JP3751958B2 - 洩れ検査装置の校正方法、洩れ検査装置 - Google Patents
洩れ検査装置の校正方法、洩れ検査装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3751958B2 JP3751958B2 JP2003182206A JP2003182206A JP3751958B2 JP 3751958 B2 JP3751958 B2 JP 3751958B2 JP 2003182206 A JP2003182206 A JP 2003182206A JP 2003182206 A JP2003182206 A JP 2003182206A JP 3751958 B2 JP3751958 B2 JP 3751958B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- temperature
- value
- inspected
- characteristic curve
- drift
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Examining Or Testing Airtightness (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は各種の容器或はガス器具、エンジンのシリンダブロック等の洩れの有無を検査する洩れ検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
洩れ検査装置の特にエアーリークテスタと呼ばれている検査装置には、
イ、検査体に空気圧を封入し、その空気圧の変化を監視し、空気圧が規定値より低下するとその被検査体は洩れが有ると判定するゲージ圧方式と呼ばれる方式と、
ロ、被検査体と基準タンクの双方に空気圧を封入し、両者間に差圧が発生するか否かにより洩れの有無を判定する差圧式と、
が存在する。
【0003】
ゲージ圧式は構造が簡単である反面、検出感度が低いため、現況ではあまり実用されてなく、一般には差圧式の洩れ検査装置が広く実用されている。
エアーリークテスタの最大の欠点は空気圧を利用することに起因する種々の弊害が生じる点である。つまり、空気は被検査体の温度、或は被検査体に接触する治具等の温度、加圧した空気の断熱変化による温度の影響を受け、洩れが無いのに洩れのあるような圧力変動(これをドリフトと称している)を来し、洩れの有無の判定を難しいものとしている。
【0004】
このため、本出願人は従来より各種の洩れ検査方法及び検査装置のドリフト補正に関して各種の提案を行なってきた。(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
図4に従来から用いられている差圧検出型の洩れ検査装置の概略の構成を示す。この形式の洩れ検査装置は、例えばコンプレッサのような空圧源10と、この空圧源10から供給される圧搾空気圧を調整する調圧弁11と、調圧弁11で調整された空気圧の圧力値を測定して表示する圧力計12と、3方電磁弁13と、電磁弁14A、14Bと、被検査体17の開口部分を塞いで被検査体17に圧搾空気圧を印加するシール治具16と、基準タンク18と、被検査体17と基準タンク18との間の差圧を測定する差圧検出器15と、シール治具16と被検査体17との間の温度と温度差又は外気温度と被検査体17との間の温度と温度差を測定する温度センサ16A、17Aと、差圧検出器15の出力信号を増幅する可変利得増幅器19と、この可変利得増幅器19の出力信号を受けて洩れの有無を判定する判定手段20と、判定手段20の判定結果を表示する表示器21とによって構成される。
【0005】
非検査モードでは3方電磁弁13がA−B間が導通した状態で電磁弁14Aと14Bが閉じた状態に維持され、その状態で調圧弁11により空圧源10からの空気圧が調整されて圧力計12に所望のテスト圧が表示される。
検査モードでは電磁弁14A、14Bが開の状態に制御され、電磁弁14Aと、14Bを通じて被検査体17と基準タンク18に圧搾空気が印加される。この圧搾空気の印加状態を図5に示すように加圧期間T1と称している。
【0006】
加圧期間T1が経過(T1=数秒)すると電磁弁14A、14Bが閉じられ、一定期間の安定期間が設けられる。この安定期間を一般に平衡期間T2と称している。平衡期間T2の期間に差圧検出器15が判定値NGを超える大きな差圧検出信号ΔDS(図5参照)を出力した場合は、判定手段20はそのときシール治具16に接続されている被検査体17は大きな洩れが有ると判定し、表示器21にその判定結果を表示し、検査を終了する。
