型の駆動回路用TFT20の形成予定領域に対して、ドナー型の不純物、たとえば、リンイオンを約0.3×1013cm-2のドーズ量でイオン注入し、N型の駆動回路用TFT20の低濃度のソース・ドレイン領域21b、22bの不純物濃度を約0.7×1018cm-3まで高める。しかる後に、レジストマスク55Aを除去する。
次に、図14(c)に示すように、P型の駆動回路用TFT30の形成予定領域に加えて、N型の画素用TFT10およびN型の駆動回路用TFT20のゲート電極15、25をも広めに覆うレジストマスク56Aを形成した後、ドナー型の不純物、たとえばリンイオンを1.0×1015cm-2のドーズ量でイオン注入する。ここで、レジストマスク54Aの端部と、ゲート電極15、25の端部との距離は、0.5μm〜2.0μm程度が適している。その結果、低濃度のソース・ドレイン領域11b、12b、21b、22bには、不純物濃度が1.0×1020cm-3の高濃度ソース・ドレイン領域112、122、212、222が形成される。一方、低濃度のソース・ドレイン領域11b、12b、21b、22bのうち、レジストマスク56Aで覆われていた部分は、そのまま不純物濃度が約0.4×1018cm-3の低濃度ソース・ドレイン領域111、121と、不純物濃度が約0.7×1018cm-3の低濃度ソース・ドレイン領域211、221となる。このようにして、画素用TFT10およびN型の駆動回路用TFT20が形成される。しかる後に、レジストマスク56Aを除去する。
次に、図14(d)に示すように、N型の画素用TFT10およびN型の駆動回路用TFT20をレジストマスク57Aで覆った状態で、P型の駆動回路用TFT30の形成予定領域に対して、アクセプター型の不純物、たとえばボロンイオンを約5.0×1013cm-2のドーズ量でイオン注入して、ゲート電極35に対して自己整合的に不純物濃度が約5.0×1018cm-3の低濃度のソース・ドレイン領域31b、32bを形成する。不純物が導入されなかった部分がチャネル形成領域33となる。しかる後に、レジストマスク57Aを除去する。
次に、図14(e)に示すように、画素用TFT10およびN型の駆動回路用TFT20に加えて、P型の駆動回路用TFT30のゲート電極35をも広めに覆うレジストマスク58Aを形成した後、アクセプター型の不純物、たとえばボロンイオンを1.0×1015cm-2のドーズ量でイオン注入する。ここで、レジストマスク58Aの端部と、ゲート電極35の端部との距離は、0.5μm〜2.0μm程度が適している。その結果、低濃度のソース・ドレイン領域31b、32bには、不純物濃度が1.0×1020cm-3の高濃度ソース・ドレイン領域312、322が形成される。一方、低濃度のソース・ドレイン領域31b、32bのうち、レジストマスク58Aで覆われていた部分は、そのまま不純物濃度が約5.0×1018cm-3の低濃度ソース・ドレイン領域311、321となる。このようにして、P型の駆動回路用TFT30を形成する。
かかる製造方法の他にも、ゲート電極15、25、35の側面に異方性エッチングでサイドウォールを残し、このサイドウォールを用いてLDD構造のTFTを製造する方法もある。
(第2形態に係わる不純物濃度)
なお、本発明のアクティブマトリクス基板では、N型の画素用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度を約0.4×1018cm-3とし、N型の駆動回路用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度を約0.7×1018cm-3としたが、かかる不純物濃度に限定されることなく、N型の画素用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域における不純物濃度をN型の駆動回路用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域における不純物濃度に比較して低く設定さえすれば、画素領域におけるTFTのオフリーク電流の低減と、駆動回路部におけるTFTのオン電流の増大とを併せて実現できる。
またここではN型の駆動回路用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度を約0.7×1018cm-3とし、P型の駆動回路用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度を約5.0×1018cm-3としたが、かかる不純物濃度に限定されることなく、P型の駆動回路用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域における不純物濃度をN型の駆動回路用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域における不純物濃度に比較して高く設定さえすれば、駆動回路におけるオン電流のバランスを向上できる。特に、P型の駆動回路用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域における不純物濃度をN型の駆動回路用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域における不純物濃度に対して約6倍から約8倍までの範囲に設定すれば、それらのオン電流を略同等にすることができる。
なお、本例では第1導電型をN型とし第2導電型をP型としたが、逆にしてもよく、画素用TFTをP型で構成してもよい。
(本発明の第3形態)
本発明の各LDD TFTの基本的な構成は第1、2形態と同様であるため、図1を参照して説明するとともに、対応する機能を有する部分については同じ符合を付してそれらの詳細な説明を省略する。
本発明の液晶表示装置では第1導電型の画素用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域は第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域と同等量の第1導電型の不純物と、この不純物のドーズ量よりも少なくて第2導電型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域と同等量の第2の導電型の不純物とが導入されている。これにより第1導電型の画素用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の第1導電型不純物濃度は駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域よりも実質的に低くなっている。例えば第1導電型をN型とすると、N型の画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121の不純物濃度は、N型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、222における不純物濃度に比較して実質的に低く設定してある。すなわち、N型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221における不純物濃度は、約3.0×1018cm-3であり、P型の駆動回路用TFT30の低濃度ソース・ドレイン領域311、321における不純物濃度は、約2.0×1018cm-3であるが、N型の画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121には、N型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221と同等量のN型の不純物(不純物濃度が約3.0×1018cm-3のリンイオン)と、P型の駆動回路用TFT30の低濃度ソース・ドレイン領域311、321と同等量のP型の不純物(不純物濃度が約2.0×1018cm-3のボロンイオン)とが導入されている。それ故、N型の画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121は、実質的には不純物濃度が約1.0×1018cm-3の低濃度N型領域である。かかる低濃度ソース・ドレイン領域111、121は不純物濃度が約1.0×1018cm-3のリンイオンのみが打ち込まれた低濃度N型領域と電気的特性において略等価である。
