JP3742196B2 - 精製固形天然ゴムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蛋白質と結合脂肪酸とが高度に除去された精製固形天然ゴムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
天然ゴムは、通常約94%のゴム分のほか、蛋白質、脂質、無機塩等からなる約6%の非ゴム成分を含んでおり、機械的強度、引裂強度、動的特性等の種々の点において合成ゴムでは得ることができない優れた性能を有している。
しかしながら、天然ゴムに含まれる蛋白質は、絶縁性等の電気特性を低下させたり、吸水性を上昇させたり、アレルギー症状を引き起こす原因になるといった問題がある。このため従来より、天然ゴムラテックスまたは固形天然ゴムから蛋白質を除去する試みがなされている。
【0003】
天然ゴム中の蛋白質を除去する方法としては、従来より、(1) 天然ゴムラテックスに遠心分離を施す方法、(2) 天然ゴムラテックスに弱アルカリを加えて蛋白質を分解する方法、(3) 天然ゴムラテックスに蛋白質分解酵素と界面活性剤を添加して蛋白分解処理を施す方法、(4) 固形ゴムを繰り返し水洗する方法、(5) 固形ゴムにリーチングを施す方法が知られている。
【0004】
また、天然ゴムには溶媒に不溶のゲル分も含まれている。このゲル分は、主として長鎖の脂肪酸がエステル結合によってゴムの分子鎖に結合したもの(以下、「結合脂肪酸」という)であると考えられており、ゲル分の含有量が多いと混練しにくくなるなど、天然ゴムの加工性に悪影響を及ぼすと考えられている。
近年、固形天然ゴムをトルエンに浸漬してナトリウムエトキシドでエステル交換することにより、天然ゴム中の結合脂肪酸を除去できることが見出されたが、かかる方法は工業的大量生産には適さないという問題がある。
【0005】
また、前述の蛋白質を分解する方法では結合脂肪酸を除去できず、一方で、上記のエステル交換で結合脂肪酸を除去する方法では蛋白質を除去できない。
そこで本発明の目的は、機械的強度、引裂強度、動的特性等の機械特性に優れるとともに、高絶縁性、低吸水性およびアレルギーフリーの特性を有し、かつ加工性に優れた精製固形天然ゴムを工業的な規模で、かつ容易に製造できる精製固形天然ゴムの製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の精製固形天然ゴムの製造方法は、固形天然ゴムまたはあらかじめ炭化水素系溶剤で膨潤させた固形天然ゴムを、前記固形天然ゴムの重量に対して0.5〜4倍量の水酸化アルカリと、炭素数が2〜4のアルコールと、水との混合液に浸漬して、蛋白質および結合脂肪酸を実質的に含有しないレベルにまで除去することを特徴とする。
【0010】
上記本発明の精製固形天然ゴムの製造方法に使用される前記固形天然ゴムは、あらかじめ加硫されたものであってもよい。
上記本発明の精製固形天然ゴムの製造方法によれば、強アルカリ処理により固形天然ゴム(未加硫の固形天然ゴムまたは加硫された固形天然ゴム)中における蛋白質の加水分解、結合脂肪酸のエステル結合の切断および両者の除去を一度に行うことができる。
【0011】
なお、本発明における蛋白質の分解反応と、結合脂肪酸のエステル結合を切断する反応とは、アルカリのみでは円滑に進行せず、いずれもアルカリのほかにアルコールを存在させることによって、両反応を一挙に行わせることが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の精製固形天然ゴムの製造方法により得られる精製固形天然ゴム(未加硫の精製固形天然ゴムまたは加硫された精製固形天然ゴム)は、固形天然ゴムまたは加硫された固形天然ゴムを、所定の条件下にて、所定量の水酸化アルカリと特定のアルコールと水との混合液に浸漬して、蛋白質および結合脂肪酸を実質的に含有しないレベルにまで除去したものであって、蛋白質の含有量が窒素含有量で0.02%以下であり、かつ結合脂肪酸の含有量が0.05重量%以下であって、実質的に蛋白質および結合脂肪酸を含有しないことを特徴とするものである。
上記の精製固形天然ゴムは、従来の天然ゴムと同様に機械的強度、引裂強度、動的特性等の機械特性が優れており、蛋白質を実質的に含有しないことに起因して高電気絶縁性、低吸水性およびアレルギーフリー等の特性を有し、さらに結合脂肪酸を実質的に含有しないことに起因して優れた加工性をも有する。
【0013】