【0007】
平衡期間T2の期間内で差圧検出値が判定値NGを超えなかった場合は「大きな洩れが無い」と判定され、差圧検出器15の検出信号は強制的にゼロリセットされる。ゼロリセット後、可変利得増幅器19の利得は高い利得に切り替えられ、検査期間T3に入る。
検査期間T3で差圧検出器15の検出信号が判定値NGを超えなかった場合は「微少な洩れ無し」と判定される。もし検査期間T3の期間内に差圧検出信号が判定値NGを超えると、この場合は「微少な洩れが有る」と判定する。
【0008】
検査期間T3が終了すると3方電磁弁13はB−C間が導通状態に制御され、また電磁弁14A、14Bが開の状態に制御されて被検査体17及び基準タンク18内の圧縮空気を大気に排気し、初期状態に戻される。
ところで、この種の差圧検出型の洩れ検査装置では被検査体17の温度変化、周囲温度の変化等の外乱要因により洩れが無いのに差圧検出信号を発生する現象が見られる。この現象を一般にドリフトと称している。ドリフトの発生により「洩れが無いのに洩れ有り」と判定したり、「洩れが有るのに洩れ無し」と判定する不都合が生じる。
【0009】
この不都合を解消するためにドリフト補正が施される。図6乃至図8を用いて従来のドリフト補正の方法を説明する。図6に示す曲線P1は差圧検出器15が出力する差圧検出信号を示す。この差圧検出信号には曲線P2で示すドリフト量と、曲線P3で示す洩れ量とを含んでいる。
洩れによって発生する差圧は平衡期間T2の終了時点でゼロリセットされ、検査期間T3の開始時点からある一定の増加率で上昇する直線で表される。これに対し、空気を加圧したことによる断熱変化によるドリフト量は検査期間T3の開始直後は内部空気温度と被検査体の温度差のため指数関数的に上昇するが、終局的には飽和し、一定値を維持する。
【0010】
従って、このドリフトが一定値に収束した状態で洩れ量を測定すれば真の洩れ量を測定することができる。つまり、検査期間T3を終了する時点で差圧値D1を測定しておき、その時点から更に差圧測定状態を維持し、所定の時間、例えば数10秒間程度経過した時点で差圧値D2を測定し、その測定時点から検査期間T3と同じ期間T3(数秒程度)を経過後に再び差圧値D3を測定する。この測定によりD3−D2は洩れによる圧力変化値である。よってD3−D2の減算結果が判定値NGより大きいか小さいかによって洩れの有無を判定すればドリフトに影響されずに正しい判定を下すことができる。
【0011】
然し乍ら、この検査方法を採った場合には検査時間が数10秒ずつ必要であることから、実際の検査に利用することはできない。このため、一般にはΔD3=D3−D2を演算し、この洩れ量ΔD3を第1測定値D1から減算すると残りはドリフト値となる。つまり、ドリフト値Dは、
D=D1−ΔD3 ………(1)
で求められる。このドリフト値Dを記録しておくことにより次回以後の検査では第1測定値D1からドリフト値Dを除去すれば短時間にドリフト値を除去した洩れ量を算出することができ、正しい判定を行なうことができる。尚、測定値D1、D2及びD3を測定し、ドリフト値Dを求める作業を一般にマスタリングと称している。
【0012】
【特許文献1】
特開2001−50854号公報
【特許文献2】
特開2002−22592号公報
【特許文献3】
特開2003−106923号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記した(1)式で得られたドリフト値Dを第1測定値D1から除去すれば正しいドリフト補正を施すことができると説明したが、現実には被検査体17は常温とは限らないため、不都合が発生することがある。以下にその理由を説明する。図7は(1)式で求めたドリフト量Dを第1測定値D1から除去すれば正しくドリフト補正を行なうことができる状況を示す。つまり、図7に示す横軸は環境温度として測定するシール治具16と被検査体17との間の温度差、縦軸は差圧値を示す。X1は温度差毎に測定した第1測定値D1−1、D1−2、D1−3…をプロットして求めた第1特性曲線、X2は各温度差毎に測定した第2測定値ΔD3−1、ΔD3−2、ΔD3−3をプロットして求めた第2特性曲線を示す。尚、X1とX2を測定する際には洩れの無い被検査体を用いる。洩れの無い被検査体を用いることにより温度差がゼロにおいて断熱変化のドリフト量がゼロになるため第2特性曲線X2は原点を通る曲線を得ることができる。また、洩れの無い被検査体を用いてマスタリングを行なっているにも係わらず、第2特性曲線X2の傾きがゼロにならない理由は被検査体17とシール治具16との間の温度差により、被検査体17とシール治具16との間で熱交換が発生し、この熱交換により被検査体17内の空気に温度変化を与えてドリフトが発生するからである。