(実施例5:第3形態に係る各LDD TFTの製造方法)
このような構造のアクティブマトリクス基板1は、たとえば、以下の方法により製造できる。なお、以下の説明において、不純物濃度は、いずれも活性化アニール後の不純物濃度で表してある。
まず、図15(a)に示すように、石英基板などの絶縁基板2の表面に、LPCVD法またはプラズマCVD法などを用いて半導体膜を形成した後、半導体膜をフォトリソグラフィ法によってパタニングし、それを島状の半導体膜10a、20a、30aにする。なお、半導体膜は、アモルファス半導体膜を形成した後、レーザアニール法または固相成長法により半導体膜を形成する場合もある。次に、島状の半導体膜10a、20a、30aに対して、熱酸化法、TEOS−CVD法、LPCVD法、プラズマCVD法、HTO法などにより、厚さが約1200オングストロームのシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜14、24、34を形成する。
次に、図15(b)に示すように、ゲート絶縁膜14、24、34の表面に、ドープドシリコンやシリサイド膜などからなるゲート電極15、25、35を形成する。
次に、N型の駆動回路用TFT20の形成予定領域をレジストマスク71で覆う一方、N型の画素用TFT10の形成予定領域については開放状態とする。この状態で、P型の駆動回路用TFT30の形成予定領域に対して、アクセプター型の不純物、たとえばボロンイオンを約2.0×1013cm-2のドーズ量でイオン注入し、ゲート電極35に対して自己整合的に不純物濃度が約2.0×1018cm-3の低濃度のソース・ドレイン領域31a、32aを形成する(1回目の不純物導入工程/低濃度第2導電型不純物導入工程)。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル形成予定領域33となる。このとき、N型の画素用TFT10は、開放状態にあるため、N型の画素用TFT10の形成予定領域においても、ゲート電極15に対して自己整合的にボロンイオンが約2.0×1013cm-2のドーズ量でイオン注入される。その結果、低濃度(不純物濃度が約2.0×1018cm-3)のP型のソース・ドレイン領域11b、12bが形成される。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル形成予定領域13となる。しかる後に、レジストマスク71を除去する。
次に、図15(c)に示すように、P型の駆動回路用TFT30の形成予定領域をレジストマスク72で覆った状態で、N型の画素用TFT10およびN型の駆動回路用TFT20の形成予定領域に対して、ドナー型の不純物、たとえば、リンイオンを約3.0×1013cm-2のドーズ量でイオン注入する(2回目の不純物導入工程/低濃度第1導電型不純物導入工程)。その結果、N型の駆動回路用TFT20の形成予定領域では、低濃度のソース・ドレイン領域21a、22aが形成される。このとき、N型の画素用TFT10の形成予定領域には、先の低濃度第2導電型不純物導入工程において、低濃度(不純物濃度が約2.0×1018cm-3)のP型のソース・ドレイン領域11b、12bが形成されていたが、今回の不純物の導入によって、ソース・ドレイン領域11b、12bは、導電型がP型からN型に反転し、実質的には、低濃度N型のソース・ドレイン領域11a、12aとなる。ここで、低濃度のソース・ドレイン領域11a、12aのリンイオンの実質的な濃度は、先のP型の不純物導入量と、今回のN型の不純物導入量との差に相当するN型の不純物濃度、すなわち、約1.0×1018cm-3とみなすことができる。しかる後に、レジストマスク72を除去する。
次に、図15(d)に示すように、N型の画素用TFT10およびN型の駆動回路用TFT20に加えて、P型の駆動回路用TFT30のゲート電極35をも広めに覆うレジストマスク73を形成した後、アクセプター型の不純物、たとえばボロンイオンを1.0×1015cm-2のドーズ量でイオン注入する(3回目の不純物導入工程/高濃度第2導電型不純物導入工程)。ここで、レジストマスク73の端部と、ゲート電極35の端部との距離は、0.5μm〜2.0μm程度が適している。その結果、低濃度のソース・ドレイン領域31a、32aには、不純物濃度が1.0×1020cm-3の高濃度ソース・ドレイン領域312、322が形成される。一方、低濃度のソース・ドレイン領域31a、32aのうち、レジストマスク73で覆われていた部分は、そのまま不純物濃度が約2.0×1018cm-3の低濃度ソース・ドレイン領域311、321となる。このようにして、P型の駆動回路用TFT30を形成する。しかる後に、レジストマスク73を除去する。
次に、図15(e)に示すように、P型の駆動回路用TFT30の形成領域に加えて、N型の画素用TFT10およびN型の駆動回路用TFT20のゲート電極15、25をも広めに覆うレジストマスク74を形成した後、ドナー型の不純物、たとえばリンイオンを1.0×1015cm-2のドーズ量でイオン注入する(4回目の不純物導入工程/高濃度第1導電型不純物導入工程)。ここで、レジストマスク74の端部と、ゲート電極15、25の端部との距離は、0.5μm〜2.0μm程度が適している。その結果、低濃度のソース・ドレイン領域11a、12a、21a、22aには、不純物濃度が1.0×1020cm-3の高濃度ソース・ドレイン領域112、122、212、222が形成される。一方、低濃度のソース・ドレイン領域11a、12aのうち、レジストマスク74で覆われていた部分は、そのまま不純物濃度が約1.0×1018cm-3の低濃度ソース・ドレイン領域111、121となる。また、低濃度のソース・ドレイン領域21a、22aのうち、レジストマスク74で覆われていた部分は、そのまま不純物濃度が約3.0×1018cm-3の低濃度ソース・ドレイン領域211、221となる。このようにして、N型の画素用TFT10およびN型の駆動回路用TFT20が形成される。
このように本例のアクティブマトリクス基板1の製造方法では、P型の駆動回路用TFT30の低濃度ソース・ドレイン領域311、321を形成するための低濃度第2導電型不純物導入工程、およびN型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221を形成するための低濃度第1導電型不純物導入工程において、N型の画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121の形成予定領域にアクセプタ型およびドナー型の不純物をそれぞれ導入し、それらの不純物濃度の差によって、画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121を形成する。すなわち、N型およびP型の駆動回路用TFT20、30の製造工程を援用しながら、N型の駆動回路用TFT20とは異なる電気的特性をもつN型の画素用TFT10を形成できる。従って、レジストマスク71〜74を形成するための4回のマスク形成工程と、4回の不純物導入工程とによって、5種類(n+、p+、画素用n-、回路用n-、p-)の異なったソース・ドレイン領域が形成されるので有る。斯くして製造工程を増やすことなく、TFTの電気的特性を画素領域および駆動回路部毎に最適化することが可能と成り、表示むらなどが発生しにくく、かつ、駆動回路部の動作速度が高いアクティブマトリクス基板を安価に製造することができる。
(実施例6:第3形態に係る各LDD TFTの別の製造方法)