本発明に用いられる加硫されていない固形天然ゴムとしては、例えば市販のペールクレープ、リブド・スモークド・シート、ブラウンクレープ、ブランケットクレープ、エアドライドシート等があげられる。
本発明に用いられる加硫された固形天然ゴムとしては、例えば前記ペールクレープ等を常法にて加硫したものがあげられる。
【0014】
固形天然ゴムまたは加硫された固形天然ゴムを浸漬させる、所定量の水酸化アルカリと特定のアルコールと水との混合液において、アルコールは、混合液の総量に対して5〜90重量%の範囲で配合される。
一方、水酸化アルカリの配合量は、固形天然ゴムの重量に対して0.5〜4倍、好ましくは1〜2倍の範囲で設定される。水酸化アルカリの配合量が上記範囲を下回ると、前記混合液のアルカリ性が弱まり、蛋白質や結合脂肪酸の除去効果に悪影響を及ぼすおそれがあるため好ましくない。逆に、水酸化アルカリを上記範囲を超えて配合しても、それに見合う効果がなく、コストが高くなるため好ましくない。
【0015】
上記混合液に用いられる炭素数2〜4のアルコールとしては、例えばエタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール等があげられる。なかでも、イソプロピルアルコールは、天然ゴムを膨潤させやすいことから好適に用いられる。
上記混合液に用いられる水酸化アルカリとしては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等があげられ、なかでも水酸化カリウムが好適に用いられる。
【0016】
固形天然ゴムまたは加硫された固形天然ゴムを膨潤させる炭化水素系溶剤としては、例えばシクロヘキサン、ヘキサン、トルエン、ベンゼン等があげられる。前記炭化水素系溶剤であらかじめ固形天然ゴムを膨潤させた場合には、蛋白質および結合脂肪酸の除去効果を高めることができる。膨潤の程度は特に限定されるものではなく、固形天然ゴムまたは加硫された固形天然ゴムを上記炭化水素系溶剤に完全に溶解させてもよい。
【0017】
本発明の精製固形天然ゴムの製造方法によれば、固形天然ゴムまたはあらかじめ炭化水素系溶剤に膨潤させた固形天然ゴムは、100℃以下、好ましくは70〜80℃の範囲で、上記の特定のアルコールと所定量の水酸化アルカリとを含む水溶液に1〜5時間、好ましくは3〜4時間浸漬される。浸漬は、単に浸漬放置するだけでもよく、あるいは必要に応じて攪拌または還流を行ってもよい。これによって、脱蛋白および結合脂肪酸の除去がなされる。上記浸漬は通常の雰囲気下で行うことができるが、ゴムの酸化を防止するという観点から窒素雰囲気下で行ってもよい。
【0018】
上記水溶液に浸漬した固形天然ゴムは、水洗および乾燥の処理が施される。こうして、蛋白質の含有量が窒素含有量で0.02%以下にまで除去され、かつ結合脂肪酸の含有量が0.05重量%以下にまで除去された精製固形天然ゴムが得られる。
本発明の精製固形天然ゴムの製造方法によれば、上記水溶液に浸漬した固形天然ゴムを水洗した後、乾燥する前に、老化防止剤の分散体水溶液に浸漬することで、精製固形天然ゴムの耐熱老化性を向上させることができる。
【0019】
前記老化防止剤には、例えば2,6−ジ−(t−ブチル)−4−メチルフェノール等のほか、従来公知の種々の老化防止剤を使用できる。
本発明において、蛋白質の含有量を示す指標である窒素含有量(N%)は、ケルダール法によって求めたものである。通常、窒素含有量(N%)が0.02%以下であれば、高電気絶縁性、低吸水性およびアレルギーフリーの諸特性について充分な結果が得られる。
【0020】
一方、本発明において結合脂肪酸の含有量の指標としては、ゴム分子中のエステル結合の割合(エステル%)およびゲル分の含有量(ゲル%)で評価することができる。
ゴム分子中のエステル結合の割合(エステル%)の測定方法は次のとおりである。まず、固形天然ゴム試料の赤外吸収スペクトルを測定する。一方、合成シスポリイソプレンを用いて、1664cm-1のイソプレン単位のC=C伸縮振動による吸収と1741cm-1のカルボニル基のC=O伸縮振動による吸収のピーク高さ比から検量線を作製する。この検量線を用いて、試料中のエステル結合の割合を求める。
【0021】
ゲル分の含有量(ゲル%)の測定方法は次のとおりである。まず、固形天然ゴム試料を脱水トルエンに浸し、暗所に遮光して1週間放置後、トルエン溶液を1.3×105 rpmで30分間遠心分離して、ゲル分とトルエン可溶分とを分離する。次いで、トルエン可溶分を再度遠心分離してゲル分を回収する。こうして、回収されたゲル分の重量と試料の元の重量との比からゲル%(重量%)が求められる。