【0014】
図7に示すように、シール治具16と被検査体17との間の温度差がゼロ(外乱要因が無い状態)を中心に温度差を或る範囲に限れば第1特性曲線X1と第2特性曲線X2はほぼ直線と見なすことができる。更に、第1特性曲線X1と第2特性曲線X2がほぼ平行している場合にはどの温度差において検査を行っても、断熱変化によるドリフト量は一定であるから第1特性曲線X1から正しいドリフト補正を施すことができる。
【0015】
これに対し、図8に示すように断熱変化によるドリフトの温度特性のために第1測定値D1の第1特性曲線X1と第2測定値ΔD3の第2特性曲線X2の傾斜が異なっている場合には、各温度差毎に断熱変化のドリフト量がDA、DB、DC、のように異なる値をとるため、ドリフト補正量を求めた温度の範囲以外の温度では正しいドリフト補正を施すことができないため、環境温度が変化する都度マスタリングを行なわなくてはならない不都合が生じる。
【0016】
このような場合、被検査体とシール治具又は外気温度の温度差毎にマスタリングを実行しドリフト補正値を予め求めて記録しておくことも考えられるが、その作業は膨大であり実現は困難である。特に、被検査体の各種毎にその作業を行わなくてはならないため、更にその実現は困難である。
この発明の目的は図8に示したように、第1測定値D1の第1特性曲線X1と第2測定値ΔD3の第2特性曲線X2の傾斜が異なる場合でも、ドリフト校正を行なった温度以外の温度でも正しく第1特性曲線X1の特性を修正することができ修正されたドリフト特性曲線から正しい、洩れ量を求めることができる洩れ検査装置の校正方法及びこの校正方法を用いて動作する洩れ検査装置を提供しようとするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
この発明の請求項1では被検査体と基準タンクとの双方に同一の空気圧を封入し、封入後から所定の時間が経過する間に被検査体と基準タンクとの間に差圧が発生するか否かを計測して被検査体に洩れが有るか否かを判定する洩れ検査装置の校正方法において、校正モードで洩れのない乾燥された被検査体の開口部を基準環境温度に等しい温度のシール治具で閉塞し、この閉塞状態で被検査体と基準タンクに空気圧を封入し、空気圧の封入後の所定時間が経過する間に被検査体と基準タンクとの間に発生する差圧値を第1測定値D1として取得し、第1測定値D1を取得した後、所定時間より長い時間経過した時点から所定時間にほぼ等しい時間が経過する間に被検査体と基準タンクとの間に発生する差圧値を第2測定値ΔD3として取得するドリフト値取得方法において、基準環境温度と異なる温度に設定された被検査体と基準環境温度にほぼ等しい温度に維持されたシール治具を使って第1測定値と第2測定値を取得することを被検査体の温度を変更して複数の温度差毎に実行し、各温度差対第1測定値D1の第1特性曲線X1と、各温度差対第2測定値ΔD3の第2特性曲線X2を記録させ、これら第1特性曲線X1と、第2特性曲線X2の差から第1特性曲線X1に含まれる空気圧印加直後に発生する空気の断熱変化によって発生するドリフト値の温度特性を求め、検査モードでこのドリフト値の温度特性を利用して校正モードにおいて設定した基準環境温度以外の任意の環境温度におけるドリフト補正値を求める洩れ検査装置の校正方法を提供する。
【0018】
この発明の請求項2では請求項1記載の洩れ検査装置の校正方法において、被検査体とシール治具の温度が共に基準環境温度にある場合の第1測定値D1を基準温度ドリフト値A1、上記基準環境温度から被検査体との温度差がΔT変化した場合の第1特性曲線及び第2特性曲線の傾きをa1/ΔT、a2/ΔT、検査時における被検査体温度と校正時の基準環境温度差がΔT1、シール治具温度と被検査体との間の温度差がΔT2である場合、検査毎にドリフト補正値A2をA2=A1+(a1−a2)ΔT1/ΔT+a1・ΔT2/ΔTで算出し、このドリフト補正値A2を検査時に取得した第1測定値D1から減算し、この減算結果と判定値とを比較して洩れの有無を判定する洩れ検査装置の校正方法を提供する。
【0019】