本発明の第3形態に係わる液晶表示装置用アクティブマトリクス基板1は以下に説明する方法でも製造できる。即ち、第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタ(Dr1 TFT)の低濃度ソース・ドレイン領域を形成するための低濃度第1導電型不純物導入工程では、Dr1 TFTのソース・ドレイン領域の形成予定領域に加えて画素用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の形成予定領域にも低濃度の第1導電型不純物を導入する。しかる後に第2導電型の駆動回路用薄膜トランジスタ(Dr2 TFT)の低濃度ソース・ドレイン領域を形成するための低濃度第2導電型不純物導入工程では、Dr2 TFTのソース・ドレイン領域の形成予定領域に加えて画素用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の形成予定領域にも先の低濃度第1導電型不純物導入工程における第1導電型不純物のドーズ量よりも小さなドーズ量の第2導電型不純物を導入する。こうして先に低濃度第1導電型不純物導入工程において形成された画素用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の形成予定領域における不純物濃度を実質的に低濃度化することによって、画素用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域を形成するので有る。具体的には以下の様に製造する。
まず、図16(a)に示すように、石英基板などの絶縁基板2の表面に、LPCVD法またはプラズマCVD法などを用いて半導体膜を形成した後、半導体膜をフォトリソグラフィ法によってパタニングして、それを島状の半導体膜10a、20a、30aにする。なお、半導体膜は、アモルファス半導体膜を形成した後、レーザアニール法または固相成長法により半導体膜を形成する場合もある。
次に、島状の半導体膜10a、20a、30aに対して、熱酸化法、TEOS−CVD法、LPCVD法、プラズマCVD法、HTO法などにより、厚さが約1200オングストローム程度のシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜14、24、34を形成する。ここで必要に応じてトランジスタの閾値電圧を調整する為のイオン注入(チャンネルドープ工程)を行っても良い。チャンネルドープの一例としては1×1012cm-2程度のドーズ量のボロンイオン打ち込みなどが可能で有る。
次に、図16(b)に示すように、ゲート絶縁膜14、24、34の表面に、ドープドシリコンやシリサイド膜などからなるゲート電極15、25、35を形成する。次に、P型の駆動回路用TFT30の形成予定領域をレジストマスク81で覆った状態で、N型の画素用TFT10およびN型の駆動回路用TFT20の形成予定領域に対して、ドナー型の不純物、たとえば、リンイオンを約3.0×1013cm-2のドーズ量でイオン注入する(1回目の不純物導入工程/低濃度第1導電型不純物導入工程)。その結果、N型の駆動回路用TFT20の形成予定領域では、不純物濃度が約3.0×1018cm-3の低濃度のソース・ドレイン領域21a、22aが形成される。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル形成予定領域23となる。この時点に於いてはN型の画素用TFT10の形成予定領域も低濃度(不純物濃度が約3.0×1018cm-3)のソース・ドレイン領域11a、12aが形成されている。しかる後に、レジストマスク81を除去する。
次に、図16(c)に示すように、N型の駆動回路用TFT20の形成予定領域をレジストマスク82で覆う一方、N型の画素用TFT10の形成予定領域については開放状態とする。この状態で、P型の駆動回路用TFT30の形成予定領域に対して、アクセプター型の不純物、たとえばボロンイオンを約2.0×1013cm-2のドーズ量でイオン注入して、ゲート電極35に対して自己整合的に不純物濃度が約2.0×1018cm-3の低濃度のソース・ドレイン領域31a、32aを形成する(2回目の不純物導入工程/低濃度第2導電型不純物導入工程)。ここでN型の画素用TFT10は開放状態にあるため、そこにもボロンイオンが約2.0×1013cm-2のドーズ量でイオン注入される。その結果、不純物濃度が当初約3.0×1018cm-3であったN型のソース・ドレイン領域11a、12aは今回の不純物の導入によって不純物濃度が実質的に低下する。すなわち、ソース・ドレイン領域11a、12aは、先のN型の不純物導入量と今回のP型の不純物導入量との差に相当するドナー型の不純物濃度(約1.0×1018cm-3のリンイオン)のみが導入された低濃度N型領域と電気的特性が略等価な領域となる。しかる後に、レジストマスク82を除去する。
次に、図16(d)に示すように、N型の画素用TFT10およびN型の駆動回路用TFT20の形成予定領域に加えて、P型の駆動回路用TFT30のゲート電極35をも広めに覆うレジストマスク83を形成した後、アクセプター型の不純物、たとえばボロンイオンを1.0×1015cm-2のドーズ量でイオン注入する(3回目の不純物導入工程/高濃度第2導電型不純物導入工程)。その結果、低濃度のソース・ドレイン領域31a、32aには、不純物濃度が1.0×1020cm-3の高濃度ソース・ドレイン領域312、322が形成される。一方、低濃度のソース・ドレイン領域31a、32aのうち、レジストマスク83で覆われていた部分は、そのまま不純物濃度が約2.0×1018cm-3の低濃度ソース・ドレイン領域311、321となる。このようにして、P型の駆動回路用TFT30を形成する。しかる後に、レジストマスク83を除去する。
次に、図16(e)に示すように、P型の駆動回路用TFT30の形成予定領域に加えて、N型の画素用TFT10およびN型の駆動回路用TFT20のゲート電極15、25をも広めに覆うレジストマスク84を形成した後、ドナー型の不純物、たとえばリンイオンを1.0×1015cm-2のドーズ量でイオン注入する(4回目の不純物導入工程/高濃度第1導電型不純物導入工程)。その結果、低濃度のソース・ドレイン領域11a、12a、21a、22aには、不純物濃度が1.0×1020cm-3の高濃度ソース・ドレイン領域112、122、212、222が形成される。一方、低濃度のソース・ドレイン領域11a、12aのうち、レジストマスク84で覆われていた部分は、そのまま不純物濃度が約1.0×1018cm-3の低濃度ソース・ドレイン領域111、121となる。また、低濃度のソース・ドレイン領域21a、22aのうち、レジストマスク84で覆われていた部分は、そのまま不純物濃度が約3.0×1018cm-3の低濃度ソース・ドレイン領域211、221となる。このようにして、N型の画素用TFT10およびN型の駆動回路用TFT20が形成される。
このような製造方法もN型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221を形成するための低濃度第1導電型不純物導入工程とP型の駆動回路用TFT30の低濃度ソース・ドレイン領域311、321を形成するための低濃度第2導電型不純物導入工程で打ち込んだ各不純物濃度の差を利用して画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121を形成出来る。すなわち、N型およびP型の駆動回路用TFT20、30の製造工程を援用しながら、N型の駆動回路用TFT20とは異なる電気的特性をもつN型の画素用TFT10が形成されるので有る。従ってレジストマスク81〜84を形成するための4回のマスク形成工程と4回の不純物導入工程とによって、先と同様5種類のソース・ドレインがアクティブマトリクス基板1上に製造される。それ故、製造工程を増やすことなく、TFTの電気的特性を画素領域および駆動回路部毎に最適化することが可能と成り、表示むらなどが発生しにくく、かつ、駆動回路部の動作速度が高いアクティブマトリクス基板を用いた液晶表示装置を安価に製造することができるので有る。
(第3形態に係る各LDD TFTのその他の製造方法)
なお、不純物の導入方法については、イオン注入法に他に、イオンドーピング法、プラズマドーピング法、レーザドーピング法などを用いてもよい。
また、低濃度ソース・ドレイン領域を形成するにあたっては、マスクを用いる方法の他にも、ゲート電極15、25、35の側面に異方性エッチングでサイドウォールを残し、このサイドウォールを用いて低濃度ソース・ドレイン領域を形成してもよい。また、マスク材質についてもレジストマスクに限定されない。