【0022】
通常、エステル結合の割合(エステル%)が0.015%以下であれば、ゴムの加工性について良好な結果が得られる。ゲル分の含有量(ゲル%)については、1.9重量%以下であるのが適当である。
【0023】
【実施例】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を説明する。
実施例および比較例において、固形天然ゴムには市販のペールクレープ、加硫天然ゴムフィルムまたは含水ゴム(天然ゴムラテックスに凝固剤を加えてゴム分を凝固させた、未乾燥の固形ゴム)を用いた。
【0024】
水酸化アルカリとアルコールと水との混合液には、
(a) 水酸化カリウム20g、イソプロピルアルコール25mlおよび水25mlの混合液(水酸化カリウム濃度40w/v%)、または
(b) 水酸化カリウム20g、エタノール25mlおよび水25mlの混合液(水酸化カリウム濃度40w/v%)のいずれかを用いた。
【0025】
実施例1
シクロヘキサン100mlに対してペールクレープのゴム分が1gの割合となるように加え、溶解および膨潤させた。このシクロヘキサン溶液に上記(a) の混合液を添加した。かかる混合液(a) の添加量は、ペールクレープのゴム分1gに対する水酸化カリウム(KOH)の量が1gとなるように調整した。
【0026】
次いで、上記シクロヘキサン溶液を、窒素雰囲気下、70℃で3時間還流した。還流後、反応溶液を温水で洗浄し、トルエンに溶解してメタノールで再沈し、乾燥して、精製固形天然ゴムを得た。
実施例2〜4
シクロヘキサン100mlに対するペールクレープのゴム分の量を5g(実施例2)、10g(実施例3)および40g(実施例4)としたほかは、実施例1と同様にして精製固形天然ゴムを得た。
【0027】
実施例5
ペールクレープのゴム分1gに対するKOHの量が1gとなるように、上記(a) の混合液を添加し、これを窒素雰囲気下、70℃で3時間還流した。次いで、反応溶液を温水で洗浄し、真空乾燥して、精製固形天然ゴムを得た。
実施例6、7
ペールクレープに代えて加硫ゴムフィルム(実施例6)および含水ゴム(実施例7)を用いたほかは、実施例5と同様にして精製固形天然ゴムを得た。
【0028】
比較例1
シクロヘキサン100mlに対してペールクレープのゴム分が1gの割合となるように加えて溶解させた後、窒素雰囲気下、70℃で3時間還流した。還流後、反応溶液を実施例1と同様にして処理して、固形天然ゴムを得た。
比較例2
ペールクレープに代えて加硫ゴムフィルムを用いたほかは、比較例1と同様にして固形天然ゴムを得た。
【0029】
比較例3
ペールクレープのゴム分の濃度が1重量%であるトルエン溶液を調製した。次いで、このトルエン溶液にナトリウムエトキシドを滴下し、室温で3時間攪拌してエステル交換反応を行った。反応後、トルエン溶液をメタノールで再沈し、乾燥して、固形天然ゴムを得た。
【0030】
比較例4
天然ゴムラテックスをゴム分の濃度が30重量%となるように希釈し、1%ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムで安定化させた。リン酸二水素ナトリウム水溶液を用いてラテックスのpHを9.2に調整した後、0.04%の蛋白分解酵素(アルカラーゼ2.0t)を加えて遮光し、緩やかに攪拌しながら37℃で10〜24時間反応させた。反応終了後、ラテックスを遠心分離(1.3×106 rpm、30分)して、得られたクリーム分を1%の界面活性剤水溶液(界面活性剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)に分散させた。再度、遠心分離と分散の操作を2回行い、乾燥して、固形脱蛋白天然ゴムを得た。
【0031】
上記実施例1〜7および比較例1〜4で得られた固形天然ゴムについて、ゴム中の窒素含有量(N%)、エステル結合の残存量(エステル%)、ゲル分の含有量(ゲル%)、ゴムの加工性、吸水性および表面の体積固有抵抗(Ω・cm)の評価を行った。
それぞれの評価方法は、それぞれ次のとおりである。
【0032】
(窒素含有量の測定)
窒素含有量は、ヤナコ分析工業社製の「CHN CORDER MT−5型」を用いて、ケルダール法に従って測定した。測定には、まずアンチピリンを標準物質として、窒素含有量を求めるための検量線を作製した。次いで、各実施例および比較例で得られた固形天然ゴム約10mgを秤量し、3回の測定結果から平均値を求めて、試料の窒素含有量(N%)とした。