この発明の請求項3では被検査体と基準タンクとの双方に空気圧を封入し、封入後から所定時間が経過する間に被検査体と基準タンクとの間に差圧が発生するか否かにより被検査体の洩れの有無を判定する洩れ検査装置において、被検査体温度を測定する被検査体温度測定手段と、被検査体と環境温度との温度差を測定する温度差測定手段と、校正モードにおいて請求項1記載の校正方法で取得する基準環境温度における第1測定値D1と、第2測定値ΔD3とで求められる第1特性曲線及び第2特性曲線とを記録する第1特性曲線記録手段及び第2特性曲線記録手段と、これら第1特性曲線記録手段及び第2特性曲線記録手段に記録した第1特性曲線及び第2特性曲線とから、被検査体とシール治具の温度が共に基準温度である場合の第1測定値D1を基準温度ドリフト値A1として取り出す基準温度ドリフト値取得手段と、第1特性曲線及び第2特性曲線とから温度差ΔTにおける第1特性曲線及び第2特性曲線の傾きa1/ΔT及びa2/ΔTを求める断熱特性算出手段と、洩れ検査時の被検査体温度と校正モード時の基準環境温度との差をΔT1、洩れ検査時のシール治具温度と被検査体の温度差をΔT2とした場合、ドリフト補正値A2を
A2=A1+(a1−a2)ΔT1/ΔT+a1・ΔT2/ΔT
で算出するドリフト補正値算出手段と、このドリフト補正値算出手段で算出したドリフト補正値A2を洩れ検査時に取得した第1測定値D1から減算する減算手段と、この減算手段で減算した減算結果と判定値とを比較し、洩れの有無を判定する判定手段とによって構成した洩れ検査装置を提供する。
【0020】
【発明の実施の形態】
被検査体に空気圧を印加した直後に発生する空気の断熱変化によって発生するドリフトの温度特性を把握することにより、信頼性の高い洩れ検査を手間を掛けずに実現した。
図1にこの発明による洩れ検査装置の一実施例を示す。図4と対応する部分には同一符号を付し、その重複説明は省略する。この発明の特徴は可変利得増幅器19と判定手段20の間に設けるドリフト補正装置30の構成を特徴とするものである。この発明で特徴とするドリフト補正装置30は環境温度測定手段31と、温度差測定手段32と、第1特性曲線記録手段33と、第2特性曲線記録手段34と、基準温度ドリフト取得手段35と、断熱特性算出手段36と、ドリフト値算出手段37と、減算手段38とによって構成される。
【0021】
環境温度測定手段31はシール治具16の温度を測定する温度センサ16Aの測定値を環境温度(外気温度)として取得する。温度差測定手段32はシール治具16の温度と被検査体17との温度差を測定する。このためにはシール治具16の温度を測定する温度センサ16Aと被検査体17の温度を測定する温度センサ17Aの測定値を取り込み、その差の値を出力する。
第1特性曲線記録手段33及び第2特性曲線記録手段34は図6で説明したマスタリングによって取得される第1測定値D1−1、D1−2、D1−3…と第2測定値ΔD3−1、ΔD3−2、ΔD3−3…を記録し、これら第1測定値D1−1、D1−2D、D1−3…と第2測定値ΔD3−1、ΔD3−2、ΔD3−3…をそれぞれ例えば補間演算等によりプロットして第1特性曲線X1と第2特性曲線X2を求め、第1特性曲線X1と第2特性曲線X2を記録する。
【0022】
基準温度ドリフト取得手段35は第1特性曲線記録手段33に第1特性曲線X1として記録した複数の第1測定値D1の中の環境温度と被検査体17の温度差がゼロの状態に相当する第1測定値D1を基準温度ドリフト値A1として取得し、その取得値をドリフト値算出手段37に出力する。
断熱特性算出手段36は第1特性曲線記録手段33と第2特性曲線記録手段34から第1特性曲線X1と、第2特性曲線X2の差を算出し、その算出結果をドリフト値算出手段37に入力する。
【0023】
ドリフト値算出手段37では環境温度測定手段31から与えられる環境温度と、温度差測定手段32から与えられる環境温度と被検査体17との間の温度差と、基準温度ドリフト値取得手段35から与えられる基準温度ドリフト値A1と、断熱特性算出手段36から与えられる傾きa1/ΔTとa2/ΔTを用いて温度センサ17Aから与えられる被検査体温度におけるドリフト補正値A2を(2)式で演算する。
【0024】
A2=A1+(a1−a2)ΔT1/ΔT+a1・ΔT2/ΔT…(2)
ここでΔT1は校正モードで定めた基準環境温度と検査モードの各検査毎に測定した被検査体温度との差の温度を表わす。つまり校正モードでマスクリングを行なった際にシール治具16と被検査体17との間の温度差がゼロの状態の環境温度を基準環境温度と定め、この基準環境温度を環境温度測定手段31に記録しておく、検査モードでは洩れ検査を行なう毎に被検査体の温度を測定し、その測定した温度と基準環境温度との差をΔT1としてドリフト値算出手段37に出力する。