さらに、N型の画素用TFT10における低濃度ソース・ドレイン領域111、121の形成予定領域に第1導電型および第2導電型の不純物を導入し、それらの不純物濃度の差によって、画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121をN型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221に比して実質的に低濃度に形成するのであれば、高濃度ソース・ドレイン領域を形成する工程などの順序などについては、限定がない。
たとえば、表1〜表3において、チャネルドープ工程をC/D、ゲート電極形成工程をG、低濃度N型の不純物導入工程をN- 、高濃度N型の不純物導入工程をN+ 、低濃度P型の不純物導入工程をP- 、高濃度P型の不純物導入工程をP+ で表すように、チャネルドープ工程についてはゲート電極形成工程の前に行い、低濃度N型の不純物導入工程および低濃度P型の不純物導入工程をゲート電極形成工程の後に行うのであれば、いずれの工程順序であってもよい。また、チャネルドープ工程については省略してもよい。
(第3形態に於ける不純物濃度の関係)
本発明の第3形態に関し、先の例ではN型の画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121の不純物濃度を約1.0×10
18cm
-3とし、N型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221の不純物濃度を約3.0×10
18cm
-3としたが、画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121をN型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221に比して実質的に低濃度に形成して、画素領域におけるTFTのオフリーク電流の低減と、駆動回路部におけるTFTのオン電流の増大とを併せて実現できる条件であれば、上記実施例に記載の不純物濃度に限定されるものではない。たとえばN型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221の不純物濃度を約1.0×10
17cm
-3以下とした場合にはそのオフリーク電流を1×10
-14 A以下にまで確実に低減できるので、液晶表示装置における表示の品位が大幅に向上する。
ここで第3形態に於けるLDD不純物濃度が満たすべき好ましい関係を説明しておく。まず第1導電型の駆動回路用TFT(Dr1 TFT)および第1導電型の画素用TFT(Pi1 TFT)の低濃度ソース・ドレイン領域に打ち込まれた不純物量をNI cm-3とし、第2導電型の駆動回路用TFT(Dr2 TFT)の低濃度ソース・ドレイン領域に打ち込まれた第2導電型不純物量をNIIcm-3とする。この時NI 、NIIが
0<NII<NI <10×1018 ・・・(1)の関係を満たせばPi1 TFTが第1導電型LDD TFTとなり、Dr1TFTもDr2 TFTもLDD TFTと成る。この条件範囲は図17に於いて(A)(D)(H)で囲まれた三角形領域に相当する。更に条件(1)を満たし且つ
(NI −NII)≦3×1018 ・・・(2)を満たせば、Pi1 TFTのオフリーク電流は十分小さく成る。この条件範囲は図17に於いて(A)(D)(C)(B)で囲まれた四角形領域に相当する。
更にNI 、NIIが
0<NII ≦(4×1018)
NII<NI ≦(NII+3×1018) ・・・(3)を満たせば、Dr2 TFTのチャンネル長が4μm程度以下と短く成ってもDr2 TFTは十分高いS/D耐圧を有する様に成り、Vdsの違いに依りトランジスタの閾値電圧(Vth)が変動するとの悪要件を回避し得る。即ち、Dr2 TFTにスケーリング則を適応し得るので有る。この条件範囲は図17に於いて(F)(D)(C)(I)で囲まれた四角形領域に相当する。更にNI 、NIIが
0<NII<NI ≦(NII+3×1018) NI ≦(4×1018) ・・・(4)
を満たせば、Dr1 TFTのチャンネル長が4μm程度以下と短く成ってもDr1 TFTも十分高いS/D耐圧を有する様に成る。即ちDr1 TFTにもDr2 TFTにも両者にスケーリング則を適応し得るので有る。この条件範囲は図17に於いて(F)(D)(C)(E)で囲まれた四角形領域に相当する。
更に第1導電型がN型で第2導電型がP型の時NI 、NIIが 0<NII<NI ≦(4×1018) (NI −3×1018)≦NII≦(3×1018) ・・・(5)を満たせば、Dr2 TFT(P型 TFT)のチャンネル長が3μm程度以下と短く成ってもDr2 TFTは十分高いS/D耐圧を有する様に成る。即ちDr2 TFTの超微細化が可能と成る。この条件範囲は図17に於いて(G)(D)(C)(E)(J)で囲まれた五角形領域に相当する。更に第1導電型(N型)の駆動回路用薄膜トランジスタのチャネル長LDr1をx(μm)とした時に(但し、0<x ≦3)、xとNI 、NIIが
0<NII<NI ≦(x×1018) ・・・(6)を満たせば、N型のDr1 TFTのチャンネル長が3μm程度以下と短く成ってもDr1 TFTも十分高いS/D耐圧を有する様に成る。即ちこの条件下ではDr1 TFTもDr2 TFTも両者の超微細化が可能と成る。この条件範囲は図17に於いて(G)(D)(C)で囲まれた三角形領域に相当する。
(第3形態に於ける導電型)
上記の説明では第1導電型をN型とし第2導電型をP型としたが、条件式(5)と(6)を除いてこれら導電型を逆にしてもよい。すなわち第1導電型をP型とし第2導電型をN型とするので有る。この場合画素用TFTはP型で構成される事と成る。一般にP型のTFTの方がオフリーク電流のゲート電圧依存性が小さいので(P型TFTのゲート電圧を正の大きな値に設定してもリーク電流は差程大きく成らない)、表示品質が著しく向上するという利点がある。加えてこの場合DrP TFTのLDD濃度はDrN TFTのLDD濃度よりも高く成るので本発明の第1形態の条件を満たし、第1形態の効果をも得られる。ドーズ量の一例としてはP型の駆動回路TFTの低濃度ソース・ドレイン領域に6×1018cm-3のP型不純物を打ち込み、N型の駆動回路TFTの低濃度ソース・ドレイン領域に1×1018cm-3のN型不純物を打ち込めば、P型の画素用TFTの不純物濃度は実質的に5×1018cm-3と成る。第1導電型と第2導電型を入れ換えた場合に於けるLDD領域の適正な不純物濃度は、図17で横軸と縦軸とを入れ代えた条件範囲で有る。
(第3形態に於けるレイアウト)
第3形態に於いても無論第1形態の(本発明に係わるレイアウト)の章で説明したレイアウトは適応される。それに加えて図11に示すように、N型の画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121の長さおよび幅をそれぞれLPiNLDD、WPiNLDDとし、N型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221の長さおよび幅をそれぞれLDrNLDD、WDrNLDDとし、P型の駆動回路用TFT30の低濃度ソース・ドレイン領域311、321の長さおよび幅をそれぞれLDrPLDD、WDrPLDDとしたときに、LPiNLDD、WPiNLDD、LDrNLDD、WDrNLDDは
(LPiNLDD/WPiNLDD)≧(LDrNLDD/WDrNLDD)の式を満たして居る事が望ましい。こうする事でPi TFTではより確実にオフリーク電流を押さえ、Dr TFTでは十分に高いオン電流が得られるからで有る。更にLDrNLDD、WDrNLDDとLDrPLDD、WDrPLDDは (LDrNLDD/WDrNLDD)>(LDrPLDD/WDrPLDD)の式を満たして居ることが望ましい。第3形態の発明で第1導電型をN型とすると、駆動回路用P型TFTのLDD濃度は必ず駆動回路用N型TFTのLDD濃度よりも低く成って仕舞い、本発明の第1形態の条件を満たし得ない。即ちN型に比べて移動度の低いP型LDD TFTのLDD領域に起因する寄生抵抗のほうがN型LDDのそれよりも高く成って仕舞う。そこでLDD領域のレイアウトを上式の様に設定すると、第1形態の条件を満たし得ずともP型TFTと型TFTのオン電流値を揃える事が可能と成る訳で有る。即ち第3形態に於いてもこうする事に依りゲート容量バランスが取れ、同時にオン電流のバランスも取れる様に成るので有る。