【0033】
(エステル結合の残存量の測定)
各実施例および比較例で得られた固形天然ゴムの赤外吸収スペクトルを、赤外フーリエ変換分光計(日本分光工業製の「FT/IR5300型」)を用いて、透過法により測定した。
測定には、固形天然ゴムの1%クロロホルム溶液を調整し、KBr板上にキャストし、自然乾燥させて薄膜を作製した。これを用いて、積算200回、分解能4cm-1で測定した。
【0034】
合成シスポリイソプレン((株)クラレ製の商品名「クラプレンIR−10」)とステアリン酸メチルとを用いて、1664cm-1のイソプレン単位のC=C伸縮振動による吸収と1741cm-1のカルボニル基のC=O伸縮振動による吸収のピーク高さ比から検量線を作製し、この検量線を用いて結合脂肪酸を定量して、エステル結合の残存量(エステル%)を求めた。
【0035】
(ゲル分の含有率の測定)
各実施例および比較例で得られた固形天然ゴム約80mgを脱水トルエン40mlに浸し、暗所にて1週間放置した。一週間後、トルエン溶液を遠心分離(1.3×105 rpm、30分)して、ゲル分とトルエン可溶分に分離した。次いで、トルエン可溶分を再度遠心分離してゲル分を回収した。試料のゲル含有量(ゲル%)はゲル分の重量と元の試料の重量の比から求めた。
【0036】
(ゴムの加工性)
各実施例および比較例で得られた固形天然ゴム(未加硫)100重量部に、加硫剤(硫黄)1.5重量部、加硫促進剤(N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、MSA)0.5重量部、亜鉛華3重量部およびステアリン酸1重量部を配合し、ロールで混練した。
【0037】
ゴムの加工性は、ラボプラストミル〔東洋精機社製の50C150型(本体)、2D25S型(押出機)〕にて、Tダイを用いて押出し(幅100mm、厚さ5mm)、押し出されたゴムの生地はだで目視により評価した。
加工性の評価基準は次のとおりである。
〇:表面が平滑であった(加工性が優れていた)。
△:表面に凹凸が見受けられた(加工性が実用上不十分であった)。
×:表面が粗く、凹凸が多かった(加工性が極めて不十分であった)。
【0038】
(ゴムの吸水性)
各実施例および比較例で得られた固形天然ゴムをロールにてシート状にし、1cm×1cm、厚さ0.5mmの試験片を採取した。この試験片を23℃の水中に24時間浸漬し、浸漬前後の重量変化により吸水性を評価した。
吸水性の評価基準は次のとおりである。
〇:2%未満(吸水性が極めて低かった。)
△:2%以上、7%未満(吸水性が実用上不十分であった。)
×:7%以上(吸水性が極めて高かった。)
(体積固有抵抗の測定)
上記加工性の評価に用いた混練物を、プレス加硫にて140℃で40分間加硫し、10cm×10cm、厚さ2mmのゴム板(試験片)を作製した。
【0039】
次いで、上記試験片に150V×φ50mmの電圧をかけて、体積固有抵抗(Ω・cm)を求めた。
以上の結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1より明らかなように、ペールクレープを所定量の水酸化アルカリと特定のアルコールと水との混合液で処理した実施例1〜7においては、いずれも窒素含有量(N%)が0.02%以下で、アレルギー症状を引き起こすことがない程度にまで除去されており、低吸水性をも実現できた。また、エステル結合の残存率(エステル%)が低く、すなわち結合脂肪酸が充分に除去されており、さらにゲル分の含有量(ゲル%)を低減することができ、その結果、ゴムの加工性を良好なものとすることができた。さらに、表面の体積固有抵抗は1×1013Ω・cm以上と極めて高く、高電気絶縁性を実現できた。
【0042】
これに対し、比較例1および2は水酸化アルカリが存在しない条件で処理したため、N%、エステル%、ゲル%、加工性および吸水性のいずれもが不十分であって、表面の体積固有抵抗も1×109 Ω・cm未満と低く、充分な電気絶縁性が得られなかった。
上記実施例1および比較例1、3、4で得られた固形天然ゴムについて、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)による分析を行い(図1参照)、蛋白質およびエステル結合の除去効果を確認した。なお、FT−IRでは、蛋白質のN−NH伸縮振動に起因するピークが3280cm-1に現れ、エステル結合のC=O伸縮振動に起因するピークが1735〜1740cm-1に現れる。
【0043】