【0025】
ΔT2は検査モードで各被検査体の検査毎にシール治具16の温度と被検査体17の温度差を測定し、その温度差をΔT2として被検査体とシール治具の温度が異なるドリフト値を求めドリフト値算出手段37に入力する。
被検査体17の洩れ検査を行なう毎に(2)式を演算し、ドリフト値A2を求める。(2)式で求めたドリフト値A2は減算手段38に入力され、この減算手段38で測定値から差し引かれ、測定値からドリフト分が除去される。判定手段20ではドリフト分が除去された真の洩れによる差圧値が判定値NGと比較され、差圧値が判定値NGより小さければ洩れ無し、大きければ洩れ有りと判定される。
【0026】
(2)式で求めたドリフト値は被検査体17に空気圧を封入した時点で発生する空気の断熱変化に伴なって発生するドリフトの温度特性に従って補正されており、校正モードでマスタリングを行なった基準環境温度以外の環境温度下でも正しいドリフト補正値を求めることができる。以下にその理由を明らかにするために、(2)式の導出過程を説明する。
図2に示すグラフは洩れの無い乾燥した被検査体17を用いて、被検査体17の温度を変化させ、マスタリングにより第1測定値D1の第1特性曲線X1と、第2測定値ΔD3の第2特性曲線X2を採取し、同一のグラフに表わしたものである。
【0027】
図2では25℃を基準環境温度としている。従って、被検査体17とシール治具16が共に25℃で温度差が無い状態とされ、この温度差がゼロの状態を基準環境温度とし、25℃における断熱変化によるドリフト値(上述では基準温度ドリフトと称した)をA1としている。測定値D1に含まれる断熱変化のみの傾きをb1/ΔTと仮定したとき、
b1/ΔT=a1/ΔT−a2/ΔT ………(3)
断熱変化の傾きがゼロであれば当然、
a1=a2
である。
【0028】
また被検査体17とシール治具16の熱量移動がなければb1=a1である。
次に、環境温度が25℃から25℃+ΔT1(図2参照)に変化したとき、すなわち、被検査体17の温度もシール治具16も25℃+ΔT1のときの断熱変化によるドリフト成分を求める。b1はΔTの温度変化があったときの断熱変化によるドリフトの増加分とすると、
A1+(b1/ΔT)ΔT1=A1+(a1−a2)ΔT1/ΔT…(4)
(4)式の右辺第2項が被検査体17とシール治具16の温度が同時に同じ温度25℃+ΔT1に変化したことによる断熱変化によるドリフト増加分である。
【0029】
次に25℃+ΔT1の温度(シール治具温度)を基準としたとき、被検査体17の温度が25℃+ΔT1+ΔT2(図2参照)における第1測定値D1のドリフト成分A2は、
A2=A1+(a1−a2)ΔT1/ΔT+a1・ΔT2/ΔT
となり、上記した(2)式が得られる。
シール治具16の温度が被検査体17の温度の影響を受ける場合、ΔT1は校正時の基準環境温度(この例では25℃)と、検査モード時の被検査体温度との差である。ΔT2は被検査体17の温度とシール治具16との温度差である。
【0030】
マスタリングによる特性曲線の修正
第1特性曲線X1と第2特性曲線X2が線形である範囲内において、検査時にマスタリングで特性曲線X1の特性(主に基準温度ドリフト値A1)を修正しなくても、任意の被検査体17の温度、シール治具16の温度において(2)式でドリフト修正量A2を求めることができるが、シール治具16と被検査体17の任意の温度においてマスタリングにより特性曲線X1を修正することもできる。このことにより広い温度範囲において特性曲線X1を利用することができる。以下にその理由を説明する。
【0031】
任意のシール治具温度TXにおいて、被検査体17の温度がTX+ΔTXであったとき、マスタリングにより第1測定値D1の差圧測定値がAXであり、第2測定値ΔD3の値がa2xであったとすると、
図2において、第2測定値ΔD3の温度差ΔTXのとき、差圧測定値がa2x′であるから、洩れによる差圧δXは
δX=a2x−a2x′ ………(5)
第1測定値D1の測定値AXには検査モードで求めた洩れ成分と、断熱変化による成分と、温度差ΔTXによるドリフト成分(熱量移動によるドリフト成分)が含まれている。温度TX+ΔTXのときの断熱変化のみのドリフト成分AX′は、
AX′=AX−(a2x−a2x′)−a2x′=AX−a2x……(6)