(本発明の第4形態)
本発明の第1形態から第3形態では各TFTの特性を最適化するにあたって低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度を最適化したが、本発明ではその構造によって、各TFTの特性を最適化する。但し、各TFTの基本的な構成は、第1形態ないし第3形態と同様であるため、図1を参照して説明するとともに、対応する機能を有する部分については同じ符合を付してそれらの詳細な説明を省略する。
本発明の液晶表示装置はアクティブマトリクス基板上に駆動回路部に形成されCMOS回路を構成する第1導電型および第2導電型の駆動回路用薄膜トランジスタと、画素領域に形成された第1導電型の画素用薄膜トランジスタとを少なくとも有する。これら第1導電型の画素用薄膜トランジスタ及び第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタ、第2導電型の駆動回路用薄膜トランジスタはいずれもソース・ドレイン領域のうちゲート電極の端部に対してゲート絶縁膜を介して対峙する部分に低濃度ソース・ドレイン領域を備えるLDD構造を有しており、第1導電型の画素用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の長さは第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の長さより長く設定されて居る。これを図1を用いて具体的に説明する。なおここでは第1導電型をN型とし第2導電型をP型として説明するが、無論この反対で第1導電型をP型とし第2導電型をN型としてとしても良い。
図1ではN型の画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121の長さはN型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221の長さより長く設定してある。例えばN型の画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121の長さが約2μmであるのに対し、N型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221の長さは約1.5μmである。
更に本発明の液晶表示装置はP型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の長さがN型の駆動回路用薄膜トランジスタの前記低濃度ソース・ドレイン領域の長さより短く設定されている。即ち図1のP型の駆動回路用TFT30の低濃度ソース・ドレイン領域311、321の長さをN型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221の長さに対して短く設定してある。たとえばN型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221の長さが約1.5μmで有れば、P型の駆動回路用TFT30の低濃度ソース領域311の長さ及び低濃度ドレイン領域321の長さは約0.8μmで有る。このLDD長の長さの関係は、N型の駆動回路用TFT20で好ましくは低濃度ソース・ドレイン領域211、221の長さを約0.8から2μmに設定し、P型の駆動回路用TFT30では低濃度ソース・ドレイン領域311、321の長さを約0.5から1μmに設定する。更にこの条件下でN型の駆動回路用TFT30における低濃度ソース・ドレイン領域311、321の長さをP型の駆動回路用TFT20における低濃度ソース・ドレイン領域211、221の長さに対して約1.5倍から約3倍までの範囲に設定するば、理想的で有る。なお第4形態のCMOS TFTでも第1形態の(本発明に係わるレイアウト)の章で説明した事柄が適応される。即ちLDrN 、WDrN 、LDrP 、WDrP が以下の式
0.8≦(LDrN ・WDrN )/(LDrP ・WDrP )≦1.25を満たす範囲内であれば、ゲート容量のバランスを確保できる。たとえば、レイアウト面から、WDrN とWDrP とを等しくする必要がある場合には、LDrN とLDrP が以下の式
0.8≦ LDrN/LDrP ≦1.25
を満たすように設定する。
更に図11に示すように、N型の画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121の長さおよび幅をそれぞれLPiNLDD、WPiNLDDとし、N型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221の長さおよび幅をそれぞれLDrNLDD、WDrNLDDとし、P型の駆動回路用TFT30の低濃度ソース・ドレイン領域311、321の長さおよび幅をそれぞれLDrPLDD、WDrPLDDとしたときに、LPiNLDD、WPiNLDD、LDrNLDD、WDrNLDDを、以下の式 (LPiNLDD/WPiNLDD)≧(LDrNLDD/WDrNLDD) 1.5<(LDrNLDD/WDrNLDD)/(LDrPLDD/WDrPLDD)<3.0の式を満たして居ることが望ましい。こうする事に依りゲート容量バランスが取れ、同時にオン電流のバランスも取れるからで有る。
このように構成した各TFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の長さと、オン、オフ電流特性との関係を、図18および図19に示す。まず、図18には、LDD構造のN型のTFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の長さとオン電流との関係を実線L28で示し、LDD構造のP型のTFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の長さとオン電流との関係を実線L29で示してある。ここで低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度はP型及びN型のいずれのTFTでも約2×1018cm-3としてある。TFTのチャネルサイズはW/L=10/10(μm)であり、ソース・ドレイン電圧はVds=5Vであり、ゲート電圧はVgs=10Vである。この検討結果によれば、TFTではP型及びN型のいずれのタイプでも、低濃度ソース・ドレイン領域の長さを短くする方が、この部分における寄生抵抗値が小さくなる分だけ、大きなオン電流を得ることができるといえる。従ってCMOS回路のゲート容量バランスを崩すことなく、同時にオン電流のバランスを確保するという観点からすれば、N型のTFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の長さをP型のTFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の長さに対して約1.5倍から約3倍までの範囲とすればよい。
一方図19にはLDD構造のN型のTFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の長さとオフリーク電流との関係を実線L30で示し、LDD構造のP型のTFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の長さとオフリーク電流との関係を実線L31で示してある。ここで、低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度は、P型及びN型のいずれのTFTでも、約2×1018cm-3としてある。チャネルサイズはW/L=10/10(μm)であり、ソース・ドレイン電圧はVds=5Vであり、ゲート電圧Vgs=0Vである。この検討結果によれば低濃度ソース・ドレイン領域の長さを長くする方が、ドレイン端での電界緩和がより効率的に進み、それ故オフリーク電流を低減することができるといえる。