図1に示すように、比較例1では3280cm-1と1735〜1740cm-1との両方に強いピークが現れた。エステル交換反応を行った比較例3では、1735〜1740cm-1のピークが消えたものの、蛋白質に起因する3280cm-1のピークが強く現れた。また、従来の方法で脱蛋白処理を施した比較例4では、3280cm-1のピークが消えたものの、エステル結合に起因する1735〜1740cm-1のピークが強く現れた。
【0044】
これに対し、実施例1では3280cm-1と1735〜1740cm-1との両方のピークが消えた。従って、蛋白質およびエステル結合が一挙に除去できたことが確認された。
実施例8
ペールクレープのゴム分1gに対するKOHの量が4gとなるように、上記(b) の混合液にペールクレープを添加した後、これを窒素雰囲気下、70℃で3時間還流した。次いで、反応溶液を温水で洗浄し、真空乾燥して、精製固形天然ゴムを得た。
【0045】
実施例9〜11、比較例5、6
ペールクレープのゴム分1gに対するKOHの量を2g(実施例9)、1g(実施例10)、0.5g(実施例11)、0.2g(比較例5)および0.1g(比較例6)としたほかは、実施例8と同様にして精製固形天然ゴムを得た。
上記実施例8〜11および比較例5、6で得られた固形天然ゴムについて、窒素含有量(N%)、エステル結合の残存量(エステル%)、ゴム中のゲル分の含有量(ゲル%)、ゴムの加工性、吸水性および表面の体積固有抵抗(Ω・cm)を前述と同様にして評価した。
【0046】
以上の結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
実施例12
水酸化アルカリ水溶液とアルコールとの混合溶液に用いるアルコールとしてn−ブチルアルコールを用い、さらに還流温度を70℃に代えて95℃としたほかは、実施例5と同様にして、精製固形天然ゴムを得た。
実施例13
水酸化アルカリ水溶液とアルコールとの混合溶液に用いる水酸化アルカリとして水酸化ナトリウム(NaOH)を用い、アルコールとしてエタノールを用いたほかは、実施例5と同様にして、精製固形天然ゴムを得た。
【0049】
比較例7
水酸化アルカリ水溶液とアルコールとの混合溶液に用いるアルコールとしてメタノールを用いたほかは、実施例5と同様にして、精製固形天然ゴムを得た。
上記実施例12、13および比較例7で得られた固形天然ゴムについて、窒素含有量(N%)、エステル結合の残存量(エステル%)、ゴム中のゲル分の含有量(ゲル%)、ゴムの加工性、吸水性および表面の体積固有抵抗(Ω・cm)を前述と同様にして評価した。
【0050】
以上の結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
表2および3より明らかなように、固形天然ゴムの重量に対して0.5〜4倍量の水酸化アルカリと、炭素数2〜4のアルコールと、水との混合液で処理した実施例8〜13においては、N%、エステル%およびゲル%がいずれも低く、ゴムの加工性、吸水性および電気絶縁性がいずれも良好であった。
これに対し、水酸化アルカリの量が少ない比較例5、6やメタノールを用いた比較例7では、N%等の上記特性がいずれも不十分であった。
【0053】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の精製固形天然ゴムの製造方法により得られる精製固形天然ゴムは、機械特性に優れ、高絶縁性、低吸水性およびアレルギーフリーの特性を有し、かつ加工性にも優れており、従来知られていない新規な精製固形天然ゴムとして、幅広い分野で用いられることが期待される。
【0054】
一方、本発明の精製固形天然ゴムの製造方法によれば、上記の精製固形天然ゴムを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1および比較例1、3、4で得られた固形天然ゴムのFT−IRスペクトルを示すグラフである。
Claims (2)
- 固形天然ゴムまたはあらかじめ炭化水素系溶剤で膨潤させた固形天然ゴムを、前記固形天然ゴムの重量に対して0.5〜4倍量の水酸化アルカリと、炭素数が2〜4のアルコールと、水との混合液に浸漬して、蛋白質および結合脂肪酸を実質的に含有しないレベルにまで除去することを特徴とする精製固形天然ゴムの製造方法。
- 前記固形天然ゴムが、あらかじめ加硫されたものである請求項1記載の精製固形天然ゴムの製造方法。
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