即ち修正すべき断熱変化のドリフト値は、第1測定値D1の測定値から第2測定値ΔD3の値を差し引いた値である。(但し、第1測定値D1と第2測定値ΔD3を測定する時点で被検査体17とシール治具16の温度差が変わらないと仮定した)。この場合、断熱変化の温度ドリフトAX′は被検査体17とシール治具16の温度が等しいときのTX+ΔTXのドリフト値に等しい。
【0032】
(2)式は、A1がAX′に修正され、基準環境温度がTX+ΔTXに変更され、特性曲線の傾きは変わらない。第1特性曲線X1と第2特性曲線X2からグラフ化することができる。図3に点線で示す曲線Cが断熱変化の温度特性を表している。断熱変化の温度特性がグラフ化できれば、環境温度がどの程度変化したらマスタリングによりドリフト特性曲線を修正したらよいか判断することができる。つまり、断熱変化の温度特性は基準環境温度T0においてA1を通る曲線で表される。これが直線で表される温度範囲において断熱変化の温度特性を修正することができる。
【0033】
断熱変化の温度特性は(第1特性曲線X1−第2特性曲線X2)で求めることができる。被検査体17とシール治具16の温度差によるドリフト補正量は(2)式の第三項がこれに相当する。図3では断熱変化の温度特性の横軸が被検査体17の温度と基準環境温度との差で表しているが、これは第1特性曲線X1と第2特性曲線X2のグラフを合せて描いているからであり、断熱変化の温度特性に限れば、横軸は基準環境温度と検査時の環境温度との差が正しい。断熱変化の温度特性の修正は環境温度変化に対して行なうからである。被検査体とシール治具間が断熱されているとき、X2の特性の傾きはゼロになるので、X1の特性曲線は断熱変化の温度特性曲線を表わしている。この場合のドリフト補正量A2は被検査体の温度と校正時基準環境温度との温度差よりX1の特性曲線から求めることができる。
【0034】
【発明の効果】
この発明によれば校正モードで基準環境温度と被検査体との温度差毎に取得した第1測定値D1と第2測定値ΔD3で求められる第1特性曲線X1と第2測定曲線X2から、その差により空気圧の断熱変化で発生するドリフトの温度特性を求めることができる。従って校正時の基準環境温度以外の任意の温度で洩れ検査を行なっても、マスタリングにより第1特性曲線X1を校正することなく正しいドリフト補正値を計算で求めることができ、このドリフト補正値を利用することにより、正しいドリフト補正を施すことができ、洩れ検査の信頼性を高めることができる。また、特に利用者には環境温度が変わる毎にマスタリングを実行しなくて済む検査装置を提供するから、取扱いが容易な洩れ検査装置を提供することができる利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施例1を説明するためのブロック図。
【図2】 図1に示した実施例1の動作を説明するためのグラフ。
【図3】 図1に示した実施例1の要部を説明するためのグラフ。
【図4】 従来の技術を説明するためのブロック図。
【図5】 従来の洩れ検査装置の動作を説明するためのタイミングチャート。
【図6】 洩れ検査装置に発生するドリフトの内容を説明するためのグラフ。
【図7】 洩れ検査装置のドリフト補正方法の一例を説明するためのグラフ。
【図8】 洩れ検査装置のドリフト補正方法の他の例を説明するためのグラフ。
【符号の説明】
10 空圧源 30 ドリフト補正装置
11 調圧弁 31 環境温度測定手段
12 圧力計 32 温度差測定手段
13 3方電磁弁 33 第1特性曲線記録手段
14A、14B 電磁弁 34 第2特性曲線記録手段
15 差圧検出器 35 基準温度ドリフト取得手段
16 シール治具 36 断熱特性算出手段
17 被検査体 37 ドリフト値算出手段
18 基準タンク 38 減算手段
19 可変利得増幅器
20 判定手段
21 表示器
Claims (3)
- 被検査体と基準タンクとの双方に同一の空気圧を封入し、封入後から所定の時間が経過する間に上記被検査体と基準タンクとの間に差圧が発生するか否かを計測して上記被検査体に洩れが有るか否かを判定する洩れ検査装置の校正方法において、