この様に本発明の液晶表示装置に用いられるアクティブマトリクス基板では各TFTをLDD構造にしてあることに加えて、N型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221の長さをN型の画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121の長さよりも短く設定して有り、その値は約0.8から2μm程度と成って居る。一方、N型の画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121の長さは約1から2.5μm程度で有る。こうした事実を反映して、図20に実線L42で示すようにN型の駆動回路用TFT20のオン電流は十分大きく、その一方で一点鎖線L43で示すようにN型の画素用TFT10のオフリーク電流は窮めて小さく成って居る。しかもP型の駆動回路用TFT30の低濃度ソース・ドレイン領域311、321の長さをN型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221の長さよりも短くして有り、その値は約0.5から1μm程度で有る。これにより図20に点線L44で示すようにP型の駆動回路用TFT30のオン電流がN型の駆動回路用TFT20のオン電流と同等のレベルまで改善されている。それ故、シフトレジスタの動作条件に充分なマージンを確保でき、更にオン電流のアンバランスに起因する誤動作も発生しない。しかもP型のTFTとN型のTFTとの間では素子サイズが略同じであるため、ゲート容量もほぼ同等である。
(第4形態に於けるLDD長)
これまでの説明ではN型の画素用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域の長さを2μmとし、N型の駆動回路用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域の長さを1.5μmとして来たが、かかる長さに限定されることは無い。N型の画素用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域の長さをN型の駆動回路用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域の長さより長く設定さえすれば、画素領域におけるTFTのオフリーク電流の低減と、駆動回路部におけるTFTのオン電流の増大とを併せて実現できる。又N型の駆動回路用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域の長さを0.8〜2.0μmとし、P型の駆動回路用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域の長さを0.5〜1.0μmとして説明して来たが、矢張りかかる長さに限定される物では無い。P型の駆動回路用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域の長さをN型の駆動回路用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域の長さより短く設定しさえすれば、駆動回路におけるオン電流のバランスを向上できる。特に、P型の駆動回路用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域の長さをN型の駆動回路用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域の長さに対して約1/3から約1/1.5倍までの範囲に設定すれば、それらのオン電流を略同等にすることができる。
(本発明の第5形態)
本発明の第5形態では各LDD TFTの特性を低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度及びその構造に依りを最適化する。但し、各TFTの基本的な構成は、第1形態ないし第4形態と同様であるため、図1を参照して説明するとともに、対応する機能を有する部分については同じ符合を付してそれらの詳細な説明を省略する。
本発明の液晶表示装置はアクティブマトリクス基板上に駆動回路部に形成されCMOS回路を構成する第1導電型および第2導電型の駆動回路用薄膜トランジスタと、画素領域に形成された第1導電型の画素用薄膜トランジスタとを少なくとも有する。これら第1導電型の画素用薄膜トランジスタ及び第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタ、第2導電型の駆動回路用薄膜トランジスタはいずれもソース・ドレイン領域のうちゲート電極の端部に対してゲート絶縁膜を介して対峙する部分に低濃度ソース・ドレイン領域を備えるLDD構造を有しており、第1導電型の画素用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の長さは第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の長さより長く設定されて居る。更に第1導電型の画素用薄膜トランジスタにおける低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度は第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタにおける低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度に比較して低く成って居る。
これを図1を用いて具体的に説明する。なおここでは第1導電型をN型とし第2導電型をP型として説明するが、無論この反対で第1導電型をP型とし第2導電型をN型としてとしても良い。
図1ではN型の画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121の長さはN型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221の長さより長く設定してある。例えばN型の画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121の長さが約2μmであるのに対し、N型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221の長さは約1.5μmである。同時にN型の画素用TFT10における低濃度ソース・ドレイン領域111、121の不純物濃度はN型の駆動回路用TFT20における低濃度ソース・ドレイン領域211、221の不純物濃度に比較して低く設定してある。一例としてはN型の画素用TFT10の低濃度ソース・ドレイン領域111、121における不純物濃度を約0.4×1018cm-3とし、N型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221における不純物濃度を約0.7×1018cm-3とする。
更に本発明の液晶表示装置はP型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域311、321の長さがN型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域211、221の長さより短く設定されている。たとえばN型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221の長さが約1.5μmで有れば、P型の駆動回路用TFT30の低濃度ソース領域311の長さ及び低濃度ドレイン領域321の長さは約0.8μmで有る。
このLDD領域の長さの関係は、N型の駆動回路用TFT20で好ましくは低濃度ソース・ドレイン領域211、221の長さを約0.8から2μmに設定し、P型の駆動回路用TFT30では低濃度ソース・ドレイン領域311、321の長さを約0.5から1μmに設定する。更にこの条件下でN型の駆動回路用TFT30における低濃度ソース・ドレイン領域311、321の長さをP型の駆動回路用TFT20における低濃度ソース・ドレイン領域211、221の長さに対して約1.5倍から約3倍までの範囲に設定するば、理想的で有る。又本発明ではP型の駆動回路用TFT30の低濃度ソース・ドレイン領域311、321における不純物濃度を、N型の駆動回路用TFT20の低濃度ソース・ドレイン領域211、221における不純物濃度に対して高く設定してある。たとえば、N型の駆動回路用TFT20では、低濃度ソース・ドレイン領域211、221の不純物濃度を約0.7×1018cm-3に設定してあるのに対して、P型の駆動回路用TFT30では、低濃度ソース・ドレイン領域311、321の不純物濃度を約5.0×1018cm-3に設定してある。すなわち、P型の駆動回路用TFT30における低濃度ソース・ドレイン領域311、321の不純物濃度をN型の駆動回路用TFT20における低濃度ソース・ドレイン領域211、221の不純物濃度に対して約6倍から約8倍までの範囲に設定してある。なお第5形態のCMOS TFTでも第1形態の(本発明に係わるレイアウト)の章で説明した事柄が適応される。即ちLDrN 、WDrN 、LDrP 、WDrP が以下の式 0.8≦(LDrN ・WDrN )/(LDrP ・WDrP )≦1.25を満たす範囲内であれば、ゲート容量のバランスを確保できる。更にN型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の長さおよび幅をそれぞれLDrNLDD、WDrNLDDとし、P型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の長さおよび幅をそれぞれLDrPLDD、WDrPLDDとしたときに、LDrNLDD、WDrNLDD、LDrPLDD、WDrPLDDが 1.5<(LDrNLDD/WDrNLDD)/(LDrPLDD/WDrPLDD)<3.0の式を満たして居ることが望ましい。こうする事に依りオン抵抗を揃え、同時にゲート容量バランスが取れるからで有る。
なお第5形態に於けるLDD長の関係は(第4形態に於けるLDD長)に準ずる。又LDD領域に於ける不純物濃度の関係は(第2形態に係わる不純物濃度)に準ずる。
(本発明の第6形態)
本発明の第6形態はN型およびP型の薄膜トランジスタによりCMOS回路が構成された薄膜半導体装置に関する。ここでは図11に示す様にN型の薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の長さおよび幅をそれぞれLDrNLDD、WDrNLDDとし、P型の薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域の長さおよび幅をそれぞれLDrPLDD、WDrPLDDとしたときに、LDrNLDD、WDrNLDD、LDrPLDD、WDrPLDDは、以下の式
(LDrNLDD/WDrNLDD)≧(LDrPLDD/WDrPLDD)を満たして居る。更に本発明は斯様な薄膜半導体装置が形成された基板を構成要素の一部とする電子機器で有る。
これ迄説明して来た様にLDD TFTのオン抵抗を決めるのは移動度などに代表されるチャンネル抵抗とLDD領域に起因するLDD抵抗の両者で有る。一方P型の移動度は通常N型の移動度よりも低いから必然的にP型TFTのチャンネル抵抗はN型TFTのチャンネル抵抗よりも高く成って仕舞う。そこで本発明ではこのチャンネル抵抗の相違をLDD抵抗の相違にて相殺するので有る。P型の駆動回路用TFT30ではこうして低濃度ソース・ドレイン領域311、321における抵抗値がN型よりも小さくなる為、P型TFTのオン電流とN型TFTのオン電流をチャンネルサイズを両者の間でほぼ同等とした儘揃える事が出来るので有る。ゲート容量バランスを取るとの視点からはLDrN 、WDrN 、LDrP 、WDrP が
0.8≦(LDrN ・WDrN )/(LDrP ・WDrP )≦1.25の式を満たして居る事が望まれる。特にWDrN=WDrPで有ったり、LDrN=LDrPで有れば複雑な回路のレイアウトも容易と成り、より高機能を備えたCMOS薄膜半導体装置と成る。従ってこの様な薄膜半導体装置を利用して各種回路が形成され、高性能化した携帯様コンピューターなどの電子機器が実現されるので有る。なお第6形態の発明ではLDD領域の不純物濃度になんの制限も設けられない。即ち第1形態の条件を組み合わせる事も可能で有るし、或いはLDD領域の不純物濃度をチャンネル形成領域の不純物濃度と同一とした所謂オフセット構造と組み合わせる事も可能で有る。
上記と同様の思想はLDD TFTを用いた液晶表示装置に対しても適応する事が出来る。即ち本発明の液晶表示装置はアクティブマトリクス基板上に駆動回路部でCMOS回路を構成する第1導電型および第2導電型の駆動回路用薄膜トランジスタと、画素領域に形成された第1導電型の画素用薄膜トランジスタとを有し、駆動回路用薄膜トランジスタおよび画素用薄膜トランジスタはソース・ドレイン領域のうち、ゲート電極の端部に対してゲート絶縁膜を介して対峙する部分に低濃度ソース・ドレイン領域を備えるLDD構造と成って居る。この際第1導電型の画素用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域111、121の長さおよび幅をそれぞれLPiILDD、WPiILDDとし、第1導電型の駆動回路用薄膜トランジスタの低濃度ソース・ドレイン領域211、221の長さおよび幅をそれぞれLDrILDD、WDrILDDとすると、LPiILDD、WPiILDD、LDrILDD、WDrILDDは、
(LPiILDD/WPiILDD)≧(LDrILDD/WDrILDD)の式を満たしている。
このように構成すると、N型の駆動回路用TFT20では低濃度ソース・ドレイン領域211、221における抵抗値が小さくなる分だけ、大きなオン電流を得ることができる。一方、N型の画素用TFT10では、低濃度ソース・ドレイン領域111、121に電界緩和が進む為、オフリーク電流を小さくすることができるので有る。
(本願発明の構成)
第1形態ないし第3形態で説明したように、各TFTにおいて低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度を最適化することによってTFTの電気的特性を向上する発明と、第4形態及第6形態で説明したように、各TFTにおいて低濃度ソース・ドレイン領域のサイズを最適化することによってTFTの電気的特性を向上する発明とについては、それぞれ個別に用いてもよいが、各発明形態に記載の構成をそれぞれ組み合わせてもよい。例えば第3形態と第6形態とを組み合わせれば、各領域に対する不純物導入量についての制約が有るが故各TFTにおいて低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度を変えただけでは達成できないような駆動回路用TFT同士のオン電流のバランス確保をも各TFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域のサイズを最適化することによって達成することができる。
又いずれの発明形態に於いても1画素あたり1つのTFTを介して画素への書き込みを行う構成になっているが、本発明のTFTを用いたCMOS回路を介して画素への書き込みを行ってもよい。
(本発明の液晶表示装置を用いた電子機器)
本発明により得られた液晶表示装置をフルカラーの携帯型パーソナルコンピューター(ノートPC)の筐体に組み込んだ。クロック生成回路、シフトレジスター回路、NORゲート、デジタル映像信号線、ラッチ回路1、ラッチパルス線、ラッチ回路2、リセット線1、ANDゲート、規準電位線、リセット線2、容量分割に依る6ビットD/Aコンバーター、CMOSアナログスウィッチなどから成る6ビットデジダルデータドライバーをアクティブマトリクス基板が内蔵して居り、これら高なの回路も総て本発明のCMOS薄膜半導体装置から出来上がっている。この液晶表示装置ではコンピューターからのデジタル映像信号を直接液晶表示装置に入力出来る為、外部回路構成が簡素と化し、同時に消費電力も窮めて小さく成った。加えて表示ぶに用いられているPi TFTも高性能で有る為、このノートPCは非常に美しい表示画面を有する良好な電子機器で有る。これにより長時間使用可能で、且つ綺麗な表示画面を有する超小型軽量電子機器が作成された。
以上説明したように、本発明の第1形態に係る薄膜半導体装置では、CMOS回路が構成する前記N型およびP型のTFTは、LDD構造を有しているとともに、P型のTFTにおける低濃度・ドレイン領域の不純物濃度は、N型のTFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度に比較して高いことを特徴とする。従って、本発明によれば、ゲート電極の端部に対して対峙する部分が低濃度ソース領域および低濃度ドレイン領域になっているため、ドレイン端における電界強度が緩和される。このためS/D耐圧やS/G耐圧が高くなり、TFTの短チャネル長化等の微細化が可能である。これに依りオン電流は増大し、駆動回路の高速動作が可能となる。しかも短チャネル長化によってゲート容量が小さくなるので、この点からも、駆動回路の高速動作が可能となる。また、駆動回路では、TFTのオフリーク電流が小さいので、誤動作が発生しにくいとともに、CMOS回路の消費電流も小さく成る。さらに、P型のTFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度はN型のTFTのそれに比して高いため、各TFT間で素子サイズをほぼ同一、或いは同一とした儘、N型およびP型のTFT間におけるオン電流特性を同等にすることができ、ゲート容量のバランスも崩れず、それ故回路の誤動作も生じにくい。又、ドレイン端での電界緩和が進む結果回路の信頼性も著しく向上するので有る。
本発明の第2形態に係る液晶表示装置では、各TFTがLDD構造を有しているとともに、第1導電型の画素用TFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度は、第1導電型の駆動回路用TFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度に比較して低いことを特徴とする。従って、本発明では、LDD構造による効果に加えて、画素用TFTのオフ電流の一層の低減と、駆動回路用TFTのオン電流の一層の増大とを併せて達成できる。それ故、表示むらなどが発生せず、かつ、駆動回路部の動作速度がさらに高い液晶表示装置を実現できる。
本発明の第3形態では、各TFTがLDD構造を有しているとともに、画素用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域は、第1導電型および第2導電型の不純物が導入されていることにより、第1導電型の駆動回路用TFTの低濃度ソース・ドレイン領域よりも実質的に低濃度の第1導電型領域になっていることを特徴とする。従って、本発明によれば、第1導電型および第2導電型の駆動回路用TFTの製造工程を援用しながら、第1導電型の駆動回路用TFTとは異なる電気的特性をもつ画素用TFTを形成できる。それ故、製造工程を増やすことなく、TFTの電気的特性を画素領域および駆動回路部毎に最適化することによって、表示むらなどが発生しにくく、かつ、駆動回路部の動作速度が高いアクティブマトリクス基板を製造することができる。
本発明の第4及び第6形態に係る液晶表示装置では、各TFTがLDD構造を有しているとともに、各TFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の面積を最適化することを特徴とする。従って、本発明によれば、LDD構造による効果に加えて、画素用TFTのオフ電流の一層の低減と、駆動回路用TFTのオン電流の一層の増大、駆動回路用TFTのオン電流やゲート容量バランスの確保などを達成できる。それ故、表示むらなどが発生せず、かつ、駆動回路部の動作速度がさらに高い液晶表示装置を実現できる。
本発明の第5形態に係る液晶表示装置では、各TFTがLDD構造を有しているとともに、各TFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の面積を最適化し更にLDD領域の不純物濃度をも最適化することを特徴とする。従って、本発明によれば、LDD構造による効果に加えて、画素用TFTのオフ電流の一層の低減と、駆動回路用TFTのオン電流の一層の増大、駆動回路用TFTのオン電流やゲート容量バランスの確保などを達成できる。それ故、表示むらなどが発生せず、かつ、駆動回路部の動作速度がさらに高い液晶表示装置を実現できる。
本発明係わる薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリクス基板を模式的に示す断面図である。
(a)は、図1に示す薄膜トランジスタを用いた液晶表示装置のアクティブマトリクス基板の説明図、(b)は、その駆動回路に用いたCMOS回路の説明図である。
(a)、(b)は、N型およびP型のTFTにおけるドレイン耐圧のチャネル長依存性を示すグラフ図である。
従来のN型およびP型の薄膜トランジスタのオン・オフリーク電流特性を比較して示すグラフ図である。
本発明に係る液晶表示装置において、アクティブマトリクス上に形成した各TFTのオン・オフリーク電流特性を比較して示すグラフ図である。
本発明に係るアクティブマトリクス基板の製造方法のうち、ゲート電極の形成工程までを示す工程断面図である。
本発明に係るアクティブマトリクス基板の製造方法のうち、ゲート電極の形成工程以降の工程を示す工程断面図である。
本発明に係るアクティブマトリクス基板の別の製造方法のうち、ゲート電極の形成工程以降の工程を示す工程断面図である。
本発明に係る液晶表示装置において、アクティブマトリクス上に形成した各TFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度とオン電流特性との関係を示すグラフ図である。
本発明に係る液晶表示装置において、アクティブマトリクス上に形成した各TFTにおける低濃度ソース・ドレイン領域の不純物濃度とオフリーク電流特性との関係を示すグラフ図である。
本発明に係る液晶表示装置において、N型およびP型の薄膜トランジスタにおけるサイズ面での構成を説明するための説明図である。
本発明に係る液晶表示装置において、アクティブマトリクス上に形成した各TFTのオン・オフリーク電流特性を比較して示すグラフである。
本発明に係るアクティブマトリクス基板の製造方法のうち、ゲート電極の形成工程以降の工程を示す工程断面図である。
本発明に係るアクティブマトリクス基板の別の製造方法のうち、ゲート電極の形成工程以降の工程を示す工程断面図である。
本発明に係るアクティブマトリクス基板の製造方法を示す工程断面図である。
本発明に係るアクティブマトリクス基板の別の製造方法を示す工程断面図である。
本発明に係るアクティブマトリクス基板の各TFTの低濃度ソース・ドレイン領域への不純物導入条件を説明するためのグラフである。
本発明に係る液晶表示装置において、アクティブマトリクス基板上に構成された各TFTのオン電流特性を示すグラフである。
本発明に係る液晶表示装置において、アクティブマトリクス基板上に構成された各TFTのオフリーク電流特性を示すグラフである。
本発明に係る液晶表示装置において、アクティブマトリクス上に形成した各TFTのオン・オフリーク電流特性を比較して示すグラフである。
符号の説明
1・・・アクティブマトリクス基板
2・・・絶縁基板
10・・・N型の画素用TFT
20・・・N型の駆動回路用TFT
30・・・P型の駆動回路用TFT
n1、n2・・・N型のTFT
p1、p2・・・P型のTFT
11、21、31・・・ソース領域
12、22、32・・・ドレイン領域
13、23、33・・・チャネル形成領域
14、24、34・・・ゲート絶縁膜
15、25、35・・・ゲート電極
82・・・データドライバ部(駆動回路)
83・・・走査ドライバ部(駆動回路)
84、88・・・シフトレジスタ
85、89・・・レベルシフタ
90・・・信号線
91・・・走査線
92・・・画素用TFT
94・・・液晶セルの容量
111、121、211、221、311、321・・・低濃度ソース・ドレイン領域
112、122、212、222、312、322・・・高濃度ソース・ドレイン領域