校正モードで洩れのない乾燥された被検査体の開口部を基準環境温度にほぼ等しい温度のシール治具で閉塞し、この閉塞状態で被検査体と基準タンクに空気圧を封入し、空気圧の封入後の所定時間が経過する間に上記被検査体と基準タンクとの間に発生する差圧値を第1測定値D1として取得し、第1測定値D1を取得した後、上記所定時間より長い時間経過した時点から上記所定時間にほぼ等しい時間が経過する間に被検査体と基準タンクとの間に発生する差圧変化値を第2測定値ΔD3として取得するドリフト値取得方法において、上記基準環境温度と異なる温度に設定された被検査体と上記基準環境温度にほぼ等しい温度に維持されたシール治具を使って上記第1測定値と第2測定値を取得することを上記被検査体の温度を変更して複数の温度差毎に実行し、各温度差対第1測定値D1の第1特性曲線X1と、各温度差対第2測定値ΔD3の第2特性曲線X2を記録させ、これら第1特性曲線X1と、第2特性曲線X2の差から上記第1特性曲線X1に含まれる空気圧印加直後に発生する空気の断熱変化によって発生するドリフト値の温度特性を求め、
検査モードでこのドリフト値の温度特性を利用して上記基準環境温度以外の任意の環境温度におけるドリフト補正値を求めることを特徴とする洩れ検査装置の校正方法。 - 請求項1記載の洩れ検査装置の校正方法において、上記被検査体とシール治具の温度が共に上記基準環境温度にある場合の第1測定値D1を基準温度ドリフト値A1、上記基準環境温度から被検査体の温度がΔT変化した場合の上記第1特性曲線及び第2特性曲線の傾きをa1/ΔT、a2/ΔT、検査時における被検査体の温度と校正時の基準環境温度差がΔT1である場合、シール治具温度と被検査体との間の温度差がΔT2である場合、検査毎にドリフト補正値A2をA2=A1+(a1−a2)ΔT1/ΔT+a1・ΔT2/ΔTで算出し、このドリフト補正値A2を検査時に取得した第1測定値D1から減算し、この減算結果と判定値とを比較して洩れの有無を判定する洩れ検査装置の校正方法。
- 被検査体と基準タンクとの双方に空気圧を封入し、封入後から所定時間が経過する間に上記被検査体と基準タンクとの間に差圧が発生するか否かにより上記被検査体の洩れの有無を判定する洩れ検査装置において、
A.環境温度を測定する環境温度測定手段及び被検査体の温度を測定する被検査体温度測定手段と、
B.被検査体と環境温度との温度差を測定する温度差測定手段と、
C.校正モードにおいて請求項1記載の校正方法で取得する基準環境温度における第1測定値D1と、第2測定値ΔD3とで求められる第1特性曲線及び第2特性曲線とを記録する第1及び第2特性曲線記録手段と、
D.これら第1特性曲線記録手段及び第2特性曲線記録手段に記録した第1特性曲線及び第2特性曲線とから、上記被検査体とシール治具の温度が共に基準温度である場合の第1測定値D1を基準温度ドリフト値A1として取り出す基準温度ドリフト値取得手段と、
E.上記第1特性曲線及び第2特性曲線とから温度差ΔTにおける上記第1特性曲線及び第2特性曲線の傾きa1/ΔT及びa2/ΔTを求める断熱特性算出手段と、
F.洩れ検査時の被検査体温度と上記校正モード時の基準環境温度との差をΔT1、洩れ検査時のシール治具温度と被検査体の温度差をΔT2とした場合、ドリフト補正値A2を
A2=A1+(a1−a2)ΔT1/ΔT+a1・ΔT2/ΔT
で算出するドリフト補正値算出手段と、
G.このドリフト補正値算出手段で算出したドリフト補正値A2を洩れ検査時に取得した第1測定値D1から減算する減算手段と、
H.この減算手段で減算した減算結果と判定値とを比較し、洩れの有無を判定する判定手段と、
によって構成したことを特徴とする洩れ検査装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003182206A JP3751958B2 (ja) | 2003-06-26 | 2003-06-26 | 洩れ検査装置の校正方法、洩れ検査装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003182206A JP3751958B2 (ja) | 2003-06-26 | 2003-06-26 | 洩れ検査装置の校正方法、洩れ検査装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005017107A JP2005017107A (ja) | 2005-01-20 |
JP3751958B2 true JP3751958B2 (ja) | 2006-03-08 |
Family
ID=34182651
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003182206A Expired - Fee Related JP3751958B2 (ja) | 2003-06-26 | 2003-06-26 | 洩れ検査装置の校正方法、洩れ検査装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3751958B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN100425964C (zh) * | 2005-05-27 | 2008-10-15 | 宁波宝新不锈钢有限公司 | 液压系统内泄漏的测量方法及其应用 |
CN101454652B (zh) | 2006-05-24 | 2011-02-09 | 株式会社科思莫计器 | 泄漏检测方法及泄漏检测器 |
-
2003
- 2003-06-26 JP JP2003182206A patent/JP3751958B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2005017107A (ja) | 2005-01-20 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR100990882B1 (ko) | 누설 검사 방법 및 그것을 사용한 누설 검사 장치 | |
US8205484B2 (en) | Apparatus and method for leak testing | |
JPS59206737A (ja) | 温度補償機能を有する漏洩検査装置 | |
JPH11118657A (ja) | ドリフト補正値算出装置及びこの算出装置を具備した洩れ検査装置 | |
JP4056818B2 (ja) | リークテスト方法及び装置 | |
CN106153494A (zh) | 一种可实现恒压及恒容的气体吸附解吸试验系统及方法 | |
JP3751958B2 (ja) | 洩れ検査装置の校正方法、洩れ検査装置 | |
JP2012255687A (ja) | 圧力洩れ測定方法 | |
JP6370113B2 (ja) | 圧力計の検査方法 | |
JP4087773B2 (ja) | 洩れ検査装置の校正方法、洩れ検査装置 | |
JP2010266282A (ja) | リークテスト装置及び方法 | |
JP7162301B2 (ja) | 圧力計の検査方法、および圧力計の検査装置 | |
JP3983479B2 (ja) | 電池の液漏れ検査装置 | |
JP5221410B2 (ja) | リークテスト装置及び方法並びに感温部材 | |
JP2004198396A (ja) | 洩れ検査装置のドリフト値取得方法・ゼロ点変動値取得方法・湿度補正係数取得方法・洩れ検査装置の校正方法・洩れ検査装置 | |
JP3186644B2 (ja) | 気体漏洩検査方法 | |
JP2007108102A (ja) | 流量式性能検査装置及び検査方法 | |
JPH11304632A (ja) | 洩れ検査用ドリフト補正値算出装置及びこれを用いた洩れ検査装置 | |
JP5340802B2 (ja) | リークテスト装置及び方法 | |
JP3382727B2 (ja) | 漏れ試験装置 | |
JP2003106923A (ja) | 洩れ検査装置のドリフト値取得方法・ゼロ点変動値取得方法・洩れ検査装置のドリフト補正方法・洩れ検査装置 | |
JP2017129477A (ja) | 漏れ検査装置及び方法 | |
JP3422348B2 (ja) | 洩れ検査方法及び装置 | |
JP3151231U (ja) | リークテスト装置及び温度測定器 | |
JP2000105165A (ja) | 洩れ検査装置の温度測定方法及びこの温度測定方法を用いて温度補正する洩れ検査装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20050707 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050726 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20050922 |
|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20050922 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20051122 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20051208 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |